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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】衣類乾燥機
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/02 20060101AFI20241009BHJP
   D06F 58/04 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
D06F58/02 F
D06F58/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021124322
(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公開番号】P2023019539
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊行
(72)【発明者】
【氏名】神沢 和則
(72)【発明者】
【氏名】本村 隆行
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0024299(US,A1)
【文献】特開2018-033842(JP,A)
【文献】特開2011-092329(JP,A)
【文献】特開2014-046133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/00~39/10
D06F 58/02~58/08
D06F 58/20~58/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類が収容される乾燥室と、
前記乾燥室内の空気を循環する循環風路と、
前記循環風路内に設けられ、前記循環風路内を流れる空気を除湿する除湿部と、
前記循環風路内のうち前記除湿部よりも風下側に設けられ、前記循環風路内を流れる空気を加熱する加熱部と、
前記除湿部に水を吐出することにより当該除湿部を洗浄する洗浄部と、
前記洗浄部から前記除湿部に吐出した水が前記加熱部側に移動することを阻止する阻止部と、
を備え
前記洗浄部は、前記除湿部の上方に設けられ、
前記阻止部は、前記除湿部の上端面と前記洗浄部の下端面との間に設けられている衣類乾燥機。
【請求項2】
前記循環風路の上面のうち前記除湿部と前記加熱部との間の部分に設けられ、前記循環風路内に空気を導入する空気導入口を備える請求項1に記載の衣類乾燥機。
【請求項3】
前記循環風路内において空気が流れる方向における前記阻止部の長さは、前記循環風路内において空気が流れる方向における前記除湿部の長さ以上である請求項1または2に記載の衣類乾燥機。
【請求項4】
前記循環風路内において空気が流れる方向に直交する方向における前記阻止部の長さは、前記循環風路内において空気が流れる方向に直交する方向における前記除湿部の長さ以上である請求項1からの何れか1項に記載の衣類乾燥機。
【請求項5】
前記阻止部は、吸水性を有する部材により構成されている請求項1からの何れか1項に記載の衣類乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、衣類乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類を乾燥する衣類乾燥機の一例であるドラム式の洗濯乾燥機は、衣類が収容される乾燥室として水槽を備えるとともに、その水槽内の空気を循環する循環風路を備えている。また、この循環風路内には、乾燥用の周知のヒートポンプ機構を構成する蒸発器および凝縮器が配置されている。循環風路内において、加熱部である凝縮器は、除湿部である蒸発器よりも風下側に設けられている。
【0003】
衣類を乾燥する乾燥行程においては、水槽内の空気が循環風路を通して循環される。そして、循環風路内を流れる空気には、例えば糸くずや塵埃などといった異物が含まれている。そのため、循環風路の途中には、除湿部よりも風上側に位置して、異物を捕獲するための乾燥フィルタが備えられている。
【0004】
ところで、乾燥フィルタのメッシュサイズを小さくすることで、異物の捕獲性能を向上することができる。しかしながら、乾燥フィルタのメッシュサイズを小さくするほど、当該乾燥フィルタによる風路抵抗が大きくなり、十分な循環風量を確保できなくなる。そのため、乾燥フィルタのメッシュサイズを小さくすることには限界があり、従って、乾燥フィルタによって全ての異物を捕獲することはできず、異物が乾燥フィルタを通過してしまうことを完全に抑制することは困難である。そして、乾燥フィルタを通過した異物は、さらに循環風路内を風下側に流れて除湿部に至る。そのため、乾燥用のヒートポンプ機構を備える洗濯乾燥機においては、長年の使用により、乾燥フィルタを通過した異物が除湿部の風上側部分に堆積してしまうという課題がある。
【0005】
このような課題の解決を図るべく、従来より、除湿部の風上側部分に堆積した異物を除去するための技術の開発が検討されている。例えば特許文献1には、除湿部の風上側部分に水を吐出することにより、当該部分に堆積した異物を除去するようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-46133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来構成においては、除湿部に吐出された水が、循環風路内を流れる空気によって加熱部側に飛ばされてしまうことが懸念される。そして、その水によって加熱部が冷却されてしまい、加熱部による空気の加熱が不十分となってしまうことが懸念される。加熱部による空気の加熱が不十分になると、乾燥室内に高温の空気を戻すことが困難となり、衣類の乾燥効率を悪化させてしまう。
【0008】
そこで、本実施形態は、除湿部に水を吐出することにより洗浄する機能を備える衣類乾燥機について、除湿部に吐出した水によって加熱部が冷却されてしまうことを抑制できるようにした構成を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係る衣類乾燥機は、衣類が収容される乾燥室と、前記乾燥室内の空気を循環する循環風路と、前記循環風路内に設けられ、前記循環風路内を流れる空気を除湿する除湿部と、前記循環風路内のうち前記除湿部よりも風下側に設けられ、前記循環風路内を流れる空気を加熱する加熱部と、前記除湿部に水を吐出することにより当該除湿部を洗浄する洗浄部と、前記洗浄部から前記除湿部に吐出した水が前記加熱部側に移動することを阻止する阻止部と、を備え、前記洗浄部は、前記除湿部の上方に設けられ、前記阻止部は、前記除湿部の上端面と前記洗浄部の下端面との間に設けられている
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る衣類乾燥機の構成例を概略的に示す縦断側面図
図2】第1実施形態に係る循環風路の構成例を概略的に示す図
図3】第1実施形態に係る洗浄装置およびその周辺部分の構成例を概略的に示す斜視図
図4】第1実施形態に係る熱交換ダクトの内部の構成例を概略的に示す縦断面図
図5】第1実施形態に係る蒸発器、洗浄装置、パッキンの配置関係の一例を示す図
図6】第1実施形態の変形例に係る熱交換ダクトの内部の構成例を概略的に示す縦断面図(その1)
図7】第1実施形態の変形例に係る熱交換ダクトの内部の構成例を概略的に示す縦断面図(その2)
図8】第1実施形態の変形例に係る蒸発器、洗浄装置、パッキンの配置関係の一例を示す図
図9】第2実施形態に係る循環風路の構成例を概略的に示す図
図10】第2実施形態に係る熱交換ダクトの内部の構成例を概略的に示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、衣類乾燥機に係る複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
図1に例示する洗濯乾燥機1は、衣類に所定の処理、この場合、少なくとも、衣類を洗う洗い処理、衣類をすすぐすすぎ処理、衣類を脱水する脱水処理を施すことが可能な衣類処理装置の一例である。また、洗濯乾燥機1は、回転槽の回転中心軸が水平方向あるいは水平方向に対して傾斜する方向に延びる、いわゆるドラム式の洗濯乾燥機である。また、洗濯乾燥機1は、衣類を乾燥する乾燥処理を施すことが可能な衣類乾燥機の一例でもある。
【0013】
洗濯乾燥機1は、その外郭を構成する矩形箱状の外箱2の内部に、衣類処理槽3を備えている。衣類処理槽3は、例えば洗い処理、すすぎ処理、脱水処理などといった各種の処理の対象である図示しない衣類を収容可能に構成されている。本開示において、衣類処理槽3は、有底円筒状の水槽の内部に、同じく有底円筒状のドラムを回転可能に備えた構成である。ドラムの周壁には図示しない多数の小孔が設けられており、また、ドラムの内周面には、衣類をかき上げるための図示しない複数のバッフルが設けられている。
【0014】
衣類処理槽3の前面開口部3cは、外箱2の前面に設けられているドア4によって開閉可能に構成されている。使用者は、ドア4を開くことにより、衣類処理槽3の前面開口部3cを通して当該衣類処理槽3内に衣類を出し入れすることができる。また、衣類処理槽3は、衣類に乾燥処理を施す乾燥行程においては、衣類が収容される乾燥室としても機能する。
【0015】
また、洗濯乾燥機1は、衣類処理槽3内に水を供給するための給水部5、および、衣類処理槽3内の水を機外に排出するための排水部6を備えている。給水部5は、例えば水道などといった図示しない水源から衣類処理槽3に延びる給水経路7の途中に、周知の給水弁8や注水ケース9などを備えた構成となっている。また、排水部6は、衣類処理槽3の底部から機外に延びる排水経路10の途中に、周知の排水弁11などを備えた構成となっている。排水弁11が閉じられた状態で給水部5から衣類処理槽3内に水が供給されることにより、衣類処理槽3内に所定量の水が溜められる。また、排水弁11が開かれることにより、衣類処理槽3内の水が排水経路10を介して機外に排出される。
【0016】
排水経路10の途中には、排水弁11よりも上流側に周知の排水フィルタ部12が設けられている。排水フィルタ部12は、排水部6により衣類処理槽3内から排水経路10を介して機外に排出される水に含まれる例えば糸くずや塵埃などといった異物を捕獲する。
【0017】
また、洗濯乾燥機1は、循環風路13を備えている。循環風路13は、衣類処理槽3の外部において、衣類処理槽3の空気流出口3aと空気流入口3bとの間を接続している。この場合、空気流出口3aは、衣類処理槽3の上面の前部に設けられている。また、空気流入口3bは、衣類処理槽3の背面の上部に設けられている。なお、衣類処理槽3における空気流出口3aおよび空気流入口3bの位置は、適宜変更して実施することができる。
【0018】
循環風路13の途中には、熱交換ダクト14が設けられている。この場合、熱交換ダクト14は、外箱2内の下部の後部において、当該外箱2の左右方向に沿うように設けられている。また、循環風路13の途中には、熱交換ダクト14よりも上流側に周知の乾燥フィルタ15が設けられている。乾燥フィルタ15は、循環風路13内を流れる空気に含まれる例えば糸くずや塵埃などといった異物を捕獲する。
【0019】
図2に例示するように、洗濯乾燥機1は、ヒートポンプ機構16を備えている。ヒートポンプ機構16は、圧縮機17、凝縮器18、絞り器19、蒸発器20を冷媒管21によりサイクル接続した冷凍サイクルを構成している。このうち、熱交換器を構成する凝縮器18および蒸発器20は、循環風路13の一部を構成する熱交換ダクト14の内部に配置されている。
【0020】
また、循環風路13には、循環送風機22が備えられている。循環送風機22は、循環部の一例であり、衣類処理槽3内の空気を、循環風路13を通して循環させるものである。この循環送風機22が駆動されることにより、図2に矢印Wで例示するように、衣類処理槽3内の空気は、空気流出口3aから循環風路13内に導入されて、空気流出口3a側である風上側から空気流入口3b側である風下側に向かって流れて、空気流入口3bから衣類処理槽3内に戻されるようになっている。即ち、循環送風機22が駆動されることにより、衣類処理槽3内の空気は、循環風路13を介して循環される。
【0021】
そして、蒸発器20は、熱交換ダクト14内において、衣類処理槽3の空気流出口3a側、つまり、循環風路13内の風上側に配置されている。一方、凝縮器18は、熱交換ダクト14内において、衣類処理槽3の空気流入口3b側、つまり、循環風路13内の風下側に配置されている。即ち、循環風路13内、より詳細には熱交換ダクト14内において、蒸発器20は、凝縮器18よりも風上側に配置されている。換言すれば、循環風路13内、より詳細には熱交換ダクト14内において、凝縮器18は、蒸発器20よりも風下側に配置されている。
【0022】
蒸発器20は、除湿部の一例であり、循環風路13内を空気流出口3a側から空気流入口3b側、つまり、風上側から風下側に向かって流れる空気を冷却して除湿する除湿手段として機能する。一方、凝縮器18は、加熱部の一例であり、循環風路13内を空気流出口3a側から空気流入口3b側、つまり、風上側から風下側に向かって流れる空気を加熱する加熱手段として機能する。
【0023】
これら蒸発器20および凝縮器18が循環風路13内に設けられていることにより、循環風路13内を風上側から風下側に向かって流れる空気は、蒸発器20によって除湿され、且つ、凝縮器18によって加熱され、所定温度の温風として衣類処理槽3内に戻される。これにより、衣類処理槽3内に収容されている衣類を温風によって乾燥することができる。
【0024】
洗濯乾燥機1は、さらに、洗浄部の一例である洗浄装置50を備えている。図3にも例示するように、洗浄装置50は、熱交換ダクト14の上面14aに設けられている。また、洗浄装置50は、その全体が、蒸発器20の上端面20bよりも上方に位置するように設けられている。また、洗浄装置50は、その全体が、熱交換ダクト14の上面14aよりも上方に位置するように設けられている。また、洗浄装置50は、蒸発器20のうち風上側端面20aの直上領域に位置して設けられている。
【0025】
また、洗浄装置50は、蒸発器20の風上側端面20aに沿うように直線状に延びている。以下、蒸発器20の風上側端面20aに沿う方向を端面方向A1と称する場合があり、この端面方向A1に直交する方向を風路方向A2と称する場合がある。端面方向A1は、循環風路13の一部を構成する熱交換ダクト14の延伸方向に直交する方向でもあり、洗浄装置50の長手方向A1でもあり、循環風路13の一部を構成する熱交換ダクト14内において空気が流れる方向に直交する方向でもある。また、風路方向A2は、循環風路13の一部を構成する熱交換ダクト14の延伸方向でもあり、洗浄装置50の長手方向A1に直交する方向でもあり、循環風路13の一部を構成する熱交換ダクト14内において空気が流れる方向でもある。
【0026】
また、洗浄装置50は、その長手方向A1における一端部に給水口51を備えている。給水口51は、洗浄装置50の長手方向A1における一端部の上面から上方に向かって突出している。そして、この給水口51には、給水ホース52を介して、上述した給水部5の給水弁8が接続されている。これにより、給水弁8から給水ホース52および給水口51を介して洗浄装置50内に水が供給されるようになっている。
【0027】
次に、洗浄装置50および洗浄装置50の周辺部分の構成例について、さらに詳細に説明する。図4に例示するように、洗浄装置50は、蒸発器20の風上側端面20aおよびその周辺部分に対し上方から水Sを吐出することにより、当該蒸発器20の特に風上側端面20aおよびその周辺部分を洗浄するように構成されている。
【0028】
即ち、洗浄装置50は、熱交換ダクト14の上面14aに設けられている凹部14b内に収容されている。凹部14bは、熱交換ダクト14の上面14aから上方に向かって窪む矩形状に形成されている。また、洗浄装置50は、その下端面50bに、図示しない複数の吐出口を備えている。複数の吐出口は、洗浄装置50の長手方向A1に沿って直線状に配列されている。
【0029】
図5に例示するように、洗浄装置50は、上述した給水口51から流入する水Sを、複数の吐出口から蒸発器20の風上側端面20aおよびその周辺部分に向けて吐出する構成となっている。そして、洗浄装置50が複数の吐出口から吐出した水Sは、蒸発器20の風上側端面20aおよびその周辺部分を下方に向かって流れる。そして、このような水Sの流下に伴い、蒸発器20の風上側端面20aおよびその周辺部分に付着している異物が下方に洗い流される。
【0030】
なお、図4に例示するように、熱交換ダクト14の底面には、蒸発器20の風上側端面20aの下方に位置して、水や異物が通過可能な開口14cが形成されている。また、開口14cの下方には、蒸発器20から発生した水つまり除湿水を受けるドレンタンク14dが設けられている。これにより、洗濯乾燥機1は、洗浄装置50から吐出されて蒸発器20の風上側端面20aおよびその周辺部分を流下した水、および、その水によって洗い流された異物を、開口14cを介して熱交換ダクト14の外部、この場合、ドレンタンク14d内に排出可能となっている。ドレンタンク14dは、例えば、排水経路10のうち排水弁11よりも下流側部分に接続されており、内部に溜められた水や異物を機外に排出可能となっている。
【0031】
ところで、図4に例示するように、本開示に係る洗濯乾燥機1は、蒸発器20の上端面20bと熱交換ダクト14の上面14aとの間に、空気が通過可能な隙間Gを有した構成となっている。そのため、衣類処理槽3内の衣類に乾燥処理を施す乾燥行程においては、洗浄装置50から吐出されて蒸発器20の風上側端面20aや上端面20bに残留する水が、循環風路13内の一部を構成する熱交換ダクト14内を流れる空気、特に、隙間Gを通過しようとする空気によって凝縮器18側に飛ばされてしまうことが懸念される構成となっている。そして、この水が凝縮器18に付着すると、その水によって凝縮器18が冷却されてしまい、凝縮器18による空気の加熱が不十分となる。そして、凝縮器18による空気の加熱が不十分になると、衣類処理槽3内に高温の空気を戻すことが困難となり、衣類の乾燥効率を悪化させてしまう。
【0032】
そこで、本開示に係る洗濯乾燥機1は、洗浄装置50が蒸発器20に吐出した水によって凝縮器18が冷却されてしまうことを抑制するための創意工夫が施されている。次に、この点について詳細に説明する。即ち、図4に例示するように、洗濯乾燥機1は、阻止部の一例であるパッキン100を備えている。この場合、パッキン100は、例えばゴム材料などによって構成されており、洗浄装置50の長手方向A1に沿う長尺な矩形板状に形成されている。また、パッキン100は、上述した隙間G内を埋めるようにして設けられている。つまり、パッキン100は、蒸発器20の上端面20bと洗浄装置50の下端面50bとの間、より詳細には、蒸発器20の上端面20bと熱交換ダクト14の上面14aとの間に挟まれるようにして設けられている。
【0033】
また、風路方向A2つまり循環風路13の一部を構成する熱交換ダクト14内において空気が流れる方向A2において、パッキン100の長さは、蒸発器20の長さよりも短くなっている。即ち、パッキン100は、風路方向A2において、上述した隙間Gの一部、この場合、主として風上側部分を埋めるようにして設けられている。また、パッキン100の風上側の端面は、蒸発器20の風上側端面20aとほぼ或いは完全に面一な状態となっている。なお、パッキン100は、隙間Gのうちの主として風下側部分を埋めるように設けられていてもよい。
【0034】
また、図5に例示するように、洗浄装置50の長手方向A1つまり循環風路13の一部を構成する熱交換ダクト14内において空気が流れる方向に直交する方向A1において、パッキン100の長さは、蒸発器20の長さとほぼ或いは完全に同じ長さとなっている。また、洗浄装置50の長手方向A1におけるパッキン100の両端面は、洗浄装置50の長手方向A1における蒸発器20の両端面とほぼ或いは完全に面一な状態となっている。
【0035】
以上に例示した洗濯乾燥機1の構成例によれば、洗浄装置50から吐出されて蒸発器20の風上側端面20aや上端面20bに残留する水が、衣類処理槽3内の衣類に乾燥処理を施す乾燥行程において、循環風路13内を流れる空気、より詳細には、熱交換ダクト14内を流れる空気によって凝縮器18側に飛ばされてしまうことをパッキン100によって阻止することができる。
【0036】
これにより、蒸発器20に水を吐出することにより洗浄する機能を備える洗濯乾燥機1について、洗浄装置50から蒸発器20に吐出した水によって凝縮器18が冷却されてしまうことを抑制することができる。そして、凝縮器18が冷却されてしまうことを抑制することにより、凝縮器18によって空気を十分に加熱できる状態を維持することができ、衣類処理槽3内に高温の空気を戻して衣類の乾燥効率を維持あるいは向上することができる。
【0037】
また、洗濯乾燥機1によれば、洗浄装置50は、蒸発器20の上方に設けられており、パッキン100は、蒸発器20の上端面20bと洗浄装置50の下端面50bとの間に設けられている。この構成例によれば、洗浄装置50から下方に向かって吐出つまり流下する水が、蒸発器20に到達する前に風下側に飛ばされてしまうことをパッキン100によって阻止することができる。これにより、洗浄装置50から蒸発器20に向けて吐出された水が隙間Gを介して風下側つまり凝縮器18側に移動してしまうことを一層抑制することができる。
【0038】
また、洗濯乾燥機1によれば、洗浄装置50から吐出されて蒸発器20の風上側端面20aや上端面20bに残留する水が、凝縮器18よりもさらに風下側に設けられている循環送風機22に到達してしまうことを回避することができ、循環送風機22を水から保護することができる。
【0039】
また、洗濯乾燥機1によれば、洗浄装置50から吐出されて蒸発器20の風上側端面20aや上端面20bに残留する水が、循環送風機22よりもさらに風下側に設けられている空気流入口3bに到達してしまうことを回避することができ、ひいては、衣類処理槽3内の衣類に水が付着してしまうことを回避することができる。
【0040】
なお、図6に例示するように、洗濯乾燥機1は、風路方向A2において、パッキン100の長さが、蒸発器20の長さとほぼ或いは完全に同じ長さである構成としてもよい。また、図7に例示するように、洗濯乾燥機1は、風路方向A2において、パッキン100の長さが、蒸発器20の長さよりも長い構成としてもよい。
【0041】
即ち、洗濯乾燥機1は、風路方向A2つまり循環風路13の一部を構成する熱交換ダクト14内において空気が流れる方向A2において、パッキン100の長さが、蒸発器20の長さ以上である構成としてもよい。換言すれば、洗濯乾燥機1は、パッキン100が風路方向A2において隙間Gの全部を埋めるようにして設けられた構成としてもよい。この構成例によれば、洗浄装置50から蒸発器20に向けて吐出された水が隙間Gを介して風下側つまり凝縮器18側に移動してしまうことを一層確実に抑制することができる。
【0042】
また、図5に例示したように、洗濯乾燥機1は、洗浄装置50の長手方向A1において、パッキン100の長さが、蒸発器20の長さとほぼ或いは完全に同じ長さである構成となっている。しかし、図8に例示するように、洗濯乾燥機1は、洗浄装置50の長手方向A1において、パッキン100の長さが、蒸発器20の長さよりも長い構成としてもよい。
【0043】
即ち、洗濯乾燥機1は、洗浄装置50の長手方向A1つまり循環風路13の一部を構成する熱交換ダクト14内において空気が流れる方向に直交する方向A1において、パッキン100の長さが、蒸発器20の長さ以上である構成としてもよい。換言すれば、洗濯乾燥機1は、洗浄装置50の長手方向A1において、パッキン100が隙間Gの全部を埋めるようにして設けられた構成としてもよい。この構成例によれば、洗浄装置50から蒸発器20に向けて吐出された水が隙間Gを介して風下側つまり凝縮器18側に移動してしまうことを一層確実に抑制することができる。
【0044】
なお、洗濯乾燥機1は、洗浄装置50の長手方向A1において、パッキン100の長さが、蒸発器20の長さよりも短い構成としてもよい。つまり、洗濯乾燥機1は、洗浄装置50の長手方向A1において、パッキン100が隙間Gの一部を埋めるようにして設けられた構成としてもよい。この構成例によっても、隙間G内に存在するパッキン100によって、風下側つまり凝縮器18側に水が移動してしまうことを十分に抑制することができる。
【0045】
また、洗濯乾燥機1は、吸水性を有する部材によりパッキン100を構成してもよい。この構成例によれば、洗浄装置50から蒸発器20に向けて吐出された水をパッキン100によって吸収することができ、風下側つまり凝縮器18側に水が移動してしまうことを一層確実に抑制することができる。なお、パッキン100を構成する吸水性を有する部材としては、例えば、多数の気泡を有するゴム材料やスポンジ材など、種々の材料が考えられる。また、洗濯乾燥機1は、吸水性を有さない部材によりパッキン100を構成してもよい。
【0046】
また、洗濯乾燥機1によれば、洗浄装置50から吐出された水は、蒸発器20の内部、つまり、蒸発器20を構成する複数のフィンの間に残留する場合もある。しかしながら、蒸発器20の内部に残留する水は、当該蒸発器20において発生する除湿水とともに下方に流すことができる。そのため、洗浄装置50から吐出された水が蒸発器20の内部に残留したとしても、その水が風下側つまり凝縮器18側に飛ばされてしまうことを抑制することができる。
【0047】
(第2実施形態)
図9に例示する洗濯乾燥機1は、循環風路13の途中に、空気導出口201および空気導入口202を備えている。空気導出口201は、循環風路13のうち乾燥フィルタ15よりも風下側部分に設けられている。なお、空気導出口201は、蒸発器20よりは風上側部分に位置して設けられている。また、空気導出口201は、当該空気導出口201を介して導出される空気に含まれる異物を捕獲するフィルタを備える構成としてもよい。
【0048】
一方、空気導入口202は、循環風路13の一部を構成する熱交換ダクト14の上面14aのうち蒸発器20と凝縮器18との間の部分に設けられている。即ち、空気導入口202は、蒸発器20よりは風下側部分であって、且つ、凝縮器18よりは風上側部分に位置して設けられている。
【0049】
また、空気導出口201は、当該空気導出口201を開閉するダンパ203を備えている。ダンパ203の開閉は、洗濯乾燥機1の動作全般を制御する図示しない制御装置によって行われる。一方、空気導入口202は、当該空気導入口202を開閉するダンパを備えていない。なお、空気導入口202は、当該空気導入口202を開閉するダンパを備える構成としてもよい。また、空気導入口202は、当該空気導入口202を介して導入される空気に含まれる異物を捕獲するフィルタを備える構成としてもよい。
【0050】
以上のように構成される洗濯乾燥機1によれば、衣類処理槽3内の空気が循環風路13を介して循環される乾燥行程において、ダンパ203を開いて空気導出口201を開放状態に切り換えると、図9において破線矢印C1で例示するように、循環風路13内を流れる空気の一部、この場合、蒸発器20によって除湿される前の湿った空気の一部が空気導出口201から循環風路13外に排出される。そして、空気導出口201から空気が排出されることに伴い、循環風路13内の空気量や空気圧が減少する。そのため、図9において破線矢印C2で例示するように、循環風路13外の空気が空気導入口202を介して循環風路13内、この場合、その一部を構成する熱交換ダクト14内に導入されるようになる。
【0051】
このように構成される洗濯乾燥機1によれば、循環風路13内を流れる湿った空気と、循環風路13外の乾いた空気とを入れ換えながら乾燥行程を進行することができる。これにより、衣類処理槽3内の衣類の乾燥効率を一層向上することができる。
【0052】
そして、このような循環空気の入れ換え機能を備える洗濯乾燥機1においては、図10にも破線矢印C2で例示するように、空気導入口202から循環風路13内、この場合、熱交換ダクト14内に導入される空気は、蒸発器20よりも風下側から当該熱交換ダクト14内に流入し、且つ、当該熱交換ダクト14内に流入した後においては、風上側つまり蒸発器20側ではなく、風下側つまり凝縮器18側に向かって流れる。そのため、洗浄装置50から吐出されて蒸発器20の風上側端面20aや上端面20bに残留する水が、空気導入口202から流入する空気によって凝縮器18側に飛ばされてしまうことを回避することができる。
【0053】
また、仮に、洗浄装置50から吐出されて蒸発器20の風上側端面20aや上端面20bに残留する水が、循環風路13内の一部を構成する熱交換ダクト14内を流れる空気によって凝縮器18側に飛ばされてしまったとしても、その水を、凝縮器18よりも上流側において、空気導入口202から熱交換ダクト14内に流入する空気によって下方に押し込むことができる。これにより、仮に、蒸発器20から凝縮器18に向かって水が飛ばされてしまったとしても、その水を凝縮器18まで到達しにくくすることができる。
【0054】
(その他の実施形態)
なお、本実施形態は、上述した複数の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜、変更や拡張を行うことができる。例えば、衣類乾燥機は、上述した複数の実施形態を適宜選択して組み合わせた構成としてもよい。
【0055】
また、パッキン100の形状や大きさは、蒸発器20から風下側つまり凝縮器18側に水が飛んでしまうことを抑制可能な構成であれば、適宜変更して実施することができる。また、洗濯乾燥機1は、隙間G内に複数のパッキン100を備える構成としてもよい。隙間G内に複数のパッキン100を備える場合には、例えば、それぞれ吸水性が異なる材料により複数のパッキン100を構成し、吸水性の高いパッキン100ほど風上側に配置する構成とするとよい。
【0056】
また、パッキン100は、その上面が熱交換ダクト14の上面14aに当接する構成であってもよいし、熱交換ダクト14の上面14aから離間する構成であってもよい。なお、パッキン100の上面を熱交換ダクト14の上面14aから離間させる場合には、その離間距離は、極力短くすることが好ましい。
【0057】
また、本実施形態は、回転槽の回転軸が水平方向または傾斜方向に延びるいわゆるドラム式の洗濯乾燥機に限られるものではなく、回転槽の回転軸が垂直方向となるいわゆる縦軸型の洗濯乾燥機にも適用することができる。また、本実施形態は、洗濯機能を有しない純粋な衣類乾燥機にも適用することができる。
【0058】
なお、本実施形態は、あくまでも例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
図面において、1は洗濯乾燥機(衣類乾燥機)、3は衣類処理槽(乾燥室)、13は循環風路、18は凝縮器(加熱部)、20は蒸発器(除湿部)、50は洗浄装置(洗浄部)、100はパッキン(阻止部)、202は空気導入口、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10