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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】配線器具覆い部材及び配線器具覆い構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/02 20060101AFI20241009BHJP
   H02G 3/12 20060101ALI20241009BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
H02G3/02
H02G3/12
H01R13/52 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021106194
(22)【出願日】2021-06-26
(65)【公開番号】P2023004496
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121429
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】安田 真之
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-171516(JP,U)
【文献】特開2005-235747(JP,A)
【文献】実開昭57-176081(JP,U)
【文献】特開2015-156262(JP,A)
【文献】特開2011-50148(JP,A)
【文献】国際公開第90/7212(WO,A1)
【文献】実開昭56-25918(JP,U)
【文献】特開2001-49755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/02
H02G 3/12
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線器具を前面に臨ませる貫通孔を有する化粧プレートの前面側に取り付けられて前記配線器具の前面側を覆う配線器具覆い部材であって、
前記配線器具の前面の全体を覆う覆い部と、
当該覆い部から外方に張り出し、前記配線器具を囲む環状の固定面を備えた固定部と、
再接着可能な粘着性及び非通水性を備え、前記固定面に環状に貼着可能な粘着部材と、
からなることを特徴とする配線器具覆い部材。
【請求項2】
前記固定面は、前記化粧プレートの前面と対面するよう設けられ、
前記粘着部材は、前記化粧プレートの前面に再接着可能な粘着性を備えたことを特徴とする請求項1に記載の配線器具覆い部材。
【請求項3】
前記覆い部は、前記配線器具及び化粧プレートの前面の全体を覆い、
前記固定部は、前記化粧プレートの前面よりも外側にまで張り出し、
前記固定面は、前記化粧プレートの周囲を囲むように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の配線器具覆い部材。
【請求項4】
前記固定部は、透明であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の配線器具覆い部材。
【請求項5】
前記固定部は、前記配線器具の周囲を囲む方向において少なくともその一部に、前記環状の粘着部材よりも外方に張り出した箇所があることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の配線器具覆い部材。
【請求項6】
化粧プレートに形成された貫通孔から配線器具が前面に臨んでおり、
配線器具覆い部材が有する覆い部が前記配線器具の前面の全体を覆い、
前記覆い部から外方に張り出した固定部における、前記配線器具の周囲を囲み前記化粧プレートの前面と対面する環状の固定面と、前記化粧プレートの前面とは、当該化粧プレートの前面に再接着可能な粘着性を備えた粘着部材を介して貼着されており、
当該粘着部材は、前記配線器具の周囲を途切れることなく囲む連続した環状を成すとともに、囲む内側と外側とを非通水状態とする材料により形成されていることを特徴とする配線器具覆い構造。
【請求項7】
前記固定部は、前記化粧プレートの前面よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載の配線器具覆い構造。
【請求項8】
化粧プレートに形成された貫通孔から配線器具が前面に臨んでおり、
配線器具覆い部材が有する覆い部が前記配線器具の前面の全体を覆い、
前記覆い部から外方に張り出した固定部における、前記化粧プレートの周囲を囲む環状の固定面と、前記化粧プレートの周囲の構造物とは、当該構造物に再接着可能な粘着性を備えた粘着部材を介して貼着されており、
当該粘着部材は、前記化粧プレートの周囲を途切れることなく囲む連続した環状を成すとともに、囲む内側と外側とを非通水状態とする材料により形成されていることを特徴とする配線器具覆い構造。
【請求項9】
前記固定部の前面から前記粘着部材の当該固定部への貼着状態を視認可能であることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の配線器具覆い構造。
【請求項10】
前記固定部は、前記配線器具の周囲を囲む方向において少なくともその一部に、前記環状の粘着部材よりも外方に張り出した箇所があることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の配線器具覆い構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線器具を前面に臨ませる貫通孔を有する化粧プレートの前面側に取り付けられて配線器具の前面側を覆う配線器具覆い部材及び配線器具覆い構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配線器具であるコンセントは、トラッキング現象による漏電によって火災が発生するのを防止するために、配線器具を埃等から保護し、トイレ、洗面所、台所のような水回りにおいて水しぶき等に晒されるのを防ぐ、防塵、防水対策が採られている。この種の配線器具の防塵、防水対策として、例えば、特許文献1に記載の配線器具装置の隠ぺい装置が知られている。特許文献1の配線器具装置の隠ぺい装置は、壁孔と器具保持枠との間に背面板を有する基台を取り付け、基台にカバー体を組み付けることにより、配線器具装置の配線器具や化粧プレートの壁表側を覆い隠している。
【0003】
また、特許文献2には、屋内コンセント用開閉式防塵カバーが記載されており、この防塵カバーは、後付けで両面接着テープを使用して取り付けベースを既設のコンセントカバーに取り付け、取り付けベースにコンセントプラグカバーを組み付けることにより、コンセントの上方や側方を覆い、ワタボコリ等が付着するのを防いでいる。
【0004】
しかし、特許文献1の配線器具装置の隠ぺい装置は、配線器具装置の壁表側を覆い隠すカバー体を取り付けるために基台を設置する必要があり、その設置が面倒であった。加えて、防水性能も高くはなかった。また、特許文献2の防塵カバーは、コンセントの前面が解放されているため、防塵、防水対策としての機能を十分に発揮できなかった。
【0005】
特許文献3には、コンセントのプラグ差込孔に粘着シールを貼り付け、粘着シールにはコンセントのプラグ差込孔に対応する部分に切り込みを形成したものが記載されている。また、特許文献4には、コンセントの上面にコンセントカバーを設け、このコンセントカバーにはコンセントのプラグ差込孔に対応する部分に同様の切り込みを設けたものが記載されている。更に、特許文献5には、裏面に粘着部を有するスイッチカバーをスイッチプレートに取り付けるものが記載されている。
【0006】
しかし、特許文献3及び4に記載のものも、シールやコンセントカバーの一部に切り込みや開口が設けられている。また、特許文献5のスイッチカバーは、配線器具のスイッチと対面する部分が開口している。したがって、これら特許文献3~5に記載のものも、同様に、防塵、防水機能を十分に発揮するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-5778号公報
【文献】実用新案登録第3015649号公報
【文献】実用新案登録第3098244号公報
【文献】特開平11-185867号公報
【文献】特開2015-156262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来の防塵、防水カバーは、防塵、防水対策としての機能を十分に発揮し得るものではなかった。また、従来の防塵、防水カバーは、配線器具と化粧プレートとの隙間を通じて内外に隙間風が流入するのを十分に防止することもできなかった。
【0009】
そこで、本発明は、配線器具の前面を覆うように化粧プレートの前面側に簡単に取り付けることができるとともに、十分な防塵、防水機能を有し、配線器具と化粧プレートとの間の隙間風の流入を防止することができる配線器具覆い部材及び配線器具覆い構造の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の配線器具覆い部材は、配線器具を前面に臨ませる貫通孔を有する化粧プレートの前面側に取り付けられて前記配線器具の前面側を覆うものであって、
配線器具の前面の全体を覆う覆い部と、
当該覆い部から外方に張り出し、前記配線器具を囲む環状の固定面を備えた固定部と、
前記化粧プレートの前面に再接着可能な粘着性及び非通水性を備え、前記固定面に環状に貼着可能な粘着部材と、からなる。
請求項2の配線器具覆い部材は、請求項1の固定面が、化粧プレートの前面と対面するよう設けられ、粘着部材は、化粧プレートの前面に再接着可能な粘着性を備えている。
請求項3の配線器具覆い部材は、請求項1の固定部が、化粧プレートの前面よりも外側にまで張り出し、固定面は、化粧プレートの周囲を囲むように設けられている。
【0011】
請求項4の配線器具覆い部材は、特に、固定部が、透明である。
請求項5の配線器具覆い部材は、特に、固定部は、配線器具の周囲を囲む方向において少なくともその一部に、環状の粘着部材よりも外方に張り出した箇所がある。
【0012】
請求項6の配線器具覆い構造は、化粧プレートに形成された貫通孔から配線器具が前面に臨んでおり、
配線器具覆い部材が有する覆い部が前記配線器具の前面の全体を覆い、
前記覆い部から外方に張り出した固定部における、前記配線器具の周囲を囲み前記化粧プレートの前面と対面する環状の固定面と、前記化粧プレートの前面とは、当該化粧プレートの前面に再接着可能な粘着性を備えた粘着部材を介して貼着されており、
当該粘着部材は、前記配線器具の周囲を途切れることなく囲む連続した環状を成すとともに、囲む内側と外側とを非通水状態とする材料により形成されている。
請求項7の配線器具覆い構造は、請求項6の固定部が、化粧プレートの前面よりも小さい。
請求項8の配線器具覆い構造は、化粧プレートに形成された貫通孔から配線器具が前面に臨んでおり、
配線器具覆い部材が有する覆い部が前記配線器具の前面の全体を覆い、
前記覆い部から外方に張り出した固定部における、前記化粧プレートの周囲を囲む環状の固定面と、前記化粧プレートの周囲の構造物とは、当該構造物に再接着可能な粘着性を備えた粘着部材を介して貼着されており、
当該粘着部材は、前記化粧プレートの周囲を途切れることなく囲む連続した環状を成すとともに、囲む内側と外側とを非通水状態とする材料により形成されている。
【0013】
請求項9の配線器具覆い構造は、特に、固定部の前面から粘着部材の固定部への貼着状態を視認可能である。
請求項10の配線器具覆い構造は、特に、固定部が、配線器具の周囲を囲む方向において少なくともその一部に、環状の粘着部材よりも外方に張り出した箇所がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、固定面に再接着可能な粘着性及び通水性を有する粘着部材により固定部を接着することができるので、配線器具覆い部材(以下、単に「覆い部材」と称することがある。)を配線器具の前面を覆うように化粧プレートあるいは構造物に簡単に取り付けることができる。
【0015】
そして、特に、覆い部が配線器具の前面の全体を覆うとともに、粘着部材が粘着性及び非通水性を有するので、普段使用されていないコンセント等に覆い部材を取り付けることにより、十分な防塵、防水機能を確保して埃及び水が配線器具内に侵入するのを確実に防止することができ、トラッキング現象の発生を確実に防止することができる。また、配線器具と化粧プレートとの隙間からの隙間風を確実に防止することができる。
【0016】
ここで、固定面が、配線器具の周囲を囲み化粧プレートの前面と対面し、化粧プレートの前面に再接着可能である場合は、固定面を化粧プレートに直に接着することができる。一般的に化粧プレートの前面は平滑な面となっており、安定した接着状態を確保できる。更に、固定部全体を化粧プレートの前面よりも小さく形成すれば、覆い部材を化粧プレートの範囲内に収めることができ、周囲の環境に影響されず、確実に設置することができる。
【0017】
また、固定面が化粧プレートの前面よりも外方で化粧プレートを囲み、化粧プレートの外側でその周囲の構造物に接着することができる場合は、化粧プレートの前面全体に加えて、化粧プレートの周囲も覆い、より広い範囲を汚れ等から防止することが可能である。更に、接着先が化粧プレートでないため、化粧プレートに糊残りが生じる等の問題もない。
【0018】
一方で、粘着部材は、再接着可能な粘着性を有することにより、覆い部材を簡単に取り外すことができる。このため、コンセント等を常時あるいは一時的に使用したいときは覆い部材を簡単に取り外すことができる。また、その後、再びコンセントの使用が不要になったら、覆い部材をコンセント等に再度取り付けて配線器具の前面を覆うことができ、覆い部材を繰り返し使用することができる。
【0019】
また、固定部が透明である場合は、粘着部材の固定部に対する貼着状態を目視により確認することができ、貼着部分に環状内外に連通する気泡等が残っていないかを確認することができ、気密性を容易に確認できる。
【0020】
加えて、固定部が配線器具の周囲を囲む方向において少なくともその一部に、環状の粘着部材よりも外方に張り出した箇所がある場合は、その張り出した箇所は、固定部を化粧プレートあるいはその周囲の構造物の壁面等や粘着部材から剥がすために掴むきっかけとなる箇所となり、固定部を化粧プレートあるいは構造物や粘着部材から剥がし易い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態の配線器具覆い構造を示す斜視図である。
図2図1の覆い部材を化粧プレートに取り付けた状態を示し、(a)は正面図、(b)は斜視図である。
図3図1の覆い部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
図4図1の覆い部材の背面図である。
図5】(a)は図3のA-A切断線による断面図、(b)は同図のB-B切断線による断面図である。
図6図1の配線器具及び化粧プレートを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
図7】本発明の別の実施形態の覆い部材を構造物の壁面に取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態の配線器具覆い部材及び配線器具覆い構造を図に基づいて説明する。なお、本実施形態では、配線器具は電気機器のプラグが差し込まれるコンセントを例示する。
【0023】
図1及び図2において、配線器具覆い構造1は、化粧プレート21に形成された貫通孔22から配線器具20が前面に臨んでおり、配線器具覆い部材10(以下、単に「覆い部材10」と表記する。)が有する覆い部11が配線器具20の前面の全体を覆っている。覆い部11から外方には固定部12が張り出しており、固定部12の環状の固定面13と化粧プレート21の前面とは、化粧プレート21の前面に再接着可能な粘着部材15を介して貼着されている。
【0024】
覆い部材10は、詳細には、図3乃至図5に示すように、略矩形板状に形成され、配線器具20の前面と対面してその前面の全体を覆う覆い部11と、覆い部11からその周囲全体に至って外方に張り出し、配線器具20の周囲を囲み化粧プレート21の前面と対面する環状の固定面13を有する固定部12と、を備え、更に、環状の固定面13に環状に貼着可能であるとともに固定面13との貼着面とは反対側の面において化粧プレート21に貼着可能である粘着部材15を備えている。
【0025】
覆い部材10の覆い部11と固定部12とは全体に透明な合成樹脂により一体に形成されている。覆い部11は平面板からなる矩形板状に形成され、固定部12は化粧プレート21の前面と対面する環状の固定面13の全体が平坦面に形成されている。更に、固定部12は、図2(a)に示すように、全体的に正面視で化粧プレート21の前面よりも小さく形成されており、覆い部材10を化粧プレート21に取り付けたとき、固定部12の外周縁部は、後述する張出部14を除いて全周に至って化粧プレート21の外周縁部より内部側に位置する。覆い部11は、配線器具20の前面が化粧プレート21の前面から僅かに前方に突き出していることに対応して、全体的に固定部12より前面側に僅かに突き出している。
【0026】
次に、粘着部材15は、シート状に形成され、図3乃至図5に示すように、配線器具20の周囲を途切れることなく囲む連続した環状に形成されているとともに、化粧プレート21の前面に再接着可能な粘着性を有し、更に、非通水性を有し、環状に囲む内側と外側とを非通水状態とする材料により形成されている。図4において、粘着部材15は、散点模様を施した部分で表示されている。粘着部材15は、ゲル状であり、材質として、ウレタン系、スチレン系、オレフィン系、シリコーン系、アクリル系等の合成樹脂が使用されている。
【0027】
粘着部材15は、覆い部材10を化粧プレート21に取り付ける前においては、一側の面は固定部12の固定面13に貼着され、反対側の面である化粧プレート21に貼着される面は、図示しないが、全体的に剥離シートで覆われている。ここで、剥離シートは、接着剤等が塗布されていない紙シートからなり、粘着部材15の有する粘着性によって粘着部材15の表面に貼着されており、覆い部材10を化粧プレート21に取り付ける直前に剥がされる。剥離シートは、覆い部材10を化粧プレート21に取り付けるまでの間、粘着部材15の表面を被覆して保護し、表面に埃等が付着するのを防止し、更に、粘着部材15の粘着性が低下するのを防止する。
【0028】
粘着部材15は、本実施形態では、平面視コ字状をなす一対のシート状のものを上下に向かい合わせて固定面13に貼着される。ここで、一対のシート状のものが向かい合う端部は、互いに接触した状態にあるが、両端部間が通水しない程度に極く僅かに離間する隙間がある場合も、本発明を構成する粘着部材15に含まれる。
【0029】
なお、粘着部材15は、全体が1枚から成りロ字状を成して覆い部11を囲うシートの形態や、直線板状のシートを井桁状に縦横に交差させて覆い部11を囲う形態等に形成してもよい。粘着部材15は、これ以外の形態も含め、いずれにしても、配線器具20の周囲を途切れることなく囲む連続した平面視環状のものに形成され、あるいは、環状の一部が僅かに途切れていても途切れ部分が通水しない程度の僅かな隙間であるものに形成されている。
【0030】
固定部12は透明に形成されていることにより、前面から固定部12への粘着部材15の貼着状態を視認でき、それにより、配線器具覆い構造1における気密性の低下を確実に防止することができる。すなわち、固定部12の固定面13に粘着部材15を貼着する際に、固定面13と粘着部材15との間に気泡が入り込んでしまうことがある。また、固定面13との間で、覆い部材10の内外が連通して空気の流路が形成されてしまうことがある。そうすると、覆い部材10の外気が流路を通して内部に入り込み、配線器具20と化粧プレート21との間に隙間風が流入し、気密性が低下してしまう。しかし、本実施形態では、固定部12が透明に形成されているので、固定部12の前方から、固定面13と粘着部材15との間に気泡が残存したり空気の流路が形成されていないかなどの貼着部材15の貼着状態を容易に視認することができる。そして、視認により気泡や流路の形成が確認された場合は、流路等を押し潰すなどして消失させ、覆い部材10の内外の空気の通流を完全に遮断することができる。
【0031】
覆い部材10は、その裏面側を記載した図4に示すように、環状の固定部12の径方向の幅である帯板部分の幅L1,L1’は、環状の粘着部材15の同じく径方向の幅である帯板部分の幅L2,L2’より大きく形成されている。固定部12の外周縁と粘着部材15の外周縁とは同じ位置に重なっている。
【0032】
更に、固定部12は、配線器具20の周囲を囲む方向において少なくともその一部に、粘着部材15よりも外方に張り出した箇所が設けられている。本実施形態では、平面視四角枠板状を成す環状の固定部12における下隅部の1箇所に四角片状の摘み片からなる張出部14が外方下向きに突き出て形成されている。この張出部14は、覆い部材10の固定部12を化粧プレート21あるいは粘着部材15から剥がすために掴むきっかけとなる箇所となり、固定部12を化粧プレート21あるいは粘着部材15から剥がし易くなる。
【0033】
配線器具20は、図6に示すように、電気機器のプラグが差し込まれるコンセントであり、図示しないが、建物の間仕切り壁に設けられた壁孔に配線器具取付枠等を介して取り付けられ、前面は室内側の壁表に臨み、本体部は壁裏に設置された配線ボックス内に収容されあるいは露出状態で壁裏に配置される。
【0034】
化粧プレート21は、図6に示すように、合成樹脂等により略矩形板状に形成され、中央部に配線器具20を前面に臨ませるための四角孔からなる貫通孔22を有し、周縁23全体に沿って僅かな段部が形成され、化粧プレート21の周囲の構造物の壁面等に周縁23が密接するようになっている。化粧プレート21は、配線器具20、配線器具取付枠等を前方から覆って配線器具20の設置箇所全体を覆い、この箇所の見栄えを向上させる。
【0035】
次に、このように構成された覆い部材10を化粧プレート21の前面に取り付けるには、予め固定部12の固定面13に粘着部材15を貼着しておく。このとき、前方から透明である固定部12を通して粘着部材15と固定面13との貼着状態を確認し、連通する気泡や空気の流路等が残っていて非通水性や気密性が損なわれる場合は、気泡等を押し潰すなどして消失させて空気の通流を完全に遮断する。あるいは、覆い部材10を一旦取り外して再度取り付け直したり、新しい粘着部材15に交換して取り付ける。
【0036】
そこで、覆い部材10を化粧プレート21に取り付ける直前に、貼着部材15に貼着されている剥離シートを剥がし、配線器具20の周囲を取り囲むようにして、粘着部材15が貼着されている固定面13を化粧プレート21の前面に貼着して覆い部材10を取り付ける。図2は、覆い部材10を化粧プレート21に取り付けた後の配線器具覆い構造1を示す。なお、このとき、粘着部材15の表面には接着剤等は塗布されておらず、覆い部材10の固定は粘着部材15の再接着可能な粘着性を利用して化粧プレート21に取り付けられているので、貼着する際に位置ずれなどしたときは、一旦覆い部材10を化粧プレート21から取り外し、貼り直すことができる。
【0037】
次に、本実施形態の覆い部材10及び配線器具覆い構造1の作用を説明する。
覆い部材10は、固定面13に貼着された再接着可能な粘着部材15により固定部12を化粧プレート21の前面に接着できるので、覆い部材10を配線器具20の前面の全体を覆うようにして化粧プレート21の前面に簡単に取り付けることができる。
【0038】
そして、特に、覆い部11が配線器具20の前面の全体を覆うとともに、粘着部材15が粘着性及び非通水性を有するので、普段は使用されていないコンセントに覆い部材10を取り付けることにより、十分な防塵、防水機能を確保して埃及び水がコンセントに侵入するのを完全に防止することができ、これにより、トラッキング現象の発生を確実に防止することができる。加えて、配線器具20と化粧プレート21との間の隙間風の流入を防止することができる。
【0039】
ここで、固定面13は、配線器具20の周囲を囲み化粧プレート21の前面と対面し、化粧プレート21の前面に対して接着可能であるため、固定部12を化粧プレート21に直に接着することができる。一般的に化粧プレート21の前面は平滑な面となっており、安定した接着状態を確保できる。更に、固定部12全体を化粧プレート21の前面よりも小さく形成すれば、覆い部材10を化粧プレート21の範囲内に収めることができ、周囲の環境に影響されず、確実に覆い部材10を設置することができる。
【0040】
一方で、粘着部材15は、再接着可能な粘着性を有することにより、覆い部材10は簡単に取り外すことができる。このため、覆い部材10を取り付けて配線器具20を保護していた状態から配線器具20を常時あるいは一時的に使用したいときは覆い部材10を取り外し、配線器具20の使用が不要になったら、覆い部材10を再度取り付けて配線器具20の前面を覆うことができ、このようにして、覆い部材10を繰り返し使用することができる。
【0041】
ところで、上記実施形態の覆い部材10の固定部12は、固定面13が化粧プレート21の前面と対面するよう設けられ、粘着部材15は化粧プレート21の前面に接着可能となっているが、これに限定されるものではなく、図7に示すように、固定部12は、化粧プレート21の前面よりも外側にまで張り出し、固定面13は、化粧プレート21の外側にあってその周囲を囲むように設けられており、化粧プレート21に接着されるのではなく、粘着部材15を介して化粧プレート21の外側周囲の構造物の壁面30に接着されるものとすることもできる。図7に示す覆い部11は、全体が配線器具20及び化粧プレート21の前面と対面してそれらの前面の全体を一体に覆い、配線器具20及び化粧プレート21の前面が壁面30から前方に僅かに突き出していることに対応して、全体的に固定部12より前面側に僅かに突き出している。
【0042】
この場合、化粧プレート21の前面全体に加えて、化粧プレート21の周囲も覆うので、より広い範囲を汚れ等から防止することが可能である。更に、接着先が化粧プレート21でないため、化粧プレート21に糊残りが生じる等の問題もない。
【0043】
次に、上記実施形態の覆い部材10の固定部12は、透明に形成されているが、貼着部材15の貼着状態を視覚により確認できれば、半透明等に形成してもよい。なお、製作の都合などから、固定部12に合わせて覆い部11も同じ透明な合成樹脂材により一体に形成されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、覆い部11のみを半透明あるいは有色の非透明に形成してもよく、この場合、二色成形により覆い部11と固定部12とを一体に形成することもできる。また、覆い部11と固定部12とは異なる合成樹脂材で形成してもよく、これらを別体で形成した後接着等により一体に接合することもできる。
【0044】
また、上記実施形態の固定部12は、配線器具20の周囲を囲む方向の一部である下隅部に摘み片からなる張出部14が設けられて貼着部材15の外方に張り出しているが、張出部14はそれ以外の箇所に設けてもよい。更に、固定部12の外縁は全周に渡って粘着部材15の外縁よりも外方に張り出していてもよく、その場合は、粘着部材15の外周端面に付着した埃等を隠し、見栄えの低下を防止することができる。
【0045】
更に、上記実施形態の粘着部材15は、シート状のものを固定面13に貼着したものであるが、これに限られるものではなく、固定面13に非連続状態に分散しあるいは点在していて、化粧プレート21への貼着による圧縮変形に伴って隣接する粘着部材15どうしが接合して連続した環状の貼着状態が得られる構成のものとしてもよい。
【0046】
粘着部材15は、再接着可能な接着剤を少量加えて粘着力、接着力を強化してもよい。更には、粘着部材15は、弾性をも有する粘弾性材で形成してもよい。この場合、覆い部材10の固定面13及び化粧プレート21の前面あるいは壁面30が多少凹凸の粗面の状態になっていても、覆い部材10と粘着部材15あるいは化粧プレート21や壁面30と粘着部材15との間の気密性を向上させることができる。
【0047】
また、粘着部材15は、貼着される覆い部材10の固定面13を細かい凹凸を有する粗面で形成するなどして、固定面13との密着強度を化粧プレート21との密着強度より大きくし、それにより、一旦貼着した覆い部材10を化粧プレート21あるいは壁面30から取り外したとき、粘着部材15は固定面13側に残るようにすることも可能である。なお、覆い部材10は、化粧プレート21あるいは壁面30から取り外した後は、再使用に備えて密封された袋等に入れて保管するのが望ましい。
【0048】
加えて、粘着部材15は、覆い部材10を化粧プレート21や壁面30に取り付ける前においては、予め固定部12の固定面13に貼着されているが、これに限られるものではなく、化粧プレート21等に取り付ける前においては固定部12とは別体になっていて両面が剥離シートで覆われており、覆い部材10を化粧プレート21に取り付ける直前に剥離シートを剥がすものとしてもよい。この場合、先に固定部12側の剥離シートを剥がして粘着部材15を固定部12に貼着してから、化粧プレート21側の剥離シートを剥がして粘着部材15を化粧プレート21あるいは壁面30に貼着して覆い部材10を取り付けることができる。あるいは、先に化粧プレート21側の剥離シートを剥がして粘着部材15を化粧プレート21あるいは壁面30に貼着してから、固定部12側の剥離シートを剥がして粘着部材15を固定部12の固定面13に貼着して覆い部材10を取り付けてもよい。
【0049】
そして、粘着部材15の剥離シートは、粘着部材15の粘着性によりそのまま粘着部材15に貼着されていて覆い部材10の取り付け時に剥がされるが、粘着部材15と剥離シートとの間に再接着可能な接着剤を少量塗布することにより剥離シートを剥がすまでの間の粘着部材15との付着力を増してもよい。
【0050】
更に、粘着部材15は、貼着先が化粧プレート21や壁面30のみでなく、一部は、化粧プレート21の貫通孔22から前方に臨む配線器具20にも貼着されてもよい。
【0051】
なお、本実施形態では、覆い部材10は、矩形状に形成されているが、これに限られるものではなく、化粧プレート21の形状に対応して、六角形、八角形等の多角形状、円形状、楕円形状等に形成してもよい。
【0052】
また、本実施形態では、配線器具20は、電気機器のプラグが差し込まれるコンセントを例示しているが、それ以外の、電話コンセントなどであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 配線器具覆い構造 15 粘着部材
10 覆い部材 20 配線器具
11 覆い部 21 化粧プレート
12 固定部 22 貫通孔
13 固定面 30 壁面(構造物)
14 張出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7