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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】巻戻し装置及び巻線装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 51/10 20060101AFI20241009BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20241009BHJP
   H01F 41/096 20160101ALI20241009BHJP
【FI】
B65H51/10 A
H01F41/04 F
B65H51/10 Z
B65H51/10 C
H01F41/096
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020131493
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028209
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 由太
(72)【発明者】
【氏名】高島 正
(72)【発明者】
【氏名】林 弘樹
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-130595(JP,U)
【文献】特開平04-049171(JP,A)
【文献】特開平07-069530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 51/00-54/553
H01F 41/04
H01F 41/096
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に巻き付けられた線条材料を巻き戻すための巻戻し装置であって、
前記主軸に巻き付けられていない部分の線条材料を挟むように相対向する第一ローラ及び第二ローラを有するローラ対と、
前記線条材料を前記主軸から離れる方向に送るように、前記第一ローラと前記第二ローラとの少なくとも1つに駆動力をかける駆動部と、
前記駆動部により前記第一ローラ及び前記第二ローラとの少なくとも1つにかけられる駆動力を所定の大きさに制限する駆動力調整部とを有する、巻戻し装置。
【請求項2】
前記駆動力調整部は、前記駆動部と前記第一ローラ及び前記第二ローラの少なくとも1つとの間の駆動力伝達経路に設けられたトルクリミッタを有する、請求項1に記載の巻戻し装置。
【請求項3】
前記線条材料が前記ローラ対により挟まれている第一状態と、前記線条材料が前記第一ローラ及び前記第二ローラの少なくとも一方から離れている第二状態とが切り替わるように、前記第一ローラ及び前記第二ローラの少なくとも一方を変位させる変位機構をさらに備える、請求項1又は2に記載の巻戻し装置。
【請求項4】
前記変位機構及び前記駆動部の動作を制御する制御部をさらに備え、
前記線条材料の巻戻しが行われる場合に、前記制御部は、
前記主軸が停止した状態で、前記変位機構を動作させて前記第二状態から前記第一状態に切り替える第1ステップと、
前記第1ステップにより前記第一状態になった状態で、前記駆動部により前記第一ローラと前記第二ローラとの少なくとも1つに駆動力をかける第2ステップと、
前記第2ステップの後で、前記変位機構を動作させて前記第一状態から前記第二状態に切り替える第3ステップとを行う、請求項3に記載の巻戻し装置。
【請求項5】
主軸と、
前記主軸を正転させることで前記主軸に線条材料を巻き付ける巻回部と、
請求項1から4のいずれかに記載の巻戻し装置とを備え、
前記巻回部により前記主軸を逆転させている状態で、前記線条材料を前記主軸から離れる方向に送るように前記駆動部が前記第一ローラと前記第二ローラとの少なくとも1つに駆動力をかけるように構成されている、巻線装置。
【請求項6】
供給源から引き出された線条材料の張り具合を調整する線掛け部をさらに備え、
前記ローラ対は、前記線掛け部と前記供給源との間において前記線条材料を挟むように配置されている、請求項5に記載の巻線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、線条材料を主軸に巻き取る場合に用いられうる巻戻し装置及び巻線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、線条材料を主軸に巻き取ってコイル状にするための装置が用いられている。このような装置としては、例えば変圧器などに用いられる巻線を製造するために用いられる、巻線装置がある(例えば、下記特許文献1参照)。このような巻線装置は、主軸とともに回転する巻枠に対してトラバース機構を用いて線条材料を送り出すことができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001‐267169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、線条材料を主軸に取り付けたボビンなど(以下、単に主軸ということもある)に巻き取る場合において、いったん主軸に巻いた線条材料を部分的に巻き戻す必要が生じる場合がある。しかしながら、巻き戻された線条材料の行き場が適切に確保されなければならないという課題がある。例えば、単に主軸を逆転させて線条材料を巻き戻した場合において、巻き戻された線条材料が主軸の周辺で絡まったり折れ曲がったりすると、当該線条材料が再利用できなくなるなどの不都合が発生する可能性がある。
【0005】
このような課題に対応するためには、例えば、線条材料を巻き戻す際に、主軸の周辺などに作業者を配置し、巻き戻された線条材料が絡まないように手作業で捌くようにすることが考えられる。しかしながら、このような人手による方法では、人的コストが増大するという問題点がある。
【0006】
このような課題の具体的な一例は、次のようである。例えば、銅線を整列巻きにより主軸に巻き付ける一次コイル製作工程において、銅線の巻回途中で線が交差したり隣の線に乗り上げたりすることが原因で整列巻きが崩れてしまうことがある。整列巻きの崩れは、コイルの電気的特性にばらつきが生じたり、線占有率が低くなって省スペース化を実現できなかったりという不具合が生じたりし、巻線品質の確保の観点から好ましくない。整列巻き品質の確保のためには、ターン数毎に整列巻きの状態が適正か否かを確認し、異常が見受けられる場合には、異常が見受けられるターンまでボビンを逆転させて巻線の一部をほぐし、異常箇所を修正した上で再度巻き直しを行わなければならない。しかしながら、このようにして主軸から巻き戻される1層分の銅線は、再度まき直しを行うまで、絡まったり折れ曲がったりしないように維持されなけらればならない。従来、このように銅線を維持するためには、巻戻しの最中に常に作業者が装置の傍に張り付き、銅線のテンションを調整するなど、銅線を取り回す作業を行う必要があった。
【0007】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、主軸に巻いた線条材料を適切に巻き戻すことができる巻戻し装置及び巻線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第一の発明の巻戻し装置は、主軸に巻き付けられた線条材料を巻き戻すための巻戻し装置であって、主軸に巻き付けられていない部分の線条材料を挟むように相対向する第一ローラ及び第二ローラを有するローラ対と、線条材料を主軸から離れる方向に送るように、第一ローラと第二ローラとの少なくとも1つに駆動力をかける駆動部と、駆動部により第一ローラ及び第二ローラとの少なくとも1つにかけられる駆動力を調整する駆動力調整部とを有する、巻戻し装置である。
【0009】
かかる構成により、主軸に巻いた線条材料を適切に巻き戻すことができる。
【0010】
また、本第二の発明の巻戻し装置は、第一の発明に対して、駆動力調整部は、駆動部と第一ローラ及び第二ローラの少なくとも1つとの間の駆動力伝達経路に設けられたトルクリミッタを有する、巻戻し装置である。
【0011】
かかる構成により、トルクリミッタにより駆動部からローラにかけられる駆動力を制限して巻戻し装置の構成部材に過大な力がかからないようにすることができる。
【0012】
また、本第三の発明の巻戻し装置は、第一又は二の発明に対して、線条材料がローラ対により挟まれている第一状態と、線条材料が第一ローラ及び第二ローラの少なくとも一方から離れている第二状態とが切り替わるように、第一ローラ及び第二ローラの少なくとも一方を変位させる変位機構をさらに備える、巻戻し装置である。
【0013】
かかる構成により、必要な場合に第一状態にして線条材料を適切に巻き戻すことができる。
【0014】
また、本第四の発明の巻戻し装置は、第三の発明に対して、変位機構及び駆動部の動作を制御する制御部をさらに備え、線条材料の巻戻しが行われる場合に、制御部は、主軸が停止した状態で、変位機構を動作させて第二状態から第一状態に切り替える第1ステップと、第1ステップにより第一状態になった状態で、駆動部により第一ローラと第二ローラとの少なくとも1つに駆動力をかける第2ステップと、第2ステップの後で、変位機構を動作させて第一状態から第二状態に切り替える第3ステップとを行う、巻戻し装置である。
【0015】
かかる構成により、必要な場合に第一状態にして線条材料を適切に巻き戻すことができる。
【0016】
また、本第五の発明の巻線装置は、第一から四のいずれかの発明に対して、主軸と、主軸を正転させることで主軸に線条材料を巻き付ける主軸駆動部と、巻戻し装置とを備え、主軸駆動部により主軸を逆転させている状態で、線条材料を主軸から離れる方向に送るように駆動部が第一ローラと第二ローラとの少なくとも1つに駆動力をかけるように構成されている、巻線装置である。
【0017】
かかる構成により、主軸に巻いた線条材料を適切に巻き戻すことができる。
【0018】
また、本第六の発明の巻線装置は、第五の発明に対して、供給源から引き出された線条材料の張り具合を調整する線掛け部をさらに備え、ローラ対は、線掛け部と供給源との間において線条材料を挟むように配置されている、巻線装置である。
【0019】
かかる構成により、主軸に巻いた線条材料を供給源に向けて送ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明による巻戻し装置によれば、主軸に巻いた線条材料を適切に巻き戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係る巻線装置の正面図
図2】同巻線装置の平面図
図3】同巻戻し装置を示す正面図
図4】同巻戻し装置を示す側面図
図5】第一状態である同巻戻し装置を示す平面図
図6】第二状態である同巻戻し装置を示す平面図
図7】同巻線装置の動作を示すフローチャート
図8】同巻線装置が行う巻戻し動作の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、巻戻し装置等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0023】
なお、以下において、巻線装置の巻回部の主軸の回転軸を主軸ということがあり、当該回転軸に沿う方向を「軸方向(トラバース方向ということもある)」、回転軸に直交する方向を「径方向」、回転軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、径方向のうち水平面に垂直な方向を「上下方向(図1における上側が「上」)」、とそれぞれ称することがある。また、主軸に巻き付けられる線条材料の搬送方向に関し、線条材料の供給源から主軸に向かう搬送方向を主搬送方向と称し、主搬送方向とは反対の搬送方向を逆搬送方向と称することがある。また、線条材料の搬送経路上の一の基点に対して、主搬送方向において下流側にある点を「後段」と称し、上流側にある点を「前段」と称することがある。なお、これらの呼び方は、実施の形態における巻線装置又は巻戻し装置自体の構成を説明の便宜のために定義したものにすぎず、本発明に係る巻戻し装置や巻線装置の使用態様などについて、何ら限定するものではない。
【0024】
(実施の形態)
【0025】
巻線装置は、巻枠が取り付けられている主軸を回転させるとともに、主軸に平行なトラバース方向において、巻枠と線条材料を巻枠に送り出すヘッド部との相対的な位置関係を変化させることにより、巻枠に線条材料を巻き付けるように構成されている。本実施の形態において、巻線装置は、主軸に巻き付けられた線条材料を巻き戻すための巻戻し装置を備えているものである。巻線装置は、主軸を逆転させながら巻戻し装置が線条材料を巻き戻すことができるように構成されている。
【0026】
本実施の形態に係る巻戻し装置は、供給源から引き出された線条材料を掛ける線掛け部の前段に配置されている。巻戻し装置は、線条材料を挟むローラ対により線条材料を主軸から離れるように巻き戻すことができる。巻戻し装置はローラの駆動力を調整可能に構成されており、例えば、駆動力伝達回路に設けられたトルクリミッタによって駆動力を調整する機構が構成されている。本実施の形態において、巻戻し装置は、線条材料がローラ対により挟まれている第一状態と、線条材料Lが第一ローラ及び第二ローラの少なくとも一方から離れている第二状態とが切り替わるように、第一ローラ及び第二ローラの少なくとも一方を変位させる。より具体的には、例えば、主軸が停止してから第一状態として、主軸を逆転させながら駆動部によりローラ対を回転させてから、第二状態に戻すことが行われる。以下、このように構成されている巻戻し装置を備えた巻線装置について説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係る巻線装置1の正面図である。図2は、同巻線装置1の平面図である。
【0028】
図1において、前から見た巻線装置1が示されている。図1及び図2の右端に設けられた供給源99から、巻線装置1に、線条材料Lが巻線装置1に供給されるが、その部位の図示は簡略化されている。なお、線条材料Lとしては、絶縁被膜を有する銅線が用いられるが、これに限られるものではない。例えば、その他の導線であってもよいし、金属板など帯状の材料であってもよい。
【0029】
図1及び図2に示されるように、巻線装置1は、大まかに、制御部2と、操作入力部6と、巻回部10と、巻戻し装置30と、線掛け部50と、トラバース部60とを備える。
【0030】
巻回部10は、線条材料を巻き付けるための巻枠21を回転させて線条材料Lを巻き上げる(巻回する、巻き回すなどということもある。)部位である。巻戻し装置30は、後述のように、主軸11に巻き付けられた線条材料Lの一部を巻き戻すための部位である。トラバース部60は、巻枠21に線条材料Lを送り出す部位であって、巻回部10に連動して動作する。
【0031】
制御部2は、後述のように、操作入力部6により受け付けられた作業者による操作やその他の取得した情報に基づいて、巻線装置1の各部の動作を制御する。制御部2は、本実施の形態において、巻戻し装置30の動作を制御するように構成されている。この点において、制御部2と巻戻し装置30のその他のハードウェアとで巻戻し装置30が構成されていると捉えたり、巻戻し装置30は制御部2を有していると捉えたりしてもよい。
【0032】
操作入力部6は、例えば種々の操作ボタンやスイッチ等が配置された操作パネルであり、作業者による操作が入力される部位である。なお、操作入力部6は、テンキーやキーボードやマウスやタッチパネル等を利用して構成されているものなど、何でもよい。操作入力部6に入力された操作は、例えば、制御部2により受け付けられる。なお、巻線装置1に通信可能に接続された他の装置において受け付けられた操作に基づく信号等を受信することにより、制御部2が当該操作を受け付けることができるように構成されていてもよい。
【0033】
制御部2は、格納部3を備える。
【0034】
格納部3は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。格納部3には、所定の設定情報が格納されている。所定の設定情報は、例えば、一の巻線20を製造する場合の巻回部10及びトラバース部60のそれぞれを同期させてシーケンス制御を行うための制御プログラムであるが、これに限られない。所定の設定情報は、例えば、一の巻線20を製造する場合における、巻戻し装置30を含む巻線装置1の各部を同期させてシーケンス制御を行うための制御プログラムであってもよい。また、制御プログラムにより利用されるパラメータ(例えば、巻線の回転数(巻数)や、線条材料Lの径寸法や、後述のようなヘッド部90を変位させる位置や主軸の回転角などであるが、これに限られない)等が設定情報として格納されていてもよい。
【0035】
なお、格納部3に設定情報が記憶される過程は問わない。例えば、記録媒体を介して設定情報が格納部3で記憶されるようになってもよく、通信回線等を介して送信された設定情報が格納部3で記憶されるようになってもよく、あるいは、入力デバイスを介して入力された設定情報が格納部3で記憶されるようになってもよい。
【0036】
制御部2は、例えば、プログラマブルロジックコントローラであるが、これに限られない。制御部2は、その他のMPUやメモリ等から実現されうるコンピュータ等であってもよい。制御部2の処理手順は、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されていてもよいし、ハードウェア(専用回路)で実現されていてもよい。
【0037】
制御部2は、例えば、格納部3から読み出した設定情報に基づいてシーケンス制御を行うことにより、主軸11を回転させる制御や、巻枠21とヘッド部90との相対的な位置関係を変化させる制御や、後述のように、巻戻し装置30と主軸11とを動作させて、線条材料Lの巻戻し動作を実行させる制御などを行う。
【0038】
巻回部10は、主軸11を備える。
【0039】
本実施の形態において、主軸11は、後端部において巻回部10の本体に支持されている。主軸11は、前方に突出する片持ち梁状に構成されている。主軸11は、例えば、巻回部10に設けられているモータ(図示せず)の駆動力により、径方向に回転する。本実施の形態においては、主軸11は、線条材料Lを巻き上げる際には、図1に矢印R1で示される方向に回転するが、これに限られない。なお、線条材料Lを巻き上げる際の主軸11の回転方向を正転と呼ぶことがあり、これと逆の方向となる主軸11の回転方向を逆転と呼ぶことがある。
【0040】
主軸11には、巻線20の巻枠21が取り付けられる。巻枠21は、線条材料Lが巻き付けられる部分であり、例えば樹脂等の絶縁体で構成されている。巻枠21は、主軸11の前方から主軸11の前端部近傍に配置された状態で、主軸11に対して回転しないようにして固定される。すなわち、巻枠21は、主軸11と共に回転する。なお、2以上の巻枠21が互いに同軸に並んで主軸11に取り付けられており、2以上の巻線20が同時に製造されるようにしてもよい。
【0041】
トラバース部60は、移動フレーム61と、ボールねじ63と、支持台65と、ヘッド部90とを備える。トラバース部60は、巻枠21に巻き上げられる線条材料Lをヘッド部90に向けて導く。本実施の形態において、トラバース部60は、トラバース方向において巻枠21に対するヘッド部90を変位させる。トラバース部60の動作は、制御部2によって、巻回部10の動作と同期して行われるように制御される。
【0042】
移動フレーム61は、例えば、略水平の板状部を有している。移動フレーム61は、支持台65の上方に配置されており、支持台65に対してトラバース方向に変位可能である。移動フレーム61は、レールを介して、支持台65に対してトラバース方向にスライド可能である。本実施の形態においては、トラバース方向が移動方向となるように配置されたボールねじ63によって、移動フレーム61がトラバース方向に変位するように構成されている。なお、ボールねじ63は、制御部2による制御動作(駆動電流の供給など)に従って動作する図示しないモータ等により駆動されるが、これに限られない。
【0043】
移動フレーム61には、ヘッド部90が、線条材料Lの搬送経路に沿って配置されている。ヘッド部90は、移動フレーム61とともに、トラバース方向に変位可能に配置されている。すなわち、トラバース部60は、巻回部10に対して、ヘッド部90をトラバース方向に変位させることができるように構成されている。
【0044】
ヘッド部90は、ヘッドローラ91と、アクチュエータ95とを備える。ヘッドローラ91は、線条材料Lを巻枠21に向けて送り出す。
【0045】
なお、トラバース部60には、例えば、線条材料Lの一部分の被膜を剥離する被膜除去装置や、線条材料Lを切断するための切断装置など、他の装置がさらに設けられていてもよい。
【0046】
線掛け部50は、供給源99から引き出された線条材料Lが掛けられる部位である。線掛け部50は、下流において主軸に巻き取られる線条材料Lの張り具合(線テンションということがある)を調整する機構である。本実施の形態において、線掛け部50は、移動フレーム61と供給源99との間に配置されている。本実施の形態においては、線掛け部50は、トラバース部60の前段に配置されている。線掛け部50は、例えば、供給源99から引き出される線条材料Lについて接触するように配置された複数のローラを有している。また、線掛け部50には、テンショナ55が設けられている。これらのローラやテンショナ55により、線掛け部50とトラバース部60との間において線条材料Lが適切な撓み具合(テンション)を保ち、安定して線条材料Lが搬送されるように構成されている。
【0047】
なお、線掛け部50は、移動フレーム61上など、トラバース部60に設けられていてもよい。
【0048】
供給源99は、例えば、巻線20の材料としての線条材料Lがスプールに巻き付けられたものや、線条材料Lがコイラーなどにより集積されてなる束である。なお、供給源99は、これに限られず、巻線装置1に対して線条材料Lを供給可能に構成された他のシステム又は装置等であってもよい。
【0049】
巻戻し装置30は、線条材料Lを巻戻し、上流に向けて送ることができる。本実施の形態において、巻戻し装置30は、線掛け部50の前段に設けられている。すなわち、巻戻し装置30は、線掛け部50と供給源99との間に配置されている。
【0050】
図3は、同巻戻し装置30を示す正面図である。図4は、同巻戻し装置30を示す側面図である。図5は、第一状態である同巻戻し装置30を示す平面図である。図6は、第二状態である同巻戻し装置30を示す平面図である。
【0051】
図3及び図4において、線条材料Lの搬送経路が二点鎖線(太線)で示されている。また、図3及び図4において、線掛け部50は二点鎖線で示されている。
【0052】
巻戻し装置30は、ローラ対40と、駆動部31と、駆動力調整部32と、第一伝達機構34と、第二伝達機構35と、2つのシャフト36と、変位機構38とを備える。なお、上述のように、巻戻し装置30は、これらの各部のほか、制御部2をさらに備えると解することもできる。
【0053】
ローラ対40は、第一ローラ41及び第二ローラ42を有している。第一ローラ41及び第二ローラ42は、それぞれ、互いに略平行な回転軸を中心に回転可能に配置されている。第一ローラ41及び第二ローラ42は、線掛け部50と供給源99との間において、線条材料Lを挟むように、すなわち線条材料Lが通る経路を挟むように、配置されている。換言すると、ローラ対40は、主軸11に巻き付けられていない部分の線条材料Lを挟むように相対向する第一ローラ41及び第二ローラ42を有する。
【0054】
本実施の形態において、第一ローラ41及び第二ローラ42は、それぞれ、例えば、ウレタンローラやその他の樹脂製のローラ表面を有するローラである。なお、これらとは異なる素材のローラであってもよい。
【0055】
本実施の形態において、第一ローラ41及び第二ローラ42は、それぞれ、回転軸を保持する支持部39によって支持されている。
【0056】
駆動部31は、線条材料Lを主軸11から離れる方向に送るように、第一ローラ41と第二ローラ42との少なくとも1つに駆動力をかける。本実施の形態においては、後述のように、第一ローラ41及び第二ローラ42は、共に駆動部31の駆動力により駆動されるように構成されている。
【0057】
本実施の形態において、駆動部31は、モータである。モータの形式は問わない。駆動部31は、例えば、ステッピングモータや、エンコーダ付きのモータなど、回転速度や回転量を管理できるように構成されたモータが好ましいが、これに限られない。本実施の形態において、駆動部31は、例えばインナーロータ型のモータである。駆動部31は、モータとは別個に配置されたエンコーダ等の回転量検知手段を有するものであってもよい。
【0058】
駆動力調整部32は、駆動部31により第一ローラ41及び第二ローラ42との少なくとも1つにかけられる駆動力を調整する。駆動力を調整するとは、駆動力を変化させると言い替えてもよい。本実施の形態においては、駆動力調整部32は、第一ローラ41及び第二ローラ42との少なくとも1つにかけられる駆動力を、所定の大きさに制限する。
【0059】
本実施の形態において、駆動力調整部32は、例えば、駆動部31と第一ローラ41及び第二ローラ42の少なくとも1つとの間の駆動力伝達経路に設けられたトルクリミッタである。駆動力調整部32は、例えば、駆動部31の出力軸に取り付けられている。
【0060】
本実施の形態において、駆動部31からローラ対40までの駆動力伝達経路には、駆動力調整部32のほか、例えば、第一伝達機構34と、第二伝達機構35と、2つのシャフト36とが設けられている。
【0061】
第一伝達機構34は、駆動部31の出力軸に駆動力調整部32を介して接続された前段プーリ34bと、その上方に設けられている後段プーリ34cと、2つのプーリ34b,34cに掛けられて駆動力を伝達する歯付ベルト(図示せず)などで構成されている。
【0062】
第二伝達機構35は、ギア比が1となるように互いに噛み合う2つの歯車などで構成されている。2つの歯車のうち一方は、後段プーリ34cの回転軸に接続されており、後段プーリ34cと共に回転するようになっている。
【0063】
2つのシャフト36のそれぞれの第一の端部は、2つの歯車の回転軸のそれぞれに接続されている。また、2つのシャフト36のそれぞれの第二の端部は、各ローラ41,42の回転軸に接続されている。
【0064】
ここで、本実施の形態において、2つのシャフト36のそれぞれは、2つの自在継手を有するものである。すなわち、各シャフト36は、第二伝達機構35の歯車に接続された部分とローラ41,42に接続された部分とが互いに芯ずれとなる状態であっても、歯車からローラ41,42へと駆動力を伝達可能に構成されている。なお、各シャフト36の継手の種類や数はこれに限られない。例えば、等速ジョイントやその他の軸継手等が用いられていてもよい。また、一方のシャフト36についてのみ、自在継手が設けられていてもよい。この場合、後述のように変位可能なローラに接続されているシャフト36について継手を設けるようにすればよい。
【0065】
本実施の形態においては、このような駆動力伝達経路により、駆動部31の駆動力が、第一ローラ41と第二ローラ42とのそれぞれに伝達され、第一ローラ41と第二ローラ42とが回転可能となっている。駆動部31が駆動されると、第一ローラ41と第二ローラ42とは互いに異なる回転方向に、互いに等しい角速度で回転する。すなわち、正面から見て、第一ローラ41が反時計回りに回転する場合には、第二ローラ42は時計回りに回転する。これにより、ローラ対40で挟まれる線条材料Lが、ローラ対40の回転に伴って、上流側に向けて搬送可能となっている。
【0066】
第一伝達機構34が設けられていることにより、駆動部31からローラ41までを略同一平面内に配置せずとも、巻戻し装置30を構成可能となっている。トラバース方向における巻戻し装置30の寸法を小さくすることができ、巻線装置1を小型化することができる。
【0067】
なお、駆動力伝達経路の構成は、上述のものに限られない。例えば、第一伝達機構34は、複数の歯車を用いて構成されていてもよい。また、駆動力調整部32は、第一伝達機構34と第二伝達機構35との間に挿入されていてもよいし、各シャフト36の部分に挿入されていてもよい。第一伝達機構34が用いられず、駆動部31の出力軸と第二伝達機構35の一つの歯車とが略同軸に配置されていてもよい。
【0068】
また、第一ローラ41を駆動させる駆動部と、第二ローラ42を駆動させる駆動部とがそれぞれ設けられていてもよい。この場合、各駆動部からの駆動力伝達経路に駆動力調整部32としてトルクリミッタ等が設けられていればよい。
【0069】
変位機構38は、第一ローラ41及び第二ローラ42の少なくとも一方を変位させる。本実施の形態においては、第一ローラ41を変位させる変位機構38と、第二ローラ42を変位させる変位機構38との2つの変位機構38が設けられている。各変位機構38は、ローラ41,42を支持する支持部39に接続されている。各変位機構38は、支持部39を互いに近づけたり離したりする方向に、支持部39を変位させることができる。すなわち、第一ローラ41が第二ローラ42から離れたり近づいたりする方向に、変位機構38は、ローラ41,42の少なくとも一方を変位させるように構成されている。
【0070】
本実施の形態において、変位機構38は、例えば、ローラ41,42の回転軸を支持する一方の支持部39を他方に近づけたり離したりする方向に変位させるように構成されたリニアアクチュエータである。リニアアクチュエータとしては、例えば、エアシリンダを用いることができるが、油圧式シリンダや、ソレノイドを用いたものであってもよい。また、変位機構38は、リニアアクチュエータに限られず、アクチュエータにより一以上の部材を変位させたり姿勢を変更させたりすることにより、支持部39がそれに連動して変位するように構成されているものであってもよい。
【0071】
なお、本実施の形態において、ローラ対40の供給源99側の部位には、異物除去部材48が設けられている。異物除去部材48は、例えば、供給源99から引き出される線条材料Lに接触するように設けられたスポンジ部材等である。異物除去部材48は、供給源99から引き出される線条材料Lに付着している異物を除去した上で、当該線条材料が巻線装置1に送られるようにする。
【0072】
ここで、変位機構38が第一ローラ41及び第二ローラ42の少なくとも一方を変位させることにより、線条材料がローラ対40により挟まれている第一状態と、線条材料が第一ローラ41及び第二ローラ42の少なくとも一方から離れている第二状態とが切り替わるように構成されている。本実施の形態において、2つの変位機構38は、第一ローラ41と第二ローラ42との両方を互いに近づいたり離れたりする様に変位させることにより、第一状態と第二状態とが切り替わるようになっている。また、本実施の形態においては、第二状態である場合に線条材料Lがいずれのローラ41,42にも接しないようになっているが、これに限られない。
【0073】
本実施の形態においては、図5に示されるように、第一状態においては、2つのローラ41,42の外周面同士が略接触する程度に、2つのローラ41,42間の距離(例えば、回転軸間の距離D1)が設定されている。他方、図6に示されるように、第二状態においては、2つのローラ41,42間を通る線条材料Lに2つのローラ41,42の外周面がいずれも接触しない程度に、2つのローラ41,42間の距離(例えば、回転軸間の距離D2)が設定されている。換言すると、距離D2から距離D1を減じた値は、線条材料Lの径よりも十分大きくなるように設定されている。
【0074】
なお、本実施の形態においては、駆動力伝達経路は、第一状態と第二状態とが切り替えられても第一ローラ41及び第二ローラ42のそれぞれへの駆動力を伝達可能な状態のままとなるように構成されている。すなわち、駆動力伝達経路に自在継手を有するシャフト36が設けられていることにより、第一状態と第二状態とで第二伝達機構35の歯車に対する各ローラ41,42の位置が変化しても、各ローラ41,42は駆動部31からの駆動力により回転可能となっている。なお、これに限られず、第一状態では駆動部31からの駆動力がローラ41,42に伝達されるが、第二状態ではローラ41,42のいずれか一方又は両方に駆動力が伝達されないようにしてもよい。例えば、第一状態では互いに噛み合う2つの歯車が第二状態では噛み合わなくなるように、これらの歯車の位置が変位機構38の動作に伴って変位するようにしてもよい。
【0075】
巻線装置1は、このような巻戻し装置30を有していることにより、制御部2による制御動作によって以下に説明するような動作を実行可能である。
【0076】
図7は、同巻線装置1の動作を示すフローチャートである。
【0077】
(ステップS1)制御部2は、巻回部10により主軸11を正転させることで主軸11に線条材料Lを巻き付ける(巻回動作)。
【0078】
(ステップS2)制御部2は、巻回されている巻線20について、不具合が発生したか否かを判断する。制御部2は、例えば、巻線20の巻き上げ動作を監視しているオペレータによる所定の操作入力が行われた場合に、不具合が発生したと判断するようにすればよい。また、制御部2は、巻線装置1に設けられている各種のセンサ(図示せず)により所定の状態が検知された場合に、不具合が発生したと判断するようにしてもよい。なお、不具合とは、例えば、整列巻きにおける線条材料Lの乗り上げなどであるが、これに限られない。不具合が発生したと判断された場合はステップS3に進み、そうでない場合はステップS4に進む。
【0079】
(ステップS3)制御部2は、巻戻し動作を実行する。これにより、線条材料Lの巻戻しが行われる。巻戻し動作は、後述のように、巻回部10により主軸11を逆転させている状態で、線条材料Lを主軸11から離れる方向に送るように駆動部31が第一ローラ41と第二ローラ42との少なくとも1つに駆動力をかける動作を含むものである。制御部2は、巻戻し動作が終了すると、ステップS1に戻る。
【0080】
(ステップS4)制御部2は、巻回が完了したか否かを判断する。例えば、1つの巻線20を巻き上げるための処理のシーケンスが全て完了した場合に、制御部2は、巻回が完了したと判断することができる。巻回が完了したと判断した場合は一連の処理を終了し、そうでない場合はステップS1に戻る。
【0081】
図8は、同巻線装置1が行う巻戻し動作の一例を示すフローチャートである。
【0082】
本実施の形態において、制御部2は、巻戻し動作を行うとき、主軸11が停止した状態で(完全に停止した状態ではなくてもよい)、変位機構38を動作させて第二状態から第一状態に切り替える第1ステップと、第1ステップにより第一状態になった状態で、駆動部31により第一ローラ41と第二ローラ42との少なくとも1つに駆動力をかける第2ステップと、第2ステップの後で、変位機構38を動作させて第一状態から第二状態に切り替える第3ステップとを行う。このような動作について具体的な一例を説明すると、以下のようである。
【0083】
(ステップS11)制御部2は、主軸11を停止させる。
【0084】
(ステップS12)制御部2は、変位機構38を動作させて、ローラ対40を第二状態から第一状態にセットする。これにより、ローラ対40間にある線条材料Lがローラ41,42に挟まれる。
【0085】
(ステップS13)制御部2は、主軸11を逆転させる。
【0086】
(ステップS14)制御部2は、駆動部31を駆動させる。これにより、ローラ対40の回転が開始され、線条材料Lが供給源99に向けて送られる。このとき、駆動部31の回転速度は、主軸11の逆転する速度に対応する速度であることが望ましい。より具体的には、巻戻し装置30による線条材料Lの送り量が、主軸11の逆転により巻線20から巻き戻される線条材料Lの上流側への送り量と同じかわずかに少ない状態であるようにすることが望ましい。なお、制御部2は、駆動部31の回転速度及び主軸11の逆転する速度の少なくとも一方を、巻き上げ途中の巻線20の巻き上げが完了した層数などに対応する速度となるように制御するようにしてもよい。
【0087】
(ステップS15)制御部2は、主軸11の逆転と駆動部31の駆動とを、所定の巻戻し量だけ行った場合に、主軸11を停止させる。なお、所定の巻戻し量とは、例えば、巻線20の一層分に対応する量であるが、これに限られない。
【0088】
(ステップS16)制御部2は、駆動部31の駆動を停止させる。これにより、ローラ対40が停止する。
【0089】
(ステップS17)制御部2は、変位機構38を動作させて、ローラ対40を第一状態から第二状態にセットする。これにより、ローラ対40間にある線条材料Lが、ローラ41,42から離れる。
【0090】
(ステップS18)制御部2は、主軸11の正転を開始させ、巻線20の巻回を再開させる。その後、図7に示される処理に戻る。
【0091】
なお、フローチャートにおける各処理の順番はこれに限られない。例えば、ステップS12、ステップS13、及びステップS14は、互いに入れ替わったりほぼ同時に行われるようにしてもよい。例えば、第二状態から第一状態に完全に切り替わるまでに、ローラ対40が駆動されていてもよいし、駆動部31の駆動が開始されてから主軸11の逆転が開始されてもよい。また、例えば、ステップS15、ステップS16、ステップS17、及びステップS18は、互いに入れ替わったりほぼ同時に行われるようにしてもよい。例えば、第一状態から第二状態に完全に切り替わるまでにもローラ対40が駆動されていてもよいし、主軸11の正転が先に開始されてから、ステップS16やステップS17の動作などが行われるようにしてもよい。これらの各動作を行うタイミングは、巻線装置1内を通る線条材料Lのたわみ量が適切な状態になるように設定されていることが好ましい。これにより、巻戻し中に線条材料Lが暴れることなどを防止することができ、また、巻戻しから巻回再開への移行をスムーズに行ったりすることができる。
【0092】
以上説明したように、本実施の形態において、巻線装置1は、巻戻し装置30を有しているので、巻線20の巻き上げ途中に巻戻しを行う必要が発生した場合にも、巻戻し装置30により主軸11に巻いた線条材料Lを適切に巻き戻すことができる。巻戻し装置30は、線条材料Lを供給源99に送るので、主軸11から巻き戻された線条材料Lが装置各部に絡まったりすることを防止することができる。従来、巻戻しを行うために、線条材料Lを捌くために人手を要していたところ、このような人手は不要となり、省力化が可能となる。
【0093】
巻戻し装置30には、駆動力調整部32が設けられている。したがって、巻戻し中に線条材料Lのテンションが大きくなるなどしても、適切にローラ41,42にかかる駆動力が調整されるので、線条材料Lの破損や、巻戻し装置30の故障等が発生することを防止することができる。上述の実施の形態においては、例えば線掛け部50とトラバース部60との間において線条材料Lが直線状に張るような場合には、駆動力調整部32によってそれ以上の巻き戻すための力が線条材料Lにかからず、線条材料Lのテンションが適切な強さになるようになる。換言すると、線掛け部50とトラバース部60との間において線条材料Lが適切にたわんだ状態が維持される。
【0094】
なお、上述の実施の形態において、駆動力調整部32は、例えばトルクリミッタであるが、これに限られない。例えば、モータである駆動部31の駆動トルクを調整可能に構成された、モータの駆動回路やその制御回路などにより駆動力調整部が構成されていてもよい。この場合、駆動力調整部としての特別なハードウェアを用いなくてもよい。また、トルクを検知するトルク検知手段(例えば、トルクセンサ)と、トルク検知手段により検知されたトルクの大きさに応じて動作する電磁クラッチなどとを組み合わせて駆動力調整部が構成されていてもよい。この場合、電磁クラッチなどを駆動部31からローラ41,42への駆動力伝達経路に設けるようにすればよい。
【0095】
駆動力調整部32によりローラ41,42を自在に回転可能にすることができる場合や、主軸11の正転時に駆動部31による駆動力が線条材料Lにかからないように駆動部31を制御するようにした場合には、ローラ対40が常に第一状態となるように構成してもよい。この場合、変位機構38は設けられていなくてもよい。
【0096】
(その他)
【0097】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものである。
【0098】
上述の実施の形態において、各変形例を適宜組み合わせてもよい。また、上述の実施の形態のうち、一部の構成要素や機能が省略されていてもよい。
【0099】
巻線装置は、例えば1つの主軸に設けられた2以上の巻枠のそれぞれに、それぞれ供給源から供給された線条材料を巻き付けることができるように構成されていてもよい。この場合、各供給源から供給される線条材料の搬送経路上においてローラ対で線条材料を挟むことができるように、2以上の巻戻し装置が配置されていればよい。これにより、2以上の巻線のいずれか一つにおいて、線条材料の巻き戻しを要する状態となっても、2以上の巻線に巻かれた線条材料のそれぞれを、絡まることなく適切に巻き戻すことができる。例えば、巻線装置は、主軸を回転させることで2つの巻枠を共に回転させながら、2つの供給源のそれぞれから供給される線条材料を各巻枠に巻き付けて、2つの巻線を製造することができるように構成されていてもよい。この場合、2本の線条材料のそれぞれの搬送経路上においてローラ対で線条材料を挟むことができるように、2つの巻戻し装置が配置されていればよい。
【0100】
巻戻し装置は、必ずしも巻線装置に用いられるものに限られない。主軸に線状材料を巻き付けた構成を有する種々の装置において、主軸に巻き付けられた線条材料を巻き戻すために、巻戻し装置を広く用いることが可能である。ここで主軸とは、線条材料が巻き付けられている部位であればよく、上述の巻線装置に設けられているような構成のものに限られない。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上のように、本発明にかかる巻戻し装置は、主軸に巻いた線条材料を適切に巻き戻すことができるという効果を有し、巻戻し装置等として有用である。
【符号の説明】
【0102】
1 巻線装置、2 制御部、3 格納部、10 巻回部、11 主軸、20 巻線、30 巻戻し装置、31 駆動部、32 駆動力調整部、38 変位機構、40 ローラ対、41 第一ローラ、42 第二ローラ、50 線掛け部、99 供給源、L 線条材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8