(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】パイロット訓練支援装置
(51)【国際特許分類】
G09B 19/00 20060101AFI20241009BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20241009BHJP
B64F 5/60 20170101ALI20241009BHJP
G09B 9/08 20060101ALN20241009BHJP
【FI】
G09B19/00 H
G09B19/00 Z
G06Q50/40
B64F5/60
G09B9/08
(21)【出願番号】P 2020177741
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 駿一郎
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-319291(JP,A)
【文献】特開2009-199396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00-9/56
G09B 17/00-19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者による航空機の操縦技量に関する測定データに基づいて、前記対象者の操縦技量を定量化したテクニカルスキルデータを生成する操縦技量測定部と、
前記対象者のパイロット適性に関する測定データに基づいて、前記対象者のパイロット適性を定量化したノンテクニカルスキルデータを生成するパイロット適性測定部と、
前記テクニカルスキルデータおよび前記ノンテクニカルスキルデータを、訓練習熟度に関する基準値と比較することにより、前記対象者の訓練習熟度を判定する訓練習熟度判定部と、
前記対象者の訓練習熟度に応じて、前記対象者による訓練内容のカリキュラムを作成するカリキュラム作成部と、
を備え
、
前記訓練習熟度判定部は、
前記テクニカルスキルデータおよび前記ノンテクニカルスキルデータを前記基準値と比較することにより、前記対象者の現在までの訓練習熟度の実績を判定するとともに、前記対象者の将来の訓練習熟度の推移を予測し、
前記カリキュラム作成部は、
前記対象者の現在までの訓練習熟度の実績と、前記対象者の将来の訓練習熟度の推移の予測結果に応じて、前記対象者による訓練内容のカリキュラムを作成する、パイロット訓練支援装置。
【請求項2】
前記テクニカルスキルデータおよび前記ノンテクニカルスキルデータに基づいて、航空機の種別に関する前記対象者の適性コースを判定する適性コース判定部を備える、請求項
1に記載のパイロット訓練支援装置。
【請求項3】
前記適性コース判定部は、
前記テクニカルスキルデータおよび前記ノンテクニカルスキルデータを、前記適性コース毎に設けられたコース別基準値と比較することにより、前記適性コースを判定する、請求項
2に記載のパイロット訓練支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロットの訓練を支援するパイロット訓練支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車の運転などを仮想的に体験できるドライブシミュレータが、ドライバーの運転技術向上を目的に利用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ところで、近年、航空業界ではパイロットの人員不足から、パイロットの養成が急務になっているという現状がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現状では、航空機の訓練生の訓練効率の向上が不十分であったり、訓練生の罷免率が高いという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、航空機の訓練生の罷免率低減および訓練効率向上を図ることが可能なパイロット訓練支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のパイロット訓練支援装置は、対象者による航空機の操縦技量に関する測定データに基づいて、前記対象者の操縦技量を定量化したテクニカルスキルデータを生成する操縦技量測定部と、前記対象者のパイロット適性に関する測定データに基づいて、前記対象者のパイロット適性を定量化したノンテクニカルスキルデータを生成するパイロット適性測定部と、前記テクニカルスキルデータおよび前記ノンテクニカルスキルデータを、訓練習熟度に関する基準値と比較することにより、前記対象者の訓練習熟度を判定する訓練習熟度判定部と、前記対象者の訓練習熟度に応じて、前記対象者による訓練内容のカリキュラムを作成するカリキュラム作成部と、を備え、前記訓練習熟度判定部は、前記テクニカルスキルデータおよび前記ノンテクニカルスキルデータを前記基準値と比較することにより、前記対象者の現在までの訓練習熟度の実績を判定するとともに、前記対象者の将来の訓練習熟度の推移を予測し、前記カリキュラム作成部は、前記対象者の現在までの訓練習熟度の実績と、前記対象者の将来の訓練習熟度の推移の予測結果に応じて、前記対象者による訓練内容のカリキュラムを作成する。
【0009】
また、前記テクニカルスキルデータおよび前記ノンテクニカルスキルデータに基づいて、航空機の種別に関する前記訓練生の適性コースを判定する適性コース判定部を備えてもよい。
【0010】
また、前記適性コース判定部は、前記テクニカルスキルデータおよび前記ノンテクニカルスキルデータを、前記適性コース毎に設けられたコース別基準値と比較することにより、前記適性コースを判定してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、航空機のパイロット訓練対象者の罷免率低減および訓練効率向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】パイロット訓練支援装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図2】操縦技量の定量化およびパイロット適性の定量化を説明するための図である。
【
図3】訓練習熟度判定およびカリキュラム作成を説明するための説明図である。
【
図4】適性コース判定を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、パイロット訓練支援装置100の構成を説明するためのブロック図である。パイロット訓練支援装置100は、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーションなどのコンピュータで構成される。
図1に示すように、パイロット訓練支援装置100は、制御部102と記憶部120と表示部122とを含んで構成される。
【0015】
記憶部120は、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成される。表示部122は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成される。
【0016】
制御部102は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路により、パイロット訓練支援装置100全体を管理および制御する。また、制御部102は、訓練生(対象者)による航空機の操縦技量に関する測定データに基づいて、訓練生の操縦技量を定量化したテクニカルスキルデータを生成する操縦技量測定部104と、訓練生のパイロット適性に関する測定データに基づいて、訓練生のパイロット適性を定量化したノンテクニカルスキルデータを生成するパイロット適性測定部106と、テクニカルスキルデータおよびノンテクニカルスキルデータを、訓練習熟度に関する基準値と比較することにより、訓練生の訓練習熟度を判定する訓練習熟度判定部108と、訓練生の訓練習熟度に応じて、訓練生による訓練内容のカリキュラムを作成するカリキュラム作成部110と、テクニカルスキルデータおよびノンテクニカルスキルデータに基づいて、航空機の種別に関する訓練生の適性コースを判定する適性コース判定部112としても機能する。
【0017】
操縦技量測定部104は、航空機の操縦技量に関する各種の測定データを取得可能な各種センサや入力装置を備えている。操縦技量測定部104は、例えば、航空機の操作に関するデータとして、航空機に搭載されているエンジン、燃料系統、電源系統、脚系統、フラップ、操縦系統、換気・冷暖房系統、通信航法系統、照明系統を制御する各種操作スイッチやレバーに対して訓練生が航空機の操縦中において行った操作量や操作速度の時間経過に伴うデータを記憶部120に記憶する。
【0018】
また、操縦技量測定部104は、例えば、航空機における各種計器の表示に関するデータとして、訓練生の操縦する航空機において、高度、位置(緯度、経度)、速度、昇降率、旋回率、姿勢、方位角、加速度、エンジン計器、燃料計器、電源電圧計器、通信航法計器、警報・注意灯に係る各種計器の時間経過に伴うデータを記憶部120に記憶する。
【0019】
また、操縦技量測定部104は、例えば、航空機の操縦中における生体データとして、訓練生の航空機の操縦中における視線(眼球)、頭の方向、握力、声の音量に係る時間経過に伴うデータを記憶部120に記憶する。
【0020】
また、操縦技量測定部104は、例えば、航空機の操縦中におけるその他の記録データとして、訓練生の航空機の操縦中における姿勢速度、姿勢加速度の時間経過に伴う変化を記憶部120に記憶する。
【0021】
操縦技量測定部104は、上記した各種データの測定を、実施に訓練生が航空機を操縦した際に測定してもよいし、航空機を使用せずに、VR(Virtual Reality)訓練装置や、フライトシミュレーターを用いて測定してもよい。
【0022】
また、記憶部120には、予め、複数のベテランパイロットの航空機の操縦技量に関する上記したような操縦技量に係る各種の測定データが記憶されている。
【0023】
図2は、操縦技量の定量化およびパイロット適性の定量化を説明するための図である。操縦技量測定部104は、記憶部120に記憶された評価対象とする訓練生に係る航空機の操縦技量に関する各種の測定データに基づいて、訓練生の操縦技量を定量化したテクニカルスキルデータを生成し、記憶部120に記憶する。
【0024】
具体的には、操縦技量測定部104は、評価対象の訓練生に係る航空機の操縦技量に関する各種の測定データの中から、1または複数の種類の操縦技量に関する測定データを抽出する。また、操縦技量測定部104は、複数のベテランパイロットに係る航空機の操縦技量に関する各種測定データの中から、上記抽出を行ったものと同種の操縦技量に関する測定データを基準データとして抽出する。
【0025】
そして、操縦技量測定部104は、抽出した評価対象の訓練生に係る操縦技量に関する測定データと、基準データとを比較して、評価対象の訓練生の操作技量の定量化を行う。このとき、
図2に示すように、操縦技量測定部104は、抽出した評価対象の訓練生に係る操縦技量に関する測定データと、基準データとの距離に応じて評価対象の訓練生の操作技量の定量化を行う。
【0026】
具体的には、操縦技量測定部104は、抽出した評価対象の訓練生に係る操縦技量に関する測定データと、基準データの平均値との距離に応じて評価対象の訓練生の操作技量を複数段階設けられたスコアのいずれかに換算することでテクニカルスキルデータを生成し、記憶部120に記憶する。
【0027】
例えば、操縦技量測定部104は、抽出した評価対象の訓練生に係る操縦技量に関する測定データと、基準データの平均値との距離が所定の範囲内である場合には、評価対象の訓練生の操作技量のスコアを10とし、抽出した評価対象の訓練生に係る操縦技量に関する測定データと、基準データの平均値との距離が所定の範囲よりも大きい場合には、距離が長くなるほど操作技量のスコアが低くなるように、換算を行う。すなわち、
図2の場合には、基準データの平均値との距離が短い訓練生Aの方が、基準データの平均値との距離が長い訓練生Bよりもスコアが高くなる。
【0028】
上記と同様にして、操縦技量測定部104は、航空機の操縦技量に関する各種の測定データの中から抽出するデータの種類の少なくとも一部を異ならせて、この抽出したデータに対するスコアの換算を行う。本実施形態では、操縦技量測定部104は、抽出したデータの種類、または、抽出したデータの組み合わせに応じて、テクニカルスキル(科目A)、テクニカルスキル(科目B)、テクニカルスキル(科目C)についてのスコアの換算をそれぞれ行うこととする。なお、スコアの換算を行う数については、これに限定されるものではない。
【0029】
また、パイロット適性測定部106は、パイロット適性に関する各種の測定データを取得可能な各種センサや入力装置を備えている。パイロット適性測定部106は、例えば、航空機の操縦中および非操縦時における生体データとして、視線(眼球)、頭の方向、心拍数、呼吸、血中酸素濃度、血圧、発汗、脳血流・電位反応・脳波含む脳データ、血流動態反応含む脊髄データ、声の音量、声のトーン、表情の時間経過に伴う変化を記憶部120に記憶する。
【0030】
また、パイロット適性測定部106は、例えば、所定の試験問題に関するデータとして、試験問題の正当率、反応時間を記憶部120に記憶する。
【0031】
また、パイロット適性測定部106は、例えば、主観的データに関するデータとして、心理テスト、アンケート、ヒアリングの結果を記憶部120に記憶する。
【0032】
また、記憶部120には、予め、複数のベテランパイロットのパイロット適性に関する上記したような各種の測定データが記憶されている。
【0033】
パイロット適性測定部106は、記憶部120に記憶された評価対象とする訓練生に係るパイロット適性に関する各種の測定データに基づいて、訓練生のパイロット適性を定量化したノンテクニカルスキルデータを生成し、記憶部120に記憶する。
【0034】
具体的には、パイロット適性測定部106は、評価対象の訓練生に係るパイロット適性に関する各種の測定データの中から、1または複数の種類のパイロット適性に関する測定データを抽出する。また、パイロット適性測定部106は、複数のベテランパイロットに係るパイロット適性に関する各種測定データの中から、上記抽出を行ったものと同種のパイロット適性に関する測定データを基準データとして抽出する。
【0035】
そして、パイロット適性測定部106は、抽出した評価対象の訓練生に係るパイロット適性に関する測定データと、基準データとを比較して、評価対象の訓練生のパイロット適性の定量化を行う。このとき、
図2に示すように、パイロット適性測定部106は、抽出した評価対象の訓練生に係るパイロット適性に関する測定データと、基準データとの距離に応じて評価対象の訓練生のパイロット適性の定量化を行う。
【0036】
具体的には、パイロット適性測定部106は、抽出した評価対象の訓練生に係るパイロット適性に関する測定データと、基準データの平均値との距離に応じて評価対象の訓練生のパイロット適性を複数段階設けられたスコアのいずれかに換算することでノンテクニカルスキルデータを生成し、記憶部120に記憶する。
【0037】
例えば、パイロット適性測定部106は、抽出した評価対象の訓練生に係るパイロット適性に関する測定データと、基準データの平均値との距離が所定の範囲内である場合には、評価対象の訓練生のパイロット適性のスコアを10とし、抽出した評価対象の訓練生に係るパイロット適性に関する測定データと、基準データの平均値との距離が所定の範囲内よりも大きい場合には、距離が長くなるほどパイロット適性のスコアが低くなるように、換算を行う。すなわち、
図2の場合には、基準データの平均値との距離が短い訓練生Aの方が、基準データの平均値との距離が長い訓練生Bよりもスコアが高くなる。
【0038】
上記と同様にして、パイロット適性測定部106は、パイロット適性に関する各種のパイロット適性に関する測定データの中から抽出するデータの種類の少なくとも一部を異ならせて、この抽出したデータに対するスコアの換算を行う。本実施形態では、パイロット適性測定部106は、抽出したデータの種類、または、抽出したデータの組み合わせに応じて、ノンテクニカルスキル(科目X)、ノンテクニカルスキル(科目Y)、ノンテクニカルスキル(科目Z)についてのスコアの換算をそれぞれ行うこととする。なお、スコアの換算を行う数については、これに限定されるものではない。
【0039】
図3は、訓練習熟度判定およびカリキュラム作成を説明するための説明図である。
図3に示すように、本実施形態では、訓練生の訓練における複数の段階からなる訓練課程が設けられており、各訓練課程の終了時において求められるテクニカルスコアおよびノンテクニカルスコアの値が、訓練習熟度に関する基準値として、それぞれ予め設定されている。本実施形態では、訓練課程1の修了時には、テクニカルスコア(科目A)~テクニカルスコア(科目C)およびノンテクニカルスコア(科目X)~ノンテクニカルスコア(科目Z)の各スコアの値が3以上であることが求められる。同様に、テクニカルスコア(科目A)~テクニカルスコア(科目C)およびノンテクニカルスコア(科目X)~ノンテクニカルスコア(科目Z)の各スコアの値は、訓練課程2の修了時には5以上であることが求められ、訓練課程3の修了時には10以上であることが求められる。
【0040】
訓練習熟度判定部108は、記憶部120に記憶された評価対象とする訓練生に係るテクニカルスキルデータおよびノンテクニカルスキルデータを、上記の訓練習熟度に関する基準値と比較することにより、評価対象とする訓練生の訓練習熟度を判定する。
【0041】
例えば、訓練習熟度判定部108は、
図3に示すように、評価対象とする訓練生が、現在、訓練課程2の履行中である場合、履行中の訓練課程と対応する訓練習熟度に関する基準値と、記憶部120に記憶された評価対象とする訓練生に係るテクニカルスキルデータおよびノンテクニカルスキルデータとを比較する。
図3の場合では、訓練習熟度判定部108は、テクニカルスキル(科目A)、テクニカルスキル(科目B)、ノンテクニカルスキル(科目X)、ノンテクニカルスキル(科目Y)のスコアが、履行中の訓練課程2に対応する訓練習熟度に関する基準値のスコア以上の習熟度となっていると訓練生の現在までの訓練習熟度の実績を判定し、記憶部120に記憶する。一方、訓練習熟度判定部108は、テクニカルスキル(科目C)およびノンテクニカルスキル(科目Z)のスコアが、履行中の訓練課程2に対応する訓練習熟度に関する基準値のスコア未満の習熟度となっていると訓練生の現在までの訓練習熟度の実績を判定し、記憶部120に記憶する。そして、記憶部120に記憶された訓練生の現在までの訓練習熟度の実績の判定結果は表示部122によって
図3に示すように表示可能となる。
【0042】
また、記憶部120には、予め、複数のベテランパイロットの航空機の操縦技量に関する上記したような各種の測定データが、各訓練課程の進行段階に応じてどのように推移したかが記憶されている。また、記憶部120には、予め、複数のベテランパイロットのパイロット適性に関する上記したような各種の測定データが、各訓練課程の進行段階に応じてどのように推移したか、および、テクニカルスキルデータおよびノンテクニカルスキルデータが各訓練課程の進行段階に応じてどのように推移したかを示す推移データが記憶されている。
【0043】
訓練習熟度判定部108は、評価対象の訓練生の現在のテクニカルスキルデータおよびノンテクニカルスキルデータおよび評価対象の訓練生の現在の訓練課程の進行段階に基づいて、上記した記憶部120に記憶されているベテランパイロットに係る推移データを参照して、評価対象の訓練生の将来のテクニカルスキルデータおよびノンテクニカルスキルデータの習熟度の推移を予測して、予測推移データ(予測結果)として記憶部120に記憶する。そして、記憶部120に記憶された予測推移データは表示部122によって表示可能となる。
【0044】
カリキュラム作成部110は、記憶部120に記憶された評価対象の訓練生の訓練習熟度に応じて、訓練生による訓練内容のカリキュラムを作成する。
【0045】
例えば、カリキュラム作成部110は、訓練習熟度に関する基準値のスコア未満の習熟度となっていると判定されたテクニカルスキルまたはノンテクニカルスキルの科目について、訓練生による訓練内容のカリキュラムを作成する。
【0046】
記憶部120には、予めテクニカルスキルおよびノンテクニカルスキルの各科目にそれぞれ対応して設けられている所定のカリキュラムが記憶されている。カリキュラム作成部110は、訓練習熟度に関する基準値のスコア未満の習熟度となっていると判定されたテクニカルスキルまたはノンテクニカルスキルの科目に対応するカリキュラムを組み合わせるカリキュラムを作成する。
【0047】
すなわち、カリキュラム作成部110は、訓練習熟度に関する基準値のスコア未満の習熟度となっていると判定されたテクニカルスキルまたはノンテクニカルスキルの科目のスコアを改善するためのカリキュラムを作成し、記憶部120に記憶する。そして、記憶部120に記憶されたカリキュラムは表示部122によって表示可能となる。
【0048】
このように、本実施形態によれば、訓練習熟度に関する基準値のスコア未満の習熟度となっていると判定されたテクニカルスキルまたはノンテクニカルスキルの科目のスコアを改善するためのカリキュラムを訓練生に提案することが可能となる。これにより、習熟度が低いテクニカルスキルまたはノンテクニカルスキルに対応するカリキュラムを重点的に実施することができるため、訓練生の訓練効率の向上を図ることが可能となる。そして、訓練生の訓練効率が向上すると、訓練生の各種スキルの上達速度が上昇することから、航空機の訓練生の罷免率低減を図ることが可能となる。
【0049】
また、カリキュラム作成部110は、記憶部120に記憶された評価対象の訓練生の現在までの訓練習熟度の実績と、記憶部120に記憶された予測推移データに応じて、訓練生による訓練内容のカリキュラムを作成する。
【0050】
例えば、カリキュラム作成部110は、訓練習熟度に関する基準値のスコア未満の習熟度となっていると判定されたテクニカルスキルまたはノンテクニカルスキルの科目について、記憶部120に記憶された予測推移データを参照して、将来においても習熟度が基準値のスコアに達していないテクニカルスキルまたはノンテクニカルスキルの科目に対応するカリキュラムを組み合わせてカリキュラムを作成する。これにより、必要最小限のカリキュラムを訓練生に提案することが可能となる。これにより、提案するカリキュラムが膨大となってしまい、訓練生の訓練効率がかえって低減するおそれを抑制することが可能となる。そして、訓練生の訓練効率の低減するおそれが抑制されることによって、訓練生の各種スキルの上達速度がおそれが低減するおそれを抑制可能となることから、航空機の訓練生の罷免率低減を図ることが可能となる。
【0051】
図4は、適性コース判定部112における適性コース判定を説明するための説明図である。本実施形態では、訓練生が訓練終了後に配属されるコースが航空機の種別に応じて複数設けられている。具体的には、航空機タイプA(戦闘機)、航空機タイプB(輸送機)、航空機タイプC(救難機)の3種類が設けられている。
【0052】
適性コース判定部112は、記憶部120に記憶されているベテランパイロットの航空機の操縦技量やパイロット適性に関する各種の測定データを、各ベテランパイロットが配属されている航空機の種別に応じたコース毎に抽出する。そして、
図4に示すように、適性コース判定部112は、航空機の種別に応じたコース毎にコース別基準値を作成し、記憶部120に記憶する。
【0053】
適性コース判定部112は、記憶部120に記憶された各コース別基準値と、記憶部120に記憶された評価対象とする訓練生に係るテクニカルスキルデータおよびノンテクニカルスキルデータとを比較して、訓練生の適性コースを判定し、記憶部120に記憶する。そして、記憶部120に記憶された訓練生の適性コースは表示部122によって表示可能となる。
【0054】
例えば、評価対象とする訓練生の最も優れたスコアのテクニカルスキルデータまたはノンテクニカルスキルデータの種別に基づいて、適性コースを判定することができる。具体的には、評価対象とする訓練生の最も優れたスコアの種別がテクニカルスキル(科目C)である場合には、適性コースを航空機タイプAと判定し、評価対象とする訓練生の最も優れたスコアの種別がノンテクニカルスキル(科目Z)である場合には、適性コースを航空機タイプCと判定し、評価対象とする訓練生の最も優れたスコアの種別がテクニカルスキル(科目A)である場合には、適性コースを航空機タイプBと判定してもよい。
【0055】
このように、本実施形態では、適性コースを訓練生に提案することによって、訓練生の訓練に対するモチベーションを向上させることが可能となる。これにより、訓練生の罷免率低減を図るとともに、訓練効率の向上を図ることが可能となる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0057】
なお、上記実施形態では、航空機の種別に関する訓練生の適性コースとして、戦闘機、輸送機、救難機の各種別が設けられる場合を示したが、航空機の種別の具体的な内容はこれに限定されるものではない。
【0058】
また、上記実施形態で示した航空機の操縦技量に関する測定データの種類およびパイロット適性に関する測定データの種類はあくまでも例示であって、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
また、上記実施形態では、訓練生による航空機の操縦技量に関する測定データと、訓練生のパイロット適性に関する測定データをスコアに換算することで定量化することとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、基準データの平均値の値に対する、訓練生に係る操縦技量に関する測定データや訓練生のパイロット適性に関する測定データの値の大きさの割合を導出して定量化することとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、パイロットの訓練を支援するパイロット訓練支援装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
100 パイロット訓練支援装置
104 操縦技量測定部
106 パイロット適性測定部
108 訓練習熟度判定部
110 カリキュラム作成部
112 適性コース判定部