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特許7569181非晶質難水溶性素材含有固体組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】非晶質難水溶性素材含有固体組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20241009BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20241009BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20241009BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241009BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241009BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241009BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241009BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
A61K31/05
A61K31/353
A61K31/36
A61K47/38
A61K47/32
A61K9/20
A61K9/14
A61P39/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020146364
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2021038215
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2019159129
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 友洋
(72)【発明者】
【氏名】今井 優希
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/061627(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/159852(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2620140(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
47/00-47/69
9/00-9/72
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1a)非晶質の難水溶性素材、及び
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びポリビニルピロリドンからなる群より選択される1種以上の親水性ポリマーから本質的になる非晶質難水溶性素材含有固体組成物の製造方法であって、
(1b)結晶質の難水溶性素材、及び
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びポリビニルピロリドンからなる群より選択される1種以上の親水性ポリマーを
界面活性剤非存在下、(1b)成分のガラス転移温度以上230℃以下の温度で、加熱混練する工程Aを含む、製造方法であり、
前記難水溶性素材がポリフェノール、ポリメトキシフラボノイド、カロテノイド、コエンザイムQ10、ビタミン、及びセサミンからなる群から選択される1種以上である、前記製造方法
【請求項2】
前記ポリフェノールが、クルクミン、ルテオリン、シリマリン、ルチン、ケルセチン、ミリシトリン、クエルシトリン、イソクエルシトリン、ノビレチン、タンゲレチン、ナリンゲニン、及びレスベラトロールからなる群より選択される1種以上である、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記(1b)結晶質の難水溶性素材及び前記(2)親水性ポリマーの質量比が、1:99~60:40の範囲内である、請求項1又は2のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項4】
更に、工程Aで得られた混練物を粒子化する工程Bを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法で製造された、非晶質難水溶性素材含有固体組成物。
【請求項6】
経口組成物である、請求項に記載の非晶質難水溶性素材含有固体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非晶質の難水溶性素材を含有する固体組成物の製造方法、及び非晶質難水溶性素材含有固体組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、難水溶性ポリフェノールの水溶性、及び体内吸収性を高めることを目的として、難水溶性ポリフェノールを非晶質化する技術が知られている。
例えば、有機溶媒法を用いて、クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体との複合体を形成する方法(特許文献1)、(A)難溶解性ポリフェノール類と(B)植物由来の多糖類、海藻由来の多糖類、微生物由来の多糖類、植物由来のポリペプチド、及び微生物由来のポリペプチドから選ばれる少なくとも1種と(C)単糖類及び二糖類から選ばれる少なくとも1種を混合後、加熱溶融し、当該溶融物を冷却固化する方法(特許文献2)、結晶質の難水溶性ポリフェノール、親水性ポリマー、及び非イオン界面活性剤を加熱混練する方法(特許文献3及び4)、及び結晶質のクルクミンを単独で溶融して非晶質化した後に、デキストリン等の水溶性高分子を添加する方法(特許文献5)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2015/174475号パンフレット
【文献】特開2016-049105号公報
【文献】WO2017/061627号パンフレット
【文献】特開2019-123700号公報
【文献】WO2019/160146号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、更に非晶質の難水溶性素材を含有する固体組成物の製造方法、及び非晶質難水溶性素材含有固体組成物の提供が求められている。
本開示は、新たな、非晶質難水溶性素材含有固体組成物の製造方法、及び非晶質難水溶性素材含有固体組成物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、次の態様を含む。
【0006】
[1](1a)非晶質の難水溶性素材、及び
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、及びポリビニルピロリドン(PVP)からなる群より選択される1種以上の親水性ポリマー
から本質的になる非晶質難水溶性素材含有固体組成物の製造方法であって、
(1b)結晶質の難水溶性素材、及び
(2)HPMC、HPC、及びPVPからなる群より選択される1種以上の親水性ポリマーを加熱混練する工程A
を含む、製造方法。
[2]前記難水溶性素材が、ポリフェノール、ポリフェノール誘導体、カロテノイド、コエンザイムQ10、ビタミン、及びセサミンからなる群から選択される少なくとも1種である、前記[1]に記載の製造方法。
[3]前記ポリフェノールが、クルクミン、ルテオリン、シリマリン、ルチン、ケルセチン、ミリシトリン、クエルシトリン、イソクエルシトリン、ナリンゲニン、レスベラトロール、及びヘスペレチンからなる群より選択される1種以上であり;前記ポリフェノール誘導体がポリメトキシフラボノイドであり;前記カロテノイドが、キサントフィル類、カロテン類、及びアポカロテノイドからなる群より選択される少なくとも1種であり;前記ビタミンが、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、及びビタミンKからなる群より選択される少なくとも1種である、前記[2]に記載の製造方法。
[4]前記(1b)結晶質の難水溶性素材及び前記(2)親水性ポリマーの質量比が、1:99~60:40の範囲内である、前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の製造方法。
[5]前記工程Aにおける加熱温度が、難水溶性素材のガラス転移温度以上の温度である、前記[1]~[4]のいずれか一つに記載の製造方法。
[6]前記工程Aにおける加熱温度が、難水溶性素材の融点以下の温度である、前記[5]に記載の製造方法。
[7]更に、工程Aで得られた混練物を粒子化する工程Bを含む、前記[1]~[6]のいずれか一つに記載の製造方法。
[8]前記[1]~[7]のいずれか一つに記載の製造方法で製造された、非晶質の難水溶性素材を含有する固体組成物。
[9]経口組成物である、前記[8]に記載の非晶質難水溶性素材含有固体組成物。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、新たな、非晶質難水溶性素材含有固体組成物の製造方法、及び非晶質難水溶性素材含有固体組成物等が提供される。特に本開示によれば、難水溶性素材の含量が高く、長期安定性に優れ、非晶質の割合の高い製剤を作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1、比較例1及び2の結果を示す図表である。具体的には 難水溶性素材(クルクミン)の含量残存率(%)、難水溶性素材の非晶質性の評価結果(粉末X線解析装置(XRD)分析チャート、非晶質化度[XRD分析値/評価])、及び保存後の外観変化の評価結果を示す。図中、XRD分析チャートのX軸は2θ(°)を示し、2θ=5°~60°で測定したが、2θ=40°~60°の範囲にはピークが見られなかったことから、2θ=5°~40°の範囲のみ示す(図2及び3も同じ)。また、XRD分析のY軸はシグナル強度であり、0~5000 countsを示す(図2及び3も同じ)。図中、XRD分析値は、式:{(S2)/((S1)+(S2))}×100で算出される値を意味する(図2図6も同じ)。
図2】実施例2及び比較例3のXRDチャートを示す図表である。
図3】実施例1及び比較例4の結果を示す図表である。
図4】実施例3~6の結果を示す図表である。図中y0=0 counts、y1=5000 counts、y2=6000 counts、y3=7000 countsを示す(図5及び6も同じ)。
図5-1】実施例7~9の結果を示す図表である。
図5-2】実施例10~12の結果を示す図表である。
図6】比較例5及び6の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」の意味、及び語句「からなる」の意味を包含することを意図して用いられる。特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。本明細書中、室温は、10~40℃の範囲内の温度を意味することができる。
【0010】
<難水溶性素材含有固体組成物の製造方法>
本開示の一態様である製造方法は、
(1a)非晶質の難水溶性素材、及び
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、及びポリビニルピロリドン(PVP)からなる群より選択される一種以上の親水性ポリマー
から本質的になる非晶質難水溶性素材含有固体組成物の製造方法であって、
(1b)結晶質の難水溶性素材、及び
(2)HPMC、HPC、及びPVPからなる群より選択される1種以上の親水性ポリマーを加熱混練する工程A、を含む。
【0011】
本開示の製造方法の目的物である、非晶質難水溶性素材含有固体組成物(以下、「本固体組成物」とも称する)は、
(1a)非晶質の難水溶性素材、及び
(2)HPMC、HPC、及びPVPからなる群より選択される一種以上の親水性ポリマー
から本質的になる。
【0012】
本固体組成物における、当該成分(1a)及び(2)の含有量の合計は、例えば、95質量%以上、96質量%以上、97質量%以上、98%質量以上、99%質量以上、又は100%質量であることができる。
【0013】
1.難水溶性素材
本明細書では、非晶質の難水溶性素材を「非晶質(1a)」又は「難水溶性素材(1a)」、結晶質の難水溶性素材を「結晶質(1b)」又は「難水溶性素材(1b)」、両者を区別することなく総称する場合を「難水溶性素材(1)」と記載する場合がある。
【0014】
本開示が対象とする難水溶性素材(1)は、水に溶解しないか、溶解しても少量である、難水溶性の物質である。非晶質化工程を経る前の難水溶性素材は、結晶質の状態にある難水溶性素材(1b)を多く含む。
当該難水溶性素材(1b)は、下記のいずれか少なくとも1つの特性を有することができる。
(i)25℃の純水に対する溶解性が、0.1質量%以下である。
ここで溶解性の評価判定は、日本薬局方の規定に準じて、下記のようにして実施することができる。
25℃の純水に0.1質量%濃度になる割合でいれて、5分ごとに強く30秒間振り混ぜたとき、30分以内に溶ける程度で評価する。30分たった時点で、水溶液を目視で観察した場合に不溶物を認める場合は、25℃の純水に対する溶解性が0.1質量%以下であると判断することができる。
(ii)オクタノール/水分配係数(logP)が1より大きく21以下の範囲内である。
好ましくは1より大きく9以下の範囲である。当該logP値は、分子構造が解明されている化合物については、ALOGPS(URL:http://www.vcclab.org/lab/alogps/)等の計算ソフトウェアを用いて、in silicoで決定することができる。
一方、分子構造が未知の化合物については、JIS Z 7260-117(2006)に準拠して、高速液体クロマトグラフィー法により、次式を用いて実験的に決定することができる。
[式]
logP=log(Coc/Cwa)
Coc:1-オクタノール層中の被験物質濃度
Cwa:水層中の被験物質濃度
(iii)日本薬局方溶出試験法(パドル法)に準拠した方法で測定した、第十六改正日本薬局方の第2液に対する溶解度が3mg/100mL以下である。
【0015】
難水溶性素材(1)は、例えば、難水溶性の生理活性物質であることができる。本明細書中、生理活性物質は、生体、好ましくは人体に作用して何らかの生物反応を生じさせるか、又は成体反応を制御する化合物を意味し得る。
【0016】
難水溶性素材(1)は、好適に、1以上(好ましくは2以上)の共役ジエンを含有し、及び所望により1個以上の酸素原子を含有していてもよい化合物であることができる。 前記共役ジエン構造は、環(例:ベンゼン、シクロヘキサジエン)の一部であってもよい。
【0017】
難水溶性素材(1)は、好適には、ポリフェノール、ポリフェノール誘導体、カロテノイド、コエンザイムQ10、ビタミン、及びセサミンからなる群から選択される1種以上であることができる。当該難水溶性素材(1)は、より好適にポリフェノールであることができる。
【0018】
1-1.ポリフェノール、及びポリフェノール誘導体
前記ポリフェノールは、1種又は2種以上の組み合わせであることができる。
ポリフェノールは、分子内に2以上の複数のフェノール性ヒドロキシ基(ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香環に結合したヒドロキシ基)を持つ植物成分であり、その例には、以下のものが包含される。以下の例は、化合物、又は組成物であり得る。
1.クルクミノイド[例:クルクミン(ケト型、及びエノール型が含まれる)、ジメトキシクルクミン、ビスジメトキシクルクミン]、並びにテトラヒドロクルクミン、
2.フラボノイド[フラボン(例:ルテオリン、アピゲニン、ジオスミン)、フラバノン(例:ヘスペレチン、ナリンゲニン、ヘスペリジン、エリオジクチオール)、フラボノール(例:ケルセチン、ミリセチン、シリビニン、シリマリン[シリビニン、イソシリビニン、シリクリスチン、及びシリジアニンといったフラボノリグナン類の混合物]、シミラリン、ルチン、イソクエルシトリン、クエルシトリン、ミリセチン、ミリシトリン、酵素処理イソクエルシトリン、ケンフェロール)、フラバノール(例:カテキン(E)、ガロカテキン、エピカテキン(EC)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキンガレート(EGCg)、テアフラビン、テアフラビン3-ガレート、テアフラビン3’-ガレート、テアフラビン3,3’-ガレート)、イソフラボン(例:ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテイン)、アントシアニジン(例:シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペラルゴニジン、ペオニジン、オーランチニジン、ヨーロビニジン、ルテオリニジン、ペチュニジン、ロシニジン)、プロシアニジン、ポリシアニジン]、
3.スチルベノイド[例:レスベラトロール、ピセアタンノール]、
4.タンニン[例:縮合型タンニン(プロアントシアニジン、オリゴメリックプロアントシアニジン(OPC))、加水分解性タンニン]、
5.モノフェノール[例:ヒドロキシチロソール、p-チロソール]、
6.カプサイシノイド[例:カプサイシン、ジヒドロカプサイシン]、
7.フェノール酸[例:ヒドロキシ桂皮酸(例:p-クマル酸、コーヒー酸、フェルラ酸)、ヒドロキシ安息香酸(例:p-ヒドロキシ安息香酸、没食子酸、エラグ酸)、ロスマリン酸]、
8.前記化合物のアグリコン、
9.前記化合物の少なくとも1つのフェノール性ヒドロキシ基の水素原子が、他の基で置換されてなる化合物(例:アセチル化物、マロニル化物、メチル化物、配糖体等)。
【0019】
前記ポリフェノールは、例えば、合成されたものであってもよく、また天然から単離精製されたものであってもよい。さらに、粗精製物であってもよく、例えば天然物由来の抽出物の状態であってもよい。
その例は、ウコン抽出物、ヤマモモ抽出物、エンジュ抽出物、オオアザミ抽出物、コーヒー抽出物、カンゾウ抽出物、キュウリ抽出物、ケイケットウ抽出物、ゲンチアナ(又は、リンドウ)抽出物、ゲンノショウコ抽出物、コレステロール及びその誘導体、サンザシ抽出物、シャクヤク抽出物、イチョウ抽出物、コガネバナ(又は、オウゴン)抽出物、ニンジン抽出物、マイカイカ(又は、マイカイ、ハマナス)抽出物、サンペンズ(又は、カワラケツメイ)抽出物、トルメンチラ抽出物、パセリ抽出物、ボタン(又は、ボタンピ)抽出物、モッカ(又は、ボケ)抽出物、メリッサ抽出物、ヤシャジツ(又は、ヤシャ)抽出物、ユキノシタ抽出物、ローズマリー(又は、マンネンロウ)抽出物、レタス抽出物、茶抽出物(例、烏龍茶エキス、紅茶エキス、緑茶エキス)、微生物醗酵代謝産物、及び羅漢果抽出物等を包含する。
【0020】
ポリフェノール誘導体とは、前述するポリフェノールの少なくとも1つのフェノール性ヒドロキシ基の水素原子が、他の基(例えば、アシル基、マロニル基、アルキル基、グリコシル基等)で置換されることにより、当該フェノール性ヒドロキシ基が0又は1つになった化合物を意味する。ポリフェノールの誘導体の例としては、制限されないものの、例えば、ポリメトキシフラボノイド(以下、PMFと称する)が挙げられる。PMFは、メトキシ基(-OCH3)を4以上有するフラボノイドをいう。好ましい例には、メトキシ基を4以上有するフラボンが含まれる。PMFは1種又は2種以上の組み合わせであることができる。
PMFの例には、以下のものが包含される。
4つの-OCH3 基を有するPMF:5,6,7,4’-テトラメトキシフラボン
5つの-OCH3 基を有するPMF:タンゲレチン、シネンセチン
6つの-OCH3 基を有するPMF:ノビレチン、3,5,6,7,3’,4’-ヘキサメトキシフラボン
7つの-OCH3 基を有するPMF:3,5,6,7,8,3’,4’-ヘプタメトキシフラボン
【0021】
PMFは、例えば、合成されたものであっても、また天然から単離精製されたものであってもよい。さらに、粗精製物であってもよく、例えば天然物由来の抽出物の状態であってもよい。
【0022】
ポリフェノールの好ましい例には、クルクミノイド、フラボノイド、スチルベノイド、及びこれらのアグリコンが包含される。なかでもクルクミノイドの好適な例には、クルクミンが含まれる。またフラボノイドの好適な例には、フラボン(例:ルテオリン)、フラバノン(例:ヘスペレチン、ナリンゲニン)、フラボノール(例:シリビニン、シリマリン、ルチン、ケルセチン、ミリシトリン、クエルシトリン、イソクエルシトリン)が含まれる。さらにスチルベノイドの好適な例にはレスベラトロールが含まれる。
またポリフェノール誘導体の好適な例には、フラボンのメチル化物であるノビレチン、及びタンゲレチンが含まれる。
【0023】
1-2.カロテノイド
カロテノイドは、1種又は2種以上の組み合わせであることができる。
カロテノイドの例には、以下のものが包含される。以下の例は、化合物、又は組成物であり得る。
キサントフィル類[例:ルテイン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、フコキサンチン、アスタキサンチン、アンテラキサンチン、ビオラキサンチン、クリプトキサンチン]、カロテン類[例:α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、δ-カロテン、リコペン]、及びアポカロテノイド[例:アポカロテナ-ル、ビキシン、クロセチン]。
その好ましい例には、キサントフィル類、及びカロテン類が包含される。なかでもキサントフィル類の好適な例にはルテイン、及びアスタキサンチンが含まれる。またカロテン類の好適な例にはβ-カロテン、及びリコペンが含まれる。
【0024】
前記カロテノイドは、例えば、合成されたものであってもよく、また天然から単離精製されたものであってもよい。さらに、粗精製物であってもよく、例えば天然物由来の抽出物の状態であってもよい。
【0025】
1-3.コエンザイムQ10
コエンザイムQ10は、1種又は2種以上の組み合わせであることができる。
コエンザイムQ10の例には、ユビキノン(酸化型CoQ)、ユビキノール(還元型CoQ:CoQH)、及びセミキノンラジカル中間体(CoQH・)が包含される。本開示において、コエンザイムQ10の好ましい例には、ユビキノールが含まれる。ユビキノールは、別名、還元型コエンザイムQ10、還元型補酵素Q、還元型CoQ、又は還元型UQとも呼ばれる脂溶性成分であり、効果的な脂溶性抗酸化物質として知られている。
【0026】
前記コエンザイムQ10は、例えば、合成されたものであってもよく、また天然から単離精製されたものであってもよい。さらに、粗精製物であってもよく、例えば天然物由来の抽出物の状態であってもよい。
【0027】
1-4.ビタミン
ビタミンは、1種又は2種以上の組み合わせであることができる。
ビタミンの例は、以下の例を包含する。以下の例は、化合物、又は組成物であり得る。
ビタミンA[例、レチノール]、ビタミンD[例、エルゴステロール、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール]、ビタミンE[例、トコフェロール、トコトリエノール]、及びビタミンK[例、フィロキノン]。
【0028】
前記ビタミンは、例えば、合成されたものであっても、また天然から単離精製されたものであってもよい。さらに、粗精製物であってもよく、例えば天然物由来の抽出物の状態であってもよい。
【0029】
1-5.セサミン
セサミンは、例えば、ゴマ、サンショウ、及びイチョウ等に含まれるリグナンの一種である。
【0030】
前記セサミンは、例えば、合成されたものであっても、また天然から単離精製されたものであってもよい。さらに、粗精製物であってもよく、例えば天然物由来の抽出物の状態であってもよい。
【0031】
2.難水溶性素材を非晶質化するための素材(親水性ポリマー
本発明においては、難水溶性素材(1b)を非晶質化するために、親水性ポリマー(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP))を使用する。前記親水性ポリマーの好適な例はHPMCを包含する。
使用されるHPMCとしては、特に制限されないが、メトキシ基による置換度が、例えば、20~40%、25~35%、27~30%であるものを使用することができる。また、ヒドロキシプロポキシ基による置換度が、例えば、3~20%、5~15%、7~12%であるものを使用することができる。
使用されるHPCとしては、特に制限されないが、ヒドロキシプロポキシ基による置換度が、例えば、7~12%、4~7.5%であるものを使用することができる。
使用されるPVPとしては、特に制限されないが、K値(分子量と相関する粘度特性値)が15~130、好ましくは27~96、より好ましくは27~60の範囲にあるものを使用することができる。なお、K値は毛細管粘度計により測定される相対粘度値(25℃)を下記のFikentscherの式に適用して計算される。
【数1】
【0032】
HPMC、HPC、及びPVPは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
本固体組成物中の難水溶性素材(1a)及び前記親水性ポリマーの質量比は、好適に1:99~60:40の範囲内、より好適に5:95~50:50の範囲内、更に好適に10:90~40:60の範囲内であることができる。
【0034】
3.非晶質難水溶性素材含有固体組成物を製造するための工程
3-1.工程A
工程Aでは、
(1b)結晶質の難水溶性素材、及び
(2)HPMC、HPC、及びPVPからなる群より選択される1種以上の親水性ポリマーを加熱混練する。
当該加熱混練工程(工程A)により、結晶質の難水溶性素材(1b)を非晶質に変化させることが可能になる。
【0035】
加熱混練工程は、難水溶性素材(1b)を溶融することができる限り、特に限定されることなく、当業界の定法に従って実施することができる(加熱溶融混練)。例えば、難水溶性素材(1b)を非晶質化させる方法としては、難水溶性素材(1b)が溶融するまで加熱する方法が挙げられる。一方、有機溶媒に難水溶性素材(1b)等を溶解する有機溶媒法(溶解度を上げるために加温や撹拌する場合もある)は、本固体組成物の組成では、高い純度の非晶質製剤を調製できないことから、本発明の製法には含まれない。
【0036】
本発明の製法において加熱混練工程は、例えば温度制御が可能な、ニーダーやミキサー等の混練機;または、一軸押出機、噛み合い型スクリュー押出機、又は多軸押出機(例、二軸押出機)等の押出機(エクストルーダー)を用いることにより好適に実施することができる。混練機によると、混ぜる、潰す、練る、つく等の複数の作業(混練作業)を並行して行うことで、前記材料が均一に混ざった状態を作り出すとともに、結晶質の難水溶性素材(1b)を非晶質に変化させることが可能になる。押出機は、前記混練作業と押出しを同時もしくは連続的に実施することができる機械である。当該押出機によると、前記混練機と同様に、前記材料を均一に混ぜるとともに難水溶性素材(1b)を非晶質に変化させ、次いで、得られた非晶質の難水溶性素材(1a)を含む本固体組成物を押出しにより排出することができる。
【0037】
当該押出機(エクストルーダー)としては、商業的に利用可能な装置を用いればよい。エクストルーダーの例は、一軸押出機械、及び二軸押出機を包含する。好ましい装置は、二軸押出機である。当該エクストルーダーのタイプとしては、例えば、押出方向に沿って、(1)スクリュー軸の径が一定のタイプ、(2)スクリュー軸の径が増加していくタイプ、及び(3)スクリューのピッチが減少していくタイプが挙げられる。
二軸押出機としては、スクリューの噛合が非完全なタイプ、部分的なタイプ、又は完全なタイプが使用され得る。
【0038】
混練の条件は、好適に、結晶質の難水溶性素材(1b)が高度に(好ましくはほぼ完全に、より好ましくは実質的完全に、及び更に好ましくは完全に)非晶質化するように設定される。当該混練条件には、好ましくは温度条件が含まれる。
【0039】
前記工程Aは、例えば、難水溶性素材(1b)とセルロース誘導体(2)との混練を、当該難水溶性素材(1b)のガラス転移温度(Tg)(℃)以上の温度条件下で実施することが好ましい。また、2種以上の難水溶性素材(1b)を用いる場合は、最もガラス転移温度が高い難水溶性素材(1b)のガラス転移温度(℃)以上を用いることができる。例えば、難水溶性素材(1b)がクルクミノイドである場合、そのガラス転移温度は72℃であることから、加熱混練温度として、80℃以上、好ましくは80℃より高い温度を採用することができる。従って、例えば、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、又は160℃以上であることができる。
前記ガラス転移温度(Tg)の決定は、JIS K 7121:2012に準拠して実施できる。
【0040】
前記工程Aにおける温度の上限は特に制限されないが、例えば、難水溶性素材(1b)の融点(Tm)+80(℃)、または融点+30(℃)、好ましくは融点+20(℃)、より好ましくは融点+10(℃)、更に好ましくは融点(℃)、更により好ましくは融点-10(℃)であることができる。具体的には、例えば、240℃以下、好ましくは230℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは200℃以下、更により好ましくは190℃以下、特に好ましくは180℃以下であることができる。なお、難水溶性素材(1b)を複数用いる場合は、前記融点(℃)は、最も融点が高いものの融点(℃)を意味する。
当該温度は、例えば、100℃~240℃の範囲内、120℃~230℃の範囲内、130℃~220℃の範囲内、140℃~210℃の範囲内、150℃~200℃の範囲内、100℃~200℃の範囲内、100℃~180℃の範囲内、120℃~200℃の範囲内、120℃~180℃の範囲内であることができる。
当該融点(Tm)の決定は、JIS K 7121:1987に準拠して実施できる。
工程Aにおける加熱混練温度は、通常、混練機や押出機等の機器の機内温度を、その動作条件を設定することで調整可能である。
【0041】
工程Aの時間の下限は、例えば、1秒間、10秒間、又は30秒間であることができる。工程Aの時間の上限は、例えば、10分間、5分間、又は3分間であることができる。記工程Aの時間は、1秒間~10分間、10秒間~5分間、又は30秒間~3分間の範囲内であることができる。
当該時間は、通常、混練機や押出機等の機器の動作条件の設定により調整可能である。
【0042】
本開示の製造方法は、その一態様において、難水溶性素材(1b)、及びセルロース誘導体(2)を加熱混練することで、非晶質化された難水溶性素材(1a)を含む本固体組成物を調製した後、当該本固体組成物を室温などの所望の温度まで冷却する工程を含むことができる。さらに、斯くして得られた固体組成物を、解砕機や粉砕機等で解砕又は粉砕する工程を含むこともできる。
また、本開示の製造方法は、前記混練工程、又は冷却工程や解砕・粉砕工程を含む方法以外に、固液分離工程(例えば、溶媒沈殿法)、乾燥工程(例えば、噴霧乾燥法、凍結乾燥法、減圧乾燥法など)、整粒工程(篩分け等)、及び/又は造粒工程を有する方法により製造することもできる。これらの方法は、当業界の定法に従って実施することができる。
【0043】
3-2.工程B
本開示の製造方法は、前記工程Aで得られた混練物を粒子化する工程Bを含むことができる。
当該粒子化は、商業的に利用可能な粉砕機を使用する等の方法により実施すればよい。 当該粒子化の条件は、例えば、所望する粒径に応じて設定され得る。
【0044】
工程Bで得られる本固体組成物の粒子径は、製剤の形態に応じて適宜選択できる。
本固体組成物の粒子径(メジアン径。以下、同じ。)の下限は、例えば、0.1μm、0.5μm、1μm、5μm、又は10μmであることができる。本固体組成物の粒子径の上限は、例えば、50μm、100μm、200μm、又は500μmであることができる。前記の粒子径は、例えば、0.1~500μm、0.5~500μm、0.5~200μm、1~100μm、5~100μm又は10~100μmの範囲内であることができる。当該粒子径(メジアン径)は、後述する実施例の記載に従って測定することができる。
【0045】
本固体組成物が含有する前記難水溶性素材の非晶質状態は、粉末X線回折の方法により確認できる。粉末X線回折法は、試料中に含まれている結晶質を検出するために慣用的に使用されている方法である。当該方法で得られるチャートにおいて、非晶質による散乱光はブロードなピーク(本発明では、これを「ハローピーク」と称する)として検出され、結晶質による回折線はシャープなピーク(本発明では、これを「シャープピーク」と称する)として検出される。
本固体組成物に含まれる難水溶性素材(1)の非晶質状態は、簡易には、本固体組成物を粉末X線回折装置で分析して得られるチャート(XRD分析チャート)において、2θ=5°~60°の範囲のハローピークの面積を(S1)、同範囲の、結晶質状態の難水溶性素材(1b)由来のシャープピーク(ハローピークを越える部分)の面積を(S2)とし、式:{(S2)/((S1)+(S2))}×100(%)から得られる数値(本発明ではこれを「XRD分析値」とも称する)に基づいて評価することが出来る。
当該数値(XRD分析値)は、小さいほど、本固体組成物に含まれる難水溶性素材中の非晶質状態の難水溶性素材(1a)が多く含まれることを示唆している。しかし、精度よく定量できるものではなく、試料中に含まれる非晶質状態の難水溶性素材(1a)の具体的な割合を示すものではない。
【0046】
本固体組成物においては、XRD分析値は、例えば、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下、0.8%以下、0.5%以下、又は0%である。本固体組成物は、好ましくはXRD分析値が1.0%以下である。さらに好ましい本固体組成物はXRD分析値が0%であり、かかる固体組成物は、結晶質の難水溶性素材(1b)を実質的に、又は完全に含有しない。
【0047】
本発明の製法は、比較的低い温度帯で非晶質化することが可能であるため、難水溶性素材の含量残存率(%)を高く維持することが可能である。難水溶性素材の含量残存率(%)として、例えば、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上を挙げることができる。
【0048】
<難水溶性素材を含有する固体組成物>
本開示の組成物は、前記した本開示の製造方法で製造された、非晶質の難水溶性素材(1a)を含有する固体組成物である。
例えば、本固体組成物における、前記難水溶性素材(1a)と前記親水性ポリマー(2)の量比は、前記製造方法についての説明から理解され得る。
本固体組成物における難水溶性素材(1a)の含有量は、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であることができる。本固体組成物における難水溶性素材(1a)の含有量は、通常60質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下であることができる。
本固体組成物における難水溶性素材(1a)の含有量は、通常1~60質量%、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~40質量%、更に好ましくは15~35質量%の範囲内であることができる。
【0049】
本固体組成物における親水性ポリマー(2)の含有量は、通常40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上であることができる。本固体組成物における親水性ポリマー(2)の含有量は、通常99質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下であることができる。本固体組成物における親水性ポリマー(2)の含有量は、通常40~99質量%、好ましくは50~95質量%、より好ましくは60~90質量%、更に好ましくは65~85質量%の範囲内であることができる。
【0050】
本固体組成物は、固体形状を有することを特徴とする。かかる固体形状には、粉末状、顆粒状、塊状、及び棒状が含まれる。本固体組成物は、後述するように、例えば、難水溶性素材(1)の結晶状態(結晶質と非晶質の割合)に影響しない他の任意の添加剤と混合して、所望の形態(例えば、製剤形態)を有する製品を作製するために使用される。この場合、本固体組成物は、粉末状又は顆粒状の形態に調製されることが好ましい。この場合の粉末又は顆粒の粒子径は、その形態に応じて適宜選択でき、例えば、前述する粒子径(メジアン径)を包含することができる。
【0051】
本固体組成物は、そのままの状態で医薬品、医薬部外品、飲食品(例えば、健康食品、機能性表示食品、健康補助食品(又はサプリメント)、栄養機能食品、栄養補助食品、特別用途食品、特定保健用食品等が含まれる)、オーラルケア製品、又は化粧品(例えば、機能性化粧品、スキンケア製品、ヘアケア製品等が含まれる)等として、またその原料として用いることができる。本固体組成物は、それに含まれる非晶質状態の難水溶性素材(1a)の割合が極めて高いため、それに非晶質化前と同じ難水溶性素材(1b)原料を添加して使用しても良い。このように、非晶質化前の原料粉末を添加する利点としては、非晶質製剤の体内吸収性が高すぎた場合に、吸収量を容易に調節できる点や、粉体の吸湿性等の物性を容易に調節できる点等が挙げられる。この場合、製剤中に含まれる難水溶性素材(1)は、例えば、非晶質:結晶質=1:0.1~1:5(質量比)の範囲に調製しても良く、好ましくは、非晶質:結晶質=1:2である。
【0052】
更に、本固体組成物は、それに含まれる難水溶性素材(1a)の非晶質状態に影響しないように、必要に応じて、他の成分(例えば、医薬品、医薬部外品、飲食品、オーラルケア製品、又は化粧品の成分やそれらの添加剤等)と任意に混合して、所望の医薬品、医薬部外品、飲食品、オーラルケア製品、又は化粧品を作製するために使用することができる。
【0053】
他の添加剤の例としては、前記の限り、制限されないものの、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、賦型剤、着色剤、着香剤、香料、香油、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、及びpH調整剤が挙げられる。こうした成分には、医薬品、医薬部外品、又は食品分野において、添加剤として規定されているものが含まれる。
【0054】
より具体的には、ショ糖、果糖、デンプン類、セルロース、デキストリン、アラビアガム末、ガディガム末、メチルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、タルク、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、寒天末、カルボキシメチルセルロース(カルシウム)、エステル油、ロウ、高級脂肪酸、高級アルコール、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、多価アルコールが挙げられる。
【0055】
前述する飲食品には、一般的な飲食品のほか、例えば健康食品、機能性表示食品、健康補助食品(又はサプリメント)、栄養機能食品、栄養補助食品、特別用途食品、及び特定保健用食品などが、制限なく含まれる。またオーラルケア製品には、例えばハミガミ剤(粉、ペースト)、口臭予防・消臭剤(ガム、タブレットなど)、歯周病予防・改善剤などが、制限なく含まれる。また化粧品には、例えば、機能性化粧品、スキンケア製品、メークアップ製品、香粧品、及びヘアケア製品等が含まれる。本固体組成物は、それ自体、又はこれを含有する最終製品が、経口投与又は経口摂取される組成物(例:経口医薬品、飲食品)、口腔内に適用される組成物(例:オーラルケア製品)、気管支・肺に適用される組成物、目に投与される組成物、耳に投与される組成物、鼻に適用される組成物、直腸に適用される組成物、膣に適用される組成物、又は皮膚に適用される組成物であることができる。
【0056】
本固体組成
物を含む製品形態の例には、錠剤(例:裸錠、糖衣錠、複層錠、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠などが含まれる)、カプセル剤、顆粒剤(例:発泡顆粒剤が含まれる)、散剤、経口ゼリー剤、口腔用錠剤(例:トローチ剤、舌下錠、バッカル錠、付着錠、ガム剤などが含まれる)、口腔用スプレー剤、口腔用半固形剤、含嗽剤、透析用剤(例:腹膜透析用剤、血液透析用剤)、吸入剤(例:吸入粉末剤、吸入エアゾール剤)、坐剤、直腸用半固形剤、注腸剤、眼軟膏剤、点耳剤、点鼻剤(点鼻粉末剤)、膣錠、膣用坐剤、外用固形剤(例:外用散剤)、スプレー剤(例:外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤)を包含する。また本固体組成物を、用時に液体と混合することで、液状の製剤形態に調製することができる。かかる製剤形態には、経口液剤(例:エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、リモナーデ剤)、シロップ剤(例:シロップ用剤)、口腔用スプレー剤、吸入液剤、注腸剤、点鼻液剤、外用液剤(例:リニメント剤、ローション剤)、スプレー剤(例:外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤)が含まれる。
なかでも、本固体組成物は、好適に経口組成物であることができる。
【0057】
当該経口組成物における難水溶性素材(1a)の含有量は、通常0.01質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であることができる。当該組成物における難水溶性素材(1a)の含有量は、通常60質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは、30質量%以下であることができる。当該組成物における難水溶性素材(1a)の含有量は、通常0.01~60質量%、好ましくは1~50質量%、より好ましくは3~40質量%、更に好ましくは5~30質量%の範囲内であることができる。
【0058】
本固体組成物は、それに含まれる難水溶性素材の結晶性が低下または失われているので、水系媒体(例:水、体液)に接触したときの崩壊性、分散性、溶解性及び/又は非凝集性に優れる。そのため、本固体組成物を生物の体内に投与した場合、当該組成物に含まれる難水溶性素材(1a)の血中濃度最大値(Cmax)が高くなる効果及び該素材の血中への総吸収量が増加する効果が期待できる。
この性質により、本固体組成物が含有する難水溶性素材(1a)が有する機能(例、生理活性)が高度に発揮され得る。
【0059】
また、本固体組成物は、保存期間中においても、ケーキング及び色変化が生じにくいため、保存性に優れる利点も有している。
【0060】
本明細書に開示する他の態様として、親水性ポリマーとして、前記(2)に代えて、アラビアガム、ガティガム、低分子ガティガム、加工澱粉、ローカストビーンガム、グァーガム、アルギン酸又はその塩、カラギーナン(ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、κ-カラギーナンが含まれる)、ペクチン(HMペクチン、LHペクチンが含まれる)、キサンタンガム、プルラン、微結晶セルロース、発酵セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デキストリン(難消化性デキストリンが含まれる)、シクロデキストリン(α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンが含まれる)、大豆多糖類、寒天、タマリンド種子ガム、グァーガム分解物、カラヤガム、タラガム、ウェランガム、及びジェランガム(ネイティブジェランガム、アセチル化ジェランガムが含まれる)からなる群から選択される1種またはそれ以上の親水性ポリマーを使用する態様を挙げることができる。ここで、ガティガムには分子量が80万以上のものが含まれ、低分子ガティガムには分子量が80万未満、好ましくは乳化力の点から10~20万程度のものが含まれる。
【実施例
【0061】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当業者により多くの変形が可能である。なお、以下の試験は、特に言及しない限り、室温(25±5℃)、及び大気圧条件で実施した。また、特に言及しない限り、「%」は「質量%」を、また「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0062】
<材料>
下記の試験例で使用した材料の表記とその詳細は以下の通りである。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
<試験方法>
下記の試験で採用した試験方法は、以下の通りである。
(1)固体組成物に含まれる難水溶性素材の含有量及び含有残存率(%)
製造した固体組成物中に含まれる難水溶性素材の含有量を測定し、固体組成物100%中の含有割合(測定値(%))を算出した。なお、難水溶性素材の含有量は、アスタキサンチンは吸光度法により、それ以外の難水溶性素材はHPLC法により測定した。
下記の式に示すように、得られた測定値(%)を、製造時に配合した割合(理論値(%))で除して、得られた値の百分率を「難水溶性素材の含量残存率(%)」とした。
[式]
難水溶性素材の含量残存率(%)=「測定値(%)/理論値(%)」×100
【0066】
(a)クルクミンの含有量の測定
(i)測定試料及び標準試料の調製
Curcumin 1(長良サイエンス株式会社)をメタノールに溶解後、50%アセトニトリル水にて0.4~40μg/mlに希釈し、0.45μmメンブランフィルターでろ過して標準試料とした。
また、製造した固体組成物を50%アセトニトリル水にて1000~1250倍程度に希釈し、0.45μmメンブランフィルターでろ過して測定試料とした。
【0067】
標準試料及び測定試料を、下記条件にてHPLC分析した。
(ii)測定条件
HPLC装置:Agilent 1220 Infinity II LCシステム(Agilent Technologies Japan, Ltd. 以下、同じ)
固定相:Atlantis T3カラム(シリカベース逆相C18)(2.1×150mm、3μm)(Waters、以下、同じ)
移動相:0.1%(v/v)リン酸含有50%(v/v)アセトニトリル水溶液
流速:0.5 ml/min
カラム温度:40℃
【0068】
(b)ルテオリンの含有量の測定
(i)測定試料及び標準試料の調製
3',4',5,7-Tetrahydroxyflavone(東京化成工業株式会社)をエタノールに溶解後、40%アセトニトリル水にて0.4~40μg/mlに希釈し、0.45μmメンブランフィルターでろ過して標準試料とした。
また、製造した固体組成物を50%エタノール水に溶解後、40%アセトニトリル水にて1000倍希釈し、0.45μmメンブランフィルターでろ過して測定試料とした。
標準試料及び測定試料を、下記条件にてHPLC分析した。
【0069】
(ii)測定条件
HPLC装置:Agilent 1220 Infinity II LCシステム 固定相:Atlantis T3カラム(2.1×150mm、3μm)
移動相:0.1%(v/v)リン酸含有40%(v/v)アセトニトリル水溶液
流速:0.3 ml/min
カラム温度:40℃
【0070】
(c)シリマリンの含有量の測定
(i)測定試料及び標準試料の調製
Silybin(mixture of SilybinA and SilybinB)(東京化成工業株式会社)をメタノールに溶解後、35%メタノール水にて0.4~40μg/ml(シリビン総量として)に希釈し、0.45μmメンブランフィルターでろ過して標準試料とした。
また、製造した固体組成物を65%メタノール水に溶解後、35%メタノール水にて1000倍希釈し、0.45μmメンブランフィルターでろ過して測定試料とした。
標準試料及び測定試料を、下記条件にてHPLC分析した。
シリマリン含量は、シリビン(シリビンAとシリビンBの総量として)を98.7%含有するシリビン標準試料の検量線を用いて算出した。
【0071】
(ii)測定条件
HPLC装置:Agilent 1220 Infinity II LCシステム 固定相:Atlantis T3カラム(2.1×150mm、3μm)
移動相:A:0.2%(v/v)リン酸水溶液、B:メタノール
流速:0.6 ml/min
カラム温度:40℃
移動相のグラジェント条件:表3
【0072】
【表3】
【0073】
(d)ポリメトキシフラボノイド(PMF)の含有量の測定
(i)測定試料及び標準試料の調製
Nobiletin(富士フィルム和光純薬株式会社)をアセトニトリルに溶解後、50%アセトニトリル水にて0.4~40μg/mlに希釈し、0.45μmメンブランフィルターでろ過して標準試料とした。
また、製造した固体組成物をアセトニトリルに溶解後、50%アセトニトリル水にて1250倍希釈し、0.45μmメンブランフィルターでろ過して測定試料とした。
標準試料及び測定試料を、下記条件にてHPLC分析した。
PMF含量は、ノビレチン標準試料の検量線を用いて算出した。
【0074】
(ii)測定条件
HPLC装置:Agilent 1220 Infinity II LCシステム 固定相:Atlantis T3カラム(2.1×150mm、3μm)
移動相:0.1%(v/v)リン酸含有50%(v/v)アセトニトリル水溶液
流速:0.5 ml/min
カラム温度:40℃
【0075】
(e)ヘスペレチンの含有量の測定
(i)測定試料及び標準試料の調製
Hesperetin(東京化成工業株式会社)をそれぞれメタノールに溶解後、20%アセトニトリル水にて0.4~40μg/mlに希釈し、0.45μmメンブランフィルターでろ過して標準試料とした。
また、製造した固体組成物を50%アセトニトリル水に溶解後、20%アセトニトリル水にて1000倍希釈し、0.45μmメンブランフィルターでろ過して測定試料とした。
標準試料及び測定試料を、下記条件にてHPLC分析した。
【0076】
(ii)測定条件
HPLC装置:Agilent 1220 Infinity II LCシステム 固定相:Atlantis T3カラム(2.1×150mm、3μm)
移動相:A:0.2%(v/v)リン酸水溶液、B:アセトニトリル
流速:0.6 ml/min
カラム温度:40℃
移動相のグラジェント条件:表4
【0077】
【表4】
【0078】
(f)レスベラトロールの含有量の測定
(i)測定試料及び標準試料の調製
Resveratrol(富士フィルム和光純薬株式会社)をメタノールに溶解後、25%アセトニトリル水にて0.4~40μg/mlに希釈し、0.45μmメンブランフィルターでろ過して標準試料とした。
また、製造した固体組成物を50%メタノール水に溶解後、50%アセトニトリル水にて1000倍希釈し、0.45μmメンブランフィルターでろ過して測定試料とした。
標準試料及び測定試料を、下記条件にてHPLC分析した。
【0079】
(ii)測定条件
HPLC装置:Agilent 1220 Infinity II LCシステム
固定相:Atlantis T3カラム(2.1×150mm、3μm)
移動相:0.15%(v/v)リン酸含有25%(v/v)アセトニトリル水溶液
流速:0.6 ml/min
カラム温度:40℃
【0080】
(g)セサミンの含有量の測定
(i)測定試料及び標準試料の調製
(+)-Sesamin、及び(+)-Episesamin(いずれも長良サイエンス株式会社)をそれぞれメタノールに溶解後、70%メタノール水にて約0.4~40μg/mlに希釈し、0.45μmメンブランフィルターでろ過して標準試料とした。
また、製造した固体組成物を50%メタノール水に溶解後、70%メタノール水にて1000倍希釈し、0.45μmメンブランフィルターでろ過して測定試料とした。
標準試料及び測定試料を、下記条件にてHPLC分析した。
(+)-Sesamin含量と(+)-Episesamin含量をそれぞれ算出し、その合計値をセサミン含量とした。
【0081】
(ii)測定条件
HPLC装置:JASCO LC-2000Plus seriesシステム(日本分光株式会社)
固定相:L-column2 ODSカラム(4.6×250mm、5μm)(化学物質評価研究機構)
移動相:70%(v/v)メタノール水溶液
流速:1.0 ml/min
カラム温度:30℃
【0082】
(h)アスタキサンチンの含有量の測定
製造後の固形組成物に含まれる総カロテノイド含量を吸光度法により測定した。
(i)測定試料の調製
製造した固体組成物を特定量秤量し(試料秤取量)、これを1.2mMのBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)含有アセトンにて2500~5000倍希釈し、0.2μmメンブランフィルターでろ過して測定試料とした。
(ii)測定条件
測定試料の吸光度を、分光光度計JASCO V-660DS(日本分光株式会社製)を用いて測定した。具体的には、1.2mMのBHT含有アセトンを対照液として、波長474nm付近の極大吸収波長での吸光度Aを測定し、次式により、測定試料中に含まれる総カロテノイドの割合(%)を算出した。
【数2】
【0083】
(2)固体組成物の非晶性評価
<粉末X線回折装置(XRD)分析>
固体組成物の結晶性は、製造直後(初期)と製造後一定期間保存した後(保存後)の試料の各々をXRD分析することにより評価した。なお、保存は、製造直後の固体組成物を、低密度ポリエチレン製袋(商品名「ユニパック A-8」、株式会社生産日本社製)に収容した状態で、40℃又は60℃、相対湿度75%の暗所またはアルミ袋(商品名「ラミジップPET/AL/PEスタンドタイプ」、株式会社生産日本社製)内で1週間~6ヶ月間放置することで実施した。
(i)測定条件
前記で製造した、製造直後の固体組成物と保存後の固体組成物を、下記の粉末X線回折装置に供した。
粉末X線回折装置:Smart Lab(リガク社)
条件:集中法
X線出力:3kW範囲:5~60°
ステップ幅:0.05°
検出器:D/teX Ultra250
光学系:CBO-E(集中法用)
解析ソフトウェア:Smart Lab Studio II
【0084】
得られたXRD分析結果から、下記の基準に従って、2θ=5~60°の範囲における、シャープピーク(結晶質状態の難水溶性素材(1b)に由来するピーク)の面積(S2)、並びに、当該面積(S2)とハローピークの面積(S1)との合計面積((S1)+(S2))を、ソフトウェアPDXLII(リガク社)を用いて、そのマニュアルに従って算出した。これらの値を下式に当てはめて算出されたXRD分析値に基づいて、下記の基準に従って非晶質化度の評価を行った。
【0085】
[XRD分析値]
{(S2)/((S1)+(S2))}×100(%)
[非晶質化度の評価基準]
◎:XRD分析値が1.0%以下である。
○:XRD分析値が1.0%より大きく4.0%以下である。
×:XRD分析値が4.0%より大きい。
【0086】
(2-3)固体組成物の外観評価
固体組成物の外観(色の変化、ケーキングの有無、固化の有無)を評価した。評価は、製造直後(初期)と製造後1週間~6ヶ月間保存した後(保存後)の試料の各々について、目視により行った。ここで「ケーキング」とは、粉が固まっているが、ほぐせば粉状に戻る状態を意味し、「固化」はほぐそうとしても固着していて塊のまま粉に戻らない状態を意味する。なお、保存条件は、前記結晶性評価と同じである。
【0087】
試験例1
親水性ポリマーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を用いて、エクストルーダーによる加熱混練法、及び粉砕機を用いて粉末形状の非晶質化製剤を製造し、その特性を評価した。
【0088】
<非晶質化製剤の製造:加熱混錬法>
表5に示す原料を均一に混合し、二軸エクストルーダー(製品:Process11;Thermo Fisher社)(条件:加熱最高温度200℃、スクリュー回転数200rpm、混練時間約2分間)にて加熱混練した。
【0089】
【表5】
【0090】
加熱混練後、棒状態として押出し排出された組成物を、粉砕機を用いて粉砕して、粉状の固体組成物(メジアン径:約100μm~400μm)を取得した。なお、粉砕物の粒子径は、マイクロトラックMT3300EX II(マイクロトラック・ベル社製)を使用して、以下の測定条件にて測定した。
<粒子径の測定条件>
測定モード:乾式
乾式フィーダ:Turbotrac One-Shot Dry
Set Zero時間:5秒
測定時間:5秒
粒子屈折率:1.81
粒子形状:非球形
【0091】
<試験及びその結果>
製造した非晶質化製剤(固体組成物)について、前述する方法で、難水溶性素材(1)の含有量(含量残存率)、非晶化度評価、及び外観評価を行った。
試験結果を図1にまとめた。図中、XRD分析チャートのX軸は、2θ(°)を示し、5~40°の範囲である。
実施例1の製剤は、調製直後の含量残存率が良好であると共に、XRD分析の結果から高度に非晶質化しており、しかも非晶質化状態が保存後も安定に維持されていることが確認された。
一方、第3成分として、還元パラチノースを配合した比較例1の製剤は、調製直後には良好な非晶質性を有していたものの、2週間保存後にはXRD分析で結晶のピークが見られたと共に、ケーキングが観察された。また第3成分として、界面活性剤(ポリソルベート80)を用いた比較例2の製剤は、調製直後からXRD分析で結晶のピークが見られ、2週間保存後にそのピークは更に顕著になると共に、黄色変化が観察された。
【0092】
試験例2
実施例1と同様にして、難水溶性素材としてクルクミン、親水性ポリマーとしてHPMCを用いて、様々な温度条件で非晶質化試験を実施した。
【0093】
<非晶質化製剤の製造:加熱混錬法>
クルクミン原料22.5質量%及びHPMC1 77.5質量%(実施例2)、並びにクルクミン原料22.5質量%、HPMC1 52.5質量%、及びショ糖ステアリン酸エステル25質量%(比較例3)を、それぞれ均一に混合し、二軸エクストルーダー(製品:Process11;Thermo Fisher社)にて加熱混練した(スクリュー回転数200rpm ;温度:160℃、180℃、200℃、220℃及び240℃)。熱混練後、棒状態として押出し排出された組成物を、粉砕機を用いて粉砕して、粉状の固体組成物(メジアン径:約100μm~400μm)を取得した。
【0094】
<試験及びその結果>
調製後の各製剤についてXRD分析を行い、非晶質性を評価した。結果を図2に示す。
図2に示すように、クルクミンはHPMCと併用することで、加熱混練温度がクルクミンのガラス転移温度(69℃)以上であれば、融点(183℃)以下の160℃の比較的低い温度帯であっても、高度に非晶質化した製剤を調製することができた(実施例2)。一方で、HPMCに加えて第3成分としてショ糖脂肪酸エステルを含む製剤は、160℃で加熱混練した場合でも結晶に由来するピークが観察される等、非晶質化が不完全であることが示唆された(比較例3)。
この結果から、200℃以下、特に非晶化する難水溶性素材のガラス転移温度以上融点以下の比較的に低い温度帯で、加熱混練法により非晶質化を行う際は、HPMCを使用して、ショ糖脂肪酸エステル等の第3成分を含まない2成分系で実施することが良いことが示唆された。
【0095】
試験例3
<溶媒噴霧法による製剤の作製>
クルクミン原料25質量部とHPMC2 75質量部とを混合し、これに、その16.7倍量の70%エタノール水を80℃に加温した後に添加し、攪拌した。該混合液を80℃に保存しながら、噴霧装置MDL-015(藤崎電機)を使用して噴霧乾燥した(Inlet温度140℃、Outlet温度90℃、流速16g/分)。
【0096】
<試験及びその結果>
上記により作製した粉末状製剤(比較例4)と、前記試験例1で作製した本発明の製剤(実施例1)とで、比較試験(XRD分析及び外観評価)を行った。結果を図3に示す。
【0097】
本発明の加熱混練法によって作製した製剤(実施例1)は、溶媒噴霧法により作製した製剤(比較例4)と比較して、クルクミンの残存率が良いと共に、保存後もケーキングが生じ難い点で、製剤の保存安定性に優れていた。XRD分析チャートによれば、ピークの形状が両製剤間で互いに異なることから、両製剤はクルクミンが共に非晶質となってはいるものの、製法の違いに起因してクルクミン及びHPMCの分子の存在状態(分子の配置や分子間の距離)が異なっていることが示唆された。
【0098】
試験例4
表6に示すように、各材料を各割合で配合して、実施例1と同様にして非晶質化製剤(固体組成物)(実施例3~6)を製造し、前述する方法で、難水溶性素材(1)の含有量(含量残存率)、非晶化度評価、及び外観評価を行った。加熱混練温度及び時間は表6に記載する。
【0099】
【表6】
【0100】
結果を図4に示す。図4に示すように、クルクミンはHPMCのみならず、HPCやPVPといった親水性ポリマーと併用することで、高度に非晶質化した製剤が製造できることが確認された(実施例3~5)。また、難水溶性素材としてクルクミンと同様にポリフェノールの一種であるルテオリンについても同様に高度に非晶質化した製剤が製造できた(実施例6)。これらの非晶質化製剤は、いずれも保存後も非晶質化状態が安定して維持されていた。また、HPMC、HPC、又はPVPのみを用いた非晶質製剤の保存安定性は、他のポリマーを添加した非晶質製剤よりも高く(データ非表示)難水溶性素材を加熱混練法により非晶質化する際は、HPMC、HPC、またはPVPを唯一の親水性ポリマーとして用いることが有用であることが確認された。
【0101】
試験例5
表7に示すように、各材料を各割合で配合して、実施例1と同様にして非晶質化製剤(固体組成物)(実施例7~12)を製造し、前述する方法で、難水溶性素材(1)の含有量(含量残存率)、非晶化度評価、及び外観評価を行った。加熱混練温度及び時間は表7に記載する。
【0102】
【表7】
【0103】
結果を図5―1及び図5-2に示す。図5-1及び図5-2に示すように、多くの種類の難水溶性素材が、加熱混練時にHPMC等の親水性ポリマーと併用することで、高度に非晶質化した製剤が製造できることが確認された。またこれらの非晶質化製剤は、いずれも保存後も非晶質化状態が安定して維持されていた。
【0104】
試験例6
クルクミン原料のみをエクストルーダーを用いて溶融するまで加熱混練し、この溶融物を室温で保持することで冷却固化し、粉砕して固体組成物を調製した(比較例5)。またこれに図6に記載する割合でHPMC及びデキストリンを粉体混合して固体組成物を調製した(比較例6)。
調製した固体組成物(比較例5及び6)について前述する方法で非晶化度評価した。
【0105】
結果を図6に示す。
図6に示すように、クルクミン単独を加熱溶融しても非晶質化は不十分であった。また、これにHPMC及びデキストリンを後添加しても所望の非晶質化はできないことが確認された。
【0106】
従来、混錬機等を使用した加熱混錬法では、非晶質の安定化のために使用する基材(ポリマー)の粘度が問題となる場合が有った。具体的には、粘度の高いポリマーを使用して加熱混錬した場合、より強いトルクで混錬するか、又は粘度を小さくするためにより高温で混錬しなければならず、それにより非晶質製剤中の難水溶性素材の含量が低下することが問題であった。本開示によれば、融点+10℃以下、好ましくは融点以下の温度で加熱混練することで、難水溶性素材の含量を大きく低下させることなく、安定的に非晶質化することができることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6