(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】排水溝ユニット
(51)【国際特許分類】
E01C 11/22 20060101AFI20241009BHJP
E01H 11/00 20060101ALI20241009BHJP
E01D 19/10 20060101ALI20241009BHJP
E03F 5/046 20060101ALI20241009BHJP
A01M 21/00 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
E01C11/22 A
E01H11/00 A
E01D19/10
E03F5/046
A01M21/00 Z
(21)【出願番号】P 2021075027
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591006520
【氏名又は名称】株式会社興和工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】澤田 靖
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-128851(JP,A)
【文献】特開2005-054491(JP,A)
【文献】特開2018-159254(JP,A)
【文献】特開2019-052471(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03875686(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00-17/00
E01H 11/00
E01D 1/00-24/00
E03F 1/00-11/00
A01M 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が流れる水路部を形成する水路形成部材と、
前記水路形成部材に取り付けられて前記水路形成部材との間に前記水路部を含む空間を形成するカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、
路面から流れる水を受ける受け部と、
前記受け部に対して角度を有して接続された壁部と、を有し、
前記壁部は、前記壁部を貫いて形成され前記空間の内部と外部を連通し前記受け部に接して配置された開口部を有し、
前記受け部は、前記空間の外部から前記開口部を跨いて前記空間の内部まで延びている、
排水溝ユニット。
【請求項2】
前記受け部の前記空間内における端部は、前記水路形成部材から離れている、
請求項1に記載の排水溝ユニット。
【請求項3】
前記開口部は、前記壁部の下端部を切り欠いて形成されている、
請求項1又は2に記載の排水溝ユニット。
【請求項4】
前記受け部は、前記空間の内部と外部とを連通する穴又は切り欠きを有さない平坦な部材で構成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の排水溝ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、排水溝ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば道路の路肩、つまり道路の路面と道路の幅方向の端部に設けられるコンクリート製の壁との間には、排水溝ユニットが設けられている。排水溝ユニットは、路肩の長手方向に沿って設けられており、主に降雨によって道路の路面上に溜まった雨水を集めて、その雨水を道路の外部に排水する。
【0003】
従来、このような排水溝ユニットは、水路部を形成する水路形成部材及び水路部を覆うカバー部材によって構成されている。そして、カバー部材には、水路部へ雨水を導くための開口部が形成されている。ところで、従来構成において、当該開口部からは、雨水の他に日光が水路形成部材とカバー部材との間に形成される空間に向かって差し込む。そして、開口部を通過して水路部に照射された日光は、水路部内における雑草の生育を促進させる。更に、成長した雑草は水路部における水の流れを阻害し、その結果、排水ユニットの排水能力の低下を招く。そのため、従来、このような排水溝ユニットにおいては、水路部における雑草の生育を如何に抑制するかが課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、組立作業性を損なうことなく、水路部における雑草の生育の抑制を図ることができる排水溝ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の排水溝ユニットは、水が流れる水路部を形成する水路形成部材と、前記水路形成部材に取り付けられて前記水路形成部材との間に前記水路部を含む空間を形成するカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、路面から流れる水を受ける受け部と、前記受け部に対して角度を有して接続された壁部と、を有し、前記壁部は、前記壁部を貫いて形成され前記空間の内部と外部を連通し前記受け部に接して配置された開口部を有し、前記受け部は、前記空間の外部から前記開口部を跨いて前記空間の内部まで延びている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態による排水溝ユニットの構成を概略的に示す縦断面図
【
図2】一実施形態による排水溝ユニットの一例を正面から見た図
【
図3】一実施形態による排水溝ユニットの一例を上方から見た図
【
図4】一実施形態による排水溝ユニットの水路形成部材及びカバー部材の一例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示す排水溝ユニット1は、例えば道路の路肩側や中央分離帯側に設けられるものであり、道路の縁石と排水溝とを兼ねている。例えば、降雨等によって道路の路面に溜まった水は、排水溝ユニット1に流入する。なお、本実施形態において、排水溝ユニット1に対して道路の路面51側を、道路の路面側と称し、排水溝ユニット1に対して、道路の路面51とは反対側を、道路の端部側と称する場合がある。例えば道路の路肩側及び中央分離帯側の両方にそれぞれ排水溝ユニット1が設けられている場合、各排水溝ユニット1における道路の端部側は、それぞれ路面51に対して路肩側及び中央分離帯側となる。
【0009】
排水溝ユニット1は、
図2にも示すように、全体として道路の長手方向に沿って長尺状に形成されており、通常は複数個連結されて使用される。以下の説明では、排水溝ユニット1の長手方向に対する直角方向つまり排水溝ユニット1における道路の幅方向を、排水溝ユニット1の幅方向と称することがある。排水溝ユニット1は、
図1等に示すように、水路形成部材10と、カバー部材20と、を備えている。水路形成部材10及びカバー部材20は、例えば鋼製又はステンレス製等の金属製の板材を曲げ加工や溶接加工することによって形成されている。また、水路形成部材10及びカバー部材20には、メッキ加工等により表面処理が施されていても良い。なお、以下の説明において、水路形成部材10に対してカバー部材20側を排水溝ユニット1の上側とし、水路形成部材10に対してカバー部材20とは反対側を排水溝ユニット1の下側とする。
【0010】
水路形成部材10は、例えば全体として道路の長手方向に沿って長尺状に形成され、断面が略J字形状又は左右反転した略J字形状に構成されている。水路形成部材10は、
図1に示すように、例えば道路の路面51と道路の幅方向の端部に設けられる道路の壁高欄や中央分離帯等を構成するコンクリート製の壁52との間に設けられ、図示しない埋設アンカー等の接続部材によって壁52に固定されている。また、例えば排水溝ユニット1が設置された場合、水路形成部材10の底部が路面51よりも下方に位置する。
【0011】
水路形成部材10は、
図1等に示すように、水路部11、背部12、立上り部13、及びリブ14を有している。水路部11は、水路形成部材10の内側であって、水路形成部材10の長手方向に沿って形成されている。水路部11は、水路部11の両縁側を構成する背部12及び立上り部13によって上方へ開放した溝状に形成されており、排水溝ユニット1内に流入した雨水を流す。
【0012】
背部12は、水路形成部材10の幅方向における一方の端部この場合水路部11における道路の端部側の縁部から略直角に上方へ立ち上がるようにして設けられている。この場合、背部12は、壁52の壁面に対して略平行に構成されている。
【0013】
立上り部13は、水路形成部材10の幅方向における他方の端部この場合水路部11における道路の路面側の縁部から略直角に上方へ立ち上がるようにして設けられている。
図1に示すように、例えば排水溝ユニット1が設置された場合、立上り部13の上端部は、路面51と略同じ高さ又は路面51よりもやや下方に位置するように構成されている。そして、背部12及び立上り部13は、路面51に対して略直角になるように構成されており、路面51に対して略直角となる壁を構成している。この場合、背部12と立上り部13とは、互いに略平行に構成されている。
【0014】
リブ14は、
図1及び
図2に示すように、背部12の上下方向における中央部分であって、水路形成部材10の長手方向に沿って例えば等間隔に並んで複数この場合3つ設けられている。リブ14は、背部12から水路形成部材10の内側すなわち道路の路面側へ向かって突出している。リブ14は、水路形成部材10を正面から見た場合に、L字形状を上下反転させたような形状となっている。
【0015】
カバー部材20は、
図1に示すように、水路形成部材10の水路部11の上部を覆うようにして、水路形成部材10に着脱可能に取付けられている。カバー部材20は、水路形成部材10の長手方向に沿って長尺状に形成されている。カバー部材20は、
図1に示すように、水路形成部材10との間に水路部11を含む空間31を形成する。
【0016】
カバー部材20は、受け部21、壁部22、孔部23、リブ24、反射部材25、及び開口部26、を有している。受け部21は、
図1及び
図3にも示すように、水路形成部材10の底部の上方に位置し、水路部11及び路面51と略平行であって、路面51と略同一面に構成されている。受け部21は、路面51から流れる水を受ける。また、受け部21は、
図3に示すように、空間31の内部と外部とを連通する穴又は切り欠きを有さない平坦な部材で構成されている。つまり、受け部21には、空間31に雨水や日光等を導くための穴又は切り欠きが形成されていない。そして、
図1に示すように、受け部21の空間31内における端部211は、水路形成部材10から離れている。すなわち、受け部21の端部211とその端部211に対向する水路形成部材10の背部12との間には、隙間Cが形成されている。
【0017】
壁部22は、
図1に示すように、受け部21の上方に位置し、カバー部材20の長手方向に沿って長尺状であって、断面が略L字状に形成されている。壁部22は、傾斜壁部221及び起立部222を有している。傾斜壁部221は、
図1に示すように、道路の端部側から道路の路面側へ向かって下方に傾斜して形成されている。起立部222は、一方の端部が傾斜壁部221に接続され、他方の端部が受け部21に対して角度を有して接続されている。この場合、起立部222は、受け部21の延伸方向における中央部分より道路の端部側で、受け部21に対して略直角に接続されている。
【0018】
そして、起立部222の端部が受け部21に溶接等されることにより、壁部22と受け部21とが取り外し不可に一体化されている。ここで、一体化とは、壁部22と受け部21とが相互に接合されることによって、相互の位置や角度が容易に変わることがなく、一つの部材として取り扱うことができる状態を意味する。なお、受け部21と起立部222とは、略直角に限らず、直線状以外の所定の角度を有して接続できる。また、壁部22全体が受け部21に対して略垂直に構成されていても良い。
【0019】
孔部23は、
図2及び
図3にも示すように、例えば長円形状に形成されている。孔部23は、傾斜壁部221の上部側であってかつ傾斜壁部221の長手方向の両端付近に設けられている。例えば降雨等による雨水は、孔部23を通って空間31内に導入される。リブ24は、
図1及び
図2にも示すように、水路形成部材10のリブ14と対応する位置に設けられている。リブ24は、カバー部材20の補強及びカバー部材20を水路形成部材10に対して位置決めをするためのものである。リブ24は、垂直方向の面を有する板状に形成され、水路形成部材10の背部12へ向かって突出している。
【0020】
リブ24は、背部12、水路形成部材10のリブ14、及び受け部21と接触可能に構成されている。リブ24が背部12に接触することによって、カバー部材20の背部12側つまり道路の端部側への移動が規制される。また、リブ24がリブ14及び受け部21に接触することによって、カバー部材20の下方への移動が規制される。このようにして、リブ24が背部12、リブ14、及び受け部21と接触することによって、カバー部材20の水路形成部材10に対する位置が規定される。
【0021】
ここで、
図2及び
図3にも示すように、複数のリブ24のうち壁部22の長手方向の両端付近に位置する各リブ24は孔部23に隣接して設けられている。以下の説明において、複数のリブ24のうち孔部23に隣接するリブを端部側リブ241と称し、端部側リブ241の間に設けられたリブを中央側リブ242と称する。そして、反射部材25は、各端部側リブ241にそれぞれ設けられている。これに対し、中央側リブ242には、反射部材25は設けられていない。反射部材25は、各端部側リブ241における孔部23に隣接する側の面に、例えば接着剤等によって取付けられている。反射部材25は、孔部23から入射する光を反射して、孔部23から外部へ放射する。すなわち、孔部23から入射した光は、端部側リブ241に設けられた反射部材25で反射し、孔部23を介して外部に放射される。
【0022】
開口部26は、空間31の内部と外部を連通している。開口部26は、
図2及び
図4にも示すように、壁部22を矩形状に貫いて形成されている。具体的には、開口部26は、壁部22の下端部この場合起立部222及び起立部222と傾斜壁部221との境界部分を切り欠いて形成されている。開口部26は、壁部22の長手方向に沿って複数この場合6つ設けられている。複数の開口部26の配置間隔は、等間隔であっても良いし不等間隔であっても良い。例えば路面51から受け部21に流れた水は、
図1の矢印で示すように、開口部26を通って空間31内部に入った後に隙間Cから水路部11に導かれる。
【0023】
本実施形態では、開口部26は、
図1等に示すように、受け部21に接して配置されている。すなわち、受け部21は、空間31の外部から開口部26を跨いて空間31の内部まで延びている。この場合、受け部21は、
図1及び
図4にも示すように、延伸部212を有する。延伸部212は、受け部21から連続して水路形成部材10の背部12つまり道路の端部側へ向かって延びて形成されている。延伸部212は、開口部26から空間31内に入射した日光が水路部11に直接照射するのを遮るためのものである。
【0024】
これにより、受け部21は、開口部26から空間31内に入射した日光が水路部11に直接照射されることを効率よく抑制することができる。ここで、排水溝ユニット1の幅方向について見た場合の開口部26の高さ寸法Hに対する延伸部212の長さ寸法Lについて、南中時の太陽高度つまり開口部26から照射される日光の入射角度θを日照量の基準として以下に検討する。検討に際して、延伸部212の長さはある程度の幅をもって設定する点を考慮して、東京の北緯約36度を基準緯度とするとともに、計算は小数点以下を含めた厳密な計算ではなく簡略化した数値を用いる。延伸部212の長さ寸法Lの下限値は、太陽の南中高度が最も高い夏至における南中高度約78度に基づき、開口部26の高さ寸法Hに対して約0.2倍が算出される。一方、延伸部212の長さ寸法Lの上限値は、太陽の南中高度が最も低い冬至における南中高度約32度に基づき、開口部26の高さ寸法Hに対して約1.6倍が算出される。
【0025】
具体的な延伸部212の長さ寸法Lの範囲は、製品上の壁部22と受け部21との溶接代等を考慮すると、上述した下限値と上限値との中間値から上限値まで、つまり、開口部26の高さ寸法Hに対して約0.7倍から約1.6倍の範囲とすることが好ましいと考えられる。このようにして、少なくとも夏至における太陽の南中高度において、開口部26から水路部11に対して日光が直接照射することを防ぐことができる。そして、排水溝ユニット1の幅方向について見た場合の延伸部212の長さ寸法Lは、開口部26の高さ寸法Hよりも長く設定することができる。本実施形態では、延伸部212の長さ寸法Lは、
図1に示すように、開口部26の高さ寸法Hに対して約1.6倍に設定される。これにより、延伸部212による開口部26から空間31内に入射する日光の遮光効果を十分に得ることができる。
【0026】
以上説明した実施形態によれば、排水溝ユニット1は、水路形成部材10と、カバー部材20と、を備えている。水路形成部材10は、水が流れる水路部11を形成する。カバー部材20は、水路形成部材10に取り付けられて、水路形成部材10との間に水路部11を含む空間31を形成する。また、カバー部材20は、受け部21と、壁部22と、を有している。受け部21は、路面51から流れる水を受ける。壁部22は、受け部21に対して角度を有して接続されている。壁部22は、壁部22を貫いて形成され、空間31の内部と外部を連通し、受け部21に接して配置された開口部26を有する。そして、受け部21は、空間31の外部から開口部26を跨いて空間31の内部まで延びている。
【0027】
これによれば、開口部26から水路部11に対して照射される光が受け部21によって遮られるため、水路部11における雑草の生育を抑制することができる。これにより、水路部11における水の流れが雑草によって阻害されることがなく、円滑に排水を行うことができる。更に、受け部21は、路面51から流れてきた水を水路部11に導く機能と水路部11に対する遮光機能とを兼用する構造とすることで、排水溝ユニット1に水路部11に対する遮光のための別部品を配置する必要をなくすことができる。よって、部品点数の削減を図るとともに、排水溝ユニット1の組立作業性を向上することができる。その結果、排水溝ユニット1の製造コストの低減を図ることができる。
【0028】
また、受け部21の空間31内における端部211は、水路形成部材10から離れている。これによれば、受け部21の端部211と水路形成部材10との間に形成される隙間から水路部11に水を導入することができる。これにより、排水溝ユニット1は、簡略な構造によって、路面51に溜まった水を受け部21から水路部11に導くことができる。これにより、排水溝ユニット1の製造コストの低減を図ることができる。
【0029】
更に、開口部26は、壁部22の下端部を切り欠いて形成されている。これによれば、開口部26を形成するための加工性を向上することで、排水溝ユニット1の製造コストを低減することができる。また、受け部21を流れた水が通る開口部26を壁部22だけに形成することで、構造を簡略化することができる。
【0030】
また、受け部21は、空間31の内部と外部とを連通する穴又は切り欠きを有さない平坦な部材で構成されている。これによれば、受け部21に水路部11に対して水を導入するための穴等を設けないことで、構造を簡略化するとともに、加工手間などの製造コストを抑えることができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、この実施形態は、上記し又図面に記載した態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形や拡張をすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1は排水溝ユニット、10は水路形成部材、20はカバー部材、21は受け部、211は端部、22は壁部、26は開口部、31は空間、を示す。