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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】湿潤インジケータ用組成物
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20241009BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20241009BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20241009BHJP
   G01N 31/22 20060101ALI20241009BHJP
   A61F 13/42 20060101ALI20241009BHJP
   G01N 21/81 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
G01N31/00 B
C08L91/00
C08K5/09
G01N31/22 122
A61F13/42 B
G01N21/81
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020129592
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026227
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 重和
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-511673(JP,A)
【文献】特表2018-515165(JP,A)
【文献】特表2018-517894(JP,A)
【文献】特開2017-072561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00-31/22
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭化水素油と(B)炭素数16以上の飽和脂肪酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種と(C)湿潤感受性着色料組成物とを含み、
成分(B)は、成分(A)~(C)の総量100質量部に対し、2~85質量部の量で含まれている、湿潤インジケータ用組成物であって、
成分(A)は、室温で液体である親油性の炭化水素化合物であり、
成分(B)は、ヒドロキシル基を有するものであり、
成分(C)は、プロトンを感受した場合に変色する着色料と、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤とを含む、湿潤インジケータ用組成物。
【請求項2】
成分(B)は、12-ヒドロキシステアリン酸及び12-ヒドロキシステアリン酸金属塩から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の湿潤インジケータ用組成物。
【請求項3】
成分(C)は、ロイコ染料又はpH指示薬とアニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤とを含む組成物である、請求項1又は2に記載の湿潤インジケータ用組成物。
【請求項4】
前記アニオン性界面活性剤は直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩を含む、請求項3に記載の湿潤インジケータ用組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の湿潤インジケータ用組成物を有する湿潤インジケータ。
【請求項6】
請求項5に記載の湿潤インジケータを有する吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変色することで水分の存在を知らせる部材である湿潤インジケータに関する。
【背景技術】
【0002】
水分等に接触することで機能を発揮する物品として、水分交換機(HEM)、水分検出器、オートクレーブ(滅菌用)テープ、包装物品、吸収性物品等がある。これら物品が濡れた状態にあり、機能を発揮していることを表示するデバイスとして、湿潤インジケータが知られている。湿潤とは、体液等の水を含む液体、即ち、水分が接触している状態をいう。インジケータとは、表示用具、標識用具をいう。
【0003】
一般に、湿潤インジケータは、その色が変化することで、物品が乾燥しているか、水分で濡れているかを表示する。例えば、湿潤インジケータは、物品が濡れたときに着色・変色することで、物品の湿潤状態の現状が表示される。
【0004】
特許文献1~3には、オムツ等の吸収性物品と組み合わせて使用される湿潤インジケータ用組成物が記載されている。
【0005】
特許文献1には、pH変化に応答して色を変える濡れ指示組成物が記載されている。この濡れ指示組成物は、水不溶性熱可塑性ポリマー組成物、超吸収性ポリマー、濡れインジケータ、及び界面活性剤を含む。([要約][請求項1][請求項2])。
【0006】
特許文献2には、既存のホットメルトアプリケータ機器を使用して塗布されうる、ホットメルト湿気表示組成物が記載されている。このホットメルト湿気表示組成物は、水不溶性熱可塑性高分子、陰イオン界面活性剤、ロイコ染料等の成分を含む([要約][請求項1][0006])。
【0007】
特許文献3には、初期状態は無色であり、水の存在下で様々な最終的な濡れ色の選択肢を提供できる湿り度/流体インジケータ組成物が記載されている。この湿り度/流体インジケータ組成物は、ホットメルト接着剤マトリクス中にロイコ染料と発色剤とを含む([要約][0001][0008])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2009-511673号公報
【文献】特表2018-515165号公報
【文献】特表2018-517894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の湿潤インジケータ用組成物は、マトリックス、即ち主要な連続相が熱可塑性樹脂で構成されており、水分の浸透性が十分に優れていないものである。かかる従来の湿潤インジケータ用組成物は、水分と接触した場合に変色度合が弱く、また変色するタイミングが遅くなることがあり、変色性能に未だ改良の余地がある。また、従来の湿潤インジケータは臭気を有し、使用者に不快感を与え、臭気が吸収性物品に移行する問題も有する。
【0010】
本発明はかかる課題を解決するものであり、その目的とするところは、変色性能に優れ、臭気が抑制された湿潤インジケータ用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(A)炭化水素油と(B)炭素数16以上の飽和脂肪酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種と(C)湿潤感受性着色料組成物とを含み、
成分(B)は、成分(A)~(C)の総量100質量部に対し、2~85質量部の量で含まれている、湿潤インジケータ用組成物を提供する。
【0012】
ある実施形態においては、成分(B)は、12-ヒドロキシステアリン酸及び12-ヒドロキシステアリン酸金属塩から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0013】
ある実施形態においては、成分(C)は、ロイコ染料又はpH指示薬とアニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤とを含む組成物である。
【0014】
ある実施形態においては、前記アニオン系界面活性剤は直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩を含む。
【0015】
また、本発明は、前記いずれかに記載の湿潤インジケータ用組成物を有する湿潤インジケータを提供する。
【0016】
また、本発明は、前記湿潤インジケータを有する吸収性物品を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、変色性能に優れ、臭気が抑制された湿潤インジケータ用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<(A)炭化水素油>
本発明の湿潤インジケータ用組成物に含まれる炭化水素油とは、室温で液体である親油性の炭化水素化合物をいう。例えば、ワックスは親油性の炭化水素化合物であるが室温で固体であるため、炭化水素油には該当しない。固体状の炭化水素物質は水分の浸透性に劣るので、湿潤インジケータ用組成物のマトリックスに使用した場合、湿潤インジケータの変色性に悪影響を与え易い。
【0019】
炭化水素油としては、着色料との相溶性をよくする観点から、好ましくは、パラフィンオイル、ナフテンオイル及び芳香族系オイルから選ばれる少なくとも1種を含むものである。より好ましくは、炭化水素油は、パラフィンオイル及びナフテンオイルから選ばれる少なくとも1種を含み、更に好ましくは、パラフィンオイルを含むものである。炭化水素油の重量平均分子量は、水分の浸透性をよくする観点から、好ましくは、200~2000である。
【0020】
炭化水素油は、市販品を使用することができる。市販品である炭化水素油としては、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、出光興産社製のダイアナフレシアPW32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW-90(商品名)、ダフニーオイルKP-68(商品名)、ニーナス社製のナイフレックス222B(商品名)、サン石油社製のサンピュアN90、ペトロチャイナカンパニー社製のKN4010(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エッソ社製のPrimol352(商品名)を例示することができる。
【0021】
炭化水素油は、炭化水素油と飽和脂肪酸と湿潤感受性着色料組成物、即ち、成分(A)~(C)の総量100質量部に対して、5~90質量部、好ましくは20~75質量部、より好ましくは30~65質量部の量で湿潤インジケータ用組成物中に含まれる。湿潤インジケータ用組成物における炭化水素油の含有量を上記範囲に調節することで、炭化水素油と着色料の相溶性が向上し、プロトン発生し易くなり、本発明の湿潤インジケータ用組成物は、明確で迅速な着色を示すことができる。
【0022】
<(B)飽和脂肪酸>
飽和脂肪酸は、炭素鎖に二重結合あるいは三重結合を有さない脂肪酸をいう。脂肪酸は、カルボキシ基を少なくとも1つ有する脂肪族カルボン酸である。
【0023】
本発明の湿潤インジケータ用組成物に含まれる飽和脂肪酸は、架橋して、組成物全体をゲル化させる性質を有するものである。飽和脂肪酸は、ヒドロキシ基を有するものが架橋し易いため、好ましい。飽和脂肪酸は鎖状であることが好ましい。また、鎖状の飽和脂肪酸は直鎖飽和脂肪酸であることが好ましい。炭化水素油の存在下に飽和脂肪酸が架橋することで、炭化水素油は、三次元化架橋された飽和脂肪酸に内包されることになる。使用する飽和脂肪酸は、公知物質で差し支えない。水分の浸透性をよくする観点から、好ましくは、かかる飽和脂肪酸は、炭素数16以上の飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸誘導体である。
【0024】
本発明の湿潤インジケータ用組成物は、三次元化架橋された飽和脂肪酸に炭化水素油が内包されることで、油性ゲルを含むことになる。油性ゲルを含む湿潤インジータ用組成物は、ホットメルトタイプの湿潤インジケータ用組成物より柔らかい適度な硬さとなり、水分が組成物に浸透し易く、強く迅速に変色する。それにより、本発明の湿潤インジケータでは、物品の湿潤状態の現状を、正確に表示することができる。また、油性ゲルは、臭気の要因となる着色料や体液を内包することが可能であるため、本発明の吸収性物品の臭気を低減させることが可能である。
【0025】
飽和脂肪酸は、炭素数16~36のものがより好ましく、炭素数18~20のものがさらに好ましい。炭素数16以上の飽和脂肪酸としては、具体的には、炭素数20のアラキジン酸、炭素数18のステアリン酸、炭素数18の12-ヒドロキシステアリン酸、炭素数17のマルガリン酸、炭素数16のパルミチン酸及び炭素数16の16-ヒドロキシヘキサデカン酸が例示される。中でも、12-ヒドロキシステアリン酸が特に好ましい。
【0026】
飽和脂肪酸誘導体とは、上記飽和脂肪酸の一部が共存可能な基で置換された化合物をいう。飽和脂肪酸誘導体は、炭素数16以上のものであってよく、炭素数16~36のものが好ましく、炭素数18~20のものがより好ましい。例えば、炭素数16以上の脂肪酸アミド、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸金属塩、モノグリセリド、ジグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル等を飽和脂肪酸誘導体として使用することができる。好ましい飽和脂肪酸誘導体としては、飽和脂肪酸金属塩が挙げられる。
【0027】
飽和脂肪酸誘導体は、ステアリン酸に由来する化学構造を有するものが特に好ましい。「ステアリン酸に由来する化学構造」とは、式
CH(CH16COOH (1)
で示されるユニットをいう。飽和脂肪酸誘導体には、式(1)の一部が他の共存可能な基(例えば、ヒドロキシ基、アルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属)で置換された化学構造、及び式(1)で示されたユニットの多量体又は重合体も含まれる。
【0028】
脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸に由来する化学構造を持つ金属塩が好ましく、具体的には、炭素数18のステアリン酸ナトリウム、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム塩、炭素数36のステアリン酸マグネシウムが例示される。中でも、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム塩が特に好ましい。
【0029】
本発明の湿潤インジケータ用組成物は、12-ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム塩を含む場合、三次元架橋が容易に発生して、炭化水素油を内包し易く、適度な硬さの油性ゲルを調製することが容易になる。油性ゲルが適度な硬さに形成される場合、水分がゲル内に浸透し易くなる。水分が浸透し易くなることで、水分と界面活性剤が共存し易くなり、プロトンの発生が容易になり、着色料の変色が促進される。
【0030】
飽和脂肪酸は、炭化水素油と配合されてティッシュのような連続多孔体を形成し、その連続多孔体の空隙に炭化水素油が閉じ込められるような構造を形成する。炭化水素油が上記飽和脂肪酸と配合されることで適度な硬さの油性ゲルが得られ、油性ゲルは微細な連続多孔体を有することになる。本発明の湿潤インジケータ用組成物は、油性ゲルが微細な連続多孔体構造を持つことで、例えば、尿及び体液等の水分を容易に浸透させることが可能である。
【0031】
飽和脂肪酸は、炭化水素油と飽和脂肪酸と湿潤感受性着色料組成物、即ち、成分(A)~(C)の総量100質量部に対して、2~85質量部、好ましくは10~70質量部、より好ましくは20~60質量部の量で湿潤インジケータ用組成物中に含まれる。湿潤インジケータ用組成物における飽和脂肪酸の含有量を上記範囲に調節することで、炭化水素油と着色料の相溶性が向上し、プロトン発生し易くなり、本発明の湿潤インジケータ用組成物は、明確で迅速な着色を示すことができる。
【0032】
<(C)湿潤感受性着色料組成物>
本発明の湿潤インジケータ用組成物は、湿潤感受性着色料組成物を含んでいる。湿潤感受性着色料組成物とは、プロトンを感受した場合に実質的に変色する着色料と、水の存在下にプロトンを放出する界面活性剤とを含む組成物をいう。湿潤感受性着色料組成物に使用する着色料及び界面活性剤は、公知のものを組み合わせて使用してよい。
【0033】
着色料には、染料、指示薬、顔料等が含まれる。使用しうる着色料の具体的には、オキサゾリジン系染料、アゾ系染料、メチン系染料、アントラキノン系染料、ロイコ染料等が含まれる。迅速で明確な変色を得る観点から、好ましくは、着色料はロイコ染料及びpH指示薬を含む。ロイコ染料又はpH指示薬はプロトン感受性が強いので、これらを使用することで、湿潤インジケータ用組成物の変色性能が向上する。
【0034】
ロイコ染料とは、2種の化学種(その一方は無色)の間を変化できる染料である。可逆的変化としては熱、光あるいはpHによるものがあり、それぞれサーモクロミズム、フォトクロミズム、ハロクロミズムの例である。不可逆的変化として典型的なものには還元または酸化によるものがある。無色型は時にロイコ体と呼ばれる。
【0035】
ロイコ染料は、十分に呈色するものであれば限定されず、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、酸により発色することができるロイコ染料等の下記の化合物を好適に用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0036】
(a)フルオラン類: 2’-[(2-クロロフェニル)アミノ]-6’-(ジブチルアミノ)-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジメチルアミノベンゾ(a)-フルオラン、3-アミノ-5-メチルフルオラン、2-メチル-3-アミノ-6,7-ジメチルフルオラン、2-ブロモ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、6’-エチル(4-メチルフェニル)アミノ-2’-(N-メチルフェニルアミノ)-スピロ(イソベンゾフラン1(3H),9’-(9H)キサンテン)-3-オン、3,6-ジフェニルアミノフルオラン、9-エチル(3-メチルブチル)アミノ-スピロ[12H-ベンゾ(a)キサンテン-12,1’(3’H)イソベンゾフラン]-3’-オン、2’-[ビス(フェニルメチル)アミノ]-6’-(ジエチルアミノ)-スピロ-[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オン等;
【0037】
(b)フルオレン類: 3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)-4’-アザフタリド、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)-4’,7’-ジアザフタリド等;
【0038】
(c)ジフェニルメタンフタリド類: 3,3-ビス-(p-エトキシ-4-ジメチルアミノフェニル)フタリド等;
【0039】
(d)ジフェニルメタンアザフタリド類: 3,3-ビス-(1-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-4-アザフタリド等;
【0040】
(e)インドリルフタリド類: 3,3-ビス(n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド等;
【0041】
(f)フェニルインドリルフタリド類: 3-(1-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド等;
【0042】
(g)フェニルインドリルアザフタリド類: 3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-[2-エトキシ-4-(N-エチルアニリノ)フェニル]-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド等;
【0043】
(h)スチリルキノリン類: 2-(3-メトキシ-4-ドデコキシスチリル)キノリン等;
【0044】
(i)ジアザローダミンラクトン類: 2-(ジメチルアミノ)-8-(ジメチルアミノ)-4-メチル-スピロ[5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1’(3’H)-イソベンゾフラン]等;
【0045】
(j)ピリジン類: 2,6-ジフェニル-4-(6-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、2,6-ジエトキシ-4-(4-ジエチルアミノフェニル)ピリジン等;
【0046】
(k)キナゾリン類: 2-(4-N-メチルアニリノフェニル)-1-フェノキシキナゾリン、2-(4-ジメチルアミノフェニル)-4-(1-メトキシフェニルオキシ)キナゾリン等;
【0047】
(l)ビスキナゾリン類: 4,4’-(エチレンジオキシ)-ビス[2-(1-ジエチルアミノフェニル)キナゾリン]、4,4’-(エチレンジオキシ)-ビス[2-(1-ジ-n-ブチルアミノフェニル)キナゾリン]等;
【0048】
(m)エチレノフタリド類: 3,3-ビス[1,1-ビス-(p-ジメチルアミノフェニル)エチレノ-3]フタリド等;
【0049】
(n)エチレノアザフタリド類: 3,3-ビス[1,1-ビス-(p-ジメチルアミノフェニル)エチレノ-2]-4-アザフタリド、3,3-ビス[1,1-ビス-(p-ジメチルアミノフェニル)エチレノ-2]-4,7-ジアザフタリド等;
【0050】
(o)アミノフタリド類: 3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)等。
【0051】
また、アミノフタリド類及びフルオラン類の少なくとも1種を、着色料として用いることができる。フルオランとしては特に、2’-[ビス(フェニルメチル)アミノ]-6’-(ジエチルアミノ)-スピロ-[イソベンゾフラン-1(3H)、9’-(9H)キサンテン]-3-オンや、2’-[(2-クロロフェニル)アミノ]-6’-(ジブチルアミノ)-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H)、9’-(9H)キサンテン]-3-オン及び3,6-ジフェニルアミノフルオランがより好ましい。アミノフタリド類としては、クリスタルバイオレットラクトンが特に好ましい。
【0052】
本発明の湿潤インジケータ用組成物が着色料としてロイコ染料を含む場合、ロイコ染料が界面活性剤と尿(水分)の存在下で発生したプロトンによって開環し易くなり、湿潤インジケータ用組成物が迅速に着色するようになるので、好ましい。ロイコ染料の含有量は、ロイコ染料の種類、所望の色相等に応じて適宜決定できる。
【0053】
pH指示薬とは、滴定において、色の変化や沈殿の生成など、直接目で見える変化で当量点を知るため、反応液に加える薬品をいう。pH指示薬は、酸塩基指示薬を使用する。pH指示薬の具体例には、フェノールフタレイン、メチルオレンジ、クロム酸カリウム、ブロモクレゾールグリーン、ブロモフェノールブルー等が挙げられる。
【0054】
着色料は、炭化水素油と飽和脂肪酸と湿潤感受性着色料組成物、即ち、成分(A)~(C)の総量100質量部に対して、0.05~5質量部、好ましくは0.1~3質量部、より好ましくは0.5~2質量部の量で湿潤インジケータ用組成物中に含まれる。湿潤インジケータ用組成物における着色料の含有量を上記範囲に調節することで、湿潤インジケータ用組成物の乾燥時と湿潤時との色差が大きくなり、変色を容易に知覚することができる。
【0055】
着色料は、界面活性剤と組み合わせて使用されることで、湿潤感受性着色料組成物になる。界面活性剤によって、着色料は他成分との相溶性が向上し、油性ゲルに内包されやすくなる。
【0056】
界面活性剤は、水分の存在下で着色料を変色させる機能を奏する物質である。例えば、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤は、水で濡れることによってプロトンを発生させ易く、着色料はプロトンを感受して変色するものが多いので、好ましい。
【0057】
アニオン性界面活性剤として、例えば、
ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート;
ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;
アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート;
ナトリウムスルホシノエート;
スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;
ナトリウムラウレート、トリエタールアミンオレエート、トリエタールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;
ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;
高アルキルナフタレンスルホン酸塩;
ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;
ジアルキルスルホコハク酸塩;
ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;
ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;
等を例示できる。
【0058】
ノニオン性界面活性剤として、例えば、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル;
ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;
ソルビタン脂肪酸エステル;
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;
グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド;
ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;
エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミド又は酸との縮合生成物;
等を例示できる。
【0059】
界面活性剤は、好ましくは、アニオン性界面活性剤であり、より好ましくは、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩であり、更に好ましくは、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネートである。界面活性剤としてナトリウムドデシルベンゼンスルホネートを用いると、着色料が炭化水素油に溶解し易くなり、さらに炭化水素油が水に接触しやすくなるのでプロトンが発生し易くなる。着色料にプロトンが供与し易くなるので、湿潤インジケータ用組成物の変色が迅速に進行する。
【0060】
界面活性剤は、炭化水素油と飽和脂肪酸と湿潤感受性着色料組成物、即ち、成分(A)~(C)の総量100質量部に対して、1~40質量部、好ましくは3~30質量部、より好ましくは4~22質量部の量で湿潤インジケータ用組成物中に含まれる。湿潤インジケータ用組成物における界面活性剤の含有量を上記範囲に調節することで、湿潤インジケータ用組成物の水分に対する感度が向上し、湿潤状態の表示が正確になる。
【0061】
<顔料>
本発明の湿潤インジケータ用組成物には、必要に応じて、顔料を使用してもよい。顔料には、無機顔料と有機顔料とが含まれる。無機顔料には有色無機顔料と体質顔料とが含まれる。
【0062】
有色無機顔料には、白色系の酸化チタン、鉛白(塩基性炭酸鉛)、亜鉛華(酸化亜鉛)、リトポン(硫酸バリウム/硫化亜鉛);
赤色系のベンガラ(酸化鉄(III))、鉛丹(酸化鉛)、銀朱(硫化水銀)、モリブデン赤;
黄色系の黄鉛(クロム酸鉛)、カドミウムイエロー(硫化カドミウム)、ジンクロメート(クロム酸亜鉛)、リサージ(一酸化鉛);
青色系の群青、紺青、コバルトブルー(アルミン酸コバルト);
黒色系では鉄黒(酸化鉄(II、III)、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0063】
体質顔料としては、バライト(硫酸バリウム)、石膏(含水硫酸カルシウム)、カオリン(白陶土)、シリカ(二酸化ケイ素)、ホワイトカーボン(沈降性シリカ)、 タルク(滑石)、炭酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0064】
有機顔料としては、レーキと有色有機顔料が挙げられる。レーキには2種類あり、ひとつは染付レーキで、体質顔料を染料で染色した顔料である。もうひとつのレーキは、染料を2価以上の金属塩と反応させて不溶にしたものであり、アゾ染料から作られるアゾレーキが挙げられる。
【0065】
有色有機顔料には、不溶性アゾ顔料、金属フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、バット顔料等が挙げられる。化学構造による染料の代表的な種類として示したアゾ染料、アントラキノン染料、インジゴ系染料の中で、水に不溶な物質が顔料として利用されている。また、金属フタロシアニン顔料は、青色から緑色の色調を持ち、耐光性に優れている。
【0066】
<粘着付与樹脂>
本発明の湿潤インジケータ用組成物には、必要に応じて、粘着付与樹脂を使用してもよい。粘着付与樹脂としては、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。
【0067】
粘着付与樹脂として、市販品を用いることができる。そのような市販品として例えば、荒川化学社製のKE-604(商品名)、アルコンP100(商品名)、アルコンM100(商品名)、Wuzhou Sun Shine Forestry & Chemicals Co社製のRHR―101HK、イーストマンケミカル社製のForal AX-E(商品名)、三井化学のFTR6100、ヤスハラケミカル社製のクリアロンM105(商品名)、エクソン社製のECR5600(商品名)、ECR179EX(商品名)、日本ゼオン社製のQuinton DX390(商品名)等を例示することができる。これらの市販の粘着付与樹脂は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0068】
界面活性剤と炭化水素油の相溶性を考慮すると、粘着付与樹脂としては、ロジン系粘着付与樹脂であるRHR―101HK、Foral AX-Eが特に好ましい。
【0069】
<その他の成分>
本発明の湿潤インジケータ用組成物は、上記以外の成分として、増粘剤(スチレン系ポリマー、オレフィン系ポリマー)、酸化防止剤(フェノール系、リン系、および硫黄系等)、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、非変色性染料、香料、殺菌剤、抗菌剤、忌避剤、スキンケア成分、非変色性顔料、滑剤及びフィラーの少なく1種の添加剤を含んでよい。
【0070】
<湿潤インジケータ用組成物の製造方法>
本発明の湿潤インジケータ用組成物は、上述の成分を必要に応じて加熱しつつ、混合することで調製される。各成分を均一になるまで混合し、室温まで冷却すると、湿潤インジケータ用組成物はゲル化して硬くなる。
例えば、湿潤インジケータ用組成物に含まれる全ての成分を容器に投入し、各成分を溶解させるか、均一に分散させ、均一な状態になるまで、加熱、及び攪拌する。加熱温度は、一般に50~250℃、好ましくは70~200℃、より好ましくは80~160℃の範囲で適宜調節される。加熱時間は、加熱温度を考慮して決定されるが、一般に5分~1時間、好ましくは10分~40分の間で調節される。
各成分を容器に順番に投入し、逐次混合することで均一な組成物を調製しても良い。
【0071】
<湿潤インジケータ>
湿潤インジケータ用組成物は、適当な形状に成形し、また、必要に応じて、湿潤インジケータ機能を損なわない成分、物質又は材料と組み合わせて、湿潤インジケータとして使用される。湿潤インジケータ用組成物は、フィルムや紙等の基材上へ塗工する等、単一材料として使用することができ、又は吸水性物質と組み合わせて使用することもできる。本発明の湿潤インジケータは、湿潤状態を検知する必要がある様々な物品に使用できるが、特に吸収性物品に使用することが好ましい。
【0072】
湿潤インジケータ用組成物と吸水性物質とを組み合わせる場合、その形態の例は、次の通りである。即ち、
湿潤インジケータ用組成物と、吸水性物質とを、隣接して位置させる、
湿潤インジケータ用組成物と、吸水性物質とを、混合させる、
湿潤インジケータ用組成物と、吸水性物質とを、加熱して相溶させる。
【0073】
上記吸水性物質としては、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂等公知の吸水性を有する樹脂、木材、紙、布等の公知の吸水性を有する物質でよく、また吸水性物質の形状は、シート状、塊状、粉粒体、繊維状等任意の形状でよい。
【0074】
<吸収性物品>
本発明の吸収性物品は、吸水性物質および本発明の湿潤インジケータ用組成物を有する。吸収性物品は、具体的には生理用ナプキン、尿取りライナー、産褥ショーツ、母乳パッド、汗脇パッド、紙オムツ、ペットシート、病院用ガウン及び手術用白衣等の、いわゆる衛生材料である。
【0075】
吸収性物品は、織布、不織布、ゴム、樹脂、紙類、ポリオレフィンフィルムからなる群から選択される少なくとも一種の部材と、本発明に係る湿潤インジケータで構成される。尚、ポリオレフィンフィルムは、耐久性及びコスト等の理由からポリエチレンフィルムが好ましい。
【0076】
なお、本発明の湿潤インジケータを紙オムツに使用する場合には、紙オムツ内に収納される吸水性樹脂の粉体または粒子の表面に付着させることが好ましい。また、紙オムツ以外にも、樹脂粒子、織布、不織布、樹脂シート、紙、樹脂成型品、金属、木材等の各種基材の表面に対して、本発明の湿潤インジケータを任意の手段によって適用することにより、各種基材表面に水分湿潤インジケータ作用を設けることができる。
【実施例
【0077】
以下、本発明を、更に詳細に、かつ、具体的に説明することを目的として、実施例を用いて説明するが、これら実施例は、本発明を何ら制限するものではない。但し、実施例16、19及び21は参考例である。
【0078】
実施例および比較例において、湿潤インジケータ用組成物に配合する成分を以下に示す。
<炭化水素油>
・パラフィンオイル(富士フィルム和光純薬社製の流動パラフィン(商品名))
・パラフィンオイル(出光興産社製のダフニーオイルKP-68(商品名))
・パラフィンオイル(出光興産社製のダイアナフレシスPW-32(商品名))
・ナフテンオイル(ペトロチャイナカンパニー社製のKNH4010(商品名))
・液状ポリブテン(JXTGエネルギー社製の日石ポリブテンHV-100(商品名))
【0079】
湿潤感受性着色料組成物を構成する着色料は以下のとおりである。
<着色料>
・pH指示薬(富士フィルム和光純薬社製のブロモクレゾールグリーン(商品名))
・ロイコ染料(富士フィルム和光純薬社製のクリスタルバイオレットラクトン(商品名))
・ロイコ染料(山田化学工業社製のBlue1(商品名))
・ロイコ染料(山田化学工業社製のBlue203(商品名))
【0080】
湿潤感受性着色料組成物を構成する界面活性剤は以下のとおりである。
<界面活性剤>
・アニオン性界面活性剤(関東化学社製のナトリウムドデシルベンゼンスルホネート(試薬名))
・アニオン性界面活性剤(SOLVAY社製のエアロゾールQT-100(商品名))
・ノニオン性界面活性剤(伊藤製油社製のSURFLIC-AQ250(商品名))
【0081】
<炭素数16以上の飽和脂肪酸もしくはその誘導体>
・炭素数16の飽和脂肪酸(富士フィルム和光純薬社製の16-ヒドロキシヘキサデカン酸(試薬名))
・炭素数36の飽和脂肪酸誘導体(富士フィルム和光純薬社製のステアリン酸マグネシウム(試薬名))
・炭素数18の飽和脂肪酸(富士フィルム和光純薬社製の12-ヒドロキシステアリン酸(試薬名))
・炭素数18の飽和脂肪酸誘導体(富士フィルム和光純薬社製のステアリン酸ナトリウム(試薬名))
【0082】
<粘着付与樹脂>
・水素添加型ロジン系粘着付与樹脂(Wuzhou Sun Shine Forestry & Chemicals Co社製のRHR―101HK(商品名))
・水素添加型ロジン系粘着付与樹脂(イーストマンケミカルジャパン社製のForal AX-E(商品名))
・水素添加型炭化水素系粘着付与樹脂(Tiajin Luhua Chemical社製のHD-1100(商品名))
・水素添加型炭化水素系粘着付与樹脂(荒川化学工業社製のアルコンP100(商品名))
・水素添加型炭化水素系粘着付与樹脂(エクソンモービル社製のECR5400(商品名))
・水素添加型炭化水素系粘着付与樹脂(三井化学社製のFTR-6100(商品名))
【0083】
上述の成分を表1~4に示される割合で配合し、攪拌・混合することで湿潤インジケータ用組成物を調製した。具体的には、各成分を70ml容器に入れ、グラスコルヒーターで130℃に加熱し、撹拌機を用い、攪拌速度300~500rpmで20分間、各成分の配合物を攪拌した。表1~4に示され湿潤インジケータ用組成物(配合)に関する数値は全て質量部(固形分)である。
【0084】
実施例及び比較例の湿潤インジケータ用組成物について、油性ゲルができているか否か外観を確認し、相分離、臭気、変色時間、色の滲み出しを評価した。評価の詳細を以下に示す。
【0085】
<外観>
実施例および比較例の湿潤インジケータ用組成物を室温で1日放置し、各組成物の外観を目視し、油性ゲルが生成しているか否かを確認した。
湿潤インジケータ用組成物がゲルか否かの判定は、組成物の流動性と、油成物質の滲み出しにより評価した。
組成物を容器に入れ、容器を傾けても組成物に流動性がなく、かつ、市販の油取り紙を組成物に押し当て、油の滲出が視認された場合に、組成物をゲルと判断した。評価結果は表1~4に示すとおりである。
【0086】
湿潤インジケータ用組成物の硬さについては、以下の基準で評価した。
23℃の環境で、実施例および比較例の湿潤インジケータ用組成物上に円筒状のSUSプローブを押し当てて1kgの荷重をかけ、8秒後、組成物に対するSUSプローブの侵入の程度を確認し、組成物の硬さを評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0087】
直径16mmのプローブの侵入が4mm以上: 非常に柔
直径16mmのプローブの侵入が4mm未満: 柔
直径5mmのプローブの侵入が4mm未満: 硬
直径3mmのプローブの侵入が4mm未満: 非常に硬
【0088】
<相分離>
実施例および比較例の湿潤インジケータ用組成物30gを評価試料とし、各試料30gを70mlガラス容器に入れ、100℃の加熱炉に静置した。試料を24時間熟成させた後、相分離の有無を目視で確認し、組成物が均一か不均一かを評価した。
【0089】
◎: 相分離は全く認められず、濁りも認められない
〇: 相分離は認められず均一であるが、僅かな濁りが認められる
△: 上部に僅かに透明な上澄みが認められる
×: 明らかな相分離が認められる
【0090】
<臭気>
実施例および比較例の湿潤インジケータ用組成物30gを評価試料とし、各試料30gを70mlガラス容器に入れてアルミ箔で蓋をした後、40℃の乾燥機で1時間静置した。その後、乾燥機から容器をとり出し、アルミ箔を外し、臭気を確認した。評価基準は以下のとおりである。
【0091】
◎: 臭気を感知しない
〇: わずかな臭気を感知する
△: 明らかな臭気を感知するが、不快ではない
×: 強く不快な臭気を感知する
【0092】
<変色試験>
実施例および比較例の湿潤インジケータ組成物のガラス瓶に入れ、ガラス瓶を100℃の乾燥機で均一な液状となるまで加熱した。次いで、各組成物の適量を隠ぺい率試験用紙(JISK-5600、TP技研株式会社製)に垂らし、その後、速やかにバーコーター(第一理科化学社製 No.12)で、厚さ約27.5μmの均一な膜を作製し、この塗膜の色を初期状態(試料)として記録した。尚、着色が認められない試料については、記号“-”を表に記載した。
【0093】
室温で30分以上試料を静置した後、テーブル上に置き、その試料の上にスプレーで水を噴霧した。その後、最終色、色相変化の度合い(色差)、色の滲み出し、最終色に変化するまでの時間を記録し、表1~4に記載した。
【0094】
<色差(色相変化の度合い)>
色相変化の評価基準は以下のとおりである。
【0095】
◎: スプレー前後で、非常に明確な色相の違いが認められる
〇: スプレー前後で、明確な色相の違いが認められる
△: スプレー前後で、僅かな色相の違いが認められる
×: スプレー前後で、色相の違いが認められない
【0096】
<色の滲み出し>
試料が最終色に変化した後、水が塗布された試料をテーブルから垂直に立てかけ、水分の垂れに伴う色の滲みだしを記録した。水により色が滲み出ると、オムツに塗布された湿潤インジケータの塗布パターンが崩れて視認性が悪くなるため、色の滲み出しが少ない方が湿潤インジケータ用組成物としては好ましい。評価基準は以下のとおりである。
【0097】
◎: 色の滲み出しは認められない
〇: 僅かな色の滲み出しが認められるが、塗布部分の形状は保持されている
△: 色の滲み出しが認められるが、塗布部分の形状は保持されている
×: 色の滲み出しが認められ、塗布部分の形状が崩れて、保持されていない
【0098】
<最終色になるまでの時間>
スプレーで水を噴射してから最終色になるまでの時間を測定し、表1~4に記載した。尚、色差が認められない組成物については、記号“-”を表に記載した。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
実施例のインジケータ用組成物は、表1~3に示されるように、各成分が分離することなく、強い臭気が発生することもない。さらに、実施例のインジケータ用組成物は、色の変化が明確で、初期から最終的な変色までの時間が短く、色が滲んだりすることもない。
【0104】
これに対し、比較例1~5の組成物は、初期の色相と、水で濡らした後の色相が変わらず、インジケータには不適である。比較例1~3に至っては、臭気を抑制することもできない。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の湿潤インジケータ用組成物は、オムツ、ナプキン等の吸収性物品に装着する湿潤インジケータを提供する。