(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】チャネル内の拘束を有するステントグラフトシステム及びその方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/07 20130101AFI20241009BHJP
A61F 2/95 20130101ALI20241009BHJP
【FI】
A61F2/07
A61F2/95
(21)【出願番号】P 2020566714
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 US2019034565
(87)【国際公開番号】W WO2019232155
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-19
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520413025
【氏名又は名称】エンドロジックス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】グーセン マーク
(72)【発明者】
【氏名】エネス デール
(72)【発明者】
【氏名】マガード ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】キング ライリー
(72)【発明者】
【氏名】ウェルク クレイグ
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-509130(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0042739(US,A1)
【文献】特表2005-503184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00-2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフト材料の第1の層と、
グラフト材料の第2の層と、
前記グラフト材料の第1の層と前記グラフト材料の第2の層の間に位置付けられたステント部材と、
前記グラフト材料の第2の層と前記グラフト材料の第1の層の間でかつ前記ステント部材の少なくとも一部分の周りでチャネルに少なくとも部分的に位置付けられた減径ベルトと、
を含み、
前記ベルトの第1の端部は前記ベルトの第2の端部に
解除ワイヤにより固定され、
前記グラフト材料の第2の層は、前記ステント部材の少なくとも3つのリングを延びる軸方向長さを超えて連続している、ことを特徴とするステントグラフトシステム。
【請求項2】
前記グラフト材料の第2の層は、該グラフト材料の第2の層と前記グラフト材料の第1の層の間に前記チャネルを提供する形状を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のステントグラフトシステム。
【請求項3】
前記減径ベルトは、前記ステント部材が完全に拡張された時に該ステント部材の円周よりも短いが該ステント部材が圧縮状態にある時に該ステント部材の円周よりも長い長さを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のステントグラフトシステム。
【請求項4】
前記減径ベルトは、ループを含み、該減径ベルトの各端部に該ループのうちの対応するループがある、
ことを特徴とする請求項1に記載のステントグラフトシステム。
【請求項5】
前記解除ワイヤは前記減径ベルトの前記ループを通過する、
ことを特徴とする請求項4に記載のステントグラフトシステム。
【請求項6】
前記ステント部材は、圧縮状態から復元状態まで半径方向に拡張可能であり、
前記減径ベルトは、前記ステント部材が前記圧縮状態から前記復元状態まで拡張することを可能にするように解除可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載のステントグラフトシステム。
【請求項7】
前記グラフト材料の第1の層と前記グラフト材料の第2の層の間に位置付けられた第2のステント部材と、
前記グラフト材料の第2の層と前記グラフト材料の第1の層の間でかつ前記第2のステント部材の少なくとも一部分の周りで第2のチャネルに少なくとも部分的に位置付けられた第2の減径ベルトと、
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のステントグラフトシステム。
【請求項8】
前記グラフト材料の第2の層は、該グラフト材料の第2の層と前記グラフト材料の第1の層の間に前記第2のチャネルを提供する形状を有する、
ことを特徴とする請求項7に記載のステントグラフトシステム。
【請求項9】
前記減径ベルトは、ループを含み、前記第2の減径ベルトもループを含み、
ステントグラフトシステムが、前記減径ベルトの前記ループを通過するかつ前記第2の減径ベルトの前記ループを通過する解除ワイヤを更に含む、
ことを特徴とする請求項7に記載のステントグラフトシステム。
【請求項10】
前記ステント部材と前記第2のステント部材の間の前記グラフト材料の第2の層内のひだ、
を更に含むことを特徴とする請求項7に記載のステントグラフトシステム。
【請求項11】
ステントグラフトシステムを製造する方法であって、
少なくとも3つのリングを有するステント部材をグラフト材料の第1の層上に置く段階と、
少なくとも部分的に前記ステント部材の3つのリングのそれぞれの周りに複数のスペーサのうちのそれぞれのスペーサを置く段階と、
前記複数のスペーサのうちの各スペーサの少なくとも一部分をグラフト材料の第2の層を使用して封入する段階と、
前記グラフト材料の第2の層と前記グラフト材料の第1の層の間の前記ステント部材のリングのそれぞれの周りにそれぞれのチャネルを残すために該グラフト材料の第2の層内のそれぞれの開口部から前記複数のスペーサの各々を除去する段階と、
それぞれのチャネル内で少なくとも部分的に前記ステント部材の3つのリングのそれぞれの周りに、複数の減径ベルトの各減径ベルトを配置する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記グラフト材料の第2の層は、前記ステント部材の少なくとも3つのリングを跨いで延びる軸方向長さを超えて延びる、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の減径ベルトの各々がループを含み、
方法が、前記ステント部材のそれぞれのリングを半径方向圧縮状態に保持するために前記複数の減径ベルトのうちの各々の前記ループを通して解除ワイヤを置く段階を更に含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記減径ベルトは、該複数の減径ベルトのうちの各減径ベルトの端部が前記グラフト材料の第2の層内のそれぞれの開口部から延びるように位置決めされる、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記グラフト材料の第2の層を軸線方向に圧縮して該グラフト材料の第2の層にひだを形成する段階と、
前記グラフト材料の第2の層内の前記ひだのための折り目を固化するために熱を印加する段階と、
前記ひだが熱的に固化された後に前記グラフト材料の第2の層を引っ張って該グラフト材料の第2の層を軸線方向に復元する段階と、
を更に含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連特許出願への相互参照〕
この出願は、引用によって本明細書にその内容全体が組み込まれている2018年5月31日出願の米国仮特許出願第62/678,961号からの優先権を主張するものである。
【0002】
本明細書に開示する実施形態は、一般的に血管内ステントグラフトシステムの分野に関する。特に、様々な実施形態は、ステントグラフトを含むシステムと、そのようなステントグラフトを作る方法と、動脈瘤を治療するのにそのようなステントグラフトを使用する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
動脈瘤は、個人の動脈の壁の拡張及び脆弱化によって特徴付けられる病態である。動脈瘤は、動脈内の異なる部位で発症する可能性がある。例えば、胸部大動脈瘤又は腹部大動脈瘤は、個人の身体内で発現する場合がある。そのような病態は、個人に対して深刻であり、生命を脅かす場合があり、従って、この病態を治療するための医療関与を必要とする。そのような病態を治療するための既存システム及び方法は、患部の血管又は体管腔のグラフト置換を用いた侵襲的外科手順を含む。
【0004】
動脈瘤を治療するための外科手順は、動脈又は動脈壁の外科的修復に内在するリスクファクタに起因して比較的高い発病率及び死亡率を有する。多くの場合に、長く痛みを有する回復が必要とされ、多大な医療コストがもたらされる。これらの内在的なリスク及び大動脈瘤の外科的修復の複雑さの理由から、血管内修復は、広く使用される代替療法となってきている。
【0005】
血管内修復では、動脈壁の脆弱化部分を補強するために損傷を受けた動脈内に拡張可能ステントグラフトが置かれる。ステントグラフトは、骨格又は金属ワイヤステントによって支持された織物チューブである。ステントグラフトは、骨格を取り囲むポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような材料のいくつかの層を有する。動脈瘤の血管内修復を実施するために、外科医は、小さい切開部を典型的には患者の鼠蹊部に作り、圧縮されたステントグラフト送出システムをこの切開部を通して血管の中に動脈瘤の場所まで挿入する。ステントグラフトは、次に、損傷を受けた動脈壁を補強するために動脈内で拡張される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
様々な実施形態は、患者の1又は2以上の血管内への挿入を容易にするためのステントグラフトの圧縮及び拡張の改善を提供する。様々な実施形態は、ステント部材を取り囲む複数のグラフト材料層を提供し、ステント部材の各々の周りにグラフト材料を使用してチャネルを生成し、グラフト材料層の間にあるチャネル内でステント部材にわたって減径ベルトを配置し、かつ必要に応じてステントグラフトが拡張することを可能にするために減径ベルトを簡単に解除するための解除ワイヤを減径ベルトの末端ループを通るように設けることにより、血管内ステントグラフト圧縮を提供する。
【0007】
一部の実施形態では、ステントグラフトシステムは、ステントグラフトと、縫合糸又はワイヤのような1又は2以上の減径ベルトと、解除ワイヤ又はロックワイヤとを含む。様々な実施形態では、ステントグラフトに対するグラフト材料は、1又は2以上のステント部材の各々を取り囲む一体化チャネルを有するように形成される。一部の実施形態では、1又は2以上の減径ベルトは、糸又はワイヤで作られ、各々は、対応するステント部材の周りにあるグラフト材料の形状によって定められた対応するチャネルを通るように経路指定される。様々な実施形態では、各減径ベルトは、完全に拡張された対応するステント部材の円周よりも短いが、圧縮状態にある時のステント部材の円周よりも長い長さを有し、従って、ステント部材を圧縮状態に保持することができる。一部の実施形態では、各減径ベルトは、両端にループを有し、解除ワイヤは、ステントグラフトが圧縮状態にある時に減径ベルトの両方のループを通過するように構成される。その後に、解除ワイヤを減径ベルトのループから引っ張ることにより、ステントグラフトが半径方向に拡張することが可能になる。
【0008】
実施形態によるステントグラフトシステムは、グラフト材料の第1の層と、グラフト材料の第2の層と、ステント部材と、減径ベルトとを含む。ステント部材は、グラフト材料の第1の層とグラフト材料の第2の層の間に位置付けられる。減径ベルトは、グラフト材料の第2の層とグラフト材料の第1の層の間でかつステント部材の少なくとも一部分の周りでチャネルに少なくとも部分的に位置付けられる。
【0009】
様々な実施形態では、グラフト材料の第2の層は、グラフト材料の第2の層とグラフト材料の第1の層の間にチャネルを提供する形状を有する。様々な実施形態では、減径ベルトは、ステント部材が完全に拡張された時にステント部材の円周よりも短く、ステント部材が圧縮状態にある時にステント部材の円周よりも長い長さを有する。一部の実施形態では、減径ベルトは複数のループを含み、減径ベルトの各端部に複数のループのうちの対応するループが存在する。同じく、一部の実施形態では、ステントグラフトシステムは、減径ベルトのループを通過する解除ワイヤを更に含む。
【0010】
様々な実施形態では、ステント部材は、圧縮状態から復元状態まで半径方向に拡張可能であり、減径ベルトは、ステント部材が圧縮状態から復元状態まで拡張することを可能にするように解除可能である。一部の実施形態では、ステントグラフトシステムは、グラフト材料の第1の層とグラフト材料の第2の層の間に位置付けられた第2のステント部材と、グラフト材料の第2の層とグラフト材料の第1の層の間でかつ第2のステント部材の少なくとも一部分の周りで第2のチャネルに少なくとも部分的に位置付けられた第2の減径ベルトとを更に含む。
【0011】
一部の実施形態では、グラフト材料の第2の層は、グラフト材料の第2の層とグラフト材料の第1の層の間に第2のチャネルを提供する形状を有する。同じく、一部の実施形態では、減径ベルトはループを含み、第2の減径ベルトもループを含み、ステントグラフトシステムは、減径ベルトのループを通過するかつ第2の減径ベルトのループを通過する解除ワイヤを更に含む。一部の実施形態では、ステントグラフトシステムは、ステント部材と第2のステント部材の間のグラフト材料の第2の層にひだを更に含む。
【0012】
ステントグラフトシステムを製造する実施形態による方法は、複数のステント部材をグラフト材料の第1の層上に置く段階と、少なくとも部分的に複数のステント部材のうちの各ステント部材の周りに複数のスペーサのうちのそれぞれのスペーサを置く段階と、複数のスペーサのうちの各スペーサの少なくとも一部分をグラフト材料の第2の層を使用して封入する段階と、グラフト材料の第2の層とグラフト材料の第1の層の間で複数のステント部材のうちの各ステント部材の周りにそれぞれのチャネルを残すためにグラフト材料の第2の層内のそれぞれの開口部から複数のスペーサの各々を除去する段階とを含む。様々な実施形態では、複数のスペーサのうちの各スペーサはチューブを含む。
【0013】
様々な実施形態では、本方法は、少なくとも部分的にそれぞれのチャネル内の複数のステント部材のうちの各ステント部材の周りに複数の減径ベルトのうちのそれぞれの減径ベルトを置く段階を更に含む。一部の実施形態では、複数の減径ベルトのうちの各減径ベルトは糸を含む。一部の実施形態では、複数の減径ベルトの各々は、ループを含み、本方法は、複数のステント部材を半径方向圧縮状態に保持するために複数の減径ベルトのうちの各々のループを通るように解除ワイヤを置く段階を更に含む。一部の実施形態では、減径ベルトは、減径ベルトのうちの各減径ベルトの端部がグラフト材料の第2の層内のそれぞれの開口部から延びるように位置決めされる。
【0014】
様々な実施形態では、本方法は、グラフト材料の第2の層内にひだを形成するためにグラフト材料の第2の層を軸線方向に圧縮する段階と、グラフト材料の第2の層内のひだのための折り目を固化するために熱を印加する段階と、ひだが熱的に固化された後にグラフト材料の第2の層を軸線方向に復元するためにグラフト材料の第2の層を引っ張る段階とを更に含む。一部の実施形態では、熱を印加する段階は、グラフト材料の第2の層内のひだのための折り目を固化するためにグラフト材料の第2の層をオーブン内で焼成する段階を含む。
【0015】
実施形態による方法は、ステントグラフトシステムを使用することを可能にする。ステントグラフトシステムは、グラフト材料の第1の層と、グラフト材料の第2の層と、複数のステント部材と、複数の減径ベルトとを含む。本方法は、複数のステント部材のうちの各ステント部材がグラフト材料の第2の層とグラフト材料の第1の層の間の対応するチャネルに少なくとも部分的に位置付けられた複数の減径ベルトのうちの対応する減径ベルトによって圧縮状態に保持された状態でステントグラフトシステムを血管に位置決めする段階と、複数のステント部材が圧縮状態から復元状態まで拡張することを可能にするために複数の減径ベルトを解除する段階とを含む。一部の実施形態では、複数の減径ベルトを解除する段階は、複数の減径ベルトのうちの1又は2以上のループを通してかつそこから解除ワイヤを引っ張る段階を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態によるステントグラフトシステムを示す図である。
【
図2】実施形態によるステントグラフトシステムの断面図である。
【
図3】実施形態によるステントグラフトシステムの断面図である。
【
図4】実施形態によるステントグラフトシステムを製造する方法の流れ図である。
【
図5】実施形態による製造のステージ中のステントグラフトシステムを示す図である。
【
図6】実施形態による製造の別のステージ中のステントグラフトシステムを示す図である。
【
図7】実施形態による製造の更に別のステージ中のステントグラフトシステムを示す図である。
【
図8】血管に挿入されて圧縮状態にある実施形態によるステントグラフトシステムを示す図である。
【
図9】血管に挿入されて復元状態にある実施形態によるステントグラフトシステムを示す図である。
【
図10】実施形態によるステントグラフトシステムを血管内に展開する方法の流れ図である。
【
図11】血管に挿入されて固定のための固着ステントを有する実施形態によるステントグラフトシステムを示す図である。
【
図12】実施形態によるステントグラフトシステムを製造する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細説明では、その一部を形成する添付図面を参照する。これらの図面では、状況が別途指定しない限り、類似の記号は、類似の品目を典型的に識別する。詳細説明に説明する例示的実施形態、図面、及び特許請求の範囲は、限定であるように意味していない。ここに提示する主題の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、かつ他の変更を加えることができる。本明細書に一般的に説明して図に例示する本発明の開示の態様は、広範な異なる構成に配置、置換、結合、かつ設計することができ、その全てが明示的に想定されており、かつ本発明の開示の一部を形成することは容易に理解されるであろう。
【0018】
様々な実施形態は、グラフト材料によって形成されたチャネル内のステント部材の周りに周方向に縫合糸又はワイヤのような減径ベルトを提供することによってステントグラフトの圧縮及び拡張の方法の改善を可能にする。様々な実施形態は、ステントグラフトの圧縮及び拡張の改善を(1)ステント部材を取り囲む複数のグラフト材料層を提供し、(2)グラフト材料層の間でステント部材にわたって周方向減径ベルトを配置し、(3)減径ベルトの端部を通して必要に応じてステント部材の半径方向拡張を可能にするために減径ベルトを簡単に解除するための解除ワイヤを提供することによって可能にする。
【0019】
様々な実施形態は、ステント部材を取り囲む周方向減径ベルトを有するステントグラフトシステムを可能にする。様々な実施形態では、減径ベルトの各々は、対応するステント部材が完全拡張状態にある時にこのステント部材の円周よりも長さが短く、対応するステント部材が圧縮状態にある時にこのステント部材の円周よりも長さが長い。減径ベルトは、ステント部材が圧縮状態にある時にステント部材を取り囲む。様々な実施形態では、減径ベルトの各々は、その端部の両方にループを有する。各ステント部材を取り囲む各減径ベルトの両方のループ内を解除ワイヤが通り、ステント部材の圧縮を維持する。様々な実施形態では、血管内へのステントグラフトシステムの挿入後に、解除ワイヤが減径ベルトのループから取り出され、ステント部材の拡張が可能になる。
【0020】
図1は、実施形態によるステントグラフトシステム1を示している。ステントグラフトシステム1は、グラフト材料の第1の層2aと、グラフト材料の第2の層2bと、ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nと、減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nと、解除ワイヤ12とを含む。ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nは、グラフト材料の第1の層2aとグラフト材料の第2の層2bの間に位置付けられる。グラフト材料の第2の層2bは、ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nの各々の周りに対応するチャネル3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j、3k、3l、3m、3nを提供する形状を有するように形成される。様々な実施形態では、ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nの各々の周りの対応するチャネル3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j、3k、3l、3m、3nは、周方向チャネルである。
【0021】
減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nの各々は、一端に対応する第1のループ7a、7b、7c、7d、7e、7f、7g、7h、7i、7j、7k、7l、7m、7nを含み、他端に対応する第2のループ8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g、8h、8i、8j、8k、8l、8m、8nを含む。減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nの各々は、ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nのうちの対応する1つの周りの対応するチャネル3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j、3k、3l、3m、3nに位置付けられる。
【0022】
減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nのうちの各々の第1のループ7a、7b、7c、7d、7e、7f、7g、7h、7i、7j、7k、7l、7m、7n及び第2のループ8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g、8h、8i、8j、8k、8l、8m、8nは、グラフト材料の第2の層2b内の対応する開口部4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i、4j、4k、4l、4m、4nから延びる。解除ワイヤ12は、ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nが圧縮状態にある時に減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nのうちの各々の第1のループ7a、7b、7c、7d、7e、7f、7g、7h、7i、7j、7k、7l、7m、7n及び第2のループ8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g、8h、8i、8j、8k、8l、8m、8nを通過する。
【0023】
様々な実施形態では、減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nの各々は、対応するステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nが完全に拡張された時にこれらのステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nの円周よりも短く、これらのステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nが圧縮状態にある時にこれらのステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nの円周よりも長い長さを有する。これは、解除ワイヤ12が引っ張られるまで減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nがステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nを圧縮状態に維持することを可能にする。解除ワイヤ12が引っ張られた状態で、ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nは、拡張状態又は復元状態まで拡張する。
【0024】
ステントグラフトシステム1は、管状壁を形成して開口管腔を定めるグラフト材料の第1の層2aを有する中空管状デバイスである。
図1に見られるステントグラフトシステム1は実質的に管状であるように示すが、当業者は、ステントグラフトシステム1は患者のターゲット部位への送出及びそこへの配置に適切なあらゆる形状とすることができることを理解するであろう。様々な実施形態では、グラフト材料の第1及び第2の層2a、2bは、1又は2以上のポリマー又は他の適切な材料から製造されたグラフト材料を含む。一部の実施形態では、グラフト材料の第1及び第2の層2a、2bは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で作られる。一部の実施形態では、グラフト材料の第1及び第2の層2a、2bは、拡張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)で作られる。
【0025】
一部の実施形態では、ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nは、単一ステントとして互いに接続されるが、一部の実施形態では互いに個別のものである。ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nの各々は、例えば、ステンレス鋼、ニチノールのようなニッケルチタン合金(NiTi)、又はエルジロイのようなコバルトベースの合金、プラチナ、金、チタン、タンタル、ニオブ、及び/又はその組合せを含むがこれらに限定されないいずれかの他の適切な材料から作ることができる。図示の実施形態では、ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nの各々は、圧縮状態から拡張状態又は復元状態まで半径方向に拡張可能である。ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nは、拡張可能又は自己拡張可能なバルーンとすることができる。
図1に図示の実施形態は、ある一定の個数のステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nを示すが、様々な実施形態ではあらゆる個数のステント部材を使用することができることを認めなければならない。図示の実施形態では、ステントグラフトシステム1の各部分は、近位端と遠位端の両方で外向きに朝顔形に広がるが、様々な他の実施形態では、ステントグラフトシステムは、その長さにわたって一様なものとすることができる。
【0026】
ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nの各々は、当該ステント部材の直径を円周上で減径し、これらのステント部材を圧縮状態に保持するために対応する減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nによって圧縮される。様々な実施形態では、減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nは、縫合糸、糸、又はワイヤなどである。
【0027】
減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nは、対応するステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nを包囲し、グラフト材料の第1の層2aとグラフト材料の第2の層2bの間の対応するチャネル3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j、3k、3l、3m、3n内に各々が位置付けられる。減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nの各々の端部は、グラフト材料の第2の層2b内の対応する開口部4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i、4j、4k、4l、4m、4nから延びる対応する第1のループ7a、7b、7c、7d、7e、7f、7g、7h、7i、7j、7k、7l、7m、7n及び第2のループ8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g、8h、8i、8j、8k、8l、8m、8nを有する。解除ワイヤ12は、減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nのうちの各々の第1のループ7a、7b、7c、7d、7e、7f、7g、7h、7i、7j、7k、7l、7m、7n及び第2のループ8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g、8h、8i、8j、8k、8l、8m、8nを通過し、ステントグラフトシステム1の近位端と遠位端の両方で外向きに延びる。解除ワイヤ12が引っ張られた状態で、減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nの各々は、対応するステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nに対する圧縮を解除し、ステントグラフトシステム1が半径方向に拡張することを可能にする。
【0028】
図2は、実施形態による
図1のステントグラフトシステム1の断面を示している。ステント部材5aは、グラフト材料の第1の層2aとグラフト材料の第2の層2bの間に位置付けられる。グラフト材料の第2の層2bは、ステント部材5aの周りに対応するチャネル3aを提供するように形成される。減径ベルト6aは、第1の端部に第1のループ7a及び第2の端部に第2のループ8aを有し、グラフト材料の第2の層2b内の開口部4aから延びる。減径ベルト6aは、ステント部材5aの周りのチャネル3aに位置付けられる。解除ワイヤ12(
図1を参照されたい)は、減径ベルト6aの第1のループ7a及び第2のループ8aを通して減径ベルト6aにステント部材5aを圧縮状態で保持させることができる。
【0029】
図3は、
図2と同様であり、類似の参照ラベル付けが類似の要素を指示するが、ステント部材5aとグラフト材料の第2の層2bの間にグラフト材料の追加の第3の層2cを更に含むステントグラフトシステムの断面を示している。当然ながら、様々な他の実施形態では、あらゆる個数のグラフト材料層を使用することができる。
図3の実施形態でのチャネル3aは、グラフト材料の第2の層2bとグラフト材料の第3の層2cの間にある。
【0030】
図4は、実施形態によるステントグラフトシステムを製造する方法の流れ図である。
図5及び
図6は、実施形態による製造の様々なステージ中にあり、かつ製造されて
図1のステントグラフトシステム1になるステントグラフトシステム10を示している。様々な実施形態による製造のステージを
図7にも示している。
図1、
図4、
図5、及び
図6を参照すると、段階100では、ステント部材がグラフト材料の第1の層上に位置決めされる。例えば、ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nは、グラフト材料の第1の層2a上に置かれる。段階110では、各ステント部材の周りにそれぞれのスペーサが置かれる。例えば、各ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nの周りにそれぞれのスペーサ9a、9b、9c、9d、9e、9f、9g、9h、9i、9j、9k、9l、9m、9nが置かれる。様々な実施形態では、スペーサ9a、9b、9c、9d、9e、9f、9g、9h、9i、9j、9k、9l、9m、9nの各々は、チューブなどを含む。様々な実施形態では、スペーサ9a、9b、9c、9d、9e、9f、9g、9h、9i、9j、9k、9l、9m、9nの各々は、カプトンチューブなどである。様々な実施形態では、スペーサ9a、9b、9c、9d、9e、9f、9g、9h、9i、9j、9k、9l、9m、9nの各々は、ポリイミドなどを含む。
【0031】
段階120では、スペーサは、グラフト材料の第2の層を使用して封入され、各スペーサの端部は、グラフト材料の第2の層内のそれぞれの開口部から突出する。例えば、スペーサ9a、9b、9c、9d、9e、9f、9g、9h、9i、9j、9k、9l、9m、9nは、グラフト材料の第2の層2bを使用して封入され、スペーサ9a、9b、9c、9d、9e、9f、9g、9h、9i、9j、9k、9l、9m、9nの各々の端部は、グラフト材料の第2の層2b内のそれぞれの開口部4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i、4j、4k、4l、4m、4nから突出する。
【0032】
段階130では、ステントグラフトシステムは、ステント部材間のグラフト材料層内にひだを形成するために軸線方向に圧縮される。例えば、ステントグラフトシステム10は、グラフト材料の第2の層2b内でそれぞれのステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5n間にひだ11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h、11i、11j、11k、11l、11m(
図6を参照されたい)を形成するように軸線方向に入れ子式に圧縮される。
図4及び
図6を参照すると、段階140では、グラフト材料層内のひだのための折り目を固化するためにステントグラフトシステムに熱が印加される。例えば、熱は、ステントグラフトシステム10がひだ11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h、11i、11j、11k、11l、11mのための折り目を固化するために入れ子式に圧縮される間にステントグラフトシステム10に印加される。
【0033】
様々な実施形態では、熱の印加段階は、ひだ11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h、11i、11j、11k、11l、11mのための折り目を固化するためにひだ11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h、11i、11j、11k、11l、11mにアイロンを当てることによって実施される。一部の実施形態では、熱の印加段階は、ひだ11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h、11i、11j、11k、11l、11mのための折り目を熱固化するためにステントグラフトシステム10をオーブンに配置してステントグラフトシステム10を予め決められた時間にわたって焼成することによって実施される。様々な実施形態では、ステントグラフトシステム10は、予め決められた向きを有する複数の周方向ひだ11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h、11i、11j、11k、11l、11mを形成するために長手方向に圧縮される。ひだ11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h、11i、11j、11k、11l、11mの各々は、ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nの各々の場所の間の区域内に形成されたグラフト材料の折り畳み面又は折り返し面を含むことができる。様々な実施形態では、複数の周方向ひだ11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h、11i、11j、11k、11l、11mの各々は、ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nのうちの2つのそれぞれのステント部材によって形成されたクラウン間に配置される。
【0034】
段階150では、ひだが熱的に固化された後にグラフト材料層を復元するためにステントグラフトシステムが引っ張られる。例えば、ひだ11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h、11i、11j、11k、11l、11mが熱的に固化された後にステントグラフトシステム10を長手方向に復元するために、
図6のステントグラフトシステム10が長手方向に引っ張られる。
図1、
図4、
図5、
図6、及び
図7を参照すると、段階160では、各ステント部材の周りにそれぞれの周方向チャネルを残すために、スペーサの各々がグラフト材料の第2の層内のそれぞれの開口部から取り出される。例えば、得られるステントグラフトシステム1の場合と同様に、それぞれのチャネル3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j、3k、3l、3m、3nをステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nの各々の周りに残すために、ステントグラフトシステム10のスペーサ9a、9b、9c、9d、9e、9f、9g、9h、9i、9j、9k、9l、9m、9nの各々は、グラフト材料の第2の層2b内のそれぞれの開口部4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i、4j、4k、4l、4m、4nから取り出される。
【0035】
図1、
図4、及び
図7を参照すると、段階170では、グラフト材料の第2の層内のそれぞれの開口部から延びる末端ループを有するそれぞれの減径ベルトが各ステント部材の周りのそれぞれのチャネルに置かれる。例えば、グラフト材料の第2の層2b内のそれぞれの開口部4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i、4j、4k、4l、4m、4nから延びる末端ループを有する減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nのそれぞれの1つが、ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nの各々の周りの対応するチャネル3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j、3k、3l、3m、3nに置かれる。段階180では、ステント部材を半径方向圧縮状態に保持するために減径ベルトの各々の末端ループを通るように解除ワイヤが置かれる。例えば、ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nを半径方向圧縮状態に保持するために、解除ワイヤ12は、減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nの各々の対応する第1のループ7a、7b、7c、7d、7e、7f、7g、7h、7i、7j、7k、7l、7m、7n及び対応する第2のループ8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g、8h、8i、8j、8k、8l、8m、8nを通るように位置決めされる。
図7は、ステントグラフトシステム1のための解除ワイヤ12を挿入するための製造ステージの例を示している。様々な実施形態では、解除ワイヤ12が取り付けられる時に、開口端部を有する円筒形デバイス30を使用してステントグラフトシステム1が保持される。
【0036】
図8は、大動脈20のような血管内に展開されている圧縮状態にある
図1のステントグラフトシステム1の例を示している。
図9は、大動脈20内への固化後に拡張状態にあるステントグラフトシステム1の例を示している。
図10は、
図1のステントグラフトシステム1のようなステントグラフトシステムを血管内に展開するための実施形態による方法の流れ図である。
図10に示す方法は、グラフト材料の第1の層と、グラフト材料の第2の層と、複数のステント部材と、複数の減径ベルトとを含むステントグラフトシステムを使用することを可能にする。
【0037】
図1、
図8、及び
図10を参照すると、段階200では、ステントグラフトシステムは、複数のステント部材のうちの各ステント部材がグラフト材料の第2の層とグラフト材料の第1の層の間の対応するチャネルに少なくとも部分的に位置付けられた複数の減径ベルトのうちの対応する減径ベルトによって圧縮状態で保持された状態で血管に位置決めされる。例えば、減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nを有するステントグラフトシステム1が大動脈20に位置決めされ、この場合に、減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nは、グラフト材料の第1の層2aとグラフト材料の第2の層2bの間のステントグラフトシステム1の対応するステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nの周りの対応するチャネル3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j、3k、3l、3m、3n内である。
【0038】
様々な実施形態では、ステントグラフトシステム1は、再位置決め機能を与える制御された正確な展開を可能にする。対応するステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nの間のひだ11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h、11i、11j、11k、11l、11mのための折り目は、様々な実施形態では、
図8に示すように大動脈20内でステントグラフトシステム1を湾曲させることを容易にする。ステントグラフトシステム1は、動脈瘤21にわたって大動脈20を修復するように位置決めすることができる。
【0039】
図1、
図8、
図9、及び
図10を参照すると、段階210では、複数のステント部材が圧縮状態から拡張状態である復元状態まで拡張することを可能にするために複数の減径ベルトが解除される。一部の実施形態では、複数の減径ベルトの解除段階は、複数の減径ベルトのうちの1又は2以上のループを通してその外に解除ワイヤを引っ張る段階220を含む。例えば、ステント部材5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5nの周りの減径ベルト6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6nを解除するために解除ワイヤ12が引っ張られ、ステントグラフトシステム1が大動脈20内で半径方向に拡張して
図8に示す圧縮状態から
図9に示す復元状態まで半径方向に拡張することを可能にする。
図9に示すように、ステントグラフトシステム1は、半径方向に拡張して大動脈20の壁のような血管壁に接触し、大動脈20内の動脈瘤21のような動脈瘤を横断することを可能にする。
【0040】
図11は、ステントアンカー50を近位端に更に含むステントグラフトシステム1の実施形態を示している。ステントアンカー50は、大動脈20のような血管内へのステントグラフトシステム1の固定を可能にする。様々な実施形態では、ステントアンカー50は、鉤状部51又は他の固定要素を含み、圧縮状態から半径方向に拡張可能であり、拡張状態又は復元状態まで拡張した時に鉤状部51に大動脈20の壁のような血管壁を貫通させる。
【0041】
図1及び
図2を参照すると、実施形態によるステントグラフトシステム1は、グラフト材料の第1の層2aと、グラフト材料の第2の層2bと、ステント部材5aと、減径ベルト6aとを含む。ステント部材5aは、グラフト材料の第1の層2aとグラフト材料の第2の層2bの間に位置付けられる。減径ベルト6aは、グラフト材料の第2の層2bとグラフト材料の第1の層2aの間でかつステント部材5aの少なくとも一部分の周りでチャネル3aに少なくとも部分的に位置付けられる。
【0042】
グラフト材料の第2の層2bは、グラフト材料の第2の層2bとグラフト材料の第1の層2aの間にチャネル3aを提供する形状を有する。様々な実施形態では、
図1のステントグラフトシステム1の減径ベルト6aは、ステント部材5aが
図9の場合のように完全に拡張された時にステント部材5aの円周よりも短いが、ステント部材5aが
図8の場合のように圧縮状態にある時にステント部材5aの円周よりも長い長さを有する。
図1及び
図2を参照すると、一部の実施形態では、減径ベルト6aは、減径ベルト6aの端部に第1のループ7a及び第2のループ7bを含む。同じく、一部の実施形態では、ステントグラフトシステム1は、減径ベルト6aの第1のループ7a及び第2のループ8aを通過する解除ワイヤ12を含む。
【0043】
ステント部材5aは、圧縮状態から復元状態まで半径方向に拡張可能であり、減径ベルト6aは、ステント部材5aが圧縮状態から復元状態まで拡張することを可能にするように解除可能である。ステントグラフトシステム1は、グラフト材料の第1の層2aとグラフト材料の第2の層2bの間に位置付けられたステント部材5bと、グラフト材料の第2の層2bとグラフト材料の第1の層2aの間でかつステント部材5bの少なくとも一部分の周りでチャネル3bに少なくとも部分的に位置付けられた減径ベルト6bとを更に含む。
【0044】
グラフト材料の第2の層2bは、グラフト材料の第2の層2bとグラフト材料の第1の層2aの間にチャネル3bを提供する形状を有する。同じく、一部の実施形態では、減径ベルト6bは、第1のループ7bと第2のループ8bを含み、ステントグラフトシステム1は、減径ベルト6aの第1のループ7a及び第2のループ8aを通過するかつ減径ベルト6bの第1のループ7b及び第2のループ8bを通過する解除ワイヤ12を含む。
図9に示すように、一部の実施形態では、ステントグラフトシステム1は、ステント部材5aと第2のステント部材5bとの間でグラフト材料の第2の層2b内のひだ11aに起因する折り目を更に含む。
【0045】
図12は、実施形態によるステントグラフトシステムを製造する方法の流れ図である。段階300では、複数のステント部材がグラフト材料の第1の層上に置かれる。段階310では、少なくとも部分的に複数のステント部材のうちの各ステント部材の周りに複数のスペーサのうちのそれぞれのスペーサが置かれる。段階320では、複数のスペーサのうちの各スペーサの少なくとも一部分は、グラフト材料の第2の層を使用して封入される。
【0046】
段階330では、グラフト材料の第2の層内にひだを形成するためにグラフト材料の第2の層が軸線方向に圧縮される。段階340では、グラフト材料の第2の層内のひだのための折り目を固化するために熱が印加される。一部の実施形態では、熱の印加段階は、グラフト材料の第2の層内のひだのための折り目を固化するためにグラフト材料の第2の層をオーブン内で焼成する段階を含む。段階350では、ひだが熱的に固化された後にグラフト材料の第2の層を軸線方向に復元するためにグラフト材料の第2の層が引っ張られる。段階360では、グラフト材料の第2の層とグラフト材料の第1の層の間で複数のステント部材のうちの各ステント部材の周りにそれぞれのチャネルを残すために、複数のスペーサの各々がグラフト材料の第2の層内のそれぞれの開口部から取り出される。様々な実施形態では、複数のスペーサのうちの各スペーサは、チューブを含む。
【0047】
段階370では、少なくとも部分的にそれぞれのチャネル内の複数のステント部材のうちの各ステント部材の周りに、複数の減径ベルトのうちのそれぞれの減径ベルトが置かれる。一部の実施形態では、複数の減径ベルトのうちの各減径ベルトは糸を含む。一部の実施形態では、複数の減径ベルトのうちの各減径ベルトは、天然繊維又は合成繊維を含む。一部の実施形態では、複数の減径ベルトのうちの各減径ベルトは金属を含む。一部の実施形態では、複数の減径ベルトの各々はループを含む。段階380では、複数のステント部材を半径方向圧縮状態に保持するために、複数の減径ベルトのうちの各々のループを通して解除ワイヤが置かれる。一部の実施形態では、減径ベルトは、複数の減径ベルトのうちの各減径ベルトの端部がグラフト材料の第2の層内のそれぞれの開口部から延びるように位置決めされる。
【0048】
様々な実施形態では、縫合糸などのような減径ベルトをステント部材を取り囲む定位置にロックするために、解除ワイヤがステントグラフトシステムを通って延びる。次に、縫合糸を解除してステント部材の拡張を可能にするために、解除ワイヤは縫合糸ループから取り出される。ステント部材の拡張後に、ステントグラフトシステムは、大動脈壁に対して半径方向外向きの力を与える。様々な実施形態では、ステントグラフトシステムは、動脈瘤によって引き起こされた可能性がある脆弱化した動脈の壁を補強するように機能する。
【0049】
様々な実施形態では、ステントグラフトシステムの製造中に、グラフト材料の第1の層及びステント部材がチューブによって囲まれる。次に、ステント部材、グラフト材料の第1の層、及びチューブは、追加のグラフト材料層で封入され、2つのグラフト材料層の間にチャネルを提供し、この場合に、チューブはチャネルの中に位置する。様々な実施形態では、グラフト材料層は、熱を使用して熱的にひだ付けされる。様々な実施形態では、チューブは、グラフト材料層の間から取り出され、それによってステント部材の各々の上にチャネルが残される。一部の実施形態では、チューブを置換してステント部材の圧縮を保持するために、グラフト材料層の間の各ステント部材の周りの対応するチャネル内に縫合糸が置かれる。様々な実施形態では、これらの縫合糸を定位置にロックしてステント部材の圧縮を維持するために、ステントグラフトシステムの遠位端から近位端まで延びる解除ワイヤが縫合糸ループを通して挿入される。様々な実施形態では、解除ワイヤを引っ張ることによって縫合糸が解除され、ステント部材が拡張することが可能になる。解除ワイヤは、患者内へのステントグラフトシステムの挿入後に大動脈のような動脈内での場所を補正するために取り外すことができる。
【0050】
様々な実施形態では、ステント部材は、1又は2以上のグラフト材料層に取り付ける又は積層させることができる。様々な実施形態では、ステント部材は、1又は2以上のグラフト材料層の中に完全に積層又は融合される。一部の実施形態では、ステント部材は、1又は2以上のグラフト材料層の中又は間で部分的に積層される又は自由浮動する。一部の実施形態では、グラフト材料層は、近位端から遠位端までのステントグラフトシステムの全長を延びる。一部の他の実施形態では、グラフト材料層は、ステントグラフトシステムの全長を覆わず、遠位端及び/又は近位端の一部分が露出したままに残され、それによって両端で一部のステント部材を露出されたままに残すことができる。
【0051】
様々な実施形態では、製造中に、ステント部材を取り囲むチューブが存在する。様々な実施形態では、各ステント部材は、それを周方向に取り囲む個別のチューブを有する。一部の実施形態では、複数のチューブを様々な点で接続することができる。一部の実施形態では、チューブは、ステント部材の一部又は全ての周りに螺旋状に巻き付けられた単一部分で構成することができる。様々な実施形態では、ステント部材は、グラフト材料層の間に少なくとも部分的に積層される。
【0052】
様々な実施形態では、製造中に、長手方向延長構成から圧縮構成へのステントグラフトシステムの長手方向圧縮に続く熱的なひだ付けは、ステントグラフトシステムのひだ付きセクションが軸に沿って互いの中に入れ子になるように予め決められた向きの複数の周方向ひだを生成する。様々な実施形態では、いずれの向きの周方向ひだも、この向きにひだをロックするように熱的にひだ付けすることができ、これは、ステントグラフトシステムの埋め込み後に自然な状況でステントグラフトが再度長手方向に圧縮された又は傾斜した時に、圧縮されたステントグラフトは、事前設定されたひだの向きを記憶しており、それを取り戻すことになる。
【0053】
様々な実施形態では、解除ワイヤは、全てのステント部材の周りの全ての縫合糸上のループを通過し、それによって各ステント部材を圧縮する。様々な他の実施形態では、解除ワイヤは、ステント部材の一部分のみの上の縫合糸ループを通過することができる。一部の実施形態は、各々がステント部材の対応する部分集合の周りの減径ベルトを解除するためのものである複数の解除ワイヤを有することができる。様々な実施形態では、解除ワイヤは、それが引っ張られるまで縫合糸をステント部材の周りで周方向に取り囲む位置に緊密に留めるロッキング機構として機能する。様々な実施形態では、解除ワイヤが縫合糸から取り外されると、縫合糸ループは解除され、縫合糸は、もはやステント部材を緊密に取り囲まず、ステント部材を半径方向拡張状態まで復元することが可能になる。
【0054】
様々な実施形態では、実施形態によるステントグラフトシステムは、大動脈円弧内に展開される。一部の実施形態では、実施形態によるステントグラフトシステムは、大動脈の下行大動脈部分の中に挿入される。様々な実施形態では、ステントグラフトシステムは、それが大動脈の形状に適合するように曲がることを可能にするように構成されたステント部材を有する。様々な実施形態では、ステント部材の拡張時に、ステントグラフトシステムは、大動脈壁に対して半径方向外向きの力を与える。様々な実施形態では、ステントグラフトシステムは、1又は2以上の追加の血管の中に延びるための分岐部分を含む。
【0055】
様々な実施形態は、患者内への展開時のステントグラフトシステムの改善された圧縮及び制御された拡張を提供する。減径ベルトが、ステントグラフトシステムのステント部材を周方向に取り囲む。一部の実施形態では、解除ワイヤが、グラフト材料内のチャネル開口部から延びる減径ベルトのループの中に通され、解除ワイヤは、ステントグラフトシステムの両端上に延びる。解除ワイヤの取り外しは、減径ベルトを緩めてステントグラフトシステムのステント部材が完全に拡張することを可能にする。減径ベルト及び解除ワイヤは、1又は2以上の血管内へのステントグラフトシステムの制御されたかつ正確な展開を可能にする。
【0056】
実施形態によるステントグラフトシステムは、グラフト材料の第1の層と、グラフト材料の第2の層と、1又は2以上のステント部材と、1又は2以上の減径ベルトと、解除ワイヤとを含む。様々な実施形態では、1又は2以上のステント部材は、グラフト材料の第1の層とグラフト材料の第2の層の間に位置付けられ、グラフト材料の第2の層は、1又は2以上のステント部材の各々の周りに対応するチャネルを提供するように形成される。様々な実施形態では、1又は2以上の減径ベルトの各々は、両端にループを有し、かつステント部材のうちの対応する1つの周りの対応するチャネルに位置付けられ、対応するステント部材が完全に拡張された時にこのステント部材の円周よりも短く、このステント部材が圧縮状態にある時にこのステント部材の円周よりも長い長さを有する。様々な実施形態では、解除ワイヤは、1又は2以上のステント部材が圧縮状態にある時に1又は2以上の減径ベルトの各々の両方のループを通過する。
【0057】
本明細書に開示する実施形態は、全ての点で例示的であり、本発明の限定ではないように考えるものとする。本発明は、上述の実施形態に決して限定されない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなくこれらの実施形態に様々な修正及び変更を加えることができる。特許請求の範囲の均等物の意味及び範囲に収まる様々な修正及び変形は、本発明の範囲内であるように意図している。
【符号の説明】
【0058】
1 ステントグラフトシステム
2a グラフト材料の第1の層
5a、5b ステント部材
6a、6b 減径ベルト
12 解除ワイヤ