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特許7569209ブラックマトリックス用顔料分散組成物、ブラックマトリックス用レジスト組成物、及び、ブラックマトリックス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】ブラックマトリックス用顔料分散組成物、ブラックマトリックス用レジスト組成物、及び、ブラックマトリックス
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20241009BHJP
   C09C 1/48 20060101ALI20241009BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20241009BHJP
   G03F 7/004 20060101ALN20241009BHJP
【FI】
G02B5/20 101
C09C1/48
C09D17/00
G03F7/004 505
G03F7/004 501
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020195210
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083711
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】辻 康人
(72)【発明者】
【氏名】灰藤 哲
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-082533(JP,A)
【文献】特開2007-094181(JP,A)
【文献】特開2013-147528(JP,A)
【文献】国際公開第2018/038083(WO,A1)
【文献】特開2004-139050(JP,A)
【文献】特開2010-107965(JP,A)
【文献】特開2014-102346(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187822(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/186181(WO,A1)
【文献】特開2017-062334(JP,A)
【文献】特開2016-170324(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0221654(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20-5/28
C09C 1/48
C09D 17/00
G03F 7/004
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色着色剤と、銅フタロシアニンのスルホン化物と、アミン化合物と、バインダー樹脂とを含み、
前記アミン化合物が以下の(A)~(D)から選ばれる少なくとも1種であり、
前記アミン化合物の含有量が、前記銅フタロシアニンのスルホン化物100質量部に対して5~100質量部であり、
前記バインダー樹脂は、光重合性化合物及び/又はアルカリ可溶性樹脂を含む
ブラックマトリックス用顔料分散組成物。
(A)ピリジン骨格を有するアミン化合物
(B)アニリン骨格を有するアミン化合物
(C)カルバゾール骨格を有するアミン化合物
(D)炭素数8以上の直鎖アルキル基を有し、炭素原子の総数が20以下であるアミン化合物
【請求項2】
前記アミン化合物は、ピリジン、p-アミノアゾベンゼン、ビスアニリンフルオレン、3-アミノ-N-エチルカルバゾール、ドデシルアミン、1-アミノ-3-ウンデカノキシプロパンから選択される少なくとも1種である請求項1に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項3】
前記銅フタロシアニンのスルホン化物は、分子中にスルホン酸基を0.5~3個有する請求項1又は2に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項4】
前記黒色着色剤は、カーボンブラックを含む請求項1~3のいずれか1項に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項5】
前記カーボンブラックは、酸性カーボンブラックである請求項4に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物から得られるブラックマトリックス用レジスト組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のブラックマトリックス用レジスト組成物から形成されるブラックマトリックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラックマトリックス用顔料分散組成物、ブラックマトリックス用レジスト組成物、及び、ブラックマトリックスに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶やプラズマ等を用いた画像表示装置においては、画面の表示領域内の着色パターンの間隙や表示領域周辺部分の縁、また、TFTを用いた液晶ディスプレイではTFTの外光側等で遮光膜(ブラックマトリックス)が設けられている。
そして、液晶表示装置では主にバックライトからの漏れ光が、また、プラズマ表示装置では主に各色光の混濁によるにじみが画面に写り込むのを防止して、表示特性(コントラスト及び色純度)を向上させるために役立っている。
【0003】
例えば、液晶表示装置のバックライトの白色光を着色光に変換するために利用されるカラーフィルターでは、通常、ブラックマトリックスを形成したガラスやプラスチックシート等の透明基板表面に、赤、緑、青の異なる色相の画素を順次、ストライプ状あるいはモザイク状等のパターンで形成する方法で製造されている。
【0004】
また、画像表示装置と位置入力装置を合わせたタッチパネルにおいても、同様に遮光膜としてブラックマトリックスが形成されたカラーフィルターが利用されており、これまでは、カバーガラスを挟んで、センサー基板と反対の側に形成することが一般的になされていた。しかし、タッチパネルの軽量化への要求が高まるにつれて、より軽量化が図れるよう、カバーガラスの同じ側に遮光膜とタッチセンサーを同時に形成する技術の開発が進んでいる。
【0005】
このようなブラックマトリックスを形成する方法として、例えば、顔料を用いたフォトリソグラフィー法(顔料法)が利用されている。
このような顔料法では、顔料の分散性を高めるために、銅フタロシアニンのスルホン酸誘導体が用いられることがある。
【0006】
例えば、特許文献1では、吸油量が10~150ml/100g、pHが9より大きい範囲にあるカーボンブラックと、ポリエステル鎖を有する塩基性基含有ウレタン系高分子顔料分散剤と、酸基含有顔料誘導体としてスルホン酸基を有するフタロシアニン誘導体とが溶剤中に分散されていることを特徴とするブラックマトリックス用顔料分散組成物が開示されている。
【0007】
ブラックマトリックスでは、基板に対する密着性が必要とされる。
しかしながら、特許文献1では、密着性について充分な検討がなされておらず、更なる改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2008/066100号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、基板に対する密着性に優れるブラックマトリックスを形成することができるブラックマトリックス用顔料分散組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、黒色着色剤と、銅フタロシアニンのスルホン化物とを含むブラックマトリックス用顔料分散組成物において、更に、特定のアミン化合物を含有させることにより、基板に対する密着性に優れるブラックマトリックスを形成することができるブラックマトリックス用顔料分散組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、黒色着色剤と、銅フタロシアニンのスルホン化物と、アミン化合物とを含み、上記アミン化合物が以下の(A)~(D)から選ばれる少なくとも1種であるブラックマトリックス用顔料分散組成物である。
(A)ピリジン骨格を有するアミン化合物
(B)アニリン骨格を有するアミン化合物
(C)カルバゾール骨格を有するアミン化合物
(D)炭素数8以上の直鎖アルキル基を有し、炭素原子の総数が20以下であるアミン化合物
上記アミン化合物は、ピリジン、p-アミノアゾベンゼン、ビスアニリンフルオレン、3-アミノ-N-エチルカルバゾール、ドデシルアミン、1-アミノ-3-ウンデカノキシプロパンから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、上記銅フタロシアニンのスルホン化物は、分子中にスルホン酸基を0.5~3個有することが好ましい。
また、上記黒色着色剤は、カーボンブラックを含むことが好ましい。
また、上記カーボンブラックは、酸性カーボンブラックであることが好ましい。
また、本発明は、上記ブラックマトリックス用顔料分散組成物から得られるブラックマトリックス用レジスト組成物でもある。
また、本発明は、上記ブラックマトリックス用レジスト組成物から形成されるブラックマトリックスでもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板に対する密着性に優れるブラックマトリックスを形成することができるブラックマトリックス用顔料分散組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<ブラックマトリックス用顔料分散組成物>
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、黒色着色剤と、銅フタロシアニンのスルホン化物と、アミン化合物とを含み、上記アミン化合物が以下の(A)~(D)から選ばれる少なくとも1種である。
(A)ピリジン骨格を有するアミン化合物
(B)アニリン骨格を有するアミン化合物
(C)カルバゾール骨格を有するアミン化合物
(D)炭素数8以上の直鎖アルキル基を有し、炭素原子の総数が20以下であるアミン化合物
【0014】
(黒色着色剤)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、黒色着色剤を含有する。
上記黒色着色剤としては、カーボンブラックを含むことが好ましく、表面抵抗値を好適に付与する観点から、上記カーボンブラックが酸性カーボンブラックであることがより好ましい。
上記カーボンブラックとしては、平均一次粒子径20~60nmが好ましく、なかでも平均一次粒子径20~60nmの中性カーボンブラック及び/又は平均一次粒子径20~60nmの酸性カーボンブラックがより好ましい。
上記黒色着色剤の一次粒子径が20nmより小さい場合、又は60nmより大きい場合は、十分な遮光性を有しないことや、保存安定性に劣ることがある。
なお、上記平均一次粒子径は、電子顕微鏡観察による算術平均径の値である。
【0015】
上記黒色着色剤は、表面抵抗値を好適に付与する観点から、酸性カーボンブラックのみを含むことが好ましい。
一方で、上記中性カーボンブラックと酸性カーボンブラックとを併用する場合には、中性カーボンブラックと酸性カーボンブラックとの合計質量に対して上記中性カーボンブラックが85質量%以下であることが好ましく、上記中性カーボンブラックが75質量%以下であることがより好ましい。
上記カーボンブラックの中性カーボンブラックの含有量が85質量%より多い場合は、シール強度が低下することがある。
【0016】
上述した酸性カーボンブラックと中性カーボンブラックについて説明する。
カーボンブラックは、表面の構造により、酸性カーボンブラックと中性カーボンブラックに大別できる。酸性カーボンブラックとは、元々あるいは人工的に酸化した炭素質物質であり、蒸留水と混合煮沸した時に酸性を示す。一方、中性カーボンブラックは、蒸留水と混合煮沸した時に中性またはそれより高いpHを示すことが知られている。
【0017】
上記中性カーボンブラックとしては、pHが8.0~10.0の範囲が好ましく、具体的には、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製のプリンテックス25(平均一次粒子径56nm、pH9.5)、プリンテックス35(平均一次粒子径31nm、pH9.5)、プリンテックス65(平均一次粒子径21nm、pH9.5)、三菱ケミカル社製のMA#20(平均一次粒子径40nm、pH8.0)、MA#40(平均一次粒子径40nm、pH8.0)、MA#30(平均一次粒子径30nm、pH8.0)等が挙げられる。
【0018】
上記酸性カーボンブラックとしては、pHが2.0~4.0の範囲が好ましく、具体的には、コロンビアケミカルズ社製のRaven1080(平均一次粒子径28nm、pH2.4)、Raven1100(平均一次粒子径32nm、pH2.9)、三菱ケミカル社製のMA-8(平均一次粒子径24nm、pH3.0)、MA-100(平均一次粒子径22nm、pH3.5)、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製のスペシャルブラック250(平均一次粒子径56nm、pH3.0)、スペシャルブラック350(平均一次粒子径31nm、pH3.0)、スペシャルブラック550(平均一次粒子径25nm、pH4.0)、NEROX305(平均一次粒子径28nm程度、pH約2.8)等が挙げられる。
【0019】
上記黒色着色剤としては、顔料分散性や表面抵抗値を好適に付与する観点から、スペシャルブラック250やNEROX305であることが好ましい。
【0020】
なお、上記pHは、カーボンブラック1gを、炭酸を除いた蒸留水(pH7.0)20mlに添加してマグネチックスターラーで混合して水性懸濁液を調製し、ガラス電極を使用して25℃で測定することができる(ドイツ工業品標準規格 DIN ISO 787/9)。
【0021】
上記黒色着色剤の含有量としては、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物の全固形分に対する質量分率として、3~70質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。
上記黒色着色剤の含有量が3質量%未満では、ブラックマトリックスを形成した場合の遮光性が低くなることがあり、70質量%を超えると、顔料分散が困難となることがある。
【0022】
(銅フタロシアニンのスルホン化物)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、銅フタロシアニンのスルホン化物を含有する。
上記銅フタロシアニンのスルホン化物は、上記黒色着色剤の微粒子化や分散の工程において、基本骨格の部分が顔料表面に吸着し、スルホン酸基が有機溶剤や顔料分散剤との親和力を高めることにより、上記黒色着色剤の分散時の微細化や、分散後の分散安定性等を向上させる効果を有する。
【0023】
上記銅フタロシアニンのスルホン化物における銅フタロシアニンとしては、銅フタロシアニン骨格を有する構造であれば特に限定されず、例えば、銅フタロシアニン骨格にアルキル基や、ハロゲン原子等の公知の置換基を有していてもよいが、スルホン酸基導入の容易性の観点から、置換基を有さない構造であることが好ましい。
【0024】
上記銅フタロシアニンのスルホン化物は、分子中にスルホン酸基を0.5~3個有することが好ましい。
このように、分子中にスルホン酸基を0.5~3個有することにより、密着性に優れた塗膜を得ることができるブラックマトリックス用組成物とすることができる。
上記銅フタロシアニンのスルホン化物は、分子中にスルホン酸基を0.7~2.5個有することがより好ましく、0.9~2.0個有することが更に好ましい。
なお、上記分子中に有するスルホン酸基の数は、元素分析による硫黄原子と銅原子の比率をもとに算出できる。
【0025】
上記銅フタロシアニンのスルホン化物としては、市販品を用いてもよく、例えば、ソルスパース12000(いずれも日本ルーブリゾール社製)や、VALIFAST BLUE1605(オリヱント化学工業社製)の脱ナトリウム物や、TURQUOISE EC-GN(ハンツマン社製)等が挙げられる。
【0026】
上記銅フタロシアニンのスルホン化物の含有量は、上記黒色着色剤100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましい。
【0027】
(アミン化合物)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、アミン化合物を含有する。
上記アミン化合物は、以下の(A)~(D)から選ばれる少なくとも1種である。
(A)ピリジン骨格を有するアミン化合物
(B)アニリン骨格を有するアミン化合物
(C)カルバゾール骨格を有するアミン化合物
(D)炭素数8以上の直鎖アルキル基を有し、炭素原子の総数が20以下であるアミン化合物
このようなアミン化合物を含有することにより、(A)~(C)においては各アミン化合物の骨格が有する増感作用により、(D)においてはアルキル基の適度な炭素数に起因するバインダー樹脂との相溶性により均一な塗膜形成、ひいては密着性に寄与すると考えられる。また、上記黒色着色剤として酸性カーボンブラックを用いた場合には、アミン化合物の骨格が有する増感作用により表面抵抗値にも優れたブラックマトリックスを形成することができる。
ただし、本発明は上記メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0028】
上記ピリジン骨格を有するアミン化合物としては、ピリジンの他、アルキル基やアミノ基を有するピリジン骨格を有するアミン化合物等であってもよい。
具体的には、2-メチルピリジン(2-ピコリン)、3-メチルピリジン(3-ピコリン)、4-メチルピリジン(4-ピコリン)、2-エチルピリジン、3-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、5-エチル-2-メチルピリジン等のアルキルピリジン;3,4-シクロペンテノピリジン、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリン、イソキノリン、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン、キノリン、4-ジメチルアミノピリジン、2-アミノピリジン、3-アミノピリジン、4-アミノピリジン、4-(3-フェニルプロピル)ピリジン、ニコチン酸、イソニコチン酸等が挙げられる。
なかでも、ピリジン、4-(3-フェニルプロピル)ピリジンが好ましい。
【0029】
上記アニリン骨格を有するアミン化合物としては、アニリン、フェニレンジアミン、アミノナフタレン、ジアミノナフタレン、メシジン、メチルアニリン、メタニル酸、アミノフェノール、ビスアニリンフルオレン、p-アミノアゾベンゼン、2,4-ジアミノアゾベンゼン、4,4-ジアミノアゾベンゼン等が挙げられる。
なかでも、ベンゼン環を2個以上有することが好ましく、p-アミノアゾベンゼン、ビスアニリンフルオレンがより好ましい。
【0030】
上記カルバゾール骨格を有するアミン化合物としては、3,6-ジアミノカルバゾール、3-アミノ-N-エチルカルバゾール等が挙げられる。
なかでも、3-アミノ-N-エチルカルバゾールが好ましい。
【0031】
上記炭素数8以上の直鎖アルキル基を有し、炭素原子の総数が20以下であるアミン化合物としては、1級アミンであっても、2級アミンであってもよく、具体的には、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ノニルアミン、ジノニルアミン、デシルアミン、ジデシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、イコシルアミン、ジメチルラウリルアミン、1-アミノ-3-ウンデカノキシプロパン等が挙げられる。
なかでも、上記炭素数が10以上の直鎖アルキル基を有すること、炭素原子の総数が16以下であることが好ましく、具体的にはドデシルアミン、1-アミノ-3-ウンデカノキシプロパンが好ましい。
【0032】
上記アミン化合物は、ピリジン、p-アミノアゾベンゼン、ビスアニリンフルオレン、3-アミノ-N-エチルカルバゾール、ドデシルアミン、1-アミノ-3-ウンデカノキシプロパンから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
このようなアミン化合物は、増感作用を有する構造や、バインダー樹脂との相溶性が良好な構造であるため、好適に使用することができる。
【0033】
上記アミン化合物は、上記銅フタロシアニンのスルホン化物100質量部に対して、5~100質量部が好ましく、20~60質量部がより好ましい。
【0034】
(有機溶剤)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、有機溶剤を含有することが好ましい。
上記有機溶剤としては、従来から液晶ブラックマトリックスレジストの分野で使用されている有機溶剤が好適に使用できる。
【0035】
上記有機溶剤としては、具体的には、常圧(1.013×10kPa)における沸点が100~250℃のエステル系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、エーテルエステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、芳香族炭化水素系有機溶剤、含窒素系有機溶剤等である。
上記沸点が250℃を超える有機溶剤を多量に含有していると、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物から得られるブラックマトリックス用レジスト組成物を塗布して形成される塗膜をプレベークする際に、有機溶剤が充分に蒸発せずに乾燥塗膜内に残存し、乾燥塗膜の耐熱性が低下することがある。
また、上記沸点100℃未満の有機溶剤を多量に含有していると、ムラなく均一に塗布することが困難になり、表面平滑性に優れた塗膜が得られなくなることがある。
【0036】
上記有機溶剤としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル系有機溶剤;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、δ-ブチロラクトン等のケトン系有機溶剤;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、蟻酸n-アミル等のエステル系有機溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の含窒素系有機溶剤等を例示できる。これらは、単独で又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0037】
上記有機溶剤の中でも、溶解性、分散性、塗布性等の点で、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、蟻酸n-アミル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることがより好ましい。
【0038】
(顔料分散剤)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、顔料分散剤を含有することが好ましい。
上記顔料分散剤としては、塩基性基含有顔料分散剤であり、アニオン性界面活性剤、塩基性基含有ポリエステル系顔料分散剤、塩基性基含有アクリル系顔料分散剤、塩基性基含有ウレタン系顔料分散剤、塩基性基含有カルボジイミド系顔料分散剤、酸性基含有高分子顔料分散剤等を用いることができる。
これらの塩基性基含有顔料分散剤は、単独で用いてもよく、また、2種類以上の組み合わせを用いてもよい。中でも、良好な顔料分散性が得られる点から、塩基性基含有高分子顔料分散剤が好ましい。
【0039】
上記塩基性基含有高分子顔料分散剤の具体例としては、
(1)ポリアミン化合物(例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンポリイミン等のポリ(低級アルキレンアミン)等)のアミノ基および/またはイミノ基と、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミドおよびポリエステルアミドよりなる群から選択される少なくとも1種との反応生成物(特開2001-59906号公報)、
(2)ポリ(低級)アルキレンイミン、メチルイミノビスプロピルアミン等の低分子アミノ化合物と、遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応生成物(特開昭54-37082号公報、特開平01-311177号公報)、
(3)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に、メトキシポリエチレングリコール等のアルコール類やカプロラクトンポリエステル等の水酸基を1個有するポリエステル類、2~3個のイソシアネート基反応性官能基を有する化合物、イソシアネート基反応性官能基と第3級アミノ基とを有する脂肪族または複素環式炭化水素化合物を順次反応させてなる反応生成物(特開平02-612号公報)、
(4)アルコール性水酸基を有するアクリレートの重合物に、ポリイソシアネート化合物とアミノ基を有する炭化水素化合物とを反応させた化合物、
(5)低分子アミノ化合物にポリエーテル鎖を付加させてなる反応生成物、
(6)イソシアネート基を有する化合物にアミノ基を有する化合物を反応させてなる反応生成物(特開平04-210220号公報)、
(7)ポリエポキシ化合物に遊離のカルボキシル基を有する線状ポリマーおよび2級アミノ基を1個有する有機アミン化合物を反応させた反応生成物(特開平09-87537号公報)、
(8)片末端にアミノ基と反応し得る官能基を有するポリカーボネート化合物とポリアミン化合物との反応生成物(特開平09-194585号公報)、
(9)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート等のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルから選択される少なくとも1種と、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアミド、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アミノ基とポリカプロラクトン骨格を有するモノマー等の塩基性基含有重合モノマーの少なくとも1種と、スチレン、スチレン誘導体、その他の重合性モノマーの少なくとも1種との共重合体(特開平01-164429号公報)、
(10)塩基性基含有カルボジイミド系顔料分散剤(国際公開WO04/000950号公報)、
(11)3級アミノ基、4級アンモニウム塩機等の塩基性基を有するブロックと官能基を有していないブロックからなるブロック共重合体(特開2005-55814号公報の記載参照)、
(12)ポリアリルアミンにポリカーボネート化合物をマイケル付加反応させて得られる顔料分散剤(特開平09-194585号公報)、
(13)ポリブタジエン鎖と塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物(特開2006-257243号公報)、
(14)分子内にアミド基を有する側鎖と、塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物(特開2006-176657号公報)、
(15)エチレンオキサイド鎖とプロピレンオキサイド鎖を有する構成単位を有し、かつ四級化剤により四級化されたアミノ基を有するポリウレタン系化合物(特開2009-175613号公報)、
(16)分子内にイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物のイソシアネート基と、分子内に活性水素基を有し、かつ、カルバゾール環及び/又はアゾベンゼン骨格を有する化合物の活性水素基とを反応させて得られる化合物であって、該化合物の分子内の、イソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物に由来するイソシアネート基と、イソシアネート基と活性水素基との反応により生じたウレタン結合及び尿素結合との合計に対するカルバゾール環とアゾベンゼン骨格の数が15~85%である化合物(特願2009-220836)、
(17)アミノ基を有するアクリレート重合物に、ポリエーテルまたは、ポリエステル側鎖を導入したグラフト共重合体等が挙げられる。
【0040】
上記塩基性基含有高分子顔料分散剤の中でも、塩基性基含有ウレタン系高分子顔料分散剤、塩基性基含有ポリエステル系高分子顔料分散剤、塩基性基含有アクリル系高分子顔料分散剤がより好ましく、アミノ基含有ウレタン系高分子顔料分散剤、アミノ基含有ポリエステル系高分子顔料分散剤、アミノ基含有アクリル系高分子顔料分散剤がさらに好ましい。上記塩基性基含有高分子顔料分散剤の中でも、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、およびポリカーボネート鎖よりなる群から選択される少なくとも1種を有する塩基性基(アミノ基)含有高分子顔料分散剤が特に好ましい。
【0041】
上記顔料分散剤の含有量としては、上記黒色着色剤100質量部に対して、1~200質量部であることが好ましく、5~100質量部であることがより好ましい。
【0042】
(バインダー樹脂)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、バインダー樹脂を含有することが好ましい。
【0043】
上記バインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光重合性化合物、アルカリ可溶性樹脂等が挙げられる。これらは単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0044】
上記熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム、エポキシ樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。
【0045】
上記光重合性化合物としては、光重合性不飽和結合を分子内に1個又は2個以上有するモノマー、光重合性不飽和結合を有するオリゴマー等が挙げられる。
【0046】
上記光重合性不飽和結合を分子内に1個有するモノマーとして、例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等のアルキルメタクリレート又はアクリレート、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート等のアラルキルメタクリレート又はアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレート又はアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキルメタクリレート又はアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアリールエーテルのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、イソボニルメタクリレート又はアクリレート、グリセロールメタクリレート又はアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート又はアクリレート等を用いることができる。
【0047】
上記光重合性不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマーとして、例えば、ビスフェノールAジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタアリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、エポキシメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタアリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エポキシアクリレート等を用いることができる。
【0048】
上記光重合性不飽和結合を有するオリゴマーとしては、上記モノマーを適宜重合させて得られたものを用いることができる。
上記バインダー樹脂は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
上記バインダー樹脂としては、耐熱性と現像性の観点から、エポキシアクリレート樹脂であることが好ましい。
【0050】
上記アルカリ可溶性樹脂については、後述する。
【0051】
上記バインダー樹脂の含有量は、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物の全固形分に対する質量分率として、3~50質量%であることが好ましい。
【0052】
(ブラックマトリックス用顔料分散組成物の製造方法)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物の製造方法としては、上述した各種成分を加え、混合及び練肉することにより得ることができる。
上記練肉をする方法としては特に限定されず、例えば、ビーズミル、レディーミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザー等を用い、公知の方法により練肉すればよい。
【0053】
<ブラックマトリックス用レジスト組成物>
本発明は、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物から得られるブラックマトリックス用レジスト組成物でもある。
【0054】
(ブラックマトリックス用顔料分散組成物)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、上述した本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物を含有する。
上記ブラックマトリックス用顔料分散組成物の含有量としては、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物の全質量を基準として、30~80質量%であることが好ましく、40~75質量%であることがより好ましい。
【0055】
(光重合開始剤)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。
上記光重合開始剤としては、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射されることにより、ラジカルやカチオンを発生することのできるものであれば特に限定されず、例えば、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)エタノン、ベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2,3-ジクロロアントラキノン、3-クロル-2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、1,2-ベンゾアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等のベンゾフェノン系、チオキサントン系、アントラキノン系、トリアジン系等の光重合開始剤等が挙げられる。
上記光重合開始剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0056】
上記光重合開始剤の含有量は、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物の全固形分に対する質量分率として、1~20質量%であることが好ましい。
【0057】
(光重合性化合物)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、光重合性化合物を含有することが好ましい。
上記光重合性化合物としては、上述したブラックマトリックス用顔料分散組成物において記載したものを適宜選択して用いることができる。
【0058】
上記光重合性化合物の含有量は、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物の全固形分に対する質量分率として、0.1~50質量%であることが好ましい。
【0059】
(アルカリ可溶性樹脂)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。
上記アルカリ可溶性樹脂としては、上記黒色着色剤に対してバインダーとして作用し、かつ、ブラックマトリックスを製造する際に、その現像処理工程において用いられる現像液、特にアルカリ現像液に対して可溶性を有するものであることが好ましい。
【0060】
上記アルカリ可溶性樹脂としては、ブロック共重合体としても良い。ブロック共重合体を採用することにより、他の共重合体よりも、顔料分散能が向上し、PGMEAやアルカリ現像液への溶解性を付与することができる。
そのブロック共重合体のなかでも、1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体からなるブロックと、他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体からなるブロックを有するブロック共重合体が好ましい。
【0061】
上記ブロック共重合体としては、特に限定されるものではなく、従来から使用されているものが使用できる。なかでも、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と共重合可能なスチレン、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリセロールモノアクリレート、グリセロールメタクリレート、N-フェニルマレイミド、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、カルボエポキシジアクリレート等のモノマー、オリゴマー類の群から選ばれる少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体との共重合体を挙げることができる。
ただし、N-ビニルピロリドン、硫黄元素含有モノマーは使用しない方が望ましい。
上記ブロック共重合体としては、リビングラジカル重合、アニオン重合にて合成されたブロック樹脂を採用できる。
上記ブロック共重合体の一部のブロック部分は、ランダム共重合体から構成されていても良い。
【0062】
上記アルカリ可溶性樹脂として、アルカリ可溶性カルド樹脂を採用することもできる。
上記アルカリ可溶性カルド樹脂としては、フルオレンエポキシ(メタ)アクリル酸誘導体とジカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物との付加生成物であるフルオレン骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物等を挙げることができる。
また、本アルカリ可溶性樹脂は、光重合性の官能基を有していても良い。
【0063】
上記アルカリ可溶性樹脂の酸価としては、現像特性の観点から5~300mgKOH/gが好ましく、5~250mgKOH/gがより好ましく、10~200mgKOH/gがさらに好ましく、60~150mgKOH/gが特に好ましい。
なお、本明細書において、上記酸価は理論酸価であり、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体とその含有量に基づいて算術的に求めた値である。
【0064】
上記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、現像特性や有機溶剤への溶解性の観点から1,000~100,000が好ましく、3,000~50,000がより好ましく、5,000~30,000がさらに好ましい。
なお、本発明において、上記重量平均分子量は、GPCに基づいて得られるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
本明細書において、上記重量平均分子量を測定する装置としては、Water2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてはPLgel 5μm MIXED-D(Agilent Technologies社製)を用いる。
【0065】
上記アルカリ可溶性樹脂の含有量は、上記黒色着色剤100質量部に対して、1~200質量部が好ましく、10~150質量部がさらに好ましい。
この場合、上記アルカリ可溶性樹脂の含有量が1質量部未満では、現像特性が低下することがあり、上記アルカリ可溶性樹脂の含有量が200質量部を超えると、上記黒色着色剤の濃度が相対的に低下するため、薄膜として目的とする色濃度を達成することが困難となることがある。
【0066】
上記アルカリ可溶性樹脂としては、1級、2級、及び3級の何れのアミノ基も含有せず、さらに4級アンモニウム基も含有しないことが好ましい。さらに、塩基性基を有しないことがより好ましい。
なお、本発明による効果を毀損しない範囲において、ブロック共重合体以外の構造を有するアルカリ可溶性樹脂を配合してもよい。
【0067】
(有機溶剤)
上記有機溶剤としては、上述したブラックマトリックス用顔料分散組成物で記載した有機溶剤を適宜選択して用いることができる。
【0068】
上記有機溶剤の含有量としては、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物の全質量を基準として、1~40質量%であることが好ましく、5~35質量%であることがより好ましい。
【0069】
(その他の添加剤)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、必要に応じて、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜使用することができる。
【0070】
(ブラックマトリックス用レジスト組成物の製造方法)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物の製造方法としては、例えば、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物を作製し、その後、残りの材料を加えて攪拌装置等を用いて攪拌混合することにより作製することができる。
上記攪拌、混合する方法としては特に限定されず、超音波分散機、高圧乳化機、ビーズミル、3本ロール、サンドミル、ニーダー等、公知の方法を用いることができる。
また、上記攪拌、混合後にフィルターで濾過を行ってもよい。
なお、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物を作製する際に、必要に応じて、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物で記載した上記黒色着色剤、上記エポキシ樹脂、上記オキサジン化合物等を添加してもよい。
【0071】
<ブラックマトリックス>
本発明のブラックマトリックスは、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物から形成される。
【0072】
本発明のブラックマトリックスの形成方法としては特に限定されず、例えば、透明基板上に本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物を塗布し、乾燥して塗膜を形成した後、上記塗膜上にフォトマスクを置き、該フォトマスクを介して画像露光、現像、必要に応じて光硬化等の方法によりブラックマトリックスを形成することができる。
【0073】
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物を塗布、乾燥、露光及び現像する方法等は、公知の方法を適宜選択することができる。
また、上記透明基板としては、ガラス基板、プラスチック基板等、公知の透明基板を適宜選択して用いることができる。
【0074】
上記塗膜の厚みとしては、乾燥後の膜厚として、0.2~10μmが好ましく、0.5~6μmがより好ましく、1~4μmがさらに好ましい。
上記厚みの範囲とすることにより、所定のパターンを好適に現像することができ、所定の光学濃度を好適に付与することができる。
【0075】
本発明のブラックマトリックスは、スピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(EAGLE XG)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、高圧水銀灯で露光(UV積算光量80mJ/cm)し、更に230℃で60分間ポストベークを行い、ベタ部のみで形成されたブラックレジストパターンを作製したときの表面抵抗値が、2.0×10Ω/□以上が好ましく、5.0×10Ω/□以上がより好ましく、1.0×10Ω/□以上がさらに好ましい。
上記表面抵抗値が、2.0×10Ω/□以上であれば、短絡や電流漏れを好適に防止することができる。
なお、上記表面抵抗値は、本体:微小電流計 R8340、オプション:シールドボックス R12702A(いずれもアドバンス社製)にて測定することができる。
【0076】
本発明のブラックマトリックスは、スピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(EAGLE XG)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、高圧水銀灯で露光(UV積算光量40mJ/cm)し、更に230℃で60分間ポストベークを行い、ベタ部のみで形成されたブラックレジストパターンを作製し、上記ブラックレジストパターンを50mgのシール剤(商品名「XN-21S」、三井化学社製)を介して、直径1.6mmのステン釘に貼り合わせて試験片を作製した場合に、シール強度が、250N/mm以上が好ましく、280N/mm以上がより好ましく、300N/mm以上がさらに好ましく、320N/mm以上が特に好ましい。
上記シール強度が250N/mm以上であれば、基板に対する密着性が十分であるといえる。
なお、上記シール強度は、上記試験片を、荷重測定器(LTS-200N/500N、Minebea社製)を用いて10mm/minの速度で引っ張り、ステン釘が試験片から剥離した際の最大応力を測定し、シール剤塗布面積で割ることにより、単位面積当たりのシール強度(N/mm)を求めることができる。
【0077】
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物、ブラックマトリックス用レジスト組成物、及び、ブラックマトリックスは、上述した特性を有するため、画像表示装置やタッチパネル等のブラックマトリックスとして好適に用いることができる。
【実施例
【0078】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はその主旨と適用範囲を逸脱しない限りこれらに限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、本実施例において、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0079】
以下の実施例、比較例で使用する各種材料は以下のとおりである。
<黒色着色剤>
酸性カーボンブラック(商品名「NEROX305」、平均一次粒子径28nm程度、pH約2.8、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製)
中性カーボンブラック(商品名「プリンテックス35」、平均一次粒子径31nm、pH約9.5、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製)
<顔料分散剤>
DISPERBYK-167(固形分52質量%、ビックケミー社製)
<アミン化合物>
p-アミノアゾベンゼン(東京化成工業社製)
ドデシルアミン(ニッサンアミンBB、日油社製)
1-アミノ-3-ウンデカノキシプロパン(ニッサンアミンM-14、日油社製)
ピリジン(東京化成工業社製)
ビスアニリンフルオレン(大阪ガスケミカル社製)
3-アミノ-N-エチルカルバゾール(東京化成工業社製)
<バインダー樹脂>
ZCR-1569H(エポキシアクリレート樹脂、固形分70質量%、日本化薬社製)
<有機溶剤>
PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
<光重合開始剤>
OXE02(製品名「イルガキュアOXE02」、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)エタノン、BASF社製)
<光重合性化合物>
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
<アルカリ可溶性樹脂>
WR-301(製品名「WR-301」、カルド系樹脂、酸価100mgKOH/g、固形分45質量%、ADEKA社製)
【0080】
<銅フタロシアニンのスルホン化物の作製>
VALIFAST BLUE 1605(銅フタロシアニンのスルホン化物(1分子中にスルホン酸基を2個含有)のナトリウム中和物、オリヱント化学工業社製)の5質量部を、イオン交換水95質量部に溶解させ、陽イオン交換樹脂(商品名「DOWEX MONOSPHERE 650C H Cation Exchange Resin」、ダウ・ケミカル社製)を用いてイオン交換した。その後、乾燥させて、VB1605脱Na物(銅フタロシアニンのスルホン化物)を得た。
【0081】
<分散用組成物の作製>
(分散用組成物1)
ソルスパース12000(銅フタロシアニンのスルホン化物(1分子中にスルホン酸基を約0.9個含有)、日本ルーブリゾール社製)と、ドデシルアミンとを質量比10:3で混合して、分散用組成物1を得た。
(分散用組成物2)
VB1605脱Na物と、p-アミノアゾベンゼンとを質量比50:27で混合して、分散用組成物2を得た。
(分散用組成物3)
VB1605脱Na物と、ドデシルアミンとを質量比2:1で混合して、分散用組成物3を得た。
(分散用組成物4)
VB1605脱Na物と、1-アミノ-3-ウンデカノキシプロパンとを質量比20:11で混合して、分散用組成物4を得た。
(分散用組成物5)
VB1605脱Na物と、ピリジンとを質量比50:11で混合して、分散用組成物5を得た。
(分散用組成物6)
VB1605脱Na物と、ビスアニリンフルオレンとを質量比25:12で混合して、分散用組成物6を得た。
(分散用組成物7)
VB1605脱Na物と、3-アミノ-N-エチルカルバゾールとを質量比40:23で混合して、分散用組成物7を得た。
【0082】
<分散用材料>
ソルスパース12000(銅フタロシアニンのスルホン化物(1分子中にスルホン酸基を約0.9個含有)、日本ルーブリゾール社製)
ソルスパース5000(銅フタロシアニンのスルホン化物の第4級アンモニウム塩、(1分子中にスルホン酸基を約0.9個含有)、日本ルーブリゾール社製)
VALIFAST BLUE 1605(VB1605、銅フタロシアニンのスルホン化物のナトリウム中和物、オリヱント化学工業社製)
【0083】
<ブラックマトリックス用顔料分散組成物の作製>
各材料を表1の組成となるように混合し、ビーズミルで一昼夜混練してブラックマトリックス用顔料分散組成物を作製した。
【0084】
【表1】
【0085】
<ブラックマトリックス用レジスト組成物の作製>
高速攪拌機を用いて、上記ブラックマトリックス用顔料分散組成物と他の材料(光重合性化合物、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤及び有機溶剤)とを表2の組成になるように均一に混合した後、孔径3μmのフィルターで濾過し、実施例及び比較例のブラックマトリックス用レジスト組成物を得た。
【0086】
<評価試験>
(表面抵抗値)
実施例及び比較例の各ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を、スピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(EAGLE XG)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、高圧水銀灯で露光(UV積算光量80mJ/cm)し、更に230℃で60分間ポストベークを行い、ベタ部のみで形成されたブラックレジストパターン(ブラックマトリックス)を作製した。
作製した各ブラックレジストパターンの表面抵抗値を本体:微小電流計 R8340、オプション:シールドボックス R12702A(いずれもアドバンス社製)にて測定した。その結果を表2に示した。
【0087】
(シール強度)
実施例及び比較例の各ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(EAGLE XG)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、高圧水銀灯で露光(UV積算光量40mJ/cm)し、更に230℃で30分ポストベークを行い、ベタ部のみで形成されたブラックレジストパターンを作製した。
その後、上記ブラックレジストパターンを50mgのシール剤(商品名「XN-21S」、三井化学社製)を介して、直径1.6mmのステン釘に貼り合わせて試験片を作製した。
作製した試験片を、荷重測定器(LTS-200N/500N、Minebea社製)を用いて10mm/minの速度で引っ張り、ステン釘が試験片から剥離した際の最大応力(N)を測定し、シール剤塗布面積で割り、単位面積当たりの強度をシール強度(N/mm)とした。その結果を表2に示した。
【0088】
【表2】
【0089】
黒色着色剤と、銅フタロシアニンのスルホン化物と、特定のアミン化合物とを含むブラックマトリクス用顔料分散組成物を用いた実施例では、基板に対する密着性に優れるブラックマトリックスを形成することができることが確認された。また、黒色着色剤として酸性カーボンブラックを用いた場合には、表面抵抗値にも優れるブラックマトリックスを形成することができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、基板に対する密着性に優れるブラックマトリックスを形成することができるブラックマトリックス用顔料分散組成物を提供することができる。