(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】乗り物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/02 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
B60N2/02
(21)【出願番号】P 2021096897
(22)【出願日】2021-06-09
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小河 卓人
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-096926(JP,U)
【文献】米国特許第04341415(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102007057466(DE,A1)
【文献】特開2003-038294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物の乗員が着座する乗り物用シートであって、
シートバックと、
前記シートバックとは独立して設けられた複数のシートクッションと、を備え、
前記複数のシートクッションは、前記乗り物における前記乗り物用シートの設置面に沿った第一方向に移動可能な第一シートクッションと、前記設置面に沿った方向であって前記第一方向と交差する第二方向に移動可能な第二シートクッションと、を含
み、
前記第一シートクッションの第一移動可能範囲の一端部と前記第二シートクッションの第二移動可能範囲の一端部とが重複する、
乗り物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗り物用シートであって、
前記第一シートクッションの骨格をなす第一クッションフレームの脚部が摺動自在に取り付けられ、且つ、前記設置面に固定された前記第一方向に延びる第一レールと、
前記第二シートクッションの骨格をなす第二クッションフレームの脚部が摺動自在に取り付けられ、且つ、前記設置面に固定された前記第二方向に延びる第二レールと、を備え、
前記第一レールの前記第一方向の隣に前記第二レールが非配置となり、前記第二レールの前記第二方向の隣に前記第一レールが非配置となる状態で、前記第一レールと前記第二レールが配置されている、
乗り物用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の乗り物用シートであって、
前記第一クッションフレームの座面部は、前記第一レールにおける前記第一移動可能範囲の一端部側の端に前記第一クッションフレームの脚部がある状態において、前記第一レールよりも前記第一方向側に突出する第一突出部分を有し、
前記第二クッションフレームの座面部は、前記第二レールにおける前記第二移動可能範囲の一端部側の端に前記第二クッションフレームの脚部がある状態において、前記第二レールよりも前記第二方向側に突出する第二突出部分を有する、
乗り物用シート。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の乗り物用シートであって、
前記第一シートクッションと前記第二シートクッションの各々の移動をロックするロック機構を備え、
前記ロック機構は、前記第二シートクッションが既定位置にある状態にて前記第一シートクッションのロックを解除可能であり、前記第一シートクッションが既定位置にある状態にて前記第二シートクッションのロックを解除可能である、
乗り物用シート。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の乗り物用シートであって、
前記複数のシートクッションのそれぞれの移動可能範囲を併せた可動範囲は、前記乗り物の角部に沿って設けられる、
乗り物用シート。
【請求項6】
請求項5に記載の乗り物用シートであって、
前記シートバックは、前記可動範囲の一部に沿って設けられ、且つ、前記可動範囲に沿って移動可能に構成されている、
乗り物用シート。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の乗り物用シートであって、
前記複数のシートクッションのそれぞれの移動可能範囲を併せた可動範囲の全体に亘って前記シートバックが設けられる、
乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートバックとシートクッションを分割できるものとし、シートクッションを車室左右方向に摺動自在に配置したリアシートが記載されている。
【0003】
特許文献2には、スライド可能に車両の前後方向に沿って並べられた複数のシートを備える車両用シート装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、車両用のユーザ入力制御装置にアクセスすることを可能にする乗客使用構成を有する第1の着座列と、乗客使用構成及び第2の構成する第2の着座列と、を有するシステムが記載されている。このシステムでは、第1の着座列が第2の着座列の上を移動するように構成されている。
【0005】
特許文献4には、車体側部に設けられ、乗降口を閉鎖する閉鎖位置と開放する折り畳み位置に位置可能な折戸と、前記折り畳み位置の前方に隣接して設けられた座席シートと、を有する車体の構造が記載されている。この座席シートは、リクライニング機構により前記折り畳み位置側へ倒し可能なシートバックを有するシートクッションを含み、前記シートクッションを、前後方向にスライドするスライド機構と、前記折り畳み位置と前記座席シート間に、前記リクライニング機構のリクライニング時に前記シートバックの移動を規制し、前記折り畳み位置に位置する折戸と前記シートバックの干渉を防止するストッパ手段と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平02-059028号公報
【文献】特開2015-221640号公報
【文献】特開2020-128205号公報
【文献】特開2011-131781公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術のように、シートバックとシートクッションが一体化された乗り物用シートが移動可能になっているだけでは、多様な座り方を実現できない。
【0008】
本発明の目的は、多様な座り方が可能な乗り物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の乗り物用シートは、乗り物の乗員が着座する乗り物用シートであって、シートバックと、前記シートバックとは独立して設けられた複数のシートクッションと、を備え、前記複数のシートクッションは、前記乗り物における前記乗り物用シートの設置面に沿った第一方向に移動可能な第一シートクッションと、前記設置面に沿った方向であって前記第一方向と交差する第二方向に移動可能な第二シートクッションと、を含み、前記第一シートクッションの第一移動可能範囲の一端部と前記第二シートクッションの第二移動可能範囲の一端部とが重複する、ものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多様な座り方が可能な乗り物用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の乗り物用シートの一実施形態である自動車用シートの概略構成を示す平面模式図である。
【
図2】
図1に示す自動車用シートにおけるシートクッションの位置を変えた状態を示す平面模式図である。
【
図3】
図1に示す自動車用シートにおけるシートクッションの位置を変えた状態を示す平面模式図である。
【
図4】
図1に示す自動車用シートにおけるシートクッション及びシートバックの位置を変えた状態を示す平面模式図である。
【
図5】
図1に示す自動車用シートにおけるシートクッションの移動可能範囲を説明するための平面模式図である。
【
図6】
図1に示す状態の自動車用シートの詳細構成例を示す斜視図である。
【
図7】
図6に示す状態から2つのシートクッションが移動した状態を示す斜視図である。
【
図8】
図6及び
図7に示すクッションレール付近の拡大図である。
【
図9】
図1に示す状態の自動車用シートの詳細構成例をシートバックの背面側から示す斜視図である。
【
図10】
図9に示すシートバック部の骨格構造を示す斜視図である。
【
図13】
図1に示す自動車用シートの変形例を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の乗り物用シートの一実施形態である自動車用シート100の概略構成を示す平面模式図である。自動車用シート100は、自動車Vに搭載される。以下では、自動車Vの前進方向を前方向Frと記載し、前方向Frの反対方向を後方向Rrと記載し、これらを総称して前後方向Yと記載する。前後方向Y及び鉛直方向に直交する方向を自動車Vの左右方向Xと記載する。左右方向Xのうちの一方を右方向Rと記載し、右方向Rの反対方向を左方向Lと記載する。前後方向Y及び左右方向Xに垂直な方向を自動車Vの上下方向Zと記載する。上下方向Zのうち地面に向かう方向を下方向Dと記載し、下方向Dの反対方向を上方向Uと記載する。
【0013】
自動車Vは、前後方向Yに延びる略矩形形状の車体を備え、車体の左側面の前側には、乗降口VEが設けられている。
図1の例では、自動車用シート100は、自動車Vの車体の底面を構成するフロアVFにおいて、乗降口VEよりも後ろ側に設置されている。フロアVFには、左側部の略中央から後部にかけて、略L字状の車体フレーム41が立設されている。
【0014】
自動車用シート100は、着座者の腰部及び背部を支持するためのシートバック30と、シートバック30とは独立して設けられた、着座者の臀部及び大腿部を支持するためのシートクッション10及びシートクッション20と、フロアVFに固定された左右方向Xに延びる一対のクッションレール10Fr及びクッションレール10Rrと、フロアVFに固定された前後方向Yに延びる一対のクッションレール20R及びクッションレール20Lと、車体フレーム41に沿って車体フレーム41に固定された、左右方向X及び前後方向Yに湾曲して延びる略L字状のバックレール30Rと、位置検出装置D1と、位置検出装置D2と、を備える。
【0015】
シートクッション10、シートクッション20、及びシートバック30は、それぞれ、シートの骨格(ベース)をなす金属等で構成されたシートフレームと、このシートフレームを覆うウレタンフォームなどの発泡材等からなるパッドと、このパッド表面を覆うトリムカバーと、を備えて構成される。トリムカバーは、複数のカバー部材が縫合される等して形成された袋状のカバーである。カバー部材としては、例えば皮革(天然皮革、合成皮革)又は布帛(織物、編物、不織布)が用いられる。カバー部材は、皮革又は布帛の単層構造であってもよいし、皮革又は布帛を表地として、皮革又は布帛にワディング(例えば弾性変形可能な軟質ポリウレタンフォームなどの樹脂発泡体)が積層された多層構造であってもよい。
図1に示したシートクッション10及びシートクッション20をそれぞれ模式的に示す矩形は、これらシートクッションの外表面の縁(パッドを覆うトリムカバーの縁)の平面形状を示している。
【0016】
クッションレール10Rrとクッションレール10Frには、シートクッション10の脚部が左右方向Xに摺動自在に取り付けられている。クッションレール10Rrは、フロアVFの後部にある車体フレーム41の部分に隣接して、車体フレーム41よりも前側に配置されている。クッションレール10Frは、クッションレール10Rrの前側に配置されている。クッションレール10Rrとクッションレール10Frは、左右方向Xの位置が同じであり、互いに平行に配置されている。
【0017】
クッションレール20Rとクッションレール20Lには、シートクッション20の脚部が前後方向Yに摺動自在に取り付けられている。クッションレール20Lは、フロアVFの左側部にある車体フレーム41の部分に隣接して、車体フレーム41よりも右側に配置されている。クッションレール20Rは、クッションレール20Lの右側に配置されている。クッションレール20Rとクッションレール20Lは、前後方向Yの位置が同じであり、互いに平行に配置されている。
【0018】
車体フレーム41は、クッションレール10Rrよりも後ろ側且つクッションレール20Lよりも左側に配置され、車体の左後側の角部に沿って配置されている。バックレール30Rは、車体フレーム41におけるクッションレール10Rr及びクッションレール20L側を向く面に固定されている。シートバック30は、バックレール30Rに摺動自在に取り付けられており、このバックレール30Rに沿って移動可能且つバックレール30Rの形状に応じた変形が可能となっている。
【0019】
位置検出装置D1は、フロアVFにおけるクッションレール10Rrの右端部の近傍に取り付けられており、機械的なスイッチや光学センサなどで構成されている。位置検出装置D1は、シートクッション10がクッションレール10Rr及びクッションレール10Frに沿って左右方向Xの右端まで移動した状態になると、シートクッション10が移動可能な左右方向Xの範囲(後述の
図5の移動可能範囲10AR)における右端に位置していることを示す検出信号を、図示省略の自動車Vのプロセッサに送信する。なお、位置検出装置D1は、クッションレール10Frの右端部の近傍に取り付けられていてもよい。
【0020】
位置検出装置D2は、フロアVFにおけるクッションレール20Lの前端部の近傍に取り付けられており、機械的なスイッチや光学センサなどで構成されている。位置検出装置D2は、シートクッション20がクッションレール20R及びクッションレール20Lに沿って前後方向Yの前端まで移動した状態になると、シートクッション20が移動可能な前後方向Yの範囲(後述の
図5の移動可能範囲20AR)における前端に位置していることを示す検出信号を、上記のプロセッサに送信する。なお、位置検出装置D2は、クッションレール20Rの前端部の近傍に取り付けられていてもよい。
【0021】
このように構成された自動車用シート100では、シートクッション10を、
図1に示す状態から右方向Rに移動させることで、
図2に示すように、シートクッション10とシートクッション20を離間させた状態を得ることができる。また、シートクッション20を、
図2に示す状態から後方向Rrに移動させることで、
図3に示すように、シートクッション10とシートクッション20が左右方向Xに隣接配置された状態を得ることができる。例えば、
図3に示す状態であれば、自動車Vの進行方向に向いた状態で自動車用シート100に乗員が座る形態を実現できる。また、
図1に示す状態であれば、自動車Vの進行方向に直交する方向を向いた状態で自動車用シート100に乗員が座る形態を実現できる。更に、
図2に示す状態であれば、シートクッション10とシートクッション20の間の余剰スペースに荷物を置いた状態で、進行方向又はこれに直交する方向のどちらを向いた状態でも自動車用シート100に着座できるようになる。
【0022】
更に、自動車用シート100では、
図3に示す状態からシートバック30を、バックレール30Rに沿って後方向Rr及び右方向Rに移動させることで、
図4に示す状態を得ることができる。
図1に示す状態では、前後方向Yに並ぶシートクッション10及びシートクッション20の左側方にシートバック30が配置されているため、これらシートクッション10及びシートクッション20に着座する乗員の腰部及び背部をシートバック30によって支持可能となる。また、
図4に示す状態では、左右方向Xに並ぶシートクッション10及びシートクッション20の後方にシートバック30が配置されているため、これらシートクッション10及びシートクッション20に着座する乗員の腰部及び背部をシートバック30によって支持可能となる。このように、シートクッション10及びシートクッション20の位置に応じてシートバック30の位置を変更できることで、多様な座り方を実現しつつ、座り心地を向上させることができる。
【0023】
このように、自動車用シート100は、フロアVFに沿った左右方向Xに移動可能なシートクッション10と、左右方向Xと交差(図の例では直交)する前後方向Yに移動可能なシートクッション20と、これらシートクッションとは独立して構成され且つ各シートクッション10、20の縁部に沿って移動可能なシートバック30と、を備える構成である。
【0024】
図5は、シートクッション10及びシートクッション20の移動可能範囲を説明するための模式図である。
図5には、シートクッション10の移動可能範囲10ARと、シートクッション20の移動可能範囲20ARと、が示されている。移動可能範囲10ARは、シートクッション10が左右に移動する際のシートクッション10の軌跡によって示される。移動可能範囲20ARは、シートクッション20が前後に移動する際のシートクッション20の軌跡によって示される。
【0025】
図5に示すように、移動可能範囲10ARと移動可能範囲20ARとは一部重複している。具体的には、移動可能範囲10ARの左側端部(図の例では左半分)と、移動可能範囲20ARの後側端部(図の例では後半分)とが重なっている。移動可能範囲10ARと移動可能範囲20ARを合わせた可動範囲は自動車Vの車体の角部に沿った略L字状となっている。この略L字状の可動範囲の一部に沿ってシートバック30が延びて設けられており、シートバック30は、この可動範囲に沿って移動可能となっている。
【0026】
移動可能範囲10ARと移動可能範囲20ARとの重複領域には、クッションレール10Rr、10Fr、20R、20Lが存在しない領域SPが存在する。つまり、クッションレール10Rr、10Frのその延びる方向の隣(
図5の例では左隣)にはクッションレール20R、20Lが存在しない。また、クッションレール20R、20Lのその延びる方向の隣(
図5の例では後隣)にはクッションレール10Rr、10Frが存在しない。このように、クッションレール10Fr、10Rrのその延びる方向の隣にクッションレール20R、20Lが非配置となり、クッションレール20R、20Lのその延びる方向の隣にクッションレール10Fr、10Rrが非配置となる状態で、クッションレール10Fr、10Rr、20R、20Lが配置されている。
【0027】
なお、
図5において、例えば、クッションレール10Rr、10Frの左端を、移動可能範囲10ARの左端まで延ばした構成としたり、クッションレール20R、20Lの後端を、移動可能範囲20ARの後端まで延ばした構成としたりしても、シートクッション10を左右に移動させ且つシートクッション20を前後に移動させて、多様な座り方を実現することは可能である。しかし、これら変形の構成に対し、
図5の構成によれば、領域SPにレールが存在しないことで、各シートクッションの脚部と他の部材の干渉を防ぐことができる。この結果、この領域SPにもレールが存在する上記変形の構成と比べると、自動車用シート100の構造を簡素化でき、製造コストを下げることができる。また、
図2の状態のときに、領域SPを荷物スペースとして有効に活用できる。
【0028】
ここまでは、自動車用シート100の構成について模式的に示してきたが、以下では、自動車用シート100のより具体的な構成例について、
図6から
図12を参照して説明する。
図6から
図12において、
図1から
図5と同じ構成要素には同一符号を付してある。
【0029】
図6は、
図1に示す状態の自動車用シート100の詳細構成例を示す斜視図である。
図6では、シートバック30と、シートクッション10、20のパッド及びトリムカバーと、位置検出装置D1、D2の図示を省略している。
図7は、
図6に示す状態から2つのシートフレーム13、23が移動した状態を示す斜視図である。
図7では、図面の簡略化のため一部符号のみを示している。
図8は、
図6及び
図7に示すクッションレール10Rr、10Fr、20R、20L付近の拡大図である。
【0030】
図6に示すように、自動車VのフロアVFには、平面視で略L字状の車体フレーム42が固定されている。車体フレーム42は、自動車Vの左後側の角部に沿って形成されている。車体フレーム42の後端及び左端と、車体フレーム41の下端とが固定されている。クッションレール10Rr、10Fr、20R、20Lは、それぞれ、車体フレーム42に固定されている。バックレール30Rは、車体フレーム41に固定された上バックレール30Ruと、上バックレール30Ruよりも下側且つシートクッション10、20よりも上側において車体フレーム42に固定された下バックレールRdと、から構成されている。
【0031】
シートクッション10の骨格をなすシートフレーム13は、クッションレール10Rrに摺動自在に支持されたそれぞれ上下に延びる後脚部11a、11bと、クッションレール10Frに摺動自在に支持されたそれぞれ上下に延びる前脚部11c、11dとから構成された脚部を備える。後脚部11bは、後脚部11aよりも左側に配置されている。前脚部11dは、前脚部11cよりも左側に配置されている。
【0032】
また、シートフレーム13は、前後方向Yに延びる座面フレーム12aと、座面フレーム12aよりも左側に配置され且つ前後方向Yに延びる座面フレーム12bと、座面フレーム12bよりも左側に配置され且つ前後方向Yに延びる座面フレーム12cと、座面フレーム12aの前端と座面フレーム12cの前端とを連結し且つ左右方向Xに延びる座面フレーム12fと、座面フレーム12fよりも後側に配置され且つ左右方向Xに延びる座面フレーム12eと、座面フレーム12eよりも後側に配置され且つ左右方向Xに延びる座面フレーム12dと、から構成された座面部を備える。
【0033】
座面フレーム12aは、前脚部11c及び後脚部11aの上端と固定され、前脚部11cの上端からクッションレール10Frよりも前側に張り出して設けられている。座面フレーム12aの前端には、座面フレーム12fの右端が固定されている。座面フレーム12aにおける前脚部11cとの固定箇所と座面フレーム12aの前端との間には、座面フレーム12eの右端が固定されている。座面フレーム12aにおける前脚部11c及び後脚部11aそれぞれとの固定箇所の間には、座面フレーム12dの右端が固定されている。座面フレーム12bは、前脚部11d及び後脚部11bの上端と固定され、その前端が座面フレーム12eの後側面と固定されている。座面フレーム12d、12e、12fそれぞれの左端は、シートフレーム13の後脚部11b及び前脚部11dがクッションレール10Fr、10Rrの左端にある
図6に示す状態において、クッションレール10Fr、10Rrの左端よりも左側に位置するよう構成されている。すなわち、
図6に示す状態においては、シートフレーム13における左右方向Xの前脚部11d及び後脚部11bの位置よりも左側の部分が、クッションレール10Fr、10Rrよりも左側に突出する第一突出部分となる。この第一突出部分があることで、
図6に示す状態において、
図5に示した領域SPにもシートクッション10を配置することができる。この結果、
図1に示したように、シートクッション10の座面とシートクッション20の座面を前後方向Yに隣接させた構成を実現できる。
【0034】
シートクッション20の骨格をなすシートフレーム23は、クッションレール20Lに摺動自在に支持されたそれぞれ上下に延びる左脚部21a、21bと、クッションレール20Rに摺動自在に支持されたそれぞれ上下に延びる右脚部21c、21dとから構成された脚部を備える。左脚部21bは、左脚部21aよりも後側に配置されている。右脚部21dは、右脚部21cよりも後側に配置されている。
【0035】
また、シートフレーム23は、左右方向Xに延びる座面フレーム22aと、座面フレーム22aよりも後側に配置され且つ左右方向Xに延びる座面フレーム22bと、座面フレーム22bよりも後側に配置され且つ左右方向Xに延びる座面フレーム22cと、座面フレーム22aの右端と座面フレーム22cの右端とを連結し且つ前後方向Yに延びる座面フレーム22fと、座面フレーム22fよりも左側に配置され且つ前後方向Yに延びる座面フレーム22eと、座面フレーム22eよりも左側に配置され且つ前後方向Yに延びる座面フレーム22dと、から構成された座面部を備える。
【0036】
座面フレーム22aは、右脚部21c及び左脚部21aの上端と固定され、右脚部21cの上端からクッションレール20Rよりも右側に張り出して設けられている。座面フレーム22aの右端には、座面フレーム22fの前端が固定されている。座面フレーム22aにおける右脚部21cとの固定箇所と座面フレーム22aの右端との間には、座面フレーム22eの前端が固定されている。座面フレーム22aにおける右脚部21c及び左脚部21aそれぞれとの固定箇所の間には、座面フレーム22dの前端が固定されている。座面フレーム22bは、右脚部21d及び左脚部21bの上端と固定され、その右端が座面フレーム22eの左側面と固定されている。座面フレーム22d、22e、22fそれぞれの後端は、シートフレーム23の左脚部21b及び右脚部21dがクッションレール20R、20Lの後端にある
図7に示す状態において、クッションレール20R、20Lの後端よりも後側に位置するよう構成されている。すなわち、
図7に示す状態においては、シートフレーム23における前後方向Yの右脚部21d及び左脚部21bの位置よりも後側の部分が、クッションレール20R、20Lよりも後側に突出する第二突出部分となる。この第二突出部分があることで、
図7に示す状態において、
図5に示した領域SPにもシートクッション20を配置することができる。この結果、
図3に示したように、シートクッション10の座面とシートクッション20の座面を左右方向Xに隣接させた構成を実現できる。
【0037】
図8に示すように、クッションレール10Frには、台車13cと台車13dが摺動自在に取り付けられており、台車13cとシートフレーム13の前脚部11cの下端とが固定され、台車13dとシートフレーム13の前脚部11dの下端とが固定される。クッションレール10Rrには、台車13aと台車13bが摺動自在に取り付けられており、台車13aとシートフレーム13の後脚部11aの下端とが固定され、台車13bとシートフレーム13の後脚部11bの下端とが固定される。台車13aと台車13bにはモータマウントブラケット13BKが取付けられ、モータマウントブラケット13BKには、自動車Vのプロセッサによって制御されるモータ10Mが固定されている。モータ10Mの駆動軸には減速機を介してピニオンギアが連結されている。このピニオンギアと常時噛み合うラック10RKが、クッションレール10Rrに隣接して左右方向Xに延びて配置されている。モータ10Mが作動することで、ラック10RKと噛み合うピニオンギアがラック10RKに沿って移動する。このように、ラック&ピニオン機構によって、シートクッション10はクッションレール10Fr、10Rrに沿って移動可能に構成されている。
【0038】
また、
図8に示すように、クッションレール20Rには、台車23cと台車23dが摺動自在に取り付けられており、台車23cとシートフレーム23の右脚部21cの下端とが固定され、台車23dとシートフレーム23の右脚部21dの下端とが固定される。クッションレール20Lには、台車23aと台車23bが摺動自在に取り付けられており、台車23aとシートフレーム23の左脚部21aの下端とが固定され、台車23bとシートフレーム23の左脚部21bの下端とが固定される。台車23aと台車23bにはモータマウントブラケット23BKが取付けられ、モータマウントブラケット23BKには、自動車Vのプロセッサによって制御されるモータ20Mが固定されている。モータ20Mの駆動軸には減速機を介してピニオンギアが連結されている。このピニオンギアと噛み合うラック20RKが、クッションレール20Lに隣接して前後方向Yに延びて配置されている。モータ20Mが作動することで、ラック20RKと噛み合うピニオンギアがラック20RKに沿って移動する。このように、ラック&ピニオン機構によって、シートクッション20はクッションレール20R、20Lに沿って移動可能に構成されている。
【0039】
モータ10Mとラック10RKを含むラック&ピニオン機構には、シートクッション10の移動を不可とする(シートクッション10をロックする)図示省略のロック機構が設けられている。モータ20Mとラック20RKを含むラック&ピニオン機構には、シートクッション20の移動を不可とする(シートクッション20をロックする)図示省略のロック機構が設けられている。これらロック機構は、自動車Vのプロセッサによって制御される。
【0040】
自動車Vのプロセッサは、位置検出装置D1から検出信号を受けると、すなわち、シートクッション10が移動可能範囲10ARの右端まで移動した状態にある場合に、モータ20Mとラック20RKを含むラック&ピニオン機構に含まれるロック機構を制御して、シートクッション20のロックを解除し、シートクッション20を移動可能とする。また、自動車Vのプロセッサは、位置検出装置D2から検出信号を受けると、すなわち、シートクッション20が移動可能範囲20ARの前端まで移動した状態にある場合に、モータ10Mとラック10RKを含むラック&ピニオン機構に含まれるロック機構を制御して、シートクッション10のロックを解除し、シートクッション10を移動可能とする。なお、
図2に示す状態では、位置検出装置D1と位置検出装置D2のそれぞれからプロセッサに検出信号が入力されることになる。この場合には、プロセッサは、シートクッション10とシートクッション20のうち、直近で移動させていた一方をロックし、他方のロックを解除する。
【0041】
このように、自動車用シート100では、シートクッション10が移動可能範囲10ARの右端部にある状態でのみ、シートクッション20のロックが解除されてシートクッション20の移動が可能となり、シートクッション20が移動可能範囲20ARの前端部にある状態でのみ、シートクッション10のロックが解除されてシートクッション10の移動が可能となっている。
【0042】
すなわち、自動車用シート100では、
図1に示す状態においては、シートクッション10のロックが解除され、シートクッション20がロックされる。その後、ロック解除されたシートクッション10が右方向Rに移動して
図2に示す状態になると、シートクッション20のロックが解除され、シートクッション10がロックされる。その後、ロック解除されたシートクッション20が後方向Rrに移動して
図3に示す状態になる。また、
図3に示す状態からシートクッション20が前方向Frに移動して
図2に示す状態になると、シートクッション10のロックが解除され、シートクッション20がロックされる。その後、ロック解除されたシートクッション10が左方向Lに移動して
図1に示す状態になる。こういった一連のシートクッション10、20の動作は、自動車Vに設けられた操作部を乗員が操作することをトリガとして開始される。
【0043】
次に、シートバック30の詳細構成例について説明する。
図9は、
図1に示す状態の自動車用シート100の詳細構成例をシートバック30の背面側から示す斜視図である。
図9に示すように、シートバック30は、上下方向Zに延びる長尺状の複数(
図9の例では14個)のシートバック部31が連結されて構成されている。各シートバック部31は、金属等で構成されたフレーム部材31F(
図10参照)と、このフレーム部材31Fを部分的に被覆する図示省略のパッドと、このパッドを被覆するトリムカバー31t(
図9では一部のみ符号を示す)と、を備えて構成される。14個のフレーム部材31Fは、それぞれ、同じ構造となっている。14個のシートバック部31のそれぞれに含まれるフレーム部材31Fによって、シートバック30の骨格をなすシートフレームが構成されている。トリムカバー31tは、シートバック部31毎に分離されたものであってもよいし、14個のシートバック部31の各々のパッドに跨ってこれらパッドを覆う構成であってもよい。
【0044】
図10は、
図9に示すシートバック部31の内部構造を、シートバック30の正面側から見た斜視図である。
図10では、
図9に示す14個のシートバック部31のうち、自動車Vの前側(
図9中の左側)から数えて5番目、6番目、及び7番目にある3つのシートバック部31の内部構造を代表的に示している。
【0045】
図10に示すように、フレーム部材31Fは、上下方向Zに延びる一対の柱状のサイドフレーム31Fa及びサイドフレーム31Fbと、サイドフレーム31Fa及びサイドフレーム31Fbの各々の上端同士を繋ぐアッパーフレーム31Fcとを備えた、略U字形状の構造となっている。
【0046】
各フレーム部材31Fにおいて、サイドフレーム31Faの下端部及びサイドフレーム31Fbの下端部の各々には、共通の構造を持つヒンジブラケット31Bが取り付けられている。ヒンジブラケット31Bは、両端がフレーム部材31Fのサイドフレームに固定された略U字形状の構造となっている。具体的には、ヒンジブラケット31Bは、フレーム部材31Fの一方のサイドフレームに一端が固定された板状の上面部31Baと、上面部31Baよりも下側において該サイドフレームに一端が固定された板状の下面部31Bbと、上面部31Baと下面部31Bbの他端同士を繋ぐ上下方向Zに略平行な板状の側面部31Bcと、を備える構造となっている。
【0047】
フレーム部材31Fのサイドフレーム31Fbに取り付けられたヒンジブラケット31Bと、このフレーム部材31Fと隣り合う別のフレーム部材31Fのサイドフレーム31Faに取り付けられたヒンジブラケット31Bとは隣接配置されている。これら隣接配置された2つのヒンジブラケット31Bは、平蝶番31Jによって、回動可能に連結されている。具体的には、この平蝶番31Jの一方の羽根部が、この2つのヒンジブラケット31Bの一方の側面部31Bcにネジ止めされ、この平蝶番31Jの他方の羽根部が、この2つのヒンジブラケット31Bの他方の側面部31Bcにネジ止めされている。平蝶番31Jは、2つの羽根部におけるヒンジブラケット31B側とは反対側の面が互いに近づく方向に回転できるように、2つのヒンジブラケット31Bを回動可能に連結している。換言すると、平蝶番31Jは、連結している2つのフレーム部材31Fの間の距離(サイドフレーム31Faとサイドフレーム31Fbの間の距離)を変更可能に、当該2つのフレーム部材31Fを連結している。
【0048】
図11は、
図9の範囲AR1の要部拡大図である。
図12は、
図11の範囲AR2の拡大図である。
図11では、説明のために、自動車Vの前側から数えて5番目と6番目のシートバック部31について、パッド及びトリムカバー31tの図示を省略している。
図10及び
図11に示すように、14個のフレーム部材31Fのうちの特定のフレーム部材31F(自動車Vの前側から数えて6番目にあるシートバック部31のフレーム部材31F)のサイドフレーム31Fa、31Fbの背面側には、上バックレール30Ruに摺動自在に支持された上テーブル31Tuと固定される上テーブルブラケット31Uと、下バックレール30Rdに摺動自在に支持された下テーブル31Tdと固定される下テーブルブラケット31Dと、が取付けられている。
【0049】
また、この特定のフレーム部材31Fのサイドフレーム31Fa、31Fbの背面側には、下テーブルブラケット31Dの少し下側に、
図11及び
図12に示すように、モータブラケット31BKが取り付けられている。モータブラケット31BKには、自動車Vのプロセッサによって制御されるモータ31Mが固定されている。
図9に示すように、車体フレーム41には、下バックレール30Rdよりも下側に、前後方向Yに延びるラック30RKが取り付けられている。そして、
図12に示すように、モータ31Mの駆動軸には、減速機を介してピニオンギアGが連結されており、ピニオンギアGがラック30RKと常時噛み合うように構成されている。
【0050】
なお、
図9から
図11では簡略化のために図示を省略しているが、実際には、特定のフレーム部材31F以外の他の全てのフレーム部材31Fの背面にも、上バックレール30Ruに摺動自在に支持された上テーブルと固定される上テーブルブラケット31Uと、下バックレール30Rdに摺動自在に支持された下テーブルと固定される下テーブルブラケット31Dと、が取付けられている。つまり、各フレーム部材31Fは、上下の2箇所において、バックレール30Rに摺動自在に支持されている。ただし、シートバック30を構成する全てのフレーム部材31Fがバックレール30Rに摺動自在に支持されていなくてもよい。例えば、自動車Vの前側から数えて偶数番目にあるフレーム部材31Fのみが、バックレール30Rに摺動自在に支持されていてもよい。
【0051】
このように、シートバック30は、フレーム部材31F、ヒンジブラケット31B、平蝶番31J、上テーブルブラケット31U、上テーブル31Tu、下テーブルブラケット31D、下テーブル31Td、モータブラケット31BK、モータ31M、バックレール30R、及びラック30RKを備えて構成される。
【0052】
以上のように構成されたシートバック30では、モータ31Mが作動することで、ラック30RKと噛み合うピニオンギアGがラック30RKに沿って前後に移動する。ピニオンギアGがラック30RKに沿って移動すると、ピニオンギアGと連結されているモータ31Mと、モータ31Mと固定されたモータブラケット31BKと、モータブラケット31BKと固定された特定のフレーム部材31Fと、特定のフレーム部材31Fと固定された上テーブル31Tu及び下テーブル31Tdとが一体的に、バックレール30Rに沿って前後方向Yに移動する。特定のフレーム部材31Fが前後方向Yに移動することで、この特定のフレーム部材31Fと連結されている他のフレーム部材31Fも、バックレール30Rに沿って移動する。このように、ラック&ピニオン機構によって、シートバック30は、バックレール30Rに沿って移動可能に構成されている。
【0053】
本発明は、上記実施形態とその変形例に示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、以上の説明では、シートクッション10、シートクッション20、及びシートバック30が、それぞれモータによって移動されるものとしているが、シートクッション10、シートクッション20、及びシートバック30はそれぞれ手動で移動できるような構成としてもよい。
【0054】
また、以上の説明では、クッションレール10Fr、10Rrの延びる方向と、クッションレール20R、20Lの延びる方向とが直交するものとしたが、これら2つの方向は交差していれば直交していなくともよい。
【0055】
また、以上の説明では、移動可能範囲10ARと移動可能範囲20ARを合わせた可動範囲の一部に沿ってシートバック30が延びて設けられるものとしたが、
図13に示すように、シートバック30は、この可動範囲の全体に沿って設けられ且つ位置が固定のものであってもよい。
【0056】
また、
図1に示す自動車用シート100において、シートバック30が
図1に示す状態から更に前方向Frに移動可能に構成し、シートバック30の一部によって乗降口VEを塞ぐ構成としてもよい。
【0057】
また、以上の説明では、シートクッション10、20が移動可能に構成されているが、移動可能範囲10ARと移動可能範囲20ARを合わせた可動範囲の全体に亘って、位置が固定の略L字状のシートクッションを配置した構成としてもよい。この構成であっても、シートバック30がこの可動範囲に沿って移動できることで、多様な座り方を実現可能である。
【0058】
ここまでの説明では、乗り物用シートの一実施形態として、自動車Vに搭載される自動車用シート100を例にした。しかし、本発明は、自動車に搭載されるシートに限らず、電車、航空機、及び船舶等の乗り物に搭載されるシートであれば適応可能である。
【0059】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0060】
(1) 乗り物(自動車V)の乗員が着座する乗り物用シート(自動車用シート100)であって、
シートバック(シートバック30)と、
前記シートバックとは独立して設けられた複数のシートクッション(シートクッション10、20)と、を備え、
前記複数のシートクッションは、前記乗り物における前記乗り物用シートの設置面(フロアVF)に沿った第一方向(左右方向X)に移動可能な第一シートクッション(シートクッション10)と、前記設置面に沿った方向であって前記第一方向と交差する第二方向(前後方向Y)に移動可能な第二シートクッション(シートクッション20)と、を含む、
乗り物用シート。
【0061】
(1)によれば、例えば、第一シートクッションと第二シートクッションを隣接させて第一方向に並べた状態、第一シートクッションと第二シートクッションを隣接させて第二方向に並べた状態、及び第一シートクッションと第二シートクッションを離間させて配置した状態等を切り替えることが可能となる。例えば、第一方向が乗り物の左右方向であり、第二方向が乗り物の進行方向であった場合には、左右方向に視線を向けて着座する座り方と、進行方向に視線を向けて着座する座り方とが可能となる。また、第一シートクッションと第二シートクッションの間に荷物を置いたり、第一シートクッションと第二シートクッションのそれぞれに座る人の距離を確保したりといったことも可能となる。このように、多様な座り方を実現できると共に、乗り物の内部空間を有効利用することができる。また、複数のシートクッションとシートバックとが独立しているため、構造を簡素化でき、乗り物用シートの軽量化が可能となる。
【0062】
(2) (1)に記載の乗り物用シートであって、
前記第一シートクッションの第一移動可能範囲(移動可能範囲10AR)の一端部と前記第二シートクッションの第二移動可能範囲(移動可能範囲20AR)の一端部とが重複する、
乗り物用シート。
【0063】
(2)によれば、第一シートクッションと第二シートクッションを隣接させて第一方向に並べた状態と、第一シートクッションと第二シートクッションを隣接させて第二方向に並べた状態と、を実現できる。これにより、多様な座り方を実現できると共に、乗り物の内部空間を有効利用することができる。
【0064】
(3) (2)に記載の乗り物用シートであって、
前記第一シートクッションの骨格をなす第一クッションフレーム(シートフレーム13)の脚部が摺動自在に取り付けられ、且つ、前記設置面に固定された前記第一方向に延びる第一レール(クッションレール10Fr、10Rr)と、
前記第二シートクッションの骨格をなす第二クッションフレーム(シートフレーム23)の脚部が摺動自在に取り付けられ、且つ、前記設置面に固定された前記第二方向に延びる第二レール(クッションレール20R、20L)と、を備え、
前記第一レールの前記第一方向の隣に前記第二レールが非配置となり、前記第二レールの前記第二方向の隣に前記第一レールが非配置となる状態で、前記第一レールと前記第二レールが配置されている、
乗り物用シート。
【0065】
(3)によれば、第一移動可能範囲と第二移動可能範囲との重複範囲が存在しつつも、第一レールの隣に第二レールが存在しないため、第一移動可能範囲の端と第一レールの端の間の領域における各シートクッションの脚部と他の部材の干渉を防ぐことができる。この結果、この領域にもレールが存在する構成と比べると、乗り物用シートの構造を簡素化でき、製造コストを下げることができる。
【0066】
(4) (3)に記載の乗り物用シートであって、
前記第一クッションフレームの座面部は、前記第一レールにおける前記第一移動可能範囲の一端部側の端に前記第一クッションフレームの脚部がある状態において、前記第一レールよりも前記第一方向側に突出する第一突出部分を有し、
前記第二クッションフレームの座面部は、前記第二レールにおける前記第二移動可能範囲の一端部側の端に前記第二クッションフレームの脚部がある状態において、前記第二レールよりも前記第二方向側に突出する第二突出部分を有する、
乗り物用シート。
【0067】
(4)によれば、第一レールの隣に第二レールが存在しなくとも、第一クッションフレームの座面部の第一突出部分が、第一レールの隣に位置できることで、第一シートクッションと第二シートクッションを第二方向に隣接させて並べた配置を実現できる。また、第二クッションフレームの座面部の第二突出部分が第二レールの隣に位置できることで、第一シートクッションと第二シートクッションを第一方向に隣接させて並べた配置を実現できる。
【0068】
(5) (2)から(4)のいずれかに記載の乗り物用シートであって、
前記第一シートクッションと前記第二シートクッションの各々の移動をロックするロック機構を備え、
前記ロック機構は、前記第二シートクッションが既定位置(前側端部)にある状態にて前記第一シートクッションのロックを解除可能であり、前記第一シートクッションが既定位置(右側端部)にある状態にて前記第二シートクッションのロックを解除可能である、
乗り物用シート。
【0069】
(5)によれば、第一シートクッションと第二シートクッションが隣接している状態でこれらが互いに接近する方向に移動するのを防ぐことができ、乗り物用シートの安全性や耐久性を高めることができる。
【0070】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の乗り物用シートであって、
前記複数のシートクッションのそれぞれの移動可能範囲を併せた可動範囲は、前記乗り物の角部に沿って設けられる、
乗り物用シート。
【0071】
(6)によれば、多様な座り方を実現できる。
【0072】
(7) (6)に記載の乗り物用シートであって、
前記シートバックは、前記可動範囲の一部に沿って設けられ、且つ、前記可動範囲に沿って移動可能に構成されている、
乗り物用シート。
【0073】
(7)によれば、シートバックを可動範囲に沿って移動させることで、複数のシートクッションの位置によらずに、そのシートクッションの背面にシートバックを位置させることが可能となる。また、シートバックが可動範囲の全体に亘って設けられないことで、乗り物用シートの製造コストを下げることができる。
【0074】
(8) (1)から(6)のいずれかに記載の乗り物用シートであって、
前記複数のシートクッションのそれぞれの移動可能範囲を併せた可動範囲の全体に亘って前記シートバックが設けられる、
乗り物用シート。
【0075】
(8)によれば、シートクッションがどの位置に移動しても、そのシートクッションに着座する人の腰部及び背部をシートバックによって支持することができる。このため、多様な座り方を実現しつつ、座り心地を向上させることができる。
【符号の説明】
【0076】
100 自動車用シート
10、20 シートクッション
13、23 シートフレーム
30 シートバック
10AR、20AR 移動可能範囲
10Rr、10Fr クッションレール
20R、20L クッションレール
V 自動車
VF フロア
X 左右方向
Y 前後方向
Z 上下方向