(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】室圧制御システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
F24F7/06 C
(21)【出願番号】P 2021061887
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093388
【氏名又は名称】鈴木 喜三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】松本 隼一
(72)【発明者】
【氏名】中澤 賢
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-046850(JP,A)
【文献】特開2009-058191(JP,A)
【文献】特開2019-027621(JP,A)
【文献】特開2015-052430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室圧条件の異なる複数の空調対象室に対して各空調対象室でそれぞれ決められた給気風量を定風量で送り、還気量を一定量少なくして正圧を形成する場合の室圧を制御するためのシステムであって、
各空調対象室には給気ダクトとフィルタ付の給気制気口と還気枝ダクトとが接続して設けられ、
目標室圧の高い室に設けられた還気枝ダクトとそれ以外の室に設けられた還気枝ダクトとを、空調還気のための還気主ダクトに接続する上流側で圧力調整ダクトで接続し、
当該圧力調整ダクト内に差圧ダンパを、高い圧の室の還気枝ダクト側から低い圧の室の還気枝ダクト側へ空気が流れるよう設けた、
目標室圧の高い室が3室以上ある場合、目標室圧の一番高い室に設けられた還気枝ダクトと、2番目に室圧の高い室に設けられた還気枝ダクトと、3番目に室圧の高い室に設けられた還気枝ダクトと、以降室圧が高い順におのおのの室に設けられた還気枝ダクトとを、空調還気のための還気主ダクトに接続する上流側で圧力調整ダクトで接続するにあたり、接続する2室の平均室圧が高い順に、還気枝ダクトの上流側で圧力調整ダクトを接続するようにしたことを特徴とする複数室を対象とする室圧制御システム。
【請求項2】
室圧条件の異なる複数の空調対象室に対して各空調対象室でそれぞれ決められた給気風量を定風量で送り、還気量を一定量少なくして正圧を形成する場合の室圧を制御するためのシステムであって、
各空調対象室には給気ダクトとフィルタ付の給気制気口と還気枝ダクトとが接続して設けられ、
目標室圧の高い室順に、目標室圧の高い室に設けられた還気枝ダクトと、次の室圧の高い室に設けられた還気枝ダクトとを、空調還気のための還気主ダクトに接続する上流側で圧力調整ダクトで接続し、
当該圧力調整ダクト内に差圧ダンパを、高い圧の室の還気枝ダクト側から低い圧の室の還気枝ダクト側へ空気が流れるよう設けた、
目標室圧の高い室が3室以上ある場合、目標室圧の一番高い室に設けられた還気枝ダクトと、2番目に室圧の高い室に設けられた還気枝ダクトと、3番目に室圧の高い室に設けられた還気枝ダクトと、以降室圧が高い順におのおのの室に設けられた還気枝ダクトとを、空調還気のための還気主ダクトに接続する上流側で圧力調整ダクトで接続するにあたり、接続する2室の平均室圧が高い順に、還気枝ダクトの上流側で圧力調整ダクトを接続するようにしたことを特徴とする複数室を対象とする室圧制御システム。
【請求項3】
前記還気枝ダクト間に接続された圧力調整ダクトにチャンバを設け、当該チャンバ内に差圧ダンパを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の複数室を対象とする室圧制御システム。
【請求項4】
前記給気ダクトの給気制気口のフィルタ上流側、及び前記還気枝ダクトの圧力調整ダクトの上流側には、風量を微調整できるボリュームダンパ(風量調整ダンパ)を設けて、給気風量及び還気風量を調整することで室圧を微調整できることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の複数室を対象とする室圧制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品製造工場、再生医療等製品工場、再生医療の研究施設又は動物飼育施設などにおける微粒子汚染や微生物汚染を防止する度合いが異なる複数室を対象とする室圧制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記施設において、再生医療施設や実験動物飼育施設等におけるクリーンルームでは、清浄度のクラスが異なる室が複数配置されていることが多い。
そして前記クリーンルームでは、汚染を防止する目的で清浄度の低い室から高い室へ空気が清浄度順位を逆流して汚染することを抑制するため、隣り合う室の室圧に差を設けるようにしている。
図7は、複数の室が設置されたクリーンルームにおいて古くから用いられて来た差圧ダンパ方式を用いた空調システムのダクト系統図例であり、給気ファン2を備えた空調機1と還気(排気)ファン3とで、室圧条件の異なる3つの空調対象室A室(目標室圧45Pa)、B室(目標室圧30Pa)、C室(目標室圧15Pa)を、給気量と排気量と差圧ダンパの流量によって室圧制御している。
【0003】
給気ファン2からの主給気路7は、それぞれA、B室、C室に至る給気ダクト8、9、10へと分岐し、各給気ダクトにはそれぞれ定風量装置11、12、13、再熱ヒータ14、15、16、風量調整ダンパ17、18、19と高性能フィルタを備えた給気制気口20、21、22が接続されている。
A室、B室、C室を空調処理した還気は、それぞれ吸込口31、32、33から還気枝ダクト34、35、36を通じて主還気ダクト37へと合流する。
そしてまた、A室とB室を区切る室壁面に開けた開口に差圧ダンパ51が、B室とC室を区切る室壁面に開けた開口に差圧ダンパ52が設けられている。
【0004】
上記の制御システムでは、空調機1から供給された空調空気を、各定風量装置11,12,13によって各室に対し風量一定の分配を行い、風量の微調整のための風量調整ダンパ17,18,19を経由して給気制気口20,21,22から各室へ供給している。
【0005】
このような制御に関連し、例えば、密閉した複数の動物室を並列し、室間は順位を付けて余剰空気を流すよう該各動物室にそれぞれ差圧ダンパにより連絡する清浄廊下と汚染廊下とを併設した建造物に、空調機給気ファンにより外気を、清浄廊下を高い圧にして各動物室に中間圧として供給し、室間壁に設置する差圧ダンパにより室間を流れて汚染廊下へ流れ排気ファンにより排気する流れによって、室間差圧を実現する動物施設が開示されている(特公平2-49687号公報)。
【0006】
上記設備において、扉開閉時や局所排気のON・OFF動作などの急激な室圧変動に対応するために、単純な構造であり、かつ電子制御を必要とせずに機能することから、簡易的で有効な室圧制御手法である差圧の瞬時変動を吸収する差圧ダンパが壁面に設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、通常の差圧ダンパでは瞬時の差圧逆転において閉止はするものの、開口周辺での気流の乱れにより室圧の高いA室側にB室側の空気が本来の汚染防止の望ましい方向とは逆に流入する恐れがある。瞬時の差圧逆転があった場合、速やかに差圧ダンパが圧力により閉止するが、この時閉まる方向へ気流を押し込む動作となりかねないため高い室圧側に低い室圧側の空気を一部逆流させることが否定できないためである。
これを防ぐ手段として、室圧制御として電子的な制御で風量を変動させる技術があるが、室圧の瞬時変動への追従のため複雑なシステムを必要とするため費用が掛かる。
また、差圧ダンパは壁面開口での構造体となるため、陽圧側の室で粉や体毛(動物飼育の場合)などの可視物質が溜まりやすく、清掃上の問題となった。
さらに、作業者視点では、室圧変動に対応し開閉動作が見えることで視覚的に嫌がられる場合もあった。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、通常の差圧ダンパを用いて室圧の異なる複数室を制御する室圧制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を下記の手段により解決した。
〈1〉室圧条件の異なる複数の空調対象室に対して各空調対象室でそれぞれ決められた給気風量を定風量で送り、還気量を一定量少なくして正圧を形成する場合の室圧を制御するためのシステムであって、
各空調対象室には給気ダクトとフィルタ付の給気制気口と還気枝ダクトとが接続して設けられ、
目標室圧の高い室に設けられた還気枝ダクトとそれ以外の室に設けられた還気枝ダクトとを、空調還気のための還気主ダクトに接続する上流側で圧力調整ダクトで接続し、
当該圧力調整ダクト内に差圧ダンパを、高い圧の室の還気枝ダクト側から低い圧の室の還気枝ダクト側へ空気が流れるよう設けた、目標室圧の高い室が3室以上ある場合、目標室圧の一番高い室に設けられた還気枝ダクトと、2番目に室圧の高い室に設けられた還気枝ダクトと、3番目に室圧の高い室に設けられた還気枝ダクトと、以降室圧が高い順におのおのの室に設けられた還気枝ダクトとを、空調還気のための還気主ダクトに接続する上流側で圧力調整ダクトで接続するにあたり、接続する2室の平均室圧が高い順に、還気枝ダクトの上流側で圧力調整ダクトを接続するようにしたことを特徴とする複数室を対象とする室圧制御システム。
【0010】
〈2〉室圧条件の異なる複数の空調対象室に対して各空調対象室でそれぞれ決められた給気風量を定風量で送り、還気量を一定量少なくして正圧を形成する場合の室圧を制御するためのシステムであって、
各空調対象室には給気ダクトとフィルタ付の給気制気口と還気枝ダクトとが接続して設けられ、
目標室圧の高い室順に、目標室圧の高い室に設けられた還気枝ダクトと、次の室圧の高い室に設けられた還気枝ダクトとを、空調還気のための還気主ダクトに接続する上流側で圧力調整ダクトで接続し、
当該圧力調整ダクト内に差圧ダンパを、高い圧の室の還気枝ダクト側から低い圧の室の還気枝ダクト側へ空気が流れるよう設けた、目標室圧の高い室が3室以上ある場合、目標室圧の一番高い室に設けられた還気枝ダクトと、2番目に室圧の高い室に設けられた還気枝ダクトと、3番目に室圧の高い室に設けられた還気枝ダクトと、以降室圧が高い順におのおのの室に設けられた還気枝ダクトとを、空調還気のための還気主ダクトに接続する上流側で圧力調整ダクトで接続するにあたり、接続する2室の平均室圧が高い順に、還気枝ダクトの上流側で圧力調整ダクトを接続するようにしたことを特徴とする複数室を対象とする室圧制御システム。
〈3〉前記還気枝ダクト間に接続された圧力調整ダクトにチャンバを設け、当該チャンバ内に差圧ダンパを設けたことを特徴とする<1>または<2>に記載の複数室を対象とする室圧制御システム。
〈4〉前記給気ダクトの給気制気口のフィルタ上流側、及び前記還気枝ダクトの圧力調整ダクトの上流側には、風量を微調整できるボリュームダンパ(風量調整ダンパ)を設けて、給気風量及び還気風量を調整することで室圧を微調整できることを特徴とする<1>から<3>の何れか1に記載の複数室を対象とする室圧制御システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の複数室を対象とする室圧制御システムによって下記の効果が発揮される。
構成としては、通常の空調システムにおける還気ダクトの系統の上流部分に圧力調整ダクトを追加して、従来から広く用いられている差圧ダンパを圧力調整ダクトに収めるだけのためコスト削減ができる。
また、差圧を必要とする室間において、それぞれの還気枝ダクト間に差圧ダンパを設けることで、室内のコンタミネーションをもたらすことが無い室間差圧を保つことができる。
さらに、差圧ダンパの開閉動作は作業者に見えないため、作業場の妨害となることもない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のクリーンルームの室圧制御システムの構成系統図
【
図2】本発明のクリーンルームの室圧制御システムにおける差圧ダンパの設置状態を表す図
【
図3】従来の差圧ダンパによる他室間差圧順位保持と本発明の差圧ダンパによる他室間差圧順位保持の比較図
【
図4】本発明の差圧ダンパによる他室間差圧順位保持の実施例を表す図
【
図5】従来の差圧ダンパによる他室間差圧順位保持の平面図と本発明の差圧ダンパによる他室間差圧順位保持の平面図
【
図6】従来の差圧ダンパによる他室間差圧順位保持の平面図と本発明の差圧ダンパによる他室間差圧順位保持の平面図
【
図7】従来の差圧ダンパ方式を用いた空調システムの配管系統図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の複数室を対象とする室圧制御システム実施の形態を、従来の差圧ダンパ方式を用いた空調システムの構成図に基づいて対比して説明する。
図1は本発明のクリーンルームの室圧制御システムの構成系統図、
図2は本発明のクリーンルームの室圧制御システムにおける差圧ダンパの設置状態を表す図である。
図3は従来の差圧ダンパによる他室間差圧順位保持(A)と本発明の差圧ダンパによる他室間差圧順位保持(B)の比較図、
図4は本発明の差圧ダンパによる他室間差圧順位保持の実施例を表す図で、同図(A)は、A室に対し、隣接するB室、C室、D室との差圧を保持する場合、(B)は、A室>B室>C室>D室とカスケードでの差圧を保持する場合、
図5は、従来の差圧ダンパによる他室間差圧順位保持の平面図(A)と本発明の差圧ダンパによる他室間差圧順位保持の平面図で同図(B)で、A室に対し、隣接するB室、C室、D室との差圧を保持する場合、
図6は、従来の差圧ダンパによる他室間差圧順位保持の平面図(A)と本発明の差圧ダンパによる他室間差圧順位保持の平面図(B)で、A室>B室>C室>D室とカスケードでの差圧を保持する場合を示す図である。
【0014】
図1~6において、1は給気ファン2を備えた空調機、2は給気ファン、3は還気ファンで、
図1の場合は、空調機1と還気ファン3とで室圧条件の異なる3つの空調対象室A室4、B室5、C室6を、給気主ダクトと還気主ダクトと、一部還気ダクトとのつながった系統で室圧制御している。
7は給気ファン2からの給気主ダクト、8、9、10は給気ダクトであり、それぞれA室4、B室5、C室6に接続される。
11、12、13は定量風量装置、14、15、16は再熱ヒータ、17、18、19は風量調整ダンパ、20、21、22はそれぞれ高性能フィルタを備えた給気制気口であり、これらは、それぞれ前記給気ダクト8、9、10に接続されている。
31、32、33は、それぞれA室4、B室5、C室6に設けられた吸込口、34、35、36は、それぞれ吸込口31、32、33に接続された還気枝ダクトであり、A室4、B室5、C室6を空調処理した還気はそれぞれ吸込口31、32、33から還気ダクト34、35、36を通じて還気主ダクト37へと合流する。
【0015】
41は前記還気枝ダクト34と35とに接続された圧力調整ダクト、42は前記還気枝ダクト35と36とに接続された圧力調整ダクトであり、43は前記圧力調整ダクト41に接続されたチャンバ、44は前記圧力調整ダクト42に接続されたチャンバであり、チャンバ43内には差圧ダンパ51が、チャンバ44内には差圧ダンパ52がそれぞれ高い圧の室の還気枝ダクト側から低い圧の室の還気枝ダクト側へ空気が流れるよう設けられている(
図2参照)。
【0016】
図3に示す例により、従来の差圧ダンパによる2室間差圧順位保持(A)と本発明の差圧ダンパによる2室間差圧順位保持(B)を比較して説明する。
同図(A)の従来の差圧ダンパによる2室間差圧順位保持及び同図(B)の本発明の差圧ダンパによる2室間差圧順位保持において、何れもA室の室圧(30Pa)、B室の室圧(15Pa)とし、A室の室圧>B室の室圧とする。
同図(A)における[エアバランス(単位:CMH(m
3/h)]は、それぞれ次の通りとなる。
A室エア収支:インプット〔1〕1000=アウトプット〔2〕850+〔3〕150
B室エア収支:インプット〔4〕400+〔3〕150=アウトプット〔5〕550
このように、A室には〔1〕給気エアが1,000CMH給気され、〔2〕850CMHが還気エアとして排出され、〔3〕150CMHが差圧ダンパからB室に給気される。
【0017】
また、B室には〔4〕給気エアが400CMH給気され、A室から差圧ダンパを介して給気された〔3〕150CMHと一体となって〔5〕550CMHが還気エアとして排出される。
以上は定常状態の場合だが、この状態で、A室側の扉開閉で扉から空気が抜けてしまい、A室の室圧が下がるとA室とB室間の差圧どんどん小さくなり、A室の圧力がB室より低下してついには逆転する場合がある。このとき、差圧ダンパは差圧が小さくなった分、ダンパ開度が速やかに閉じていき、A室からB室への流出風量(〔3〕150CMH)は減る。
これによりA室の室圧は上がり、B室の室圧が下がることとなり、その後扉が閉鎖されたりして元の設定した差圧になるとダンパ開度がもとに戻って定常状態となる。
A室の室圧が上がった場合は、この逆に差圧ダンパ開度が大きくなることでA室からの流出風量(〔3〕150CMH)が増えることで室圧差が再度バランスする。
【0018】
同図(B)における[エアバランス(単位:CMH(m3/h)]は、それぞれ次の通りとなる。
A室エア収支:インプット〔1〕1000=アウトプット〔2〕1000
B室エア収支:インプット〔4〕400=アウトプット〔2〕400
ただし、A室からの還気ダクトからB室の還気ダクトへ〔3〕150移動するため還気枝ダクト系としては、前記(A)と同収支となる。ここで、還気系RAの還気枝ダクトの矢印の先は還気主ダクトが交わり還気ファンへと還気を流していくこととなる、還気枝ダクト間で圧力調整ダクトが還気主ダクトと並行に接続されるのである。
【0019】
このように従来の差圧ダンパ方式と全く同じ効果が得られる。
厳密な数値としては、差圧ダンパ設置までの吸込み器具、ダクト経路の圧損によるため、これまでのシステムとは異なるが、数Pa程度の差となるため、差圧順位(図では30Pa>15Pa)に影響することはないと考えられる。
【0020】
図4により、本発明の差圧ダンパによる多室間差圧順位保持の実施例を説明する。
同図(A)は、A室(室圧30Pa)に対し、隣接するB室(室圧15Pa)、C室(室圧15Pa)、D室(室圧15Pa)との差圧を保持する場合であり、A室に接続された還気枝ダクト(A室RA)と、B室に接続された還気枝ダクト(B室RA)、C室に接続された還気枝ダクト(C室RA)、D室に接続された還気枝ダクト(D室RA)とがそれぞれ個別に圧力調整ダクトで接続されている。
【0021】
同図(B)は、A室(室圧45Pa)>B室(室圧30Pa)>C室(室圧15Pa)>D(室圧0Pa)室とカスケードで差圧を保持する場合で、A室に接続された還気枝ダクト(A室RA)とB室に接続された還気枝ダクト(B室RA)が圧力調整ダクトで接続され、B室に接続された還気枝ダクト(B室RA)とC室に接続された還気枝ダクト(C室RA)が圧力調整ダクトで接続され、C室に接続された還気枝ダクト(C室RA)とD室に接続された還気枝ダクト(D室RA)とが圧力調整ダクトで接続されていて順番に圧力差を設けている。
ここで、目標室圧の高い室が3室以上ある場合、目標室圧の一番高い室に設けられた還気枝ダクト(A室RA)と、2番目に室圧の高い室に設けられた還気枝ダクト(B室RA)と、3番目に室圧の高い室に設けられた還気枝ダクト(C室RA)とを、矢印の先の還気主ダクトに接続する上流側で圧力調整ダクトで接続するにあたり、接続する2室の平均室圧が高い順に、還気枝ダクトの上流側で圧力調整ダクトを接続するようにする。
【0022】
図5及び
図6に基づいて、従来の差圧ダンパによる多室間差圧順位保持と本明の差圧ダンパによる多室間差圧順位保持の違いを説明する。
図5は、従来の差圧ダンパによる多室間差圧順位保持の平面図(A)と本発明の差圧ダンパによる多室間差圧順位保持の平面図で、同図(B)でA室に対し、隣接するB室、C室、D室との差圧を保持する場合、
図6は、従来の差圧ダンパによる他室間差圧順位保持の平面図(A)と本発明の差圧ダンパによる多室間差圧順位保持の平面図(B)で、A室>B室>C室>D室とカスケードでの差圧を保持する場合である。
【0023】
図5は、A室(室圧30Pa)にB室(室圧15Pa)、C室(室圧15Pa)、D室(室圧15Pa)が隣接している場合で、例としては医薬品製造施設の工程廊下(図中A室)、各製造工程室(B~D室)からなる。
同図(A)は、A室との隔壁に差圧ダンパが設置されている従来の他室間差圧順位保持である。
【0024】
同図(B)は、A室に接続された還気枝ダクト(A室RA)と、B室に接続された還気枝ダクト(B室RA)、C室に接続された還気枝ダクト(C室RA)、D室に接続された還気枝ダクト(D室RA)とがそれぞれ個別に圧力調整ダクトで接続されている。
同図(B)において、A室に接続された還気枝ダクト(A室RA)内の圧力を仮に25Pa、B室に接続された還気枝ダクト(B室RA)と、C室に接続された還気枝ダクト(C室RA)と、D室に接続された還気枝ダクト(D室RA)内の圧力を仮に10Paとすると、25-10Pa(差圧15Pa)となると差圧ダンパが作動する。
【0025】
図6は、従来の差圧ダンパによる多室間差圧順位保持の平面図(A)と本発明の差圧ダンパによる多室間差圧順位保持の平面図(B)で、A室>B室>C室>D室とカスケードでの差圧を保持する場合である。
また、
図6は、再生医療製品製造施設の細胞加工室(図中A室:室圧45Pa)、エアロック(B室:室圧30Pa)、着衣室(C室:室圧15Pa)、準備室(D室:室圧5Pa)が横並びに構成されている例である。
【0026】
同図(A)は、各室との隔壁面に差圧ダンパが設置されている。
同図(B)は、A室に接続された還気枝ダクト(A室RA)とB室に接続された還気枝ダクト(B室RA)とが圧力調整ダクトで接続され、B室に接続された還気枝ダクト(B室RA)とC室に接続された還気枝ダクト(C室RA)とが圧力調整ダクトで接続され、C室に接続された還気枝ダクト(C室RA)とD室に接続された還気枝ダクト(D室RA)とが圧力調整ダクトで接続されていて各ダクトと接続されたチャンバ内に差圧ダンパが設置されている。
【0027】
同図(B)において、A室に接続された還気枝ダクト(A室RA)内の圧力を仮に40Pa、とすると40-25Paで差圧ダンパが作動する。仮にB室に接続された還気枝ダクト(B室RA)とC室に接続された還気枝ダクト(C室RA)に連結された圧力調整ダクトにおいて、仮に25Paとすると25-10Paで差圧ダンパが作動し、C室に接続された還気枝ダクト(C室RA)とD室に接続された還気枝ダクト(D室RA)に連結された圧力調整ダクトにおいて、仮に10Paとすると10-0Paで差圧ダンパが作動する。
【0028】
以上の説明では、室の下部に吸込口を設け、当該吸込口に還気枝ダクトを設けて室圧の異なる室のそれぞれの還気枝ダクトの間に差圧ダンパを設置しているが、室の上部に吸込口を設け、当該吸込口に還気枝ダクトを設けている場合でも良い。この場合は、還気枝ダクトは天井内に設置しているので差圧ダンパも天井内に設置される。
【0029】
以上説明した構成に基づき、本発明による室圧制御システムでは、室の扉開閉に伴い室間の差圧が瞬時に乱れても還気枝ダクト内での差圧ダンパを通過する気流が室内に影響しないので、確実にコンタミを防ぐことができる。
また、空調機の起動・停止時においても複数の室間における室圧が瞬時逆転しても、確実にコンタミを防ぐことができる
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上詳細に説明したごとく、本発明の室圧制御システムは、差圧の異なる複数室を備える医薬品製造工場、再生医療等製品工場、再生医療の研究施設又は動物飼育施設などに使用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 空調機
2 給気ファン
3 還気ファン
7 給気主ダクト
8、9、10 給気ダクト
11、12、13 定風量装置
14、15、16 再熱ヒータ
17、18、19 風量調整ダンパ
20、21、22 給気制気口
31、32、33 吸込口
34、35、36 還気枝ダクト
37 還気主ダクト
41 42 圧力調整ダクト
43 44 チャンバ
51 52 差圧ダンパ