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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】住宅
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20241009BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
F24F13/02 C
F24F7/10 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021028571
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129761
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】梅本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】関谷 佳子
(72)【発明者】
【氏名】中川 浩
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-163247(JP,A)
【文献】特開2014-037937(JP,A)
【文献】特開2008-014510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
F24F 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅であって、
断熱された床下空間と、
前記床下空間の上に設けられた床上空間と、
外気を除湿又は加湿して得られる調湿空気を、前記床下空間に供給するための調湿装置と、
前記床下空間に設けられ、かつ、前記床下空間の空気に対して吸放湿可能な調湿材と、
前記調湿材によって吸放湿された床下空間の空気を、前記床上空間に供給するための供給装置とを含み、
前記床下空間は、基礎と、前記基礎に支持された床と、前記床の下方に配置された土間とで区画され、
前記調湿材は、前記土間に配された第1調湿材を含み、
前記第1調湿材の上下方向の厚さは、前記床下空間の中央側から前記基礎側に向かって大きくなる、
住宅。
【請求項2】
前記調湿材は、前記床下空間側を向く前記床の裏面に配された第2調湿材を含む、請求項1に記載の住宅。
【請求項3】
住宅であって、
断熱された床下空間と、
前記床下空間の上に設けられた床上空間と、
外気を除湿又は加湿して得られる調湿空気を、前記床下空間に供給するための調湿装置と、
前記床下空間に設けられ、かつ、前記床下空間の空気に対して吸放湿可能な調湿材と、
前記調湿材によって吸放湿された床下空間の空気を、前記床上空間に供給するための供給装置とを含み、
前記床下空間は、基礎と、前記基礎に支持された床と、前記床の下方に配置された土間とで区画され、
前記調湿材は、前記土間に配された第1調湿材と、前記床下空間側を向く前記床の裏面に配された第2調湿材とを含み、
前記第1調湿材は、前記第2調湿材よりも高湿時での吸放湿量が大きい、
住宅。
【請求項4】
前記第1調湿材の上下方向の厚さは、前記床下空間の中央側から前記基礎側に向かって大きくなる、請求項3に記載の住宅。
【請求項5】
前記調湿材は、層状に配置された複数の調湿シートを含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、 建物の調湿システムが記載されている。この調湿システムは、空気調和機と、調湿材が収容されたチャンバーと、空気調和機からの空気をチャンバーに供給するための第1ダクト手段と、チャンバー内で除湿された空気を、居室に供給するための第2ダクト手段とを含んで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-227397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、床上空間の調湿に加えて、床下空間を安定して調湿したいというニーズがある。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、床上空間と床下空間とを安定して調湿することが可能な住宅を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、住宅であって、断熱された床下空間と、前記床下空間の上に設けられた床上空間と、外気を除湿又は加湿して得られる調湿空気を、前記床下空間に供給するための調湿装置と、前記床下空間に設けられ、かつ、前記床下空間の空気に対して吸放湿可能な調湿材と、前記調湿材によって吸放湿された床下空間の空気を、前記床上空間に供給するための供給装置とを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る前記住宅において、前記床下空間は、基礎と、前記基礎に支持された床と、前記床の下方に配置された土間とで区画され、前記調湿材は、前記土間に配された第1調湿材を含んでもよい。
【0008】
本発明に係る前記住宅において、前記第1調湿材の上下方向の厚さは、前記床下空間の中央側から前記基礎側に向かって大きくなってもよい。
【0009】
本発明に係る前記住宅において、前記調湿材は、前記床下空間側を向く前記床の裏面に配された第2調湿材を含んでもよい。
【0010】
本発明に係る前記住宅において、前記第1調湿材は、前記第2調湿材よりも高湿時での吸放湿量が大きくてもよい。
【0011】
本発明に係る前記住宅において、前記調湿材は、層状に配置された複数の調湿シートを含んでもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の住宅は、上記の構成を採用したことにより、床上空間と床下空間とを安定して調湿することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の住宅を概念的に示す断面図である。
図2】本実施形態の調湿装置を概念的に示す断面図である。
図3】(a)は、第1調湿材に含まれる吸着材の平衡含水率曲線、(b)は、第2調湿材に含まれる吸着材の平衡含水率曲線である。
図4】(a)及び(b)は、本発明の他の実施形態の第1調湿材を示す図である。
図5】本発明の他の実施形態の調湿材を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0015】
[住宅]
図1には、本実施形態の住宅1を概念的に示す断面図が示されている。本実施形態の住宅1は、例えば、優れた断熱性能を具えた工業化住宅として構成されている。なお、住宅1は、工業化住宅に限定されるものではない。
【0016】
本実施形態の住宅1は、床下空間2、床上空間3、調湿装置4、調湿材5及び供給装置6を含んで構成されている。
【0017】
[床下空間]
本実施形態の床下空間2は、基礎7と、基礎7に支持された床8と、床8の下方に配置された土間9とで区画されている。本実施形態の床下空間2は、断熱されている。
【0018】
[基礎]
本実施形態の基礎7は、住宅1の外周に連続して配置されている。本実施形態の基礎7は、例えば、鉄筋コンクリート製の布基礎として構成されているが、ベタ基礎であってもよい。本実施形態の基礎7には、床下空間2を断熱するための断熱材10が配されている。
【0019】
[断熱材]
本実施形態の断熱材10は、基礎7の床下空間2側の側面に沿って、上下に延びている。このような断熱材10は、基礎7を介して伝えられる外気A1の熱を遮断することができる。これにより、住宅1は、床下空間2の空気(以下、単に「床下空気」ということがある。)A3の温度変化を小さくすることができる。断熱材10には、例えば、ポリスチレンフォーム等が適宜採用されうる。
【0020】
[床]
本実施形態の床8は、基礎7、7の間をのびている。床8は、例えば、複数の板パネルが並べられたフローリングとして構成されている。
【0021】
[土間]
本実施形態の土間9は、床下空間2の底面を構成している。土間9は、例えば、基礎7、7間に敷設される土間コンクリートとして構成されているが、このような態様に限定されるものではない。
【0022】
土間9には、一年を通して温度変化が小さい地中熱が伝達されている。これにより、土間9は、地中熱と、床下空気A3とを熱交換することができる熱交換部として構成される。したがって、床下空間2には、夏季は外気A1より冷たく、かつ、冬季は外気A1よりも暖かい床下空気A3が蓄えられる。本実施形態の住宅1は、床下空間2が断熱されているため、上記のような床下空気A3を、床下空間2に効果的に蓄えることができる。
【0023】
[床上空間]
本実施形態の床上空間3は、床下空間2の上に、床8を介して設けられている。本実施形態の床上空間3は、床8、天井11、外壁12、及び、間仕切り壁13で区画されている。床上空間3には、居室14が含まれている。
【0024】
[調湿装置]
調湿装置4は、外気A1を除湿又は加湿して得られる調湿空気A2を、床下空間2に供給するためのものである。調湿装置4は、調湿空気A2を得ることができれば、特に限定されるものではない。本実施形態の調湿装置4は、デシカント型である場合が例示される。
【0025】
デシカント型の調湿装置4は、他の種類の調湿装置(図示省略)に比べて、小さく形成されうる。このため、調湿装置4は、住宅1内での占有スペースを小さくすることができる。図2は、本実施形態の調湿装置4を概念的に示す断面図である。
【0026】
本実施形態の調湿装置4は、チャンバー21と、デシカントロータ22と、第1加熱冷却コイル23と、第2加熱冷却コイル24と、第1送風機25と、第2送風機26とを含んで構成されている。
【0027】
チャンバー21は、ケーシング27と、その内部の空間を2つに区分する仕切部28とを含んで構成されている。このような仕切部28により、チャンバー21には、互いに独立した第1チャンバー31と第2チャンバー32とが設けられる。
【0028】
第1チャンバー31には、その内部に外気A1を案内するための第1入口31aと、その内部の空気を排出するための第1出口31bとが設けられている。第1入口31aは、屋外33に連通している。一方、第1出口31bは、床下空間2に連通している。
【0029】
第2チャンバー32には、その内部に外気A1を案内するための第2入口32aと、その内部の空気を排出するための第2出口32bとが設けられている。第2入口32a及び第2出口32bは、屋外33に連通している。
【0030】
デシカントロータ22は、従来のものと同様に、軸方向(厚さ方向)に通風可能な円筒構造体に、シリカゲルやゼオライトなどの吸着材が担持されることによって構成されている。本実施形態のデシカントロータ22は、その回転軸22sを中心として、第1チャンバー31と第2チャンバー32との間を回転可能に配置されている。デシカントロータ22の回転速度は、従来と同様に設定されうる。
【0031】
第1加熱冷却コイル23及び第2加熱冷却コイル24は、ヒートポンプユニット(図示省略)によって循環する冷媒により、空気(外気A1)を加熱又は冷却するためのものである。
【0032】
第1加熱冷却コイル23は、第1チャンバー31において、デシカントロータ22よりも第1入口31a側(上流側)に設けられている。これにより、第1加熱冷却コイル23は、第1チャンバー31に案内された外気A1を加熱又は冷却して、その外気A1をデシカントロータ22に供給することができる。
【0033】
第2加熱冷却コイル24は、第2チャンバー32において、デシカントロータ22よりも第2入口32a側(上流側)に設けられている。これにより、第2加熱冷却コイル24は、第2チャンバー32に案内された外気A1を加熱又は冷却して、その外気A1をデシカントロータ22に供給することができる。
【0034】
第1送風機25は、第1入口31aから第1チャンバー31内に空気(外気A1)を案内し、第1チャンバー31内の空気(調湿空気A2)を第1出口31bから排出するためのものである。本実施形態の第1送風機25は、ファンとして構成されている。本明細書において、「ファン」は、空気を圧送するための機械である。したがって、ファンは、空気を圧送可能なものであれば、特に限定されるものではない。
【0035】
第1送風機25は、デシカントロータ22に対して第1出口31b側(下流側)において、第1出口31bに向かって送風する向きに配置されている。これにより、第1送風機25は、第1チャンバー31内を負圧にして、第1入口31aから外気A1を案内することができる。
【0036】
第2送風機26は、第2入口32aから第2チャンバー32内に空気(外気A1)を案内し、第2チャンバー32内の空気A5を第2出口32bから排出するためのものである。本実施形態の第2送風機26は、第1送風機25と同様に、ファンとして構成されている。
【0037】
第2送風機26は、デシカントロータ22に対して第2出口32b側(下流側)において、第2出口32bに向かって送風する向きに配置されている。これにより、第2送風機26は、第2チャンバー32内を負圧にして、第2入口32aから外気A1を案内することができる。
【0038】
[調湿装置の運転]
次に、調湿装置4の運転が説明される。本実施形態の調湿装置4では、冬季に比べて外気A1の湿度(絶対湿度)が高くなる夏季において、除湿運転が行われる(除湿運転モード)。一方、夏季に比べて外気A1の湿度(絶対湿度)が低くなる冬季では、加湿運転が行われる(加湿運転モード)。このような運転の切り替えは、調湿装置4の運転を制御可能な制御装置34(図1に示す)によって行われてもよいし、住宅1の居住者による操作等によって行われてもよい。
【0039】
[除湿運転(除湿運転モード)]
除湿運転(除湿運転モード)では、先ず、第1送風機25及び第2送風機26の運転により、第1チャンバー31及び第2チャンバー32内に外気A1がそれぞれ案内される。
【0040】
第1チャンバー31内に案内された外気A1は、第1加熱冷却コイル23によって冷却される。これにより、外気A1の温度が低下し、その湿度(相対湿度)が高められる。このような外気A1がデシカントロータ22を通過することにより、外気A1に含まれる水蒸気が、デシカントロータ22に効果的に吸着されうる。これにより、調湿装置4は、外気A1の湿度を低くした(外気A1を除湿した)調湿空気A2が得られる。調湿空気A2は、第1出口31bから床下空間2に供給される。
【0041】
第2チャンバー32内に案内された外気A1は、第2加熱冷却コイル24によって加熱される。これにより、外気A1の温度が上昇し、その湿度(相対湿度)が低くされる。このような外気A1がデシカントロータ22を通過することにより、デシカントロータ22に吸着されている水蒸気が、外気A1に効果的に放出されうる。これにより、調湿装置4は、デシカントロータ22を再生(即ち、再び除湿できるように調湿性能を回復)することができる。水蒸気が放出された空気A5は、第2出口32bから屋外33に排出される。
【0042】
デシカントロータ22は、第1チャンバー31と第2チャンバー32との間で回転しているため、第1チャンバー31での除湿と、第2チャンバー32での再生(調湿性能の回復)とを連続して行うことができる。したがって、調湿装置4は、外気A1の除湿を継続して行うことができる。
【0043】
[加湿運転(加湿運転モード)]
加湿運転(加湿運転モード)では、先ず、第1送風機25及び第2送風機26の運転により、第1チャンバー31及び第2チャンバー32内に外気A1がそれぞれ案内される。
【0044】
第1チャンバー31内に案内された外気A1は、第1加熱冷却コイル23によって加熱される。これにより、外気A1の温度が上昇し、その湿度(相対湿度)が低くされる。このような外気A1がデシカントロータ22を通過することにより、デシカントロータ22に吸着されている水蒸気が、外気A1に効果的に放出されうる。これにより、調湿装置4は、外気A1の湿度を高く(外気A1を加湿)した調湿空気A2が得られる。調湿空気A2は、第1出口31bから床下空間2に供給される。
【0045】
第2チャンバー32内に案内された外気A1は、第2加熱冷却コイル24によって冷却される。これにより、外気A1の温度が低下し、その湿度(相対湿度)が高められる。このような外気A1がデシカントロータ22を通過することにより、外気A1に含まれる水蒸気が、デシカントロータ22に効果的に吸着されうる。これにより、調湿装置4は、デシカントロータ22を再生(即ち、再び加湿できるように調湿性能を回復)することができる。水蒸気が吸着された空気A5は、第2出口32bから屋外33に排出される。
【0046】
デシカントロータ22は、第1チャンバー31と第2チャンバー32との間で回転しているため、第1チャンバー31での加湿と、第2チャンバー32での再生(調湿性能の回復)とを連続して行うことができる。したがって、調湿装置4は、外気A1の加湿を継続して行うことができる。
【0047】
このように、本実施形態の住宅1は、調湿装置4によって、外気A1を除湿又は加湿して得られる調湿空気A2を、床下空間2に供給することができる。したがって、本実施形態の住宅1は、床下空間2を調湿することができる。
【0048】
[外気供給経路]
本実施形態の調湿装置4は、調湿性能を回復させるための外気A1を供給可能な外気供給経路35を有している。本実施形態の外気供給経路35は、外気A1が供給される第2入口32a及び第2チャンバー32によって構成されている。このような外気供給経路35は、例えば、調湿性能の回復に、図1に示した床上空間3の空気(以下、単に「床上空気」ということがある。)A4が用いられていた従来の調湿装置とは異なり、床上空間3の環境に左右されることなく、調湿性能の回復に必要な外気A1を、調湿装置4に供給できる。したがって、調湿装置4は、調湿性能を効率よく回復させることができる。さらに、調湿装置4(住宅1)は、床上空間3と調湿装置4との間を接続するダクト(図示省略)等を設ける必要もないため、初期導入コストを低減しうる。
【0049】
[バイパス経路]
図2に示されるように、調湿装置4は、第1チャンバー31、第1入口31a及び第1出口31bにより、通風可能なデシカントロータ22を介して、屋外33と床下空間2との間を連通させることができる。これにより、調湿装置4は、除湿運転及び加湿運転を停止している間において、第1チャンバー31、第1入口31a及び第1出口31bを、床下空間2に外気A1を供給可能なバイパス経路36として構成することができる。したがって、調湿装置4は、外気A1の除湿や加湿が必要のない季節(夏季及び冬季以外の季節)において、床下空間2に供給することができる。このような床下空気A3が、図1に示した供給装置6によって床上空間3に供給されることによって、住宅1全体を換気することが可能となる。なお、床下空間2に外気A1が効率よく供給されるように、第1送風機25(図2に示す)が運転されるのが望ましい。
【0050】
[調湿装置の設置位置]
調湿装置4は、図1に示した住宅1の内外において、適宜設置されうる。なお、調湿装置4と屋外33との距離が大きくなると、調湿装置4に外気A1を案内するためのダクト(図示省略)や、調湿装置4から屋外33に外気A1を排出するためのダクト(図示省略)を設置して、それらのダクトを長くする必要が生じる。このような長いダクトは、調湿装置4の初期導入コストの増大や、圧力損失の増加に伴う送風機(図2に示した第1送風機25や第2送風機26)の動力の増大を招く傾向がある。このため、調湿装置4は、基礎7又は外壁12の近傍に取り付けられるのが望ましい。ここで、「近傍に取り付けられる」とは、基礎7又は外壁12からの距離(最短距離)が2.0m以下の領域内に、調湿装置4が取り付けられることを意味している。
【0051】
このように、本実施形態の調湿装置4は、基礎7又は外壁12の近傍に取り付けられるため、屋外33との距離を小さくすることができる。これにより、調湿装置4は、上記のようなダクト(図示省略)を短くすることができ、或いは、ダクトの設置を不要にすることができる。したがって、本実施形態の住宅1は、調湿装置4の初期導入コストの増大や、送風機(図2に示した第1送風機25や第2送風機26)の動力の増大を抑制できる。
【0052】
上記の作用を効果的に発揮させるために、調湿装置4は、好ましくは、基礎7又は外壁12からの距離(最短距離)が0.5m以下の領域内に配されるのが望ましく、さらに好ましくは、基礎7又は外壁12に面するように取り付けられるのが望ましい。本実施形態の調湿装置4は、外壁12に面するように取り付けられているため、上記のようなダクトが不要となる。
【0053】
[調湿材]
図1に示されるように、調湿材5は、床下空間2に設けられており、床下空気A3(調湿空気A2)に対して、吸放湿可能に設定されている。
【0054】
本実施形態の調湿材5は、層状に配置された複数の調湿シート41を含んで構成されている。このような調湿材5は、図1に示した床下空間2において、床下空気A3との接触機会を高めることができ、吸放湿効率(湿気交換面積)を高めることができる。なお、調湿材5は、複数の調湿シート41で構成される態様に限定されるわけではなく、例えば、ボード状(パネル状)、タイル状、又は、ペレット状に形成されたものでもよい。また、調湿材5は、珪藻土の岩石を粉砕したものでもよいし、塗装によって形成される塗膜であってもよい。
【0055】
本実施形態の調湿材5(調湿シート41)は、吸放湿可能な(空気中の水蒸気を吸着しうるとともに、自らが吸着した水蒸気を空気中に放出しうる)吸着材を含んで構成されている。吸着材の一例としては、珪藻土、ゼオライト、セピオライトなどの多孔質鉱物、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ゾノトライト、活性白土などの粘土鉱物の他、シリカゲル、アロフェン、イモゴライト、又は、炭類等が用いられる。これらの吸着材は、例えば、シート状に形成されたパルプ繊維等に担持されうる。
【0056】
図1に示されるように、本実施形態の調湿材5は、第1調湿材5Aと第2調湿材5Bとを含んで構成されている。なお、調湿材5は、第1調湿材5Aのみで構成されてもよいし、第2調湿材5Bのみで構成されてもよい。本実施形態の第1調湿材5A及び第2調湿材5Bは、調湿性能(例えば、水蒸気の吸着量と相対蒸気圧との関係を示す平衡含水率曲線)が同一に設定されているが、調湿性能が互いに異なるものでもよい。
【0057】
本実施形態の第1調湿材5A及び第2調湿材5Bは、上下方向の厚さW1が、床下空間2の中央側から基礎7側にかけて略一定に設定されている。このような調湿材5は、例えば、厚さW1が一定ではない調湿材(図示省略)に比べて、製造コストを低減しつつ、施工性を高めることができる。本明細書において「略一定」とは、製造誤差等のバラツキを許容するものであり、平均厚さの±5%の範囲が許容されるものとする。なお、第1調湿材5A及び第2調湿材5Bは、厚さW1が一定に設定されたものに限定されるわけではない。
【0058】
[第1調湿材]
本実施形態の第1調湿材5Aは、土間9に配されている。本実施形態の第1調湿材5Aは、土間9の上に載置されていてもよいし、土間9に固定されていてもよい。
【0059】
本実施形態の第1調湿材5Aは、互いに向き合う基礎7、7間において、土間9に連続して配置されている。なお、第1調湿材5Aは、土間9に断続的に配置されてもよい。また、本実施形態の第1調湿材5Aは、例えば、基礎際の防蟻メンテナンス等に配慮して、基礎7(断熱材10)から離間して配置されているが、当接するように配置されていてもよい。
【0060】
第1調湿材5Aは、層状に配置された複数の調湿シート41のみで形成されてもよいが、このような態様に限定されない。第1調湿材5Aは、例えば、基礎7側に複数の調湿シート41が層状に配置され、かつ、その層状の調湿シート41で囲まれる空間(床下空間2の中央側の空間)に、ペレット状に形成された調湿材(図示省略)が配置されてもよい。このような第1調湿材5Aは、床下空間2の中央側において、ペレット状の調湿材を容易に移動させることができるため、床下空間2でのメンテナンス性を高めることができる。
【0061】
[第2調湿材]
本実施形態の第2調湿材5Bは、床下空間2側を向く床8の裏面8bに配されている。第2調湿材5Bは、床8の裏面8bに、例えば接着剤を介して固着されていてもよいし、図示しない支持部材によって固定されていてもよい。
【0062】
本実施形態の第2調湿材5Bは、互いに向き合う基礎7、7間において、床8の裏面8bに連続して配置されている。なお、第2調湿材5Bは、床8の裏面8bに断続的に配置されてもよい。また、本実施形態の第2調湿材5Bは、例えば、基礎際の防蟻メンテナンス等に配慮して、基礎7(断熱材10)から離間して配置されているが、当接するように配置されていてもよい。
【0063】
[供給装置]
図1に示されるように、供給装置6は、床下空気A3を、床上空間3に供給するためのものである。本実施形態の供給装置6は、空気流路37と、送風機38とを含んで構成されている。
【0064】
空気流路37は、例えば、住宅1の配管スペースに配置されるダクトによって構成されている。なお、空気流路37は、例えば、間仕切り壁等で囲まれた空間(図示省略)によって構成されてもよい。空気流路37の一端は、床下空間2に連通している。空気流路37の他端は、床上空間3(居室14)に連通している。
【0065】
本実施形態の送風機38は、ファンとして構成されている。送風機38は、床下空間2から空気流路37(床上空間3)に向かって送風(空気を圧送)する向きに配置されている。このような送風機38の運転により、床下空気A3が、空気流路37を介して、床上空間3に供給されうる。本実施形態の住宅1では、例えば、外壁12に設けられた排気ファン39によって、床上空気A4が屋外33へ排出されている。これにより、住宅1では、床上空間3が効率よく換気されうる。
【0066】
[住宅の作用]
本実施形態の住宅1では、上述のとおり、調湿装置4によって床下空間2が調湿される。調湿された床下空気A3は、床下空間2の断熱によって温度変化が抑制されるため、その湿度が安定する。さらに、床下空間2には、一年を通して温度変化が小さい地中熱が伝達されているため、温度変化が効果的に抑制され、床下空気A3の湿度をより安定させることができる。
【0067】
本実施形態の住宅1では、調湿された床下空気A3が、床下空間2に設けられた調湿材5によって吸放湿される。
【0068】
上述のとおり、床下空間2は、一年を通じて温度変化が抑制される。このため、床下空間2は、夏季において、床上空間3よりも温度が低くなり、ひいては、床下空気A3(調湿空気A2)の湿度(相対湿度)が高くなる傾向がある。本実施形態の調湿材5は、床下空気A3(調湿空気A2)に含まれる水蒸気を吸着することができるため、床下空間2を効果的に除湿することができる。
【0069】
一方、床下空間2は、冬季において、暖房される床上空間3よりも温度が低くなり、ひいては、床下空気A3(調湿空気A2)の湿度(相対湿度)が高くなる傾向がある。本実施形態の調湿材5は、床下空気A3(調湿空気A2)に含まれる水蒸気を吸着することができるため、調湿装置4の加湿運転に伴って、床下空間2の湿度が必要以上に上昇するのを抑制でき、床下空間2が結露するのを防ぐことができる。
【0070】
また、本実施形態では、例えば、調湿装置4の調湿性能の回復(デシカントロータ22の再生)が一時的に不足し、床下空間2の調湿が十分でない場合であっても、調湿材5による床下空気A3への吸放湿により、その湿度を安定させることができる。例えば、調湿装置4による加湿運転中において、調湿空気A2(床下空気A3)に含まれる水蒸気の量が一時的に不足している場合には、床下空気A3に対して放湿(水蒸気を放出)することができる。一方、調湿装置4による除湿運転中において、調湿空気A2(床下空気A3)に含まれる水蒸気の量が一時的に多くなっている場合には、床下空気A3に対して吸湿(水蒸気を吸着)することができる。したがって、本実施形態の住宅1は、床下空間2を安定して調湿することができる。
【0071】
本実施形態の住宅1では、調湿装置4及び調湿材5によって調湿(吸放湿)された床下空気A3が、供給装置6によって床上空間3に供給されることにより、床上空間3を安定して調湿することができる。
【0072】
このように、本実施形態の住宅1は、床下空間2及び床上空間3の双方を安定して調湿することができる。これにより、本実施形態では、住宅1の全体として、湿度環境を安定化させることができるため、住宅1の快適性を向上しうる。また、本実施形態の住宅1は、床下空間2を調湿することにより、床8の反りや、床下空間2での結露に起因するカビの発生等を効果的に抑制できる。したがって、本実施形態の住宅1は、耐久性を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態の住宅1は、床下空間2を、調湿経路の一部(チャンバー)として利用することができるため、ダクト(例えば、空気流路37)の使用量を少なくすることができる。したがって、本実施形態の住宅1は、供給装置6等の初期導入コストを低減しうる。
【0074】
[調湿材(第2実施形態)]
これまでの実施形態の第1調湿材5A及び第2調湿材5Bは、調湿性能(例えば、水蒸気の吸着量と相対蒸気圧との関係を示す平衡含水率曲線)が同一に設定されたが、このような態様に限定されるわけではない。
【0075】
上述したように、土間9には、一年を通して温度変化が小さい地中熱が伝達されている。一方、床8には、冬季の暖房、及び、夏季の気温の上昇や日射等の影響を受けて、地中熱よりも高い熱が、床上空間3から伝達されている。このため、冬季及び夏季の双方において、土間9側の温度が、床8側の温度に比べて低くなっている。したがって、土間9側の床下空気A3の湿度(相対湿度)は、床8側の床下空気A3の湿度(相対湿度)に比べて高くなる傾向がある。
【0076】
上記のような床下空気A3の湿度の傾向に基づいて、土間9に配される第1調湿材5Aが、床8の裏面8bに配される第2調湿材5Bよりも、高湿時での吸放湿量が大きく設定されるのが望ましい。図3(a)は、第1調湿材5Aに含まれる吸着材の平衡含水率曲線である。図3(b)は、第2調湿材5Bに含まれる吸着材の平衡含水率曲線である。図3(a)、(b)のグラフにおいて、水蒸気の吸着量は、25℃の環境下で測定されたものである。
【0077】
図3(a)に示されるように、第1調湿材5A(第1調湿材5Aに含まれる吸着材)は、相対蒸気圧が高くなる高湿時(相対蒸気圧a~b)において、水蒸気の吸着量の増加率が大きくなっており、多くの水蒸気を吸着又は放出できる。このような第1調湿材5Aは、例えば、相対蒸気圧aよりも高くなれば、多くの水蒸気を吸着でき、また、相対蒸気圧bよりも低くなると、多くの水蒸気が放出される。
【0078】
図3(b)に示されるように、第2調湿材5B(第2調湿材5Bに含まれる吸着材)は、相対蒸気圧が低くなる低湿時(相対蒸気圧c)から中湿度(相対蒸気圧d)において、水蒸気の吸着量の増加率が大きくなっており、多くの水蒸気を吸着又は放出できる。このような第2調湿材5Bは、例えば、相対蒸気圧cよりも高くなれば、多くの水蒸気を吸着でき、また、相対蒸気圧dよりも低くなると、多くの水蒸気が放出される。
【0079】
第1調湿材5A及び第2調湿材5Bは、上述の吸着材の種類や、配合量を適宜異ならせることにより、上記のような調湿性能に設定することが可能となる。第1調湿材5Aの吸着材には、例えば、珪藻土が用いられうる。第2調湿材5Bの吸着材には、例えば、A型シリカゲルが用いられうる。
【0080】
このように、この実施形態の第1調湿材5Aは、第2調湿材5Bよりも、高湿時での吸放湿量が大きく設定されるため、床8側に比べて、湿度(相対湿度)が高くなる土間9側において、床下空気A3に対して効率よく吸放湿することができる。一方、第2調湿材5Bは、第1調湿材5Aよりも低湿時での吸放湿量が大きく設定されるため、土間9側に比べて、湿度(相対湿度)が低くなる床8側において、床下空気A3に対して効率よく吸放湿することができる。したがって、この実施形態の住宅1は、床上空間3と床下空間2とをより安定して調湿することが可能となる。
【0081】
[調湿材(第3実施形態)]
図1に示されるように、これまでの実施形態の調湿材5は、第1調湿材5Aの上下方向の厚さW1が、床下空間2の中央側から基礎7側にかけて略一定に設定されたが、このような態様に限定されるわけではない。
【0082】
床下空間2は、断熱材10によって断熱されているものの、床下空間2の基礎7側が、床下空間2の中央側に比べて、外気A1の温度の影響を受けやすい。このため、床下空間の基礎7側は、床下空間2の中央側に比べて、温度の変動が大きくなり、ひいては湿度(相対湿度)の変動も大きくなる。このような湿度の変動が大きい基礎7側において、水蒸気の吸放湿を積極的に行わせるためには、第1調湿材5Aの厚さW1を、床下空間2の中央側から基礎7側に向かって大きく設定されるのが望ましい。図4(a)及び図4(b)は、本発明の他の実施形態の第1調湿材5Aを示す図である。
【0083】
図4(a)、(b)に示されるように、この実施形態の第1調湿材5Aは、厚さ方向に配置された調湿シート41の数を、床下空間2の中央側から基礎7側に向かって、段階的に増やしている。これにより、この実施形態では、第1調湿材5Aの厚さW1を、床下空間2の中央側から基礎7側に向かって大きくすることができる。
【0084】
このように、この実施形態の第1調湿材5Aは、床下空間2の中央側から基礎7側に向かって、第1調湿材5Aに含まれる吸着材(図示省略)の量を大きくできるため、温度変動が大きい基礎7側において、水蒸気の吸放湿を積極的に行うことができる。これにより、この実施形態の住宅1は、床上空間3と床下空間2とをより安定して調湿することが可能となる。
【0085】
図4(a)に示されるように、第1調湿材5Aの厚さW1は、階段状に大きく設定されてもよい。このような第1調湿材5Aは、厚さ方向に配置された調湿シート41の数を、段階的に増加させることによって、容易に形成できるため、製造コストを低減しうる。
【0086】
図4(b)に示されるように、第1調湿材5Aの厚さW1が漸増する(徐々に大きくなる)ものでもよい。このような第1調湿材5Aは、基礎7側に向かって徐々に大きくなる温度変動に応じて、水蒸気の吸放湿量を漸増させることができる。さらに、第1調湿材5Aは、その上面が円弧状に形成されるため、床下空気A3に対する空気抵抗を小さくすることができる。このような第1調湿材5Aは、図4(a)に示した第1調湿材5Aの一部を切除することで、容易に形成することができる。
【0087】
この実施形態の調湿材5は、第1調湿材5Aの厚さW1が、床下空間2の中央側から基礎7側に向かって大きく設定されたが、第2調湿材5Bの厚さW1(図1に示す)も同様に、床下空間2の中央側から基礎7側に向かって大きく設定されてもよい。
【0088】
[調湿材(第4実施形態)]
図1に示されるように、これまでの実施形態では、調湿材5が床下空間2のみに設けられたが、このような態様に限定されるわけではない。例えば、空気流路37(例えば、間仕切り壁等で囲まれた空間(図示省略)など)にも、調湿材5が設けられてもよい。これにより、この実施形態の住宅1は、床下空間2に設けられた調湿材5と、空気流路37に設けられた調湿材5とともに、床下空気A3に対して吸放湿することができるため、床上空間3をより安定して調湿することが可能となる。
【0089】
[調湿材(第5実施形態)]
図5は、本発明の他の実施形態の調湿材5を示す部分斜視図である。この実施形態の調湿材5は、複数のライナー42と、隣接する一対のライナー42、42間に配される中芯43とを含んで構成されている。これらのライナー42及び中芯43は、調湿シート41で構成されており、例えば、オニ段状や、ハニカム状(本例では、オニ段状)に積層されている。このような調湿材5は、例えば、吸放湿効率を高めることができる。隣接するライナー42、42間の距離D1は、例えば、5~15mmに設定することができる。
【0090】
この実施形態の調湿材5は、一対のライナー42、42間において、中芯43で区切られた複数の中空部45が形成されている。これらの中空部45は、調湿材5の一端5aと他端5bとの間を貫通するように連続して延びている。このような調湿材5は、床下空気A3を、一端5aから中空部45を介して他端5bへと通過させることができるため、床下空気A3(図1に示す)との接触機会を高めることができる。
【0091】
図1に示されるように、この実施形態の調湿材5は、その一端5aが、床下空気A3の上流側(調湿装置4の第1出口31b(図2に示す)側)に向くように配されている。これにより、調湿材5は、調湿装置4から供給される床下空気A3を、一端5aから他端5bにかけて円滑に通過させることができるため、床下空気A3との接触機会をより効果的に高めることが可能となる。
【0092】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0093】
1 住宅
2 床下空間
3 床上空間
4 調湿装置
5 調湿材
6 供給装置
図1
図2
図3
図4
図5