(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20241009BHJP
B60C 9/17 20060101ALI20241009BHJP
B60C 9/08 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B60C19/00 J
B60C9/17
B60C9/08 J
(21)【出願番号】P 2021109739
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】清村 崇
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-055450(JP,A)
【文献】特開2014-028569(JP,A)
【文献】特開2008-265499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
23/00-23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ赤道面に対して車両装着外側の第1半部と車両装着内側の第2半部とからなり、
前記第1半部に位置する第1ビードコアと前記第2半部に位置する第2ビードコアとの間に延びるカーカスを備え、
前記カーカスは、
前記第1ビードコアと前記第2ビードコアとの間をトロイダル状に延びる、カーカス本体部と、
前記カーカス本体部から延び、前記第1ビードコアの周りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されて、タイヤ径方向外側に向かって延びる、第1カーカス折返し部と、
前記カーカス本体部から延び、前記第2ビードコアの周りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されて、タイヤ径方向外側に向かって延びる、第2カーカス折返し部と、を備え、
前記第1カーカス折返し部のタイヤ径方向外側の第1端部は、前記第2カーカス折返し部のタイヤ径方向外側の第2端部よりも、タイヤ径方向外側に位置し、
通信装置が、前記第1半部のサイドウォール部において、前記第1端部よりもタイヤ径方向内側であって、前記第2端部よりもタイヤ径方向外側に埋設されて
おり、
前記通信装置が、前記第1半部の前記サイドウォール部において、タイヤ最大幅の位置よりもタイヤ径方向外側に位置している、タイヤ。
【請求項2】
前記カーカスのクラウン域のタイヤ径方向外側に配置されたベルトを更に備え、
前記第1カーカス折返し部の前記第1端部は、前記第1半部における前記ベルトのタイヤ幅方向外側の端部よりもタイヤ幅方向内側に位置している、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記カーカス本体部のタイヤ径方向外側に配置されたベルトを更に備え、
前記第1カーカス折返し部の前記第1端部は、前記第1半部における前記ベルトのタイヤ幅方向外側の端部よりもタイヤ幅方向外側に位置している、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記通信装置は、前記第1半部の前記サイドウォール部において、前記第1カーカス折返し部よりもタイヤ幅方向外側に埋設されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記通信装置は、前記第1半部の前記サイドウォール部において、前記カーカス本体部よりもタイヤ幅方向内側に埋設されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記通信装置は、前記第1半部の前記サイドウォール部において、前記カーカス本体部よりもタイヤ幅方向外側であって、前記第1カーカス折返し部よりもタイヤ幅方向内側に埋設されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤにRFタグなどの通信装置を埋設した構成が知られている。例えば、特許文献1には、タイヤのサイドウォール部にRFタグが設けられたタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のタイヤでは、タイヤに荷重が加えられた際に、通信装置に負荷が掛かり、通信装置が損傷する場合があった。そのため、タイヤに設けられた通信装置の耐久性を向上させることが依然として求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、タイヤに設けられた通信装置の耐久性を向上させた、タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタイヤは、タイヤ赤道面に対して車両装着外側の第1半部と車両装着内側の第2半部とからなり、前記第1半部に位置する第1ビードコアと前記第2半部に位置する第2ビードコアとの間に延びるカーカスを備え、前記カーカスは、前記第1ビードコアと前記第2ビードコアとの間をトロイダル状に延びる、カーカス本体部と、前記カーカス本体部から延び、前記第1ビードコアの周りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されて、タイヤ径方向外側に向かって延びる、第1カーカス折返し部と、前記カーカス本体部から延び、前記第2ビードコアの周りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されて、タイヤ径方向外側に向かって延びる、第2カーカス折返し部と、を備え、前記第1カーカス折返し部のタイヤ径方向外側の第1端部は、前記第2カーカス折返し部のタイヤ径方向外側の第2端部よりも、タイヤ径方向外側に位置し、通信装置が、前記第1半部のサイドウォール部において、前記第1端部よりもタイヤ径方向内側であって、前記第2端部よりもタイヤ径方向外側に埋設されている。
本発明に係るタイヤによれば、第2半部の第2カーカス折返し部の長さを短く抑えることでタイヤの重量化を抑制しつつ、第1半部のサイドウォール部に設けられた通信装置の耐久性を向上させることができる。
【0007】
本発明に係るタイヤは、前記カーカスのクラウン域のタイヤ径方向外側に配置されたベルトを更に備え、前記第1カーカス折返し部の前記第1端部は、前記第1半部における前記ベルトのタイヤ幅方向外側の端部よりもタイヤ幅方向内側に位置していることが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、第1半部のサイドウォール部の剛性が更に高くなり、通信装置の耐久性が更に向上する。
【0008】
本発明に係るタイヤは、前記カーカス本体部のタイヤ径方向外側に配置されたベルトを更に備え、前記第1カーカス折返し部の前記第1端部は、前記第1半部における前記ベルトのタイヤ幅方向外側の端部よりもタイヤ幅方向外側に位置していることが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、タイヤ径方向の荷重がタイヤに加えられた場合に、第1半部のサイドウォール部において第1カーカス折返し部が配置されている部分のタイヤ幅方向への面外変形が抑制される。このため、第1半部のサイドウォール部に埋設された通信装置が損傷しにくい。
【0009】
本発明に係るタイヤでは、前記通信装置は、前記第1半部の前記サイドウォール部において、前記第1カーカス折返し部よりもタイヤ幅方向外側に埋設されていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、タイヤの車両装着外側に位置する電子機器と通信する際の通信装置の通信性が向上する。
【0010】
本発明に係るタイヤでは、前記通信装置は、前記第1半部の前記サイドウォール部において、前記カーカス本体部よりもタイヤ幅方向内側に埋設されていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、タイヤ径方向の荷重がタイヤに加えられた場合に、通信装置が損傷しにくい。
【0011】
本発明に係るタイヤでは、前記通信装置は、前記第1半部の前記サイドウォール部において、前記カーカス本体部よりもタイヤ幅方向外側であって、前記第1カーカス折返し部よりもタイヤ幅方向内側に埋設されていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、タイヤの外表面又は内表面からの衝撃により、通信装置が損傷しにくい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タイヤに設けられた通信装置の耐久性を向上させた、タイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態におけるタイヤの、タイヤ幅方向断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されるタイヤの第1の変形例の、タイヤ幅方向断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示されるタイヤの第2の変形例の、タイヤ幅方向断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態におけるタイヤの、タイヤ幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るタイヤの実施形態について、図面を参照して説明する。各図において共通する部材及び部位には同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意されたい。
【0015】
本明細書において、「タイヤ幅方向」とは、タイヤの回転軸と平行な方向をいう。「タイヤ径方向」とは、タイヤの回転軸と直交する方向をいう。「タイヤ周方向」とは、タイヤの回転軸を中心にタイヤが回転する方向をいう。
【0016】
また、本明細書において、タイヤ径方向に沿ってタイヤの回転軸に近い側を「タイヤ径方向内側」と称し、タイヤ径方向に沿ってタイヤの回転軸から遠い側を「タイヤ径方向外側」と称する。一方、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLに近い側を「タイヤ幅方向内側」と称し、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLから遠い側を「タイヤ幅方向外側」と称する。
【0017】
本明細書において、「タイヤ赤道面」とは、タイヤのタイヤ幅方向断面において、1対のビードコアの中心を結んだ直線であるビード線の中点において、ビード線と垂直な平面である。
【0018】
本明細書において、特に断りのない限り、タイヤの各要素の位置関係等は、基準状態で測定されるものとする。「基準状態」とは、タイヤを適用リムであるホイールのリムに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした状態である。以下において、タイヤは、内腔に空気が充填され、乗用車等の車両に装着されるものとして説明する。ただし、タイヤの内腔には空気以外の流体が充填されていてもよく、タイヤは乗用車以外の車両に装着されてもよい。
【0019】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO (The European Tyre and Rim Technical Organization)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA (The Tire and Rim Association, Inc.)のYEAR BOOK等に記載されている、或いは、将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)をいう。上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTOのSTANDARDS MANUAL2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられる。
【0020】
本明細書において、「規定内圧」とは、上記のJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいう。上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。さらに、本明細書において、「規定荷重」とは、上記産業規格に記載されている適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する荷重をいう。上記産業規格に記載のないサイズの場合には、「規定荷重」は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るタイヤ1について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態におけるタイヤ1をタイヤ幅方向に沿って切断した、タイヤ幅方向断面図である。
【0023】
タイヤ1は、タイヤ赤道面CLに対して車両装着外側の第1半部11と車両装着内側の第2半部12とからなる。本明細書では、タイヤ1の「車両装着外側」とは、タイヤ1を車両に装着した時に車両の中心から遠い側をいい、タイヤ1の「車両装着内側」とは、タイヤ1を車両に装着した時に車両の中心に近い側をいう。
【0024】
タイヤ1は、一対のビード部2と、一対のサイドウォール部3と、トレッド部4とを有している。サイドウォール部3は、トレッド部4とビード部2との間に延在している。一対のビード部2には、第1半部11に位置する第1ビード部21と、第2半部12に位置する第2ビード部22とが含まれる。一対のサイドウォール部3には、第1半部11に位置する第1サイドウォール部31と、第2半部12に位置する第2サイドウォール部32とが含まれる。トレッド部4は、第1半部11と第2半部12に亘って延びている。詳細は後述するが、タイヤ1の第1半部11の第1サイドウォール部31には、通信装置9が埋設されている。
【0025】
タイヤ1は、一対のビード部2にそれぞれ配置された一対のビードコア5と、一対のビードコア5間にトロイダル状に延在する1枚以上のプライからなるカーカス6と、カーカス6のクラウン域のタイヤ径方向外側に配置された1層以上のベルト層からなるベルト7と、を備えている。一対のビードコア5には、第1半部11に位置する第1ビードコア51と、第2半部12に位置する第2ビードコア52とが含まれる。
【0026】
ビードコア5(第1ビードコア51及び第2ビードコア52のそれぞれ)は、タイヤ周方向に延在する環状のケーブルビードからなっている。ビードコア5の延在方向に直交する面の断面形状(タイヤ幅方向の断面形状)は、円形又は略円形とされている。ただし、ビードコア5のタイヤ幅方向の断面形状は、四角形又は六角形等、任意の形状とされていてもよい。ケーブルビードは、例えば、高炭素の鋼線をゴム被覆して構成されている。ビードコア5のタイヤ径方向外側には、ゴム材料等で形成されたビードフィラー8が設けられている。ビードフィラー8には、第1半部11に位置する第1ビードフィラー81と、第2半部12に位置する第2ビードフィラー82とが含まれる。
【0027】
タイヤ1のタイヤ幅方向断面において、第1ビードフィラー81は、第2ビードフィラー82よりもタイヤ径方向の長さが長い。より具体的には、第1ビードフィラー81のタイヤ径方向における長さL1は、第2ビードフィラー82のタイヤ径方向における長さL2よりも長い。これにより、通信装置9が埋設された第1半部11の第1サイドウォール部31の剛性が向上する。一方で、第2半部21の第2ビードフィラー82の長さを短く抑えることで、通信装置9を埋設することによる、タイヤ1の重量化を抑制することができる。
【0028】
カーカス6は、第1ビードコア51と第2ビードコア52との間にトロイダル状に延在する1枚以上(本実施形態では1枚)のプライからなる。プライは、複数のコードをゴム被覆して構成されている。本実施形態では、プライを構成するコードは、例えばナイロンコードなどの、有機繊維コードである。これにより、プライが金属コードにより構成された場合に比べて、カーカス6が通信装置9の通信の妨げとなりにくい。ただし、プライを構成するコードは、任意の材料で形成されていてもよく、例えば、スチールコードなどの金属コードであってもよい。本実施形態において、コードは、トレッド部4においてタイヤ幅方向に延在するように配置されている。即ち、カーカス6は、ラジアル構造とされている。カーカス6は、一対のビードコア5に係止されている。
【0029】
具体的には、カーカス6は、カーカス本体部6Aと、第1カーカス折返し部61Bと、第2カーカス折返し部62Bと、を備えている。カーカス本体部6Aは、第1ビードコア51と第2ビードコア52との間をトロイダル状に延びている。第1カーカス折返し部61Bは、カーカス本体部6Aから延び、第1ビードコア51の周りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されて、タイヤ径方向外側に向かって延びている。第2カーカス折返し部62Bは、カーカス本体部6Aから延び、第2ビードコア52の周りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されて、タイヤ径方向外側に向かって延びている。
【0030】
タイヤ1のタイヤ幅方向断面において、第1カーカス折返し部61Bは、第2カーカス折返し部62Bよりもタイヤ径方向の長さが長い。すなわち、第1カーカス折返し部61Bのタイヤ径方向外側の第1端部61Eは、第2カーカス折返し部62Bのタイヤ径方向外側の第2端部62Eよりも、タイヤ径方向外側に位置している。
【0031】
ベルト7は、カーカス6のクラウン域のタイヤ径方向外側に配置されている。ベルト7は、タイヤ赤道面CLにおいてタイヤ径方向に積層された1層以上(本実施形態では2層)のベルト層によって構成されている。ベルト7は、トレッド部4において、カーカス6をタイヤ径方向外側から覆うように設けられている。ベルト7は、第1半部11と第2半部12に亘って延びている。本明細書では、1層以上のベルト層のうち、タイヤ幅方向における長さが最も長いベルト層を「最大幅ベルト層」ともいう。そして、ベルト7の最大幅ベルト層のタイヤ幅方向外側の端部7Eを、単に、ベルト7のタイヤ幅方向外側の端部7Eともいう。本実施形態では、2層のベルト層のうち、タイヤ径方向内側のベルト層が最大幅ベルト層である。ただし、最大幅ベルト層は、タイヤ径方向において最も内側のベルト層でなくてもよい。また、ベルト7が1層のベルト層で構成されている場合、最大幅ベルト層は、この1層のベルト層を指す。
【0032】
タイヤ1には、通信装置9が設けられている。
【0033】
通信装置9は、無線通信を行う。通信装置9は、例えば、RF(Radio Frequency)タグである。RFタグは、RFID(Radio Frequency Identification)タグともいう。通信装置9は、制御部及び記憶部を構成するIC(Integrated Circuit)チップと、ICチップに接続された1つ以上のアンテナと、を備える。ICチップは、タイヤ1の識別情報、製造年月日など、タイヤ1に関する任意の情報を記憶してもよい。例えば、通信装置9は、直線状、波状、又は螺旋状に延びる2つのアンテナがICチップから互いに反対方向に延びるように設けられ、装置全体として長手状の形状を有していてもよい。
【0034】
ICチップは、1つ以上のアンテナで受信する電磁波により発生する誘電起電力により動作してもよい。すなわち、通信装置9は、パッシブ型の通信装置であってもよい。或いは、通信装置9は、電池を更に備え、自らの電力により電磁波を発生して通信可能であってもよい。すなわち、通信装置9は、アクティブ型の通信装置であってもよい。
【0035】
通信装置9は、第1半部11の第1サイドウォール部31に埋設されている。具体的には、通信装置9は、第1半部11の第1サイドウォール部31において、第1カーカス折返し部61Bの第1端部61Eよりもタイヤ径方向内側であって、第2カーカス折返し部62Bの第2端部62Eよりもタイヤ径方向外側に埋設されている。これにより、第1半部11の第1サイドウォール部31において、通信装置9が埋設された位置よりもタイヤ径方向外側まで第1カーカス折返し部61Bが延在していることで、通信装置9の近傍における第1サイドウォール部31の剛性が高くなる。そのため、例えば、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に、第1サイドウォール部31におけるタイヤ幅方向外側への面外変形を抑制することができる。したがって、第1半部11の第1サイドウォール部31に埋設された通信装置9の耐久性が向上する。この際、通信装置9が埋設されていない第2半部12における第2カーカス折返し部62Bの長さを、第1カーカス折返し部61Bと同じとせずに、短く抑えることで、通信装置9を埋設することによる、タイヤ1の重量化を抑制することができる。
【0036】
そして、第1半部11の第1カーカス折返し部61Bがタイヤ径方向外側に延ばされることで、第1半部11の耐カット性が向上する。このことは、車両走行中に縁石又は小石などの障害物と接触しやすい車両装着外側の第1半部11の耐久性の向上にも有効である。また、通信装置9が、第2カーカス折返し部62Bの第2端部62Eよりもタイヤ径方向外側に埋設されていることにより、通信装置9よりも車両装着内側における第2半部12の位置には第2カーカス折返し部62Bが配置されていない。これにより、通信装置9がタイヤ1の車両装着内側に位置する電子機器と通信する場合には、第2半部12が通信装置9の通信の妨げとなりにくい。なお、本実施形態では、通信装置9は、タイヤ1に完全に埋設されているものとして説明する。ただし、通信装置9がタイヤ1に埋設されていることは、通信装置9の少なくとも一部がタイヤ1に埋設されていることを含み得る。
【0037】
第1カーカス折返し部61Bのタイヤ径方向外側の第1端部61Eは、第1半部11におけるベルト7のタイヤ幅方向外側の端部7Eよりもタイヤ幅方向内側に位置している。すなわち、カーカス6の第1半部11側では、エンベロープ構造が採用されている。本実施形態では、第1カーカス折返し部61Bの第1端部61Eは、カーカス本体部6Aよりもタイヤ径方向外側に位置しており、ベルト7よりもタイヤ径方向内側に位置している。このように、第1サイドウォール部31の全体に第1カーカス折返し部61Bが延在していることで、第1サイドウォール部31の途中で第1カーカス折返し部61Bが終端している構成に比べて、第1サイドウォール部31の剛性が高くなる。このため、第1半部11の第1サイドウォール部31に埋設された通信装置9の耐久性が更に向上する。
【0038】
通信装置9は、第1半部11の第1サイドウォール部31において、第1カーカス折返し部61Bよりもタイヤ幅方向外側に埋設されている。これにより、タイヤ1の車両装着外側に位置する電子機器と通信装置9が通信する場合に、カーカス6が通信装置9の通信の妨げにならず、通信装置9の通信性が向上する。
【0039】
ただし、第1半部11の第1サイドウォール部31において通信装置9が埋設される位置は
図1に示される例に限られない。通信装置9の埋設される位置を変えた、タイヤ1の変形例を、
図2及び
図3に示す。
図2は、
図1に示されるタイヤ1の第1の変形例の、タイヤ幅方向断面図である。
図3は、
図1に示されるタイヤ1の第2の変形例の、タイヤ幅方向断面図である。
【0040】
例えば、
図2に示されるように、通信装置9は、第1半部11の第1サイドウォール部31において、カーカス本体部6Aよりもタイヤ幅方向内側に埋設されていてもよい。一般的に、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に、サイドウォール部3は、タイヤ幅方向外側に撓む。その際に、サイドウォール部3内では、タイヤ幅方向外側に近づくほど、タイヤ径方向に引き延ばされる変形が生じ、タイヤ幅方向内側に近づくほど、サイドウォール部3がタイヤ径方向に圧縮される変形が生じる。通信装置9は、特に、通信装置9に引っ張りひずみが生じた際に損傷しやすいことから、通信装置9をカーカス本体部6Aよりもタイヤ幅方向内側に埋設することで、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に通信装置9が損傷しにくくなる。
【0041】
或いは、
図3に示されるように、通信装置9は、第1半部11の第1サイドウォール部31において、カーカス本体部6Aよりもタイヤ幅方向外側であって、第1カーカス折返し部61Bよりもタイヤ幅方向内側に埋設されていてもよい。通信装置9のタイヤ幅方向の内側及び外側がそれぞれカーカス本体部6A及び第1カーカス折返し部61Bに覆われていることで、タイヤ1の外表面又は内表面からの衝撃により、通信装置9が損傷しにくい。
【0042】
再び
図1を参照して、通信装置9は、第1半部11の第1サイドウォール部31において、タイヤ最大幅Wの位置よりもタイヤ径方向外側に位置している。ここで、「タイヤ最大幅W」の位置とは、タイヤ1を適用リムに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態において、タイヤ1の幅方向の長さが最も長くなる位置である。これにより、路面など、タイヤ1よりもタイヤ径方向外側に位置する電子機器と通信装置9が通信する場合に、タイヤ1の他の部分が通信装置9の通信を妨げにくくなる。そのため、通信装置11のタイヤ径方向に対する通信性とタイヤ幅方向に対する通信性との両立を図ることができる。
【0043】
一方で、通信装置9は、第1半部11の第1サイドウォール部31において、タイヤ最大幅Wの位置よりもタイヤ径方向外側に位置していてもよい。通信装置9がタイヤ最大幅Wの位置よりもタイヤ径方向内側に埋設されている場合、通信装置9の埋設位置の外表面に縁石又は小石などの障害物がぶつかりにくくなる。そのため、通信装置9が損傷しにくくなる。
【0044】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係るタイヤ1について、
図4を参照して説明する。
図4は、本発明の第2実施形態におけるタイヤ1をタイヤ幅方向に沿って切断した、タイヤ幅方向断面図である。
【0045】
図4に示されるように、第2実施形態では、第1カーカス折返し部61Bのタイヤ径方向外側の端部6Eの位置が、第1実施形態と異なっている。以下に、第1実施形態と異なる点を中心に第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成を有する部位には同じ符号を付す。
【0046】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、タイヤ1のタイヤ幅方向断面において、第1カーカス折返し部61Bは、第2カーカス折返し部62Bよりもタイヤ径方向の長さが長い。より具体的には、第1カーカス折返し部61Bのタイヤ径方向外側の第1端部61Eは、第2カーカス折返し部62Bのタイヤ径方向外側の第2端部62Eよりも、タイヤ径方向外側に位置している。そして、第1半部11の第1サイドウォール部31に、通信装置9が埋設されている。
【0047】
本実施形態では、第1カーカス折返し部61Bのタイヤ径方向外側の第1端部61Eは、第1半部11におけるベルト7のタイヤ幅方向外側の端部7Eよりもタイヤ幅方向外側に位置している。すなわち、第1サイドウォール部31には、タイヤ径方向において、カーカス6の第1カーカス折返し部61Bが配置されている内側部分31Aと、第1カーカス折返し部61Bが配置されていない外側部分31Bとが含まれている。第1サイドウォール部31の内側部分31Aは、第1カーカス折返し部61Bが配置されているため、外側部分31Bよりも剛性が高い。このため、例えば、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に、第1サイドウォール部31の内側部分31Aと外側部分31Bとの剛性の違いにより、第1サイドウォール部31の外側部分31Bがより撓みやすくなり、内側部分31Aがより撓みにくくなる。これにより、第1サイドウォール部31の内側部分31Aにおけるタイヤ幅方向への面外変形が抑制される。したがって、第1カーカス折返し部61Bが配置されている第1サイドウォール部31の内側部分31Aに通信装置9を埋設することで、通信装置9が損傷しにくくなる。図示例では、第1カーカス折返し部61Bのタイヤ径方向外側の第1端部61Eは、タイヤ最大幅Wの位置の近傍に位置している。ただし、第1カーカス折返し部61Bのタイヤ径方向外側の第1端部61Eは、タイヤ径方向において、第2カーカス折返し部62Bのタイヤ径方向外側の第2端部62Eよりもタイヤ幅方向外側の、任意の位置とされてもよい。
【0048】
本実施形態では、通信装置9は、カーカス6の第1カーカス折返し部61Bのタイヤ幅方向外側に埋設されている。ただし、第1実施形態と同様に、通信装置9は、第1半部11の第1サイドウォール部31において、カーカス本体部6Aよりもタイヤ幅方向内側に埋設されていてもよい。或いは、通信装置9は、第1半部11の第1サイドウォール部31において、カーカス本体部6Aよりもタイヤ幅方向外側であって、第1カーカス折返し部61Bよりもタイヤ幅方向内側に埋設されていてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、通信装置9は、第1半部11の第1サイドウォール部31において、タイヤ最大幅Wの位置よりもタイヤ径方向内側に位置している。ただし、第1実施形態と同様に、通信装置9は、第1半部11の第1サイドウォール部31において、タイヤ最大幅Wの位置よりもタイヤ径方向外側に位置していてもよい。
【0050】
以上述べたように、本発明の各実施形態に係るタイヤ1は、タイヤ赤道面CLに対して車両装着外側の第1半部11と車両装着内側の第2半部12とからなり、第1半部11に位置する第1ビードコア51と第2半部12に位置する第2ビードコア52との間に延びるカーカス6を備え、カーカス6は、第1ビードコア51と第2ビードコア52との間をトロイダル状に延びる、カーカス本体部6Aと、カーカス本体部6Aから延び、第1ビードコア51の周りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されて、タイヤ径方向外側に向かって延びる、第1カーカス折返し部61Bと、カーカス本体部6Aから延び、第2ビードコア52の周りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されて、タイヤ径方向外側に向かって延びる、第2カーカス折返し部62Bと、を備え、第1カーカス折返し部61Bのタイヤ径方向外側の第1端部61Eは、第2カーカス折返し部62Bのタイヤ径方向外側の第2端部62Eよりも、タイヤ径方向外側に位置し、通信装置9が、第1半部11の第1サイドウォール部31において、第1端部61Eよりもタイヤ径方向内側であって、第2端部62Eよりもタイヤ径方向外側に埋設されている。かかる構成によれば、第2半部12の第2カーカス折返し部62Bの長さを短く抑えることでタイヤ1の重量化を抑制しつつ、第1半部11の第1サイドウォール部31に設けられた通信装置9の耐久性を向上させることができる。
【0051】
本発明の各実施形態に係るタイヤ1は、カーカス6のクラウン域のタイヤ径方向外側に配置されたベルト7を更に備え、第1カーカス折返し部61Bの第1端部61Eは、第1半部11におけるベルト7のタイヤ幅方向外側の端部7Eよりもタイヤ幅方向内側に位置していることが好ましい。かかる構成によれば、第1サイドウォール部31の途中で第1カーカス折返し部61Bが終端している構成に比べて、第1半部11の第1サイドウォール部31の剛性が高くなる。このため、第1半部11の第1サイドウォール部31に埋設された通信装置9の耐久性が更に向上する。
【0052】
本発明の各実施形態に係るタイヤ1は、カーカス本体部6Aのタイヤ径方向外側に配置されたベルト7を更に備え、第1カーカス折返し部61Bの第1端部61Eは、第1半部11におけるベルト7のタイヤ幅方向外側の端部7Eよりもタイヤ幅方向外側に位置していることが好ましい。かかる構成によれば、タイヤ径方向の荷重がタイヤに加えられた場合に、第1半部11の第1サイドウォール部31において、第1カーカス折返し部61Bが配置されている内側部分31Aのタイヤ幅方向への面外変形が抑制される。このため、第1半部11の第1サイドウォール部31に埋設された通信装置9が損傷しにくくなる。
【0053】
本発明の各実施形態に係るタイヤ1では、通信装置9は、第1半部11の第1サイドウォール部31において、第1カーカス折返し部61Bよりもタイヤ幅方向外側に埋設されていることが好ましい。かかる構成によれば、タイヤ1の車両装着外側に位置する電子機器と通信する際の通信装置9の通信性が向上する。
【0054】
本発明の第1実施形態に係るタイヤ1では、通信装置9は、第1半部11の第1サイドウォール部31において、カーカス本体部6Aよりもタイヤ幅方向内側に埋設されていることが好ましい。かかる構成によれば、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に、通信装置9が損傷しにくい。
【0055】
本発明の第1実施形態に係るタイヤ1では、通信装置9は、第1半部11の第1サイドウォール部31において、カーカス本体部6Aよりもタイヤ幅方向外側であって、第1カーカス折返し部61Bよりもタイヤ幅方向内側に埋設されていることが好ましい。かかる構成によれば、タイヤ1の外表面又は内表面からの衝撃により、通信装置9が損傷しにくい。
【0056】
本発明を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本発明に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1:タイヤ、 11:第1半部、 12:第2半部、 2:ビード部、 21:第1ビード部、 22:第2ビード部、 3:サイドウォール部、 31:第1サイドウォール部、 32:第2サイドウォール部、 4:トレッド部、 5:ビードコア、 51:第1ビードコア、 52:第2ビードコア、 6:カーカス、 6A:カーカス本体部、 61B:第1カーカス折返し部、 62B:第2カーカス折返し部、 61E:第1カーカス折返し部の端部、 62E:第2カーカス折返し部の端部、 7:ベルト、 7E:ベルトの端部、 8:ビードフィラー、 81B:第1ビードフィラー、 82B:第2ビードフィラー、 9:通信装置、 CL:タイヤ赤道面、 W:タイヤ最大幅、 L1:第1ビードフィラーの長さ、 L2:第2ビードフィラーの長さ