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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】コイル部品の固定構造
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20241009BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
H01F37/00 T
H01F37/00 G
H01F27/06 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020151088
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045476
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】植草 易央
(72)【発明者】
【氏名】二宮 亨和
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-152210(JP,A)
【文献】特開2018-182083(JP,A)
【文献】国際公開第2007/029651(WO,A1)
【文献】特開2019-009262(JP,A)
【文献】特開2018-207084(JP,A)
【文献】特開2016-143835(JP,A)
【文献】特開2019-016711(JP,A)
【文献】特開2013-094023(JP,A)
【文献】特開2022-032433(JP,A)
【文献】特開2022-041153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイル部品と、
前記複数のコイル部品を横並びに隣接して収容するケースと、
を備え、
各コイル部品は、
前記コイル部品の並び方向に沿って当該コイル部品の外側に延び、当該コイル部品の角部に対角に設けられ、前記ケースに収容された際に前記ケースの内部に配置する2つの固定部と、
前記固定部が設けられていない前記角部に設けられ、隣接して配置される前記コイル部品と対向する対向部と、
を有し、
他のコイル部品と隣接する側に配置する前記固定部は、他のコイル部品の前記対向部と対向し、当該対向部と近接し
前記固定部は前記ケースに固定され、前記各コイル部品は、前記ケースに固定されていること、
を特徴とするコイル部品の固定構造。
【請求項2】
前記対向部は、対向する前記固定部の形状に沿って切り欠かれ、
前記対向部と対向する前記固定部は、前記対向部の切欠き部分に侵入してケースに収容されていること、
を特徴とする請求項1に記載のコイル部品の固定構造。
【請求項3】
前記コイル部品には、前記ケースの孔に挿入される位置決めピンが設けられており、
前記位置決めピンは、当該コイル部品を逆向きに前記ケースに収容しようとした場合に、前記ケース又は隣接する前記コイル部品と干渉する位置に設けられていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品の固定構造。
【請求項4】
前記コイル部品は、3つ設けられ、
3つの前記コイル部品は、それぞれ形状が異なるとともに、異なる機能を有すること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のコイル部品の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数のコイル部品をケースに固定する固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品は、例えば、コイルとコアとを備える。コイルとコアとの電気的絶縁を図るべく、通常はコアを樹脂部材で被覆し、巻回されたコイルが樹脂部材の上からコアに装着される。コイル部品は、コイル及びコアが発熱するため、ケースに収容され、充填材をケース内に充填させて、コイルの熱を外部に放出する場合がある。そのため、コイル部品は、ケースに固定するための固定部を備えていることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-045110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケースの構成上又はコイル部品とともに配置される他の部材の位置の関係上、コイル部品の固定部を、ケースに収容された際にケースの収容スペース内に設ける場合がある。この場合、固定部を設けた分、ケースの寸法が大きくなり、大型化を招く。
【0005】
また、複数のコイル部品を1つのケースの内部に収容させることが知られている。そして、1つのケースに複数のコイル部品を収容させる場合においても、ケースの収容スペース内に各コイル部品の固定部が配置されることがあり、ケースの大型化を招く。特に、近年では、コイル部品は種々の用途で使用され、複数のコイル部品を収容したケースの小型化が強く望まれている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数のコイル部品を1つのケースに固定する場合において、ケースの寸法を小型化できるコイル部品の固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような課題を解決するため、本発明のコイル部品の固定構造は、複数のコイル部品と、前記複数のコイル部品を横並びに隣接して収容するケースと、を備え、各コイル部品は、前記コイル部品の並び方向に沿って当該コイル部品の外側に延び、当該コイル部品の角部に対角に設けられ、前記ケースに収容された際に前記ケースの内部に配置する2つの固定部と、前記固定部が設けられていない前記角部に配置され、隣接して配置される前記コイル部品と対向する対向部と、を有し、他のコイル部品と隣接する側に配置する前記固定部は、他のコイル部品の前記対向部と対向し、当該対向部と近接し、前記固定部は前記ケースに固定され、前記各コイル部品は、前記ケースに固定されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のコイル部品を1つのケースに固定する場合において、ケースの寸法を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】複数のコイル部品がケースに収容された状態を示す斜視図である。
図2】ケースに収容されるコイル部品の全体構成を示す斜視図である。
図3】ケースに収容されるコイル部品の全体構成を示す斜視図である。
図4】ケースに収容されるコイル部品の全体構成を示す斜視図である。
図5】コイル部品がケースに固定された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(構成)
本実施形態におけるコイル部品の固定構造について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係るコイル部品がケースに固定された状態を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態では、3つのコイル部品1、2、3が1つのケース4に収容されている。コイル部品1、2、3は、ケース4の収容スペースに隣接して横並びに配置されている。なお、コイル部品1、2、3の並び方向が、ケース4の長手方向となる。
【0011】
本実施形態では、コイル部品1が平滑コイルであり、コイル部品2がトランスであり、コイル部品3が共振コイルである。即ち、それぞれ機能が異なる3種類のコイル部品1、2、3がケース4に収容されている。
【0012】
図2は、コイル部品1の全体構成を示す斜視図である。コイル部品1は、コア11、コイル12及び樹脂部材13を備えている。コイル12は、エナメル被覆された銅線等の導電線による筒状の巻回体である。コイル12はコアに装着されており、コイル12が電流の導通により発生させた磁束を通す閉磁気回路となる。
【0013】
コア11は、圧粉磁心、フェライトコア、積層鋼板、又はメタルコンポジット等の磁性体である。メタルコンポジットコアは、磁性粉末と樹脂とが混練され成型されて成るコアである。
【0014】
コア11は、一対のE型コアで構成されている。コア11は、円柱状の中脚と、中脚の両脇に中脚と平行に延びる2本の外脚と、中脚と2本の外脚を連結する連結部を備える。コア11は、一対のE字型コアの中脚及び外脚を突き合わせて接合することで、概略θ形状となっている。コア11の中脚にコイル12が装着されている。
【0015】
樹脂部材13は、コア11とコイル12の絶縁を図る部材である。樹脂部材13は、コア11の中脚部を全周に亘って被覆し、コア11の外脚部のうち、コイル12の周面と対面する内側壁面を被覆する。樹脂部材13の材料は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、又はこれらの複合であり、熱伝導性のフィラーが混入されていてもよい。
【0016】
樹脂部材13には、固定部5及び位置決めピン6が設けられている。固定部5は、コイル部品1をケース4に固定する。固定部5には円筒形状のカラーが設けられている。カラーの外周が樹脂部材13によって被覆されており、このカラーの内部にボルト等の固定具が挿入される。固定部5は、後述するケース4に収容された際に、ケース4の収容スペース内に配置される。固定部5は、コア11の連結部の上面に設けられた樹脂部材13からコイル12の巻軸方向に沿ってコイル部品1の外側に突出している。換言すれば、固定部5は、ケース4の長手方向に沿ってコイル部品1の外側に突出している。
【0017】
固定部5は2つ設けられており、概略円形状となっている。固定部5aは、コア11の連結部の上面を被覆し、ケース4の短手方向の側壁41aと対向する樹脂部材13aの角部に設けられている。一方、固定部5bは、固定部5aと対角となり、コイル部品2と対向する樹脂部材13bの角部に設けられている。
【0018】
樹脂部材13bは、後述するコイル部品2の固定部5cと対向する対向部14を有する。対向部14は、固定部5bとは反対側の樹脂部材13bの角部に設けられている。この対向部14は、切欠き15が設けられている。切欠き15は、対向する固定部5cの形状に沿って切り欠かれている。
【0019】
位置決めピン6は、樹脂部材13と同様の樹脂から成る部材である。位置決めピン6は、円柱形状を有する。位置決めピン6の底面は、固定部5の底面よりもケース4の底面に近い位置に位置する。
【0020】
位置決めピン6は、2つ設けられている。位置決めピン6aは、固定部5aから側壁41bに向かって突出している。位置決めピン6bは、固定部5bからケース4の側壁41dに向かって突出している。
【0021】
図3は、コイル部品2の全体構成を示す斜視図である。コイル部品2は、コア21、コイル22及び樹脂部材23を備えている。コア21は、一対のE字型コアにより構成され、コア21の中脚にコイル22が装着されている。樹脂部材23は、コア21とコイル22の絶縁を図る。なお、コア21、コイル22及び樹脂部材23として使用できる部材については、コア11、コイル12及び樹脂部材13とそれぞれ同様である。
【0022】
樹脂部材23は、ピン端子26を固定する端子台25a、25b、25c、25dを有する。各端子台25a、25b、25c、25dは、樹脂部材23の角部にそれぞれ設けられている。各端子台25a、25b、25c、25dには、それぞれ2本のピン端子26が立設している。コイル部品2には、導電性部材から成るバスバー27が2つ設けられている。本実施形態では、コイル22が一次側のコイルの機能を有し、バスバー27が2次側のコイルの機能を有する。
【0023】
樹脂部材23は、固定部5及び位置決めピン6が設けられている。固定部5は、2つ設けられており、概略円形状となっている。固定部5cは、端子台25bから巻軸方向に沿ってコイル部品2の外側に突出している。固定部5cは、ケース4の長手方向に沿ってコイル部品1に向かって突出している。固定部5dは、端子台25dから巻軸方向に沿って、隣接するコイル部品2の外側に突出している。固定部5cは、ケース4の長手方向に沿って、隣接するコイル部品3に向かって突出している。即ち、固定部5c、5dは、コイル部品2の角部に対角に設けられている。なお、固定部5c、5dは、ケース4に収容された際に、ケース4の収容スペース内に配置される。
【0024】
また、樹脂部材23は、固定部5が設けられていないコイル部品2の角部に対向部24を有する。対向部24aは、コイル部品1の固定部5bと対向する端子台25aの側面である。対向部24bは、コイル部品3の固定部5eと対向する端子台25cの側面である。
【0025】
コイル部品2には、位置決めピン6が3つ設けられている。位置決めピン6cは、固定部5cからケースの側壁41bに向かって突出している。位置決めピン6dは、固定部5dから側壁41dに向かって突出している。位置決めピン6eは、対向部24bからコイル部品3の固定部5eに向かって突出している(図4参照)。
【0026】
図4は、コイル部品3の全体構成を示す斜視図である。コイル部品3は、コア31、コイル32及び樹脂部材33を備えている。コア31は、一対のE字型コアにより構成され、コア31の中脚にコイル32が装着されている。樹脂部材23は、コア21とコイル22の絶縁を図る。なお、コイル32は、一対のE字型コアによって上下方向から中脚に挿入されており、コイル32の巻軸は、ケース4の底面からケース4の開口に向かう上下方向となっている。即ち、コイル32の巻軸方向は、コイル12及び2の巻軸方向とは異なっている。
【0027】
樹脂部材33は、ピン端子36を固定する端子台35a、35bを有する。各端子台35a、35b、コア31とケース4の側壁41b、41d間にそれぞれ設けられている。各端子台35a、35bには、それぞれ4本のピン端子36が横並びに立設している。
【0028】
樹脂部材33は、固定部5及び位置決めピン6が設けられている。固定部5は、2つ設けられており、概略円形状となっている。固定部5eは、コイル部品2と対向する端子台35bの端部からケース4の長手方向に沿って突出している。固定部5fは、ケースの側壁41cと対向する端子台35bの端部からケース4の長手方向に沿って突出している。なお、固定部5e、5fは、ケース4に収容された際に、ケース4の収容スペース内に配置される。
【0029】
コイル部品3には、2つの位置決めピン6が設けられている。位置決めピン6fは、固定部5eから側壁41bに向けて斜めに突出している。位置決めピン6gは、固定部5eが設けられた側とは反対側の端子台35bの端部から側壁41cに向けて突出している。
【0030】
以上のとおり、コイル部品1、2、3は、それぞれ異なる形状であるものの、それぞれ2つ固定部5を備え、各固定部5は、当該コイル部品1、2、3の対角に設けられている点は共通している。また、本実施形態では、ケース4の側壁41aに近い位置に設けられる固定部5a、5c、5eが、側壁41b側に、側壁41cに近い位置に設けられる固定部5b、5d、5fが側壁41d側に設けられている。
【0031】
ケース4は、コイル部品1、2、3を収容する。ケース4は、矩形状の底面と、底面の縁から立ち上がる側壁41a、41b、41c、41dを有し、上面は開口している箱型形状となっている。この底面と側壁41a、41b、41c、41dで画成された領域が、コイル部品1、2、3を収容する収容スペースとなる。
【0032】
なお、図示はしていないが、ケース4には、位置決めピンが挿入される小孔と、固定部5に設けられたカラーの内径と略同一の締結孔が設けられている。位置決めピン6を小孔に挿入すると、各コイル部品1、2、3の固定部5(カラー)とケース4の締結孔が重なり合うように構成されている。ボルト等の固定具が締結孔に挿入され、締結することでコイル部品1、2、3はケース4に固定される。
【0033】
(コイル部品の固定)
次に、コイル部品1、2、3のケースへの固定について説明する。図5は、ケース4にコイル部品1、2、3を固定した状態を示す平面図である。まず、コイル部品1を側壁41aとコイル部品2の間(図5に示すケース4の右側)に固定する。コイル部品1は、樹脂部材13bの対向部14に切欠き15が設けられているため、樹脂部材13bがコイル部品2と対向する側に配置される目印となる。換言すれば、コイル部品1をケース4に配置する向きが容易にわかる。コイル部品1の位置決めピン6a、6bは、ケース4の小孔に挿入され、コイル部品1の固定部5a、5bとケース4の締結孔が重なり合う。そして、ボルト等の固定具を固定部5a、5b及び締結孔に挿入し、締結することで、コイル部品1はケース4に固定される。
【0034】
次に、コイル部品2をケース4に固定する。この時、コイル部品2を逆向きに固定しようとすると、即ち、図5に示す固定部5cと固定部5dの位置を入れ替えて固定しようとすると、位置決めピン6eがコイル部品1の固定部5bに干渉し、コイル部品2をケース4に固定することができない。そのため、コイル部品2を所望の向きにケース4に固定することができる。
【0035】
また、コイル部品2の固定部5cのケース4の短手方向の延長上には、コイル部品1の固定部5bが設けられている。即ち、固定部5bは、コイル部品2の対向部24aに近接した位置に配置される。近接したとは、絶縁を図れる程度の隙間を有していればよい。コイル部品2の固定部5cは、コイル部品1の対向部14に設けられた切欠き15部分に侵入している。即ち、コイル部品2の固定部5cは、コイル部品1の対向部14と近接した位置に配置される。
【0036】
最後に、コイル部品3をケース4に固定する。コイル部品3を逆向きに固定しようとすると、即ち、固定部5eと固定部5fの位置を入れ替えて固定しようとすると、位置決めピン6gがコイル部品2の固定部5dと干渉する。また、位置決めピン6fは側壁41cと干渉する。そのため、コイル部品3を逆向きに固定することはできず、コイル部品3を所望の向きにケース4に固定することができる。
【0037】
固定部5eは、コイル部品2の対向部24bと近接した位置に設けられている。また、固定部5eのケース4の短手方向の延長上には、コイル部品2の固定部5dが設けられている。即ち、固定部5bは、コイル部品2の対向部24に近接した位置に配置される。なお、コイル部品1の固定部5a及びコイル部品3の固定部5fは、ケース4の側壁41a、41cと近接した位置に配置されている。
【0038】
(効果)
以上のとおり、本実施形態におけるコイル部品の固定構造は、複数のコイル部品1、2、3と、複数のコイル部品1、2、3を横並びに隣接して収容するケース4と、を備える。各コイル部品1、2、3は、コイル部品1、2、3の並び方向に沿って当該コイル部品1、2、3の外側に延び、当該コイル部品の角部に対角に設けられた2つの固定部5と、固定部5が設けられていないコイル部品の角部に配置され、隣接して配置されるコイル部品が有する固定部5と対向する対向部14、24a、24b、34と、を有する。
【0039】
具体的には、コイル部品1は、固定部5a、5bと、対向部14とを有し、コイル部品2は、固定部5c、5dと、対向部24a、24bとを有し、コイル部品3は、固定部5e、5fと、対向部34を有する。そして、固定部5bは対向部24aと、固定部5cは対向部14と、固定部5dは対向部34と、固定部5eは対向部24bと近接した位置に配置されている。なお、各固定部5a、5b、5c、5d、5e、5fは、ケースに収容された際に前記ケースの内部に設けられている。
【0040】
このように、コイル部品1の固定部5bとコイル部品2の固定部5c及びコイル部品2の固定部5dとコイル部品3の固定部5eは、ケース4の短手方向の同一延長線上に配置される。そのため、ケース4の長手方向の寸法を小さくすることができるので、小型化を図ることができる。
【0041】
また、各コイル部品1、2、3が有する固定部5a、5b、5c、5d、5e、5fは、当該コイル部品1、2、3の角部に対角に配置されている。そのため、固定箇所の距離を長くすることができ、2点固定であっても安定した固定を実現できる。
【0042】
さらに、振動は、コイル部品1、2、3の重心から離れるほど振大きくなる。そのため、各コイル部品1、2、3が有する固定部5a、5b、5c、5d、5e、5fを当該コイル部品1、2、3の角部に対角に配置することで、重心から離れた位置で固定できる。よって、耐振動性も向上する。
【0043】
対向部14は、対向する固定部5cの形状に沿って切り欠かれた切欠き15を有し、対向部14と対向する固定部5cは、対向部14の切欠き15部分に侵入してケース4に収容されている。これにより、ケース4の長手方向の寸法をより一層短くすることが可能となり、更なる小型化を図ることができる。
【0044】
また、本実施形態のように、コイル部品1をケース4の端に収容する場合、対向部14の切欠き15を有する樹脂部材13bの方がコイル部品2と隣接する側に配置される目印となる。そのため、コイル部品1の位置決めピン6a、6bのように、隣接するコイル部品2と干渉する位置関係にない場合であっても、固定すべき向きを間違えることなくコイル部品1をケース4に固定することができる。
【0045】
コイル部品1、2、3には、ケース4の孔に挿入される位置決めピン6a、6b、6c、6d、6e、6f、6gが設けられている。コイル部品2を逆向きにケース4に固定しようとした場合に、位置決めピン6eは、隣接するコイル部品1の固定部5bと干渉し、また、コイル部品3を逆向きに固定しようとした場合、位置決めピン6gは、隣接するコイル部品2の固定部5dと干渉し、位置決めピン6fは、ケース4の側壁41cと干渉する。
【0046】
位置決めピン6は、コイル部品1、2、3をケース4に固定する際に、ケース4の小孔に挿入するだけで、固定部5とケースの締結孔を重ね合わせることができるので、固定作業を効率良く行うことができる。また、位置決めピン6をケース4の小孔に挿入するとコイル部品1、2、3の移動が規制されるので、固定具による締結を容易に行うことができる。
【0047】
コイル部品を逆向きにして固定すると、所望の磁気特性が得られない虞がある。しかし、本実施形態のように、位置決めピン6を隣接するコイル部品やケース4と干渉する位置に設けることで、逆向きにコイル部品をケース4に固定することを防止できる。
【0048】
コイル部品は、3つ設けられ、3つのコイル部品1、2、3は、それぞれ形状が異なるとともに、異なる機能を有する。例えば、各コイル部品1、2、3をそれぞれ単独でケースに収容する場合、それぞれのケースの厚み分、全体として大型になったり、固定箇所の増加や取り付け作業の悪化を招く虞がある。しかし、本実施形態のように、形状及び機能の異なるコイル部品1、2、3を1つのケース4に収容する場合であっても、各コイル部品1、2、3の固定部5a、5b、5c、5d、5e、5fを互いに対角に配置させることで、各コイルを効率良く配置させることができるので、小型化を図ることができる。また、異なる種類のコイル部品1、2、3を1つのケース4に収容することで、個々にケースに収容する場合に比べて、充填材の充填作業や各コイル部品1、2、3の形状に合わせたケースの作製作業などの作業工程を省くことができる。
【0049】
さらに、トランスやチョークコイル等のコイル部品は、ケースに収容せず、空気中での自然放熱や空冷で冷却することも多いが、コイル部品1、2、3をケース4に収容することで、水冷を行うことができ、放熱性が向上し、コイル部品1、2、3の小型化を図ることができる。
【0050】
また、ステーなどの固定金具を別途用意し、複数のコイル部品を固定金具を用いてケースに固定する場合、コイル部品と固定金具それぞれについて、固定強度や環境負荷に対する耐久性などの信頼性が要求される。しかし、本実施形態のように、コイル部品1、2、3に固定部5を一体に成形している場合、固定強度や環境負荷に対する耐久性などの信頼性はコイル部品1、2、3のみに課せられるので、固定金具を用いて固定する場合に比べて、検討事項を削減することができ、生産性が向上する。
【0051】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0052】
本実施形態では、コイル部品1が平滑コイルであり、コイル部品2がトランスであり、コイル部品3が共振コイルであったが、コイル部品の種類はこれに限定されず、コイルを備えるものであれば、種々のものを用いることができる。
【0053】
本実施形態では、コイル部品1の対向部14のみに切欠き15を設けたが、コイル部品2の対向部24a、24bやコイル部品3の対向部34に切欠き15を設けてもよい。そして、それぞれの対向部24a、24b、34対抗する固定部5を切欠き15に侵入させて配置させることで、更なる小型化を図ることができる。
【0054】
また、位置決めピン6は、当該コイル部品を逆向きにケース4に固定しても隣接するコイル部品と干渉する位置に必ずしも設ける必要はない。例えば、逆向きに固定しても磁気特性等に影響を与えないのであれば、敢えて位置決めピン6は隣接するコイル部品と干渉しない位置に設けて、逆向きであっても当該コイル部品をケースに固定できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 コイル部品
11 コア
12 コイル
13 樹脂部材
14 対向部
15 切欠き
2 コイル部品
21 コア
22 コイル
23 樹脂部材
24、24a、24b 対向部
25 端子台
26 ピン端子
3 コイル部品
31 コア
32 コイル
33 樹脂部材
34 対向部
35a、35b 端子台
36 ピン端子
4 ケース
41a、41b、41c、41d 側壁
5、5a、5b、5c、5d、5e、5f 固定部
6、6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g 位置決めピン
図1
図2
図3
図4
図5