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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】乗物、鞍乗型車両、及び調整方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/068 20060101AFI20241009BHJP
   B62J 6/027 20200101ALI20241009BHJP
   B62J 45/42 20200101ALI20241009BHJP
【FI】
B60Q1/068 100
B62J6/027
B62J45/42
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021067411
(22)【出願日】2021-04-12
(65)【公開番号】P2022162491
(43)【公開日】2022-10-24
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】池田 真二
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-94945(JP,A)
【文献】特開2002-160578(JP,A)
【文献】特開2001-158390(JP,A)
【文献】特開2004-231115(JP,A)
【文献】特開平10-147272(JP,A)
【文献】特開2020-172210(JP,A)
【文献】特開2014-10987(JP,A)
【文献】中国実用新案第208687627(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/068
B62J 6/027
B62J 45/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整機構を備える第1装置と、
調整機構を備える第2装置と、
を備える乗物であって、
前記第1装置及び前記第2装置のうち何れかが、ライトの光源の向きを調整可能な照明装置であり、
開口が形成され、
共通の前記開口を介して外部からアクセスすることにより、前記第1装置が備える調整機構の操作、及び、前記第2装置が備える調整機構の操作が可能であり、
前記第1装置及び前記第2装置は、上下方向に並べて配置され、
前記開口は、前記第1装置及び前記第2装置よりも低い位置に配置され、
前記開口は下方に開放していることを特徴とする乗物。
【請求項2】
請求項に記載の乗物であって、
フレームを備え、
前記第1装置は、第2装置より上方に配置され、
前記第2装置は、前記フレームにステーを介して取り付けられ、
工具を案内する治具を前記ステーに対して位置決めするための位置決め機構を備えることを特徴とする乗物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乗物であって、
前記第1装置が備える調整機構と、前記第2装置が備える調整機構とが、乗物の側面視で、前後方向で異なる位置に配置されていることを特徴とする乗物。
【請求項4】
請求項に記載の乗物であって、
フレームを備え、
前記第1装置は、前記第2装置よりも上方に配置され、
前記第2装置は、前記フレームにステーを介して取り付けられ、
前記第1装置が備える調整機構が操作される場合、下側の前記開口から前記ステーを貫通するように工具が差し込まれることを特徴とする乗物。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の乗物であって、
前記開口に対して左斜め上又は右斜め上に工具を差し込むことで、前記第1装置が備える調整機構を操作可能に構成されていることを特徴とする乗物。
【請求項6】
請求項1からまでの何れか一項に記載の乗物であって、
前記第1装置が備える調整機構は、上下方向の第1軸を中心として向きを調整し、乗物幅方向の第2軸を中心として向きを調整することで、向きを3次元で調整可能な向き調整機構であることを特徴とする乗物。
【請求項7】
請求項に記載の乗物であって、
前記向き調整機構は、
前記第1軸を中心として向きを変化させるために操作される第1調整部材と、
前記第2軸を中心として向きを変化させるために操作される第2調整部材と、
を備え、
前記第2調整部材は、前記第1装置の幅方向中心線を挟んで前記第1調整部材と反対側に配置されることを特徴とする乗物。
【請求項8】
請求項1からまでの何れか一項に記載の乗物であって、
前記第1装置の調整機構は、調整を行うために操作される第1操作部材を備え、
前記第2装置の調整機構は、調整を行うために操作される第2操作部材を備え、
前記第1操作部材及び前記第2操作部材が、前記開口の内部の空間に配置されていることを特徴とする乗物。
【請求項9】
請求項1からまでの何れか一項に記載の乗物であって、
前記開口に差し込まれる工具を案内する治具を位置決めするための位置決め機構を備えることを特徴とする乗物。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載の乗物としての鞍乗型車両であって、
フェンダを備え、
前記第1装置はヘッドライト装置であり、
前記開口は、前記第1装置及び前記第2装置よりも低く、かつ、前記フェンダよりも高い位置に配置され、
前記開口の少なくとも一部が前記フェンダと上下方向で対面していることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項11】
調整機構を備える第1装置と、
調整機構を備える第2装置と、
を備える乗物における調整方法であって、
前記第1装置及び前記第2装置のうち何れかが、ライトの光源の向きを調整可能な照明装置であり、
前記乗物には開口が形成され、
共通の前記開口を介して外部からアクセスすることにより、前記第1装置が備える調整機構の操作、及び、前記第2装置が備える調整機構の操作を行い、
前記第1装置及び前記第2装置は、上下方向に並べて配置され、
前記開口は、前記第1装置及び前記第2装置よりも低い位置に配置され、
前記開口は下方に開放していることを特徴とする調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置を含む複数の装置において調整が可能な乗物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、前方に光を照射するヘッドライトと、前方を探知するレーダ装置と、を備える自動二輪車を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-048554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すようなヘッドライトにおいては、例えば光が照射される向きを調整できることが好ましい。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、乗物において、複数の装置における調整を簡素な構成で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の乗物が提供される。即ち、この乗物は、第1装置と、第2装置と、を備える。前記第1装置は、調整機構を備える。前記第2装置は、調整機構を備える。前記第1装置及び前記第2装置のうち何れかが、ライトの光源の向きを調整可能な照明装置である。乗物には開口が形成される。共通の前記開口を介して外部からアクセスすることにより、前記第1装置が備える調整機構の操作、及び、前記第2装置が備える調整機構の操作が可能である。前記第1装置及び前記第2装置は、上下方向に並べて配置される。前記開口は、前記第1装置及び前記第2装置よりも低い位置に配置される。前記開口は下方に開放している。
【0008】
これにより、第1装置及び第2装置のそれぞれのために開口を独立して設ける場合よりも、構成を簡素化できるとともに、機械的強度の低下を防止できる。また、例えば乗物の工場出荷時に、第1装置及び第2装置の調整作業を容易にまとめて行うことができる。
【0009】
本発明の第2の観点によれば、以下の調整方法が提供される。即ち、この操作方法は、第1装置と、第2装置と、を備える乗物を対象とする。前記第1装置は、調整機構を備える。前記第2装置は、調整機構を備える。前記第1装置及び前記第2装置のうち何れかが、ライトの光源の向きを調整可能な照明装置である。前記乗物には開口が形成される。共通の前記開口を介して外部からアクセスすることにより、前記第1装置が備える調整機構の操作、及び、前記第2装置が備える調整機構の操作を行う。前記第1装置及び前記第2装置は、上下方向に並べて配置される。前記開口は、前記第1装置及び前記第2装置よりも低い位置に配置される。前記開口は下方に開放している。
【0010】
これにより、第1装置及び第2装置のそれぞれのために開口を独立して設ける場合よりも、構成を簡素化できるとともに、機械的強度の低下を防止できる。また、例えば乗物の工場出荷時に、第1装置及び第2装置の調整作業を容易にまとめて行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、乗物において、複数の装置における調整を簡素な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る自動2輪車の前部を示す側面図。
図2】自動2輪車の前部の平面図。
図3】支持フレームを後方から見た斜視図。
図4】レーダステー及びレーダ装置を前方から見た斜視図。
図5】ヘッドライト装置の向き調整機構及びレーダ装置の向き調整機構を示す、後下方から見た斜視図。
図6】レーダ装置の向き調整機構の操作を説明する斜視図。
図7】ヘッドライト装置の向き調整機構の操作を説明する斜視図。
図8】治具を自動2輪車に装着する作業を説明する、前方から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、自動2輪車(鞍乗型車両、乗物)1に乗車した運転者から見た方向を基準として、自動2輪車1の前後左右を定義する。前後方向は車長方向(乗物長方向)に一致し、左右方向は車幅方向(乗物幅方向)に一致する。
【0014】
初めに、本実施形態の自動2輪車1の概要について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、自動2輪車1の前部の側面図である。図2は、自動2輪車1の前部の平面図である。
【0015】
図1に示すように、自動2輪車1は、車体10を備える。車体10は、自動2輪車1の骨格となる複数の車体フレームを含んでいる。自動2輪車1は、車体フレームとして、ヘッドパイプ11と、メインフレーム12と、を備える。車体フレームの構成は任意であり、本実施形態と異なる構成であってもよい。
【0016】
ヘッドパイプ11には、図略のステアリングシャフトを挿入するためのシャフト挿入孔が形成されている。図2に示すように、ヘッドパイプ11の上方にはアッパーブラケット13が配置されている。ヘッドパイプ11の下方にはロアブラケット14が配置されている。アッパーブラケット13及びロアブラケット14には、図1に示す左右のフロントフォーク15を挿入するためのフォーク挿入孔がそれぞれ形成されている。
【0017】
フロントフォーク15の下部にはフロントホイール16が回転可能に取り付けられている。フロントホイール16には、フロントタイヤ17が固定されている。フロントタイヤ17の上方はフロントフェンダ(フェンダ)18で覆われている。
【0018】
メインフレーム12は、ヘッドパイプ11に接続されている。メインフレーム12は、ヘッドパイプ11から後方に延びるように配置されている。メインフレーム12にはエンジン21が支持されている。メインフレーム12の後部には、図示しないリアタイヤが回転可能に支持されている。
【0019】
エンジン21が発生させた動力は、図略のドライブチェーンを介してリアタイヤに伝達される。これにより、自動2輪車1を走行させることができる。本実施形態のエンジン21はガソリンエンジンである。なお、ガソリンエンジンに代えて又は加えて他の駆動源、例えば電動モータが設けられてもよい。
【0020】
フロントフォーク15の上端の近傍にはハンドルバー型のステアリングハンドル28が配置されている。運転者がステアリングハンドル28を回動させることで、フロントフォーク15が回動するため、自動2輪車1を旋回させて進行方向を変更することができる。また、自動2輪車1は、旋回時に車体10が路面に対して旋回中心側に傾斜する。従って、自動2輪車1はリーン型車両の一種である。
【0021】
ステアリングハンドル28の後方であって、エンジン21の上方には、燃料が貯留される燃料タンク29が配置されている。燃料タンク29の後方には、運転者が着座するための図略のシートが配置されている。車体10の左側面と右側面には、それぞれ図略のステップが配置されている。運転者は、シートに跨って、左右のステップに足を載せる。従って、自動2輪車1は鞍乗型車両の一種である。
【0022】
ステアリングハンドル28の前方には、ウインドスクリーン31が配置されている。ウインドスクリーン31は、走行風が運転者に当たりにくくなるように導く。運転者の視界を確保するために、ウインドスクリーン31は透明又は半透明であり、可視光を透過可能である。
【0023】
車体10の前部には、前方に光を照射するヘッドライト32が配置されている。ヘッドライト32の光源は任意であり、例えば、発光ダイオード(LED)、白熱電球、ハロゲン電球、HID(High-Intensity Discharge)ランプである。
【0024】
ヘッドライト32は、ヘッドライト装置(第1装置)50の一部である。ヘッドライト装置50は、前述の光源のほか、図示しないレンズ、リフレクタ等をまとめた1つのユニットとして構成されている。ヘッドライト装置50は、照明装置の一種である。詳細は後述するが、ヘッドライト装置50は、ヘッドライト32の光源の向きを調整可能に構成されている。
【0025】
ヘッドライト32は、車幅方向の中央に1つ配置されている。ただし、ヘッドライト32を例えば左右1対で配置することもできる。
【0026】
車体10の前部には、レーダ装置(第2装置)60が設けられている。レーダ装置60は、ヘッドライト装置50の下方に配置されている。
【0027】
レーダ装置60は、電磁波(赤外線、ミリ波、又はマイクロ波等)を自動2輪車1の前方に送信するとともに、物体で反射した反射波(電磁波)を取得する。これにより、物体が存在する方向及び物体までの距離を検出することができる。レーダ装置60の探知結果は、自動2輪車1を制御する図略のコンピュータ(制御部)へ出力される。このコンピュータは、前方の物体の有無及び物体までの距離等に基づいて、運転者に物体に関する情報を通知したり、物体への衝突防止を補助するためにブレーキを自動的に作動させたりする。
【0028】
自動2輪車1の外表面にはカウルが配置されている。カウルは、自動2輪車1の空気抵抗の低減、自動2輪車1が有する各部品の保護、及び外観の向上等の目的で設けられている。
【0029】
本明細書では、主として自動2輪車1の正面及び前部に配置されるカウルをフロントカウル34と称する。なお、自動2輪車1の前部とは、自動2輪車1の車長方向中心よりも前方の部分であり、例えばシートよりも前方の部分である。フロントカウル34は、前方に突出する形状である。そのため、フロントカウル34の後方には凹部が形成される。また、フロントカウル34の外形は、前方に近づくに連れて車幅方向の大きさ及び高さ方向の大きさが小さくなる部分を含む。そのため、フロントカウル34の凹部の内部空間も、前方に近づくに連れて車幅方向のサイズ及び高さ方向のサイズが小さくなる部分を含む。フロントカウル34の内部には、ヘッドライト32及びレーダ装置60が配置されている。
【0030】
レーダ装置60の前方はカウルで覆われているが、カウルは、レーダ等で用いられる周波数の電磁波を透過する材料で構成されている。従って、レーダ装置60の電磁波の送受信がカウルによって妨げられることはない。
【0031】
フロントカウル34の内部のうちほぼ下端の位置には、仕切り部材35が配置されている。仕切り部材35は板状に形成され、その厚み方向は上下に向けられている。仕切り部材35は、フロントカウル34の内部の空間と、フロントフェンダ18が配置される空間と、を仕切るように設けられている。
【0032】
次に、レーダ装置60を支持するためのフレーム構造について説明する。図3は、支持フレーム40を後方から見た斜視図である。図4は、レーダステー70及びレーダ装置60を前方から見た斜視図である。
【0033】
図3に示すように、ヘッドパイプ11は、シャフト挿入孔が形成される筒状部11aと、筒状部11aから前方に延びる取付基部11bと、を備える。筒状部11aと取付基部11bは、例えば溶接により接続されている。
【0034】
取付基部11bには、支持フレーム(フレーム)40が取り付けられている。支持フレーム40は、ヘッドパイプ11に接続されており、ヘッドパイプ11よりも前方に位置している。支持フレーム40は、ヘッドライト装置50及びレーダ装置60を含む複数の電装品を支持するためのフレームである。
【0035】
支持フレーム40は、接続フレーム41と、分岐フレーム42と、板状フレーム43と、吊下げフレーム44と、前フレーム45と、を備える。
【0036】
接続フレーム41は、取付基部11bとの接続部分に位置する。接続フレーム41は、取付基部11bを挿入可能に構成されている。接続フレーム41及び取付基部11bは、例えば、図略のボルト及びナット等の固定部材を用いて接続される。なお、接続フレーム41と取付基部11bを溶接により接続してもよい。
【0037】
分岐フレーム42は、接続フレーム41に固定されている。分岐フレーム42は、2つのパイプ状の部材を互いに固定して構成されている。分岐フレーム42は、接続フレーム41との固定箇所から前上方に斜めに延び、更に左右方向にY字状に分岐している。
【0038】
板状フレーム43は、側面視でL字状に形成されている。図4に示すように、板状フレーム43は、仕切り部材35の上方に配置されている。なお、仕切り部材35は図3では省略され、板状フレーム43は図5以降では省略されている。板状フレーム43は、L字を構成する第1板43a及び第2板43bを備える。
【0039】
第1板43aは、その厚み方向が概ね前後方向となるように配置されている。第1板43aの後ろ側の面は、図3に示す接続フレーム41に固定されている。第1板43aの上端部は、分岐フレーム42のうち左右の分岐部分にそれぞれ固定されている。
【0040】
第1板43aの前側の空間には、それぞれ1又は複数の電装品が配置される。電装品としては、例えば、ヘッドライト装置50、エンジン制御ユニット、及びリレーボックス等である。ただし、図3及び図4においては、図面の簡潔さのためにヘッドライト装置50が省略されている。図示しないが、第1板43aの前側の面には、電装品等を取り付けるための複数のステーが固定されている。
【0041】
第2板43bは、その厚み方向が概ね上下方向となるように配置されている。第1板43aの下端部と、第2板43bの後端部とが、互いに概ね垂直に接続されている。
【0042】
第2板43bの前端部は、吊下げフレーム44が備える、後述の取付部44bに接続されている。第2板43bの車幅方向両端部には、脚部43dが一体的に形成されている。脚部43dは第2板43bよりも下方に延びて、仕切り部材35に固定される。
【0043】
板状フレーム43の車幅方向両端部には、第3板43cがそれぞれ配置されている。第3板43cは、その厚み方向が概ね左右方向となるように配置されている。第3板43cは、直角3角形状に形成される。第3板43cの後端部は、第1板43aに対して概ね垂直に接続されている。
【0044】
第3板43cの前端部は、吊下げフレーム44が備える、後述の延出部44aに接続されている。
【0045】
吊下げフレーム44は、図4に示すように、仕切り部材35の上方に配置されている。吊下げフレーム44は、細長いパイプ状の部材を略U字状に折り曲げた構成である。吊下げフレーム44は、左右1対で配置された延出部44aと、1つの取付部44bと、を備える。U字は、延出部44a及び取付部44bによって構成される。
【0046】
延出部44aは、側面視で前下がりとなる斜めの直線状に延びている。それぞれの延出部44aの上端部は、分岐フレーム42の分岐部分に固定されている。
【0047】
取付部44bは、車幅方向に直線状に延びている。取付部44bは、延出部44aの下端部同士を連結する。
【0048】
本実施形態では吊下げフレーム44は1つのパイプを曲げて構成されるが、複数の部材を溶接又は固定具等によって接続することで吊下げフレーム44が構成されてもよい。
【0049】
前フレーム45は、車幅方向に延びるように細長く形成されている。前フレーム45は、分岐フレーム42のうち左右の分岐部分同士を連結する。
【0050】
支持フレーム40は、ミラーステー46と、レーダステー(ステー)70と、を備える。
【0051】
ミラーステー46は、左右のサイドミラーを取り付けるための部材である。ミラーステー46は、分岐フレーム42と前フレーム45の両方に接続されている。
【0052】
レーダステー70は、レーダ装置60を取り付けるための部材であり、吊下げフレーム44の取付部44bに接続されている。レーダステー70の詳細については後述する。
【0053】
吊下げフレーム44に対しては、上記以外にも、他の電装品等を取り付けるためのステー等の部品が取り付けられてもよい。
【0054】
次に、レーダステー70について詳細に説明する。レーダステー70は、吊下げフレーム44に固定されている。支持フレーム40は、レーダステー70により、後述のレーダブラケット80を介してレーダ装置60を支持することができる。
【0055】
レーダステー70は、図4及び図5に示すように、第1取付部71と、第2取付部72と、側板部73と、を備える。
【0056】
第1取付部71は、板状の部材であり、その厚み方向を上下方向に向けて配置されている。第1取付部71は、吊下げフレーム44の取付部44bよりも高い位置に配置されている。
【0057】
第1取付部71には、レーダブラケット80を取り付けるネジ91,92を差し込むための図略の取付孔が左右1対で形成されている。それぞれの取付孔の軸は、第1取付部71に対して垂直な方向、即ち上下方向に向けられている。図5に示すように、第1取付部71の下面にナット95が固定されている。これにより、ネジ91,92を固定するためのメネジ部が形成されている。
【0058】
第2取付部72は、板状の部材であり、その厚み方向を前後方向に向けて配置されている。第1取付部71は、吊下げフレーム44の取付部44bよりも前方に配置されている。第2取付部72は、第1取付部71の前端部に対して概ね垂直に接続されている。
【0059】
第2取付部72の適宜の位置には、図5に示すように、レーダブラケット80を取り付けるネジ93を差し込むための取付孔97が形成されている。この取付孔97は、第2取付部72に固定された円筒状のボス部96の軸孔として形成されている。取付孔97は、第2取付部72に対して垂直な方向、即ち前後方向に向けられている。ボス部96は、第2取付部82よりも後方に突出するように配置される。取付孔97には、ネジ93を固定するためのメネジ部が形成される。
【0060】
側板部73は、レーダステー70の車幅方向両端部に1対で配置されている。それぞれの側板部73は、その厚み方向が概ね車幅方向となるように配置されている。側板部73の後端部は、取付部44bの前面に、溶接等の適宜の方法で固定されている。側板部73は、取付部44bよりも前方に突出するように設けられている。これにより、レーダ装置60を前方に配置することが容易になるので、レーダ装置60の探知範囲を他の部材が遮りにくくなる。側板部73の上端部は第1取付部71に固定され、側板部73の前端部は第2取付部72に固定される。
【0061】
レーダステー70の下方側は開放されている。仕切り部材35において、レーダステー70に対して上下方向で対面する位置に、貫通状の差込開口(開口)35aが形成されている。差込開口35aの詳細については後述する。
【0062】
次に、レーダブラケット80について詳細に説明する。
【0063】
レーダブラケット80は、図4等に示すように、L字の板状の部材として構成されている。レーダブラケット80は、第1取付部81と、第2取付部82と、を備える。
【0064】
第1取付部81は、板状の部分であり、その厚み方向を上下方向に向けて配置されている。第1取付部81は、レーダステー70の上方に配置される。第1取付部81は、ネジ91,92によって、レーダステー70が備える第1取付部71に固定される。
【0065】
第2取付部82は、板状の部分であり、その厚み方向を前後方向に向けて配置されている。第2取付部82は、レーダステー70の前方に配置される。第2取付部82は、図5に示すネジ93によって、レーダステー70が備える第2取付部72に固定される。第2取付部82の前面側には、レーダ装置60が取り付けられる。
【0066】
3つのネジ91,92,93には何れも、防振部材としてのグロメットが取り付けられている。従って、レーダ装置60を防振支持することができる。ネジ91,92は上下方向に取り付けられ、ネジ93は前後方向に取り付けられる。従って、互いに垂直な向きに配置されたグロメットの組合せにより、レーダ装置60に伝達される様々な方向の振動を抑制することができる。
【0067】
レーダステー70は、レーダ装置60のベース部分と考えることができる。本実施形態では、このベース部分であるレーダステー70が、支持フレーム40に固定されている。従って、レーダ装置60を、例えばヘッドライト32を介して支持フレーム40に固定したり、別のフレームを介して支持フレーム40に固定したりする構成と比較して、フレームの基準位置に対する累積誤差を抑制することができる。従って、レーダ装置60の位置精度が良好である。
【0068】
次に、レーダ装置60の構成について詳細に説明する。図4等に示すように、レーダ装置60は、本体部61と、保持ケース62と、向き調整機構(調整機構)64と、を備える。
【0069】
本体部61は、概ね直方体状に形成されたハウジングを備える。このハウジングには、電磁波を送受信するためのアンテナ及び回路が内蔵されている。この構成により、本体部61の前面から電磁波を送受信することができる。
【0070】
本体部61の車幅方向一側の側面には、コネクタ66が設けられている。図示しないが、コネクタ66には、本体部61への給電線と、本体部61の探知結果を上述のコンピュータへ出力する信号線と、が接続される。
【0071】
保持ケース62は、前面を開放させた箱状に形成されている。本体部61は、保持ケース62の内部空間に後ろ側の一部を差し込むようにして、保持ケース62に適宜の方法で固定される。本体部61を保持ケース62に固定する方法としては、例えばネジ等の固定部材を用いることが考えられるが、これに限定されない。保持ケース62の前端部には開口が形成されており、この開口を介して本体部61の前面が露出している。
【0072】
向き調整機構64は、保持ケース62と、レーダブラケット80と、の間に配置されている。向き調整機構64は、レーダ装置60の向き(例えば、上下方向の第1軸を回転中心とした第1回転角、左右方向の第2軸を回転中心とした第2回転角)を調整することができる。
【0073】
図5に示すように、向き調整機構64は、支点部67と、第1調整部68と、第2調整部69と、を備える。
【0074】
支点部67は、例えば球面軸受として構成されている。この支点部67を中心として、レーダブラケット80に対する保持ケース62の向きを3次元的に変更することができる。
【0075】
第1調整部68及び第2調整部69は、例えばネジ機構として構成されている。第1調整部68及び第2調整部69のそれぞれは、ネジ軸と一体的に回転する調整部材68a,69aを備える。
【0076】
第1調整部68は、支点部67に対して車幅方向で並ぶように配置されている。第1調整部68のネジ軸は、図5に示すように前後方向に向けられて、レーダブラケット80の第2取付部82に回転可能に支持されている。ネジ軸の前部は、保持ケース62にネジ結合している。ネジ軸の後部は、レーダステー70の第2取付部72に形成された貫通孔を通過して、後方に突出している。調整部材68aは、このネジ軸の後端に設けられている。調整部材68aを回転させることで、保持ケース62をネジ送りすることができる。この結果、レーダ装置60の第1回転角を調整することができる。
【0077】
第2調整部69は、支点部67に対して上下方向で並ぶように配置されている。第2調整部69のネジ軸は第1調整部68と同様に前後方向に向けられて、レーダブラケット80の第2取付部82に回転可能に支持されている。ネジ軸の前部は、保持ケース62にネジ結合している。ネジ軸の後部は、レーダステー70の第2取付部72の下方を通過して、後方に突出している。調整部材69aは、このネジ軸の後端に設けられている。調整部材69aを回転させることで、保持ケース62をネジ送りすることができる。この結果、レーダ装置60の第2回転角を調整することができる。
【0078】
2つの調整部材68a,69aは、本体部61よりも後方に配置されている。そのため、作業者は、レーダ装置60の後ろ側から調整部材68a,69aを操作する。調整部材68a,69aは、第2操作部材に相当する。
【0079】
図1及び図2に示すように、本実施形態のレーダ装置60は、車幅方向の中央に配置されている。レーダ装置60は、平面視でヘッドライト装置50と重なるように、かつ、ヘッドライト装置50の下方に配置されている。
【0080】
本実施形態のフロントカウル34は、前端に近づくに連れて車幅方向のサイズが小さくなる形状である。そのため、前端に配置することが好ましいレーダ装置60とヘッドライト32の両方を車幅方向で並べることが困難となる可能性がある。この点、本実施形態のようにレーダ装置60とヘッドライト32を上下に並べて配置することで、両者をフロントカウル34の前端に配置できる。
【0081】
また、レーダ装置60の探知範囲は制御の内容及び性能等によって異なるが、レーダ装置60は基本的には路上の障害物を探知するため(上空の障害物の探知が不要なので)、例えば左右方向の探知範囲が上下方向の探知範囲よりも広いことがある。この場合、レーダ装置60とヘッドライト32を車幅方向に並べて配置すると、ヘッドライト32がレーダ装置60よりも少しだけ前方に位置するだけで、レーダ装置60の探知範囲とヘッドライト32が干渉する可能性がある。この点、レーダ装置60とヘッドライト32を上下に並べて配置することで、左右方向の広い範囲を探知可能となる。
【0082】
次に、レーダ装置60、レーダステー70及びレーダブラケット80の関係について説明する。上述したとおり、レーダステー70にはレーダブラケット80が取り付けられており、このレーダブラケット80にレーダ装置60が取り付けられる。
【0083】
レーダ装置60、レーダステー70及びレーダブラケット80は何れも、図4に示すように仕切り部材35の上方に配置されている。レーダブラケット80を用いてレーダ装置60をレーダステー70に取り付けた状態において、レーダブラケット80及びレーダ装置60は、仕切り部材35に接触しない。従って、レーダ装置60の向きを前下がり側に調整可能とするための空間を確保し易くなっている。
【0084】
レーダブラケット80をレーダステー70に取り付ける部材には、ネジ91,92が含まれる。左右1対で配置されるネジ91,92の間において、レーダブラケット80の第1取付部81及びレーダステー70の第1取付部71の両方に、後方を開放させる凹部94が形成されている。
【0085】
凹部94は、レーダステー70の内部空間と、レーダステー70よりも上方の空間と、を繋ぐように配置される。レーダステー70の内部空間は、レーダ装置60の後方の空間と言い換えることもできる。レーダステー70よりも上方の空間は、ヘッドライト装置50の後方の空間と言い換えることもできる。
【0086】
次に、ヘッドライト32を備えるヘッドライト装置50について説明する。
【0087】
図5に示すヘッドライト装置50は、ブロック状に形成されたハウジング51を備える。ハウジング51の後ろ側の面には、グロメット52,53が左右1対で並んで配置されている。グロメット52,53が支持フレーム40側の適宜の部材に固定されることで、ヘッドライト装置50が車体10に固定される。グロメット52,53を取り付けるために、ハウジング51には、円柱状の取付ボスが後方に突出するように形成されている。
【0088】
ハウジング51には、複数の固定凸部56が一体的に形成されている。この固定凸部56は、例えばフロントカウル34の適宜の場所に固定される。
【0089】
ヘッドライト装置50は、向き調整機構(調整機構)54を備える。向き調整機構54は、ヘッドライト32の光源55の向き(例えば、上下方向の第1軸を回転中心とした第1回転角、左右方向の第2軸を回転中心とした第2回転角)を調整することができる。
【0090】
向き調整機構54の構成は、レーダ装置60の向き調整機構64と実質的に同様であるので、簡単に説明する。図5に示すように、向き調整機構54は、支点部57と、第1調整部58と、第2調整部59と、を備える。
【0091】
支点部57は、例えば球面軸受として構成されている。ハウジング51の内部には、図略の角度調整板が支持されている。角度調整板の向きは、支点部57を中心として3次元的に変更することができる。角度調整板には、光源55が固定されている。角度調整板の向きを変更することで、光源55の向きを変更することができる。
【0092】
第1調整部58及び第2調整部59は、ネジ機構として構成されている。第1調整部58は、車幅方向で支点部57と並ぶように配置されている。第2調整部59は、上下方向で支点部57と並ぶように配置されている。
【0093】
第1調整部58は、ネジ軸と一体的に回転する第1調整部材58aを備える。第2調整部59は、ネジ軸と一体的に回転する第2調整部材59aを備える。第1調整部58及び第2調整部59のネジ軸は、それぞれ前後方向に向けられて、ハウジング51に回転可能に支持されている。それぞれのネジ軸の前部は、角度調整板にネジ結合している。
【0094】
第1調整部58のネジ軸及び第2調整部59のネジ軸は、ハウジング51からそれぞれ後方に突出している。第1調整部58のネジ軸の後端部に、第1調整部材58aが固定されている。第2調整部59のネジ軸の後端部に、第2調整部材59aが固定されている。
【0095】
第1調整部材58a及び第2調整部材59aは、それぞれ歯車として構成されている。第2調整部材59aは、ヘッドライト装置50の幅方向中心線(自動2輪車1の車幅方向中心線と言い換えることもできる)を挟んで、第1調整部材58aと反対側に位置する。
【0096】
第1調整部材58aに、歯が先端部に形成された工具を噛み合わせた状態で回転させることにより、ネジ軸を回転させることができる。この結果、角度調整板の第1回転角を変更することができる。同様に、第2調整部材59aに工具の歯を噛み合わせた状態で回転させることにより、ネジ軸を回転させることができる。この結果、角度調整板の第2回転角を変更することができる。
【0097】
第1調整部材58a及び第2調整部材59aは、ハウジング51よりも後方に配置されている。そのため、作業者は、ヘッドライト装置50の後ろ側から第1調整部材58a及び第2調整部材59aを操作する。第1調整部材58a及び第2調整部材59aは、第1操作部材に相当する。
【0098】
次に、レーダ装置60及び光源55の向き調整について説明する。
【0099】
図4に示すように、仕切り部材35には差込開口35aが形成されている。ヘッドライト装置50が備える向き調整機構54の操作、及び、レーダ装置60が備える向き調整機構64の操作にあたっては、この差込開口35aが用いられる。
【0100】
図1等に示すように、差込開口35aは、レーダ装置60よりも低く、かつ、ヘッドライト装置50よりも低い位置に配置されている。一方で、差込開口35aは、フロントフェンダ18よりも高い位置に配置されている。
【0101】
差込開口35aは、フロントフェンダ18とレーダステー70とに挟まれた位置に形成されている。差込開口35aは、レーダステー70及びフロントフェンダ18の両方に対して上下方向で対面する。
【0102】
ヘッドライト装置50は、レーダ装置60よりも上方に配置されている。従って、差込開口35aからみて、ヘッドライト装置50はレーダ装置60よりも遠い。
【0103】
図6には、レーダ装置60の向き調整機構64を操作する様子が示されている。図6以降においては、図面の見易さのために仕切り部材35は省略され、差込開口35aだけが鎖線で透視的に図示されている。
【0104】
図6に示すように、差込開口35aを介して工具T2を下から上へ差し込むことで、レーダステー70の第2取付部72よりも後方の空間、あるいは、レーダブラケット80の第2取付部82よりも後方の空間にアクセスすることができる。この結果、調整部材68a及び調整部材69aを必要に応じて回転させることができる。これにより、向き調整機構64を操作して、レーダ装置60の向きを変更することができる。
【0105】
図7に示すように、同じ差込開口35aを介して工具T1を下から上へ差し込むことで、ヘッドライト装置50の後方の空間にアクセスすることができる。この結果、第1調整部材58a及び第2調整部材59aを必要に応じて回転させることができる。これにより、向き調整機構54を操作して、ヘッドライト装置50における光源55の向きを変更することができる。
【0106】
このように、共通の差込開口35aに外部からアクセスすることで、ヘッドライト装置50及びレーダ装置60における向き調整を行うことができる。差込開口35aが共通であるので、ヘッドライト装置50及びレーダ装置60のそれぞれに対して個別に開口を形成する場合と比較して構成を簡素化でき、また、仕切り部材35の機械的強度の低下も防止できる。
【0107】
差込開口35aは上述のとおり向き調整のためのものであるが、この差込開口35aにより、フロントカウル34内部の部品、例えばヘッドライト装置50及びレーダ装置60からの放熱性が向上する効果も得られる。
【0108】
ヘッドライト装置50の向き調整機構54を操作する工具T1は、レーダ装置60の向き調整機構64を操作する工具T2よりも、差込開口35aから長い距離だけ差込可能であることが必要になる。仮に、このような長い工具T1を水平面に対して垂直に差し込む場合、工具T1が、差込開口35aの直下にあるフロントフェンダ18と干渉してしまう。差込開口35aを大きく形成することも考えられるが、スペースの確保及び仕切り部材35の機械的強度の観点から困難な場合も多い。
【0109】
しかも、ヘッドライト装置50の調整部材58a及び調整部材59aの直下には、レーダステー70の第1取付部71、レーダブラケット80の第1取付部81、ネジ91,92、グロメット52の取付ボス等が存在している。工具T1を仮に垂直に差し込む場合、これらが工具T1と干渉することになる。
【0110】
言い換えれば、工具T1を差込可能な空間において、上下方向中途部が、くびれるように車幅方向で狭くなっている。このくびれ部分は、例えば、ネジ91,92の間の、上述の凹部94に相当する部分である。
【0111】
そこで、本実施形態では、図7に示す工具T1を差込開口35aに対して斜めに差し込んで向き調整機構54を操作するように構成されている。即ち、ヘッドライト装置50の左側に位置する調整部材58aを操作する場合、作業者は、フロントフェンダ18の右側から左斜め上方へ工具T1を差し込む。ヘッドライト装置50の右側に位置する調整部材59aを操作する場合、作業者は、フロントフェンダ18の左側から右斜め上方へ工具T1を差し込む。
【0112】
工具T1を左斜め上に差し込むことで、その先端を、ネジ91,92の間の凹部94を通過させ、更にグロメット52の脇を通過させて、第1調整部材58aに到達させることができる。工具T1を右斜め上に差し込むことで、その先端を、ネジ91,92の間の凹部94を通過させて、第2調整部材59aに到達させることができる。
【0113】
フロントフェンダ18の上面は、車幅方向中央部が上に凸となるように湾曲された形状である。従って、仕切り部材35とフロントフェンダ18との間の空間は、車幅方向両側が広く開放されている。このため、フロントフェンダ18の上方にある差込開口35aを通すように、左右両側から工具T1を斜め上に差し込み易くなっている。
【0114】
本実施形態において、ヘッドライト装置50は1灯型に構成されている。近年、ヘッドライト装置50は小型化しており、この結果、第1調整部材58a及び第2調整部材59aが車幅方向中央の近傍に配置されることも多くなっている。この点、本実施形態では、第1調整部材58a及び第2調整部材59aに対して左右の反対側から工具T1を差し込んでアクセスしている。従って、工具T1の傾斜角度が大きくなり、この結果、フロントフェンダ18と工具T1の干渉を防止することができる。
【0115】
本実施形態では、工具T1を斜めに案内して向き調整機構54の操作を容易とするために、車体10に着脱可能な治具100が用いられる。図8を参照して、治具100について説明する。図8は、治具100を自動2輪車1に装着する作業を説明する、前方から見た斜視図である。図8において、ヘッドライト装置50、レーダ装置60及びレーダブラケット80等は省略されている。
【0116】
治具100は、例えば合成樹脂により、ブロック状の部材として構成されている。治具100は、差込開口35aへ下から差込可能な形状となっている。
【0117】
治具100の前部には、第1凹部101が形成されている。この第1凹部101は、上方を開放させた、車幅方向に細長いスリット状に形成されている。第1凹部101に、レーダステー70が備える第2取付部72の下端部を差し込むことができる。
【0118】
第1凹部101の厚みは、第2取付部72の厚みと実質的に同一となっている。従って、図8の鎖線で示すように第2取付部72が第1凹部101に差し込まれることによって、治具100をレーダステー70に対して前後方向に位置決めすることができる。また、第1凹部101の底部が第2取付部72の下端面に接触することによって、治具100をレーダステー70に対して上下方向に位置決めすることができる。
【0119】
治具100の前部には、第2凹部102が形成されている。この第2凹部102は、上方及び前方を開放させたU字状に形成されている。第2凹部102に、レーダステー70が備えるボス部96の後端部を差し込むことができる。
【0120】
第2凹部102の車幅方向の寸法は、ボス部96の車幅方向の寸法と実質的に同一となっている。従って、ボス部96が第2凹部102に差し込まれることによって、治具100をレーダステー70に対して車幅方向に位置決めすることができる。
【0121】
第2取付部72及びボス部96により、第1凹部101及び第2凹部102を有する治具100を所定の位置に位置決めする位置決め機構が構成されている。
【0122】
この位置決め作用により、治具100をレーダステー70に対して正確な位置に装着することができる。従って、図7に示すように正確な位置に工具T1を導くことができる。
【0123】
治具100には、2つのガイド孔108,109が斜めに貫通するように形成されている。2つのガイド孔108,109は、X字状に交差している。ガイド孔108,109のそれぞれに、工具T1の軸部を差し込むことができる。
【0124】
ヘッドライト装置50の向き調整機構54において、第1調整部材58aと第2調整部材59aは左右非対称な位置に配置されている。これに対応して、治具100に形成される2つのガイド孔108,109も左右非対称に配置されており、具体的には、ガイド孔108,109の傾斜角度が互いに異なる。
【0125】
治具100の左右両側の上部には、適宜の形状の凹部がそれぞれ形成されている。この結果、治具100は、レーダステー70に取り付けた状態で、背面視で略逆T字状となっている。これらの凹部により、レーダ装置60の向き調整機構64に関する調整部材68a,69aに対して治具100が干渉するのを防止することができる。
【0126】
レーダ装置60の向き調整機構64において、2つの調整部材68a,69aは左右非対称な位置に配置されている。これに対応して、干渉防止のために治具100に形成される凹部も左右非対称である。
【0127】
治具100の後部上端には傾斜部105が形成されており、この結果、治具100の上端部は、上方となるのに従って前後方向の寸法が小さくなる形状となっている。本実施形態においては、仕切り部材35とフロントフェンダ18の間の高さ方向の隙間が小さい。従って、治具100をレーダステー70に装着するには、図8のように治具100を倒した姿勢で仕切り部材35とフロントフェンダ18の間に差し込んだ上で、太線矢印で示すように、治具100の姿勢を起こしながら同時に差込開口35aに差し込む必要がある。この点、治具100に傾斜部105が形成されているので、上記のような治具100の姿勢の転換を容易に行うことができる。従って、作業性が良好である。
【0128】
図7に示すヘッドライト装置50において第1調整部材58a及び第2調整部材59aの近傍には、ガイド58b,59bがそれぞれ設けられている。これらのガイド58b,59bは、ハウジング51から後方に突出するリブ状の突起により構成されている。ガイド58b,59bは、ハウジング51に一体的に形成される。治具100のガイド孔108,109と、ヘッドライト装置50のガイド58b,59bにより、工具T1の先端を第1調整部材58a又は第2調整部材59aへ斜めに正確に導くことができる。
【0129】
以上に説明したように、自動2輪車1は、ヘッドライト装置50と、レーダ装置60と、を備える。ヘッドライト装置50は、向き調整機構54を備える。レーダ装置60は、向き調整機構64を備える。ヘッドライト装置50は、ライトの光源55の向きを調整可能である。自動2輪車1には、差込開口35aが形成される。共通の差込開口35aを介して外部からアクセスすることにより、ヘッドライト装置50が備える向き調整機構54の操作、及び、レーダ装置60が備える向き調整機構64の操作が可能である。
【0130】
これにより、ヘッドライト装置50及びレーダ装置60のそれぞれのために開口を独立して設ける場合よりも、構成を簡素化できるとともに、機械的強度の低下を防止できる。また、例えば自動2輪車1の工場出荷時に、ヘッドライト装置50及びレーダ装置60の向き調整作業を容易にまとめて行うことができる。
【0131】
また、本実施形態の自動2輪車1は、差込開口35aに差し込まれる工具T1を、ヘッドライト装置50が備える向き調整機構54に対して案内するガイド58b,59bを備える。
【0132】
これにより、作業性が良好である。
【0133】
また、本実施形態の自動2輪車1において、ヘッドライト装置50及びレーダ装置60は、上下方向に並べて配置される。差込開口35aは、ヘッドライト装置50及びレーダ装置60の何れに対しても低い位置に配置される。差込開口35aは下方に開放している。
【0134】
これにより、外部に対して目立ちにくい差込開口35aを介して下方からアクセスすることで、ヘッドライト装置50及びレーダ装置60の向きを調整することができる。
【0135】
また、本実施形態の自動2輪車1は、支持フレーム40を備える。ヘッドライト装置50は、レーダ装置60よりも上方に配置される。レーダ装置60は、支持フレーム40にレーダステー70を介して取り付けられる。ヘッドライト装置50が備える向き調整機構54が操作される場合、下側の差込開口35aからレーダステー70を貫通するように工具T1が差し込まれる。
【0136】
これにより、工具T1を差し込む経路を、レーダステー70の内側に確保することができる。従って、構成を小型化できる。
【0137】
また、本実施形態の自動2輪車1は、差込開口35aに対して左斜め上又は右斜め上に工具T1を差し込むことで、ヘッドライト装置50が備える向き調整機構54を操作可能に構成されている。
【0138】
これにより、他の部材の形状又は配置により、工具T1を差込可能な空間の途中部が実質的にくびれている場合でも、向き調整機構54を適切に操作することができる。
【0139】
また、本実施形態の自動2輪車1において、ヘッドライト装置50が備える向き調整機構54は、上下方向の第1軸を中心として向きを調整し、車幅方向の第2軸を中心として向きを調整することで、光源55の向きを3次元で調整可能に構成されている。
【0140】
これにより、光源55の向きを良好に調整することができる。
【0141】
本実施形態の自動2輪車1において、ヘッドライト装置50が備える向き調整機構54は、第1調整部材58a及び第2調整部材59aを備える。第1調整部材58aは、第1軸を中心として光源55の向きを変化させるために操作される。第2調整部材59aは、第2軸を中心として光源55の向きを変化させるために操作される。第2調整部材59aは、ヘッドライト装置50の幅方向中心線を挟んで第1調整部材58aと反対側に配置される。
【0142】
これにより、簡素な構造を実現することができる。
【0143】
本実施形態の自動2輪車1において、ヘッドライト装置50の向き調整機構54は、調整を行うために操作される調整部材58a,59aを備える。レーダ装置60の向き調整機構64は、調整を行うために操作される調整部材68a,69aを備える。調整部材58a,59a,68a,69aは、何れも差込開口35aの内部の空間に配置されている。
【0144】
これにより、それぞれの向き調整機構54,64を、差込開口35aを介して外部から操作し、調整を行うことができる。
【0145】
本実施形態の自動2輪車1は、治具100を位置決めするための位置決め機構(第2取付部72及びボス部96)を備える。治具100は、差込開口35aに差し込まれる工具T1を案内する。
【0146】
これにより、差込開口35aから向き調整機構54が遠距離にあっても、正確に位置決めされた治具100の案内により、工具T1の先端を、操作のための場所に正確に導くことができる。また、工具T1が周囲の他の部材、例えば、調整部材68a,69aに当たって損傷させることを防止できる。
【0147】
本実施形態の自動2輪車1は、光源55の向きを調整可能なヘッドライト装置50を備える。
【0148】
これにより、ヘッドライト装置50の向き調整を、簡素な構成で実現することができる。
【0149】
本実施形態の自動2輪車1は、フロントフェンダ18を備える。差込開口35aは、ヘッドライト装置50及びレーダ装置60よりも低く、かつ、フロントフェンダ18よりも高い位置に配置される。差込開口35aの少なくとも一部がフロントフェンダ18と上下方向で対面している。
【0150】
これにより、フロントフェンダ18の近傍の空間を有効に活用して、ヘッドライト装置50の向き調整を行うことができる。
【0151】
本実施形態では、以下に示す方法で、ヘッドライト装置50における光源55の向き調整、及び、レーダ装置60の向き調整が行われている。即ち、自動2輪車1には、差込開口35aが形成されている。共通の差込開口35aを介して外部からアクセスすることにより、ヘッドライト装置50が備える向き調整機構54の操作、及び、レーダ装置60が備える向き調整機構64の操作を行う。
【0152】
これにより、ヘッドライト装置50及びレーダ装置60のそれぞれのために開口を独立して設ける場合よりも、構成を簡素化できるとともに、機械的強度の低下を防止できる。また、例えば自動2輪車1の工場出荷時に、ヘッドライト装置50及びレーダ装置60の向き調整作業を容易にまとめて行うことができる。
【0153】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0154】
レーダ装置60が、ヘッドライト装置50よりも上方に配置されても良い。
【0155】
差込開口35aは、ヘッドライト装置50及びレーダ装置60に対して下方に配置されることに限定されず、例えば上方又は側方に配置されても良い。差込開口35aは、カウルに形成されても良いし、仕切り部材35でもカウルでもない部材に形成されても良い。
【0156】
レーダ装置60に代えて、又は加えて、向き調整機構を備える別の装置を配置することができる。別の装置としては、例えばカメラが考えられる。カメラは、ヘッドライト装置50の上方に配置しても良いし、下方に配置しても良い。
【0157】
ヘッドライト装置50に代えて、乗物の前方以外を照射する照明装置に本発明を適用することもできる。
【0158】
ヘッドライト装置50及びレーダ装置60における向き調整機構のうち少なくとも何れかが、3次元ではなく平面内で向きを調整可能であっても良い。
【0159】
例えば、レーダ装置60が、向きに代えて位置を調整可能な調整機構を備えても良い。
【0160】
上記実施形態では、本発明を自動2輪車1に適用した例を説明したが、他の鞍乗型車両にも本発明を適用できる。他の鞍乗型車両としては、例えばフロントホイールが2つでリアホイールが1つの車両、フロントホイールが1つでリアホイールが2つの車両、フロントホイールが2つでリアホイールが2つの車両等がある。また、4輪車の例としては、例えば、主として非舗装地を走行するための全地形対応車(All Terrain Vehicle)がある。更には、車両以外の乗物、例えば水上オートバイ(PWC、Personal Water Craft)等に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0161】
1 自動2輪車(鞍乗型車両、乗物)
35a 差込開口(開口)
40 支持フレーム(フレーム)
50 ヘッドライト装置(第1装置)
54 向き調整機構
55 光源
58a 第1調整部材
58b ガイド
59a 第2調整部材
59b ガイド
60 レーダ装置(第2装置)
64 向き調整機構
70 レーダステー(ステー)
100 治具
T1 工具
T2 工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8