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  • 特許-空調ダクト構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】空調ダクト構造
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20241009BHJP
   B60H 1/34 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B60H1/00 102T
B60H1/00 102L
B60H1/34 651Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021033385
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134324
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】今井 将太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 巧
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-88543(JP,A)
【文献】特開2020-121711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に互いに間隔を空けて配置された一対の車両シートと、
前記一対の車両シートの間で前後方向に延在する通路と、
少なくとも一方の前記車両シートの下方に配置され、空調装置からの空気を前記通路側へ向かって吹き出す通路側吹出部と、
車両前後方向に離間した前脚部と後脚部とを備えて前記車両シートの座部を上方へ支持するシート支持部と、
前記シート支持部の前脚部から後脚部に渡って設けられた板状部材と、
を備え、
前記板状部材には、前記通路側吹出部と車幅方向で重なる領域に開口が設けられ
前記シート支持部の前脚部及び後脚部の何れか一方は、他方よりも前記通路側に突き出ており、
前記通路側吹出部は、前記通路側に突き出た前記前脚部又は前記後脚部の近傍に設けられている
ことを特徴とする空調ダクト構造。
【請求項2】
前記通路側吹出部は、前記板状部材に対して前記通路と反対方向に離間した位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の空調ダクト構造。
【請求項3】
前記車両シートの座部の下方領域から車両後方側に吹き出す後方側吹出部を備え、
前記通路側吹出部は、前記後方側吹出部から前記通路側に分岐して形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の空調ダクト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の室内に空調の送風を行う空調ダクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両室内の両側中央で車両前後方向に延在する通路を挟んで複数の車両シートが前後に配列された構造において、空調装置から送風を行う技術として、例えば特許文献1に記載された車両用空調ダクトがある。この車両用空調ダクトは、車両の空調装置によって温調された空気又は温調されずに送られた空気を、後席の乗員の足下へ導くものである。この導かれる空気は、車両のフロントシートの下側から車両の前方側と後方側とに向かって送風される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-36636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の車両用空調ダクトから暖気を流した場合、両側のフロントシートの下側からリアシートを通って後方側に流れる暖気によって車室後部で寒気が押し退けられる。この押し退けられた寒気が中央の通路を逆流して車両前方側へ流れたり、通路に溜まったりする現象が生じる。このため、所望の暖房効果が得られないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車室内で所望の暖房効果を得ることができる空調ダクト構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明の空調ダクト構造は、車幅方向に互いに間隔を空けて配置された一対の車両シートと、前記一対の車両シートの間で前後方向に延在する通路と、少なくとも一方の前記車両シートの下方に配置され、空調装置からの空気を前記通路側へ向かって吹き出す通路側吹出部と、車両前後方向に離間した前脚部と後脚部とを備えて前記車両シートの座部を上方へ支持するシート支持部と、前記シート支持部の前脚部から後脚部に渡って設けられた板状部材と、を備え、前記板状部材には、前記通路側吹出部と車幅方向で重なる領域に開口が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、車室内で所望の暖房効果を得る空調ダクト構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る車両に空調ダクト構造を有する車両シートの配列構成を示す斜視図である。
図2】フロントシート及びシートライザの構成を示す斜視図である。
図3】空調ダクト20の構造を示す斜視図である。
図4】カバーの無いシートライザとフロントシートの脚部の構成を示す斜視図である。
図5図2のV-V断面図である。
図6図5の断面図に対応する空調ダクトを含む部分の断面構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態の構成>
本発明の実施形態について、図1図6を参照して詳細に説明する。説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図中において、矢印で示す「前後」は自動車(図示せず)の前後方向、「左右」は自動車の幅方向、「上下」は鉛直上下方向をそれぞれ示している。
【0010】
図1は本発明の実施形態に係る車両に空調ダクト構造を有する車両シートの配列構成を示す斜視図である。
図1に示す車室内10には、車幅中央において車両前後方向に延在する通路11の両側に、フロントシート1R,1Lと、リアシート2R,2Lとが車両前後方向に配列されており、車両最後部に、左右間にベンチ状に座部及び背部が延在する最後部シート3が配置されている。なお、フロントシート1R,1L及びリアシート2R,2Lは、請求項記載の車両シートを構成する。
【0011】
両側(左右側)のフロントシート1R,1L及びリアシート2R,2Lの各々は、図2に示すシート支持部としてのシートライザ23によってフロアから上方に離間した位置に支持されている。シートライザ23は、前後左右に離間した4本の脚部を備える。この4本の脚部の代表として、右側のフロントシート1Rにおける通路11側の前脚部1R1と後脚部1R2とを示す。
【0012】
図1に示す両側のフロントシート1R,1Lの下方には、図3に示すように、通路11を挟んだ両側の前脚部1R1,1L1に跨って空調ダクト20が配設されている。
【0013】
空調ダクト20は、平面形状が四角状の上下の板が間隙を空けて配置され、これら上下の板の周囲に設けられた前方側の入口部20a、後方側吹出部20b,20c及び通路側吹出部20d,20eを除く箇所が閉塞された空洞状の厚板形状を成す。
【0014】
また、空調ダクト20には、左側のフロントシート1L(図1)の通路11側の前脚部1L1が挿入される脚挿入口20fと、右側のフロントシート1R(図1)の通路11側の前脚部1R1が挿入される脚挿入口20gとが設けられている。脚挿入口20f,20gの車両後方側には、脚挿入口20f,20gを強固に形成する役割を果たすL字状部20h,20iが形成されている。L字状部20h,20iには、後述する矢印Y1b,Y1cで示すように空調後の空気が通るようになっている。
【0015】
入口部20aは、空調ダクト20の車両前方側に設けられており、車両後方側に向かう矢印Y1で示すように、図示せぬ空調装置が吹き出す空気が流入されるようになっている。
【0016】
後方側吹出部20b,20cは、空調ダクト20の車両後方側の左側と右側とに設けられており、左右の後方側吹出部20b,20cの各々が、二股に分かれた吹出口を備えている。各吹出口からは、入口20aから流入した空気が、矢印Y1a,Y1b,Y1c,Y1d,Y1e,Y1f,Y1g,Y1hで示すように、空調ダクト20内を車両後方側へ流れて車両後方側へ(リアシート2R,2Lの足元空間へ)吹き出すようになっている。
【0017】
通路側吹出部20d,20eは、L字状部20h,20iと後方側吹出部20b,20cとの付け根部分から斜め後方側車幅方向(又は車幅方向)に通路11へ向かってノズル形状に突き出ている。言い換えれば、通路側吹出部20d,20eは、後方側吹出部20b,20cを通路11側に分岐して形成されている。この通路側吹出部20d,20eからは、矢印Y1i,Y1jで示すように、空調ダクト20内を流れてきた空気が通路11へ吹き出すようになっている。
【0018】
図2に通路側吹出部20eを代表して示す。この通路側吹出部20eは、後述するシートライザ23(図4)のカバー24(図3)に形成された開口24aと車幅方向に重なる領域に配置されている。通路側吹出部20eは、カバー24に対して通路11と反対側に離間した位置に設けられている。つまり、通路側吹出部20eの先端は、開口24aから突出していない。通路側吹出部20e及び開口24aは、カバー24の前脚部1R1側に設けられている。なお、カバー24は、請求項記載の板状部材を構成する。シートライザ23は、請求項記載のシート支持部を構成する。
【0019】
シートライザ23は、レール25を介してフロントシート1Rの座部1R3を下から支持するものである。レール25は、座部1R3を車両前後方向に移動させるためのものである。
【0020】
シートライザ23は、図4に示すように、車幅方向の側面形状が、互いに前後に離間して立脚する前脚部1R1と後脚部1R2とが梁部23で接続された門形状となっている。前脚部1R1は、フロントシート1Rの前脚部1R1の車両後方側に立設され、後脚部1R2は後脚部1R2の車両前方側に立設されている。
【0021】
これらの前脚部1R1と後脚部1R2間の空間を塞ぐ状態に、図2に示すように、カバー24が配設されている。カバー24は、前脚部1R1と後脚部1R2との通路11側の面から、通路11側に突き出ない状態で配設されている。
【0022】
シートライザ23の前脚部1R1は、後脚部1R2よりも通路11側に突き出ている(延出している)。この突き出た前脚部1R1は、この後方側のカバー24の開口24aよりも通路11側に位置する。この位置関係は、開口24a内の通路側吹出部20eが、前脚部1R1よりも通路11と逆方向に奥まった位置となっている。言い換えれば、通路側吹出部20d,20eは、カバー24に対する通路11側と反対方向に離間した位置に設けられている。この位置関係では、乗員が足を通路11に踏み出した際に、この踏み出し位置が前脚部1R1よりも通路11側となるので、開口24a内の通路側吹出部20eに足が引っ掛かることが無くなる。これは乗員が通路11を行き来する場合も同様となる。
【0023】
このようなシートライザ23の前脚部1R1及びフロントシート1Rの前脚部1R1,1L1(図3参照)を跨いぐ空調ダクト20は、カーペット22の下に隠れて配設されている。図2に示す右側のフロントシート1R並びにカーペット22部分のVI-VI断面図を図5に示す。
【0024】
図5に示すように、フロントシート1Rの前脚部1R1の車両後方側には、通路側吹出部20eが通路11側に吹出口を向けて配設されている。この通路側吹出部20eの通路11側と反対側には、後方側吹出部20cが吹出口を後方側に向けて配設されている。図5の断面図に対応する空調ダクト20を含む部分の断面構成を図6に示す。
【0025】
図6に示すように、フロアパネル27の上に配置された空調ダクト20の通路側吹出部20e及び後方側吹出部20cは、カーペット22の下に覆われて配設され、通路側吹出部20eの吹出口と、後方側吹出部20cの吹出口とがカーペット22の上に露出している。また、通路側吹出部20eの真上よりも通路11側に片寄った上方には、シートライザ23のカバー24が配設されている。通路側吹出部20eは、カバー24よりも通路と反対側の幅方向に離れて配設されている。
【0026】
なお、空調ダクト20は、フロントシート1R,1L間に代え、リアシート2R,2L間に配設されていてもよい。
【0027】
<実施形態の効果>
次に、上述した本実施形態の空調ダクト構造の特徴構成及びその効果について説明する。空調ダクト構造は、車室内の通路11を挟んだ両側に車両前後方向に配列された複数の車両シート(フロントシート1R,1L及びリアシート2R,2L)の下方側に配設され、空調装置から吹き出す空気を取り入れて車両の前後方向へ吹き出すものである。
【0028】
(1)空調ダクト構造は、車幅方向に互いに間隔を空けて配置された一対の車両シートと、一対の車両シートの間で前後方向に延在する通路11と、少なくとも一方の車両シートの下方に配置され、空調装置からの空気を通路11側へ向かって吹き出す通路側吹出部20d,20eとを備える。また、車両前後方向に離間した前脚部1R1と後脚部1R2とを備えて車両シートの座部1R3を上方へ支持するシート支持部としてのシートライザ23と、シートライザ23の前脚部1R1から後脚部1R2に渡って設けられた板状部材としてのカバー24とを備える。カバー24には、通路側吹出部20d,20eに車幅方向で重なる領域に開口24aが設けられている構成とした。
【0029】
この構成によれば、両側の車両シート間の通路11へ向かって送風を行う通路側吹出部20d,20eを設けたので、従来のような通路11に流れたり滞ったりする寒気を軽減できる。このため、車室内で有効な暖房効果を得ることができる。また、通路側吹出部20d,20eからの送風を遮らない開口24aを設けたカバー24を、シートライザ23の前脚部1R1から後脚部1R2に渡って設けたので、乗員が通路11を歩く際に通路側吹出部20d,20eに足を引っ掛けることを防止できる。
【0030】
(2)通路側吹出部20d,20eは、カバー24に対して通路11と反対方向に離間した位置に設けられている構成とした。
【0031】
この構成によれば、通路側吹出部20d,20eがカバー24の開口24aの通路11側と反対側の奥まった位置に設けられているので、乗員が通路11を歩く際に通路側吹出部20d,20eに足を引っ掛けることを、より確実に防止できる。
【0032】
(3)シートライザ23の前脚部1R1及び後脚部1R2の何れか一方は、他方よりも通路11側に突き出ており、通路側吹出部20d,20eは、通路11側に突き出た前脚部1R1又は後脚部1R2の近傍に設けられている構成とした。シートライザ23の前脚部23a及び後脚部23bのカバーの何れか一方は、他方のカバーよりも通路11側に突き出ている構成としてもよい。
【0033】
この構成によれば、乗員が足を通路11に踏み出した際に、この踏み出し位置がシートライザ23の前脚部1R1(又は後脚部1R2)よりも通路11側となるので、通路側吹出部20d,20eに足が引っ掛かることが無くなる。
【0034】
(4)車両シートの座部1R3の下方領域から車両後方側に吹き出す後方側吹出部20b,20cを備え、通路側吹出部20d,20eは、後方側吹出部20b,20cから通路11側に分岐して形成されている構成とした。
【0035】
この構成によれば、通路側吹出部20d,20eは、後方側吹出部20b,20cから分岐して形成されているので、別途部品が不要である。このため、部品点数が増えることがない。
【0036】
以上、本実施形態に係る車両構造について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0037】
1R,1L フロントシート
2R,2L リアシート
1R3 座部
10 車室内
11 通路
20 空調ダクト
20b,20c 後方側吹出口部
20d,20e 通路側吹出口部
23 シートライザ
23a 前脚部
23b 後脚部
24 カバー
24a 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6