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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】送電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/40 20160101AFI20241009BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20241009BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241009BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20241009BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20241009BHJP
   B60L 53/122 20190101ALI20241009BHJP
   B60L 5/00 20060101ALN20241009BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/12
H02J7/00 301D
H02J50/90
H02J7/00 P
B60M7/00 X
B60L53/122
B60L5/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020191243
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022080207
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向山 真登
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智清
(72)【発明者】
【氏名】金崎 正樹
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-073380(JP,A)
【文献】特開2014-103754(JP,A)
【文献】特表2017-536067(JP,A)
【文献】特開2017-135816(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02541730(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/40
H02J 50/12
H02J 7/00
H02J 50/90
B60M 7/00
B60L 53/122
B60L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が備える受電装置に電力を非接触で送電する送電システムであって、
前記移動体の移動経路上に連なって配置する複数の送電装置と、
電源の電力を変換し配電系統を介して前記送電装置に電力を供給する複数のインバータと、
各々の前記送電装置の駆動及び停止の少なくとも一方を制御する送電制御装置と、
各々の前記インバータに係る前記配電系統に流れる電流を検出する複数のセンサと、
を備え、
各々の前記送電装置は、
その前後に配置する前記送電装置が接続する前記配電系統と別の前記配電系統と接続し、
前記送電制御装置は、
前記配電系統に流れる電流の極大値であるピーク電流値を検出し、
前記配電系統に流れる電流の電流値を前記ピーク電流値を用いて規格化した規格値に基づいて、各々の前記送電装置の駆動及び停止の少なくとも一方を制御する
ことを特徴とする送電システム。
【請求項2】
前記送電制御装置は、
前記送電装置を駆動又は停止する条件として与えられる閾値と前記規格値とを比較することにより、各々の前記送電装置の駆動及び停止の少なくとも一方を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の送電システム。
【請求項3】
前記規格値は、前記配電系統に流れる電流の最小値と前記ピーク電流値とにより前記電流値を規格化した値である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の送電システム。
【請求項4】
前記規格値は、前記電流値を前記ピーク電流値で除した値である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の送電システム。
【請求項5】
移動体が備える受電装置に電力を非接触で送電する送電システムであって、
前記移動体の移動経路上に連なって配置する複数の送電装置と、
電源の電力を変換し配電系統を介して各々の前記送電装置に電力を供給するインバータと、
各々の前記送電装置の駆動及び停止の少なくとも一方を制御する送電制御装置と、
前記配電系統に流れる電流を検出するセンサと、
を備え、
前記送電制御装置は、
前記配電系統に流れる電流の極大値であるピーク電流値を検出し、
前記配電系統に流れる電流の電流値を前記ピーク電流値を用いて規格化した規格値に基づいて、各々の前記送電装置の駆動及び停止の少なくとも一方を制御する
ことを特徴とする送電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に備える受電装置に電力を非接触で送電する送電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、電気自動車等のバッテリを備える移動体に対して、移動体の移動中に電源と非接触でバッテリを充電する非接触充電に係る技術が提案されている。特に電磁誘導方式や磁界共振方式による非接触充電を適用する場合においては、移動体に受電コイル等を含んだ受電装置が備えられ、移動体の移動経路上に送電コイル等を含んだ送電装置を配置する形態を採用した技術が提案されている。例えば、電気自動車やハイブリット車等のバッテリを備える車両では、バッテリと接続する受電装置が車両に備えられ、車両が走行する道路上に送電装置が配置される。
【0003】
このような形態を採用する場合、コストや設備の配置の観点から、各々の送電装置に電源を接続し、全ての送電装置が常に駆動して送電を行う状態とすることは現実的ではない。このため、電源から電力が供給される1つの配電系統に複数の送電装置を接続し、必要に応じて各々の送電装置の駆動及び停止を行うこととなる。このように、各々の送電装置の駆動及び停止を適切に制御するための技術が求められている。
【0004】
特許文献1では、電気自動車を非接触で充電する装置が開示されている。この装置では、充電回路(送電装置)の電気特性の変化を検出し、充電回路(送電装置)の電気特性の変化量に基づいて、充電回路(送電装置)の駆動及び停止を判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2017-532930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
移動体が最も近くなる送電装置を駆動し、それ以外の送電装置を停止させるように制御することが理想的である。一方で、通常この技術が想定する状況においては、移動体が各々の送電装置を通過するのに要する時間は短い。このため、移動体の通過位置を高精度に検出し、各々の送電装置の駆動及び停止を適切に制御することが必要である。また、移動体との通信により情報を取得して、移動体の通過位置を特定することは、通信時間を要するために望ましくない。
【0007】
特許文献1では、送電装置の電気特性の変化量に基づいて、送電装置の駆動及び停止を判断する内容を開示している。しかしながら、電気特性は、移動体が備える受電装置の位置や、移動経路中心からのずれ等に伴う受電装置と送電装置との間の位置ずれにより異なる。このような位置ずれは、往々にして起こり得る。例えば、移動体が車両であるとき、車両の車高が異なる場合や、道路の内側を走行する場合等である。このため、電気特性の変化量を単に評価するだけでは、移動体の通過位置に対して十分な精度が得られず、適切に送電装置の駆動及び停止を行えない虞がある。延いては、電力の脈動や漏洩磁界の増加といった問題を生じる虞がある。
【0008】
本発明は、上述の課題を鑑みてなされたもので、位置ずれが生じている場合であっても、移動体の通過位置に対して適切に送電装置の駆動及び停止を行うことが可能な送電システムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る送電システムは、移動体が備える受電装置に電力を非接触で送電する送電システムであって、複数の送電装置と、複数のインバータと、送電制御装置と、複数のセンサとを備える。送電装置は、移動体の移動経路上に連なって配置される。インバータは、電源の電力を変換し配電系統を介して送電装置に電力を供給する。送電制御装置は、各々の送電装置の駆動及び停止を制御する。センサは、各々のインバータに係る配電系統に流れる電流を検出する。
【0010】
各々の送電装置は、その前後に配置する送電装置が接続する配電系統と別の配電系統と接続する。送電制御装置は、配電系統に流れる電流の極大値であるピーク電流値を検出する。そして、配電系統に流れる電流値をピーク電流値で除した規格値に基づいて、各々の送電装置の駆動及び停止を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本出願に係る発明者は、規格値の変化が位置ずれの影響をほとんど受けないことを見出した。本発明によれば、規格値に基づいて、各々の送電装置の駆動及び停止を制御する。これにより、位置ずれが生じている場合であっても、移動体の通過位置に対して適切に各々の送電装置の駆動及び停止を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る送電システムの構成例を示すための概念図である。
図2】車両が駆動している送電装置を通過する場合に、配電系統に流れる電流を示すグラフである。
図3図2に示すそれぞれのグラフに対して、電流値をピーク電流値で規格化したグラフである。
図4図2に示すそれぞれのグラフに対して、電流値をピーク電流値及びインバータの出力電流の最小値で規格化したグラフである。
図5】第1の実施の形態に係る送電制御装置が実行する処理を示すフローチャートである。
図6】第1の実施の形態に係る送電制御装置が実行する処理を示すフローチャートである。
図7】第1の実施の形態に係る送電制御装置による送電装置の駆動及び停止を説明するための概念図である。
図8】変形例に係る送電システムの構成例を示すための概念図である。
図9】変形例において、車両が駆動している送電装置を通過する場合に、配電系統に流れる電流を示すグラフである。
図10】第1の実施の形態の変形例に係る送電制御装置による送電装置の駆動及び停止を説明するための概念図である。
図11】第2の実施の形態に係る送電制御装置が実行する処理を示すフローチャートである。
図12】第2の実施の形態に係る送電制御装置が実行する処理を示すフローチャートである。
図13】第2の実施の形態に係る送電制御装置による送電装置の駆動及び停止を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲などの数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数が特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造などは、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0014】
1.第1の実施の形態
1-1.構成
図1は、本実施の形態に係る送電システム10の構成例を示すための概念図である。送電システム10は、複数の送電装置100と、複数のインバータ110と、送電制御装置120と、複数のセンサ130と、を備えている。図1では、受電装置200及びバッテリ210を備える車両(移動体)20が、道路RDを走行する場合を示している。つまり、道路RDは、車両20の走行経路(移動経路)である。車両20は、例えば、電気自動車やハイブリッド車両である。
【0015】
各々の送電装置100は、道路RD上に連なって配置されている。図1に示す構成例では、5つの送電装置100が図示されているが、さらに多くの送電装置100がより長い距離に渡って道路RD上に配置されていても良い。受電装置200は、車両20の下面に設置されている。なお、図1では、図示する5つの送電装置100各々を区別するために、符号に記号(n1、n2、n3、n4、n5)を附している。同様に図示する2つのインバータ110各々を区別するために、符号に記号(a、b)を附している。
【0016】
送電装置100と受電装置200は、それぞれの装置に含まれるコイルが互いに磁界共振することにより、送電装置100から受電装置200に電力が送電される。つまり、磁界共振方式による非接触充電を行う。ただし、電磁誘導方式による非接触充電であっても良い。
【0017】
送電装置100は、典型的には、送電コイルと共振用コンデンサにより構成される直列共振回路を含んでいる。さらに、高周波電流抑制用のフィルタを含んでも良い。受電装置200は、典型的には、受電コイルと共振用コンデンサにより構成される直列共振回路と、受電した交流電力を平滑化した直流電力に変換する整流回路と、を含んでいる。さらに、高周波電流抑制用のフィルタを含んでいても良い。受電装置200は、バッテリ210と接続しており、整流回路の出力となる直流電力によりバッテリ210の充電が行われる。
【0018】
バッテリ210は、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池を含む再充電可能な直流電源である。
【0019】
インバータ110は、電源30と接続し、電源30の電力を変換する。そして、配電系統111を介して各々の送電装置100に変換した電力を供給する。なお、図1では、各々のインバータ110は同一の電源30と接続しているが、各々のインバータ110が別個の電源30と接続するように構成されていても良い。また、図1では、各々のインバータ110と対応するように、各々のインバータ110に係る配電系統111の符号に記号(a、b)を附している。
【0020】
各々の送電装置100は、その前後に配置する送電装置100が接続する配電系統111と別の配電系統111と接続する。例えば、図1に示す構成例では、送電装置100n2は配電系統111aと接続し、その前後に配置する送電装置100n1及び送電装置100n3は配電系統111bと接続している。同様に、送電装置100n1、100n3、100n4、100n5は、その前後に配置する送電装置が接続する配電系統111と別の配電系統111と接続している。
【0021】
図1に示す構成例では、2つのインバータ110が図示されているが、さらに多くのインバータ110及び配電系統111が備えられていても良い。ただし、より多くの配電系統111が備えられる場合も、前述のように、各々の送電装置100は、その前後に配置する送電装置100が接続する配電系統111と別の配電系統111と接続する。
【0022】
電源30は、典型的には、交流電源である。例えば、電力系統から電力が供給される3相200V又は400V,周波数50Hzの系統電源である。
【0023】
インバータ110は、電源30の交流電力を直流電力に変換するコンバータ回路と、ACDCコンバータ回路の出力となる直流電力を所定の周波数の交流電力に変換するインバータ回路を含んでいる。あるいは、コンバータ回路とインバータ回路それぞれに対応する別個の装置により構成されていても良い。コンバータ回路及びインバータ回路は、典型的には、スイッチング素子を含んでおり、図示しない制御装置によるスイッチング制御が行われることで動作する。インバータ110が出力する交流電力の周波数は、例えば、85kHz程度の高周波である。
【0024】
センサ130は、各々のインバータ110に係る配電系統111に流れる電流を検出する。特に各々のインバータ110の出力電流を検出しても良い。この場合に、センサ130は、各々のインバータ110と一体的に構成されていても良い。なお、図1では、各々のインバータ110と対応するように、センサ130の符号に記号(a、b)を附している。
【0025】
送電制御装置120は、センサ130から検出値を取得し、各々の送電装置100と対応する駆動部101に対する制御信号を生成し出力する。駆動部101は、制御信号に従って動作し、対応する送電装置100の駆動及び停止を切り替えることができるように構成されている。つまり、送電制御装置120は、各々の送電装置100の駆動及び停止を制御する。
【0026】
駆動部101は、例えば、リレーやスイッチで構成されており、回路の開閉を切り替えることで、送電装置100の駆動及び停止を切り替える。図1では、駆動部101がスイッチで構成される例を示しており、駆動部101n2がON、その他の駆動部101はOFFである。従って、送電装置100n2が駆動し、その他の送電装置100は停止する。
【0027】
送電制御装置120は、典型的には、メモリとプロセッサとを含むコンピュータである。メモリは、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、プロセッサで実行可能な制御プログラムや制御プログラムに係る種々のデータを記憶するROM(Read Only Memory)と、を含んでいる。プロセッサは、メモリからプログラムを読み出し、メモリから読み出す種々のデータに基づいて、プログラムに従う処理を実行する。特に送電制御装置120においては、送電装置100の駆動及び停止の制御に係るプログラムとセンサ130から取得する検出値がメモリに記憶される。そして、プロセッサは、メモリから読み出すデータに基づいて、送電装置100の駆動及び停止の制御に係るプログラムに従う処理を実行する。送電制御装置120のプロセッサが実行する処理の詳細については後述する。
【0028】
1-2.配電系統に流れる電流の特性
以下、上記説明した構成に基づいて、配電系統111に流れる電流の特性について説明する。
【0029】
いま、図1に示すように、配電系統111aと接続する送電装置100n2のみが駆動しているとする。この場合に、車両20が送電装置100n2を通過するとき、車両20が通過している位置により、入力インピーダンスが変動し、配電系統111に流れる電流が変化する。さらに、配電系統111に流れる電流の変化は、送電装置100(送電コイル)と受電装置200(受電コイル)との間のギャップ、送電装置100(送電コイル)と受電装置200(受電コイル)の車幅方向のズレにより異なる。これらは、通過する車両20の車高の違いや、車両20が道路RDの中央から外れて走行する場合に起こり得る。
【0030】
図2は、車両20が駆動している送電装置100を通過する場合に、配電系統111に流れる電流の変化を示すグラフである。図2に示すグラフにおいて、横軸は車両の通過位置を、縦軸は配電系統111に流れる電流の値を示す。図2には、3つのグラフが示されている。基準として示すグラフ(実線)は、ある特定の車高(ギャップ)の車両20が道路RDの中央を走行(車幅方向のズレ無し)して送電装置100を通過する場合のグラフである。ギャップ小として示すグラフ(破線)は、基準に対して車高が低い(ギャップが小さい)車両20が道路RDの中央を走行して送電装置100を通過する場合のグラフである。車幅方向のズレ大として示すグラフ(一点鎖線)は、基準と同程度の車高(ギャップ)の車両20が道路RDの中央から大きく外れて走行する場合のグラフである。最接近位置は、送電装置100(送電コイル)と受電装置200(受電コイル)とが最も近づく車両20の通過位置である。
【0031】
図2に示すように、いずれの場合の電流の変化も、最接近位置に近づくにつれて電流値が増加し、最接近位置で極大値(ピーク電流値)となり、その後最接近位置から遠ざかるにつれて電流値は減少する。しかし、ギャップの違いや、車幅方向のズレの違いにより、電流の変化の度合いが異なる。例えば、図2に示すように、ギャップが小さい場合は、電流の変化が大きい。一方で、車幅方向のズレが大きい場合は、電流の変化が小さい。このため、配電系統111に流れる電流の値から、車両20の通過位置を判断すると十分な精度が得られない虞がある。
【0032】
図3に、図2で示すそれぞれのグラフに対して、電流値をピーク電流値で除すことにより規格化したグラフを示す。図3に示すグラフの構成は、縦軸に電流値をピーク電流値で除した規格値を示す以外は図2に示すグラフの構成と同等である。規格値は以下の式(1)で表される。
【0033】
【数1】
【0034】
図3に示すように、規格値の変化の度合いは、ギャップの違いや、車幅方向のズレによる影響が少ない。従って、規格値に基づいて車両20の通過位置を判断することにより精度が向上する。
【0035】
規格化は、ピーク電流値及びインバータ110の出力電流の最小値(最小電流値)により行うことも可能である。この場合の規格値は、以下の式(2)で表される。
【0036】
【数2】
【0037】
ピーク電流値及びインバータ110の出力電流の最小値(最小電流値)により規格化を行った場合のグラフを図4に示す。図4に示すグラフの構成は、図3に示すグラフの構成と同等である。図4に示すように、ピーク電流値及びインバータ110の出力電流の最小値(最小電流値)により規格化を行う場合でも、規格値の変化の度合いは、ギャップの違いや、車幅方向のズレによる影響が少ない。
【0038】
1-3.送電制御装置が実行する処理
以下、第1の実施の形態に係る送電制御装置120が実行する処理について説明する。なお、実際的には、送電制御装置120のプロセッサにより実行される処理である。
【0039】
送電制御装置120は、規格値に基づいて、各々の送電装置100の駆動及び停止を制御する。図5及び図6は、第1の実施の形態に係る送電制御装置120が実行する処理を示すフローチャートである。なお、図5及び図6に示すA、Bは、図5図6の間で対応しており、図5及び図6は1つのフローチャートを示している。
【0040】
図5及び図6に示す処理は、1つ目の送電装置100n1を駆動する条件が満たされたときに開始される。ここで、1つ目の送電装置100n1とは、道路RD上に連なって配置する複数の送電装置100のうち、最初に駆動する送電装置100である。これは、例えば、車両20が送電装置100を配置する道路RD上を走行する場合において、車両20の進行方向に沿って最初に通過する送電装置100である。送電装置100n1を駆動する条件とは、例えば、送電装置100n1の手前の地点であって、送電装置100n1を通過するまでの間に分岐が無い地点を通過したことが検出された場合等である。
【0041】
ステップS100において、送電制御装置120は、送電装置100n1を駆動する。また、制御の対象とする送電装置100を示す値であるiを、1に設定する。ステップS100の後、処理はステップS110に進む。
【0042】
ステップS110において、送電制御装置120は、送電装置100niが接続する配電系統111の電流値を取得する。処理の開始直後は、i=1となるから、取得する電流値は、送電装置100n1が接続する配電系統111aの電流値である。ステップS110の後、処理はステップS120に進む。
【0043】
ステップS120において、送電制御装置120は、ピーク電流値記憶フラグが1であるか否かを判定する。ピーク電流値記憶フラグとは、ピーク電流値の記憶が行われている場合は1、行われていない場合は0とするブール値である。つまり、ステップS120において、送電制御装置120は、ピーク電流値の記憶が行われているか否かを判定する。ピーク電流値の記憶が行われている場合(ステップS120;Yes)、処理はステップS130に進む。ピーク電流値の記憶が行われていない場合(ステップS120;No)、処理はステップS121に進む。
【0044】
ステップS121において、送電制御装置120は、ステップS110において取得した電流値がピーク電流値を過ぎたか否かを判定する。ピーク電流値を過ぎたことは、例えば、電流値の変化率が負となったことを検出することにより判定することができる。ピーク電流値を過ぎたと判定する場合(ステップS121;Yes)、処理はステップS122に進む。ピーク電流値を過ぎていないと判定する場合(ステップS121;No)、処理はステップS110に戻り、処理を繰り返す。
【0045】
ステップS122において、送電制御装置120は、ピーク電流値を記憶する。また、ピーク電流値記憶フラグを1に設定する。ピーク電流値は、例えば、所定時間過去において取得した電流値の最大値で与える。ステップS122の後、処理はステップS110に戻り、処理を繰り返す。
【0046】
ステップS130において、送電制御装置120は、規格値を算出する。規格値は、ステップS110において取得した電流値と、ステップS122において記憶したピーク電流値から、式(1)により算出される。あるいは、さらに最小電流値を用いて、式(2)により算出される。ステップS130の後、処理はステップS140に進む。
【0047】
ステップS140において、送電制御装置120は、駆動フラグが1であるか否かを判定する。駆動フラグとは、後述するステップS142において1つ前方の送電装置100n(i+1)の駆動が行われている場合は1、行われていない場合は0とするブール値である。つまり、ステップS140において、送電制御装置120は、送電装置100n(i+1)の駆動が行われているか否かを判定する。送電装置100n(i+1)の駆動が行われている場合(ステップS140;Yes)、処理はステップS150に進む。送電装置100n(i+1)の駆動が行われていない場合(ステップS140;No)、処理はステップS141に進む。
【0048】
ステップS141において、送電制御装置120は、ステップS130において算出した規格値が所定の閾値k1未満となるか否かを判定する。閾値k1は、送電装置100n(i+1)を駆動する条件となる閾値であり、プログラムにあらかじめ与えられる値である。これは、例えば、最も充電効率が良くなるように実験的に与えられる。規格値が閾値k1未満となる場合(ステップS141;Yes)、処理はステップS142に進む。規格値が閾値k1以上である場合(ステップS141;No)、処理はステップS110に戻り、処理を繰り返す。
【0049】
ステップS142において、送電制御装置120は、送電装置100n(i+1)を駆動する。また、駆動フラグを1に設定する。ただし、送電装置100niが、連なって配置する送電装置100の終端であり、送電装置100n(i+1)が存在しない場合は、当然に駆動は行われない。ステップS142の後、処理はステップS110に戻り、処理を繰り返す。
【0050】
ステップS150において、送電制御装置120は、ステップS130において算出した規格値が所定の閾値k2未満となるか否かを判定する。閾値k2は、送電装置100niを停止する条件となる閾値であり、プログラムにあらかじめ与えられる値である。なお、閾値k2は、閾値k1よりも小さい値となるように与えられる。規格値が閾値k2未満となる場合(ステップS150;Yes)、処理はステップS160に進む。規格値が閾値k2以上となる場合(ステップS150;No)、処理はステップS110に戻り、処理を繰り返す。
【0051】
ステップS160において、送電制御装置120は、送電装置100niを停止する。また、ピーク電流値記憶フラグ及び駆動フラグを0に設定する。ステップS160の後、処理はステップS170に進む。
【0052】
ステップS170において、送電制御装置120は、送電装置100niが終端であるか否かを判定する。これは、例えば、配置する送電装置100の個数Nを、取得しあるいはプログラムにあらかじめ与えておき、iがNとなるか否かを判定することにより行うことができる。送電装置100niが終端である場合(ステップS170;Yes)、処理は終了する。送電装置100niが終端でない場合(ステップS170;No)、処理はステップS180に進む。
【0053】
ステップS180において、送電制御装置120は、iのインクリメントを行う。ステップS180の後、処理はステップS110に戻り、処理を繰り返す。
【0054】
以上説明した処理により、第1の実施の形態に係る送電制御装置120は、車両20の通過位置に対して適切に各々の送電装置100の駆動及び停止を行うことができる。図7は、第1の実施の形態に係る送電制御装置120による送電装置100の駆動及び停止を説明するための概念図である。図7は、車両20が、駆動している送電装置100n2を通過する場合を示している。車両20が、送電装置100n2を通過する順番に、(a)、(b)、(c)の3つにおいて、電流値又は規格値のグラフと、車両20の通過位置及び送電装置100の状態(駆動又は停止)を示す概念図と、を示している。(a)のグラフの縦軸は電流値であり、(b)及び(c)のグラフの縦軸は規格値である。
【0055】
(a)において、送電制御装置120は、送電装置100n2と接続する配電系統111aの電流値を取得する(ステップS110(i=2))。そして、送電制御装置120は、電流値がピーク電流値を過ぎたと判定し(ステップS121)、ピーク電流値を記憶する(ステップS122)。
【0056】
(b)において、送電制御装置は、送電装置100n2と接続する配電系統111aの電流値を取得し(ステップS110(i=2))、規格値を算出する(ステップS130)。そして、送電制御装置120は、規格値が閾値k1未満となったと判定し(ステップS141)、送電装置100n3を駆動する(ステップS142)。なお、2つの送電装置100n2と送電装置100n3が駆動することとなっても、それぞれが接続する配電系統111は異なるため、送電装置100n3が駆動することによって取得する電流値の特性が変化することはない。
【0057】
(c)において、送電制御装置120は、送電装置100n2と接続する配電系統111aの電流値を取得し(ステップS110(i=2))、規格値を算出する(ステップS130)。そして、送電制御装置120は、規格値が閾値k2未満となったと判定し(ステップS150)、送電装置100n2を停止する(ステップS160)。以降、送電装置100n3について、(a)、(b)、(c)と同様の処理を繰り返す。
【0058】
1-4.変形例
第1の実施の形態に係る送電システム10は、複数の受電装置200を備える移動体を対象としても良い。図8は、変形例に係る送電システム10の構成例を示すための概念図である。図8に示すように、車両20(移動体)は、複数の受電装置200を備える。送電システム10の構成は、図1において示すものと同等で良い。
【0059】
車両20が、複数の受電装置200を備える場合、配電系統111に流れる電流の変化が図2のグラフにより示すものと異なる。これは、各々の受電装置200と送電装置100との位置の関係が異なるためである。図9に、車両20が複数の受電装置200を備える場合の、配電系統111に流れる電流の変化を示すグラフ、及び電流値をピーク電流値で除すことにより規格化したグラフを示す。図9のグラフの構成は、図2及び図3において示すものと同等である。
【0060】
図9に示すように、配電系統111に流れる電流の変化は、車両20が1つの受電装置200を備える場合(図2のグラフにより示す)と異なっている。しかし、最接近位置でピーク電流値となること、及びピーク電流値で規格化することでギャップの違いや車幅方向のズレによる影響が少なくなること、は同じである。従って、送電制御装置120が図5及び図6において示す処理を好適に実行することにより、車両20の通過位置に対して適切に各々の送電装置100の駆動及び停止を行うことができる。なお、規格化は、ピーク電流値及び最小電流値を用いて、式(2)により算出しても良い。
【0061】
この場合に注意が必要となるのは、ステップS121の処理である。車両20が複数の受電装置200を備える場合、図9に示すように、電流値が部分的に極大となる点が複数存在し得るからである。従って、ピーク電流値を過ぎたことを適当に判定する必要がある。これは、例えば、部分的に極大となる点に至るまでの電流値の変化率の絶対値と、部分的に極大となった後の電流値の変化率の絶対値とが、同程度となることを検出することにより行うことができる。
【0062】
図10は、変形例に係る送電制御装置120による送電装置100の駆動及び停止を説明するための概念図である。図10の構成は、図7の構成と同等である。
【0063】
図10に示すように、車両20が複数の受電装置を備える場合であっても、1つの受電装置200を備える場合(図7)と同様に、適切に送電装置100の駆動及び停止を行うことができる。
【0064】
2.第2の実施の形態。
第2の実施の形態に係る送電システム10は、送電制御装置120が実行する処理が、第1の実施の形態と異なる。送電システム10の構成、及び配電系統111に流れる電流の特性は、図1乃至図4において説明するものと同等である。以下、前述した内容において既に説明した事項については適宜省略し、第2の実施の形態に係る送電制御装置120が実行する処理について説明する。
【0065】
2-1.送電制御装置が実行する処理
図11及び図12は、第2の実施の形態に係る送電制御装置120が実行する処理を示すフローチャートである。なお、図11及び図12に示すA、Bは、図11図12の間で対応しており、図11及び図12は1つのフローチャートを示している。また、図5及び図6で示すフローチャートと同一の符号の処理は、図5及び図6において説明した処理と同等である。
【0066】
第2の実施の形態に係る送電制御装置120が実行する処理は、図5及び図6で示す第1の実施の形態に係る送電制御装置120が実行する処理と比較して、ステップS130以降の処理が異なる。第2の実施の形態に係る送電制御装置120は、規格値が所定の閾値k3未満である場合は、送電装置100niを停止するとともに、送電装置100n(i+1)を駆動する。以下、ステップS130以降の処理について説明する。
【0067】
ステップS200において、送電制御装置120は、ステップS130において算出した規格値が所定の閾値k3未満となるか否かを判定する。閾値k1は、送電装置100niを停止するとともに、送電装置100n(i+1)を駆動する条件となる閾値であり、プログラムにあらかじめ与えられる値である。これは、例えば、最も充電効率が良くなるように実験的に与えられる。規格値が閾値k3未満となる場合(ステップS200;Yes)、処理はステップS210に進む。規格値が閾値k3以上となる場合(ステップS200;No)、処理はステップS110に戻り、処理を繰り返す。
【0068】
ステップS210において、送電制御装置120は、送電装置100niを停止する。また、ピーク電流値記憶フラグを0に設定する。ステップS210の後、処理はステップS220に進む。
【0069】
ステップS220において、送電制御装置120は、送電装置100niが終端であるか否かを判定する。送電装置100niが終端である場合(ステップS220;Yes)、処理は終了する。送電装置100niが終端でない場合(ステップS220;No)、処理はステップS230に進む。
【0070】
ステップS230において、送電制御装置120は、送電装置100n(i+1)を駆動する。ステップS230の後、処理はステップS240に進む。
【0071】
ステップS240において、送電制御装置120は、iのインクリメントを行う。ステップS240の後、処理はステップS110に戻り、処理を繰り返す。
【0072】
以上説明した処理により、第2の実施の形態に係る送電制御装置120は、車両20の通過位置に対して適切に各々の送電装置100の駆動及び停止を行うことができる。図13は、第2の実施の形態に係る送電制御装置120による送電装置100の駆動及び停止を説明するための概念図である。図13は、車両20が、駆動している送電装置100n2を通過する場合を示している。車両20が、送電装置100n2を通過する順番に、(a)、(b)の2つにおいて、電流値又は規格値のグラフと、車両20の通過位置及び送電装置100の状態(駆動又は停止)を示す概念図と、を示している。(a)のグラフの縦軸は電流値であり、(b)のグラフの縦軸は規格値である。
【0073】
(a)において、送電制御装置120は、送電装置100n2と接続する配電系統111aの電流値を取得する(ステップS110(i=2))。そして、送電制御装置120は、電流値がピーク電流値を過ぎたと判定し(ステップS121)、ピーク電流値を記憶する(ステップS122)。
【0074】
(b)において、送電制御装置120は、送電装置100n2と接続する配電系統111aの電流値を取得し(ステップS110(i=2))、規格値を算出する(ステップS130)。そして、送電制御装置120は、規格値が閾値k3未満となったと判定し(ステップS200)、送電装置100n2を停止するとともに、送電装置100n3を駆動する。なお、このとき、送電装置100n2と送電装置100n3それぞれが接続する配電系統111は異なるため、取得する電流値の特性がこの切り替えの影響を受けることはない。
【0075】
2-2.変形例
第2の実施の形態に係る送電制御装置120は、第1の実施の形態に係る送電制御装置120と同様に、複数の受電装置200を備える移動体を対象としても良い。この場合の、構成、配電系統に流れる電流、及び送電装置100の駆動及び停止は、第1の実施の形態の変形例において説明する内容と同様であり、説明は省略する。
【0076】
3.第3の実施の形態
第3の実施の形態に係る送電システム10は、送電制御装置120が実行する処理が、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と異なる。送電システム10の構成、及び配電系統111に流れる電流の特性は、図1乃至図4において説明するものと同等である。以下、前述した内容において既に説明した事項については適宜省略し、第3の実施の形態に係る送電制御装置120が実行する処理について説明する。
【0077】
第3の実施の形態に係る送電制御装置120が実行する処理は、基本的には、第1の実施の形態に係る送電制御装置120が実行する処理(図5及び図6)と同等である。ただし、ステップS150の処理が異なる。以下、図5及び図6で示すフローチャートに基づいて、第3の実施の形態に係る送電制御装置120が実行する処理について説明する。
【0078】
第3の実施の形態に係る送電制御装置120は、ステップS150の処理の実行前に、次の処理を実行する。ステップS122において記憶したピーク電流値から、送電装置100n(i+1)が接続する配電系統111に流れる電流のピーク電流値を推定する。そして、送電装置100n(i+1)が接続する配電系統111に流れる電流値を取得し、推定したピーク電流値で除した第2規格値を算出する。
【0079】
ステップS150に対応する処理として、第3の実施の形態に係る送電制御装置120は、第2規格値が所定の閾値k4以上となるか否かを判定する。第2規格値が閾値k4以上となる場合、処理はステップS160に進み、送電装置100niを停止する。第2規格値が閾値k4未満となる場合、処理はステップS110に戻り、処理を繰り返す。
【0080】
第1の実施の形態に係る送電制御装置120において、ステップS150における規格値は、普通、絶対値が小さい値をとる。このため、ステップS150の判定(送電装置100niの停止判定)は、ばらつきが大きくなりやすい。そこで、第3の実施の形態に係る送電制御装置120は、ステップS150に対応する処理として、第2規格値を用いる。これにより、送電装置100niの停止判定のばらつきを低減することができる。
【0081】
4.効果
以上説明したように、本実施の形態に係る送電システム10は、送電制御装置120が、規格値に基づいて各々の送電装置100の駆動及び停止を制御する。これにより、車両20に係るギャップや、車幅方向のズレが異なる場合であっても、適切に各々の送電装置の駆動及び停止を行うことが可能となる。
【0082】
なお、上記において、車両20について説明したが、車両20以外の移動体についても、本実施の形態を好適に適用することにより、同様の効果を得ることができる。つまり、位置ずれが生じている場合であっても、移動体の通過位置に対して適切に各々の送電装置の駆動及び停止を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0083】
10 送電システム
20 車両
30 電源
RD 道路
100 送電装置
101 駆動部
110 インバータ
111 配電系統
120 送電制御装置
130 センサ
200 受電装置
210 バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13