(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】電磁波シールド積層体、電磁波シールド積層体の製造方法、シールドプリント配線板、シールドプリント配線板の製造方法、半導体パッケージ、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20241009BHJP
H01L 23/00 20060101ALI20241009BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20241009BHJP
B32B 9/04 20060101ALI20241009BHJP
B32B 27/06 20060101ALI20241009BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
H05K9/00 W
H05K9/00 R
H01L23/00 C
H01L23/14 X
B32B9/04
B32B27/06
B32B15/04 A
(21)【出願番号】P 2021057888
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520206988
【氏名又は名称】豊光社テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】志保 浩司
(72)【発明者】
【氏名】内山 克博
(72)【発明者】
【氏名】安 克彦
(72)【発明者】
【氏名】光田 和弘
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/192494(WO,A1)
【文献】特開2021-028985(JP,A)
【文献】特開2007-242921(JP,A)
【文献】特開2008-230167(JP,A)
【文献】国際公開第2020/105630(WO,A1)
【文献】特開2008-143582(JP,A)
【文献】特開2012-124466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0120077(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0126381(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01L 23/00;
23/14
B32B 9/04;
15/04;
27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド層と、
上記シールド層に化合物αを介して接合されている接着剤層及び絶縁層の少なくとも一方と
を備え、
上記化合物αが、
一分子内に、
ベンゼン環と、
アルコキシシリル基と、
アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる1つ以上の基と
を有する化合物α1、及び
上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2
の少なくとも一方である、電磁波シールド積層体。
【請求項2】
上記化合物αは、上記アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる1つ以上の基が、上記ベンゼン環に直接結合している化合物である請求項1に記載の電磁波シールド積層体。
【請求項3】
上記化合物α1が、下記式(1)又は(2)で表される化合物である請求項1又は請求項2に記載の電磁波シールド積層体。
【化1】
式(1)中、R
1は、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、炭素数1から12のアルコキシ基、又はヒドロキシ基である。複数のR
2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、又は1価の有機基である。X
1は、アジド基、アジドスルホニル基、又はジアゾメチル基である。Y
1は、単結合、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、-NHR
3-で表される基、又は下記式(3a)若しくは(3b)で表される基である。R
3は、炭素数1から6のアルキル基である。Z
1は、単結合、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の末端若しくは炭素-炭素結合間に-NH-、-O-、-S-及び-S(O)-のうちの1つ以上の基を含む基である。mは、1から3の整数である。R
1、X
1、Y
1及びZ
1が、それぞれ複数の場合、これらはそれぞれ独立して上記定義を満たす。但し、1又は複数のR
1の少なくとも1つは、炭素数1から12のアルコキシ基である。
式(2)中、複数のR
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、炭素数1から12のアルコキシ基、又はヒドロキシ基であり、複数のR
4、R
5及びR
6のうちの少なくとも1つは、炭素数1から12のアルコキシ基である。複数のR
7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、又は1価の有機基である。X
2は、アジド基、アジドスルホニル基、又はジアゾメチル基である。複数のZ
2は、それぞれ独立して、単結合、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の末端若しくは炭素-炭素結合間に-NH-、-O-、-S-及び-S(O)-のうちの1つ以上の基を含む基である。
【化2】
式(3a)中、R
8は、水素原子又はメチル基である。
【請求項4】
上記接着剤層を備え、
上記接着剤層が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリウレタンウレア樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む請求項1、請求項2又は請求項3に記載の電磁波シールド積層体。
【請求項5】
上記接着剤層を備え、
上記接着剤層が、導電性を有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の電磁波シールド積層体。
【請求項6】
上記シールド層を備え、
上記シールド層が、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電磁波シールド積層体。
【請求項7】
上記シールド層を備え、
上記シールド層が、銅を含む層と銀を含む層とを有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電磁波シールド積層体。
【請求項8】
フレキシブルプリント配線板用である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電磁波シールド積層体。
【請求項9】
半導体パッケージ用である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電磁波シールド積層体。
【請求項10】
シールド層と、接着剤層及び絶縁層の少なくとも一方とを、化合物αを介して接合する工程を備え、
上記化合物αが、
一分子内に、
ベンゼン環と、
アルコキシシリル基と、
アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる1つ以上の基と
を有する化合物α1、及び
上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2
の少なくとも一方である、電磁波シールド積層体の製造方法。
【請求項11】
プリント配線板と、
上記プリント配線板に接着されている請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電磁波シールド積層体と
を備えるシールドプリント配線板。
【請求項12】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電磁波シールド積層体、又は請求項9に記載の電磁波シールド積層体の製造方法によって得られた電磁波シールド積層体をプリント配線板に接着させる工程
を備えるシールドプリント配線板の製造方法。
【請求項13】
請求項9に記載の電磁波シールド積層体を備える半導体パッケージ。
【請求項14】
請求項11に記載のシールドプリント配線板又は請求項13に記載の半導体パッケージを備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド積層体、電磁波シールド積層体の製造方法、シールドプリント配線板、シールドプリント配線板の製造方法、半導体パッケージ、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばフレキシブルプリント配線板(FPC)等のプリント配線板に電磁波シールド積層体を貼り付けて、外部からの電磁波をシールドすることが行われている。
【0003】
電磁波シールド積層体は、通常、導電性接着剤層と、金属薄膜等からなるシールド層と、絶縁層とがこの順に積層された構成を有する。この電磁波シールド積層体をプリント配線板に重ね合わせた状態で加熱プレスすることにより、電磁波シールド積層体は導電性接着剤層によってプリント配線板に接着されて、シールドプリント配線板が作製される。この接着後、通常、はんだリフローによってプリント配線板に部品が実装される。また、プリント配線板は、通常、ベースフィルム上のプリント回路が絶縁フィルムで被覆された構成となっている。
【0004】
シールドプリント配線板を製造する際に、加熱プレス、はんだリフロー等によりシールドプリント配線板を加熱すると、電磁波シールド積層体の導電性接着剤層、プリント配線板の絶縁フィルム等からガスが発生する。また、プリント配線板のベースフィルムがポリイミド等の吸湿性の高い樹脂で形成されている場合には、加熱によりベースフィルムから水蒸気が発生する場合がある。導電性接着剤層、絶縁フィルム及びベースフィルム等から生じるこれらの揮発成分は、シールド層をスムーズに通過することができないため、シールド層と導電性接着剤層との間に溜まってしまう。そのため、はんだリフロー工程等で急激な加熱を行うと、シールド層と導電性接着剤層との間に溜まった揮発成分によって、シールド層と導電性接着剤層との層間密着が破壊され、シールド性能が低下する場合がある。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献1には、シールド層(金属薄膜)に複数の開口部を設け、通気性を向上させた電磁波シールド積層体が記載されている。シールド層に複数の開口部を設けると、揮発成分は開口部を通じてシールド層を通過することができる。そのため、シールド層と導電性接着剤層との間に揮発成分が溜まることを防止することができ、層間密着が破壊されることによるシールド性能の低下を防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された電磁波シールド積層体は、シールド層に開口部が形成されているのでシールド層の強度が弱い。そのため、特許文献1に記載された電磁波シールド積層体をフレキシブルプリント配線板に用いると、以下のような問題が生じる。フレキシブルプリント配線板は、使用時に繰り返し折り曲げられる。そのため、このようなフレキシブルプリント配線板に用いられる電磁波シールド積層体、及びこの電磁波シールド積層体を構成するシールド層も繰り返し折り曲げられることになる。上記の通り、特許文献1に記載された電磁波シールド積層体のシールド層は強度が弱いため、繰り返し折り曲げられると、シールド層が破壊され、シールド性能の低下を招くことがある。また、半導体パッケージ等においても、電磁波をシールドするためのシールド層が設けられることがあり、シールド層と絶縁層等の他の層との間の密着性等が重要となる。
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、シールドプリント配線板を製造する際などに層間剥離が生じ難い電磁波シールド積層体、このような電磁波シールド積層体の製造方法、並びにこのような電磁波シールド積層体を用いたシールドプリント配線板、シールドプリント配線板の製造方法、半導体パッケージ、及び電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態は、シールド層と、上記シールド層に化合物αを介して接合されている接着剤層及び絶縁層の少なくとも一方とを備え、上記化合物αが、一分子内に、ベンゼン環と、アルコキシシリル基と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる1つ以上の基とを有する化合物α1、及び上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2の少なくとも一方である、電磁波シールド積層体である。
【0010】
本発明の他の形態は、シールド層と、接着剤層及び絶縁層の少なくとも一方とを、化合物αを介して接合する工程を備え、上記化合物αが、一分子内に、ベンゼン環と、アルコキシシリル基と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる1つ以上の基とを有する化合物α1、及び上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2の少なくとも一方である、電磁波シールド積層体の製造方法である。
【0011】
本発明の他の形態は、プリント配線板と、上記プリント配線板に接着されている上記電磁波シールド積層体とを備えるシールドプリント配線板である。
【0012】
本発明の他の形態は、上記電磁波シールド積層体、又は上記電磁波シールド積層体の製造方法によって得られた電磁波シールド積層体をプリント配線板に接着させる工程を備えるシールドプリント配線板の製造方法である。
【0013】
本発明の他の形態は、上記電磁波シールド積層体を備える半導体パッケージである。
【0014】
本発明の他の形態は、上記シールドプリント配線板又は上記半導体パッケージを備える電子機器である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一形態によれば、シールドプリント配線板を製造する際などに層間剥離が生じ難い電磁波シールド積層体、このような電磁波シールド積層体の製造方法、並びにこのような電磁波シールド積層体を用いたシールドプリント配線板、シールドプリント配線板の製造方法、及び電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る電磁波シールド積層体を示す模式的断面図である。
【
図2】
図2は、
図1とは異なる実施形態に係る電磁波シールド積層体を示す模式的断面図である。
【
図3】
図3は、参考例における無電解めっき処理のフロー図である。
【
図4】
図4は、参考例における熱圧着のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<電磁波シールド積層体>
本発明の一実施形態に係る電磁波シールド積層体は、シールド層と、上記シールド層に所定の化合物αを介して接合されている接着剤層及び絶縁層の少なくとも一方とを備える。本発明に係る電磁波シールド積層体としては、シールド層と接着剤層とを備える形態、シールド層と絶縁層とを備える形態、及び接着剤層とシールド層と絶縁層とをこの順に備える形態が挙げられる。接着剤層とシールド層と絶縁層とを備える場合、接着剤層とシールド層との間、及びシールド層と絶縁層との間の少なくとも一方が、化合物αを介して接合されていればよい。本発明の一実施形態に係る電磁波シールド積層体は、接着剤層とシールド層との間、及びシールド層と絶縁層との間の少なくとも一方が、化合物αを介して接合されているため、これらの層間での剥離が生じ難く、耐折り曲げ性も十分に高い。以下、接着剤層とシールド層と絶縁層とをこの順に備え、各層間が化合物αを介して接合されている電磁波シールド積層体の形態を中心に具体的に説明する。
【0018】
図1に示す本発明の一実施形態に係る電磁波シールド積層体10は、接着剤層11、シールド層12及び絶縁層13をこの順に備える積層体である。接着剤層11とシールド層12との間は、化合物αを介して接合されており、この層間には第1の化合物α層14aが存在する。また、シールド層12と絶縁層13との間も、化合物αを介して接合されており、この層間には第2の化合物α層14bが存在する。第1の化合物α層14a及び第2の化合物α層14bは、連続的な層として存在していてもよく、断続的な層として存在していてもよい。第1の化合物α層14a及び第2の化合物α層14bは、通常、非常に薄い層であるため、光学顕微鏡等によって層であることが確認できなくてもよく、接着剤層11とシールド層12との間、及びシールド層12と絶縁層13との間に、化合物αが存在することが確認できればよい。
【0019】
電磁波シールド積層体10では、接着剤層11とシールド層12との間、及びシールド層12と絶縁層13との間が、化合物αにより化学的に界面接合されている。このため、この電磁波シールド積層体10を用いてシールドプリント配線板を製造する際などに層間剥離が生じ難く、耐折り曲げ性も十分に高い。具体的には、例えば、当該電磁波シールド積層体10を用いてシールドプリント配線板を製造する際の加熱プレス、はんだリフロー等を行うときに、接着剤層11とシールド層12との間等に揮発成分が発生し、界面に浸透したとしても、界面の剥離が生じにくい。その結果、層間密着が破壊されることを抑制することができ、そのため電磁波シールド性能も高くなる。さらには、当該電磁波シールド積層体10をフレキシブルプリント配線板等に用いた場合にも、耐折り曲げ性が十分に高いため、断線等が生じにくい。
【0020】
なお、他の実施形態として、接着剤層11とシールド層12との間、及びシールド層12と絶縁層13との間の一方は、他の手段により接合されていてもよい。接着剤層11とシールド層12との間、及びシールド層12と絶縁層13との間の少なくとも一方が化合物αを介して接合されていることにより、シールドプリント配線板を製造する際などに層間剥離が生じ難く、耐折り曲げ性も十分に高いものとなる。但し、揮発成分が溜まりやすいことなどから、少なくとも接着剤層11とシールド層12との間が、化合物αを介して接合されていることが好ましく、耐折り曲げ性をより高めるなどの点から、接着剤層11とシールド層12との間、及びシールド層12と絶縁層13との間の双方が、化合物αを介して接合されていることがより好ましい。
【0021】
(接着剤層)
接着剤層11は、通常、電磁波シールド積層体10の最内層であり、プリント配線板等に電磁波シールド積層体10を貼り合わせるための層である。
【0022】
接着剤層11は、通常、接着剤として機能する樹脂(接着性樹脂)を含む。この樹脂としては、接着剤として用いられている従来公知の樹脂を用いることができる。樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、複数の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する樹脂等の活性エネルギー線硬化性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよく、各種変性がなされた樹脂であってもよい。樹脂は、1種又は2種以上を用いることができる。接着剤層11は、良好な接着性が発揮されることなどの点から、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリウレタンウレア樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。また、接着剤層11に含まれる樹脂としては、熱硬化性樹脂であることも好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。なお、接着剤層11に含まれる樹脂は、接着性を有する状態(例えば未硬化の状態)で存在している。
【0023】
接着剤層11における樹脂の含有量の下限としては、50質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましい。接着剤層における樹脂の含有量を上記下限以上とすることで、接着剤層11の接着性を高めることができる。一方、接着剤層11における樹脂の含有量の上限としては、99質量%が好ましく、95質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。
【0024】
接着剤層11は、導電性を有することが好ましい。導電性を有する接着剤層11は電磁波をシールドする層としても機能する。従って、このような接着剤層11を備える電磁波シールド積層体10は、プリント配線板等の電磁波シールド積層体としてより好適に用いることができる。このようなことから、接着剤層11は、導電性粒子を含むことが好ましい。
【0025】
導電性粒子の形状は、特に限定されないが、球状、扁平状、鱗片状、デンドライト状、棒状、繊維状等であってよい。
【0026】
導電性粒子としては、例えば、金属粒子、炭素粒子等を挙げることができ、金属粒子が好ましい。金属粒子(金属粉)としては、銀粉、銅粉、ニッケル粉、ハンダ粉、アルミニウム粉、銅粉に銀めっきを施した銀コート銅粉、高分子微粒子やガラスビーズ等を金属で被覆した微粒子等を挙げることができる。これらの中でも、経済性等の観点から、銅粉及び銀コート銅粉が好ましい。
【0027】
導電性粒子の平均粒径としては、0.5μm以上15μm以下が好ましい。導電性粒子の平均粒径が上記範囲であることで、接着剤層11の接着性、シールド性能等が良好となる。また、導電性粒子の平均粒径が上記上限以下であることで、接着剤層11の薄膜化を図ることなどもできる。なお、本明細書において、「平均粒径」は、特定対象の粒子を分散媒にて分散させ、動的光散乱法により測定した体積平均値を意味する。
【0028】
接着剤層11における導電性粒子の含有量の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましい。導電性粒子の含有量を上記下限以上とすることで、接着剤層11のシールド性能等を高めることができる。一方、接着剤層における導電性粒子の含有量の上限としては、80質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましい。導電性粒子の含有量を上記上限以下とすることで、接着剤層11の十分な接着性を確保することができる。
【0029】
接着剤層11は、異方導電性を有することが好ましい。接着剤層11が異方導電性を有する場合、例えば、等方導電性を有する場合に比べてプリント配線板の信号回路で伝送される高周波信号の伝送特性が向上する。
【0030】
接着剤層11には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤等が含まれていてもよい。
【0031】
接着剤層11の平均厚さとしては特に限定されず、必要に応じ適宜設定することができるが、下限としては0.2μmが好ましく、1μmがより好ましく、5μmがさらに好ましい。接着剤層11の平均厚さを上記下限以上とすることで、十分な接着性、及び導電性粒子を含有している場合の十分なシールド性能等が発揮される。一方、接着剤層11の平均厚さの上限としては、40μmが好ましく、30μmがより好ましく、20μmがさらに好ましい。接着剤層11の平均厚さを上記上限以下とすることで、電磁波シールド積層体10全体の薄膜化を図ることなどができる。
【0032】
(シールド層)
シールド層12は、電磁波に対するシールド性能を有すればどのような材料から形成されていてもよいが、金属を主成分として形成されていることが好ましい。特に、シールド層12は、金属層であることが好ましい。シールド層12における金属の含有量としては、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましい。シールド層12における金属の含有量が高い場合、良好なシールド性能を発揮することなどができる。シールド層12は、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、銅及び銀の少なくとも1種の金属を含むことがより好ましい。シールド層12におけるこれらの金属の含有量としては、90質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましい。シールド層12がこのような金属から形成されていることで、良好なシールド性能を発揮することなどができる。
【0033】
シールド層12の形成材料としては、例えば、金属ナノインクを使用することができ、具体的には、例えば特開2016-026237号公報、特開2017-218664号公報、特開2018-183934号公報、特開2018-184553号公報、特許5833540号、及び特許6029721号記載の金属ナノインクを用いることができる。これらの記載は本願明細書に含まれる。
【0034】
このような金属ナノインクは、通常、スクリーン印刷法又はインクジェット法により塗布される。インクジェット法の場合には、インクジェット吐出に適合させるため溶液の粘度を調整する必要がある。溶液粘度が良好に調整された金属ナノインクはポリマーを含まないことが多く、一般的にポリマーを含まない場合、形成されたシールド層の他の層との密着性が低い場合がある。そこで、化合物αによって他の層の表面を処理し、すなわち他の層の表面に化合物αを設け、その後金属ナノインクを他の層の表面に塗布することで、密着性に優れたシールド層を形成することができる。また、インクジェット塗布などにより、他の層の表面上の一部分に特化してシールド層を形成することも可能となる。例えば、半導体パッケージの製造において、部分的なシールド層形成が好適に行われる。
【0035】
なお、シールド層12は、めっき、蒸着等によって形成された層、金属箔からなる層等、金属ナノインク以外から形成された層であってよい。
【0036】
シールド層12は、単一の金属を含む層であってもよく、複数の金属を含む層であってもよい。また、シールド層12は、単層であってもよく、多層であってもよい。シールド層12が多層の形態として、シールド層は、銅を含む層と銀を含む層とを有することが好ましい。このような形態については後に詳説する。
【0037】
シールド層12の平均厚さの下限は、0.2μmが好ましく、0.5μmがより好ましく、1μmがさらに好ましい。シールド層12の平均厚さを上記下限以上とすることで、シールド性能が高まる。特に、シールド層12の平均厚さが1μm以上であると、周波数が0.01~10GHzである高周波の信号を伝送する信号伝達系において伝送特性が良好になる。一方、従来の電磁波シールド積層体においては、シールド層の平均厚さが1μm以上といった厚さになる場合、繰り返し折り曲げられたときの層間の剥離が生じやすくなる傾向にある。しかし、当該電磁波シールド積層体10においては、耐折り曲げ性が十分に高いため、シールド層12が厚い場合も層間の剥離が生じ難く、良好なシールド性能を維持することができる。一方、シールド層12の平均厚さの上限は、10μmが好ましく、5μmがより好ましい。シールド層12の平均厚さを上記上限以下とすることで、耐折り曲げ性を高めることなどができる。
【0038】
シールド層12には、開口部が形成されていないことが好ましい。シールド層12に開口部が形成されていないことにより、良好なシールド性能が発揮され、また、シールド層12の強度が高まり、耐折り曲げ性が向上する。
【0039】
(絶縁層)
絶縁層13は、絶縁性を有する層である。絶縁層13は、十分な絶縁性を有し、好ましくは、シールド層12等を保護できる層であれば特に限定されないが、樹脂層であることが好ましい。
【0040】
絶縁層13を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の具体例としては、接着剤層11において例示した各樹脂が挙げられる。
【0041】
絶縁層13には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0042】
絶縁層13の平均厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、下限としては、1μmが好ましく、3μmがより好ましい。絶縁層13の平均厚さを上記下限以上とすることで、十分な絶縁性、保護性等を発揮することなどができる。一方、絶縁層13の平均厚さの上限としては、15μmが好ましく、10μmがより好ましい。絶縁層13の平均厚さを上記上限以下とすることで、折り曲げやすくなり、折り曲げたときの絶縁層13の破壊が生じにくくなる。すなわち、絶縁層13の平均厚さを上記上限以下とすることで、耐折り曲げ性を高めることができる。
【0043】
(化合物α)
以下、接着剤層11とシールド層12との間、及びシールド層12と絶縁層13との間を接合する化合物αについて説明する。化合物αは、第1の化合物α層14a及び第2の化合物α層14bを形成している。第1の化合物α層14a及び第2の化合物α層14bには、化合物α以外の成分が含まれていてもよい。接着剤層11とシールド層12との間を接合する化合物αと、シールド層12と絶縁層13との間を接合する化合物αとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。なお、化合物αは、2つの物質の接合体(結合体)を界面分子結合により形成させるための材料である。界面分子結合は、2つの物質の界面に、ある化合物を介在させ、化学反応により各物質と上記化合物とをそれぞれ化学結合させて上記2つの物質を結合させること、又はその結果生じる結合を意味する。
【0044】
化合物αは、一分子内に、ベンゼン環と、アルコキシシリル基と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる1つ以上の基とを有する化合物α1、及び上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2の少なくとも一方である。化合物αは、2種以上を用いることができ、化合物α1と化合物α2とを組み合わせて用いることもできる。
【0045】
アルコキシシリル基とは、ケイ素原子にアルコキシ基(オキシ炭化水素基)が結合した基をいう。アルコキシ基とは、酸素原子に炭化水素基が結合した基をいい、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ビニルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等を挙げることができる。ケイ素原子に結合しているアルコキシ基の数は、1、2又は3であってよく、3が好ましい。アルコキシシリル基においては、ケイ素原子にアルコキシ基以外の基が結合していてもよく、このような基としては、アルキル基、フェニル基、ヒドロキシ基、水素原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1~3のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基がより好ましい。アルコキシシリル基の例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリベンジルオキシシリル基などが挙げられる。
【0046】
化合物αが有するアルコキシシリル基は、化学反応により、主に、金属等の無機物Mと「-Si-O-M-タイプ」の化学結合を形成することができる。また、化合物αが有するアジド基、アジドスルホニル基又はジアゾメチル基は、化学反応により、主に、樹脂等の有機物と「-N-C-タイプ」等の化学結合を形成することができる。ここで化学結合とは、共有結合、イオン結合、分子間力による結合等を意味し、好ましくは共有結合又はイオン結合を意味する。したがって、化合物αは、通常、金属を主成分とするシールド層12と、通常、樹脂を主成分とする接着剤層11及び絶縁層13との間を強固に結合(接合)させることができる。
【0047】
化合物αは、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる1つ以上の基が、ベンゼン環に直接結合している化合物であることが好ましい。アジド基等がベンゼン環に直接結合している場合、そうでない場合と比べて、紫外線照射処理又は加熱処理により、アジド基等から窒素分子(N2)が脱離する反応の反応速度が大きくなる。また、ベンゼン環に直接結合したアジド基等は、例えばトリアジン環に直接結合したアジド基等と比べて、長波長の紫外線でも光分解反応の反応速度が十分に大きいという特徴をもつ。すなわち、トリアジン環の場合には、光分解反応の反応速度は、短波長紫外線の特定の波長を中心とするある波長幅のピークを有するのに対して、ベンゼン環の場合には、光分解反応の反応速度は、より波長の長い紫外線の特定の波長を中心とする同程度の波長幅のピークを有する。したがって、ベンゼン環にアジド基等が直接結合した化合物αを用いることで、表面処理する物質をあまり劣化させない長波長の紫外線を照射しても、効率的に処理を行うことが可能となる。また、比較的低温度及び短時間の加熱処理で効率的に処理を行うことができる。
【0048】
(化合物α1)
化合物α1は、下記式(1)又は(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0049】
【0050】
式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、炭素数1から12のアルコキシ基、又はヒドロキシ基である。複数のR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、又は1価の有機基である。X1は、アジド基、アジドスルホニル基、又はジアゾメチル基である。Y1は、単結合、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、-NHR3-で表される基、又は下記式(3a)若しくは(3b)で表される基である。R3は、炭素数1から6のアルキル基である。Z1は、単結合、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の末端若しくは炭素-炭素結合間に-NH-、-O-、-S-及び-S(O)-のうちの1つ以上の基を含む基である。mは、1から3の整数である。R1、X1、Y1及びZ1が、それぞれ複数の場合、これらはそれぞれ独立して上記定義を満たす。但し、1又は複数のR1の少なくとも1つは、炭素数1から12のアルコキシ基である。
【0051】
式(2)中、複数のR4、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、炭素数1から12のアルコキシ基、又はヒドロキシ基であり、複数のR4、R5及びR6のうちの少なくとも1つは、炭素数1から12のアルコキシ基である。複数のR7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、又は1価の有機基である。X2は、アジド基、アジドスルホニル基、又はジアゾメチル基である。複数のZ2は、それぞれ独立して、単結合、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の末端若しくは炭素-炭素結合間に-NH-、-O-、-S-及び-S(O)-のうちの1つ以上の基を含む基である。
【0052】
【0053】
式(3a)中、R8は、水素原子又はメチル基である。
【0054】
R1、R4、R5及びR6で表される炭素数1から12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
R1、R4、R5及びR6で表される炭素数1から12のアルコキシ基としては、上記したアルコキシ基等が挙げられる。
R2及びR7で表されるハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
R2及びR7で表される1価の有機基としては、1価の炭化水素基、アルコキシ基、-Y1-Z1-Si-R1
3(Y1、Z1及びR1は、式(1)中のY1、Z1及びR1とそれぞれ同義である。)で表される基、-COO-N-(-Z2-SiR4R5R6)2(Z2、R4、R5及びR6は、式(2)中のZ2、R4、R5及びR6とそれぞれ同義である。)、後述する式(14)で表される基等が挙げられる。
R3で表される炭素数1から6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0055】
式(1)で表される化合物の好適な形態は以下の通りである。
R1としては、炭素数1から12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1から6のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1から3のアルコキシ基がさらに好ましい。
R2としては、水素原子が好ましい。
X1としては、アジド基及びアジドスルホニル基が好ましい。X1は、Y1等を含む基に対してパラ位又はメタ位に結合していることが好ましい。
Y1としては、アミド基が好ましく、*-CONH-(*は、ベンゼン環との結合部位を示す。)で表されるアミド基がより好ましい。
Z1としては、炭素数2から12のアルキレン基が好ましく、炭素数2から6のアルキレン基がより好ましい。
mは、3が好ましい。
【0056】
式(2)で表される化合物の好適な形態は以下の通りである。
R4、R5及びR6としては、炭素数1から12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1から6のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1から3のアルコキシ基がさらに好ましい。
R7としては、水素原子が好ましい。
X2としては、アジド基及びアジドスルホニル基が好ましい。X2は、-COO-N-(-Z2-SiR4R5R6)2で表される基に対してパラ位又はメタ位に結合していることが好ましい。
Z2としては、炭素数2から12のアルキレン基が好ましく、炭素数2から6のアルキレン基がより好ましい。
【0057】
化合物α1は、下記式(11)、(12)又は(13)で表される化合物であることも好ましい。
【0058】
【0059】
式(11)~(14)中、X10、X11及びX12は、それぞれ独立して、アジド基、アジドスルホニル基又はジアゾメチル基である。E11及びE12は、それぞれ独立して、>C=O、メチレン基又は炭素数2~12のアルキレン基である。Y11、Y12、Y13及びY14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、又は-J13-Si(OA10)3-k(R10)kで表される基である。J11、J12及びJ13は、それぞれ独立して、メチレン基、炭素数2~12のアルキレン基、又は炭素数2~12のアルキレン基の炭素-炭素結合間に酸素原子(-O-)を含む基である。Y15は、-R15又は-OA15で表される基である。Y16は、-R16又は-OA16で表される基である。A10、A15及びA16は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基、ベンジル基又は水素原子である。R10、R15及びR16は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基又はベンジル基である。kは、0以上2以下の整数である。Q10は、水素原子又は式(4)で表される有機基である。式(11)及び(12)において、Y11とY12との少なくとも一方は、酸素原子を含む。式(13)において、Y15とY16との少なくとも一方は酸素原子を含む。式(13)において、ベンゼン環に結合している基X11及びX12は、それぞれ独立して、パラ位又はメタ位に結合している。
【0060】
(化合物α1の合成方法)
化合物α1の合成方法は特に限定されないが、例えば、アルコキシシリル基と、アルコキシシリル基以外の反応性基aとを有するシランカップリング剤Aと、上記反応性基aと結合反応可能な反応性基bと、ベンゼン環と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる1つ以上の基とを有する化合物Bとを公知の方法により反応させることにより得ることができる。反応性基aと反応性基bとの組み合わせとしては、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基等と、カルボキシ基との組み合わせなどが挙げられる。
【0061】
シランカップリング剤Aとしては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-アミノプロピル)ジエトキシシラン、ビス(3-アミノプロピル)ジメトキシシラン等が挙げられる。
【0062】
化合物Bとしては、アジド安息香酸、アジドスルホニル安息香酸、ジアゾメチル安息香酸、3-(4-アジドフェニル)プロピオン酸、これらのカルボン酸の塩化物、アジドアニリン、アジドフェノール等が挙げられる。
【0063】
(化合物α2)
化合物α2においては、通常、未反応のアルコキシシリル基が残存している。すなわち、化合物α2も、通常、一分子内に、ベンゼン環と、アルコキシシリル基と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる1つ以上の基とを有する。
【0064】
化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2は、化合物α1に由来する構造単位Aを有する。化合物α2は、構造が化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物と同一であれば、他の合成方法により得られたものであってもよい。化合物α2は、シルセスキオキサン化合物であることが好ましい。化合物α2は、アルコキシシリル基及びヒドロキシシリル基の少なくとも一方を有することが好ましく、ヒドロキシシリル基を有することがより好ましい。
【0065】
構造単位Aとしては、下記式(4)で表される構造単位が挙げられる。下記式(4)で表される構造単位は、mが3である式(1)で表される化合物α1に由来する構造単位である。
【0066】
【0067】
式(4)中、R1、R2、X1、Y1及びZ1は、式(1)中のR1、R2、X1、Y1及びZ1とそれぞれ同義である。aは、0から2の整数である。
【0068】
式(4)中のR1、R2、X1、Y1及びZ1の具体例は、式(1)中のR1、R2、X1、Y1及びZ1の具体例と同様である。式(4)中のR1は、反応性等の観点からはヒドロキシ基又はアルコキシ基であることが好ましく、ヒドロキシ基であることがより好ましい。aは、1が好ましい。
【0069】
化合物α2における全構造単位に対する構造単位Aの含有量の下限は、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限は、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましい。
【0070】
化合物α2は、アミノ基(-NH2)を含む構造単位Bを有することが好ましい。化合物α2が構造単位Bを有する場合、化合物α2の水溶性が向上するなどの利点がある。構造単位Bを与える加水分解性シラン化合物としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0071】
化合物α2における全構造単位に対する構造単位Bの含有量の下限は、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限は、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましい。
【0072】
化合物α2は、構造単位A及び構造単位B以外の構造単位Cを有していてもよい。構造単位Cを与える加水分解性シラン化合物としては、下記式(C)で表される化合物が挙げられる。
【0073】
【0074】
式(C)中、Rdは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数6~15のアリール基、又は反応性基を有する有機基であり、複数のRdはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。Reは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~6のアシル基、又は炭素数6~15のアリール基であり、複数のReはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。xは0~3の整数を表す。また、これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基はいずれも無置換体及び置換体のどちらでもよく、特性に応じて選択できる。
【0075】
Rd及びReで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-デシル基、トリフルオロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-グリシドキシプロピル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピル基、3-メルカプトプロピル基、3-イソシアネートプロピル基等が挙げられる。Rdで表されるアルケニル基の具体例としては、ビニル基、3-アクリロキシプロピル基、3-メタクリロキシプロピル基等が挙げられる。Rd及びReで表されるアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、p-ヒドロキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、1-(p-ヒドロキシフェニル)エチル基、2-(p-ヒドロキシフェニル)エチル基、4-ヒドロキシ-5-(p-ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル基、ナフチル基等が挙げられる。Rdで表される反応性基を有する有機基としては、イソシアネート基、イソシアヌレート構造とアルコキシシリル基とを有する基等が挙げられる。Rdで表される反応性基を有する有機基の炭素数としては、1以上40以下が好ましい。Reで表されるアシル基の具体例としては、アセチル基が挙げられる。
【0076】
式(C)において、x=0の場合は4官能性シラン、x=1の場合は3官能性シラン、x=2の場合は2官能性シラン、x=3の場合は1官能性シランである。
【0077】
式(C)で表される加水分解性シラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシランなどの4官能性シラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn-ブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p-ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、p-メトキシフェニルトリメトキシシラン、1-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシ-5-(p-ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、1-ナフチルトリメトキシシラン、2-ナフチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸などの3官能性シラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn-ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシランなどの2官能性シラン、トリメチルメトキシシラン、トリn-ブチルエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシランなどの1官能性シランが挙げられる。
【0078】
また、式(C)で表される加水分解性シラン化合物には、1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート等、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を5個以上有する化合物も含まれる。
【0079】
加水分解性シラン化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
化合物α2の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、好ましくはGPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィ)で測定されるポリスチレン換算で1000~100000、さらに好ましくは2000~50000である。
【0081】
(化合物α2の合成方法)
化合物α2は、(i)化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得る方法、(ii)加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物であって、構造単位Bを有する化合物に対して、「アミノ基と結合反応可能な反応性基と、ベンゼン環と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる1つ以上の基とを有する化合物X」(アジド安息香酸、アジドスルホニル安息香酸、ジアゾメチル安息香酸等)を反応させて得る方法などが挙げられる。上記(ii)においては、構造単位B中のアミノ基が化合物Xと反応することにより、構造単位Aが形成される。
【0082】
化合物α2を得るための加水分解縮合には、一般的な方法を用いることができる。例えば、加水分解性シラン化合物に溶媒、水、必要に応じて触媒を添加し、30~150℃で0.5~100時間程度加熱撹拌する。なお、撹拌中、必要に応じて、蒸留によって加水分解副生物(メタノールなどのアルコール)及び縮合副生物(水)等の留去を行ってもよい。
【0083】
必要に応じて添加される触媒に特に制限はないが、酸触媒及び塩基触媒が好ましく用いられる。酸触媒の具体例としては塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂等が挙げられる。塩基触媒の具体例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノ基を有するアルコキシシラン、イオン交換樹脂等が挙げられる。触媒の添加量は、加水分解性シラン化合物100質量部に対して0.01~10質量部が好ましい。
【0084】
化合物α2を含む溶液の貯蔵安定性の観点から、加水分解縮合後の溶液には触媒が含まれないことが好ましく、必要に応じて触媒の除去を行うことができる。除去方法としては特に制限は無いが、好ましくは水洗浄及び/又はイオン交換樹脂の処理が挙げられる。水洗浄とは、溶液を適当な疎水性溶剤で希釈した後、水で数回洗浄して得られた有機層をエバポレーターで濃縮する方法である。イオン交換樹脂での処理とは、溶液を適当なイオン交換樹脂に接触させる方法である。
【0085】
加水分解縮合の反応に用いる溶媒は特に制限はないが、好ましくはアルコール性水酸基を有する化合物が用いられる。アルコール性水酸基を有する化合物は特に制限されないが、好ましくは大気圧下の沸点が110~250℃である化合物である。
【0086】
アルコール性水酸基を有する化合物の具体例としては、アセトール、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、5-ヒドロキシ-2-ペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン(ジアセトンアルコール)、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールなどが挙げられる。なお、これらのアルコール性水酸基を有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0087】
また、溶媒としては、アルコール性水酸基を有する化合物と共にその他の溶媒を用いてもよい。その他の溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-1-ブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシ-1-ブチルアセテート、アセト酢酸エチルなどのエステル類、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn-ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、などのエーテル類、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、炭酸プロピレン、N-メチルピロリドン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンなどが挙げられる。
【0088】
(化合物αの具体例)
化合物αは、より具体的には下記式(15)、(16)、(17)(18a)、(18b)、(18c)又は(19)で表される化合物を挙げることができる。
【0089】
【0090】
【0091】
式(19)で表される化合物は、式(19)中に示された3種類の構造単位が、それぞれl個、m個、n個結合して構成されるシルセスキオキサン化合物であり、Xはアジド基であり、lは0以上の任意の整数、mは1以上の任意の整数、nは0以上の任意の整数である。Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基又は-O-である。Rfは、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数6~15のアリール基、又は反応性基を有する有機基であり、複数のRfはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基はいずれも無置換体及び置換体のどちらでもよく、特性に応じて選択できる。式(19)で表される化合物(「IMB-4KP」)は、例えば、l:m:n=1:1:0の場合には水溶性である。一般に、この化合物は、比l/(m+n)の値が0に近い場合(例えば、0.2未満又は0.1未満)を除いて水溶性である。すなわち、比l/(m+n)の値の下限は、水溶性の観点から、0.2が好ましく、0.5がより好ましく、1がさらに好ましい。比l/(m+n)の値の上限は、5が好ましく、2がより好ましい。
【0092】
第1の化合物α層14a及び第2の化合物α層14bには、化合物α以外の他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、化合物αを合成したときの未反応物、副反応生成物等が挙げられる。但し、第1の化合物α層14a及び第2の化合物α層14bにおける化合物αの含有量の下限としては、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。このように、第1の化合物α層14a及び第2の化合物α層14bにおける化合物αの含有割合が高いことで、層間の接合性(結合性)をより高めることができる。
【0093】
(他の実施形態)
図2に示す電磁波シールド積層体20は、シールド層22が銅層22a(銅を含む層)と銀層22b(銀を含む層)とを有する2層構造である形態の電磁波シールド積層体である。電磁波シールド積層体20は、シールド層22が2層構造であること以外は
図1の電磁波シールド積層体10と同様であるので、他の構成部材は
図1の電磁波シールド積層体10と同じ番号を付して説明を省略する。
【0094】
2層構造のシールド層22において、銅層22aは接着剤層11側に配置されている。銅層22aにおける銅の含有量としては、90質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましい。銅層22aは、銅合金から形成された層であってもよく、金属以外の成分を含んでいてもよい。
【0095】
銅層22aは、例えば、銅をめっきすることにより効果的に形成することができる。銅層22aの平均厚さの下限としては、0.1μmが好ましく、0.4μmがより好ましい。一方、この平均厚さの上限としては、10μmが好ましく、4μmがより好ましい。
【0096】
2層構造のシールド層22において、銀層22bは絶縁層13側に配置されている。銀層22aにおける銀の含有量としては、90質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましい。銀層22aは、銀合金から形成された層であってもよく、金属以外の成分を含んでいてもよい。
【0097】
銀層22bは、例えば、銀ペーストの塗布等により形成することができる。すなわち、銀層22bは、銀粒子を含んでいることが好ましい。銀層22bに含まれる銀粒子、又は銀層22bを銀ペーストにより形成するときに銀ペーストに含まれる銀粒子の形状としては、球状、フレーク状、樹枝状、針状、繊維状等、特に限定されない。また、銀粒子の平均粒径の下限としては、1nmが好ましく、10nmがより好ましい。一方、この平均粒径の上限としては、100nmが好ましく、50nmがより好ましい。このような平均粒径の銀粒子を用いることで、均質性の高い銀層22bを形成することなどができる。
【0098】
銀層22aの平均厚さとしては、5nm以上500nm以下が好ましい。
【0099】
本発明の電磁波シールド積層体は、接着剤層を有していなくてもよい。すなわち、シールド層及び絶縁層を備え、上記シールド層と上記絶縁層との間は化合物αを介して接合されている電磁波シールド積層体も、本発明の一形態である。このような形態の電磁波シールド積層体におけるシールド層、絶縁層及び化合物αの具体的形態及び好適形態は、上記した電磁波シールド積層体10及び電磁波シールド積層体20におけるシールド層、絶縁層及び化合物αと同様である。本形態の電磁波シールド積層体も、層間剥離が生じ難く、十分なシールド性能が発揮でき、特に半導体パッケージに好適に適用される。例えば、半導体パッケージにおける封止材等が絶縁層に相当し、この絶縁層に化合物αを介してシールド層が設けられることにより、電磁波シールド積層体が形成される。このように、絶縁層等は薄膜状の形状でなくてもよい。
【0100】
(他の構成)
本発明の一実施形態に係る電磁波シールド積層体は、接着剤層、シールド層、絶縁層及び化合物α層以外の他の層を有していてもよい。例えば、絶縁層のシールド層側の面に、アンカーコート層が設けられていてもよい。絶縁層以外の層の表面にアンカーコート層が設けられていてもよい。アンカーコート層の材料としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0101】
また、本発明の一実施形態に係る電磁波シールド積層体は、絶縁層におけるシールド層とは反対側の面に支持体フィルムが積層されていてもよく、接着剤層におけるシールド層とは反対側の面に剥離性フィルムが積層されていてもよい。電磁波シールド積層体が、支持体フィルム及び剥離性フィルムの少なくとも一方を有している場合、当該電磁波シールド積層体の輸送、及び当該電磁波シールド積層体を用いたシールドプリント配線板等を製造する際の作業において、当該電磁波シールド積層体を扱いやすくなる。なお、シールドプリント配線板等に当該電磁波シールド積層体を配置する際には、このような支持体フィルム及び剥離性フィルムは剥がされることになる。
【0102】
(用途等)
本発明の一実施形態に係る電磁波シールド積層体は、KEC法で測定した200MHzにおける電磁波シールド特性が、85dB以上であることが好ましい。このような電磁波シールド積層体は、十分に高いシールド性能を有する。
【0103】
本発明の一実施形態に係る電磁波シールド積層体は、電磁波を遮断する目的であればどのような用途で用いてもよい。当該電磁波シールド積層体は、電磁波シールドフィルムであってもよい。当該電磁波シールド積層体は、プリント配線板、特に、フレキシブルプリント配線板に用いることが好ましい。当該電磁波シールド積層体は、シールドプリント配線板を製造する際に層間剥離が生じ難く、耐折り曲げ性も十分に高い。そのため、当該電磁波シールド積層体は、フレキシブルプリント配線板に用いられ、繰り返し折り曲げられたとしても、破損しにくい。従って、当該電磁波シールド積層体は、フレキシブルプリント配線板用の電磁波シールド積層体として好適に用いることができる。また、本発明の一実施形態に係る電磁波シールド積層体は、半導体パッケージ用の電磁波シールド積層体としても好適である。
【0104】
本発明の一実施形態に係る電磁波シールド積層体は、周波数が0.01GHz以上10GHz以下の信号を伝送する信号伝達系に用いられることが好ましい。
【0105】
<電磁波シールド積層体の製造方法>
本発明の一実施形態に係る電磁波シールド積層体の製造方法は、シールド層と、接着剤層及び絶縁層の少なくとも一方とを、化合物αを介して接合する工程を備え、上記化合物αが、上記化合物α1及び上記化合物α2の少なくとも一方である。
【0106】
当該製造方法によれば、シールドプリント配線板を製造する際などに層間剥離が生じ難く、耐折り曲げ性も十分に高い電磁波シールド積層体を製造することができる。
【0107】
接着剤層、シールド層及び絶縁層をこの順に備える電磁波シールド積層体を製造する場合、絶縁層とシールド層とを接合する工程(工程1)及びシールド層と接着剤層とを接合する工程(工程2)を備え、2つの接合する工程(工程1及び工程2)のうちの少なくとも一方において、層間(絶縁層とシールド層との間、又はシールド層と接着剤層との間)は化合物αを介して接合される。当該製造方法における工程1と工程2との順は特に限定されず、どちらを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。但し、工程1及び工程2の順に行うことが好ましい。また、接着剤層及び絶縁層のうちの一方を有さない電磁波シールド積層体を製造する場合は、上記工程1及び工程2のうちの一方のみを行えばよい。
【0108】
(電磁波シールド積層体の製造方法:第一の形態)
接着剤層、シールド層及び絶縁層をこの順に備える電磁波シールド積層体の製造方法の具体的な第一の形態として、シールド層の一方の面に絶縁層を形成し、他方の面に接着剤層を形成する方法について説明する。本形態の製造方法は、シールド層の少なくとも一方の面に化合物αを設ける工程(工程A)、シールド層の一方の面に、絶縁層を設ける工程(工程B)、及びシールド層の他方の面に、接着剤層を設ける工程(工程C)を備えることが好ましい。本形態においては、工程Bが工程1(絶縁層とシールド層とを接合する工程)であり、工程Cが工程2(シールド層と接着剤層とを接合する工程)である。なお、通常、工程Aの後に、工程B及び工程Cを行う。但し、シールド層の一方の面に化合物αを設けずに絶縁層又は接着剤層を設ける場合は、工程B又は工程Cを工程Aより先に行ってもよい。工程Bと工程Cとの順は特に限定されないが、工程B及び工程Cの順に行うことが好ましい。
【0109】
(工程A)
シールド層の少なくとも一方の面に化合物αを設ける工程(工程A)においては、シールド層の少なくとも一方の面に化合物αを含む溶液をコーティングし、光照射及び加熱乾燥の少なくとも一方を行い、化合物αを化学的にシールド層表面に固定化する。本形態において、シールド層としては、金属箔等を用いることができる。本工程においては、シールド層の両面に化合物αを設けることが好ましい。
【0110】
化合物αを含む溶液は、溶媒を含む。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、セルソルブ、カルビトール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン等の脂肪族炭化水素、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、フタル酸メチル等のエステル、テトラヒドロフラン(THF)、エチルブチルエーテル、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエーテル、水等を用いることができる。また、加水分解縮合に用いられる溶媒として例示した溶媒も用いることができる。これらの中でも、アルコール、エーテル及び水が好ましい。溶媒は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0111】
化合物αを含む溶液における化合物αの濃度としては、0.05質量%以上5質量%以下が好ましい。化合物αの濃度を上記範囲とすることで、適度な厚さの化合物αの層を効果的に形成することなどができるため、層間の結合性(接着性)を高めることができる。
【0112】
化合物αを含む溶液は、化合物α及び溶媒以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、界面活性剤等を挙げることができる。但し、当該溶液における全固形分(溶媒以外の全成分)に対する化合物αの含有量としては、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。当該溶液における全固形分に対する化合物αの含有量は100質量%であってもよい。
【0113】
化合物αを含む溶液をコーティングする方法としては、従来公知のコーティング方法、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。化合物αを含む溶液をコーティングしたときの塗膜の厚さ(ウェット厚さ)としては、例えば1μm以上100μm以下が好ましい。
【0114】
化合物αを含む溶液をコーティングした後の加熱乾燥条件としては、例えば80℃以上120℃以下、1分以上30分以下が好ましい。また、光照射は、例えば230nm以上300nmの波長領域を含む紫外線を照射することが好ましい。
【0115】
(工程B)
絶縁層を設ける工程(工程B)においては、シールド層の一方の面に、絶縁層形成用材料をコーティングし、硬化させて絶縁層を形成する。このシールド層の一方の面には、化合物α(化合物α層)が設けられていることが好ましい。絶縁層形成用材料をコーティングする方法としては、工程Aにおいて化合物αを含む溶液をコーティングする方法として例示した方法が挙げられる。絶縁層形成用材料を硬化させる方法としては、絶縁層形成用材料の種類に応じ、従来公知の種々の方法を採用することができる。
【0116】
(工程C)
接着剤層を設ける工程(工程C)においては、シールド層の他方の面に、接着剤層形成用材料をコーティングして接着剤層を形成する。このシールド層の他方の面には、化合物α(化合物α層)が設けられていることが好ましい。接着剤層形成用材料をコーティングする方法としては、工程Aにおいて化合物αを含む溶液をコーティングする方法として例示した方法が挙げられる。
【0117】
(電磁波シールド積層体の製造方法:第二の形態)
接着剤層、シールド層及び絶縁層をこの順に備える電磁波シールド積層体の製造方法の具体的な第二の形態として、シールド層が銅層及び銀層の二層構造である電磁波シールド積層体の製造方法の例について説明する。本形態の製造方法は、絶縁層の一方の面に化合物αを設ける工程(工程i)、化合物αが設けられた絶縁層の表面に銀層を設ける工程(工程ii)、銀層の表面に銅層を設ける工程(工程iii)、銅層の表面に化合物αを設ける工程(工程iv)、及び化合物αが設けられた銅層の表面に接着剤層を設ける工程(工程v)を備えることが好ましい。本形態においては、工程ii及び工程iiiが工程1(絶縁層とシールド層とを接合する工程)であり、工程vが工程2(シールド層と接着剤層とを接合する工程)である。
【0118】
(工程i)
絶縁層の一方の面に化合物αを設ける工程(工程i)においては、絶縁層の一方の面に化合物αを含む溶液をコーティングし、光照射及び加熱乾燥の少なくとも一方を行い、化合物αを化学的に絶縁層表面に固定化する。本形態において、絶縁層としては、従来公知の方法により準備した樹脂フィルム等を用いることができる。工程iにおける化合物αを含む溶液、コーティングの方法、光照射及び加熱乾燥の具体な形態は、上記した工程Aと同様とすることができる。
【0119】
(工程ii)
化合物α(又は化合物α層)が設けられた絶縁層の表面に銀層を設ける工程(工程ii)においては、化合物αが設けられた絶縁層の表面に、例えば銀ペースト又は銀インクをめっき触媒として印刷する。銀ペーストを印刷する方法としては、グラビア印刷等の凹版印刷、フレキソ印刷等の凸版印刷による方法、スクリーン印刷による方法、オフセット印刷による方法、インクジェット印刷による方法等が挙げられる。銀ペースト又は銀インクは、通常、銀粒子及び分散媒を含み、その他に分散剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0120】
(工程iii)
銀層の表面に銅層を設ける工程(工程iii)においては、銀層の表面に、例えば銅めっきにより銅層を設ける。銅のめっき方法は、特に限定されず、従来の無電解めっき、電解めっき等により行うことができる。無電解めっきにより銅をめっきする場合、めっき液としては、硫酸銅と、還元剤と、水性媒体、有機溶剤等の溶媒とを含有するものを用いることが好ましい。電解めっき法により銅をめっきする場合、めっき液として硫酸銅と、硫酸と、水性媒体とを含有するものを用いることが好ましい。また、所望する銅層の厚さになるように、めっき処理時間、電流密度、めっき用添加剤の使用量等を制御することが好ましい。
【0121】
工程ii及び工程iiiにより、銅層及び銀層の二層構造のシールド層を形成することができる。
【0122】
(工程iv)
銅層の表面に化合物αを設ける工程(工程iv)においては、銅層の表面に化合物αを含む溶液をコーティングし、光照射及び加熱乾燥の少なくとも一方を行い、化合物αを化学的に銅層(シールド層)表面に固定化する。工程ivにおける化合物αを含む溶液、コーティングの方法、光照射及び加熱乾燥の具体な形態は、上記した工程Aと同様とすることができる。
【0123】
(工程v)
化合物α(又は化合物α層)が設けられた銅層の表面に接着剤層を設ける工程(工程v)においては、化合物αが設けられた銅層(シールド層)の表面に、接着剤層形成用材料をコーティングして接着剤層を形成する。接着剤層形成用材料をコーティングする方法としては、工程Aにおいて化合物αを含む溶液をコーティングする方法として例示した方法が挙げられる。
【0124】
<シールドプリント配線板>
本発明の一実施形態に係るシールドプリント配線板は、プリント配線板と電磁波シールド積層体とを備える。このシールドプリント配線板に備わる電磁波シールド積層体は、本発明の一実施形態に係る電磁波シールド積層体である。シールドプリント配線板に用いられる電磁波シールド積層体は、通常、接着剤層を備え、この接着剤層によりプリント配線板に接着されている。
【0125】
プリント配線板は、従来公知の構造のものであってよい。プリント配線板は、例えば、表面にプリント回路が形成されたベース部材(ベースフィルム等)と、上記プリント回路を覆うように上記ベース部材上に設けられた絶縁フィルムとを有する。プリント配線板は、フレキシブルプリント配線板あることが望ましい。本発明の一実施形態に係るシールドプリント配線板は、十分な耐折り曲げ性を有する電磁波シールド積層体を備える。そのため、当該シールドプリント配線板も十分な耐折り曲げ性を有する。
【0126】
<シールドプリント配線板の製造方法>
本発明の一実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法は、本発明の一実施形態に係る電磁波シールド積層体、又は本発明の一実施形態に係る電磁波シールド積層体の製造方法によって得られた電磁波シールド積層体をプリント配線板に接着させる工程を備える。シールドプリント配線板の製造方法に用いられる電磁波シールド積層体は、通常、接着剤層を備える。
【0127】
電磁波シールド積層体とプリント配線板とを接着させる方法としては、従来公知の方法により行うことができる。例えば、プリント配線板の表面に電磁波シールド積層体の接着剤層が接するように、プリント配線板と電磁波シールド積層体とを重ね合わせ、この状態で加熱プレスすることにより行うことができる。
【0128】
また、当該シールドプリント配線板の製造方法は、接着工程後、はんだリフローによって、部品を実装する工程を備えていてもよい。
【0129】
当該シールドプリント配線板の製造方法によれば、加熱プレス、はんだリフロー等によって、電磁波シールド積層体の層間に揮発成分が溜まった場合も、高い層間の接合状態が維持され、層間剥離が生じ難い。また、当該製造方法により得られるシールドプリント配線板は、耐折り曲げ性も十分に高い。
【0130】
<半導体パッケージ>
本発明の一実施形態に係る半導体パッケージは、本発明の一実施形態に係る電磁波シールド積層体を備える。例えば、半導体パッケージの絶縁層(封止材等)上に化合物αを設け、次いで金属ナノインクをスクリーン印刷、インクジェット法等により塗布することで、部分的にシールド層を形成することができる。金属ナノインクの中でも、特に銀ナノ粒子含有インクを用いることで、密着性、導電性、電磁波シールド性能等に優れたシールド層を形成できる。従って、本発明の一実施形態に係る半導体パッケージによれば、半導体パッケージの高機能化を図ることができる。
【0131】
<電子機器>
本発明の一実施形態に係る電子機器は、本発明の一実施形態に係るシールドプリント配線板又は本発明の一実施形態に係る半導体パッケージを備える。本発明の一実施形態に係るシールドプリント配線板は、層間が強く接合しており、十分な耐折り曲げ性を有する。このため、当該シールドプリント配線板は、折り曲げられた状態で電子機器に組み込まれた場合も、破損等が生じ難い。従って、本発明の一実施形態に係る電子機器は、シールドプリント配線板を配置するための空間を狭くすることができる。そのため、当該電子機器は、薄型化、小型化等を図ることができる。また、本発明の一実施形態に係る半導体パッケージは、密着性高くシールド層が形成されており、このような半導体パッケージを備える電子機器は、高機能化を図ることができる。
【0132】
<その他の実施形態>
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
【0133】
例えば、本発明の電磁波シールド積層体が接着剤層、シールド層及び絶縁層をこの順に備える形態の場合、接着剤層とシールド層との間、及びシールド層と絶縁層との間の一方は、化合物αを介して接合されていなくてもよい。このような形態としては、他の化合物を介して接合されている形態、化合物α等を介さず、直接接合されている形態などが挙げられる。
【実施例】
【0134】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0135】
[調製例1]化合物α溶液1の調製
5.5gの4-アジド安息香酸、400gのTHF(テトラヒドロフラン)、及び74gの3-アミノプロピルトリエトキシシランを2Lフラスコに秤取した。攪拌しながら、50gのTHFに溶解した5.4gの1,1-カルボニルイミダゾールを逐次添加し、24時間攪拌を続け、反応させた。反応終了後、THFをロータリーエバポレーターで留去し、上記式(15)で表されるN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミド(IMB-4K)を含む、12gの反応混合物Aを得た。1gの反応混合物Aに、500gの3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールを加えて化合物α溶液1を得た。
【0136】
[調製例2]化合物α溶液2の調製
10gの反応混合物A、860gの3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、27gの水、及び3.3gの3-アミノプロピルトリエトキシシランを2Lフラスコに秤取し、40℃で24時間攪拌し、反応混合物Bを得た。50gの反応混合物Bと450gの3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールとを混合し、化合物α溶液2を得た。
【0137】
[調製例3]化合物α溶液3の調製
3.3gの3-アミノプロピルトリエトキシシランを9.2gの1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレートに替えたこと以外は調製例2と同様の操作を行い、化合物α溶液3を作製した。
【0138】
[調製例4]銀ペーストの調製
エタノール35質量部とイオン交換水65質量部との混合分散媒に、分散剤としてポリエチレンイミン化合物を用いて平均粒子径30nmの銀粒子を分散させることにより、銀濃度が15質量%の銀ペーストを得た。
【0139】
[実施例1]電磁波シールド積層体の製造
(工程i)
エポキシ樹脂から形成された平均厚さが5μmの絶縁層(エポキシ樹脂フィルム)を準備した。この絶縁層の一方の面に、調製例1で得られた化合物α溶液1をバーコーター(ROD No.#10;ウェット厚さ:22.9μm)で塗布し、100℃で10分間加熱乾燥を行った。
【0140】
(工程ii)
次いで、化合物αが設けられた絶縁層の表面に、調製例4で得られた銀ペーストをスクリーン印刷し、120℃で2時間焼成して平均厚さ100nmの銀層を設けた。
【0141】
(工程iii)
次いで、化合物αを介して銀層が設けられた絶縁層を、無電解銅めっき液(奥野製薬株式会社製「ARGカッパー」、pH12.5)中に55℃で20分間浸漬し、銀層の表面に無電解銅めっき膜(平均厚さ0.5μm)を設けた。次いで、上記で得られた無電解銅めっき膜の表面をカソードに設置し、含リン銅をアノードに設置し、硫酸銅を含む電気めっき液を用いて電流密度2.5A/dm2で30分間電気めっきを行った。これにより、銀層の表面に、無電解銅めっき膜を含めた合計の平均厚さが1μmの銅層(銅めっき層)を設けた。電気めっき液としては、硫酸銅70g/リットル、硫酸200g/リットル、塩素イオン50mg/リットル、トップルチナSF(奥野製薬工業株式会社製の光沢剤)5g/リットルの溶液を用いた。
【0142】
(工程iv)
次いで、銅層の表面に、調製例1で得られた化合物α溶液1をバーコーター(ROD No.#10;ウェット厚さ:22.9μm)で塗布し、100℃で10分間加熱乾燥を行った。
【0143】
(工程v)
次いで、化合物αが設けられた銅層の表面に、平均厚さが15μmとなるように、リン含有エポキシ樹脂80質量部に、AgコートCu粉末を20質量部添加した接着剤形成用材料(導電性接着剤)をコーティングし、接着剤層を設けた。なお、コーティング方法としては、リップコート方式を用いた。以上の工程により、実施例1の電磁波シールド積層体を得た。
【0144】
[実施例2、3]
工程i及び工程ivにおいて、化合物α溶液1に替えて表1に記載の各化合物α溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2、3の各電磁波シールド積層体を得た。
【0145】
[比較例1]
工程i及び工程ivを実施しなかった、すなわち、工程iiにおいて絶縁層の表面に直接銀層を設け、工程vにおいて銅層の表面に直接接着剤層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の電磁波シールド積層体を得た。
【0146】
[評価]
(層間剥離)
以下の方法により、各電磁波シールド積層体の層間剥離の評価を行った。まず、電磁波シールド積層体を熱プレスによりプリント配線板上に貼り付け、シールドプリント配線板を得た。次いで、このシールドプリント配線板を、23℃、63%RHのクリーンルーム内に7日間放置した後、リフロー時の温度条件に30秒間曝して層間剥離の有無を評価した。なお、リフロー時の温度条件としては、鉛フリーハンダを想定し、最高265℃の温度プロファイルを設定した。
層間剥離が生じていないものを「A」、層間剥離が生じたものを「B」として評価した。評価結果を表1に示す。
【0147】
(耐折り曲げ性)
以下の方法により、各電磁波シールド積層体の耐折り曲げ性を評価した。電磁波シールド積層体を熱プレスにより平均厚さ50μmのポリイミドフィルムの両面に貼り付け、縦130mm、横15mmの大きさにカットして試験片とした。この試験片について、MIT耐折疲労試験機(株式会社安田精機製作所製、No.307 MIT形耐折度試験機)を用い、JIS P8115:2001及びJIS C 6471:1995に規定される方法に基づき耐折り曲げ性(耐折性)を測定した。試験条件は、以下の通りとした。
折曲げクランプ先端R:0.38mm
折曲げ角度 :±135°
折曲げ速度 :175cpm
荷重 :500gf
検出方法 :内蔵電通装置にて、電磁波シールド積層体の断線を感知
折り曲げ回数が600回で断線が発生しないものを「A」、折り曲げ回数が600回未満で断線が生じたものを「B」として評価した。評価結果を表1に示す。
【0148】
(電磁波シールド特性)
以下の方法により、各電磁波シールド積層体の電磁波シールド特性を評価した。電磁波シールド積層体を15cm四方に裁断し、一般社団法人KEC関西電子工業振興センターで開発された電磁波シールド効果測定装置を用い、温度25℃、相対湿度30~50%の条件で、200MHzにおける電磁波シールド特性の測定を行った。
KEC法で測定した200MHzにおける電磁波シールド特性が85dB以上であるものを「A」、85dB未満であるものを「B」として評価した。評価結果を表1に示す。
【0149】
【0150】
表1に示されるように、接着剤層とシールド層との間、及びシールド層と絶縁層との間が所定の化合物αを介して接合された実施例1~3の各電磁波シールド積層体は、加熱される工程を経ても層間剥離が生じ難く、耐折り曲げ性も十分に高く、電磁波シールド特性も良好であった。
【0151】
[参考例]
<化合物αの合成>
合成物の同定には、(株)島津製作所製のフーリエ変換赤外分光光度計IRTracer-100、日本電子(株)製の核磁気共鳴スペクトル装置 NMR spectrometer Z、及び(株)島津製作所製のガスクロマトグラフ質量分析計 GCMS-QP2020 NXを用いた。
【0152】
(1)4-アジド安息香酸クロリドの合成(原料物質の製造)
【化8】
塩化メチレン(CH
2Cl
2)30mLとDMF(N,N-ジメチルホルムアミドC
3H
7NO)0.3mLとの混合溶媒に、4-アジド安息香酸(N
3C
6H
4COOH)2.6gを溶解させた。窒素ガスの雰囲気下、撹拌しながら、塩化メチレン20mLに溶かした塩化チオニル(SOCl
2)7.3gを、室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2hr撹拌を続けた。反応終了後、塩化メチレンを含む低沸点物を留去し、4-アジド安息香酸クロリド(N
3C
6H
4COCl)を含む黄色油状物を得た。この油状物は、更に精製することなく、直接に次の反応に供した。
【0153】
(2)N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミドの合成(IMB-4K)の合成
【化9】
【0154】
4-アジド安息香酸クロリド(N3C6H4COCl)1.8gをTHF(テトラヒドロフラン)15mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、3-トリエトキシシリルプロピルアミン3.6g、及びTEA(トリエチルアミン)2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2hr撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率66%(2.4g)で淡黄色オイルを得た。
IR、NMR及びQCMSの各分析から、生成物が、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミドであることを確認した。
【0155】
(3)N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-3-アジドベンズアミド(IMB-3K)の合成
【化10】
【0156】
3-アジド安息香酸クロリド(N3C6H4COCl)1.8gをTHF15mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、3-トリエトキシシリルプロピルアミン(H2N(CH2)2Si(OC2H5)3)3.6g、及びTEA2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2hr撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率62%(2.2g)で淡黄色オイルを得た。スペクトル等から、生成物はN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-3-アジドベンズアミドであることを確認した。
【0157】
(4)N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミド(IMB-4KB)の合成
【化11】
【0158】
4-アジド安息香酸クロリド(N3C6H4COCl)1.8gをTHF15mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン(HN((CH2)3Si(OC2H5)3)2)6g、及びTEA2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2hr撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率61%で淡黄色オイルを得た。スペクトル等から、生成物は、N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミドであることを確認した。
【0159】
(5)N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-3-アジドベンズアミド(IMB-3KB)の合成
【化12】
【0160】
3-アジド安息香酸クロリド(N3C6H4COCl)1.8gをTHF15mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン(HN((CH2)3Si(OC2H5)3)2)6g、及びTEA2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2hr撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率62%で淡黄色オイルを得た。スペクトル等から、生成物は、N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-3-アジドベンズアミドであることを確認した。
【0161】
(6)N,N’-((ジエトキシシランジイル)ビス(3-プロピル-3,1-ジイル)ビス(4-アジドベンズアミド)の合成
【化13】
【0162】
4-アジド安息香酸クロリド(N3C6H4COCl)2.8gをTHF30mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、ビス(3-アミノプロピル)ジエトキシシラン(2.3mL)と、TEA2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。室温で一晩攪拌した。反応を完結させるためさらに2hr撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率50%で淡黄色オイルを得た。スペクトルから、生成物は、N,N’-((ジエトキシシランジイル)ビス(3-プロピル-3,1-ジイル)ビス(4-アジドベンズアミド)であることを確認した。
【0163】
(7)上記式(19)で表されるシルセスキオキサン化合物(IMB-4KP)の製造
3-アジド安息香酸クロリド(N3C6H4COCl)をTHFに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、3-アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解縮合物である原料オリゴマー(米国Gelest社製)とTEAをTHFに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物を精製して目的物を得た。この目的物が、式(19)で表されるシルセスキオキサン化合物であった。スペクトルから、生成物においては、式(19)におけるlとmとnとが、l:m:n=1:1:0であることを確認した。
【0164】
<1.各種樹脂基材に対する無電解めっきにおけるIMB-Kの効果>
表2に示す各樹脂基材について、
図3に示すフロー図に従って、20μm厚の銅被覆を形成し、密着性を試験した。表2に示すように、脱脂洗浄工程S1においては、樹脂基材によりアセトン又はエタノールを用いた。前処理工程S2においては、樹脂基材によりコロナ放電処理又は酸素プラズマ処理(100mL/分、5分、200W)を施した。IMB(化合物α)担持処理S3においては、IMB-4Kのエタノール溶液に30秒間浸漬した。後処理工程S4においては、試料にUV-LED照射器から被照射エネルギー200mJ/cm
2で紫外線を照射した。ステップS3とS4は2回反復した。IMB後熱処理工程S6においては、樹脂基材によって80℃、110℃又は125℃で10分間、保持した。無電解めっき処理工程S7及び電解めっき処理工程S8を経て、20μm厚の銅被覆を得た。めっきの残留応力を緩和するため、150℃で10分間保持するアニール処理を行った。無電解めっき後、電解めっき後、アニール後のそれぞれについて、各樹脂基板に形成された銅被覆の外観を観察した。また、各樹脂基材について銅被覆の剥離強度を測定した。縦型電動計測スタンドMX2-500N(株式会社イマダ製)にフォースゲージZTA-50Nを取り付け、90°剥離のピール強度試験機を構成した。剥離速度は50mm/分とした。各樹脂基材について3つのサンプルを作製して表面と裏面それぞれについて計測を行い、ピール強度の最大値と平均値について、それぞれ平均値を求めた。
【0165】
【0166】
これらの樹脂基材はいずれも、IMB担持処理なしでは無電解めっき銅被覆が形成されないか、形成されても銅被覆の密着強度が極めて弱い樹脂であるが、無電解めっき処理に先立ってIMB担持処理を行うことで、良好な外観と密着性を有する銅被覆が形成された。また、試料#9のフッ素系複合樹脂基材については、我々は従来、2,4-ジアジド-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジンを用いたIMB担持処理と無電解めっき処理を組み合わせたプロセスにより、最大ピール強度6.82N/cmを得ていたが、IMB-4Kを用いたIMB担持処理と無電解めっき処理により、それを大きく上回るピール強度が達成できることが分かった。
【0167】
<2.シクロオレフィンポリマー(COP)シートの無電解めっきにおける各種化合物αの効果>
COPシート(0.1mm厚、試料#41)について、
図3に示すフロー図に従って、20μm厚の銅被覆を形成し、密着性を試験した。脱脂洗浄工程S1においては、アセトンを用いた。前処理工程S2においては、酸素プラズマ処理(100mL/分、2分、200W)を施した。IMB担持処理S3においては、IMB-4Kのエタノール溶液に30秒間浸漬した。後処理工程S4においては、試料にUV-LED照射器から被照射エネルギー200mJ/cm
2で紫外線を照射した。次いで、125℃で15分の熱処理を行った。ステップS3とS4は反復して、計2回実施した。IMB後熱処理工程S6は実施しなかった。無電解めっき処理工程S7及び電解めっき処理工程S8を経て、20μm厚の銅被覆を得た。無電解めっき処理工程S7においては、110℃で60分のアニール工程S75を実施した。電解めっき後、銅被覆の剥離強度を測定した。各試料について3つのサンプルを作製してそれぞれについて計測を行い、ピール強度の平均値について、平均値を求めた。ピール強度は、6.09N/cmであった。
【0168】
試料#41と同じ材質と厚みのCOPシート(試料#42~#45)について、IMB担持処理S3で用いる化合物αの種類、及び後処理工程S4で熱処理のみを行うのか(「H」と表す)、或いは、紫外線照射処理と熱処理との両方を行うのか(「UV+H」と表す)、という点を除いて、試料#41と同様のプロセスで20μm厚の銅被覆を形成し、ピール強度を求めた。その結果を以下に示す。なお、後処理工程S4における紫外線照射の条件は、試料#41と同じであり、後処理工程S4における熱処理の条件は、125℃で15分であった。
試料 化合物α 後処理 ピール強度(N/cm)
#41 IMB-4K UV+H 6.09
#42 IMB-3K UV+H 4.78
#43 IMB-3KB UV+H 4.23
#44 IMB-4K H 4.92
#45 IMB-3KB H 4.91
【0169】
<3.シート状の物質どうしを熱圧着してなる結合体の各種化合物αの効果>
図4に示されるフロー図に沿って、金属箔を熱圧着したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート(試料#110)を作製して、ピール強度を調べた。PTFEシートは、日東電工製(脱フッ素化処理済、厚み0.18mm)を用いた。金属箔としては、18μm厚の圧延銅箔を用いた。PTFEシートに対する表面処理工程Sstは、
図3の表面処理工程Sstに沿って行ったが、脱脂洗浄工程S1及び前処理工程S2を実施することなく、IMB担持処理工程S3において、化合物IMB-4Kの1質量%エタノール溶液をwet厚20μmで塗布した。更に、後処理工程S4において、被照射エネルギー100mJ/cm
2の紫外線照射を行った。IMB後熱処理工程S6は実施しなかった。次いで、熱圧着処理工程Shpにおいては、プレス温度180℃、プレス圧8MPa、プレス時間10分で、PTFEシートの表面に圧延銅箔を熱圧着した。自然冷却後、剥離強度試験を行い、8.0N/cmのピール強度を得た。
【0170】
熱圧着される2つの物質とIBM担持処理工程で用いられる化合物αの種類以外を試料#110と同様にして、2つの物質の熱圧着による結合体を形成して、剥離強度試験を行った。その結果を以下に示す。各物質の厚みは20μm又は18μmである。また、IMB-4KPの溶媒は水で、他の化合物αの溶媒はエタノールである。
試料 物質1 物質2 化合物α ピール強度(N/cm)
#110 PTFE Cu IMB-4K 8.0
#111 PTFE Cu IMB-3K 7.8
#112 PTFE Cu IMB-4KB 8.0
#113 PTFE Al IMB-4KP 6.5
#114 PI PI IMB-4K 7.2
#115 PI PTFE IMB-4K 8.9
#116 PI Cu IMB-4K 3.9
#117 PI Al IMB-4K 2.1
#118 PI Al なし 0.0
【0171】
上記参考例の結果から、一分子内に、ベンゼン環と、アルコキシシリル基と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる1つ以上の基とを有する化合物α1、及び上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2の少なくとも一方である化合物αを用いることで、金属と樹脂との間を強く接合できることがわかる。従って、このような化合物αを電磁波シールド積層体の層間の接合に用いた場合、実施例1等と同様に、シールドプリント配線板を製造する際などに層間剥離が生じ難く、耐折り曲げ性も十分に高い電磁波シールド積層体が得られることは明らかである。
【符号の説明】
【0172】
10、20 電磁波シールド積層体
11 接着剤層
12、22 シールド層
13 絶縁層
14a 第1の化合物α層
14b 第2の化合物α層
22a 銅層
22b 銀層