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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】建物付設物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/00 20060101AFI20241009BHJP
   E04B 1/348 20060101ALI20241009BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20241009BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20241009BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
E04B1/00 503
E04B1/348 V
E04H1/12 B
E04B1/70 E
E04B1/94 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020192137
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022080915
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鑄物 由喜
(72)【発明者】
【氏名】洞澤 晃
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-041477(JP,A)
【文献】特開平11-140998(JP,A)
【文献】特開平04-293834(JP,A)
【文献】特開2010-180600(JP,A)
【文献】特開2020-169439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00,1/348
E04B 1/70
E04B 9/02
E04D 1/30
E04D 13/16
E04B 1/94
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物本体の側面に沿って建物ユニットとポーチとが隣接配置された建物付設物であって、
前記建物ユニットの上部に設置する屋根部と、前記ポーチの屋根部とを一体化して、前記建物ユニットと前記ポーチの両方に跨る大きさの共用屋根とし、
前記共用屋根の前記建物ユニット側を除いた前記ポーチ側の軒先部分に給気部を設け、
前記共用屋根の前記ポーチ側を除いた前記建物ユニット側の軒元部分に排気部を設けて、
前記共用屋根の内部に、前記建物本体の前記側面に沿って前記ポーチ側の前記給気部から前記建物ユニット側の前記排気部へ向かう換気経路を形成し
前記ポーチと前記建物ユニットとの間に、
前記ポーチの下面に取付けられた軒天井材の前記建物ユニット側の端部と、
前記建物ユニットの前記ポーチ側の外壁の上端部とを同時に上から覆って、
前記軒天井材の前記建物ユニット側の端部と、前記建物ユニットの前記ポーチ側の前記外壁の上端部との間からの空気の出入りを防止することで、前記換気経路と外部とを隔てる防火板を設けたことを特徴とする建物付設物。
【請求項2】
建物本体の側面に沿って建物ユニットとポーチとが隣接配置された建物付設物であって、
前記建物ユニットの上部に設置する屋根部と、前記ポーチの屋根部とを一体化して、前記建物ユニットと前記ポーチの両方に跨る大きさの共用屋根とし、
前記共用屋根の前記建物ユニット側を除いた前記ポーチ側の軒先部分に給気部を設け、
前記共用屋根の前記ポーチ側を除いた前記建物ユニット側の軒元部分に排気部を設けて、
前記共用屋根の内部に、前記建物本体の前記側面に沿って前記ポーチ側の前記給気部から前記建物ユニット側の前記排気部へ向かう換気経路を形成し、
前記給気部は、前記共用屋根のフレーム部の上下方向の中間部に設けたスリットと、
前記共用屋根の前記フレーム部の表面側に設置される外壁パネルの裏面に予め取付けられて、前記フレーム部の上下方向の中間部における前記スリットの下側の位置に当接配置されるガラリとを有していることを特徴とする建物付設物。
【請求項3】
請求項1に記載の建物付設物であって、
前記給気部は、前記共用屋根のフレーム部の上下方向の中間部に設けたスリットと、
前記共用屋根の前記フレーム部の表面側に設置される外壁パネルの裏面に予め取付けられて、前記フレーム部の上下方向の中間部における前記スリットの下側の位置に当接配置されるガラリとを有していることを特徴とする建物付設物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の建物付設物であって、
前記共用屋根には、前記建物ユニット側から前記ポーチ側へ向かって下りとなる排水勾配が設けられていることを特徴とする建物付設物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物付設物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建物では、建物ユニットとポーチとを隣接配置してなる建物付設物を、建物に対して付設することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-264496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された建物付設物では、建物ユニットとポーチとが互いに別々の建物付設物となっていたので、建物ユニットの屋根部とポーチの屋根部とが別個独立のものとなっていた。そのため、建物ユニットの屋根部およびポーチの屋根部の工場での製造、施工現場への搬送、施工現場での建物本体への取付けなども別々となっており、その分、手間がかかるなどしていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記した問題点の改善に寄与することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に対して、本発明は、
建物本体の側面に沿って建物ユニットとポーチとが隣接配置された建物付設物であって、
前記建物ユニットの上部に設置する屋根部と、前記ポーチの屋根部とを一体化して、前記建物ユニットと前記ポーチの両方に跨る大きさの共用屋根とし、
前記共用屋根の前記建物ユニット側を除いた前記ポーチ側の軒先部分に給気部を設け、
前記共用屋根の前記ポーチ側を除いた前記建物ユニット側の軒元部分に排気部を設けて、
前記共用屋根の内部に、前記建物本体の前記側面に沿って前記ポーチ側の前記給気部から前記建物ユニット側の前記排気部へ向かう換気経路を形成し
前記ポーチと前記建物ユニットとの間に、
前記ポーチの下面に取付けられた軒天井材の前記建物ユニット側の端部と、
前記建物ユニットの前記ポーチ側の外壁の上端部とを同時に上から覆って、
前記軒天井材の前記建物ユニット側の端部と、前記建物ユニットの前記ポーチ側の前記外壁の上端部との間からの空気の出入りを防止することで、前記換気経路と外部とを隔てる防火板を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上記構成によって、建物ユニットの屋根部およびポーチの屋根部の製造、搬送、取付けを容易化することなどができる。
また、建物付設物は、建物本体の側面に沿ってポーチ側の給気部から建物ユニット側の排気部へ向かう換気経路を形成しても良い。これにより、ポーチと建物ユニットとの間に、一つの大きな換気経路を形成して、ポーチと建物ユニットとに対し、同時に小屋裏換気を行わせることができる。そして、換気経路では、建物ユニット側の軒先部分に給気部がなくなるため、給気部から建物ユニットへの雨水の入込みを防止することができる。
そして、上記した位置に防火板を設けることによって、ポーチの軒天井材と、防火板と、建物ユニットの外壁とを結ぶ、連続した防火ラインが形成され、この防火ラインによって、換気経路と外部とを隔てることができるため、必要な防火性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例にかかる建物付設物を備えた建物の平面図である。
図2図1の建物付設物の斜視図である。
図3図1の建物付設物の吸気経路を示す平面図である。
図4図3のポーチの給気部の縦断面図である。
図5】ガラリを取付けた外壁パネルを示す図である。このうち、(a)は側面図、(b)は背面図、(c)は平面図、(d)は(c)と幅違いの平面図である。
図6】ガラリの正面図である。
図7図3の建物ユニットの排気部の縦断面図である。
図8図3の建物ユニットの軒先側の部分を示す縦断面図である。
図9図1の建物ユニットとポーチの境界部分の縦断面図である。
図10図1の建物付設物の排水勾配の状態を示す平面図である。
図11】比較例にかかる建物付設物を備えた建物の平面図である。
図12図11の建物付設物の斜視図である。
図13図11の建物付設物の吸気経路を示す平面図である。
図14図13の建物ユニットの給気部の縦断面図である。
図15】屋根部のフレーム部に対する防水シートおよび外壁パネルの取付状態を示す側面図である。
図16】ガラリを備えた防水シートを示す図である。このうち、(a)は側面図、(b)は全体斜視図、(c)は背面側から見た部分拡大斜視図である。
図17図13の建物ユニットの排気部の縦断面図である。
図18図11の建物ユニットとポーチの境界部分の縦断面図である。
図19図11の建物付設物の排水勾配の状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1図19は、この実施の形態を説明するためのものである。このうち、図1図10が実施例、図11図19が比較例である。
【実施例1】
【0010】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0011】
図1図2に示すように、この実施例の建物付設物1は、建物2(建物本体)に対し付設して使用する構築物である。
【0012】
建物2は、どのような構造のものとしても良いが、例えば、ユニット建物などとすることができる。ユニット建物は、工場で予め製造した建物ユニット3を建築現場へ搬送して、建築現場で組み立てることによって、短期間のうちに構築できるようにした建物2である。建物ユニット3は、直方体状をした箱体などとなっている。建物ユニット3を複数組み合わせることで、建物2は、平屋建てや二階建て以上の多階建てなどにすることができる。
【0013】
建物付設物1は、この実施例では、建物ユニット5とポーチ6とを隣接配置したものとされる。建物付設物1は、建物2に固定されて、建物2と一体化される。
【0014】
建物ユニット5は、建物2(ユニット建物)を構成する建物ユニット3と同じものを使っても良いが、建物付設物1を構成する建物ユニット5は、例えば、建物2を構成する建物ユニット3よりも小型とされて、建物付設物1に適したものが用意されている。この実施例では、建物ユニット5は、建物付設物1として適した大きさを有する直方体状の箱体となっている。
【0015】
ポーチ6は、建物2から張出すように設けられる庇状の構築物である。
【0016】
建物付設物1を構成する建物ユニット5およびポーチ6は、通常、ほぼ建物2の1階分の高さを有して地上部分に設置されるものとなっている。
【0017】
上記のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えることができる。
【0018】
(1-1)建物付設物1は、建物ユニット5の上部に設置する屋根部11と、ポーチ6の屋根部12とを一体化して、建物ユニット5とポーチ6の両方に跨る大きさの共用屋根13にする。
【0019】
ここで、建物付設物1に使われる建物ユニット5では、建物ユニット5の上部に、建物2(建物本体)のものとは別の専用の屋根部11が設置される。建物ユニット5の屋根部11は、建物ユニット5の上部の全面を覆う平面視ほぼ矩形状のものとされる。屋根部11は、全体的にほぼ平坦なものとされる。
【0020】
ポーチ6は、屋根部12と、柱14とで構成される。ポーチ6の屋根部12は、平面視ほぼ矩形状で、全体的にほぼ平坦なものとされる。図では、柱14は、ポーチ6の屋根部12の、建物2および建物ユニット5とは反対側に位置するコーナー部の近傍に1本設置されている。
【0021】
建物ユニット5およびポーチ6は、それぞれ建物2(ユニット建物)を構成する建物ユニット3の幅に合った大きさに形成されて、各建物ユニット3に対してそれぞれ付設される。
【0022】
共用屋根13は、建物ユニット5の屋根部11とポーチ6の屋根部12とを一体化した形状(平面視ほぼ矩形状)及び大きさのものとされる。共用屋根13は、建物ユニット5とポーチ6の間に亘って、連続する一つのほぼ平坦な面を形成するように設けられる。共用屋根13は、建物2側の部分を建物2に取付けられる。
【0023】
共用屋根13は、少なくとも、水平な一対の桁フレーム15,16と、水平な一対の妻フレーム17とを有する平面視ほぼ矩形状のフレーム部18を有している。一対の桁フレーム15,16は、建物2における、建物付設物1を取付ける側面と平行で、互いに長さがほぼ等しいほぼ直線状をした部材とされる。一対の妻フレーム17は、桁フレーム15,16と垂直で、互いに長さがほぼ等しいほぼ直線状をした部材とされる。
【0024】
この実施例では、共用屋根13(および桁フレーム15,16)は、2つの建物ユニット3の幅を合わせた長さとされて、2つの建物ユニット3間に跨るように設けられている。
【0025】
フレーム部18の内部には、屋根部11,12の両方に対して、それぞれ複数本の水平な垂木19が設けられている。垂木19は、妻フレーム17とほぼ同じ長さのほぼ直線状をした部材とされる。垂木19は、桁フレーム15,16の長手方向(桁方向X)に間隔を有して、妻フレーム17と平行に設置される。垂木19は、両端部を桁フレーム15,16に取付けられる。
【0026】
この実施例では、桁フレーム15,16、妻フレーム17、垂木19は、金属製とされている。なお、方向については、共用屋根13を基準として、妻フレーム17の長手方向を妻方向Yとする。桁方向X、妻方向Yは、上下方向Zと垂直な方向であり桁方向X、妻方向Y、上下方向Zは、互いに直交する三方向となる。
【0027】
(1-2)図3に示すように、
共用屋根13のポーチ6側の軒先部分に給気部22を設ける。
共用屋根13の建物ユニット5側の軒元部分に排気部24を設ける。
そして、ポーチ6側の給気部22から建物ユニット5側の排気部24へ向かう換気経路25を形成しても良い。
【0028】
ここで、軒先部分は、妻方向Yに対して、建物2とは反対側となる部分のことであり、共用屋根13の桁フレーム15側の部分となる。
【0029】
給気部22は、空気を吸込むようにした部分である。給気部22は、共用屋根13(のポーチ6側)の軒先側の縁部に設けられる。
【0030】
軒元部分は、妻方向Yに対して、建物2側となる部分のことであり、共用屋根13の桁フレーム16側の部分となる。
【0031】
排気部24は、空気を排出するようにした部分である。排気部24は、共用屋根13(の建物ユニット5側)の軒元側の縁部に設けられる。
【0032】
換気経路25は、給気部22から排気部24へ向かう、共用屋根13の小屋裏換気のための空気の通り道のことである。この実施例では、換気経路25は、ポーチ6の側から建物ユニット5の側へ向かって桁方向Xに延びている。
【0033】
(2)図4に示すように、
給気部22は、共用屋根13のフレーム部18に設けたスリット31と、
共用屋根13のフレーム部18の表面側に設置される外壁パネル32の裏面に予め取付けられて、フレーム部18におけるスリット31の下側の位置に当接配置されるガラリ34とを有しても良い。
【0034】
ここで、フレーム部18は、共用屋根13の外形を構成する一対の桁フレーム15,16と、一対の妻フレーム17とのうちの、軒先側に位置する桁フレーム15となる。軒先側の桁フレーム15は、縦向きのウェブ部15aと、ウェブ部15aの上縁部および下縁部から軒元側へ向かってほぼ水平に延びる横向きの上下のフランジ部15b,15cとを有する断面C字状の形鋼などとされる。軒先側の桁フレーム15は、建物ユニット5側からポーチ6側までの全域に亘って、桁方向Xに直線的に連続して延びる長尺の部材であり、スリット31を除いた全体が均一断面とされる。なお、スリット31は、軒先側の桁フレーム15に対し、工場にて後加工で形成される。
【0035】
スリット31は、軒先側の桁フレーム15のポーチ6側の部分における、上下方向Zの中間部の位置に形成される。スリット31は、軒先側の桁フレーム15に取付けられる各外壁パネル32と対応させて、単数または複数形成される。スリット31は、各外壁パネル32と対向する位置に、各外壁パネル32の幅に応じた所要の長さ、および、所要のスリット幅を有して、ほぼ水平に形成される。各スリット31は、連続して延びるように設けても良いし、不連続となるように設けても良い。
【0036】
外壁パネル32(図5)は、共用屋根13のフレーム部18の軒元側の辺(桁フレーム16)を除く、軒先側の辺(桁フレーム15)と、左右の妻側の辺(妻フレーム17)の三辺の外面に対し、これらの三辺を外側から取り囲むように取付けられる。外壁パネル32は、後述する建物2(建物本体)の外壁44(図7)や、後述する建物ユニット5の外壁49(図8)に使われるもの(外壁パネル)と同じ種類や色調のものを使用する。この際、外壁パネル32は、これら(の外壁パネル)と割付けが同じになるように、幅寸法や位置などを揃えた状態で複数枚取付けられる。そのため、共用屋根13には、図5(c)(d)に示すような、各種の幅の外壁パネル32が使用される。
【0037】
軒先側の桁フレーム15に取付けられる外壁パネル32の裏面は、外壁パネル32の軒元側の面、または、軒先側の桁フレーム15と対向する面となる。外壁パネル32の裏面には、少なくとも外壁パネル32の上縁部またはその近傍に沿って、外壁パネル32を保持するための金属製の保持枠32a(横枠)が、単数または複数横向きに取付けられている。また、外壁パネル32の両側縁部またはその近傍に沿って、外壁パネル32を保持するための金属製の保持枠32b(縦枠)が、単数または複数縦向きに取付けられている。
【0038】
これらの保持枠32a,32bによって、軒先側の桁フレーム15に外壁パネル32を取付けたときに、外壁パネル32の裏面と軒先側の桁フレーム15との間には、給気部22を構成する給気隙間35が形成される。給気隙間35は、保持枠32a,32bの厚み分の隙間となる。
【0039】
そして、少なくとも、給気部22を設ける位置に設置される外壁パネル32については、その下縁部に、保持枠32aを取付けないようにする。これにより、外壁パネル32の下部に、給気部22の給気口38が形成され、外部の空気を下側の給気口38から給気隙間35へ取り込めるようになる。
【0040】
なお、外壁パネル32が軒先側の桁フレーム15に取付けられた状態で、外壁パネル32の上端部と、軒先側の桁フレーム15の上側のフランジ部15bとの間には、笠木36が取付けられる。笠木36は、外壁パネル32の上端部を覆うと共に、外壁パネル32の上端部に沿って桁方向Xに延びる部材である。
【0041】
また、外壁パネル32の下端部の下側には、外壁パネル32の下端部に沿って桁方向Xに延びるカバー部材37が取付けられる。このカバー部材37は、外壁パネル32の下端部周辺の見栄えを整えると共に、軒先側の水切りを行う部材である。また、カバー部材37は、給気部22の給気口38を外部から見え難くする部材である。そして、カバー部材37を外壁パネル32の下端部に対して僅かに離して設置することで、このカバー部材37の上下にできる隙間を通って、給気部22の給気口38から給気隙間35へと空気が給入される。
【0042】
なお、カバー部材37の下側には、カバー部材37に対し僅かな隙間を有して軒先見切部材39が設置される。軒先見切部材39は、後述する軒天井材51の軒先側の縁部を覆い隠すように、軒天受木桟55に取付けられる。
【0043】
ガラリ34(図6)は、空気を通すと共に、スリット31への雨水の侵入を防止するための通気用部材である。ガラリ34は、給気隙間35とほぼ同じ厚みとされて、給気隙間35を横に遮るように設けられる。ガラリ34は、桁フレーム15のスリット31の下部に、スリット31に沿い、少なくとも、スリット31とほぼ同じ長さかそれよりも若干長い長さとなるように桁方向Xに設置される。
【0044】
これにより、ガラリ34は、スリット31の下部の位置で、給気隙間35を各スリット31ごとに横に遮るようになる。そして、ガラリ34の内部を通った空気がスリット31へ入ることになる。この実施例では、ガラリ34は、各外壁パネル32ごとに、左右の保持枠32b間の間隔と同じ長さに形成されたものが、各外壁パネル32の左右の保持枠32b間の、スリット31の下部となる位置に取付けられている。
【0045】
ガラリ34は、外壁パネル32の裏面に、例えば、両面テープや接着剤などで、予め表側の面を、外壁パネル32と一体になるように取付けられる。また、ガラリ34の裏側の面に、例えば、両面テープを貼付けておき、外壁パネル32を共用屋根13に取付けたときに、ガラリ34の裏側の面が、両面テープによって軒先側の桁フレーム15に貼付けられるようにしても良い。
【0046】
ガラリ34は、ほぼ上下に延びる空気通路34a,34bを、外壁パネル32の裏面に沿って多数横に連接したものとされている。空気通路34a,34bは、雨水が通り抜け難くなるように、鉛直方向に対して傾斜した状態に形成される。これにより、給気隙間35を上昇してきた空気は、ガラリ34の傾斜した空気通路34a,34bを下から上へ通り抜けると共に、空気に含まれる水分は、傾斜した空気通路34a,34bの側壁に捕集されて、空気通路34a,34bを流下される。空気通路34a,34bの傾斜角度は、水平に対して45度以上とするのが好ましい。
【0047】
ガラリ34は、更に雨水が通り抜け難くなるように、向きの異なる傾斜を有する複数の空気通路34a,34bを、互いに連通するように上下に交互に組合わせて接続することで、空気通路34a,34bを屈折形状やジグザグ形状にしている。この実施例では、空気通路34a,34bは、途中で逆に屈折する「く」字状または斜めにしたL字状となっている。
【0048】
このようなガラリ34は、例えば、内部に矩形断面の穴部を多数平行に有するプラスチックダンボールを加工して形成することができる。これにより、各空気通路34a,34bは、断面形状が矩形となるが、空気通路34a,34bの断面形状は、矩形に限るものではない。ガラリ34は、外壁パネル32やスリット31の幅に応じた幅寸法のものを作成して、外壁パネル32の裏面に、外壁パネル32やスリット31の幅に合うように取付けられる。
【0049】
これに対し、排気部24は、図7に示すようになっている。
【0050】
即ち、共用屋根13は、建物2(建物本体)の上階部分(を構成する建物ユニット3)の床梁41とほぼ同じ高さの位置に設置されている。
【0051】
共用屋根13は、上面が、垂木19の上に野地板42を貼設し、野地板42の上面に金属製の屋根仕上材43を取付けて、屋根仕上材43でフレーム部18の上を覆ったものとなっている。野地板42や屋根仕上材43は、建物ユニット5の屋根部11に設けられるものと、ポーチ6の屋根部12(図4)に設けられるものとが同じとされて、建物ユニット5とポーチ6の間に連続して設置される。
【0052】
屋根仕上材43の周縁部には、周縁部からの雨水の漏れを防止するための立上部43aが形成される。立上部43aは、屋根仕上材43の各辺に対し、均一な高さで各辺に沿い連続して形成される。そして、屋根仕上材43の軒元側の縁部の立上部43aには、その表面側(軒先側の面)に、図6と同様のガラリ34が取付けられる。
【0053】
また、建物2(建物本体)の上階部分の外壁44(外壁パネル)は、下端部が立上部43aの上縁部よりも若干高い位置にて終わることで、外壁44の下端部と立上部43aの上縁部との間に隙間が形成される。少なくとも、上階の建物ユニット3の下部には、外壁44の裏側に水切シート45が取付けられる。水切シート45は、その下端部が屈曲されて上記した隙間から軒先側へ取出され、立上部43aのガラリ34の表面側に沿うように設置される。
【0054】
これにより、建物2の上階部分から流下された雨水は、水切シート45の上面に沿って共用屋根13の屋根仕上材43の上面へと流下される。
【0055】
一方、共用屋根13の野地板42や屋根仕上材43の下側に形成される換気経路25を通った空気は、共用屋根13の軒元側の桁フレーム16と建物2の上階部分の下部の床梁41との間の隙間を上昇する。上昇した空気は、水切シート45に当たって上昇を止められた後に、水切シート45の下面により案内されてガラリ34を上から下へと通り抜け、屋根仕上材43の上面へと排気されるようになる。そのため、排気部24から排出される空気と、建物2の上階部分からの雨水とは、水切シート45によって互いに隔てられる。
【0056】
なお、共用屋根13の軒元側の桁フレーム16は、縦向きのウェブ部と、ウェブ部の下縁部から軒先側へ向けてほぼ水平に延びる横向きのフランジ部とを有するL字断面の部材とされている。
【0057】
更に、建物2の上階部分の外壁44の下部には、立上部43aを覆い隠すための水切部材46が設けられる。水切部材46は、上端部分が外壁44の裏側(上階の建物ユニット3の間柱47の表面など)に、水切シート45の上側の部分の屋外側に重ねた状態で、水切シート45と共に取付けられる。
【0058】
水切部材46は、中間の段差部分が外壁44の裏面側から立上部43aの上の隙間を通って外壁44の表面側へ突出される。水切部材46は、下端部分が屋根仕上材43に達しない長さで下方へ延ばされる。そして、水切部材46は、中間の段差部分および下端部分が、立上部43a、ガラリ34、水切シート45の下端部分に接しないように、これらと間隔を有して、外壁44の下端部と立上部43aの上端部との間に設置される。
【0059】
なお、図8に示すように、共用屋根13の建物ユニット5側の軒先部分については、給気部22を有さない構造になっている。
【0060】
即ち、外壁パネル32の下端部に保持枠32aを取付けることで、外壁パネル32の裏面と軒先側の桁フレーム15との間の隙間は、下部を閉塞している。また、共用屋根13の軒先側の桁フレーム15にはスリット31が設けられず、外壁パネル32の裏面にはガラリ34は取付けられない。これにより、共用屋根13の建物ユニット5側の軒先部分は、換気経路25から遮断される。
【0061】
なお、共用屋根13の軒先側の桁フレーム15の下部には、水切シート48が設けられる。水切シート48の下端部は、建物付設物1を構成する建物ユニット5の外壁49(外壁パネル)の上端面、上端外面に被せられ、貼付けられる。水切シート48の下端部は、カバー部材37によって覆い隠される。
【0062】
同様に、共用屋根13のポーチ6側の軒元部分は、排気部24を有さない構造になっている(不図示)。
【0063】
(3)図9図3)に示すように、
ポーチ6と建物ユニット5との間に、ポーチ6の下面に取付けられた軒天井材51の建物ユニット5側の端部と、建物ユニット5のポーチ6側の外壁49の上端部とを同時に上から覆って、換気経路25と隔てる防火板53を設けても良い。
【0064】
ここで、ポーチ6の下面には、軒天受木桟固定梁54および軒天受木桟55を介して軒天井材51が取付けられる。軒天井材51は、ポーチ6の下面を覆い隠す面材であり、防火性能を有している。ポーチ6部分の換気経路25は、軒天井材51と野地板42との間に形成される。これに対し、建物ユニット5部分の換気経路25は、建物ユニット5の天井(不図示)と野地板42との間に形成される。
【0065】
軒天井材51の建物ユニット5側の端部は、金属製の軒天見切材56およびシール部材57を介して建物ユニット5のポーチ6側の外壁49の上端部の側面に対し当接された状態に設置される。軒天見切材56は、軒天井材51の建物ユニット5側の端部を包持可能なC字型の断面の部分を有する部材とされる。
【0066】
建物ユニット5のポーチ6側の外壁49の上端部と、建物ユニット5の天井梁58の上面との間には、妻方向Yに沿ってシート状の防水材59が貼付けられている。建物ユニット5の天井梁58は、金属製の部材とされており、共用屋根13の桁フレーム15と同様に、ウェブ部58aと上下のフランジ部58bとを有する断面C字状の形鋼となっている。
【0067】
建物ユニット5のポーチ6側の外壁49は、建物ユニット5の他の部分の外壁49と同じものとなっており、それぞれが防火性能を有している。
【0068】
防火板53は、上下方向Zに向いた面を有して妻方向Yへ延び、両端が一対の桁フレーム15,16に達する長さの帯状の金属板とされる。防火板53は、所要の防火性能が得られる材質および肉厚に形成される。防火板53は、共用屋根13の金属製とされた垂木19に、ネジなどの固定具61で固定された断面L字型の固定金具62を介して、ほぼ水平な状態に設置される。断面L字型の固定金具62は、縦面部と横面部とを有しており、縦面部が垂木19に固定され、横面部に防火板53を固定する。
【0069】
また、防火板53は、軒天見切材56の上端部に一体に形成された取付部56aに、ネジなどの固定具63で下側から上に向けて固定される。更に、防火板53は、両端部を桁フレーム15,16に固定しても良い。
【0070】
防火板53は、軒天井材51と天井梁58との間に跨るように設けられる。即ち、防火板53は、幅方向(桁方向X)の一側部が、軒天井材51(の建物ユニット5側)の端部の上に、軒天井材51と間隔を有して上下に重なるように設けられて、軒天井材51(の建物ユニット5側)の端部の上を覆っている。また、防火板53は、幅方向の他側部が、建物ユニット5の天井梁58(のフランジ部58b)の上に、天井梁58と僅かな隙間を有して上下に重なるように設けられて、建物ユニット5の天井梁58の上部を覆っている。
【0071】
建物ユニット5のポーチ6側の外壁49の上端部の位置では、防水材59の上面にFPシートなどの高密度繊維複合部材64が取付けられている。高密度繊維複合部材64は、防火板53に達するか、または、達しない程度の厚みを有している。これにより、高密度繊維複合部材64は、外壁49の上端部と防火板53との間の隙間をなくすか、または、隙間を小さくしている。
【0072】
また、建物ユニット5の天井梁58の上部の位置では、防水材59の上面にシール部材65が取付けられている。シール部材65は、防火板53に達する厚みを有している。これにより、シール部材65は、天井梁58(のフランジ部58b)と防火板53との間の僅かな隙間をシールする。
【0073】
そして、防火板53を設けることで、ポーチ6の下面の軒天井材51と、建物ユニット5のポーチ6側の外壁49とをつないで連続する防火ライン66が形成される。この防火ライン66によって換気経路25が外部から隔てられる。
【0074】
(4)図10に示すように、共用屋根13には、建物ユニット5側からポーチ6側へ向かって下りとなる排水勾配71が設けられても良い。
【0075】
ここで、排水勾配71は、雨水を流すための1°~3°程度の緩い傾斜のことである。図では、排水勾配71は、上流側から下流側へ向かう矢印で示されている。雨水は、共用屋根13の上を、建物ユニット5側からポーチ6側へ向かって桁方向Xに流下される。排水勾配71は、全域に亘って同じ角度にするのが好ましい。
【0076】
上記したように、共用屋根13の上面は、建物ユニット5側からポーチ6側までの全体が、野地板42を介して金属製の屋根仕上材43で覆われている(図9)。そして、屋根仕上材43は、桁方向Xに対し、建物ユニット5側が高くなり、ポーチ6側が低くなるように傾斜させることで、建物ユニット5側からポーチ6側へ向かって下りとなる一つの連続した排水勾配71を形成するようにしている。
【0077】
そして、排水勾配71を有する共用屋根13の最も低い位置、即ち、共用屋根13のポーチ6側における、建物ユニット5から桁方向Xに最も離れた縁部の位置には、屋根仕上材43および野地板42の下面側に受樋72が設けられる。これにより、共用屋根13の上に降った雨水は、排水勾配71を下って受樋72に集められる。
【0078】
受樋72は、妻方向Yに対し、軒元側から軒先側までのほぼ全域に亘って延びると共に、軒先側へ向かって下り勾配となるように設置される。これにより、受樋72内の雨水は、受樋72を、軒元側から軒先側へ向って流下される。そして、受樋72の軒先側の位置には、雨水の落し口73が設けられる。落し口73は、建物2の排水設備に接続して、最終的に下水道に流されるようにしても良い。
【0079】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0080】
まず、比較例について説明する。建物ユニット101とポーチ102とを隣接配置した既存の建物付設物103は、図11図19に示すようになっている。
【0081】
図11図12に示すように、既存の建物付設物103では、建物ユニット101とポーチ102とは、別々のものとなっていた。そして、建物ユニット101の上部に設置する屋根部104と、ポーチ102の屋根部105とは、別個独立で、それぞれ構造が異なるものとなっていた。
【0082】
そのため、建物ユニット101の屋根部104とポーチ102の屋根部105とは、工場で別々に製造する必要があり、効率的ではなかった。そして、建物ユニット101の屋根部104およびポーチ102の屋根部105の施工現場への搬送、施工現場での建物本体への取付けなどについても、それぞれ別々になっていたので、その分、手間がかかっていた。
【0083】
図13に示すように、建物付設物103としての建物ユニット101では、その上部に設置される屋根部104は、軒先部分に給気部106を備えると共に、軒元部分に排気部107を備えていた。そのため、給気部106から建物ユニット101内へ雨水が入込むおそれがあった。
【0084】
なお、建物ユニット101とは別の建物付設物103となっているポーチ102では、ポーチ102の屋根部105には、給気部106、排気部107に相当するものは特に設けられていなかった。そのため、換気経路108は、建物ユニット101の屋根部104のみとなっており、ポーチ102については、小屋裏換気を行うことができなかった。
【0085】
図14(~図16)に示すように、建物ユニット101の屋根部104の給気部106では、フレーム部111(を構成する軒先側の桁フレーム112)を上部フレーム113と下部フレーム114とに分けて形成していた。別部材とされた上部フレーム113と下部フレーム114とを、間に隙間を設けて配置するようにしていた。そして、この隙間内または隙間の下部にガラリ116を設置するようにしていた。
【0086】
そのため、フレーム部111にガラリ116を設置するために、フレーム部111を上部フレーム113と下部フレーム114とに分ける必要があり、上部フレーム113と下部フレーム114とを別々に設ける分だけ、部品コストや設置の手間などがかかっていた。
【0087】
また、ガラリ116は、図16に示すような水切シート117に取付けていた。そして、ガラリ116を取付けた状態で、図15に示すように、ポーチ102の屋根部105の上部フレーム113と下部フレーム114との間には、水切シート117を取付けるようにしていた。そして、ガラリ116は、上部フレーム113と下部フレーム114との隙間または隙間の下部に設置させていた。
【0088】
そのため、上部フレーム113と下部フレーム114との間に水切シート117を貼り付ける際や、フレーム部111に外壁パネル32を設置する際などに、水切シート117やガラリ116の形状や位置が安定せず、水切シート117やガラリ116の設置に時間がかかっていた。
【0089】
また、水切シート117は、外壁パネル32の割付けや配置によって構成が変化される。そのため、例えば、幅寸法が同じ水切シート117であっても、使い回しすることができなかった。そこで、水切シート117は、外壁パネル32の具体的な割付けや配置に応じて、その都度、専用の構成のものを作成しなければならず、部品点数の増大化を招いていた。
【0090】
しかも、このような水切シート117は、接着剤や両面テープなどによってフレーム部111に貼付けられる。そのため、水切シート117に接着剤を塗布したり両面テープを貼付けたりするのに手間がかかる。また、ガラリ116の取付位置に対し、水切シート117の内外面に空気を通過させるための切込部118を設ける手間がかかる。よって、水切シート117は、それ自体の構成を整えるのに多大な手間を要していた。
【0091】
なお、排気部107については、図17に示すように、屋根仕上材43の立上部43aに、予めガラリ116を取付けた水切シート119を設置することで、ガラリ116を固定するようにしていた。そのため、排気部107の水切シート119にも、給気部106の水切シート117と同様の問題があった。
【0092】
図18に示すように、ポーチ102と建物ユニット101とは、互いに別個独立した建物付設物103となっており、互いに構造的に切離されていた。そのため、防火性については、それぞれで確保するようになっていた。
【0093】
しかし、建物ユニット101の屋根部104と、ポーチ102の屋根部105との間の境界部分については、両者を連結して一体化するようにしていた。そして、連結部分に、屋根部104および屋根部105よりも高くなる棟部121を形成し、棟部121に棟カバー122を取付けて、棟部121を棟カバー122で覆うなどしていたため、その分、手間がかかっていた。
【0094】
図19に示すように、建物ユニット101の屋根部104とポーチ102の屋根部105とは、互いに別個独立したものとなっており、構造も互いに全く異なっていた。そのため、建物ユニット101の屋根部104とポーチ102の屋根部105とには、それぞれ軒先側へ向かって下りとなる排水勾配141,142を別個に設ける必要があり、それぞれ別個に排水を行うようにしていた。
【0095】
そして、建物ユニット101の屋根部104とポーチ102の屋根部105とのそれぞれには、その軒先側に受樋143,144と、落し口145,146とを個別に設けるようにしていた。そのため、建物ユニット101には、雨水の排水に伴う雨だれの発生リスクがあった。
【0096】
また、建物ユニット101の屋根部104とポーチ102の屋根部105に対し、排水の落し口145,146がそれぞれ別々に設けられるので、落し口145,146が2箇所になってしまい、その分、コストがかかっていた。
【0097】
この構造となっていることによって、既存の建物付設物1には、まだ改善の余地が有った。
【0098】
そこで、この実施例の建物付設物1では、建物ユニット5の屋根部11と、ポーチ6の屋根部12とを一体化して一つの共用屋根13にすると共に、共用屋根13に対して上記のような構成を採用した。これにより、建物付設物1の構造を改善して、以下のような効果が得られるようになる。
【0099】
建物付設物1では、例えば、敷地への建物2の据付後に、建物2に対して建物付設物1を構成する建物ユニット5を設置する。次に、建物ユニット5の上に共用屋根13を載置すると共に、ポーチ6側に必要な柱14を取付ける。このような工程によって、建物ユニット5とポーチ6とを関連性のある一つのつながった建物付設物1として簡単に建物2に設置することができる。
【0100】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0101】
(効果 1-1)建物付設物1は、建物ユニット5の屋根部11と、ポーチ6の屋根部12とを一体化して一つの共用屋根13としても良い。これにより、建物ユニット5の屋根部11とポーチ6の屋根部12とを工場で別々に製造する必要をなくすことができる。また、工場では、共用屋根13を効率良く生産して、生産性を向上することができる。そして、共用屋根13にすることで、建物ユニット5の屋根部11とポーチ6の屋根部12との境界部分に、比較例のように、両者を連結する棟部121を形成したり、棟部121に棟カバー122を取付けたりする手間を削減して、構造を簡略化することができる。
【0102】
そして、共用屋根13は、工場から施工現場への搬送、施工現場でのクレーン作業を一度に行うことができるので効率が良い。また、共用屋根13にすることで、建物ユニット5の屋根部11とポーチ6の屋根部12とを、施工現場で建物2にそれぞれ別々に取付けたり、互いに連結したりする手間がなくなるので、建物付設物1を設置する際の現地工数を削減することができる。
【0103】
更に、共用屋根13にすることで、建物ユニット5の屋根部11とポーチ6の屋根部12との納まりが同じになるため、建物付設物1の外観を整えて、建物付設物1を見栄え良いものにすることができる。
【0104】
(効果 1-2)建物付設物1は、ポーチ6側の給気部22から建物ユニット5側の排気部24へ向かう換気経路25を形成しても良い。これにより、ポーチ6と建物ユニット5との間に、一つの大きな換気経路25を形成して、ポーチ6と建物ユニット5とに対し、同時に小屋裏換気を行わせることができる。そして、換気経路25では、建物ユニット5側の軒先部分に給気部22がなくなるため、給気部22から建物ユニット5への雨水の入込みを防止することができる。
【0105】
(効果 2)建物付設物1は、共用屋根13のフレーム部18に設けたスリット31と、外壁パネル32の裏面に予め取付けられたガラリ34とで、給気部22の主要部が構成されるようにしても良い。これにより、共用屋根13のフレーム部18は、スリット31を設けるだけで給気部22の一部を形成できるようになる。よって、例えば、比較例のように、建物ユニット101の屋根部104のフレーム部111を、上部フレーム113と下部フレーム114とに分けて別部材で設け、その間の隙間などにガラリ116を設置するなどの複雑で手間とコストのかかる構成にする必要をなくすことができる。そして、建物ユニット5側とポーチ6側で同じ一本の桁フレーム15を用いて共用屋根13のフレーム部18を形成することができ、共用屋根13の構成の簡略化と、共用屋根13に要する手間およびコストの削減とを図ることができる。
【0106】
また、外壁パネル32の裏側に予めガラリ34を取付けておくだけで、フレーム部18の表面側に外壁パネル32を設置したときに、スリット31の下側の位置にガラリ34が当接配置されて給気部22の主要部が構成されるので、給気部22を設置する作業が容易になる。
【0107】
そして、外壁パネル32の裏側にガラリ34を取付ける構造にしたことによって、外壁パネル32の幅に合ったガラリ34を作成して、外壁パネル32にその外壁パネル32の幅に合ったガラリ34を取付けるだけで、建物ユニット5の外壁44に合わせた、共用屋根13の外壁パネル32の割付け、および、ガラリ34の設置が容易に行えるようになる。
【0108】
(効果 3)建物ユニット5の屋根部11とポーチ6の屋根部12とを一体化して共用屋根13とした場合、ポーチ6と建物ユニット5は、共用屋根13によってつながるため、ポーチ6と建物ユニット5との間に、新たに防火ライン66を設定する必要が生じる。
【0109】
そこで、建物付設物1は、ポーチ6の下面の軒天井材51の端部と、建物ユニット5の外壁49の上端部とを同時に上から覆う防火板53を設けるようにしても良い。これにより、軒天井材51の端部と、外壁49の上端部が、防火板53によって換気経路25から隔てられる。そのため、ポーチ6と建物ユニット5との間の位置では、防火板53によって、換気経路25から外部への空気の漏れや、外部から換気経路25への空気の入り込みなどがない状態になる。
【0110】
また、上記した位置に防火板53を設けることによって、ポーチ6の軒天井材51と、防火板53と、建物ユニット5の外壁49とを結ぶ、連続した防火ライン66が形成される。この防火ライン66によって、換気経路25と外部とを隔てることができる。よって、必要な防火性能を確保することができる。
【0111】
(効果 4)建物付設物1は、共用屋根13に、建物ユニット5側からポーチ6側へ向かって下りとなる排水勾配71を設けても良い。これにより、共用屋根13は、建物ユニット5側からポーチ6側へ雨水を流下させて、共用屋根13のポーチ6側の縁部の位置から雨水をまとめて排水することができる。そして、建物ユニット5側には雨水を排水する落し口73がいらなくなるので、共用屋根13は、建物ユニット5側の部分における雨水の排水に伴う雨漏りの発生リスクを低減することが可能になる。また、共用屋根13では、排水の落し口73は、ポーチ6側の1箇所だけとなるので、全体としての落し口73の数を減らしてコストを削減することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 建物付設物
2 建物
5 建物ユニット
6 ポーチ
11 屋根部
12 屋根部
13 共用屋根
16 桁フレーム
18 フレーム部
22 給気部
24 排気部
25 換気経路
31 スリット
32 外壁パネル
34 ガラリ
51 軒天井材
53 防火板
71 排水勾配
X 桁方向
Y 妻方向
Z 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19