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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】物体認識装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/04 20060101AFI20241009BHJP
   G01S 7/40 20060101ALI20241009BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20241009BHJP
【FI】
G01S13/04
G01S7/40 113
G01S7/40 121
G01S13/931
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021182187
(22)【出願日】2021-11-08
(65)【公開番号】P2023069937
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】519373914
【氏名又は名称】株式会社J-QuAD DYNAMICS
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 啓太
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康之
(72)【発明者】
【氏名】清水 直継
(72)【発明者】
【氏名】土屋 潤三
(72)【発明者】
【氏名】井伏 政文
(72)【発明者】
【氏名】藤津 聖也
(72)【発明者】
【氏名】石森 裕之
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-218624(JP,A)
【文献】特開2005-189081(JP,A)
【文献】特開2019-171971(JP,A)
【文献】特開2020-144620(JP,A)
【文献】特開平10-134213(JP,A)
【文献】特開2014-097691(JP,A)
【文献】特開2016-085567(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109095356(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/18 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
G08G 1/00 - 99/00
B60R 21/00 - 21/13
B60R 21/34 - 21/38
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
探査波を送信するとともに前記探査波の反射波を受信する測距センサ(21)を備える車両に適用され、前記測距センサの検知情報に基づいて、自車両(40)の後方に存在する物体を認識する物体認識装置(30)において、
前記自車両の後部に被牽引車両(41)が連結されているか否かを判定する牽引判定部と、
前記自車両の後部に被牽引車両が連結されていると判定された場合に、前記被牽引車両の存在に起因する前記反射波の受信を抑制すべく前記測距センサの物体検知態様を変更する変更部と、
を備える、物体認識装置。
【請求項2】
前記変更部は、前記自車両の後部に被牽引車両が連結されていると判定された場合に、前記測距センサから送信される前記探査波の送信電力を低減することにより前記測距センサの物体検知態様を変更する、請求項1に記載の物体認識装置。
【請求項3】
前記変更部は、前記自車両の後部に被牽引車両が連結されていると判定された場合に、前記測距センサの検知領域を前記被牽引車両が存在しない側に変更することにより前記測距センサの物体検知態様を変更する、請求項1又は2に記載の物体認識装置。
【請求項4】
前記測距センサにおいて前記被牽引車両が存在する方向から受信される前記反射波の受信電力を算出する電力算出部を備え、
前記変更部は、前記自車両の後部に被牽引車両が連結されていると判定された場合に、前記電力算出部により算出された前記受信電力に基づいて、前記測距センサの物体検知態様を変更する、請求項1~3のいずれか1項に記載の物体認識装置。
【請求項5】
前記測距センサにおいて前記被牽引車両が存在する方向から受信される前記反射波により認識される物体数を算出する物体数算出部を備え、
前記変更部は、前記自車両の後部に被牽引車両が連結されていると判定された場合に、前記物体数算出部により算出された前記物体数に基づいて、前記測距センサの物体検知態様を変更する、請求項1~4のいずれか1項に記載の物体認識装置。
【請求項6】
前記測距センサにおいて前記被牽引車両が存在する方向から受信される前記反射波の受信電力を算出する電力算出部を備え、
前記変更部は、
前記測距センサから送信される前記探査波の送信電力を低減することにより前記測距センサの物体検知態様を変更するものであり、
前記自車両の後部に被牽引車両が連結されていると判定された場合に、前記電力算出部により算出された前記受信電力が所定電力よりも大きいことを条件に、前記探査波の送信電力を低減する処理を実施する、請求項1に記載の物体認識装置。
【請求項7】
前記変更部は、前記自車両の後部に被牽引車両が連結されていると判定された場合に、前記電力算出部により算出された前記受信電力に基づいて、前記探査波の送信電力を低減する度合を設定する、請求項6に記載の物体認識装置。
【請求項8】
前記自車両と前記被牽引車両との間の離間距離を取得する距離取得部を備え、
前記変更部は、前記自車両の後部に被牽引車両が連結されていると判定された場合に、前記離間距離に基づいて、前記探査波の送信電力を低減する度合を設定する、請求項2,6,7のいずれか1項に記載の物体認識装置。
【請求項9】
前記測距センサにおいて前記被牽引車両が存在する方向から受信される前記反射波により認識される物体数を算出する物体数算出部を備え、
前記変更部は、
前記測距センサの検知領域を前記被牽引車両が存在しない側に変更することにより前記測距センサの物体検知態様を変更するものであり、
前記自車両の後部に被牽引車両が連結されていると判定された場合に、前記物体数算出部により算出された前記物体数が所定数よりも大きいことを条件に、前記測距センサの検知領域を前記被牽引車両が存在しない側に変更する、請求項1,6~8のいずれか1項に記載の物体認識装置。
【請求項10】
前記被牽引車両の形態に関する形態情報を取得する形態情報取得部を備え、
前記変更部は、取得された前記形態情報に基づいて、前記測距センサの物体検知態様を変更する、請求項1~9のいずれか1項に記載の物体認識装置。
【請求項11】
前記自車両が旋回状態であることを判定する旋回判定部を備え、
前記変更部は、前記自車両の後部に被牽引車両が連結されており、かつ前記自車両が旋回状態であると判定された場合に、前記自車両の旋回走行状態に基づいて、前記測距センサの物体検知態様を変更する、請求項1~10のいずれか1項に記載の物体認識装置。
【請求項12】
探査波を送信するとともに前記探査波の反射波を受信する測距センサ(21)を備える車両に適用され、制御装置(30)により実行され、前記測距センサの検知情報に基づいて、自車両(40)の後方に存在する物体を認識するプログラムにおいて、
前記自車両の後部に被牽引車両(41)が連結されているか否かを判定する牽引判定ステップと、
前記自車両の後部に被牽引車両が連結されていると判定された場合に、前記被牽引車両の存在に起因する前記反射波の受信を抑制すべく前記測距センサの物体検知態様を変更する変更ステップと、を含むプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体認識装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の物体認識装置として、例えば特許文献1に記載されているように、探査波を送信するとともに探査波の反射波を受信する測距センサを備える車両に適用され、測距センサの検知情報に基づいて、自車両の周囲に存在する物体を認識するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-85567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自車両の後部に被牽引車両が連結されることがある。この場合、被牽引車両の存在に起因して複数の反射箇所を経由するマルチパス波が生じ、そのマルチパス波が、反射波として測距センサに受信されることがある。マルチパス波は、測距センサにより物体を検知するのには不要な反射波であり、測距センサがマルチパス波を受信してしまうことにより、自車両の後方に存在する物体を適切に認識できなくなることが懸念される。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、自車両の後部に被牽引車両が連結されている状況において、自車両の後方に存在する物体を適切に認識することができる物体認識装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、探査波を送信するとともに前記探査波の反射波を受信する測距センサを備える車両に適用され、前記測距センサの検知情報に基づいて、自車両の後方に存在する物体を認識する物体認識装置において、前記自車両の後部に被牽引車両が連結されているか否かを判定する牽引判定部と、前記自車両の後部に被牽引車両が連結されていると判定された場合に、前記被牽引車両の存在に起因する前記反射波の受信を抑制すべく前記測距センサの物体検知態様を変更する変更部と、を備える。
【0007】
本発明によれば、自車両の後部に被牽引車両が連結されていると判定された場合に、被牽引車両の存在に起因する反射波の受信を抑制すべく測距センサの物体検知態様が変更される。これにより、自車両の後部に存在する物体を認識する場合において、その物体の認識に不要な反射波であるマルチパス波が受信されることが抑制される。その結果、自車両の後部に被牽引車両が連結されている状況において、自車両の後方に存在する物体を適切に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る物体認識システムの全体構成図。
図2】自車両の周囲の検知領域を示す図。
図3】トレーラの牽引状態を示す図。
図4】トレーラの一例を示す図。
図5】測距センサの送信電力の設定に関する説明図。
図6】測距センサの送信電力の設定に関する説明図。
図7】測距センサの検知領域を示す図。
図8】車両旋回状態での測距センサの検知領域を示す図。
図9】センサ検知態様の変更処理を示すフローチャート。
図10】自車両周辺のダミー物体の認識状態を示す図。
図11】第4実施形態に係るセンサ検知態様の変更処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る物体認識装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る物体認識システム10は、自車両に搭載され、自車両の周囲に存在する物体(車両、歩行者、路上障害物等)を認識する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る物体認識システム10は、測距センサ21と、撮像装置22と、車速センサ23と、操舵角センサ24と、ヨーレートセンサ25と、物体認識装置としてのECU30とを備えている。
【0011】
測距センサ21は、例えば、ミリ波帯の高周波信号を送信波とする公知のミリ波レーダである。測距センサ21は、自車両の後端部に設けられ、所定の検知角に入る領域を検知領域とし、検知領域内に存在する物体までの距離、物体の方位等の検知情報を取得する。具体的には、測距センサ21は、所定周期で探査波を送信し、複数のアンテナにより反射波を受信する。この探査波の送信時刻と反射波の受信時刻とにより、物体までの距離が算出される。また、物体に反射された反射波の、ドップラー効果により変化した周波数により、相対速度が算出される。加えて、複数のアンテナが受信した反射波の位相差により、物体の方位が算出される。測距センサ21は、物体によって反射された反射波を受信し、その受信信号に基づく検知情報をECU30へ逐次出力する。
【0012】
物体認識システム10は、測距センサ21として、ミリ波レーダに代えて、超音波センサやLIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)等の探査波を送信するセンサを備えていてもよい。
【0013】
撮像装置22は、例えばCCDカメラ、CMOSイメージセンサ、近赤外線カメラ等の単眼カメラであってもよいし、ステレオカメラであってもよい。撮像装置22は、自車両に1つのみ設置されていてもよいし、複数設置されていてもよい。撮像装置22は、例えば、車両の車幅方向中央の所定高さに取り付けられており、自車両後方へ向けて所定角度範囲で広がる領域を俯瞰視点から撮像し、検知情報としての撮像画像を取得する。撮像装置22は、取得した撮像画像をECU30へ逐次出力する。
【0014】
車速センサ23は、自車両の走行速度を検知するセンサであり、例えば、車輪の回転速度を検知可能な車輪速センサが用いられる。車速センサ23は、自車両の走行速度に応じた走行速度信号をECU30に出力する。
【0015】
操舵角センサ24は、ステアリングホイールの操舵角を検知するセンサであり、例えば、車両のステアリングロッドに取り付けられている。操舵角センサ24は、運転者の操作に伴うステアリングホイールの操舵角の変化に応じた操舵角信号をECU30に出力する。
【0016】
ヨーレートセンサ25は、自車両の旋回角速度を検知するセンサであり、自車両の旋回角速度に応じたヨーレート信号をECU30に出力する。
【0017】
ECU30が提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、ECU30がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、ECU30は、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、図9等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークを介して更新可能である。
【0018】
ECU30は、測距センサ21及び撮像装置22の検知情報に基づいて、自車両40の後方に存在する物体を認識する。例えば、図2に示すように、測距センサ21は、自車両40の後端部の左右に1つずつ設置されることによって、自車両40の後方および後側方の物体の検知情報を取得する。自車両40の後端部左側に設置された測距センサ21Lは、検知領域70L内に存在する物体の検知情報を取得する。自車両40の後端部右側に設置された測距センサ21Rは、検知領域70R内に存在する物体の検知情報を取得する。ECU30は、測距センサ21L,21Rの検知情報に基づいて、自車両40の左側後方、右側後方の物体を認識する。
【0019】
ECU30は、自車両40の後方における物体の認識結果に基づいて、警報装置27によるドライバへの報知を実施する。警報装置27は、例えば自車両40の車室内に設置されたスピーカやブザーなどの聴覚的に報知する装置、ディスプレイや警告灯などの視覚的に報知する装置である。ECU30は、例えば自車両40が走行する自車線の隣である隣車線において、後方から他車両が接近する場合に、警報装置27による報知を適宜実施する。
【0020】
ところで、自車両40の後部に被牽引車両が連結されることがある。本実施形態では、被牽引車両として、貨物輸送等の目的に使用されるトレーラ41が自車両40の後部に連結されることを想定しており、その牽引状態を図3に示す。図3では、各測距センサ21L,21Rの各検知領域70L,70Rのうち、右側の測距センサ21Rの検知領域70Rのみを示している。以下の説明では、この右側の測距センサ21R、検知領域70Rを例示し、測距センサ21、検知領域70と称することとする。
【0021】
図3の状態では、測距センサ21の検知領域70の一部にトレーラ41が重複する。そのため、測距センサ21の検知領域70内にトレーラ41が存在し、トレーラ41の存在に起因する反射波が測距センサ21に入力され得る。なお、被牽引車両として、トレーラ41に代えて、故障車等の他車両が自車両40の後部に連結されてもよい。
【0022】
トレーラ41の存在に起因する反射波には、探査波が送信されてから反射波として受信されるまでの間に複数の反射箇所を経由するマルチパス波が含まれる。マルチパス波は、測距センサ21と物体との間を最短距離で往復する直接波に比べて、反射点が増えることにより、探査波を送信してから反射波を受信するまでの距離が長くなる。そのため、マルチパス波が測距センサ21に受信されることにより、物体までの距離が実際の物体までの距離よりも長く算出されてしまう可能性がある。また、マルチパス波が測距センサ21に受信されることにより、実存しない物体(ダミー物体)の検知情報が取得されてしまう可能性がある。つまり、マルチパス波は物体を適切に検知するのには不要な反射波であり、マルチパス波が測距センサ21に受信されてしまうことにより、自車両40の後方に存在する物体を適切に認識できなくなることが懸念される。
【0023】
そこで、ECU30は、自車両40の後部にトレーラ41が連結されているか否かを判定し、トレーラ41が連結されていると判定された場合に、トレーラ41の存在に起因する反射波の受信を抑制すべく測距センサ21の物体検知態様を適宜変更する。トレーラ41が連結されているか否かの判定は、ユーザによって入力される信号に基づいて行われてもよいし、車載センサ等の検知信号に基づいて行われてもよい。例えば、自車両40の後部に取り付けられた牽引金具に、被牽引物の有無を検出する牽引センサを設ける構成とし、ECU30は、牽引センサの信号によりトレーラ41が連結されていることを判定する。又は、ECU30は、自車両40の走行状態において、測距センサ21及び撮像装置22の少なくともいずれかにより自車両後方に物体が検知され、かつその物体までの距離が所定距離以内のまま保持されている場合に、トレーラ41が連結されていることを判定する。
【0024】
ECU30は、測距センサ21における物体検知態様を変更する処理として、測距センサ21から送信される探査波の送信電力を低減する電力低減処理と、測距センサ21の検知領域70をトレーラ41が存在しない側に変更する検知領域変更処理とを行う。本実施形態では、ECU30は、電力低減処理において、測距センサ21が探査波を送信する際の送信電力を低減する。測距センサ21の送信電力が低減されることにより、トレーラ41の存在に起因する反射波の強度が弱められる。また、測距センサ21は、検知領域70内で探査波を走査する構成として、例えば電子式、指向性切替方式又は機械走査方式の構成を有しており、ECU30は、検知領域変更処理において、測距センサ21における探査波の走査範囲を調整することにより、検知領域70を変更する。これら電力低減処理及び検知領域変更処理が実施されることにより、トレーラ41の存在に起因する反射波の発生が抑制される。
【0025】
以下に、自車両40の後部にトレーラ41が牽引されている状態での測距センサ21の電力低減処理について詳しく説明する。図4(a),(b)に、トレーラ41の一例を示す。トレーラ41は、車輪付きのトレーラ本体42と、トレーラ本体42から前方に延び、自車両40の後部に連結される連結部43とを有している。図4(a),(b)では、トレーラ前部における横幅をWf、トレーラ先端部から後端部までの前後長さをDt、路面からトレーラ上面までの上面高さをHt、路面からトレーラ底面までの高さである最低地上高さをHgとしている。トレーラ41の前後長さDtは、トレーラ本体42の前後長さであってもよいし、連結部43の先端部からトレーラ本体42の後端部までの長さであってもよい。
【0026】
なお、トレーラ41の種類は任意であり、トレーラ41は、トレーラ前面が平坦面となっているトレーラや、V字形状の先端部を有するVノーズトレーラ、車両連結部と荷台部とが分離可能なトレーラであってもよい。
【0027】
ECU30は、トレーラ41の形態に関する形態情報を取得し、その形態情報に基づいて、測距センサ21の電力低減処理を実施する。この場合、ECU30は、トレーラ41の形態情報として、トレーラ41の横幅Wf、前後長さDt、上面高さHt、最低地上高さHg、トレーラ41の形状情報のうち少なくともいずれかを取得する。なお、上記の各情報のうち寸法に関する寸法情報は、例えばユーザにより予め入力された情報であってもよいし、測距センサ21や撮像装置22の検知情報に基づき推定された情報であってもよい。また、トレーラ41の形状情報には、例えばトレーラ41の先端部(前面)の形状がフラットノーズ形状かVノーズ形状かなどの情報が含まれる。
【0028】
上記の各情報は、トレーラ41におけるマルチパス波の発生状況に影響を与える要因であり、ECU30は、これら各情報に基づいて、電力低減処理を実施するか否かを判定する。また、ECU30は、これら各情報に基づいて、電力低減処理において探査波の送信電力を低減する度合を設定する。
【0029】
具体的には、電力低減処理において探査波の送信電力を低減する場合において、ECU30は、図5(a)~(d)に示す関係に基づいて送信電力を設定する。なお、図5(a)~(d)では、トレーラ41が牽引されていない通常時の電力値をPaとし、その電力値Paに対して送信電力が低減される度合が示されている。
【0030】
トレーラ41の横幅Wfが大きいほど、マルチパス波の発生の可能性が高くなると考えられる。そこで、図5(a)では、トレーラ41の横幅Wfと送信電力との関係として、横幅Wfが大きいほど、送信電力が小さい電力となる関係が定められている。
【0031】
トレーラ41の前後長さDtが長いほど、マルチパス波の発生の可能性が高くなると考えられる。そこで、図5(b)では、トレーラ41の前後長さDtと送信電力との関係として、前後長さDtが長いほど、送信電力が小さい電力となる関係が定められている。
【0032】
トレーラ41の上面高さHtが高いほど、マルチパス波の発生の可能性が高くなると考えられる。そこで、図5(c)では、トレーラ41の上面高さHtと送信電力との関係として、上面高さHtが高いほど、送信電力が小さい電力となる関係が定められている。
【0033】
トレーラ41の最低地上高さHgが低いほど、マルチパス波の発生の可能性が高くなると考えられる。そこで、図5(d)では、トレーラ41の最低地上高さHgと送信電力との関係として、最低地上高さHgが低いほど、送信電力が小さい電力となる関係が定められている。
【0034】
なお、図5(a)~(d)は、送信電力を、横軸に示す設定パラメータに応じて、通常の電力値Paとその電力値Paよりも小さい電力値(≠0)との2値で切り替えるものであってもよい。
【0035】
トレーラ41の形態情報に基づいて、測距センサ21の検知領域70におけるトレーラ41の占める面積比率を算出し、その面積比率に基づいて、測距センサ21の探査波の送信電力を設定することも可能である。この場合、測距センサ21の検知領域70におけるトレーラ41の占める面積比率が大きいほど、送信電力が小さい電力に設定されるとよい。
【0036】
また、ECU30は、自車両40とトレーラ41との間の離間距離Dm(図3参照)を取得し、その離間距離Dmに基づいて、探査波の送信電力を低減する度合を設定する。すなわち、ECU30は、自車両前後方向におけるトレーラ41の位置を推定し、自車両40の後端位置に対するトレーラ41の離間距離Dmを算出する。そして、図6の関係を用い、探査波の送信電力を設定する。図6では、図5と同様に、Paが通常時の電力値であり、その電力値Paに対して送信電力が低減される度合が示されている。
【0037】
離間距離Dmが短いほど、マルチパス波が測距センサ21で受信される可能性が高くなると考えられる。そこで、図6では、離間距離Dmと送信電力との関係として、離間距離Dmが短いほど送信電力が小さい電力となる関係が定められている。また、離間距離Dmが所定距離D1よりも長い場合に、送信電力を通常の電力値Paとし(電力低減せず)、離間距離Dmが所定距離D2よりも短い場合に、送信電力を0とする(探査波送信しない)関係が定められている。なお、送信電力を、離間距離Dmに応じて、通常の電力値Paとその電力値Paよりも小さい電力値(≠0)との2値で切り替えるものであってもよい。
【0038】
次に、測距センサ21の検知領域変更処理について詳しく説明する。図7(a)は、測距センサ21の検知領域70として、トレーラ41が牽引されていない通常時の検知領域70Aと、トレーラ牽引時においてトレーラ41が存在しない側に変更された検知領域70Bとを示す図である。
【0039】
図7(a)では、測距センサ21の走査範囲を示す角度θについて、通常時の角度をθ1とし、トレーラ牽引時の角度をθ2としている。これらθ1,θ2はθ1=θ2である。これにより、通常時の検知領域70Aとトレーラ牽引時の検知領域70Bとは、大きさが同じであり、かつ測距センサ21から延びる検知領域70の中心が車幅方向に相違するものとなっている。つまり、トレーラ牽引時の検知領域70Bは、通常時の検知領域70Aに比べて、走査範囲を変えずに、トレーラ41が存在しない側に変更されたものとなっている。
【0040】
ただし、図7(b)に示すように、θ1>θ2とすることも可能である。この場合、トレーラ牽引時の検知領域70Bは、通常時の検知領域70Aに比べて、走査範囲を狭くすることで、トレーラ41が存在しない側に変更されたものとなっている。
【0041】
ECU30は、上述したトレーラ41の形態情報に基づいて、測距センサ21の検知領域70の変更を行うとよい。つまり、トレーラ41の形態は、トレーラ41におけるマルチパス波の発生状況に影響を与える要因であり、ECU30は、これら各情報に基づいて、電力低減処理を実施するか否かを判定する。
【0042】
測距センサ21の検知領域70とトレーラ41との重複範囲を算出し、その重複範囲に基づいて検知領域70を変更することも可能である。この場合、ECU30は、測距センサ21の走査範囲のうちトレーラ41に重複する範囲を示す重複角度θaを算出する(図7(a)参照)。重複角度θaは、測距センサ21の走査範囲、自車両40における測距センサ21の取り付け位置、トレーラ41の横幅Wf、離間距離Dm、トレーラ形状に基づいて算出されればよい。ECU30は、重複角度θaを小さくする方向に、測距センサ21の検知領域70を変更する。
【0043】
図8に示すように、自車両40の走行時において自車両40が旋回状態になると、自車両40の進行方向に対してトレーラ41が斜めに傾くことになる。この場合、測距センサ21の検知領域70に対するトレーラ41の位置が直進走行時とは異なるものとなり、マルチパス波の発生状況も異なるものとなる。そこで、ECU30は、自車両40にトレーラ41が牽引されており、かつ自車両40が旋回状態であると判定された場合に、自車両40の旋回走行状態に基づいて、測距センサ21の物体検知態様を変更する。
【0044】
ECU30は、自車両40の操舵角情報及びヨーレート情報の少なくとも一方に基づいて、自車両40が旋回状態であることを判定する。その他、道路における区画線の認識情報や地図情報に基づいて、自車両40が旋回状態であることを判定することも可能である。そして、ECU30は、自車両40の旋回時において、測距センサ21の検知領域70に対するトレーラ41の位置が変わること、換言すれば、測距センサ21の検知領域70とトレーラ41との重複範囲が変わることを考慮して、測距センサ21の物体検知態様(送信電力、センサ検知領域)を変更する。
【0045】
ECU30は、自車両40の旋回円弧の内側と外側とにおいて、互いに異なる態様で測距センサ21の物体検知態様の変更を実施する。この場合、旋回の内側では、測距センサ21の検知領域70においてトレーラ41の重複範囲が直進走行時よりも大きくなる。そのため、ECU30は、直進時よりもマルチパス波の影響が大きくなることを考慮して、直進時よりもマルチパス波の受信が抑制されるように測距センサ21の物体検知態様(送信電力、センサ検知領域)を変更する。このとき、自車両40の旋回半径に応じて、探査波の送信電力を低減する度合や、検知領域70が変更されるとよい。具体的には、自車両40の旋回半径が小さいほど、探査波の送信電力を小さい電力にしたり、検知領域70を狭めたりするとよい。
【0046】
また、旋回の外側では、測距センサ21の検知領域70においてトレーラ41の重複範囲が直進走行時よりも小さくなる。そのため、ECU30は、直進時よりもマルチパス波の影響が小さくなることを考慮して、直進時よりもマルチパス波の受信抑制の程度を小さくする。又は、探査波の送信電力の低減や、検知領域70の変更(縮小)を一時的に停止することも可能である。
【0047】
また、自車両40の旋回走行時には、直進、旋回、直進の順に状態が移行することが考えられ、その際には、測距センサ21の検知領域70に対するトレーラ41の位置が時系列で変化する。そのため、自車両40の旋回走行時において、ECU30は、直進走行時よりも高頻度で電力低減処理や検知領域変更処理を実施する。つまり、自車両40の旋回走行時には、直進走行時よりも電力低減処理や検知領域変更処理の実施周期を短くするとよい。なお、自車両40の走行速度に応じて、電力低減処理や検知領域変更処理の実施周期を変更することとし、高速であるほど実施周期を短くするようにしてもよい。
【0048】
図9は、ECU30が行うセンサ検知態様の変更処理を示すフローチャートである。この処理は所定周期で繰り返し実行される。
【0049】
ステップS10では、自車両40に関する情報として、自車両40の速度情報や旋回情報を取得する。ステップS11では、トレーラ41に関する情報として、トレーラ41の有無を示す情報や、トレーラ41の形態情報、トレーラ41の位置情報、測距センサ21及び撮像装置22の検知情報を取得する。
【0050】
ステップS12では、自車両40の後部にトレーラ41が連結されているか否かを判定する。ステップS12において否定判定した場合、本処理を終了する。一方、ステップS12において肯定判定した場合、ステップS13に進む。本実施形態において、ステップS12が「牽引判定部」に相当する。
【0051】
ステップS13では、電力低減処理を実施する。具体的には、図5(a)~(d)で説明したように、トレーラ41の横幅Wf、上面高さHt、最低地上高さHg、前後長さDtに基づいて測距センサ21の送信電力を設定する。また、図6で説明したように、離間距離Dmに基づいて測距センサ21の送信電力を設定する。この場合、設定パラメータごとに調整係数(<1)を算出し、それら各調整係数の乗算により、送信電力を低減する度合を設定するとよい。
【0052】
ステップS14では、検知領域変更処理を実施する。具体的には、図7(a)又は図7(b)で説明したように、測距センサ21の検知領域70を変更する。この際、トレーラ41の形態情報に基づいて、センサ検知領域の変更を行うとよい。本実施形態において、ステップS13,S14が「変更部」に相当する。
【0053】
ステップS14では、自車両40が旋回状態であるか否かを判定し、自車両40が旋回状態であれば、自車両40の旋回状態でのトレーラ41の推定位置に基づいて測距センサ21の物体検知態様の変更を実施するとよい。この場合、ECU30は、自車両40の旋回円弧の内側と外側とにおいて、互いに異なる態様で測距センサ21の物体検知態様の変更を実施する。具体的には、旋回内側において直進時よりもマルチパス波の受信が抑制されるように、測距センサ21の送信電力や検知領域70を変更する。また、旋回外側において直進時よりもマルチパス波の受信抑制の程度が小さくなるように、測距センサ21の送信電力や検知領域70を変更する。このとき、トレーラ41の形態情報などに基づいて設定された送信電力や検知領域70に対して、自車両40の旋回状態に応じた調整が行われるとよい。
【0054】
なお、図9の処理において、自車両40の旋回走行時には、直進走行時よりも高頻度で電力低減処理や検知領域変更処理が実施されるようにしてもよい。
【0055】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0056】
自車両40の後部にトレーラ41が連結されていると判定された場合に、トレーラ41の存在に起因する反射波が受信されるのを抑制すべく測距センサ21の物体検知態様が変更される。これにより、自車両40の後方に存在する物体を認識する場合において、その物体の検知に不要な反射波であるマルチパス波が受信されることが抑制される。その結果、自車両40の後部にトレーラ41が連結されている状況において、自車両40の後方に存在する物体を適切に認識することができる。
【0057】
トレーラ41の牽引状態において、測距センサ21から送信される探査波の送信電力を低減することにより測距センサ21の物体検知態様を変更するようにした。この場合、探査波の送信電力を低減することにより、トレーラ起因のマルチパス波が生じたとしてもそのマルチパス波を物体からの反射波として認識させないようにすることができる。これにより、マルチパス波による物体の誤認識を抑制することができる。
【0058】
トレーラ牽引状態において、測距センサ21の検知領域70をトレーラ41が存在しない側に変更することにより測距センサ21の物体検知態様を変更するようにした。この場合、測距センサ21の検知領域70を変更することにより、トレーラ起因のマルチパス波を生じにくくすることができる。これにより、マルチパス波による物体の誤認識を抑制することができる。
【0059】
トレーラ41の形態に関する形態情報を取得し、その形態情報に基づいて、測距センサ21の物体検知態様を変更するようにした。この場合、トレーラ41の形態に応じてマルチパス波の発生状況が相違することを考慮しつつ、測距センサ21の物体検知態様を適正に設定することができる。
【0060】
自車両40とトレーラ41との間の離間距離Dmに基づいて、探査波の送信電力を低減する度合を設定するようにした。これにより、測距センサ21において探査波の送信電力を適切に設定することができる。
【0061】
トレーラ牽引時に自車両40が旋回状態であると判定された場合に、自車両40の旋回走行状態に基づいて、測距センサ21の物体検知態様を変更するようにした。この場合、自車両40の旋回走行時において、測距センサ21の検知領域70に対するトレーラ41の位置が直進走行時とは異なるものになることを考慮しつつ、測距センサ21の物体検知態様を適切に変更することができる。これにより、トレーラ牽引状態での自車両40の旋回時においても、適切な物体認識を行わせることができる。
【0062】
以下、他の実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0063】
<第2実施形態>
自車両40の後部にトレーラ41が牽引された状態では、測距センサ21においてトレーラ41が存在する方向から受信される反射波の受信電力により、マルチパス波の実際の発生状況を把握することができる。つまり、測距センサ21においてトレーラ41が存在する方向からの反射波の受信電力が比較的大きければ、自車両後方のトレーラ41が、実際にマルチパス波の発生要因となっていることを把握することができる。そこで本実施形態では、測距センサ21においてトレーラ41が存在する方向から受信される反射波の受信電力を算出し、その受信電力に基づいて、測距センサ21の物体検知態様を変更することとしている。
【0064】
具体的には、ECU30は、図9のステップS13の電力低減処理において、測距センサ21における反射波の受信電力を算出し、その受信電力が大きいほど、探査波の送信電力を低減する度合を大きくする(すなわち、送信電力を小さい電力とする)。なお、ステップS14の検知領域変更処理において、測距センサ21における反射波の受信電力が大きいほど、センサ検知領域を反トレーラ側に変更する、又はセンサ検知領域を狭くすることも可能である。
【0065】
本実施形態の構成によれば、トレーラ牽引状態において、実際のマルチパス波の発生状況に即した適正な物体認識を実施することができる。
【0066】
<第3実施形態>
図10に示すように、自車両40の後部にトレーラ41が牽引された状態では、マルチパス波が複数発生し、ECU30において複数のダミー物体が認識される。図10では、自車両40の後方において範囲Xで認識される物体に複数のダミー物体が含まれている。この場合、ダミー物体は、トレーラ41が存在する方向に認識され、そのダミー物体の数が多ければ、実際に複数のマルチパス波が発生している状況であると把握することができる。そこで本実施形態では、測距センサ21においてトレーラ41が存在する方向から受信される反射波により認識される物体数(ダミー物体数)を算出し、その物体数に基づいて、測距センサ21の物体検知態様を変更することとしている。
【0067】
具体的には、ECU30は、図9のステップS14の検知領域変更処理において、測距センサ21においてトレーラ41が存在する方向から受信される反射波により認識されるダミー物体の数を算出し、その数が多いほど、測距センサ21の検知領域70を反トレーラ側に変更する、又は検知領域70を狭くする。全物体数に対するダミー物体の数の割合に基づいて、測距センサ21の検知領域70を変更することも可能である。
【0068】
なお、ステップS13の電力低減処理において、測距センサ21においてトレーラ41が存在する方向から受信される反射波により認識される物体数が多いほど、探査波の送信電力を低減する度合を大きくする、すなわち、送信電力を小さい電力とすることも可能である。
【0069】
本実施形態の構成によれば、トレーラ牽引状態において、実際のマルチパス波の発生状況に即した適正な物体認識を実施することができる。
【0070】
<第4実施形態>
本実施形態では、電力低減処理及び検知領域変更処理の実施条件を変更している。つまり、測距センサ21においてトレーラ41が存在する方向から受信される反射波の受信電力を算出し、その受信電力が所定電力よりも大きいことを条件に、電力低減処理を実施することとしている。また、測距センサ21においてトレーラ41が存在する方向から受信される反射波により認識される物体数を算出し、その物体数が所定数よりも大きいことを条件に、検知領域変更処理を実施することとしている。
【0071】
具体的には、ECU30は、図11の処理を実施する。なお、図11の処理は、図9の処理の一部を変更したものであり、同一の処理については同じステップ番号を付してその説明を省略する。
【0072】
図11において、ステップS21では、測距センサ21においてトレーラ41が存在する方向から受信される反射波の受信電力を算出し、その受信電力が所定電力よりも大きいか否かを判定する。そして、ステップS21が肯定されれば、ステップS13に進み、電力低減処理を実施する。
【0073】
また、ステップS22では、測距センサ21においてトレーラ41が存在する方向から受信される反射波により認識される物体数(ダミー物体数)を算出し、その物体数が所定数よりも多いか否かを判定する。そして、ステップS22が肯定されれば、ステップS14に進み、検知領域変更処理を実施する。
【0074】
ステップS13の電力低減処理では、測距センサ21においてトレーラ41が存在する方向から受信される反射波の受信電力に基づいて、探査波の送信電力を低減する度合を設定するようにしてもよい。この場合、反射波の受信電力が大きいほど、探査波の送信電力を低減する度合を大きくする(すなわち、送信電力を小さい電力とする)とよい。
【0075】
本実施形態の構成によれば、実際のマルチパス波の発生状況に応じて適度に電力低減処理や検知領域変更処理を実施することができる。つまり、電力低減処理や検知領域変更処理が過度に実施されると、本来の認識対象である他車両等の認識精度の低下が懸念されるが、これら電力低減処理や検知領域変更処理が適度に実施されることで、他車両等の物体認識を適正に実施することができる。
【0076】
<その他の実施形態>
上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0077】
・測距センサ21の検知領域70内であり、かつトレーラ41と重複しない領域から反射波を受信する場合において、その反射波の受信電力に基づいて、電力低減処理や検知領域変更処理を実施する構成としてもよい。具体的には、ECU30は、測距センサ21の検知領域70内において、認識対象である物体(他車両等)からの反射波により正規に物体検知が行われた場合に、その物体からの反射波の受信電力が所定電力よりも小さければ、電力低減処理や検知領域変更処理について実施を制限する。かかる場合、電力低減処理や検知領域変更処理の実施の制限として、電力低減処理や検知領域変更処理においてマルチパス波の受信抑制の程度を小さくしたり、電力低減処理や検知領域変更処理の実施を停止したりするとよい。これにより、本来の認識対象に対する検知性能が過度に低下することを抑制できる。
【0078】
・本開示に記載の車両制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の車両制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の車両制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
21…測距センサ、30…ECU、40…自車両、41…トレーラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11