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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】塑性流動性の把握方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/093 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
E21D9/093 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021127231
(22)【出願日】2021-08-03
(65)【公開番号】P2023022384
(43)【公開日】2023-02-15
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】池上 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕泰
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-001461(JP,A)
【文献】特開昭62-021994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー内に設けられた一対の土圧計により土圧を計測する工程と、
一方の前記土圧計の計測値から他方の前記土圧計の計測値を減じた値の絶対値である差分土圧を算出する工程と、
前記差分土圧が管理基準値の範囲内であるか否かを確認する工程と、を備える塑性流動性の把握方法であって、
前記土圧計は、カッターヘッドの背面に形成された突起またはバルクヘッドの前面に形成された突起のいずれかの突起の前記カッターヘッドの正回転方向前側および正回転方向後側にそれぞれ設けられていて、
前記管理基準値の範囲は、掘削土または掘削土と同等の品質の材料に加泥材を投入することによりスランプ値が調整された塑性流動状態の試料が貯留された土槽内を移動する移動体に作用する土圧を計測する試験結果に基づいて、前記試料内における差分土圧の上限値と下限値とによりスランプ値毎に設定されていることを特徴とする、塑性流動性の把握方法。
【請求項2】
チャンバー内に設けられた一対の土圧計により土圧を計測する工程と、
一方の前記土圧計である第一土圧計の計測値から他方の前記土圧計である第二土圧計の計測値を減じた値である差分土圧を算出する工程と、
前記差分土圧が管理基準値の範囲内であるか否かを確認する工程と、を備える塑性流動性の把握方法であって、
カッターヘッドの背面に形成された突起の前記カッターヘッドの回転方向前側に設けられた前記土圧計を前記第一土圧計とし、
前記突起の前記カッターヘッドの回転方向後側に設けられた土圧計を前記第二土圧計とし、
前記管理基準値の範囲は、掘削土または掘削土と同等の品質の材料に加泥材を投入することによりスランプ値が調整された塑性流動状態の試料が貯留された土槽内を移動する移動体に作用する土圧を計測する試験結果に基づいて、前記試料内における差分土圧の上限値と下限値とによりスランプ値毎に設定されていることを特徴とする、塑性流動性の把握方法。
【請求項3】
チャンバー内に設けられた一対の土圧計により土圧を計測する工程と、
一方の前記土圧計である第一土圧計の計測値を他方の前記土圧計である第二土圧計の計測値から減じた値である差分土圧を算出する工程と、
前記差分土圧が管理基準値の範囲内であるか否かを確認する工程と、を備える塑性流動性の把握方法であって、
バルクヘッドの前面に形成された突起のカッターヘッドの回転方向前側に設けられた前記土圧計を前記第一土圧計とし、
前記突起の前記カッターヘッドの回転方向後側に設けられた土圧計を前記第二土圧計とし、
前記管理基準値の範囲は、掘削土または掘削土と同等の品質の材料に加泥材を投入することによりスランプ値が調整された塑性流動状態の試料が貯留された土槽内を移動する移動体に作用する土圧を計測する試験結果に基づいて、前記試料内における差分土圧の上限値と下限値とによりスランプ値毎に設定されていることを特徴とする、塑性流動性の把握方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバー内の掘削土の塑性流動性の把握方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法は、地盤が比較的軟弱な地盤内に地下構造物を構築する場合において広く用いられている非開削工法の一つである。シールド工法には、主な掘削方式として土圧式(泥土圧式を含む)と泥水式がある。
土圧式シールド工法は、トンネルの掘削に伴って発生した掘削土の土圧を切羽に作用させることによって、切羽の安定化を図りつつ、掘削を行うものである。土圧式シールド工法において掘進の安定性を確保するためには、チャンバー内において、必要に応じて添加材や水を添加しつつ、掘削土を攪拌翼によって攪拌することで、適度な分離抵抗性と流動性を保持した「塑性流動性」を保つことが重要である。
切羽に対する土圧を均一かつ安定的に作用させるには、チャンバー内における掘削土の塑性流動性を的確に把握し、必要に応じて調整する必要がある。
そのため、特許文献1には、シールドマシンに標準的に設置されるチャンバー隔壁(バルクヘッド)の土圧計によりチャンバー内の土圧を計測し、この計測値を数値解析することで塑性流動性の評価指標(RMS振幅と波形面積)を算出し、RMS振幅とせん断速度の関係および波形面積と撹拌翼と土圧計の離隔距離の逆数の関係により塑性流動状態を評価する方法が開示されている。
また、本出願人は、撹拌翼に設けられた第一の土圧計およびチャンバー隔壁に設けられた第二の土圧計により土圧を計測し、第二の土圧計の計測値から算出した静止土圧を第一の土圧計の計測値から減じてチャンバー内の掘削土の抗土圧を算出し、この抗土圧をあらかじめ設定された塑性流動状態の掘削土の抗土圧の上限値および下限値と比較することにより掘削土の塑性流動状態にあるか否かを推定する方法を開示している。
ところが、特許文献1の方法は、評価指標の算出に複雑な数値解析を要するため、作業に手間がかかるとともに、直感的に評価し難い。
また、特許文献2の方法は、カッターヘッドの回転に伴って変動する第一の土圧計の位置(高さ)に応じた静止土圧を算出する作業に手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-025480号公報
【文献】特開2017-106263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような観点から、本発明は、チャンバー内の掘削土の塑性流動性を簡易かつ的確に把握することを可能とした塑性流動性の把握方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の塑性流動性の把握方法は、チャンバー内に設けられた一対の土圧計により土圧を計測する工程と、一方の前記土圧計の計測値から他方の前記土圧計の計測値を減じた値の絶対値である差分土圧を算出する工程と、前記差分土圧が管理基準値の範囲内であるか否かを確認する工程とを備えるものである。前記土圧計は、カッターヘッドの背面に形成された突起(撹拌翼)またはバルクヘッドの前面に形成された突起(固定翼)のいずれかの突起の前記カッターヘッドの正回転方向前側および正回転方向後側にそれぞれ設けられている。前記管理基準値の範囲は、掘削土または掘削土と同等の品質の材料に加泥材を投入することによりスランプ値が調整された塑性流動状態の試料が貯留された土槽内を移動する移動体に作用する土圧を計測する試験結果に基づいて、前記試料内における差分土圧の上限値と下限値とによりスランプ値毎に設定されている
かかる塑性流動性の把握方法によれば、同一の突起(撹拌翼または固定翼)に設置された土圧計を用いて評価指標を算出するため、塑性流動性を評価するための指標をより簡便に算出できる。また、差分土圧を塑性流動化の指標とすることで、土圧の拘束圧やカッターヘッドの回転速度による影響を緩和でき、より的確性が増す。
なお、土圧計をカッターヘッドの背面に形成された突起(撹拌翼)に設ける場合には、カッターヘッドの回転方向前側に設けられた土圧計を前記第一土圧計とし、カッターヘッドの回転方向後側に設けられた土圧計を前記第二土圧計として、第一土圧計の計測値から第二土圧計の計測値を減じた値を差分土圧としてもよい。
また、土圧計をバルクヘッドの前面に形成された突起(固定翼)に設ける場合には、カッターヘッドの回転方向前側に設けられた土圧計を前記第一土圧計とし、カッターヘッドの回転方向後側に設けられた土圧計を前記第二土圧計として、第二土圧計の計測値から第一土圧計の計測値を減じた値を差分土圧としてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の掘削土の塑性流動性の把握方法によれば、チャンバー内の塑性流動性を簡易かつ的確に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係るシールド掘削機の概要を示す斜視図である。
図2】(a)はカッターヘッドの背面またはチャンバー隔壁の前面に形成された突起を示す正面図、(b)は、突起に設けられた第一土圧計および第二土圧計を示す拡大斜視図である。
図3】管理基準値設定用の試験装置を示す断面図である。
図4】実験に使用した試料の粒径加積曲線を示すグラフである。
図5】移動体の移動方向前面側に設けられた土圧計の計測結果の平均値を示すグラフである。
図6】移動体の移動方向背面側に設けられた土圧計の計測結果の平均値を示すグラフである。
図7】差分土圧とスランプの関係を示すグラフである。
図8】他の形態にかかる試験装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態では、土圧式シールド工法によりトンネルを施工する場合について説明する。土圧式シールド工法では、地山の掘削によって発生した掘削土をチャンバー内において攪拌して塑性流動性を持たせるとともに、この掘削土の土圧を切羽に作用させることによって切羽の安定化を図りつつ掘進を行う。切羽の安定化および施工性を確保するためには、切羽に対して均一且つ安定的に土圧を作用させる必要がある。
切羽に対する土圧を均一かつ安定的に作用させるには、チャンバー内における掘削土の塑性流動性を的確に把握し、加泥材や気泡材等の添加材の注入量および注入箇所を必要に応じて調整する必要がある。
本実施形態では、土圧計測工程と、差分土圧算出工程と、塑性流動性確認工程とを備える塑性流動性の把握方法により、チャンバー内の掘削土の性状を的確に把握しながら施工を行う。
【0009】
図1に本実施形態のシールド掘削機1を示す。本実施形態のシールド掘削機1は、図1に示すように、筒状のシールド機本体2およびシールド機本体2の前面に設けられたカッターヘッド3を備えている。シールド機本体2の前面(切羽側面)はバルクヘッド(チャンバー隔壁)4によって遮蔽されている。カッターヘッド3とバルクヘッド4との間には、掘削土が取り込まれるチャンバー5が形成されている。
【0010】
カッターヘッド3は、前面(切羽側面)に複数のカッタービット31,31,…を備えていて、回転することで地山を切削する。カッターヘッド3の背面には、チャンバー5内の掘削土を攪拌するための撹拌翼(突起)32が複数突設されている。図2に撹拌翼32および固定翼41の配置例を示す。本実施形態では、複数の撹拌翼32,32,…が、カッターヘッド3の背面において、間隔をあけて放射状に配置されている。なお、撹拌翼32の配置や数は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
図2(b)に示すように、複数の撹拌翼32には、第一土圧計6および第二土圧計7が固定されている。第一土圧計6は、撹拌翼32のカッターヘッド3の回転(正転)方向前側に設けられている。一方、第二土圧計7は、撹拌翼32のカッターヘッド3の回転方向後側(第一土圧計6の反対側)に設けられている。
【0011】
バルクヘッド4は、図1に示すように、シールド機本体2の前面に設けられていて、シールド機本体2内への掘削土の流入を防止する隔壁である。本実施形態では、バルクヘッド4の前面(チャンバー5側の面)に複数の固定翼(突起)41,41,…が突設されている。複数の固定翼41,41,…は、図2(a)に示すように、間隔をあけて放射状に配置されている。固定翼41は、カッターヘッド3の回転に伴って回転する撹拌翼32と接触することがないように、撹拌翼32が通過する空間を確保した状態で配置されている。
図2(b)に示すように、複数の固定翼41には、第一土圧計6および第二土圧計7が固定されている。第一土圧計6は、固定翼41のカッターヘッド3の回転方向前側に設けられている。一方、第二土圧計7は、固定翼41のカッターヘッド3の回転方向後側(第一土圧計6の反対側)に設けられている。
【0012】
土圧計測工程は、第一土圧計6および第二土圧計7によりチャンバー5内の掘削土の土圧を計測する工程である。以下、撹拌翼32に設置された第一土圧計6および第二土圧計7を使用する場合について説明する。なお、固定翼41に設置された第一土圧計6および第二土圧計7による土圧の計測も同様とする。
第一土圧計6は、撹拌翼32が回転(移動)する際に撹拌翼32の前面に作用する土圧を計測する。一方、第二土圧計7は、撹拌翼32が回転(移動)する際に撹拌翼32の後面に作用する土圧を計測する。
第一土圧計6および第二土圧計7は、計測システム(図示せず)に連結されていて、第一土圧計6および第二土圧計7の計測結果は、撹拌翼32の位置情報とともに計測システムに入力される。計測システムは、第一土圧計6および第二土圧計7の計測値を保存する。
【0013】
差分土圧算出工程は、計測システムに入力された第一土圧計6の計測結果および第二土圧計7の計測結果により差分土圧を算出する工程である。
差分土圧は、第一土圧計6の計測値から第二土圧計7の計測値を減じた値の絶対値である。本実施形態では、カッターヘッド3が1回転するたびに差分土圧を算出するが、差分土圧を算出する頻度は限定されるものではない。差分土圧は、計測時間および撹拌翼32の位置とともに計測システムに保存される。
【0014】
塑性流動性確認工程は、差分土圧が管理基準値の範囲内であるか否かを確認する工程である。
差分土圧が管理基準値の範囲内にある場合は、掘削土の塑性流動状態であると推定し、差分土圧が管理基準値から外れる場合は、掘削土が塑性状態あるいは流動状態であると推定する。
本実施形態では、差分土圧と管理基準値との比較結果は、計測システムのモニターに表示される。チャンバー5内の掘削土が塑性流動状態ではないことが確認された場合(差分土圧が管理基準値から外れる場合)には、計測システムのモニター上に警告が表示されるともに、警告音が鳴るようにする。作業員は、計測システムの警告に応じて、添加材等の注入量を調整する。
【0015】
管理基準値の範囲は、塑性流動状態の掘削土内における差分土圧の上限値と下限値とにより予め設定されている。
以下、管理基準値の設定方法の例を示す。管理基準値の範囲は、塑性流動状態の試料9が貯留された土槽81内を移動する移動体82に作用する土圧を計測する試験結果に基づいて設定するものとする。試料には、粘性土、砂質土および砂礫土等の複数種の土質毎に加泥材等を投入してスランプ値を調整したものを使用する。
図3に試験装置8を示す。図3に示すように、移動体82は、土槽81内において、上下動するように支持されている。移動体82には、土圧計61,71が上下に取り付けられている。図3の試験装置では、チャンバー5内で回転する撹拌翼32に取り付けられた土圧計61,71(第一土圧計6および第二土圧計7)に作用する土圧の方向と同等に土圧が作用するように、移動体82に設置された土圧計61,71が移動体82の移動方向に対して傾斜した状態で設置されている。
試験では、塑性流動状態となるようにスランプを調整した試料(土砂)9を土槽81に貯留した状態で、移動体82を上下動させたときの土圧を土圧計61,71により計測し、上下の土圧計61,71の計測値の差の絶対値を算出する。スランプを変化させた試料に対して複数回試験を行うことで、管理基準値の範囲(差分土圧の上限値および下限値)を設定する。
【0016】
本実施形態の塑性流動性の把握方法によれば、同一の撹拌翼32(または固定翼41)に設置された第一土圧計6および第二土圧計7を用いて評価指標を算出するため、塑性流動性を評価するための指標をより簡便に算出できる。また、差分土圧を塑性流動化の指標とすることで、土圧の拘束圧やカッターヘッド3の回転速度による影響を緩和でき、より的確性が増す。
また、撹拌翼32の位置毎に管理することで、性状の分布を把握することができ、必要な処理をより適切に実施できる。例えば、性状の分布を確認することで塑性の程度が高い位置に対しては添加材の注入量を増加させ、流動性が高い位置に対しては添加材の注入量を減らすことにより、全体的に均一な塑性流動性を確保するとともに切羽に対する土圧の均一化を図ることができる。なお、添加材の注入量の調整は、掘削土の性状の分布に基づいて作業員が手動で行ってもよいし、計測システムの算出結果に基づいて自動的に調整してもよい。
【0017】
次に、本実施形態の塑性流動性の把握方法について実施した実験結果について説明する。図3に実験で使用した試験装置8を示す。本実験では、図3に示すように、加圧機構を有した土槽81と、土槽81内を上下動する移動体82(撹拌翼32模型)を備えた試験装置8を利用する。なお、土槽81の底部には、ゴム板83が設けられており、ゴム板83を介してコンプレッサー84から圧送された気体により土槽81内の試料9を加圧する。
移動体82の上面および下面には、土圧計61,71が取り付けられている。移動体82に設置された土圧計61,71は、チャンバー5内で回転する撹拌翼32に取り付けられた第一土圧計6および第二土圧計7に作用する土圧の方向と同等の土圧が作用するように、移動体82の移動方向(垂直)に対して傾斜した状態で設置されている。
実験では、礫系材料、砂系材料、粘土系材料、砂系・粘土系中間材料に対して、鉱物系加泥材を添加して、スランプ値を調整したものを試料として使用した。表1に試料の加泥材濃度およびスランプ値を示し、表2に実験条件を示す。また、図4に使用した試料の粒径加積曲線を示す。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
実験は、試料9が貯留された土槽81内において、移動体82を上下動させた際の土圧を土圧計61,71により計測することにより行った。このとき、土槽上端側を初期位置として、移動体82の上下動(押し下げ・引き上げ)を1サイクルとして、2~3サイクル行ったときの土圧を計測した。また、土槽81の境界面の影響を除くことを目的として、高さ方向中間部(移動中盤)の土圧を抽出し、移動体の移動方向前面側に設けられた土圧計61,71の計測値の平均値と、移動体82の移動方向背面側に設けられた土圧計61,71の計測値の平均値をそれぞれ算出した。図5に前面側の土圧計61,71により計測された土圧の平均値、図6に背面側の土圧計61,71により計測された土圧の平均値をそれぞれ示す。図5に示すように、前面側の土圧は、スランプが小さくなるのに従って大きくなった。一方、背面側の土圧は、図6に示すように、スランプに依らず、圧力条件を中心にばらついた。
図7に、前面側の土圧計61の計測値から背面側の土圧計71の計測値から減じた値の絶対値である差分土圧とスランプとの関係を示す。図7に示すように、差分土圧は、スランプが小さくなるほど大きくなる傾向となった。したがって、差分土圧と試料のスランプとが相関していることが確認できた。よって、チャンバー5内の掘削土の土圧から算出した差分土圧により掘削土のスランプ(塑性流動性)を推定することが可能であることが確認できた。
【0021】
以上、本発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
前記実施形態では、管理基準値を試験により設定するものとしたが、管理基準値の設定方法は限定されるものではない。例えば、既往のデータがある場合には、既往のデータを用いてもよい。
管理基準値を設定する際の試験に使用する試験装置8の構成は、前記実施形態で示したものに限定されるものではなく、例えば、図8に示すように、土槽81に貯留された試料内を回転するように移動体82が設けられた試験装置8を使用してもよい。
管理基準値を設定する際の試験に使用する材料には、現地発生土を使用してもよい。
撹拌翼に設けられた一対の土圧計により差分土圧を算出する場合には第一土圧計の計測値から第二土圧計の計測値を減じればよく、固定翼に設けられた一対の土圧計により差分土圧を算出する場合には第二土圧計の計測値から第一土圧計の計測値を減じればよい。
【符号の説明】
【0022】
1 シールド掘削機
2 シールド機本体
3 カッターヘッド
31 カッタービット
32 撹拌翼(突起)
4 バルクヘッド(チャンバー隔壁)
41 固定翼(突起)
5 チャンバー
6 第一土圧計
7 第二土圧計
8 試験装置
81 土槽
82 移動体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8