(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】非常止め装置、エレベーター及び非常止め装置の復帰方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/22 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
B66B5/22 Z
(21)【出願番号】P 2021088869
(22)【出願日】2021-05-27
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 智久
(72)【発明者】
【氏名】座間 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康司
(72)【発明者】
【氏名】久保 洋輔
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/044662(WO,A1)
【文献】中国実用新案第210884790(CN,U)
【文献】実開昭61-157578(JP,U)
【文献】実開昭47-010269(JP,U)
【文献】実開昭50-136161(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降体に設けられ、かつ前記昇降体が摺動するガイドレールを挟持する制動子を有し、
前記昇降体の移動を停止させる制動機構と、
前記制動子に接続される引き上げ部材と、
前記引き上げ部材に接続する接続部を有し、前記制動機構を動作させる駆動機構と、
前記駆動機構に接続され、前記駆動機構を作動させる作動機構と、を備え、
前記接続部は、前記引き上げ部材に対して昇降方向の上方への力のみを伝達さ
せ、
前記作動機構は、復帰動作時に、前記駆動機構から前記制動子に対する昇降方向の上方への荷重を解除し、
前記作動機構の復帰動作が完了すると、前記昇降体が上昇運転し、前記制動子による前記ガイドレールの挟持が解除される
非常止め装置。
【請求項2】
前記制動機構は、
前記制動子を前記ガイドレールに挟持する方向に移動可能に支持する連結部材を備え、
前記引き上げ部材は、前記連結部材に接続される
請求項1に記載の非常止め装置。
【請求項3】
前記接続部には、前記引き上げ部材が昇降方向に沿って移動可能に挿通する孔が形成されている
請求項1に記載の非常止め装置。
【請求項4】
前記引き上げ部材における前記接続部よりも昇降方向の上方には、前記接続部に当接するストッパが設けられる
請求項3に記載の非常止め装置。
【請求項5】
前記駆動機構は、
前記昇降体に設けた作動軸に回動可能に支持され、前記接続部に接続されるリンク部材と、
前記リンク部材における前記接続部に接続された端部を昇降方向の上方に向けて付勢する駆動ばねと、を備え、
前記接続部は、前記リンク部材が接続される端部を回転可能に支持する軸部を有する
請求項4に記載の非常止め装置。
【請求項6】
前記作動機構は、
前記リンク部材に接続される接続部材と、
前記接続部材に固定された可動鉄心と、
前記可動鉄心を分離可能に吸着する電磁コアと、
前記電磁コアを前記可動鉄心に対して接近及び離間する方向に移動可能に支持する移動機構と、を備え、
前記移動機構は、前記電磁コアを移動させる駆動部を有する
請求項5に記載の非常止め装置。
【請求項7】
昇降路内を昇降移動する昇降体を備えたエレベーターにおいて、
前記昇降路内に立設されて前記昇降体を摺動可能に支持するガイドレールと、
前記昇降体の昇降移動の状態に基づいて前記昇降体の移動を停止させる非常止め装置と、を備え、
前記非常止め装置は、
前記昇降体に設けられ、かつ前記昇降体が摺動するガイドレールを挟持する制動子を有し、前記昇降体の移動を停止させる制動機構と、
前記制動子に接続される引き上げ部材と、
前記引き上げ部材に接続する接続部を有し、前記制動機構を動作させる駆動機構と、
前記駆動機構に接続され、前記駆動機構を作動させる作動機構と、を備え、
前記接続部は、前記引き上げ部材に対して昇降方向の上方への力のみを伝達さ
せ、
前記作動機構は、復帰動作時に、前記駆動機構から前記制動子に対する昇降方向の上方への荷重を解除し、
前記作動機構の復帰動作が完了すると、前記昇降体が上昇運転し、前記制動子による前記ガイドレールの挟持が解除される
エレベーター。
【請求項8】
昇降体に設けられ、かつ前記昇降体が摺動するガイドレールを挟持する制動子を有し、
前記昇降体の移動を停止させる制動機構と、前記制動子に接続される引き上げ部材と、前記引き上げ部材に接続する接続部を有し、前記制動機構を動作させる駆動機構と、前記駆動機構に接続され、前記駆動機構を作動させる作動機構と、を備え、前記接続部は、前記引き上げ部材に対して昇降方向の上方への力のみを伝達させる非常止め装置の復帰方法において、
前記作動機構の復帰動作を行い、前記駆動機構から前記制動子に対する昇降方向の上方への荷重を解除させる工程と、
前記作動機構の復帰動作が完了すると、前記昇降体を上昇運転させて、前記制動子による前記ガイドレールの挟持を解除させる工程と、
を含む非常止め装置の復帰方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常時に乗りかごを停止させる非常止め装置、この非常止め装置を備えたエレベーター及び非常止め装置の復帰方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ロープ式のエレベーターは、乗りかごと釣合おもりを連結する主ロープ及びコンペンロープや、乗りかご又は釣合おもりの速度を検出するために用いられる調速機ロープ等の長尺物を有している。また、エレベーターには、安全装置として、ガイドレールに沿って昇降する乗りかごの速度が規定された値を超えたときに、乗りかごの運転を自動的に停止する非常止め装置を設けることが規定されている。
【0003】
近年では、調速機を用いずに電気的に非常止め装置の制動機構を作動させる非常止め装置が提案されている。従来の、この種の非常止め装置としては、例えば、特許文献1に記載されている技術がある。この特許文献1には、常止め装置は、制動機構と、駆動機構と、作動機構と、を備えた非常止め装置が記載されている。駆動機構は、引き上げ部材と、リンク部材と、駆動軸と、駆動ばねと、を備えている。駆動ばねは、駆動軸に設けられ、駆動軸が制動子を引き上げる方向に駆動軸を付勢する。作動機構は、接続部材と、可動鉄心と、電磁コアと、保持復帰機構と、を備えている。接続部材は、リンク部材の他端部に接続される。可動鉄心は、接続部材に固定される。電磁コアは、可動鉄心を吸着及び離間させる。保持復帰機構は、電磁コアを可動鉄心に対して接近及び離間する方向に移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術において復帰動作を行う場合、作動機構に設けられた駆動部を動作させて、引き上げ部材を駆動ばねの付勢力に抗して押し下げると共に制動機構の制動子によるガイドレールの挟持を解除させていた。その結果、特許文献1に記載された技術では、作動機構の駆動部には、駆動ばねの付勢力に抗する力だけでなく、制動子の挟持を解除する力が必要となり、作動機構の駆動部が大型化していた。
【0006】
さらに、特許文献1に記載された技術では、復帰動作時において、制動子の挟持を解除させるために、作動機構の駆動部を駆動させながら同時に乗りかごを上昇運転させる必要があった。このように、特許文献1に記載された技術では、復帰動作時における各種装置の制御が煩雑なものとなっていた、という問題も有していた。
【0007】
本目的は、上記の問題点を考慮し、作動機構の駆動部の小型化を図ると共に復帰動作を容易に行うことができる非常止め装置、エレベーター及び非常止め装置の復帰方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するため、非常止め装置は、制動機構と、引き上げ部材と、駆動機構と、作動機構と、を備えている。制動機構は、昇降体に設けられ、かつ昇降体が摺動するガイドレールを挟持する制動子を有し、昇降体の移動を停止させる。引き上げ部材は、制動子に接続される。駆動機構は、引き上げ部材に接続する接続部を有し、制動機構を動作させる。作動機構は、駆動機構に接続され、駆動機構を作動させる。そして、接続部は、引き上げ部材に対して昇降方向の上方への力のみを伝達させる。
【0009】
また、エレベーターは、昇降路内を昇降移動する昇降体を備えたエレベーターにおいて、
昇降路内に立設されて昇降体を摺動可能に支持するガイドレールと、昇降体の昇降移動の状態に基づいて昇降体の移動を停止させる非常止め装置と、を備えている。また、非常止め装置としては、上述した非常止め装置が用いられる。
【0010】
また、非常止め装置の復帰方法は、上述した構成を有する非常止め装置の復帰方法において、以下(1)から(2)に示す工程を含んでいる。
(1)作動機構の復帰動作を行い、駆動機構から制動子に対する昇降方向の上方への荷重を解除させる工程。
(2)作動機構の復帰動作が完了すると、昇降体を上昇運転させて、制動子によるガイドレールの挟持を解除させる工程。
【発明の効果】
【0011】
上記構成の非常止め装置、エレベーター及び非常止め装置の復帰方法によれば、作動機構の駆動部の小型化を図ると共に復帰動作を容易に行うことができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態例にかかるエレベーターを示す概略構成図である。
【
図2】実施の形態例にかかる非常止め装置を示す正面図である。
【
図3】実施の形態例にかかる非常止め装置の制動機構を示すもので、
図3Aは正面図、
図3Bは断面図である。
【
図4】実施の形態例にかかる非常止め装置の作動機構を示す正面図である。
【
図5】実施の形態例にかかる非常止め装置の作動機構が作動した状態を示す正面図である。
【
図6】実施の形態例にかかる非常止め装置の復帰動作を示す説明図である。
【
図7】実施の形態例にかかる非常止め装置の復帰動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態例にかかる非常止め装置、エレベーター及び非常止め装置の復帰方法について、
図1~
図7を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0014】
1.実施の形態例
1-1.エレベーターの構成例
まず、実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかるエレベーターの構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本例のエレベーターの構成例を示す概略構成図である。
【0015】
図1に示すように、本例のエレベーター1は、建築構造物内に形成された昇降路110内を昇降動作する。エレベーター1は、人や荷物を載せる昇降体の一例を示す乗りかご120と、主ロープ130と、昇降体の他の例を示す釣合おもり140と、を備えている。また、エレベーター1は、巻上機100と、非常止め装置5とを備えている。
【0016】
また、エレベーター1は、制御部170と、反らせ車150と、を備えている。なお、昇降路110は、建築構造物内に形成され、その頂部には機械室160が設けられている。
【0017】
機械室160には、巻上機100と、反らせ車150が配置されている。巻上機100における付図の綱車には、主ロープ130が巻き掛けられている。また、巻上機100の近傍には、主ロープ130が装架される反らせ車150が設けられている。
【0018】
主ロープ130の一端には、乗りかご120の上部が接続され、主ロープ130の他端には、釣合おもり140の上部が接続されている。巻上機100が駆動することで、乗りかご120及び釣合おもり140が昇降路110を昇降する。以下、乗りかご120及び釣合おもり140が昇降移動する方向を昇降方向Zとする。
【0019】
乗りかご120は、不図示のガイド装置を介して2つのガイドレール201A、201Bに摺動可能に支持されている。同様に、釣合おもり140は、おもり側ガイドレール201Cに不図示のガイド装置を介して摺動可能に支持されている。2つのガイドレール201A、201Bと、おもり側ガイドレール201Cは、昇降路110内において昇降方向Zに沿って延在する。
【0020】
また、乗りかご120には、乗りかご120の昇降移動を非常停止させる非常止め装置5が設けられている。非常止め装置5の詳細な構成については、後述する。
【0021】
さらに、機械室160には、制御部170が設置されている。制御部170は、不図示の接続配線を介して乗りかご120に接続されている。そして、制御部170は、乗りかご120に制御信号を出力する。また、制御部170は、昇降路110内に設置されて、乗りかご120の状態を検出する不図示の状態検出センサが接続されている。
【0022】
状態検出センサが検出する情報としては、昇降路110内を昇降移動する乗りかご120の位置情報、乗りかご120の速度情報や、乗りかご120の加速度情報等である。乗りかご120の位置情報としては、例えば、同一の昇降路110内に複数の乗りかご120が昇降移動するマルチカーエレベーターにおいて、上下に隣接する2つの乗りかご120の間隔が所定の間隔よりも接近した際に検出される異常接近情報である。
【0023】
また、乗りかご120の速度情報としては、例えば、乗りかご120の下降速度が定格速度を超えて所定の速度に達した際に検出される異常下降速度情報である。そして、乗りかご120の加速度情報としては、例えば、乗りかご120の加速度が予め設定されたパターンから逸脱した際に検出される異常加速度情報である。状態検出センサは、検出した情報を制御装置に出力する。
【0024】
制御部170は、状態検出センサで検出された情報に基づいて乗りかご120の状態が異常か正常であるかを判断する。そして、制御部170は、乗りかご120の状態が異常であると判断した場合、非常止め装置5に動作指令信号を出力する。これにより、非常止め装置5は、制御部170からの動作指令信号に基づいて、作動して、乗りかご120を停止させる。
【0025】
なお、本例では、状態検出センサが、位置情報、速度情報及び加速度情報を検出する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、位置情報、速度情報及び加速度情報をそれぞれ異なるセンサで検出してもよい。さらに、制御部170は、位置情報、速度情報、加速度情報を選択して単独で取得してもよく、あるいは複数の情報を組み合わせて取得してもよい。
【0026】
なお、制御部170と乗りかご120は、有線により接続される例に限定されるものではなく、無線により信号が送受信可能に接続されていてもよい。
【0027】
以下、乗りかご120が昇降移動する方向を昇降方向Zとし、昇降方向Zと直交し、乗りかご120とガイドレール201Aと対向する方向を第1の方向Xとする。そして、第1の方向Xと直交し、かつ昇降方向Zとも直交する方向を第2の方向Yとする。
【0028】
1-2.非常止め装置の構成
次に、非常止め装置5の詳細な構成について
図2~
図6を参照して説明する。
図2は、非常止め装置5を示す正面図である。
【0029】
図2に示すように、非常止め装置5は、2つの制動機構10A、10Bと、作動機構11と、制動機構10A、10Bを動作させる駆動機構12と、第1引き上げ部材13と、第2引き上げ部材14と、を有している。作動機構11は、乗りかご120の上部に設けられたクロスヘッド121に配置されている。
【0030】
[駆動機構]
駆動機構12は、駆動軸15と、第1リンク部材16と、第2リンク部材17と、第1作動軸18と、第2作動軸19と、駆動ばね20とを有している。
【0031】
第1作動軸18及び第2作動軸19は、乗りかご120の上部に設置されたクロスヘッド121に設けられている。第1作動軸18は、クロスヘッド121における第1の方向Xの一端部に設けられ、第2作動軸19は、クロスヘッド121における第1の方向Xの他端部に設けられている。第1作動軸18には、第1リンク部材16が回動可能に支持されており、第2作動軸19には、第2リンク部材17が回動可能に支持されている。
【0032】
第1リンク部材16及び第2リンク部材17は、略T字状に形成されている。第1リンク部材16は、作動片16aと、接続片16bとを有している。作動片16aは、接続片16bから略垂直に突出している。また、作動片16aは、接続片16bの長手方向における中間部よりも一端部側に接続されている。そして、作動片16aは、乗りかご120の第1の方向Xのマイナス側(図中の左側をいう。以下、図中のXYZ軸における紙面の左側及び紙面の下側をマイナス側とし、XYZ軸にける紙面の右側及び紙面の上側をプラス側とする。)に配置されたガイドレール201Aに向けて突出している。作動片16aにおける接続片16bとは反対側の端部には、接続部26を介して第1引き上げ部材13が接続されている。なお、接続部26の詳細な構成については、後述する。
【0033】
第1リンク部材16は、作動片16aと接続片16bが接続する箇所において第1作動軸18に回動可能に支持される。接続片16bにおける長手方向の一端部には、連結部25を介して駆動軸15が接続されている。また、接続片16bにおける駆動軸15と接続する端部とは反対側の端部、すなわち長手方向の他端部には、後述する作動機構11の接続部材41が接続されている(
図3参照)。
【0034】
第1リンク部材16は、接続片16bにおける長手方向の一端部を昇降方向Zの上方に向け、接続片16bにおける長手方向の他端部を昇降方向Zの下方に向けて配置される。
【0035】
第2リンク部材17は、作動片17aと、接続片17bとを有している。作動片17aは、接続片17bから略垂直に突出している。また、作動片17aは、接続片17bにおける長手方向の中間部に接続されている。そして、作動片17aは、乗りかご120の第1の方向Xのプラス側に配置されたガイドレール201Bに向けて突出している。作動片17aにおける接続片17bとは反対側の端部には、接続部28を介して第2引き上げ部材14が接続されている。
【0036】
接続片17bにおける長手方向の他端部には、連結部27を介して駆動軸15が接続されている。そして、第2リンク部材17は、作動片17aと接続片17bの接続箇所において第2作動軸19に回動可能に支持される。また、第2リンク部材17は、接続片17bにおける長手方向の一端部を昇降方向Zの上方に向け、接続片17bにおける長手方向の他端部を昇降方向Zの下方に向けて配置される。
【0037】
駆動軸15における第1の方向Xの一端部は、第1リンク部材16の接続片16bに接続されており、駆動軸15における第1の方向Xの他端部は、第2リンク部材17の接続片17bに接続されている。また、駆動軸15の軸方向の中間部には、駆動ばね20が設けられている。
【0038】
駆動ばね20は、例えば、圧縮コイルばねにより構成されている。駆動ばね20の一端部は、固定部21を介してクロスヘッド121に固定されており、駆動ばね20の他端部は、押圧部材22を介して駆動軸15に固定されている。そして、駆動ばね20は、押圧部材22を介して駆動軸15を第1の方向Xのプラス側に向けて付勢している。
【0039】
作動機構11が作動すると、駆動軸15は、駆動ばね20によって付勢されて、第1の方向Xのプラス側に向けて移動する。これにより、第1リンク部材16は、作動片16aにおける第1引き上げ部材13が接続された端部が昇降方向Zの上方を向くように第1作動軸18を中心に回動する。また、第2リンク部材17は、作動片17aにおける第2引き上げ部材14が接続された端部が昇降方向Zの上方を向くように第2作動軸19を中心に回動する。その結果、第1引き上げ部材13と第2引き上げ部材14が連動して、昇降方向Zの上方に向けて引き上げられる。
【0040】
また、第1引き上げ部材13における作動片16aが接続された端部とは反対側の端部には、第1制動機構10Aが接続されている。第2引き上げ部材14における作動片17aが接続された端部とは反対側の端部には、第2制動機構10Bが接続されている。そして、第1引き上げ部材13は、後述する第1制動機構10Aの一対の制動子31、31(
図3参照)を昇降方向Zの上方に向けて引き上げる。また、第2引き上げ部材14は、後述する第2制動機構10Bの一対の制動子31、31を昇降方向Zの上方に向けて引き上げる。
【0041】
第1制動機構10A及び第2制動機構10Bは、乗りかご120の昇降方向Zの下端部に配置されている。第1制動機構10Aは、乗りかご120の第1の方向Xの一端部において、ガイドレール201Aと対向して配置されている。また、第2制動機構10Bは、乗りかご120の第1の方向Xの他端部においてガイドレール201Bと対向して配置されている。
【0042】
次に、第1制動機構10A及び第2制動機構10Bと、接続部26、28の詳細な構成について
図3A及び
図3Bを参照して説明する。
【0043】
図3A及び
図3Bは、制動機構10A、10B及び接続部26を示す図である。
第1制動機構10Aと第2制動機構10Bは、それぞれ同一の構成を有しているため、ここでは、第1制動機構10Aについて説明する。そして、第1制動機構10Aを単に制動機構10と称する。
【0044】
図3Aに示すように、接続部26は、筒状に形成されている。そして、接続部26の筒孔には、第1引き上げ部材13の昇降方向Zの上端部が昇降方向Zに沿って移動可能に挿通している。また、接続部26には、作動片16aを回転可能に支持する軸部26aが形成されている。なお、第1引き上げ部材13の上端部には、ストッパ26bが設けられている。ストッパ26bは、第1引き上げ部材13において接続部26よりも昇降方向Zの上端部側に配置される。接続部26に当接することで、第1引き上げ部材13が接続部26から抜け出ることを防止している。
【0045】
なお、本例では、接続部26を筒状に形成した例を説明したが、これに限定されるものではない。接続部26としては、第1引き上げ部材13が移動可能に挿通する孔を有して入ればよく、筒状以外にその他各種の形状で形成してもよい。
【0046】
接続部26は、第1リンク部材16が回動し、接続片16bが昇降方向Zの上方に向けて回動した際に、ストッパ26bに当接する。そして、接続部26は、第1リンク部材16の回転トルクを、ストッパ26bを介して、第1引き上げ部材13に伝達する。これにより、第1引き上げ部材13は、接続部26と共に昇降方向Zの上方に向けて引き上げられる。
【0047】
また、第1リンク部材16が回動し、接続片16bが昇降方向Zの下方に向けて回動した場合、接続部26は、接続片16bと共に昇降方向Zの下方に向けて移動する。なお、第1引き上げ部材13における接続部26よりも昇降方向Zの下方には、ストッパが設けられていない。そのため、接続部26が昇降方向Zの下方に移動した際の荷重は、第1引き上げ部材13に伝達されない。すなわち、接続部26は、駆動機構12からの駆動力のうち昇降方向Zの上方への力のみを第1引き上げ部材13に伝達する。その結果、第1引き上げ部材13に沿って、接続部26のみが昇降方向Zの下方に向けて移動する。
【0048】
なお、接続部28は、接続部26と同様の構成を有しているため、その説明は省略する。
【0049】
図3A及び
図3Bに示すように、制動機構10は、枠体30と、一対の制動子31と、一対のガイド部材32、32と、連結部材33と、付勢部材34とを有している。一対の制動子31は、ガイドレール201Aを間に挟んで互いに対向して配置される。そして、非常止め装置5が作動する前の状態では、一対の制動子31とガイドレール201Aとの間には、所定の間隔が形成されている。
【0050】
制動子31におけるガイドレール201Aと対向する一面は、ガイドレール201Aの一面と平行、すなわち昇降方向Zと平行に形成されている。また、制動子31におけるガイドレール201Aと対向する一面とは反対側の他面は、昇降方向Zの下方から上方に向かうにつれてガイドレール201Aに接近するように傾斜している。したがって、制動子31は、くさび状に形成されている。
【0051】
一対の制動子31、31は、支持ボルト36を介して連結部材33の昇降方向Zの下端部に取り付けられている。支持ボルト36は、連結部材33の下端部に設けた貫通孔33aを挿通している。そして、一対の制動子31、31は、支持ボルト36を介して連結部材33によりガイドレール201Aに接近及び離反する方向に移動可能に支持されている。
【0052】
図3Bに示すように、連結部材33には、第1引き上げ部材13が接続される。そして、第1引き上げ部材13が昇降方向Zの上方に引き上げられることで、一対の制動子31、31及び連結部材33は、昇降方向Zの上方に向けて移動する。なお、一対の制動子31、31は、支持ボルト36の長さだけ連結部材33に対して昇降方向Zに移動可能に配置される。
【0053】
また、一対の制動子31、31は、一対のガイド部材32、32によって移動可能に支持されている。一対のガイド部材32、32は、枠体30を介して乗りかご120(
図2参照)に固定されている。また、一対のガイド部材32、32は、ガイドレール201Aと一対の制動子31、31を間に挟んで所定の間隔を空けて対向する。
【0054】
ガイド部材32における制動子31と対向する一面は、昇降方向Zの上方に向かうにつれてガイドレール201Aに接近するように傾斜している。そのため、一対のガイド部材32、32における制動子31と対向する一面の間隔は、昇降方向Zの上方に向かうにつれて狭まっている。
【0055】
また、ガイド部材32における制動子31と対向する一面とは反対側の他面には、付勢部材34が配置されている。付勢部材34は、例えば、昇降方向Zと直交する水平方向で切断した断面形状がU字状の板ばねにより構成されている。付勢部材34における両端部は、ガイドレール201Aを間に挟んで所定の間隔を空けて対向する。そして、付勢部材34の両端部における互いに対向する一面には、ガイド部材32が固定される。
【0056】
なお、付勢部材34としては、U字状の板ばねに限定されるものではなく、例えば、圧縮コイルばねを用いて、ガイド部材32と不図示の枠体との間に介在させてもよい。
【0057】
一対の制動子31、31がガイド部材32に対して相対的に昇降方向Zの上方に移動すると、一対の制動子31、31は、ガイド部材32により互いに接近する方向、すなわちガイドレール201Aに接近する方向へ移動する。さらに、一対の制動子31が昇降方向Zの上方に移動すると、一対の制動子31は、ガイド部材32を介して付勢部材34の付勢力によりガイドレール201Aに押し付けられる。これにより、乗りかご120の昇降移動が制動される。
【0058】
[作動機構]
次に、
図4を参照して作動機構11について説明する。
図4は、作動機構11を示す正面図である。なお、
図4は、作動機構11の待機状態を示している。
【0059】
図3及び
図4に示すように、作動機構11は、接続部材41と、電磁コア43と、可動鉄心44と、ベースプレート45と、送りねじ軸47と、送りナット48と、不図示の駆動モータと、を備えている。そして、作動機構11は、駆動機構12を作動させる。
【0060】
ベースプレート45は、平板状の部材により形成されている。ベースプレート45は、クロスヘッド121に固定される。なお、ベースプレート45を固定する箇所は、クロスヘッド121に限定されるものではなく、昇降体である乗りかご120であれば特に限定されるものではない。ベースプレート45における昇降方向Zの上方の上面部45aには、第1軸支持部54と、第2軸支持部55が固定されている。
【0061】
第1軸支持部54は、ベースプレート45の一端部に配置され、第2軸支持部55は、ベースプレート45の他端部に配置されている。第1軸支持部54と第2軸支持部55は、互いに対向して配置される。第1軸支持部54と第2軸支持部55には、送りねじ軸47が回転可能に支持されている。そして、送りねじ軸47は、第1軸支持部54と第2軸支持部55の間において、その軸方向が第1の方向Xと平行に配置される。また、第1軸支持部54と第2軸支持部55の一方には、不図示の駆動モータが配置される。そして、駆動モータの回転軸は、カップリングを介して送りねじ軸47に取り付けられる。
【0062】
送りねじ軸47の外周面には、台形ねじが形成されている。そして、送りねじ軸47には、送りナット48が螺合する。送りナット48には、電磁コア43が固定されている。電磁コア43には、コイルが設けられている。不図示の電源からコイルに電力が供給され、コイルが通電すると、電磁コア43とコイルにより電磁石が構成される。電磁コア43における送りナット48に固定された端部と反対側の端部は、第1の方向Xを向いている。そして、電磁コア43は、後述する接続部材41に取り付けられた可動鉄心44と対向する。
【0063】
駆動モータは、制御部170により駆動が制御されている。駆動モータが回転すると、送りねじ軸が回転する。そして、送りねじ軸47が回転することで、ねじ部とねじ孔により送りねじ軸47の回転力が第1の方向Xに沿った力に変換される。そして、送りナット48は、第1の方向Xに沿って移動する。また、送りナット48が固定された電磁コア43も第1の方向Xに沿って移動する。
【0064】
駆動モータが正回転(正転)すると、送りナット48は、第1の方向Xの一端部、すなわち第1軸支持部54側へ移動する。そして、駆動モータが逆回転(逆転)すると、送りナット48は、第1の方向Xの他端部、すなわち第2軸支持部55側へ移動する。ここで、第2軸支持部55は、送りナット48及び電磁コア43の待機位置に配置される。そして、作動機構11の待機状態、及び制動状態から復帰状態に戻る際に、第2軸支持部55には、電磁コア43が送りナット48を介して当接する。
【0065】
接続部材41は、接続ピン41aを介して第1リンク部材16の接続片16bに回転可能に連結されている。また、接続部材41には、可動鉄心44が固定されている。可動鉄心44は、接続部材41に支持されて、送りナット48に固定された電磁コア43と対向する。
図4に示す待機状態において、可動鉄心44は、電磁コア43に吸着されている。
【0066】
また、駆動モータ、送りねじ軸47及び送りナット48により、電磁コア43を可動鉄心44に対して接近及び離間する方向(本例では、第1の方向X)に移動させる移動機構が構成される。
【0067】
また、上述した作動機構11を構成する接続部材41、電磁コア43、可動鉄心44と、ベースプレート45、駆動モータ、送りねじ軸47及び送りナット48は、不図示の筐体の中に収容される。このように、接続部材41や、保持部を構成する電磁コア43、移動機構を構成する送りねじ軸47や駆動モータを一つの筐体に収容することで、非常止め装置5が大型化することを抑制することができる。また、作動機構11の機能を一箇所に集約することで、メンテナンス作業も容易に行うことができる。
【0068】
また、上述したように、駆動ばね20を作動機構11とは別の位置に配置し、リンク機構である第1リンク部材16を介して駆動ばね20と作動機構11とを接続している。これにより、作動機構11の小型化を図ることができる。
【0069】
2.非常止め装置の動作例
次に、上述し構成を有する非常止め装置5の動作例について説明する。
【0070】
[待機状態]
まず、
図4を参照して非常止め装置5の待機状態について説明する。
図4に示すように、非常止め装置5の待機状態では、電磁コア43は、送りねじ軸47における第1の方向Xの他端部側に配置される。また、電磁コア43のコイルが通電されており、電磁コア43が励磁されている。これにより、電磁コア43とコイルによる電磁石が構成される。
【0071】
電磁コア43に可動鉄心44が吸着される。そのため、可動鉄心44が固定された接続部材41を介して、第1リンク部材16の接続片16bの一端部を第1の方向Xのプラス側に向けて保持する。その結果、接続片16bの他端部に接続された駆動軸15は、駆動ばね20の付勢力に抗して、第1の方向Xのマイナス側に付勢される。
【0072】
このとき、送りナット48は、第2軸支持部55に当接している。上述したように、第2軸支持部55は、可動部材の待機位置に配置されている。そのため、送りナット48が第2軸支持部55に当接する位置が、非常止め装置5の待機状態に設定される。そして、可動鉄心44に連結される制動機構10A、10Bの制動子31と、ガイドレール201A、201Bとの間隔が所望の間隔に調整されている。
【0073】
これにより、可動部材である電磁コア43、可動鉄心44及び送りナット48の位置決めを容易に行うことができる。また、送りナット48が第2軸支持部55に当接することで、可動部材における第1の方向Xの他端部側、すなわちプラス側への移動が規制される。これにより、制動子31とガイドレール201A、201Bとの間隔がずれることを防止することができる。
【0074】
また、送りナット48の位置を検出するスイッチを用いることなく送りナット48の位置を規制することができるため、非常止め装置5の部品点数の削減を図ることができ、スイッチの位置を調整する作業が不要となる。
【0075】
なお、スイッチを設けることなく送りナット48の位置を検出する例を説明したが、送りナット48や電磁コア43の位置を検出するスイッチを設けてもよい。
【0076】
[制動状態への動作]
次に、
図5を参照して待機状態から制動状態への動作について説明する。
図5は、作動機構11が作動した状態を示す正面図である。
【0077】
乗りかご120(
図1及び
図2参照)が下降移動時において、乗りかご120の下降速度が所定の速度を超過したことを制御部170が判断すると、制御部170は、非常止め装置5に動作指令信号を出力する。これにより、電磁コア43への通電が遮断される。なお、電磁コア43への通電の遮断は、乗りかご120の速度超過だけでなく、エレベーター1の停電時にも発生する。
【0078】
電磁コア43への通電が遮断されることで、電磁コア43の磁性が消去される。これにより、
図5に示すように、駆動軸15は、駆動ばね20の付勢力により第1の方向Xのプラス側へ移動し、第1リンク部材16の一端部も駆動軸15と共に第1の方向Xのプラス側へ移動する。その結果、第1リンク部材16が第1作動軸18を中心に回動し、第2リンク部材17が第2作動軸19を中心に回動する。このように、作動機構11により駆動機構12が作動する。
【0079】
また、
図5に示すように、第1リンク部材16が回動することで、可動鉄心44が電磁コア43から分離する。第1リンク部材16の回動に伴って、接続部材41は、第1の方向Xのマイナス側に移動する。
【0080】
第1リンク部材16が回動し、作動片16aが昇降方向Zの上方に向けて移動すると、作動片16aと共に接続部26が昇降方向Zの上方へ移動する。そして、接続部26がストッパ26bに当接し、ストッパ26bが接続部26により昇降方向Zの上方に向けて押圧される。これにより、第1引き上げ部材13が昇降方向Zの上方に向けて引き上げられる。なお、第2リンク部材17、第2引き上げ部材14及び接続部28の動作も第1リンク部材16及び第1引き上げ部材13及び接続部26の動作と同様であるため、その説明は省略する。
【0081】
第1引き上げ部材13と第2引き上げ部材14が昇降方向Zの上方に向けて引き上げられることで、第1引き上げ部材13に接続された第1制動機構10Aと、第2引き上げ部材14に接続された第2制動機構10B(
図2参照)が作動する。その結果、第1制動機構10A及び第2制動機構10Bの一対の制動子31(
図3参照)が昇降方向Zの上方に移動し、第2引き上げ部材14に連結する第2制動機構10Bの一対の制動子31がガイドレール201A、201Bを挟持することで、乗りかご120の昇降移動が機械的に停止される。
【0082】
また、可動鉄心44が電磁コア43から分離することで、移動機構である送りねじ軸47と送りナット48との摩擦力及び保持力の影響を受けることなく、接続部材41を移動させることができる。
【0083】
[復帰動作]
次に、非常止め装置5が制動状態から待機状態に復帰する復帰動作について
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は、作動機構11及び制動機構10における復帰動作を示す説明図である。
図7は、復帰動作を示すフローチャートである。
【0084】
図7に示すように、待機状態において、電磁コア43のコイルへの電力供給が遮断又は喪失(ステップS11)すると、上述した
図5に示すように、作動機構11が作動する。そして、制御部170は、乗りかご10が制動機構10A、10Bにより乗りかご10が停止したか否かを判断する(ステップS12)。ここで、ステップS12の処理では、乗りかご10の停止状態の判定だけではなく、作動機構11が動作したか否か等の情報によって総合的に非常止め装置5の状態を判断してもよい。
【0085】
ステップS12の処理において、制御部170は、乗りかご10が停止していると判断した場合(ステップS12のYES判定)、後述するトリガである作動機構11の復帰動作を行う(ステップS13)。
【0086】
ステップS13に示す復帰動作において、まず、制御部170は、電源を制御し、電磁コア43のコイルに通電する。これにより、コイルが通電されることで、電磁コア43は、励磁する。次に、制御部170は、駆動モータ46を回転で駆動し、送りねじ軸47を回転させる。送りねじ軸47が回転することで、送りねじ軸47と送りナット48のねじ部とねじ孔により送りねじ軸47の回転力が第1の方向Xに沿った力に変換される。送りナット48は、第1の方向Xのマイナス側に向けて移動する。そして、送りナット48に固定された電磁コア43も可動鉄心44に接近する向き、すなわち第1の方向Xのマイナス側に移動する。
【0087】
次に、電磁コア43が可動鉄心44に接触すると、可動鉄心44が電磁コア43に吸着される。次に、制御部170は、駆動モータ46を回転で駆動し、送りねじ軸47を回転させる。これにより、送りねじ軸47に螺合する送りナット48が第1の方向Xのプラス側に向けて移動する。そのため、電磁コア43、電磁コア43に吸着された可動鉄心44及び接続部材41が第1の方向Xのプラス側に向けて移動する。
【0088】
接続部材41が第1の方向Xのプラス側に移動することで、第1リンク部材16は、駆動ばね20の付勢力に抗して、回動する。そして、送りナット48が第2軸支持部55に当接すると、送りナット48及び電磁コア43における第1の方向Xのプラス側への移動が規制される。これにより、可動部材である電磁コア43、可動鉄心44及び送りナット48の位置決めを容易に行うことができる。
【0089】
また、第1リンク部材16が回動することで、接続片16bが昇降方向Zの下方に向けて回動し、接続部26が接続片16bと共に昇降方向Zの下方に向けて移動する。上述したように、接続部26と第1引き上げ部材13は、昇降方向Zの上方への力のみが伝達される。したがって、第1引き上げ部材13に沿って接続部26のみが昇降方向Zの下方に向けて移動する。そのため、作動機構11及び第1リンク部材16には、制動機構10の制動子31がガイドレール201Aを挟持する力は、作用しない。これにより、作動機構11に設けられた駆動モータ(駆動部)の駆動力は、駆動機構12の駆動ばね20の付勢力に抗する力のみだけでよくなる。作動機構11の駆動モータ(駆動部)の小型化を図ることができる。
【0090】
また、接続部26が昇降方向Zの下方に移動することで、第1引き上げ部材13及び制動機構10の連結部材33には、駆動ばね20による昇降方向Zの上方への付勢力が解除される。そのため、第1引き上げ部材13及び連結部材33は、自重により昇降方向Zの下方に向けて下がる。なお、連結部材33の下端部に設けた貫通孔33aには、制動子31に取り付けられた支持ボルト36が挿通しているため、連結部材33が抜け落ちることを防止することができる。
【0091】
また、連結部材33に対する昇降方向Zの上方への荷重が解除されることで、制動子31に対する駆動機構12からの昇降方向Zの上方への荷重も解除される。その結果、制動子31におけるガイドレール201Aを挟持する力も弱まる。
【0092】
図6に示すように、作動機構11の復帰動作が完了すると、制御部170は、巻上機100を駆動させて乗りかご120を上昇(UP)運転させる(ステップS14)。これにより、制動機構10の枠体30も乗りかご120と共に上昇することで、制動子31が相対的に引き下げられる。これにより、制動子31によるガイドレール201Aの挟持が解除される。そして、上述した工程を行うことで、非常止め装置5の復帰動作が完了する。
【0093】
なお、本例の復帰動作では、作動機構11の復帰動作が完了してから乗りかご120を上昇運転させて、作動機構11の動作と乗りかご120の動作を分けて行っている。これより、エレベーター1における非常止め装置5の復帰動作を確実に行うことができると共に、復帰動作の制御を簡略化することができる。
【0094】
なお、上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0095】
上述した実施の形態例では、作動機構11の制御と、エレベーター1全体の制御を、制御部170で行う例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、作動機構11の制御と、エレベーター1全体の制御を、それぞれ別の制御部で行ってもよい。
【0096】
さらに、移動機構として駆動モータ46、送りねじ軸47及び送りナット48を用いた例を説明したが、これに限定されるものではない。電磁コア43を移動させる移動機構としては、例えば、ベルト駆動、ギア駆動、チェーン駆動や、直動ソレノイドを用いた機構等その他各種の移動機構を適用できるものである。
【0097】
作動機構11の電磁コアが移動する方向を第1の方向Xと略平行に設定した例を説明したが、これに限定されるものではない。作動機構11の電磁コアの移動方向は、昇降方向Zや第2の方向Yと略平行に設定してもよく、あるいは第1の方向X、第2の方向Yや昇降方向Zに対して傾斜した方向であってもよい。また、第1リンク部材16及び第2リンク部材17を乗りかご120における第2の方向Yの両端部に配置し、駆動軸15を第2の方向Yに沿って配置してもよい。
【0098】
また、昇降体としては乗りかご120に限定されるものではなく、釣合おもり140を適用してもよい。そして、非常止め装置を釣合おもり140に設け、釣合おもり140の昇降移動を非常停止させてもよい。この場合、非常止め装置を構成する作動機構や駆動機構等は、釣合おもり140に配置される。
【0099】
また、上述した実施の形態例では、非常止め装置の制御する制御部として、エレベーター1全体を制御する制御部170を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。制御部としては、乗りかご120に設けられて乗りかご120のみを制御する制御部や非常止め装置のみを制御する制御部等その他各種の制御部を適用できるものである。
【0100】
さらに、エレベーターとして一つ昇降路内を複数の乗りかごが昇降移動するマルチカーエレベーターにも適用できるものである。
【0101】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…エレベーター、 5…非常止め装置、 10A、10B…第1制動機構、 11、11B…作動機構、 12…駆動機構、 13、14…引き上げ部材、 15…駆動軸、 16…第1リンク部材、 17…第2リンク部材、 16a、17b…作動片、 16b、17b…接続片、 18…第1作動軸、 19…第2作動軸、 20…駆動ばね、 26、28…接続部、 26a…軸部、 26b…ストッパ、 41…接続部材、 43…電磁コア、 44…可動鉄心、 45…ベースプレート、 46…駆動モータ、 46a…回転軸、 47…送りねじ軸、 48…送りナット、 54…第1軸支持部、 55…第2軸支持部、 100…巻上機、 110…昇降路、 120…乗りかご(昇降体)、 121…クロスヘッド、 130…主ロープ、 140…釣合おもり(昇降体) 150…反らせ車、 160…機械室、 170…制御部、 201A、201B…ガイドレール