(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】予混合式ガスバーナ
(51)【国際特許分類】
F23D 14/64 20060101AFI20241009BHJP
F23D 14/02 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
F23D14/64 Z
F23D14/02 B
(21)【出願番号】P 2020203506
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】505229472
【氏名又は名称】株式会社日本サーモエナー
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 智郎
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-111114(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01462716(EP,A1)
【文献】特開平07-091661(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0184614(US,A1)
【文献】特表2002-534652(JP,A)
【文献】米国特許第05415539(US,A)
【文献】米国特許第10281146(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0316965(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0334134(US,A1)
【文献】特開2013-076497(JP,A)
【文献】特開2017-015305(JP,A)
【文献】実公昭47-026908(JP,Y1)
【文献】実開昭59-144325(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/00 - 14/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと燃焼用空気と混合させて燃焼させる予混合式ガスバーナの予混合装置
と、
前記予混合装置の出口側に接続されたバーナヘッドと、を備え、
前記予混合装置は、
ベンチュリ形の本体と、
前記本体内に燃料ガスの噴射孔が配置されたガスノズルと、
前記本体の入口側に設けられ、前記本体内に供給される燃焼用空気を旋回させる入口側旋回羽根と、
前記本体の出口側に設けられ、燃料ガスと燃焼用空気との混合を促進するための出口側旋回羽根と、
を備え
、
前記本体は、先窄まり状の先細部と、前記先細部に連設され筒状のスロート部と、前記スロート部に連設された末広がり状の末広部と、を備え、
前記ガスノズルは、前記入口側旋回羽根を貫通するように設けられ、前記本体の軸線上に位置するとともに、前記噴射孔が前記スロート部内に配設され、
前記入口側旋回羽根は、前記ガスノズルが貫通するガスノズル用中心穴と、前記ガスノズル用中心穴の周囲を囲むように配列された複数の羽根と、を備え、
前記出口側旋回羽根は、中心に設けられた中心穴と、前記中心穴の周囲を囲み、通過するガスが前記入口側旋回羽根と同じ方向に旋回するように配列された複数の羽根と、を備え、
前記バーナヘッドは、前記末広部の出口側に接続されて前記末広部と連通する金属筒体と、前記金属筒体と連通する筒状のメタルニットとを有する、
予混合
式ガスバーナ。
【請求項2】
前記中心穴の開口面積は、前記本体内の流路断面積の5%~80%の割合で形成されている、請求項
1に記載の予混合
式ガスバーナ。
【請求項3】
燃焼用空気を送る送風機が前記本体と併設され、前記本体の軸方向において、前記本体の外寸が前記送風機の外寸より小さく設定されている、請求項1
又は2に記載の予混合
式ガスバーナ。
【請求項4】
前記ガスノズルに送る燃料ガスの流量を調節するガスダンパと、前記送風機から前記本体に送る燃焼用空気の流量を調節するエアダンパと、前記ガスダンパ及び前記エアダンパを制御するコントロールモータと、を更に備える、請求項
3に記載の予混合
式ガスバーナ。
【請求項5】
前記入口側旋回羽根が着脱可能に設けられている、請求項1~
4の何れかに記載の予混合
式ガスバーナ。
【請求項6】
前記出口側旋回羽根が着脱可能に設けられている、請求項1~
5の何れかに記載の予混合
式ガスバーナ。
【請求項7】
前記ガスノズルが着脱可能に設けられている、請求項1~
6の何れかに記載の予混合
式ガスバーナ。
【請求項8】
燃焼用空気を送る送風機が接続されたウインドボックスを更に備え、
前記ウインドボックスは、取り外し可能又は開閉可能な側板を備えるとともに、前記ウインドボックス内に前記ガスノズル及び入口側旋回羽根が取り外し可能に取り付けられている、請求項1に記載の予混合
式ガスバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと燃焼用空気とを予め混合して混合気を形成する予混合装置、及び、予混合装置を備える予混合式ガスバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラ等に用いるガスバーナとしてメタルニット(繊維径50μm前後の極細金属繊維の織布で多孔燃焼部を構成する。)等を用いた予混合式ガスバーナが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
この種の予混合式ガスバーナにおける予混合気の形成は、燃焼用空気通路に設けたガス供給管から燃料ガスを噴射することにより行っているため、燃焼用空気内に燃料ガスを拡散することによる混合が主となり両者の混合状態は不十分である。その混合状態を良好にするために、ディフューザを設けたり、燃料ガスの噴射孔を絞って噴射速度を上げる等の手段を用いて混合を促進させるが、例えば、燃焼用空気通路内の圧力(ボイラの炉内圧力とディフューザ圧損の合計圧力)が1.5kPaを超えてくると、燃料ガスの供給圧が低圧(2.0kPa)の場合に、ガス遮断弁等のガス配管の圧損が0.5kPa程度あるため、燃料ガスを供給できなくなる。
【0004】
そこで、ベンチュリを用いたガス供給管や、ガス供給管を送風機の吸込部に配置するなどの様々な混合装置が提案されている(特許文献2~7)。
【0005】
例えば特許文献2には、予混合式ガスバーナに用いられるベンチュリミキサが開示されている。このベンチュリミキサは、ベンチュリスロート部に燃焼用空気を高速で流すと、ベルヌーイの式で示されるように流速の2乗に比例してベンチュリスロート部の静圧が低下する。これに応じてゼロガバナで2次圧を一定に制御された燃料が吸引されるため、燃料ガスの低圧供給が可能となる。ベンチュリスロート部を通過した燃焼用空気と燃料ガスは、混合される。特許文献2では、混合性能の低下を補うために、ベンチュリミキサ出口に設けた燃料ノズルで旋回流を与えて急速混合を図っているが、圧損が増加するため、燃料ガスの吸引力とミキシング力を大きく得るためには、ベンチュリスロート部の流速を上げ、ベンチュリの圧力差を大きくする必要があり、送風機が大型(高静圧)化する。
【0006】
そこで、特許文献3では、燃料供給管を複数配置することで、ベンチュリスロート部入口で乱流を促進させる構造としているが、燃料供給管が複雑な構造となるため高価になる。
【0007】
また、特許文献4では、バーナダクトとベンチュリミキサとの間にガス室を形成し、ベンチュリミキサの渦流発生領域に燃料噴出部を配置することにより、渦の巻込み効果により混合を促進させ、均一な予混合気を得るが、燃料種の変更などにより燃料噴出部をカスタマイズする場合、バーナダクトと一体となっているため交換が困難である。
【0008】
また、特許文献2や特許文献4等にも開示されているような従来のベンチュリミキサでは、供給する燃焼用空気の流れに乱れがあると吸引力の低下やミキシングに偏りが生じるため、ベンチュリミキサ前後にある程度の直管部を設けて流れを整流必要があり、コンパクト化には不向きである。
【0009】
そこで、送風機の吸込み側に燃料ガスを供給し、送風機内で燃焼用空気と燃料ガスとを混合するファンミックスタイプの燃料供給装置が提案されている(特許文献5、6)。また、ファンミックスタイプにベンチュリミキサを組み合わせた燃料供給装置も提案されている(特許文献7)。
【0010】
しかしながら、特許文献5~7に開示された燃料供給装置は、送風機内に可燃性ガスが充満しているため、送風機筐体に気密性を持たせる必要があり、ファンミックス専用の高価な送風機となる。また、送風機とバーナとを接続するダクトも可燃性ガスが充満しているため、操作ミス等の何らかの原因で、混合ガスの供給流量が低下して火炎伝播速度を下回ると、ダクト内を火炎が送付機側に伝播(逆火)し非常に危険である。その対策として逆火防止装置や逆火時の安全装置が取り付けられるが、それらも送風機を高価にする要因になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2020-34227号公報
【文献】特開平1-111114号公報
【文献】特表2002-534652号公報
【文献】特許第2950196号明細書
【文献】特開平10-318526号公報
【文献】特開平10-89628号公報
【文献】特開2017-172815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みて為されたものであり、燃料ガスと燃焼用空気との混合を良好にしつつ、コンパクト化及び低コスト化が可能な予混合措置及び予混合式ガスバーナを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、燃料ガスと燃焼用空気と混合させて燃焼させる予混合式ガスバーナの予混合装置であって、ベンチュリ形の本体と、前記本体内に燃料ガスの噴射孔が配置されたガスノズルと、前記本体の入口側に設けられ、前記本体内に供給される燃焼用空気を旋回させる入口側旋回羽根と、前記本体の出口側に設けられ、燃料ガスと燃焼用空気との混合を促進するための出口側旋回羽根と、を備える。
【0014】
前記ガスノズルが前記入口側旋回羽根を貫通するように設けられ得る。
【0015】
前記入口側旋回羽根は、前記ガスノズルが貫通するガスノズル用中心穴と、前記ガスノズル用中心穴の周囲を囲むように配列された複数の羽根と、を備え得る。
【0016】
前記入口側旋回羽根と前記出口側旋回羽根は、通過するガスの旋回方法が同じ方向となるように形成され得る。
【0017】
前記出口側旋回羽根は、中心に設けられた中心穴と、前記中心穴の周囲を囲むように配列された複数の羽根と、を備え得る。
【0018】
前記中心穴の開口面積は、前記本体内の流路断面積の5%~80%の割合で形成され得る。
【0019】
前記本体は、先窄まり状の先細部と、前記先細部に連設された筒状のスロート部と、前記スロート部に連設された末広がり状の末広部と、を備えることができ、前記ガスノズルは、前記本体の軸線上に位置するとともに、前記噴射孔が前記スロート部内に配設され得る。
【0020】
燃焼用空気を送る送風機が前記本体と併設され、前記本体の軸方向において、前記本体の外寸が前記送風機の外寸より小さく設定され得る。
【0021】
前記ガスノズルに送る燃料ガスの流量を調節するガスダンパと、前記送風機から前記本体に送る燃焼用空気の流量を調節するエアダンパと、前記ガスダンパ及び前記エアダンパを制御するコントロールモータと、を更に備え得る。
【0022】
前記入口側旋回羽根は着脱可能に設けられ得る。
【0023】
前記出口側旋回羽根は着脱可能に設けられ得る。
【0024】
前記ガスノズルは着脱可能に設けられ得る。
【0025】
燃焼用空気を送る送風機が接続されたウインドボックスを更に備え、前記ウインドボックスは、取り外し可能又は開閉可能な側板を備えるとともに、前記ウインドボックス内に前記ガスノズル及び入口側旋回羽根が取り外し可能に取り付けられ得る。
【0026】
また、本発明に係る予混合式ガスバーナは、本発明に係る上記予混合装置と、該予混合装置の出口側に接続されたバーナヘッドと、を備える。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る予混合式ガスバーナの予混合装置は、ベンチュリ形の本体の入口側と出口側とに旋回羽根を設けたことにより、コンパクトなベンチュリミキサで良好な混合が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る予混合装置を備える予混合式ガスバーナの一実施形態を示す側面図である。
【
図3】ガスノズルの他の実施形態を示す断面図である。
【
図4】
図1の予混合式ガスバーナ2の要部を示す斜視図である。
【
図8】
図8(a)は先混合式バーナを装着したボイラを示し、
図8(b)は本発明に係る予混合装置を備える予混合式バーナを装着したボイラの一例を示す断面図である。
【
図9】シミュレーション解析による実施例の速度-流線図である。
【
図10】シミュレーション解析による比較例1の速度-流線図である。
【
図11】シミュレーション解析による比較例2の速度-流線図である。
【
図12】シミュレーション解析による実施例の速度-ベクトル図(中心垂直断面)である。
【
図13】シミュレーション解析による比較例1の速度-ベクトル図(中心垂直断面)である。
【
図14】シミュレーション解析による比較例2の速度-ベクトル図(中心垂直断面)である。
【
図15】シミュレーション解析による実施例の速度-コンター図(中心垂直断面)である。
【
図16】シミュレーション解析による比較例1の速度-コンター図(中心垂直断面)である。
【
図17】シミュレーション解析による比較例2の速度-コンター図(中心垂直断面)である。
【
図18】シミュレーション解析による実施例の乱流エネルギーの解析図である。
【
図19】シミュレーション解析による比較例2の乱流エネルギーの解析図である。
【
図20】シミュレーション解析による比較例2の乱流エネルギーの解析図である。
【
図21】シミュレーション解析による実施例の密度分布を示す解析図である。
【
図22】シミュレーション解析による比較例1の密度分布を示す解析図である。
【
図23】シミュレーション解析による比較例2の密度分布を示す解析図である。
【
図24】シミュレーション解析による実施例の圧力分布を示す解析図である。
【
図25】シミュレーション解析による比較例1の圧力分布を示す解析図である。
【
図26】シミュレーション解析による比較例2の圧力分布を示す解析図である。
【
図27】実機を用いた実施例と比較例2の燃焼性能試験結果を示すグラフである。
【
図28】
図5に示す出口側旋回羽根の正面図である。
【
図29】出口側旋回羽根の中心穴が流路断面積に占める面積割合のパターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態について、以下に
図1~
図29を参照しつつ説明する。なお、全図及び全実施形態を通じ、同一又は類似の構成要素に同符号を付している。
【0030】
図1は本発明に係る予混合装置1を備える予混合式ガスバーナ2の一実施形態を示す側面図、
図2は
図1のII-II線に沿う断面図、
図3は、ガスノズルの他の実施形態を示す断面図、
図4は
図1の予混合式ガスバーナ2の要部を示す斜視図、
図5は
図4の分解斜視図、
図6は
図4の部分切欠き斜視図である。
【0031】
予混合装置1は、流路が途中で絞られたベンチュリ形の本体3と、本体3内に燃料ガスFの噴射孔4aが配置されたガスノズル4と、本体3の入口側に設けられて本体3に流入する燃焼用空気Aに旋回流を発生させるための入口側旋回羽根5と、本体3の出口側に設けられて本体3内から流出する燃料ガスFと燃焼用空気Aとの混合を促進するための出口側旋回羽根6と、を備える。入口側旋回羽根5と出口側旋回羽根6は、通過するガスの旋回方法が同じ方向となるように形成されている。
【0032】
本体3は、先窄まり状の先細部3aと、先細部3aに連設された筒状のスロート部3bと、スロート部3bに連設された末広がり状の末広部3cと、を備えている。先細部3aと末広部3cとは、図示例に於いては円錐台形状に形成されている。図示例においてスロート部3bは、好適には軸線X方向に一定の長さを有する筒状に形成されているが、軸線X方向に殆ど長さを有さない形態(先細部に末広部が直結されている形態)とすることもできる。
【0033】
本体3の先細部3aは、燃焼用空気の通路の一部をなすウインドボックス7に取り付けられている。ウインドボックス7は、一側面に送風機8が接続され、他の一側面に燃料ガスFの供給路9が接続されている。
【0034】
送風機8からウインドボックス7に供給される燃焼用空気Aの通路8a内にエアダンパ10が設けられている。エアダンパ10の開度調節により、通路8a内を流れる燃焼用空気Aの流量が調節される。燃料ガスFの供給路9内にもガスダンパ11が設けられている。ガスダンパ11の開度調節により、供給路9内を流れる燃料ガスFの流量が調節される。エアダンパ10とガスダンパ11とは、コントロールモータCM(
図8(b))により夫々の開度が制御されることにより、開度が微調整される。
図8(b)に示す例のコントロールモータCMは、リンク装置L1,L2を介して、コントロールモータCMの動きをエアダンパ10及びガスダンパ11に伝達するようになっている。コントロールモータCMに対するエアダンパ10及びガスダンパ11の各々の開度は、予めリンク装置を調整することにより設定され得る。
【0035】
なお、燃料ガスと燃焼用空気の各流量調整は、図示例に代えて、他の公知の調整手段により調整することができる。例えば、エアダンパとガスダンパの其々を別個のコントロールモータで制御することもできる。或いは、ガスダンパに代えて、燃焼用空気と燃料ガスの各圧力を検出して比例制御する空燃比例制御弁を用いて燃料ガスの流量を制御(調整)することもできる。或いは、エアダンパに代えて、送風機をインバータ制御することにより燃焼用空気流量を制御することもできる。
【0036】
ガスダンパ11が内蔵された供給路9の下流側にガスノズル4が接続されている。ガスノズル4は、ウインドボックス7内から本体3の軸線Xに沿って入口側旋回羽根5を貫通するようにして本体3内に延びている。
【0037】
図2に示すガスノズル4は、軸線X方向に向けて開口する噴射孔4aが形成されている。ガスノズル4は、
図3に示すように、噴射孔4aが放射状に複数形成されているタイプでもよい。
【0038】
ベンチュリ形の本体3の内部は、流路断面積が小さくなるに従って、即ち流路が狭くなるに従って、流速が増すととともに圧力が低下する。本体3内で流速が増し圧力が下がった燃焼用空気は、ガスノズル4の噴射孔4aから燃料ガスを吸引する。好ましくは、
図2に示すように、噴射孔4aは、流路断面積が最も小さくなるスロート部3bに配置される。
【0039】
ウインドボックス7は、先細部3aが接続される側板7aに、ウインドボックス7の内部と本体3の内部とを連通する開口部7a1(
図5)が形成されている。入口側旋回羽根5は、側板7aの内側にビス等の固定手段により取り外し可能に取り付けられる。図示例の入口側旋回羽根5は、リング状の外枠5aと、リング状の内枠5bと、外枠5aと内枠5bとの間に連結され環状に並べて配置された複数の羽板5cと、を備えている。外枠5aには、螺子留め用の鍔5dが形成されている。内枠5bの内側が、ガスノズル4が貫通するガスノズル用中心穴5eとなっており、ガスノズル用中心穴5eにガスノズル4が嵌入される。複数の羽根5cは、ガスノズル用中心穴5eの周囲を囲むように配列されている。入口側旋回羽根5は、図示例に代えて、例えば、先細部3aに取り付ける構成とすることもできる。
【0040】
ガスノズル4が入口側旋回羽根5を貫通するように構成されることにより、ウインドボックス7に供給された燃焼用空気Aは、入口側旋回羽根5を通過して本体3に流入するとともに、ガスノズル4の周囲を旋回する旋回流を形成する。ガスノズル4は、ウインドボックス7の側板7cにビス等の固定手段(図示せず。)により着脱可能に取り付けられている。
【0041】
ウインドボックス7は、開口部7a1が形成された側板7aと対向する側の側板7bが、ビス等の固定手段(図示せず。)により着脱可能に取り付けられている。側板7bを取り外すことにより、ガスノズル4を側板7cから取り外し、入口側旋回羽根5を側板7aから取り外すことができる。それにより、別のガスノズル4或いは入口側旋回羽根5との交換が容易になり、入口側旋回羽根5やガスノズル4のカスタマイズが容易となる。側板7bは、例えば、一側辺に丁番等を設けて開閉可能に構成することもできる。
【0042】
図示例の出口側旋回羽根6は、末広部3cの出口側に取り付けられている。出口側旋回羽根6は、リング状の外枠6aと、リング状の内枠6bと、外枠6aと内枠6bとの間に連結され環状に並べて配置された複数の羽板6cと、を備えている。内枠6bによって出口側旋回羽根6の中心に中心穴6dが形成され、中心穴6dを囲むようにして中心穴6dの周囲に複数の羽根6cが円周方向に配列されている。外枠6aには、ビス等を通す固定用孔6e(
図28)が形成される。
【0043】
予混合式ガスバーナ2は、末広部3cの出口側に接続されたバーナヘッド12を備えている。バーナヘッド12は、金属製筒体12aに公知のメタルニット12bを備えることができる。
【0044】
バーナヘッド12は、ビス等の固定手段(図示せず。)により、末広部3cに着脱可能に取り付けられている。また、出口側旋回羽根6も、ビス等の固定手段(図示せず。)により、末広部3cに着脱可能に取り付けられている。それにより、バーナヘッド12を末広部3cから取り外し、出口側旋回羽根6を取り外せば、別の出口側旋回羽根6との交換が容易になっている。
【0045】
上記構成の予混合装置を備える予混合式ガスバーナ2においては、送風機8から供給される燃焼用空気Aは、エアダンパ10によって風量を調整されてウインドボックス7に導入される。ウインドボックス7に導入された燃焼用空気Aは、ガスノズル4周囲を囲む入口側旋回羽根5に入り、入口側旋回羽根5により軸線X回りの旋回力が加えられ、本体3の入口側から先細部3aを経てスロート部3bへ導かれる。燃焼用空気Aは、スロート部で流速が増すことにより流速の2乗に比例してスロート部3b内の静圧が低下し、それによってスロート部3b内に配置された噴射孔4aより燃料ガスFを吸引する。
【0046】
燃焼用空気Aは、軸線X回りに旋回しながらスロート部3bを通過するため、この旋回力によりガスの吸引力が旋回羽根を備えない通常のベンチュリ構造よりも増す。スロート部3bで燃料ガスFを吸引した燃焼用空気Aは、旋回しながら末広部3cで混合する。
【0047】
旋回羽根を備えない通常のベンチュリ構造を備える予混合式ガスバーナの場合、
図7(a)に示すような速度分布を示し、管壁付近の流れは管壁との摩擦によって、次第に速度エネルギーを失い、圧力の逆勾配によって起こる逆流により流れは管壁から剥離し、混合が促進される。一方、入口側旋回羽根を設けて出口側旋回羽根を設けない場合、
図7(b)に示すような速度分布を示し、強い旋回流が管壁付近を流れ、本体3の中心側に圧力の逆勾配による逆流が生じるため、管壁での流れの剥離が生じず混合し難くなる傾向にある。そこで、本体3の出口側に出口側旋回羽根6を設けることで、管壁近傍で生じている旋回流を促進させながら、かつ本体3の中心側への流れをつくることで、末広部3c内の乱流エネルギーを促進させ均等な混合状態を得ることができる。本体3の中心側への流れは、出口側旋回羽根6の中心穴6dを設けることにより、いっそう促進され得る。
【0048】
旋回羽根を備えない通常のベンチュリ構造の場合、ベンチュリ構造体の前後にある程度の直管部を設けて燃焼用空気を整流する必要があるが、本発明の場合、
図1に示すようにベンチュリ形の本体3の上流側直近に曲がりがあるような空気通路形状であってもベンチュリの性能は殆ど変化しない。ベンチュリ形の本体3の前後に直管部を設けなくてもよい分、装置の配置の自由度が増す。
【0049】
入口側旋回羽根5により、噴射孔4aからの燃料ガスの吸引、及び、燃料ガスと燃焼用空気との混合が良好になるため、ベンチュリ形の本体3はコンパクトに設計できる。例えば、
図1に示すように、ベンチュリ形の本体3の軸方向長さLは、送風機8のケーシング寸法Kの範囲に入る寸法で設計できる。そのため、
図8(a)は先混合式バーナを装着したボイラを示し、
図8(b)は本発明の予混合装置を備える予混合式バーナを装着したボイラを示している。
図8(a)、(b)に示すように、同出力の送風機8を備える先混合式バーナと比較してもボイラが大型化することはない。なお、
図8に示すボイラは、いわゆる真空式温水発生機であり、符号13は火炉、符号14は減圧蒸気室、符号15は熱媒水、符号16は水管、符号17は煙室、符号18は温水Wが流通する熱交換管を其々示している。
【0050】
ベンチュリ原理により燃料ガスと燃焼用空気との混合を適切な割合にすることは、スロート部3bの内径や噴射孔4aの孔径等を微調整する必要があるため困難である。また、送風機8の出力を変化させて燃焼量を変更した場合、燃料ガスと燃焼用空気との混合割合は一定に保つことが困難である。即ち、送風機の出力が大きい場合に比して送風機の出力が小さい場合、ベンチュリ形の本体3の内壁面において発生する境界層剥離の影響が大きくなり、ベンチュリ形の本体3に導入される燃焼用空気の流量係数が低下する。流量係数が変化すると空気比を一定に保つことができないため、流量係数の変化に応じて燃料ガスの供給圧力を調整しなければならない。そこで、コントロールモータ11によってガスダンパ11とエアダンパ10の夫々の開度を制御することにより、燃料ガスと燃焼用空気の混合割合の微調整を可能にする。
【0051】
コントロールモータ11によってガスダンパ11とエアダンパ10の開度を微調整することにより、予混合式バーナ専用の特殊な送風機(ファンミックス)やゼロガバナを必要とせず、先混合バーナと同じ部品で構成できるため安価にできる。
【0052】
実施例及び比較例を挙げて、数値流体力学(CFD)シミュレーションと実機を用いた燃焼性能試験とにより、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、各例によって、限定されるものではない。
【0053】
実施例及び比較例の基本条件は、
図8(b)に示す真空式温水発生機(出力930kw)の定格運転とし、空気流量1223m
3(N)/時(空気入口流速18.4m/秒)、メタンガス流量86.6m
3(N)/時(ガス入口流速8.2m/秒)、炉内圧力(バーナ出力圧力)870Paとした。
【0054】
実施例は、
図1、
図2に示す構成の予混合式バーナとした。比較例1は、実施例の構成から出口側旋回羽根を省いた構成の予混合式バーナとした。比較例2は、実施例の構成から入口側旋回羽根と出口側旋回羽根を省いた予混合式バーナとした。
【0055】
図9~
図11は数値流体力学(CFD)シミュレーションによる速度-流線図を示しており、
図9は実施例、
図10は比較例1、
図11は比較例2を示す。
図9の実施例は、
図10の比較例1,
図11の比較例2に比べて、より強い旋回流が発生していることが判る。
【0056】
図12~
図14は数値流体力学(CFD)シミュレーションによる速度-ベクトル図(中心垂直断面)を示し、
図15~
図17は、数値流体力学(CFD)シミュレーションによる速度-コンター図(中心垂直断面)を示している。
図12及び
図15は実施例、
図13及び
図16は比較例1、
図14及び
図17は比較例2を、それぞれ示している。
図14及び
図17の比較例2は、ウインドボックス7へ供給される燃焼用空気の流れ方向の影響を受けて、ベンチュリ形の本体3を通過した後、バーナヘッド12内では速度分布に偏りが生じている。
図14及び
図16の比較例1は、
図14及び
図17の比較例2のような大きな偏りは無いが、末広部3cからバーナヘッド12にかけて管壁近傍の流れが速く、バーナヘッド12の速度分布が不均一である。一方、
図12及び
図15の実施例は、ベンチュリ形の本体3の末広部3c内(出口側旋回羽根6の一次側)において、圧力の逆勾配による逆流が完了し、且つ管壁近傍の流れが出口側旋回羽根6によりベンチュリ形の本体3の中心側へ誘導、整流されるため、バーナヘッド12内での速度分布に偏りが無くなっていることが判る。
【0057】
図18~
図20は、数値流体力学(CFD)シミュレーションによる乱流エネルギーの解析結果を示している。
図18は実施例、
図19は比較例1、
図20は比較例2を其々示す。比較例1(
図19)は、比較例2(
図20)に比べて、ベンチュリ形の本体3内の乱流エネルギーが明らかに大きくなっているが、その範囲はバーナヘッド12にまたがっているため、混合完了までに時間を要していると推察できる。それに対して、実施例(
図18)では、乱流エネルギーはベンチュリ形の本体3の末広部3cで大きな値を示し、バーナヘッド12内で小さな値となっている。これは、末広部3cで混合が促進され、混合完了までの時間が比較例1に比べて短くなっていると推察される。
【0058】
図21~
図23は、数値流体力学(CFD)シミュレーションによる密度分布を示している。比較例2(
図23)では、バーナヘッド12内の速度分布(
図14参照)に偏りがあるため、流速が速い領域の混合が悪くなっていることが判る。比較例1(
図22)では、比較例2に比べて密度分布は均一化が図れているが、バーナヘッド12に入る前に混合が完了していない。実施例(
図21)では、バーナヘッド12に入る前にほぼ混合が完了していることが判る。
【0059】
図24~
図26は、数値流体力学(CFD)シミュレーションによる圧力分布を示す。実施例(
図24)では、スロート部3bで速い旋回流が発生しているため、ガスノズル4内が負圧となり、燃料ガスの吸引力が増している。また、実施例(
図24)は、比較例1(
図25)と比べると、出口側旋回羽根6を備えることにより、感覚的には圧力損失が増大すると思われるが、出口側旋回羽根6の整流作用によりウインドボックス7内の圧力がほぼ変わっていないことが判る。実機試験では、出口側旋回羽根6を備えている方がウインドボックス7内の圧力が低下しているデータが得られている。これは、圧力の逆勾配によって起こる逆流が出口側旋回羽根6の一次側で完了することにより、整流されたコンパクトな循環流を形成しているためと考えられる。
【0060】
上記実施例と比較例2とについて、実機を用いて排ガス成分を測定する燃焼性能試験を行った。燃焼性能試験結果を
図27のグラフに示す。
図27のグラフは、燃焼排ガス中のNOx濃度とCO濃度を測定した結果を示している。
図27より、比較例2では、燃料ガスと燃焼用空気との混合が不完全なため、燃焼に偏りが生じ不安定な燃焼状態となり、不完全燃焼の指標であるCOが大量に発生していることが判る。一方、実施例では、燃料ガスと燃焼用空気との混合が良好なためCOの発生が抑えられ、且つNOx値も低下し、メタルニットバーナの本来の性能を発揮している。このことから、実施例1は比較例2よりも良好な燃焼が得られていることが判り、燃料ガスと燃焼用空気との良好な混合が達成されていると考えられる。
【0061】
次に、出口側旋回羽根6について行った実験について説明する。
図28は、
図5に示す出口側旋回羽根6の正面図である。出口側旋回羽根6は、出口側旋回羽根6の中心、即ち内枠6bの内側に、中心穴6dが形成されており、中心穴6dの周りに複数の羽根6cが円周方向に並べて配列されている。羽根6cは、ねじり起点部6fで外枠6a及び内枠6bと連結されている。ねじり起点部6fを捻じり加工することにより、羽根6cが外枠6a及び内枠6bに対して傾斜させられる。ねじり起点部6fは羽根6cの長さ方向の一端側に偏った位置に設けられ、ねじり起点部6fに対して羽根6cの長い方の部分が末広部3cのテーパー面に沿うように形成されている。
【0062】
出口側旋回羽根6の中心穴6dの大きさ即ち中心穴6dの開口面積が流路断面積に対する割合(開口面積比率)を、
図29に示すように複数のパターン(a)~(e)で上記と同様の燃焼性能試験を実施した。
図29において、ハッチング(斜線)の内側の空隙が中心穴6dに相当する部分であり、各パターンの下部の数字は前記開口面積比率を示している。試験の結果、前記開口面積比率が5%以上のいずれのパターン((b)~(e))でもNOxおよびCOの発生が抑制され、良好な燃焼性能が得られた。そして、パータン(a)~(e)では、中心穴6dの前記開口面積比率が大きいほど燃焼状態が良好であった。一方、
図13及び
図16の比較例1のシミュレーション結果を参照すると、出口側旋回羽根が無い場合には管壁近傍に速い流れ(15m/s以上)があり、この早い流れが存在する範囲に出口側旋回羽根を設けないと、出口側旋回羽根による中心側への流れ及び旋回流の促進効果が限定的となるため、中心穴6dの開口面積比率を80%以下とすることが望ましい。そのため、出口側旋回羽根6は、前記開口面積比率が好適には5%~80%となるように構成され得る。
【0063】
出口側旋回羽根6を設けることにより、ウインドボックス内の圧力損失が低下するため、送風機に余力ができ、燃焼範囲(O
2の上限)が広がる。また、
図29に示す何れのパターンでも定格運転におけるCOの発生率はほぼ同じであったが、中間負荷(75~20%)での運転においてはCOの抑制が確認された。一般に、中間負荷での運転では、流速が遅くなるため燃料ガスと燃焼用空気との混合が悪くなりCOが発生しやすくなる傾向があるが、出口側旋回羽根6によるCO発生抑制効果が顕著に現れた。
【0064】
本発明は、上記実施形態に限定解釈されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 予混合装置
2 予混合式バーナ
3 本体
3a 先細部
3b スロート部
3c 末広部
4 ガスノズル
4a 噴射孔
5 入口側旋回羽根
5c 羽根
5e ガスノズル用中心穴
6 出口側旋回羽根
6c 羽根
6d 中心穴
8 送風機
10 エアダンパ
11 ガスダンパ
CM コントロールモータ