(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】自動締付装置
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
B23P19/06 E
B23P19/06 Q
(21)【出願番号】P 2021036258
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿木 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】染谷 義和
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-088168(JP,A)
【文献】特開平05-337752(JP,A)
【文献】特開平05-016046(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0188959(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/06
B25B 21/00
B25F 1/00-5/02
B25J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結対象にねじ部材を締め付けるための自動締付装置であって、
前記ねじ部材に係合し前記ねじ部材を回転させるための締付ツールと、
軸線回りに回転駆動されるシャフトと、
前記締付ツールと前記シャフトとを連結し前記シャフトの回転を前記締付ツールに伝達する継手部と、を備え、
前記継手部は、前記締付ツール及び前記シャフトの一方に取り付けられるプラグと、前記締付ツール及び前記シャフトの他方に取り付けられ前記プラグに着脱自在に係合するソケットと、を有するカプラであり、
前記プラグは、前記締付ツール及び前記シャフトのそれぞれに対して周方向に係止されて前記シャフトの回転を前記締付ツールに伝達
し、
前記プラグには、前記締付ツールの端部が周方向に係止するように挿入される第1係止穴と、前記シャフトの端部が周方向に係止するように挿入される第2係止穴と、が形成され、
前記締付ツールの前記端部と前記第1係止穴とは、断面が互いに対応する非円形に形成され、
前記シャフトの前記端部と前記第2係止穴とは、断面が互いに対応する非円形に形成されることを特徴とする自動締付装置。
【請求項2】
前記プラグと前記ソケットとの係合を解除する係合解除機構をさらに備え、
前記ソケットは、
前記プラグが挿入される中央穴を有するソケット本体部と、
前記ソケット本体部に形成される通過孔を通じて前記プラグに係止される係止体と、
前記ソケット本体部の外周に設けられ、前記係止体を径方向内側に向けて押圧するための押圧部と、
前記係止体を径方向内側に向けて押圧するように前記押圧部を付勢する付勢部材と、を有し、
前記係合解除機構は、
前記押圧部に係止される解除板と、
前記解除板を通じて前記押圧部を前記付勢部材の付勢力に抗して移動させるアクチュエータと、を有することを特徴とする請求項1に記載の自動締付装置。
【請求項3】
複数の前記締付ツールを収納するツールストッカと、
前記シャフトの中心軸に対する角度位置が、非円形に形成される前記シャフトの前記端部が所定の向きとなるようなシャフト基準位置であることを検出するシャフト位置検出部と、をさらに備え、
前記締付ツールは、中心軸に対する角度位置が、非円形に形成される前記締付ツールの前記端部が所定の向きとなるようなツール基準位置にある状態で前記ツールストッカに収納されており、
前記シャフトが前記シャフト基準位置にあって、前記締付ツールが前記ツール基準位置
にある状態では、前記ソケットが取り付けられる前記締付ツール及び前記シャフトの一方の前記端部
の軸方向の向きと、前記締付ツール及び前記シャフトの他方に取り付けられる前記プラグの前記第1係止穴及び前記第2係止穴の一方
の軸方向の向きとが、一致することを特徴とする請求項
1に記載の自動締付装置。
【請求項4】
前記ツールストッカに設けられ前記締付ツールが前記ツール基準位置にある状態で前記ツールストッカに収納されているかを検出するツール位置検出部をさらに備えることを特徴とする請求項
3に記載の自動締付装置。
【請求項5】
締結対象にねじ部材を締め付けるための自動締付装置であって、
前記ねじ部材に係合し前記ねじ部材を回転させるための締付ツールと、
軸線回りに回転駆動されるシャフトと、
前記締付ツールと前記シャフトとを連結し前記シャフトの回転を前記締付ツールに伝達する継手部と、
前記シャフトを軸方向に弾性支持し前記シャフトの軸方向の移動に伴って伸縮する弾性部材と、
前記シャフトを前記締付ツールに向けて軸方向に付勢して前記シャフトによる前記弾性部材の圧縮を規制する加圧機構と、
を備え、
前記継手部は、前記締付ツール及び前記シャフトの一方に取り付けられるプラグと、前記締付ツール及び前記シャフトの他方に取り付けられ前記プラグに着脱自在に係合するソケットと、を有するカプラであり、
前記プラグは、前記締付ツール及び前記シャフトのそれぞれに対して周方向に係止されて前記シャフトの回転を前記締付ツールに伝達することを特徴とす
る自動締付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ部材の自動締付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワークに対してねじを順次締め付ける自動ねじ締め装置が開示されている。この自動ねじ締め装置は、ロボットの移動体に固着されたフレーム部と、フレーム部に配置されたエアシリンダと、エアシリンダの作動を受けて上下方向に移動可能な電動ドライバと、電動ドライバの駆動を受けて回転するドライバビットと、ドライバビットの移動路上に部品供給装置から送られるねじを保持可能に構成されたチャックユニットと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるような自動締付け装置では、異なる種類のねじ部材を締め付ける場合、シャフトに取り付けられる締付ツールをねじ部材の種類に応じて交換する必要がある。このような締付ツールの交換作業に多くの時間がかかると生産性が低下するため、締付ツールの交換作業は容易に行うことが求められている。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、生産性を向上させることが可能な自動締付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自動締付装置であって、ねじ部材に係合しねじ部材を回転させるための締付ツールと、軸線回りに回転駆動されるシャフトと、締付ツールとシャフトとを連結しシャフトの回転を締付ツールに伝達する継手部と、を備え、継手部は、締付ツール及びシャフトの一方に取り付けられるプラグと、締付ツール及びシャフトの他方に取り付けられプラグに着脱自在に係合するソケットと、を有するカプラであり、プラグは、締付ツール及びシャフトのそれぞれに対して周方向に係止されてシャフトの回転を締付ツールに伝達し、プラグには、締付ツールの端部が周方向に係止するように挿入される第1係止穴と、シャフトの端部が周方向に係止するように挿入される第2係止穴と、が形成され、締付ツールの端部と第1係止穴とは、断面が互いに対応する非円形に形成され、シャフトの端部と第2係止穴とは、断面が互いに対応する非円形に形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明では、締付ツールとシャフトとを連結する継手部が、互いに着脱自在に係合するソケット及びプラグを有するカプラであるため、締付ツールとシャフトとの軸を合わせて互いに近接させることで、容易に連結させることができる。よって、シャフトに取り付ける締付ツールの交換作業が容易になる。
また、この発明では、締付ツールを第1係止穴に挿入し、シャフトを第2係止穴に挿入することで、締付ツールとプラグとの係止及びシャフトとプラグとの係止を容易に行うことができる。
【0008】
また、本発明は、プラグとソケットとの係合を解除する係合解除機構をさらに備え、ソケットは、中央穴を有するソケット本体部と、中央穴に収容されるプラグに係止される係止体と、ソケット本体部の外周に設けられ、係止体を径方向内側に向けて押圧するための押圧部と、係止体を径方向内側に向けて押圧するように押圧部を付勢する付勢部材と、を有し、係合解除機構は、押圧部に係止される解除板と、解除板を通じて押圧部を付勢部材の付勢力に抗して移動させるアクチュエータと、を有することを特徴とする。
【0009】
この発明では、プラグとソケットとの係合の解除も自動で行うことができるため、締付ツールの交換作業を効率化することができる。
【0012】
また、本発明は、複数の締付ツールを収納するツールストッカと、シャフトの中心軸に対する角度位置が、非円形に形成されるシャフトの端部が所定の向きとなるようなシャフト基準位置であることを検出するシャフト位置検出部と、をさらに備え、締付ツールは、中心軸に対する角度位置が、非円形に形成される締付ツールの端部が所定の向きとなるようなツール基準位置にある状態でツールストッカに収納されており、シャフトがシャフト基準位置にあって、締付ツールがツール基準位置ある状態では、ソケットが取り付けられる締付ツール及びシャフトの一方の端部の向きと、締付ツール及びシャフトの他方に取り付けられるプラグの第1係止穴及び第2係止穴の一方の向きとが、一致することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、ツールストッカに設けられ締付ツールがツール基準位置にある状態でツールストッカに収納されているかを検出するツール位置検出部をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
これらの発明では、シャフト基準位置を検出することで、ソケットが取り付けられる締付ツール及びシャフトの一方の端部の向きと、締付ツール及びシャフトの他方に取り付けられるプラグの第1係止穴及び第2係止穴の一方の向きとを一致させることができる。このため、シャフトをシャフト基準位置にしてツールストッカの締付ツールとの軸を合わせて締付ツールに近接させることで、締付ツール及びシャフトの一方の端部をプラグの第1係止穴及び第2係止穴の一方に挿入してシャフトと締付ツールとを容易に連結することができる。
【0015】
また、締結対象にねじ部材を締め付けるための自動締付装置であって、ねじ部材に係合しねじ部材を回転させるための締付ツールと、軸線回りに回転駆動されるシャフトと、締付ツールとシャフトとを連結しシャフトの回転を締付ツールに伝達する継手部と、シャフトを軸方向に弾性支持しシャフトの軸方向の移動に伴って伸縮する弾性部材と、シャフトを締付ツールに向けて軸方向に付勢してシャフトによる弾性部材の圧縮を規制する加圧機構と、を備え、継手部は、締付ツール及びシャフトの一方に取り付けられるプラグと、締付ツール及びシャフトの他方に取り付けられプラグに着脱自在に係合するソケットと、を有するカプラであり、プラグは、締付ツール及びシャフトのそれぞれに対して周方向に係止されてシャフトの回転を締付ツールに伝達することを特徴とする。
【0016】
本発明では、締付ツールとシャフトとを連結する継手部が、互いに着脱自在に係合するソケット及びプラグを有するカプラであるため、締付ツールとシャフトとの軸を合わせて互いに近接させることで、容易に連結させることができる。よって、シャフトに取り付ける締付ツールの交換作業が容易になる。
また、この発明では、締付ツールを回転させながらねじ部材に向けて移動させて締付ツールをねじ部材に係合させる際に、締付ツール及びシャフトの軸方向の移動を弾性部材の伸縮によって吸収できる。これにより、締付ツールとねじ部材とを容易に係合させることができる。また、締付ツールの交換の際には、加圧機構によってシャフトの移動を規制することで、継手部のプラグ及びソケットの脱着を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、自動締付装置における生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る自動締付装置の概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る締付ツール及びプラグの構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るシャフト及びソケットの構成を示す断面図である。
【
図4】IV-IV線におけるツール及びプラグの断面図である。
【
図5】V-V線におけるシャフト、プラグ、及びソケットの断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るツールストッカの構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る自動締付装置100について説明する。
【0020】
自動締付装置100は、締結対象1に対して、ボルト2やナットなどのねじ部材を締結するための装置である。以下では、締結対象1に仮止めされた六角ボルト2(以下、単に「ボルト2」と称する。)を所定の締め付けトルクによって締め付ける場合を例に自動締付装置100を説明する。また、以下では、X,Y,Zの直交3軸を設定し、自動締付装置100について説明する。本実施形態では、Z軸は、鉛直方向に沿った軸である。
【0021】
図1に示すように、自動締付装置100は、締結対象1が載置されるテーブル3と、締結対象1に仮止めされたボルト2における六角状のボルトヘッド2aに対して周方向に係合する締付ツール10(以下、単に「ツール10」と称する。)と、軸線周りに回転駆動されるシャフト15と、ツール10とシャフト15とを連結しシャフト15の回転をツール10に伝達する継手部20と、シャフト15を回転駆動する回転駆動機構50と、シャフト15を移動させる移動機構55と、を備える。
【0022】
テーブル3は、XY平面に平行な載置面を有し、載置面上に締結対象1が載置される。テーブル3は、例えば、XYZ方向のいずれか又はすべてに移動可能に構成されてもよいし、Z軸回りで回転可能に構成されてもよい。反対に、テーブル3は、移動及び回転不能に構成されていてもよい。
【0023】
図1及び
図2に示すように、ツール10は、円柱状の軸部11と、軸部11の一端に設けられる六角ソケット12と、軸部11の他端に設けられるツール係合部13と、を有する。軸部11、六角ソケット12、及びツール係合部13は、同軸的に設けられる。
【0024】
六角ソケット12には、ボルト2のボルトヘッド2aの六角形状に対応するように断面が六角形状に形成された凹部12aが形成される。凹部12aにボルト2のボルトヘッド2aが挿入されることで、六角ソケット12はボルトヘッド2aに対してツール10の周方向に係止される。なお、本実施形態では、軸部11と六角ソケット12とは、一体形成される。これに対し、軸部11と六角ソケット12とは、互いに別体に形成され、中心軸周りに一体的に回転するように連結される構成でもよい。
【0025】
ツール係合部13は、ツール10の中心軸に垂直な断面形状が非円形に形成され、後述するプラグ21の第1係止穴22に挿入される。本実施形態では、ツール係合部13の断面形状は、略四角形状に形成される(
図4参照)。なお、本実施形態における非円形とは、多角形状や、平面と曲面とを組み合わせた形状(例えば長円形状)など、円形を除く種々の形状を含む意味である。また、ここでいう円形とは、主として真円の意味であり、真円に加工する際に加工誤差などの影響によって真円からわずかにずれた円形を含む意味である。つまり、本実施形態における非円形には、楕円なども含まれる。
【0026】
図1及び
図3に示すように、シャフト15は、中心軸がX軸方向に沿うようにして設けられ、一部がハウジング25に収容される。シャフト15は、ハウジング25に回転自在に支持されるシャフト本体部16と、シャフト本体部16の先端側に設けられシャフト本体部16よりも外径が小さく形成される小径部17と、小径部17の先端部に設けられるシャフト係合部18と、を有する。シャフト本体部16、小径部17、及びシャフト係合部18は、同軸的に設けられる。
【0027】
シャフト本体部16は、円柱状に形成され、その基端部には、後述する回転駆動機構50の伝達シャフト52が相対回転不能に挿入されるシャフト穴16aが形成される。伝達シャフト52がシャフト穴16aに対して周方向に係止されることで、回転駆動機構50の駆動力が伝達シャフト52を通じてシャフト15に伝達される。これにより、シャフト15は、その中心軸(軸線)回りに回転する。
【0028】
また、シャフト本体部16と伝達シャフト52との間には、シャフト15をツール10に向けて軸方向に付勢して弾性支持する弾性部材としての第1スプリング53が圧縮状態で設けられる。第1スプリング53は、シャフト15の軸方向の移動に伴って伸縮する。
【0029】
小径部17の外周には、後述するソケット30のソケット本体部31が螺合するねじ部17aが形成される。
【0030】
シャフト係合部18は、ツール10のツール係合部13と同様に、略四角形状(非円形状)の断面を有し、後述するプラグ21の第2係止穴23に挿入される(
図5参照)。
【0031】
継手部20は、ツール10に取り付けられるプラグ21と、シャフト15に取り付けられプラグ21に着脱自在に係合するソケット30と、を有するカプラである。継手部20は、プラグ21がオスカプラ、ソケット30がメスカプラである、いわゆるワンタッチカプラである。
【0032】
図1及び
図2に示すように、プラグ21は、略円柱状の部材であって、その一端面にはツール10のツール係合部13が挿入される第1係止穴22が形成され、他端面にはシャフト15のシャフト係合部18が挿入される第2係止穴23が形成される。第1係止穴22及び第2係止穴23は、それぞれ有底の穴として形成されており、第1係止穴22の底部と第2係止穴23の底部とに開口するように貫通孔21aが形成されている。
【0033】
図4に示すように、第1係止穴22の断面形状は、ツール10のツール係合部13の断面形状に対応する略四角形状(非円形状)に形成される。
図5に示すように、第2係止穴23の断面形状は、シャフト15のシャフト係合部18の断面形状に対応する略四角形状(非円形状)に形成される。よって、プラグ21は、第1係止穴22にツール10のツール係合部13が挿入されることでツール10に対して周方向に係止され、第2係止穴23にシャフト15のツール係合部13が挿入されることでシャフト15に対して周方向に係止される。これにより、シャフト15の回転がプラグ21によってツール10に伝達される。
【0034】
プラグ21には、
図4に示すように、第1係止穴22に連通し外周面に開口するように径方向に延びる横孔24aが形成される。ツール10のツール係合部13には、第1係止穴22に挿入された状態で横孔24aに臨むように設けられる連結孔13aが形成される。プラグ21の第1係止穴22にツール10のツール係合部13が挿入された状態で、プラグ21の横孔24aとツール10の連結孔13aとにわたって係止ピン26が挿入されることで、プラグ21は、ツール10と共に回転するようにツール10に対して取り付けられる。
【0035】
また、
図1及び
図2に示すように、プラグ21の外周には、ソケット30と係合するための係止溝24bと、後述するツールストッカ70の一対の爪部72a,72bに係止する支持溝24cと、がそれぞれ周方向に延びるように環状に形成される。さらに、プラグ21の外周面の一部には、ツール10が正しい姿勢で後述するツールストッカ70の台座71に収容されているかを検出するための検出ピン96の一部が収容されるピン収容凹部24d(
図1参照)が形成される。
【0036】
図1及び
図3に示すように、ソケット30は、プラグ21が挿入される中央穴31aを有する円筒状のソケット本体部31と、ソケット本体部31に形成される通過孔31bを通じてプラグ21に係止される係止体としてのボール体33と、ソケット本体部31を囲うようにソケット本体部31の外周に設けられ、ボール体33を径方向内側に向けて押圧するための押圧部35と、ボール体33を径方向内側に向けて押圧するように押圧部35を付勢する付勢部材としての第2スプリング38と、プラグ21が係合していない状態でボール体33を支持するための支持スライダ部40と、を有する。
【0037】
ソケット本体部31は、シャフト15の小径部17の外周に形成されたねじ部17aに螺合し、端部がシャフト15のシャフト本体部16と小径部17との間の段差面17bに着座した状態で、所定のトルクでねじ締結される。これにより、ソケット30が、シャフト15に取り付けられる。ソケット本体部31には、中央穴31aに連通し外周面に開口するようにソケット本体部31の径方向に貫通する通過孔31bが周方向に間隔を空けて複数形成される。各通過孔31bにはボール体33が収容され、プラグ21とソケット30とが係合した状態では、ボール体33の一部は、プラグ21の外周の係止溝24bに収容される。これにより、ボール体33によってプラグ21とソケット30とが軸方向に係止される。
【0038】
押圧部35は、ソケット本体部31の外周をソケット本体部31の軸方向に沿って摺動する筒状部材である。押圧部35の内周には、径方向の内側に突出する突起部36が形成される。ソケット30の開口部側(図中左側)の突起部36の側面は、テーパ面36aとして形成される。押圧部35の外周には、後述する解除機構の解除板77が係止するための環状の係止凹部35aが形成される。また、押圧部35の外周には、径方向外側に向けて突出し、プラグ21とソケット30とが係合した状態かを検知するための環状のフランジ部37が設けられる。
【0039】
ソケット本体部31の外周には、ソケット本体部31の一端からの押圧部35の抜けを規制する抜け止め部32と、押圧部35の突起部36と共に第2スプリング38を挟持する段差部31cと、が設けられる。第2スプリング38は、ソケット本体部31の段差部31cと押圧部35の突起部36との間で圧縮された状態で、ソケット本体部31の外周に設けられる。
【0040】
支持スライダ部40は、ソケット本体部31の内側に設けられるスライダ41と、スライダ41とシャフト15の小径部17の端面との間で圧縮されて設けられる付勢部材としての第3スプリング42と、を有する。
【0041】
スライダ41は、シャフト15のシャフト係合部18の外周に摺動自在に設けられる円筒状の筒部41aと、筒部41aの端部から径方向外側に延び外周がソケット本体部31の内周に摺接する環状の摺接部41bと、摺接部41bから軸方向(X軸方向)に延び径方向内側からボール体33を支持する円筒状の支持部41cと、を有する。
【0042】
摺接部41bの一方の端面には、第3スプリング42の一端が着座する。摺接部41bの他方の端面に支持部41cが設けられる。支持部41cの外径は、摺接部41bの外径よりも小さく形成され、支持部41cと摺接部41bとの間には段差面41dが形成される。支持部41cの内周は、摺接部41bに向かうにつれて内径が小さくなるテーパ面として形成され、プラグ21との係合の際にプラグ21の端部が挿入される。
【0043】
プラグ21とソケット30とが係合していない状態では、押圧部35は、第2スプリング38の付勢力を受け、テーパ面36aがボール体33の外周面に当接するように押し付けられる。また、押圧部35のテーパ面36aと抜け止め部32との間の隙間は、ボール体33の直径よりも小さく設定される。よって、ボール体33が押圧部35によって径方向外側から押さえられることで、径方向外側への通過孔31bからのボール体33の脱落が防止される。
【0044】
また、スライダ41は第3スプリング42の付勢力を受けて、摺接部41bと支持部41cとの間の段差面41dがソケット本体部31の内周の段差面31dに押し付けられる。この状態では、ボール体33は、支持部41cによって径方向内側から支持され、径方向内側へ向けた通過孔31bからのボール体33の脱落が防止される。
【0045】
プラグ21とソケット30とは、互いに軸を一致させ、プラグ21をソケット30の中央穴31aに挿入することで係合する。具体的には、プラグ21がソケット30の中央穴31aに挿入されるのに伴い、第3スプリング42を圧縮するようにしてスライダ41がプラグ21によって押圧される。これにより、ボール体33は、スライダ41の支持部41cによって径方向内側から支持される状態から、プラグ21の外周面によって支持されるようになる。
【0046】
プラグ21の係止溝24bがボール体33に臨むまでプラグ21がソケット30に挿入されると、押圧部35を通じて第2スプリング38の付勢力を受けたボール体33の一部が係止溝24bに収容されるように径方向内側へ移動する。また、押圧部35は、第2スプリング38の付勢力によって突起部36が抜け止め部32に対して押し付けられるように移動する。これにより、ボール体33の径方向外側へ向かう移動が突起部36によって規制されるので、ボール体33がプラグ21の係止溝24bから脱落せずに係止溝24bに係止されて、ソケット30とプラグ21とが離脱しないよう係合される。
【0047】
図1に示すように、回転駆動機構50は、回転駆動源としての電動モータ51と、電動モータ51の回転をシャフト15の基端部に伝達する伝達シャフト52を有する伝達機構(図示省略)と、を有する。電動モータ51は、たとえばサーボモータである。伝達機構は、公知の構成を採用できるため、詳細な説明及び図示を省略するが、例えば、複数の歯車によって構成される歯車機構によって電動モータ51の回転を減速して伝達シャフト52を通じて出力する。
【0048】
移動機構55は、回転駆動機構50と共にシャフト15をX,Y,Zの直交3軸方向に移動させる。移動機構55は、公知の構成を採用できるため具体的な説明及び図示は省略するが、例えば、シャフト15をX軸方向に沿って移動させるX軸移動機構と、シャフト15をY軸方向に沿って移動させるY軸移動機構と、シャフト15をZ軸方向に沿って移動させるZ軸移動機構と、を有する。X軸移動機構、Y軸移動機構、及びZ軸移動機構は、例えば、それぞれサーボモータとサーボモータの回転を直線運動に変換するボールねじ機構とを有する直動機構である。
【0049】
自動締付装置100は、複数のツール10を収納するツールストッカ70と、プラグ21とソケット30との係合を解除する係合解除機構75と、シャフト15をツール10に向けて軸方向(X軸方向)に向けて付勢してシャフト15による第1スプリング53の圧縮を規制する加圧機構80と、自動締付装置100の作動を制御するコントローラ85と、をさらに備える。
【0050】
図1及び
図6に示すように、ツールストッカ70は、複数のツール10をX軸方向に延びるような姿勢で鉛直方向(Z軸方向)に並んで収納する。つまり、ツールストッカ70に収納されるツール10の収納位置は、鉛直方向において異なっている。ツールストッカ70は、ツール10をそれぞれ支持する台座71と、ツール10に係止される一対の爪部72a,72bと、を有する。なお、
図1では、一対の爪部72a,72bの図示を省略している。また、
図6では、プラグ21を簡略化して図示している。
【0051】
図6に示すように、台座71には、ツール10を収容する複数の収容凹部71aが形成される。収容凹部71aは、X軸方向に延びる空間であり、Y軸方向の一方側(
図6中右側)に開口している。
【0052】
一対の爪部72a,72bは、収容凹部71aと同様にY軸方向の一方側に開口するようにZ軸方向に並んで設けられる。一対の爪部72a,72bは、Z軸方向に沿って開閉可能であり、スプリング(図示省略)によって閉じ方向に付勢されている。ツール10をY軸方向に沿って図中右側から左側へ向けて移動させることで、ツール10は、一対の爪部72a,72bをスプリングに抗して押し広げながら台座71の収容凹部71a内に収容される。ツール10を収容凹部71aに収容する過程で押し広げられた一対の爪部72a,72bは、ツール10が収容凹部71aに収容されるとスプリングの付勢力によって閉じられてツール10に取り付けられるプラグ21の支持溝24cに係止される。台座71に収納されたツール10は、プラグ21を通じて一対の爪部72a,72bに係止されることで、X軸方向への移動が規制される。
【0053】
図1に示すように、係合解除機構75は、ソケット30の押圧部35の外周の係止凹部35aに係止される解除板77と、解除板77をシャフト15の軸方向(X軸方向)に沿って移動させるアクチュエータとしてのエアシリンダ76と、を有する。
【0054】
解除板77は、エアシリンダ76のピストンロッド76aの先端に取り付けられる板部材である。エアシリンダ76の作動は、コントローラ85によって制御される。
【0055】
解除板77がソケット30の押圧部35の係止凹部35aに挿入された状態で、解除板77をシャフト15の軸方向に沿ってツール10から離間する方向(図中右方向)に移動させると、解除板77が押圧部35に係止される。この状態からさらに解除板77をツール10から離間する方向に移動させると、解除板77と共にソケット30の押圧部35が第2スプリング38の付勢力に抗してツール10から離間する方向へ移動する。これにより、ボール体33が径方向外側へ向けて移動可能となり、プラグ21の外周の係止溝24bから脱落する。これによって、プラグ21とソケット30との係合が解除される。
【0056】
解除板77は、鉛直方向に延びており、鉛直方向の位置が異なる複数の収納位置でのツール交換において利用可能である。解除板77は、ツール10の数(収納位置の数)に応じて、複数設けられてもよい。
【0057】
加圧機構80は、加圧したエアを供給するエア供給源81と、エア供給源81から供給されるエアをハウジング25の内部に供給するエア配管82と、を有する。
【0058】
ハウジング25の内部において、シャフト15と伝達シャフト52との間には、密封された内部空間25aが形成される。内部空間25aには、加圧機構80からエアが供給される。内部空間25aにエアが供給されることにより上昇する内部空間25aの内圧によって、シャフト15はツール10へ向けて付勢される。つまり、加圧機構80によってツール10へ向けてシャフト15を付勢するエアシリンダ機能が発揮される。加圧機構80は、第1スプリング53が発揮する付勢力と同方向に付勢力を発揮する。加圧機構80の作動は、コントローラ85によって制御される。
【0059】
また、自動締付装置100は、シャフト15の中心軸に対する角度位置(回転位置)の基準となる位置(以下、「シャフト基準位置」と称する。)を検出するための検出リング95及びシャフト位置検出部としての第1検出センサ90と、プラグ21とソケット30との係合を検出するための第2検出センサ91と、ツール10の中心軸に対する角度位置の基準となる位置(以下、「ツール基準位置」と称する。)を検出するための検出ピン96及びツール位置検出部としての第3検出センサ92と、をさらに備える。
【0060】
検出リング95は、シャフト15の外周に取り付けられており、シャフト15の外周から径方向外側に突出するリブ95aを有している。リブ95aは、シャフト15の周方向の一部に延びるように、周方向に所定の長さを有する突起である。
【0061】
第1検出センサ90は、シャフト15の軸方向における位置(X軸方向の位置)が検出リング95のリブ95aと略一致するように、シャフト15のハウジング25に取り付けられる。第1検出センサ90は、例えば、光電センサであり、第1検出センサ90の検出結果はコントローラ85に入力される。シャフト15の回転に伴って検出リング95のリブ95aが第1検出センサ90に対向する(
図1に示す状態となる)と、第1検出センサ90がONされる。検出リング95のリブ95aが第1検出センサ90に対向せず、周方向に離間すると、第1検出センサ90はOFFされる。リブ95aが第1検出センサ90に対向し、第1検出センサ90がONする状態におけるシャフト15の角度位置が「シャフト基準位置」に相当する。
【0062】
第2検出センサ91は、プラグ21とソケット30とが係合した状態(言い換えると、シャフト15とツール10とが連結した状態)で、ソケット30の押圧部35のフランジ部37に対向する位置に設けられる。第2検出センサ91は、例えば、光電センサであり、その検出結果はコントローラ85に入力される。第2検出センサ91は、フランジ部37が対向するとONされ、後述するようにプラグ21とソケット30との係合を解除する際に押圧部35が軸方向に移動してフランジ部37が対向しなくなるとOFFされる。よって、第2検出センサ91の検出結果によって、プラグ21とソケット30が係合しているのか、係合を解除している過程であるのか、を検出することができる。
【0063】
検出ピン96は、一部が台座71の収容凹部71aに突出するようにY軸方向に延びて台座71に取り付けられる。
【0064】
第3検出センサ92は、例えば、光電センサであり、台座71の収容凹部71aにツール10が収納されているかを検出する。第3検出センサ92は、各収容凹部71aに臨むように台座71に形成される取付孔71bに取り付けられる。第3検出センサ92は、台座71にツール10が収納されるとONとなり、台座71にツール10が収納されていない状態ではOFFとなる。検出センサの検出信号は、コントローラ85に入力される。
【0065】
検出ピン96の一部がプラグ21のピン収容凹部24dに収容されると、第3検出センサ92がONとなり、ツール10が台座71に正しい姿勢で収納されたことを検出する。つまり、検出ピン96の一部がプラグ21のピン収容凹部24dに収容された状態が、ツール10の台座71への正しい収納の姿勢である。
【0066】
一方、ツール10の周方向の位置(回転位置)、より具体的には、中心軸に対するピン収容凹部24dの角度位置が正しくない状態では、検出ピン96がピン収容凹部24dに収容されない。この状態では、検出ピン96がプラグ21の外周面に当接し、プラグ21(ツール10)の全体を収容凹部71aに収容できなくなる。このため、第3検出センサ92は、ツール10(プラグ21)の端面に対向せずOFFとなる。よって、第3検出センサ92により、ツール10が正しい姿勢で台座71に収納されているかを検出することができる。このように、第3検出センサ92は、ツール10がツール基準位置にある状態でツールストッカ70に収納されているか、言い換えれば、ツール10が台座71に正しい姿勢で収納されているかを検出する。
【0067】
コントローラ85は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。コントローラ85は、少なくとも、本実施形態や変形例に係る制御を実行するために必要な処理を実行可能にプログラムされている。なお、コントローラ85は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていてもよい。
【0068】
次に、自動締付装置100によるねじ部材の締付方法について説明する。
【0069】
[段取り工程]
段取り工程では、締結対象1をテーブル3上に載置して、複数のボルト2を締結対象1に仮止めする。ボルト2の位置をXYZの座標値としてコントローラ85に入力して記憶させて、各位置においてボルト2の仮止めを実行する。なお、ボルト2の位置は、座標値としてコントローラ85に入力するものに限定されず、ティーチングによってコントローラ85に記憶させるものでもよい。
【0070】
シャフト15には、後述する締付工程において、最初に締め付けられるボルト2に対応するツール10が取り付けられる。また、ツールストッカ70には、締結対象1に締め付けるボルト2の種類に対応したツール10が予め収納される。ツール10は、その中心軸に対する角度位置がツール基準位置となる状態でツールストッカ70に収納される。
【0071】
[締付工程]
次に、テーブル3上の締結対象1に仮止めされた複数のボルト2を実際に締め付ける締付工程について説明する。なお、締付工程及び後述するツール交換工程は、締結対象1に応じて作成されコントローラ85に予め記憶されるプログラムに基づいて実行される。つまり、コントローラ85は、プログラムに基づいて自動締付装置100における各構成の作動を制御して、締付工程及びツール交換工程を実行する。
【0072】
締付工程では、まず、締付けを行うボルト2の中心軸とツール10の中心軸とが一致する位置まで、移動機構55によってシャフト15及びツール10を移動させる。この際、ボルト2とツール10とは、X軸方向において所定距離だけ離間している。以下、この際のシャフト15の位置を「準備位置」と称する。
【0073】
次に、移動機構55によって、ツール10及びシャフト15をX軸方向に沿ってボルト2に向けて近接させ、ボルト2をツール10の六角ソケット12の凹部12aに係止させる。
【0074】
具体的には、シャフト15を低速で回転させながら、シャフト15及びツール10を低速でボルト2に近接させる。この際、六角ソケット12の凹部12aとボルト2のボルトヘッド2aの向きとは一致しないことが一般的であるので、やがてツール10の六角ソケット12の端面とボルト2の端面とが当接する。ツール10の六角ソケット12の端面とボルト2の端面とが当接すると、ツール10は回転しつつもX軸方向には移動せず、ハウジング25がX軸方向に移動して第1スプリング53が圧縮される。ツール10の回転に伴って六角ソケット12の凹部12aとボルトヘッド2aとの向きが一致すると、圧縮した第1スプリング53の付勢力によってツール10及びシャフト15は、ボルト2へ向けてX軸方向に移動する。これにより、ボルトヘッド2aが六角ソケット12の凹部12aに挿入されて係止される。
【0075】
このようにして、ツール10がボルト2に係止されると、シャフト15及びツール10が回転駆動機構50によってボルト2を所定の締め付けトルクで締め付けるように回転される。ボルト2の締め付けが完了すると、移動機構55によってツール10及びボルト2を準備位置まで移動させる。
【0076】
以上により、締付工程が完了する。締付工程が完了すると、現在シャフト15に取り付いているツール10によって締め付けが可能な他のボルト2に対して再び締付工程によって締め付けが行われる。シャフト15に取り付けられているツール10によって締め付けることができるボルト2のすべての締め付けが完了すると、現在取り付けられているツール10を、締め付けられていないボルト2を締め付けるための別のツール10に交換するツール交換工程が行われる。
【0077】
[ツール交換工程]
次に、ツール交換工程について説明する。
【0078】
ツール交換工程では、まず、シャフト15の角度位置の原点出しが行われる。原点出しとは、シャフト15の角度位置をシャフト基準位置にすることである。具体的には、ツール10とボルト2とが係止していない状態(例えば、ツール10及びシャフト15が準備位置にある状態)でシャフト15を回転させ、第1検出センサ90がONした状態でシャフト15の回転を停止する。これにより、シャフト15の角度位置が、第1検出センサ90がONとなるシャフト基準位置に調整される。なお、ツール交換工程を開始する際、すでにシャフト15がシャフト基準位置にある(第1検出センサ90がONしている)場合には、シャフト15の角度位置の原点だしの工程は省略してもよい。
【0079】
シャフト15の角度位置がシャフト基準位置の状態では、シャフト15に取り付けられるツール10の角度位置は、ツール基準位置となる。この状態で、現在シャフト15に取り付けられているツール10を当該ツール10が収納される台座71の収容凹部71aまで移動機構55によって移動させる。ツール10が収納される収容凹部71aの収納位置(XYZ方向の座標位置)は予めコントローラ85に記憶されている。
【0080】
具体的には、まず、
図6中破線で示すように、ツール10と台座71の収容凹部71aとのX軸方向及びZ軸方向の位置とが一致するようにツール10を移動させる。この状態で、台座71に向けてY軸方向にツール10を移動させる(
図6中矢印参照)ことで、ツール10は収容凹部71a内に収容されて台座71上に位置される。このようにツール10を収容凹部71a内に収容する過程で、係合解除機構75の解除板77の一部が、シャフト15のソケット30における係止凹部35a内に挿入される(
図1参照)。また、ツール10は、ツール基準位置にある状態でシャフト15に取り付けられるため、台座71の収容凹部71a内に収容される過程で、検出ピン96がピン収容凹部24dに挿入される。
【0081】
次に、ツール10とシャフト15との係合を解除する。具体的には、ツール10が台座71の収容凹部71aに収容された状態で、係合解除機構75のエアシリンダ76を駆動して、ツール10側からシャフト15側に向かうようにX軸方向に沿って解除板77を移動させる。これにより、解除板77と共にソケット30の押圧部35がスプリングの付勢力に抗してツール10から離間する方向へ移動し、ボール体33が突起部36のテーパ面36aに対向するようになって径方向外側へ向けて移動可能となる。この状態で移動機構55によってシャフト15がツール10から離間するようにX軸方向に沿って移動させることで、プラグ21がソケット30の中央穴31aから引き抜かれ、ボール体33はプラグ21の外周面によって案内されて径方向外側へ移動する。これにより、ボール体33が係止溝24bから脱落する。
【0082】
なお、解除板77をツール10側からシャフト15側に向けてX軸方向(図中右方向)へ移動させる際には、加圧機構80によってハウジング25の内部空間25aが加圧される。ハウジング25の内部空間25aが加圧された状態で解除板77を移動させることにより、解除板77の移動に伴って押圧部35が移動するよりも先にシャフト15が第1スプリング53を圧縮することが防止される。よって、ツール10とシャフト15との係合の解除を確実に行うことができる。ツール10側からシャフト15側に向けた解除板77の移動が停止すると、加圧機構80による内部空間25aの加圧が解除される。
【0083】
また、プラグ21がソケット30の中央穴31aから引き抜かれるのに伴い、支持スライダ部40のスライダ41が第3スプリング42の付勢力を受けてプラグ21に追従し、ボール体33はプラグ21の外周面からスライダ41の支持部41cの外周面によって支持される。このようにして、ツール10のプラグ21とシャフト15のソケット30との係合が解除されて、ツール10とシャフト15との連結が解除される。ツール10とシャフト15との連結が解除されると、ツール10はツール基準位置にある状態で台座71上に載置される。ツール10とシャフト15との連結が解除されると、シャフト15は、移動機構55によってツール10から離間するようY軸方向へと移動する。
【0084】
次に、シャフト15に新たなツール10を取り付ける。新たなツール10を取り付けるには、まず、シャフト15を取り付けるツール10と同じZ軸方向の位置までZ軸方向に移動する。そして、ツール10に近接するようにY軸方向へと移動させて、台座71上のツール10とシャフト15との中心軸を一致させる。この状態で、シャフト15をツール10に近接させるようにX軸方向に移動させると、ツール10のプラグ21が、第3スプリング42を圧縮するようにして支持スライダ部40のスライダ41を移動させながら、ソケット30のソケット本体部31の中央穴31aに挿入される。このようにしてシャフト15のソケット30に挿入されるのに伴い、ソケット30のボール体33がプラグ21の係止溝24bに係止されて、ツール10とシャフト15が連結する。シャフト15をツール10に近接させるようにX軸方向に移動させる過程では、プラグ21がソケット30に挿入されることに伴ってシャフト15が第1スプリング53を圧縮しないように、加圧機構80によってハウジング25の内部が加圧される。これにより、プラグ21とソケット30とを確実に係合させることができる。
【0085】
なお、シャフト15をY軸方向へ移動させてツール10と中心軸を一致させる過程において、解除板77が再び係止凹部35aに収容される。よって、解除板77がソケット30へのプラグ21の挿入を阻害しないように、プラグ21をソケット30に挿入させるシャフト15のX軸方向への移動と同期させて、エアシリンダ76によって解除板77をツール10に向けてX軸方向に移動させる。
【0086】
その後、シャフト15及びツール10をY軸方向に移動させて、ツール10を台座71上から退避させて、ツール交換工程が完了する。その後、ツール10及びシャフト15は、次の締付工程の退避位置まで移動された後、次の締付工程が行われる。
【0087】
以上のように、締結対象1にすべてのボルト2を締め付けるまで、締付工程とツール交換工程を繰り返す。これにより、締結対象1に対して複数種類のボルト2を自動で締め付けることができる。
【0088】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0089】
自動締付装置100では、ツール10とシャフト15とは、カプラである継手部20によって連結される。カプラは、ソケット30の中央穴31aにプラグ21を軸方向から挿入することで容易に連結でき、ソケット30の押圧部35をプラグ21から離間する方向へ移動させることでソケット30とプラグ21との係止を解除できるため、着脱が容易である。よって、シャフト15に取り付けるツール10の交換作業を容易に行うことができ、生産性を向上できる。また、係合解除機構75を備えることで、ツール10交換作業を自動化することができ、より一層生産性が向上する。
【0090】
また、継手部20のプラグ21及びソケット30は、それぞれツール10及びシャフト15とは別体に形成される。このため、継手部20は、流体用継手として利用される既製品のカプラを加工することで、既製品を流用することができる。また、流体用の継手として利用されるカプラは、流路となる穴を有している。ツール10及びシャフト15とプラグ21との係合は、プラグ21の第1係止穴22及び第2係止穴23にツール10及びシャフト15の端部を挿入する構成であるため、流路となる穴を加工することで、第1係止穴22及び第2係止穴23を形成することができる。これらの構成により、自動締付装置100の製造コストを低減できる。
【0091】
また、ツール10の中心軸が鉛直方向(Z軸方向)に対して垂直な場合、重力によってツール10の先端側(六角ソケット12側)が中心軸よりも鉛直方向下方へ下がる(言い換えると、いわゆる先端の「垂れ」が生じる)おそれがある。特に、ツール10と継手部20のプラグ21とが一体に形成されると、プラグ21とソケット30との間の径方向隙間に起因して垂れが生じやすくなる。このような垂れが生じるとツール10とボルト2との係合が阻害されるおそれがある。これに対し、本実施形態では、ツール10とプラグ21とは別体であり、ツール10の端部がプラグ21の第1係止穴22に挿入される構成である。このため、第1係止穴22へのツール10の端部の挿入長さ、言い換えると、ツール10の端部と第1係止穴22のオーバーラップ長を確保することで、ツール10を安定した姿勢で支持することができ垂れの発生を抑制することができる。
【0092】
また、自動締付装置100では、シャフト15のシャフト基準位置を検出する第1検出センサ90と、台座71に収納されたツール10のツール基準位置を検出する第3検出センサ92と、を備える。このため、ツール10を台座71に収納する際には、常にツール10がツール基準位置にある状態で収納することができる。また、新たなツール10をシャフト15に取り付ける際には、ツール10に取り付けられるプラグ21の第2係止穴23の四角形状の向きと、シャフト15の端部の四角形状の向きとを容易に合わせることができる。これにより、ツール10とシャフト15の中心軸を一致させツール10とシャフト15とを近接させることで、ツール10とシャフト15とを容易に連結することができる。
【0093】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0094】
上記実施形態では、ツール10にプラグ21が取り付けられ、シャフト15にソケット30が取り付けられる。ツールストッカ70と係合解除機構75との設置スペースを考慮すると、シャフト15にソケット30が設けられるほうが好ましいが、上記実施形態とは反対に、ツール10にソケット30が取り付けられ、シャフト15にプラグ21が取り付けられてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、六角ソケット12を有するツール10によって六角ボルト2を締め付ける場合を説明した。これに対し、ねじ部材とツール10の組み合わせは上記実施形態に限定されない。例えば、ねじ部材は、六角孔付きボルト、ナット、ビス、ステッピングねじなどでもよい。ツール10は、締結対象1に締め付けられるねじ部材の種類に合わせて、準備されればよく、複数種類のツール10を準備することで、締結対象1に対する種々のねじ部材の締め付けに対応が可能である。
【0096】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0097】
自動締付装置100は、ボルト2に係合しボルト2を回転させるためのツール10と、軸線回りに回転駆動されるシャフト15と、ツール10とシャフト15とを連結しシャフト15の回転をツール10に伝達する継手部20と、を備え、継手部20は、ツール10に取り付けられるプラグ21と、シャフト15に取り付けられプラグ21に着脱自在に係合するソケット30と、を有するカプラであり、プラグ21は、ツール10及びシャフト15のそれぞれに対して周方向に係止されてシャフト15の回転をツール10に伝達する。
【0098】
この構成では、ツール10とシャフト15とを連結する継手部20が、互いに着脱自在に係合するソケット30及びプラグ21を有するカプラであるため、ツール10とシャフト15との軸を合わせて互いに近接させることで、容易に連結させることができる。よって、シャフト15に取り付けるツール10の交換作業が容易になる。したがって、自動締付装置100における生産性が向上する。
【0099】
また、自動締付装置100は、プラグ21とソケット30との係合を解除する係合解除機構75をさらに備え、ソケット30は、中央穴31aを有するソケット本体部31と、中央穴31aに収容されるプラグ21に係止されるボール体33と、ソケット本体部31の外周に設けられ、ボール体33を径方向内側に向けて押圧するための押圧部35と、ボール体33を径方向内側に向けて押圧するように押圧部35を付勢する第2スプリング38と、を有し、係合解除機構75は、押圧部35に係止される解除板77と、解除板77を通じて押圧部35を第2スプリング38の付勢力に抗して移動させるエアシリンダ76と、を有する。
【0100】
この構成では、プラグ21とソケット30との係合の解除も自動で行うことができるため、ツール10の交換作業を効率化することができる。
【0101】
また、自動締付装置100では、プラグ21には、ツール10のツール係合部13が周方向に係止するように挿入される第1係止穴22と、シャフト15のシャフト係合部18が周方向に係止するように挿入される第2係止穴23と、が形成され、ツール10のツール係合部13と第1係止穴22とは、断面が互いに対応する非円形に形成され、シャフト15のシャフト係合部18と第2係止穴23とは、断面が互いに対応する非円形に形成される。
【0102】
この構成では、ツール10を第1係止穴22に挿入し、シャフト15を第2係止穴23に挿入することで、ツール10とプラグ21との係止及びシャフト15とプラグ21との係止を容易に行うことができる。
【0103】
また、自動締付装置100は、複数のツール10を収納するツールストッカ70と、シャフト15の中心軸に対する角度位置が、非円形に形成されるシャフト15のシャフト係合部18が所定の向きとなるようなシャフト基準位置であることを検出する第1検出センサ90をさらに備え、ツール10は、中心軸に対する角度位置が、非円形に形成されるツール10のツール係合部13が所定の向きとなるようなツール基準位置にある状態でツールストッカ70に収納されており、シャフト15がシャフト基準位置にあって、ツール10がツール基準位置ある状態では、ソケット30が取り付けられるシャフト15のシャフト係合部18の向きと、ツール10に取り付けられるプラグ21の第2係止穴23の一方の向きとが、一致する。
【0104】
また、自動締付装置100は、ツールストッカ70に設けられツール10がツール基準位置にある状態でツールストッカ70に収納されているかを検出する第3検出センサ92をさらに備える。
【0105】
これらの構成では、シャフト基準位置を検出することで、ソケット30が取り付けられるシャフト15の端部の向きと、ツール10に取り付けられるプラグ21の第2係止穴23の一方の向きとを一致させることができる。このため、シャフト15をシャフト基準位置にしてツールストッカ70のツール10との軸を合わせてツール10に近接させることで、シャフト15の端部をプラグ21の第2係止穴23に挿入してシャフト15とツール10とを容易に連結することができる。
【0106】
また、自動締付装置100は、シャフト15を軸方向に弾性支持しシャフト15の軸方向の移動に伴って伸縮する第1スプリング53と、シャフト15をツール10に向けて軸方向に付勢してシャフト15による第1スプリング53の圧縮を規制する加圧機構80と、をさらに備える。
【0107】
この構成では、ツール10を回転させながらボルト2に向けて移動させてツール10をボルト2に係合させる際に、ツール10及びシャフト15の軸方向の移動を第1スプリング53の伸縮によって吸収できる。これにより、ツール10とボルト2とを容易に係合させることができる。また、ツール10の交換の際には、加圧機構80によってシャフト15の移動を規制することで、継手部20のプラグ21及びソケット30の脱着を容易に行うことができる。
【0108】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0109】
100…自動締付装置、1…締結対象、2…ボルト(ねじ部材)、10…締付ツール、13…ツール係合部(端部)、15…シャフト、18…シャフト係合部(端部)、20…継手部、21…プラグ、22…第1係止穴、23…第2係止穴、30…ソケット、31…ソケット本体部、33…ボール体(係止体)、35…押圧部、38…第2スプリング(付勢部材)、53…第1スプリング(弾性部材)、70…ツールストッカ、71…台座、71a…収容凹部、75…係合解除機構、76…エアシリンダ(アクチュエータ)、77…解除板、90…第1検出センサ(シャフト位置検出部)、92…第3検出センサ(ツール位置検出部)