(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
B60C19/00 G
B60C19/00 J
(21)【出願番号】P 2021109744
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】大坂 岳史
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-335384(JP,A)
【文献】特開2005-216077(JP,A)
【文献】国際公開第2021/014278(WO,A1)
【文献】実開平07-030104(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
23/00-23/04
G06K 19/00-19/18
G08C 13/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置を備えた空気入りタイヤであって、
前記通信装置は、該通信装置の全体が被覆材に包囲され、
前記通信装置は、前記被覆材により二重に包囲されており、内層の材質がビニールであり、外層の材質がナイロンであり、
前記被覆材に包囲された前記通信装置は、前記空気入りタイヤのサイドウォール部の表面に取り付けられ又は前記サイドウォール部内に埋め込まれたことを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記被覆材に包囲された前記通信装置は、接着層を介して前記サイドウォール部の表面に取り付けられている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記通信装置は、電磁波を送信及び/又は受信する1つ以上のアンテナと、記憶部を有するICチップと、を有する、RFタグである、請求項1
又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの製造管理、出荷管理、使用履歴管理等のデータを読み書きするためのメモリ等を有するRF(Radio Frequency)タグ等の通信装置を備えた空気入りタイヤが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような通信装置には、タイヤゴムによって通信性が阻害される場合があった。特にタイヤゴムにカーボンブラックが多く含まれる場合、通信性が阻害されやすくなる。また、通信装置は、ICチップ等の電子部品を有するため、防水対策も重要である。
【0005】
そこで、本発明は、通信性が阻害されるのが抑制され、防水対策のなされた通信装置を備えた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)通信装置を備えた空気入りタイヤであって、
前記通信装置は、該通信装置の全体が被覆材に包囲され、
前記被覆材は、ビニール又はナイロンからなり、
前記被覆材に包囲された前記通信装置は、前記空気入りタイヤのサイドウォール部の表面に取り付けられ又は前記サイドウォール部内に埋め込まれたことを特徴とする、空気入りタイヤ。
【0007】
(2)前記被覆材に包囲された前記通信装置は、接着層を介して前記サイドウォール部の表面に取り付けられている、上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
【0008】
(3)前記通信装置は、1種類又は2種類の前記被覆材により二重に包囲されている、上記(1)又は(2)に記載の空気入りタイヤ。
【0009】
(4)前記通信装置は、電磁波を送信及び/又は受信する1つ以上のアンテナと、記憶部を有するICチップと、を有する、RFタグである、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通信性が阻害されるのが抑制され、防水対策のなされた通信装置を備えた空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのタイヤ幅方向概略断面図である。
【
図2】
図1の実施形態の、被覆材により包囲された通信装置の概略図である。
【
図3】被覆材により二重に包囲された通信装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
図1に示すように、このタイヤ1は、一対のビード部2と、一対のビード部2間をトロイダル状に跨るカーカス3と、カーカス3のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置された1層以上のベルト層からなるベルト4と、ベルト4のタイヤ径方向外側に配置されたトレッド5と、を備えている。
【0014】
図示例では、ビード部2には、ビードコア2aが埋設されており、ビードコア2aのタイヤ径方向外側には、断面略三角形状のビードフィラ2bが配置されている。
【0015】
図示例では、カーカス3は、1枚以上のカーカスプライからなる。カーカス3は、一対のビード部2間をトロイダル状に跨るカーカス本体部3aと、該カーカス本体部3aから延びてビードコア2aの周りを折り返されてなるカーカス折り返し部3bとからなる。図示例では、カーカス折り返し部3bの端は、ビードフィラ2bのタイヤ径方向外側端よりもタイヤ径方向外側で終端しているが、この場合に限らない。カーカスプライのコードは、特には限定されないが、有機繊維コードを用いることができる。
【0016】
図示例では、ベルト4は、2層のベルト層4a、4bからなり、ベルトコードが層間で互いに交差して延びる、傾斜ベルトである。ベルトコードのタイヤ周方向に対する角度は、特には限定されないが、例えば15°~60°とすることができる。ベルト層の層数も1層以上であれば特には限定されない。ベルトコードの材質は、特には限定されないが、スチールコードとすることができる。
【0017】
図示例では、トレッド5は、1層のトレッドゴムからなるが、タイヤ径方向又はタイヤ幅方向に複数層のゴムを有するトレッドとして形成することもできる。また、図示例では、トレッド5には、3本の周方向主溝6が配置されているが、周方向主溝の本数や溝幅、溝深さ、溝形状等は特に限定されない。
【0018】
また、図示例では、タイヤ内面7に、インナーライナー8が配置されている。これにより、空気やガスの透過を防止することができる。
【0019】
図1に示すように、このタイヤ1は、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向半部に1つずつの、通信装置9を備えている。なお、タイヤ1は、1つ以上の通信装置9を備えていれば良い。
【0020】
通信装置9は、無線通信を行うものである。図示例で、通信装置9は、電磁波を送信及び/又は受信する1つ以上の(図示例では2つの)アンテナ11と、記憶部を有するICチップ10と、を有する、RFタグである。
【0021】
本例で、ICチップ10は、任意の既知のメモリである記憶部及び任意の既知のプロセッサである制御部を有する。アンテナ11は、ICチップ10に接続され、直線状、波状、又は螺旋状に延びる。本例では、2本のアンテナ11が反対方向に延びている。ICチップ10は、1つ以上のアンテナ11で受信する電磁波により発生する誘電起電力により動作してもよい。すなわち、通信装置9は、パッシブ型の通信装置であっても良い。あるいは、通信装置9は、電池をさらに備え、自らの電力により電磁波を発生して通信可能であってもよい。すなわち、通信装置9は、アクティブ型の通信装置であっても良い。記憶部に記憶されたタイヤの製造管理、出荷管理、使用履歴管理等のデータを読み取る、あるいは、記憶部にこれらにデータを書き込むことができる。
【0022】
図2は、通信装置の概略図である。通信装置9は、該通信装置9の全体が被覆材12に包囲されている。すなわち、通信装置9は、被覆材12により雨等に晒されないようになっている。被覆材12は、ビニール又はナイロンからなる。図示例では、被覆材12は1層である。
【0023】
図1に示すように、被覆材12に包囲された通信装置9は、本実施形態では、タイヤのサイドウォール部に配置されている。本実施形態では、被覆材12に包囲された通信装置9は、タイヤ1のサイドウォール部の表面に取り付けられている。本例では、被覆材12に包囲された通信装置9は、接着層(図示せず)を介してサイドウォール部の表面に取り付けられている。接着層に用いる接着剤は、任意の既知のものを用いることができる。
他の例としては、被覆材12に包囲された通信装置9は、サイドウォール部内に埋め込まれていても良い。
【0024】
本例では、通信装置9は、カーカス折り返し部3bの端よりもタイヤ径方向外側に位置しているが、タイヤ最大幅部(
図1の断面視において、タイヤ幅方向のタイヤ幅が最大となる部分)よりもタイヤ径方向内側に位置している。これにより、カーカスにより電磁波の送受信が阻害されるのを抑制することができ、且つ、変形の大きいバットレス部付近を避けて、通信装置の耐久性を高めることができる。一方で、通信装置9の配置はこの例に限定されず、通信装置9は、カーカス折り返し部3bの端よりもタイヤ径方向内側に位置していても良い。また、通信装置9は、タイヤ最大幅部よりもタイヤ径方向外側に位置していても良い。
以下、本実施形態の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0025】
本実施形態の空気入りタイヤでは、通信装置9の全体がビニール又はナイロンからなる被覆材12により包囲されている。ビニールやナイロンは、カーボンブラックを含むゴムと比較して電磁波を妨げることがなく、従って通信装置9の通信性が阻害されるのを抑制することができる。また、ビニールやナイロンは、防水性・撥水性を有するため、これらの被覆材に全体が包囲された通信装置9は、防水性が高い。
このように、本実施形態の空気入りタイヤは、通信性が阻害されるのが抑制され、防水対策のなされた通信装置を備えたものとなり得る。
さらに、ビニールやナイロンは、伸張性を有するため、タイヤの変形に対して追従することが可能であり、耐久性の高い材質でもある。
【0026】
ここで、被覆材に包囲された通信装置は、接着層を介してサイドウォール部の表面に取り付けられていることが好ましい。
【0027】
図3に示すように、通信装置9は、1種類又は2種類の被覆材12a、12bにより二重に包囲されていることが好ましい。(例えば表層の)被覆材が破れた場合等でも防水性を確保することができるからである。2種類の被覆材12a、12bを用いる場合には、例えば内層12aにビニール、外層12bにナイロンを用いることができ、あるいは、内層12aにナイロン、外層12bにビニールを用いることもできる。
【0028】
特には限定されないが、本開示の空気入りタイヤは、特に、乗用車用タイヤ又はトラック・バス用タイヤに好適である。
【符号の説明】
【0029】
1:タイヤ、 2:ビード部、 3:カーカス、 4:ベルト、
5:トレッド、 6:周方向主溝、 7:タイヤ内面、 8:インナーライナー、
9:通信装置、 10:ICチップ、 11:アンテナ、 12:被覆材