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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】更生管引込用案内装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/18 20060101AFI20241009BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
F16L55/18 B
F16L1/00 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021020477
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123270
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】高谷 明彦
(72)【発明者】
【氏名】三上 伝吉
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-102625(JP,A)
【文献】特開2015-068014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/18
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
更生管を発進側マンホールから更生対象の既設管に引き込みその先端を到達側マンホールまで到達させるために、前記更生管の先端に接続された索条を前記到達側マンホールにおいて上方に牽引する際、前記索条を案内する案内装置において、
前記到達側マンホールの底部空間に配置されるフレームと、
前記フレームにおいて前記更生対象の既設管から遠い第1端部寄りに設けられるとともに、前記索条が掛けられるガイドローラを有する索条掛部と、
前記フレームの前記第1端部に設けられ、前記更生対象の既設管と対向して配置された
対向既設管の管頂部に掛けられることにより、前記ガイドローラに加わる垂直荷重を受け止める垂直荷重受部と、
前記フレームにおいて前記更生対象の既設管に近い第2端部に設けられ、前記到達側マンホールにおける前記更生対象の既設管側の壁面に当たることにより、前記ガイドローラに加わる水平荷重を受け止める水平荷重受部と、
を備え、
前記索条掛部は、前記フレームから下方に延びるローラ支持部材を有し、前記ローラ支持部材の下端部に前記ガイドローラが回転可能に支持され、
前記フレームと前記水平荷重受部が前記更生対象の既設管の管頂部より高い位置に配置され、
前記垂直荷重受部は、前記フレームの前記第1端部から下方に延びる垂下部と、前記垂下部の下端部から前記対向既設管に向かって水平方向に延びて前記対向既設管の菅頂部に掛けられる引掛部とを有することを特徴とする更生管引込用案内装置。
【請求項2】
前記ガイドローラの回転軸が前記更生対象の既設管の管頂部より低い位置に配置されることを特徴とする請求項に記載の更生管引込用案内装置。
【請求項3】
さらに、前記垂直荷重受部の前記引掛部に着脱可能に装着される保護部材を備え、前記保護部材は前記対向既設管の内径より小さい外径を有して前記対向既設管の管頂部内面に接する断面円弧形状の当接部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の更生管引込用案内装置。
【請求項4】
前記索条掛部の前記ガイドローラと前記垂直荷重受部が接近して配置されており、前記ガイドローラが前記ローラ支持部材に着脱可能に支持されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の更生管引込用案内装置。
【請求項5】
更生管を発進側マンホールから更生対象の既設管に引き込みその先端を到達側マンホールまで到達させるために、前記更生管の先端に接続された索条を前記到達側マンホールにおいて上方に牽引する際、前記索条を案内する案内装置において、
前記到達側マンホールの底部空間に配置されるフレームと、
前記フレームにおいて前記更生対象の既設管から遠い第1端部寄りに設けられるとともに、前記索条が掛けられるガイドローラを有する索条掛部と、
前記フレームの前記第1端部に設けられ、前記更生対象の既設管と対向して配置された
対向既設管の管頂部に掛けられることにより、前記ガイドローラに加わる垂直荷重を受け止める垂直荷重受部と、
前記フレームにおいて前記更生対象の既設管に近い第2端部に設けられ、前記到達側マンホールにおける前記更生対象の既設管側の壁面に当たることにより、前記ガイドローラに加わる水平荷重を受け止める水平荷重受部と、
を備え、
前記索条掛部は、前記フレームから下方に延びるローラ支持部材を有し、前記ローラ支持部材の下端部に前記ガイドローラが回転可能に支持され、
前記フレームは、前記第2端部が前記第1端部より低くなるように傾斜していることを特徴とする更生管引込用案内装置。
【請求項6】
更生管を発進側マンホールから更生対象の既設管に引き込みその先端を到達側マンホールまで到達させるために、前記更生管の先端に接続された索条を前記到達側マンホールにおいて上方に牽引する際、前記索条を案内する案内装置において、
前記到達側マンホールの底部空間に配置されるフレームと、
前記フレームにおいて前記更生対象の既設管から遠い第1端部寄りに設けられるとともに、前記索条が掛けられるガイドローラを有する索条掛部と、
前記フレームの前記第1端部に設けられ、前記更生対象の既設管と対向して配置された
対向既設管の管頂部に掛けられることにより、前記ガイドローラに加わる垂直荷重を受け止める垂直荷重受部と、
前記フレームにおいて前記更生対象の既設管に近い第2端部に設けられ、前記到達側マンホールにおける前記更生対象の既設管側の壁面に当たることにより、前記ガイドローラに加わる水平荷重を受け止める水平荷重受部と、
を備え、
前記索条掛部は、前記フレームから下方に延びるローラ支持部材を有し、前記ローラ支持部材の下端部に前記ガイドローラが回転可能に支持され、
さらに、前記フレームの前記第1端部から水平方向に突出して前記到達側マンホールにおける前記対向既設管側の壁面に当たる第1壁面当接部材を備えており、
前記水平荷重受部は、前記フレームの前記第2端部に設けられたジャッキと、このジャッキの先端に設けられた第2壁面当接部材を有し、前記ジャッキを水平方向に伸ばすことにより前記第2壁面当接部材が前記到達側マンホールにおける前記更生対象の既設管側の壁面に当たり、
前記フレームは、同一平面上に配置され前記更生対象の既設管の管軸方向に延びる2本のステーと、前記ステーの前記対向既設管側の端部間に掛け渡された連結ロッドとを有しており、
前記2本のステーにはそれぞれ前記ローラ支持部材が固定され、前記ローラ支持部材の下端部間に前記ガイドローラが支持され、
前記2本のステーの前記対向既設管側の端部には、それぞれ前記第1壁面当接部材が前記ステーからの突出量を調節可能にして設けられ、前記2本のステーの前記更生対象の既設管側の端部には、前記ジャッキがそれぞれ設けられ、
前記連結ロッドには前記垂直荷重受部が設けられていることを特徴とする更生管引込用案内装置。
【請求項7】
さらに、前記2本のステーにそれぞれ連結され、前記到達側マンホールの底面からの前記フレームの高さを調節する高さ調節機構を備えたことを特徴とする請求項に記載の更生管引込用案内装置。
【請求項8】
前記第1壁面当接部材と前記ジャッキと前記高さ調節機構が前記フレームに着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項に記載の更生管引込用案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した既設管にライニング用の更生管を引き込む際に用いられる案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された下水管等の老朽化した既設管を更生するために、更生管を既設管内周にライニングすることは公知である。更生管は例えば熱可塑性樹脂からなり本来断面円形であるが扁平に潰された状態で既設管に引き込まれる。引き込まれた更生管は、内部に高温蒸気を供給されることにより元の円形断面に戻り、続いて圧縮空気を供給されることにより膨張して既設管の内壁面に密着される。
【0003】
上記更生管の既設管への引き込み工程を簡単に説明する。既設管の一端に連なる発進側マンホールの近傍の地上に、扁平に潰された更生管を巻いたドラムを設置し、既設管の他端に連なる到達側マンホールの近傍の地上に、ウインチを設置する。予め既設管に通したワイヤの一端をドラムに巻かれた更生管の先端に連結し、このワイヤをウインチで巻き取ることにより、更生管の先端が発進側マンホールから既設管に引き込まれて到達側マンホールに達する。
【0004】
上記引き込み工程において、ウインチによる垂直方向の牽引力は到達側マンホールに配置された引込用案内装置のガイドローラにより水平方向の牽引力に変換され、この水平方向の牽引力は発進側マンホールに配置された送込用案内装置のガイドローラにより垂直方向の牽引力に変換される。引込用案内装置では強い牽引力が働くため、この強い牽引力を受け止める構造が要求される。
【0005】
特許文献1に開示された引込用案内装置では、到達側マンホールの開口部に設置したフレームから長い支柱が垂下し、この支柱の下端にガイドローラが設けられている。さらにこの支柱の下端近傍から水平にブレース部材が延び、このブレース部材の先端が到達側マンホールの壁面(更生対象の既設管が開口する側の壁面)に当たっている。上述した更生管の引込工程では、引込用案内装置のガイドローラに垂直荷重と水平荷重が作用するが、垂直荷重を支柱とフレームで受け止め、水平荷重をブレース部材で受け止めるようになっている。
【0006】
特許文献1の引込用案内装置は、長い支柱を必要とし部品点数が多く設置作業が手間取る等の欠点がある。
特許文献2は長い支柱を必要としない引込用案内装置を提案している。この更生管引込用案内装置は、到達側マンホールの底部空間に配置されたフレームを備えている。フレームにはガイドローラが回転可能に支持されている。フレームの両端部が垂直荷重受部として提供されており、更生対象の既設管とこの既設管と到達側マンホールを介して対向する対向既設管の管頂部に掛けられ、ガイドローラに加わる垂直荷重を受け止めている。フレームにおける更生対象の既設管側の端部近傍には、水平荷重受部が起立しており、この水平荷重受部がマンホールの壁面(更生対象の既設管側の壁面)に当たることにより、ガイドローラに加わる水平荷重を受け止めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実公平6-24191号公報
【文献】特開2011-102625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の引込用案内装置では、ガイドローラの回転軸がフレームと同一高さに配置されているため、引込工程の最終段階において更生管の先端部がフレームと干渉することがある。この干渉を回避するために、ガイドローラの下側のワイヤ引込位置とフレームとの間に十分な高低差を確保しようとすると、大径のガイドローラを必要とし、引込用案内装置の重量の増大を招く。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、更生管を発進側マンホールから更生対象の既設管に引き込みその先端を到達側マンホールまで到達させるために、前記更生管の先端に接続された索条を前記到達側マンホールにおいて上方に牽引する際、前記索条を案内する案内装置において、
前記到達側マンホールの底部空間に配置されるフレームと、前記フレームにおいて前記更生対象の既設管から遠い第1端部寄りに設けられるとともに、前記索条が掛けられるガイドローラを有する索条掛部と、前記フレームの前記第1端部に設けられ、前記更生対象の既設管と対向して配置された対向既設管の管頂部に掛けられることにより、前記ガイドローラに加わる垂直荷重を受け止める垂直荷重受部と、前記フレームにおいて前記更生対象の既設管に近い第2端部に設けられ、前記到達側マンホールにおける前記更生対象の既設管側の壁面に当たることにより、前記ガイドローラに加わる水平荷重を受け止める水平荷重受部と、を備え、
前記索条掛部は、前記フレームから下方に延びるローラ支持部材を有し、前記ローラ支持部材の下端部に前記ガイドローラが回転可能に支持されることを特徴とする。
上記構成によれば、下方に延びるローラ支持部材により、ガイドレールの下側の索条引込位置とフレームとの間で十分な高低差を確保することができるので、更生管の引込工程の最終段階において更生管の先端部がフレームと干渉するのを回避することができる。また、ガイドレールが小径であっても、この干渉を回避できるので、引込用案内装置の重量を抑制することができる。
【0010】
好ましくは、前記フレームと前記水平荷重受部が前記更生対象の既設管の管頂部より高い位置に配置され、前記垂直荷重受部は、前記フレームの前記第1端部から下方に延びる垂下部と、前記垂下部の下端部から前記対向既設管に向かって水平方向に延びて前記対向既設管の菅頂部に掛けられる引掛部とを有する。
上記構成によれば、更生管とフレームおよび水平荷重受部との間の干渉をより一層確実に回避することができる。また、フレームが対向既設管の菅頂部より高い位置にあっても、垂直荷重受部の引掛部がフレームより低い位置にあるので、対向既設管の管頂部に掛けることができる。
【0011】
好ましくは、前記ガイドローラの回転軸が前記更生対象の既設管の管頂部より低い位置に配置される。
上記構成によれば、更生管と更生対象の既設管の菅頂部との間の干渉を確実に回避することができる。
【0012】
好ましくは、さらに、前記垂直荷重受部の前記引掛部に着脱可能に装着される保護部材を備え、前記保護部材は前記対向既設管の内径より小さい外径を有して前記対向既設管の管頂部内面に接する断面円弧形状の当接部を有する。
上記構成によれば、特に対向既設管が既に更生管のライニングにより更生されている場合に、更生管が応力集中により損傷するのを回避できる。
【0013】
好ましくは、前記索条掛部の前記ガイドローラと前記垂直荷重受部が接近して配置されており、前記ガイドローラが前記ローラ支持部に着脱可能に支持されている。
索条は接続金具を介して更生管の先端に接続されており、引込工程の終了後に更生管の先端部を切断すると、索条に接続金具が残される。索条掛部のガイドローラと垂直荷重受部との間が狭いので、索条がガイドローラに拘束されたままではこの接続金具を案内装置から抜き出すことができない。しかし、上記構成によればガイドローラをローラ支持部から外すことにより、接続金具を案内装置から抜き出して索条とともに引き上げることができる。
【0014】
好ましくは、前記フレームは、前記第2端部が前記第1端部より低くなるように傾斜している。
フレームには、垂直荷重受部と対向既設管の菅頂部との当接部を支点とする回転モーメントが生じ、この回転モーメントにより水平荷重受部には上向きの力、すなわち水平荷重受部を到達側マンホールの壁面から外そうとする力が作用する。索条掛部が垂直荷重受部に近いので上記回転モーメントは比較的小さいため、水平荷重受部と到達側マンホールの壁面との摩擦抵抗により上記上向きの力に対抗できるが、フレームを傾斜させることにより、水平荷重受部の外れをより一層確実に防止することができる。
【0015】
好ましくは、さらに、前記フレームの前記第1端部から水平方向に突出して前記到達側マンホールにおける前記対向既設管側の壁面に当たる第1壁面当接部材を備えており、前記水平荷重受部は、前記フレームの前記第2端部に設けられたジャッキと、このジャッキの先端に設けられた第2壁面当接部材を有し、前記ジャッキを水平方向に伸ばすことにより前記第2壁面当接部材が前記到達側マンホールにおける前記更生対象の既設管側の壁面に当たる。
上記構成によれば、第1壁面当接部材とジャッキおよび第2壁面当接部材との協働により、フレームを到達側マンホールにしっかりと設置することができる。また、フレームから突出する第1壁面当接部材によりフレームと到達側マンホールの壁面との間にスペースを形成することができ、必要に応じてこのスペースに水替えホースを挿入することができる。
【0016】
好ましくは、前記フレームは、同一平面上に配置され前記更生対象の既設管の管軸方向に延びる2本のステーと、前記ステーの前記対向既設管側の端部間に掛け渡された連結ロッドとを有しており、前記2本のステーにはそれぞれ前記ローラ支持部材が固定され、前記ローラ支持部材の下端部間に前記ガイドローラが支持され、前記2本のステーの前記対向既設管側の端部には、それぞれ前記第1壁面当接部材が前記ステーからの突出量を調節可能にして設けられ、前記2本のステーの前記更生対象の既設管側の端部には、前記ジャッキがそれぞれ設けられ、前記連結ロッドには前記垂直荷重受部が設けられている。
上記構成によれば、更生対象の既設管および対向既設管の管軸に対して到達側マンホールの中心が偏心している場合でも、2つの第1壁面当接部材の突出量を到達側マンホールの壁面形状に応じて調節するとともに、2つのジャッキの伸び量または第2壁面当接部材の形状を到達側マンホールの壁面形状に応じて調節することにより、ガイドローラを上記既設管の管軸が通る垂直面上に配置することができ、更生管の引込工程において索条がガイドローラから外れるのを防止することができる。
【0017】
好ましくは、さらに、前記2本のステーにそれぞれ連結され、前記到達側マンホールの底面からの前記フレームの高さを調節する高さ調節機構を備えている。
上記構成によれば、フレームを、垂直荷重受部が対向既設管の菅頂部に掛けられる高さに安定して設置することができる。
【0018】
好ましくは、前記第1壁面当接部材と前記ジャッキと前記高さ調節機構が前記フレームに着脱可能に設けられている。
上記構成によれば、更生管の引込工程終了後に、引込用案内装置を分解して効率良く到達側マンホールから撤収することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、更生管の既設管への引込工程の最終段階において更生管の先端部がフレームと干渉するのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】既設管への更生管の引き込み工程を示す概略側断面図である。
図2】引き込まれる更生管の横断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る更生管引込用案内装置の側面図である。
図4】上記更生管引込用案内装置を図3においてA方向から見た図である。ただし、第1壁面当接部材を省いて示す。
図5】上記更生管引込用案内装置の平面図である。
図6】上記更生管引込用案内装置のフレームを示す平面図である。
図7】マンホールに対して既設管が偏心している場合の上記更生管引込用案内装置の設置状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、地中に下水管等の既設管1が埋設されている。既設管1は2つのマンホール2A,2B間にわたって延びている。老朽化した既設管1は、その内側に更生管3をライニングすることにより、更生される。
【0022】
本実施形態の更生管3は、熱可塑性樹脂からなり円形断面の形状記憶機能を有している。更生管3は図2に示すように予め扁平に潰されており、この扁平状態で既設管1に引き込まれる。引き込み工程が終了した後、更生管3は、内部に高温蒸気を供給することにより元の円形断面に戻り、続いて内部に圧縮空気を供給するにより、膨張して既設管1の内壁面に密着し、既設管1をライニングする。
【0023】
更生管3の既設管1への引き込み工程について図1を参照しながら簡単に説明する。発進側のマンホール2Aの近傍の地上には扁平断面形状の更生管3を巻回したドラム4が設置され、マンホール2Aの底部空間にはガイドローラ5を含む送込案内装置(詳しくは図示しない)が設置されている。到達側のマンホール2Bの近傍の地上にはウインチ6が配置され、マンホール2Bの底部空間にはガイドローラ25を含む引込用案内装置7が配置されている。
【0024】
ウインチ6にはワイヤ8の一端が接続されており、このワイヤ8を到達側マンホール2Bにおいてガイドローラ25に掛け渡して既設管1に通す。発進側マンホール2Aでは、更生管3をガイドローラ5に掛け渡すとともに、その先端を接続金具9を介してワイヤ8の他端に連結する。この状態でウインチ6によりワイヤ8を巻き取ると、更生管3が既設管1に引き込まれる。
【0025】
引込用案内装置の構成
以下、引込用案内装置7の構成について、図2図6を参照しながら説明する。図2図5は、一般的な引込用案内装置7の設置状態、すなわち、更生対象の既設管1と、この既設管1と到達側マンホール2Bを介して対向配置された対向既設管1Aの管軸が、同一直線上にあり到達側マンホール2Bの中心軸線と交わる場合の設置状態を示している。
【0026】
引込用案内装置7は、ほぼ水平に配置されたフレーム10と、このフレーム10の一方の端部(対向既設管1A側の端部;第1端部)寄りに設けられたワイヤ掛部20(索条掛部)と、フレーム10の上記一方の端部に設けられた垂直荷重受部30と、フレーム10の他方の端部(更生対象の既設管1側の端部;第2端部)に設けられた水平荷重受部40と、を主たる構成として備えている。
【0027】
フレーム10は、図6に示すように、同一平面上において互いに平行をなして既設管1,1Aの管軸方向に延びる2本のステー11と、これらステー11の一方の端部(対向既設管1A側の端部)間にステー11と直交して掛け渡された連結ロッド12とを有して、平面形状がコ字形をなしている。ステー11は断面矩形をなす中空の鋼材からなりその両端が開口している。連結ロッド12も断面矩形をなす中空の鋼材からなりその両端がステー11の端部側面に溶接等により固定されている。
【0028】
ワイヤ掛部20は、フレーム10の2本のステー11からそれぞれ下方に垂直に延びる2本のローラ支持部材21と、ガイドローラ25とを有している。ローラ支持部材21は、2つの部材22,23により構成されている。第1部材22は断面矩形の中空の鋼材からなり、垂直をなしてその上端部がステー11の側面に溶接等で固定されている。第2部材23は細長い鋼板からなり、その上部が第1部材22のほぼ全長にわたって溶接等により固定されている。第2部材23の下端部間にガイドローラ25が回転可能に支持されている。ガイドローラ25の回転軸25aは、ガイドローラ25とローラ支持部材21から抜き出し可能であり、これによりガイドローラ25はローラ支持部材21に対して着脱可能である。なお、ガイドローラ25の中央にはワイヤ8が入り込む溝25xが形成されている。
【0029】
垂直荷重受部30は、フレーム10の連結ロッド12の中央に取り付けられた断面矩形をなす筒型の取付部31と、この取付部31の下面に上端が溶接されて下方に垂直に延びる垂下部32と、この垂下部32の下端に溶接されてガイドローラ25の反対側に水平に突出する引掛部33とを有して略L字形をなしている。垂下部32と引掛部33も断面矩形をなす中空の鋼材からなる。
本実施形態では、垂直荷重受部30の取付部31が連結ロッド12に外装されてネジ等で固定されるようになっているが、この取付部31をコ字形にして連結ロッド12に対して着脱可能としてもよいし、垂下部32の上端を連結ロッド12の中央部に溶接等で直接固定してもよい。
【0030】
本実施形態では、引掛部33には例えば鋼製の保護部材35が着脱可能に装着されている。保護部材35は、円弧形状の当接部35aと、この当接部35aの中央部下面に形成された収容部35bを有している。この収容部35bに垂直荷重受部30の引掛部33が挿入されるようになっている。当接部35aの円弧の外径は、対向既設管1Aの内径より小さく、特に対向既設管1Aが既に更生管(図示しない)のライニングにより更生されている場合には、更生管の内径より若干小さい。例えば更生管の厚み10mmを考慮して外径230mmとする。
【0031】
水平荷重受部40は、フレーム10の2本のステー11の既設管1側の端部にそれぞれに、フレーム10とほぼ等しい高さで設けられている。水平荷重受部40は、2本のステー11のそれぞれに着脱可能に装着された2つのジャッキ41と、鋼材からなる細長い1つの壁面当接部材45(第2壁面当接部材)とを有している。ジャッキ41は、受け部材42とネジ棒43とナット44とを有している。受け部材42は筒部と鍔部とを有し、筒部がフレーム10のステー11の端から挿入され鍔部がステー11の端面に当接している。ネジ棒43は、一部が受け部材42の筒部を介してステー11に挿入され、一部がステー11から突出している。ネジ棒43にはナット44が螺合されており、ネジ棒43の先端には受金具43aが固定されている。壁面当接部材45は、2つのジャッキ41の受金具43aに掛け渡されるようにして支持されている。
【0032】
引込用案内装置7はさらに、フレーム10の2本のステー11の対向既設管1A側の端部にそれぞれ着脱可能に装着された壁面当接部材50(第1壁面当接部材)を備えている。この壁面当接部材50は、ステー11の端から挿入される挿入ロッド51と、この挿入ロッド51の先端に固定された当て部52とを有している。挿入ロッド51は断面矩形の中空の鋼材からなり、その上壁には長手方向に等間隔をおいて複数の係合穴51aが形成されており、ステー11の基端近傍の上壁を貫通するピン55を上記係合穴51aに選択的に挿入することにより、挿入ロッド31のステー11からの突出量が調節される。
【0033】
引込用案内装置7はさらに、2本のステー11にそれぞれ着脱可能に設けられた高さ調節機構60を備えている。この高さ調節機構60は、到達側マンホール2Bの底面からのフレーム10の高さを調節するものであり、ブラケット61と、ネジロッド62と、接地盤63とを有している。ブラケット61はその上端部にコ字形(図4参照)の取付部61aを有しており、この取付部61aの上下の板部間にステー11を挿入した状態でネジによりステー11に連結される。ブラケット61はその下端部に水平板部61bを有し、この水平板部61bに形成されたネジ穴にネジロッド62が螺合されるようになっている。接地盤63はネジロッド62の下端に回転可能に取り付けられている。接地盤63を到達側マンホール2Bの底面に載せた状態でネジロッド62aを回すことにより、フレーム10の高さが調節される。
【0034】
引込用案内装置の設置工程
次に、引込用案内装置7を到達側マンホール2Bの底部空間に設置する工程について説明する。
図2図5に示すようにフレーム10にワイヤ掛部20、垂直荷重受部30、水平荷重受部40、壁面当接部材50を装着した状態で、2つの高さ調節機構60により、フレーム10および水平荷重受部40を既設管1,1Aより高い位置に位置決めする。この位置決めにより、垂直荷重受部30の引掛部33が保護部材35を介して対向既設管1Aの管頂部に掛けられる。ワイヤ掛部20のガイドローラ25の回転軸25aは、既設管1の菅頂部より低い位置にある。
【0035】
次に、壁面調節部材50の突出量を調節してフレーム10の水平方向の位置決めを行う。これにより、フレーム10の連結ロッド12と到達側マンホール2Bにおける対向既設管1A側の壁面2xとの間のスペース70を調節する。既設管1での水の流れを遮断する必要がある場合には、水替えホース75(図5参照)を用いて発進側マンホール2Aから対向既設管1Aへの水の流れを迂回させる必要があるが、この水替えホース75をスペース70に通すことができる。
【0036】
次に、ジャッキ41を伸ばして壁面当接部材45をマンホール2Bの既設管1側の壁面2yに当て、さらにジャッキ41を伸ばす方向にナット44を回すことにより、壁面当接部材45,50がマンホール2Bの対向する壁面2x、2yに押し付けられ、フレーム10の設置が完了する。
本実施形態では、フレーム10に設置した傾斜計80を見ながら、その対向既設管1A側端部よりも更生対象の既設管1側の端部が僅かに(1~5°)低くなるように傾斜させる。
【0037】
引込用案内装置の作用
次に、引込用案内装置7の作用を説明する。図1に示すようにウインチ6でワイヤ8を牽引することにより、更生管3を既設管1に引き込む。
引込用案内装置7のローラ25には水平荷重と垂直荷重が加わる。水平荷重は水平荷重受部40の壁面当接部材45がマンホール2Bの壁面2yに当たることにより受け止めることができる。垂直荷重は垂直荷重受部30の引掛部33が対向既設管1の菅頂部に引っ掛かることにより受け止めることができる。
【0038】
引掛部33は、保護部材35を介して対向既設管1Aの菅頂部に引っ掛かる。この保護部材35の円弧形状の当接部35aが管頂部の内面に当たるので、応力集中を回避でき、対向既設管1Aの損傷、特に対向既設管1Aにライニングされた更生管の損傷を回避できる。また、対向既設管1Aが陶製である場合にも有効である。
【0039】
上記ローラ25に付与される垂直荷重により、フレーム10には対向既設管1Aの菅頂部と垂直荷重受部30の引掛部33の当接点を中心とする回転モーメントが生じる.この回転モーメントにより水平荷重受部40には上向きの力、すなわち水平荷重受部40を到達側マンホール2Bの壁面2yから外そうとする力が作用する。しかし、ガイドローラ25が垂直荷重受部30に近いので回転モーメントは比較的小さく、水平荷重受部40と壁面2yとの摩擦抵抗により上記上向きの力に対抗できる。本実施形態ではフレーム10を傾斜させることにより、水平荷重受部40の壁面からの外れをより一層確実に防止することができる。なお、フレーム10を傾斜させる代わりに、壁面当接部材45の上側にストッパを配置し、このストッパをアンカーで壁面2yに固定してもよい。
【0040】
ガイドローラ25はフレーム10から垂下するローラ支持部材21の下端部に支持されているので、ガイドローラ25の下側のワイヤ引込位置がフレーム10から十分下方に離れている。そのため、更生管3の引込工程の最終段階で、更生管3の先端および接続金具9が既設管1からマンホール2Bへ出てきた時に、フレーム10と干渉するのを防止することができる。また、ワイヤ引込位置とフレーム10との高低差を確保するためにガイドローラ25を大径にせずに済み、引込用案内装置7の重量の増大を抑制することができる。
【0041】
また、フレーム10と水平荷重受部40が既設管1の菅頂部より高い位置に配置されていることによっても、接続金具9および更生管3の先端部との干渉を回避することができる。
ガイドローラ25の回転軸25aは既設管1の菅頂部より低く配置されているので、既設管1内のワイヤ8を効率良く牽引することができるとともに、ワイヤ8や接続金具9が既設管1の菅頂部と干渉するのを確実に回避することができる。
【0042】
接続金具9がガイドローラ25に接近し、更生管3の先端が所定長さだけ既設管1から引き出された時に、更生管3の引込工程が終了する。この後で、更生管3の先端部を切断し、接続金具9から切り離す。接続金具9はワイヤ8に連結された状態にあり、接続金具9はガイドローラ25と垂直荷重受部30の垂下部32との狭い間隙を通ることができないため、このままではワイヤ8を引き上げることができない。本実施形態ではガイドローラ25をローラ支持部材21から取り外すことができるので、ワイヤ8を、接続金具9を着けたまま引き上げることができる。
【0043】
最後に、高さ調節機構60をフレーム10から外し、ジャッキ41を緩めた後でジャッキ41を含む水平荷重受部40と壁面当接部材50をフレーム10から外し、保護部材35を垂直荷重受部30の引掛部33から外す。このように引込用案内装置7を分解できるので、マンホール2Bから楽に撤収することができる。
【0044】
偏心マンホールの場合
本実施形態の引込用案内装置7は、図7に示すように既設管1,1Aの菅軸からマンホール2Bの中心軸線が偏心している場合にも適用することができる。詳述すると、既設管1,1Aの菅軸を通る垂直面上にガイドレール25の中央の溝25xと引掛部33が配置されるように、フレーム10が位置決めされる。この状態で、2つの壁面当接部材50の挿入ロッド51のステー11からの突出量を互いに相違するように調節し、当て部52を壁面2xに当てる。一方、壁面2yの形状に応じて、ジャッキ41間に掛け渡される壁面当接部材45に追加の壁面当接部材45’を連結する。一方(図7における上側)のジャッキ41からの水平荷重は、主として壁面当接部材45の一端部が壁面2yに当たることにより受け止め、他方のジャッキ41からの水平荷重は主として追加の壁面当接部材45’の両端部が壁面2yに当たることにより受け止めることができる。
【0045】
図7に示すように細長い壁面当接部材45’を追加する代わりに、壁面当接部材45の端部(図7において下側の端部)に短い壁面当接部材を追加し、この壁面当接部材を壁面2yに当ててもよい。
上記のように壁面当接部材の全体形状を壁面2yの形状に応じて変更する代わりに、2つのジャッキ41にそれぞれ壁面当接部材を取り付け、2つのジャッキ41の伸長量を独立して調節することにより、それぞれの壁面当接部材を壁面2yに当てるようにしてもよい。
【0046】
上記のように到達側マンホール2Bが偏心マンホールであっても、ガイドロール25の溝25xを既設管1,1Aの管軸を通る垂直面上に配置することができるので、更生管の引込工程において、ワイヤがガイドレール25から外れることはない。
【0047】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
更生管に接続される索条として、ワイヤの他にロープ等を用いてもよい。
保護部材は円管形状であってもよい。この場合、保護部材の上部が円弧形状の当接部として提供される。
更生される既設管は下水管に限らず、上水管等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、地中に埋設された下水管等の更生に適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 更生対象の既設管
1A 対向既設管
2A 発進側マンホール
2B 到達側マンホール
2x 対向既設管側の壁面
2y 更生対象の既設管側の壁面
3 更生管
6 ウインチ
7 更生管引込用案内装置
8 ワイヤ(索条)
9 接続金具
10 フレーム
11 ステー
12 連結ロッド
20 ワイヤ掛部(索条掛部)
21 ローラ支持部材
25 ガイドローラ
25a 回転軸
30 垂直荷重受部
32 垂下部
33 引掛部
35 保護部材
35 当接部
40 水平荷重受部
41 ジャッキ
45,45’ 壁面当接部材(第2壁面当接部材)
50 壁面当接部材(第1壁面当接部材)
60 高さ調節機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7