(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】血管グラフト、及び血管グラフトをシールするための方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/22 20060101AFI20241009BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20241009BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20241009BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20241009BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20241009BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
A61L27/22
A61L27/16
A61L27/18
A61L27/20
A61L27/50
A61L27/50 300
A61L27/52
(21)【出願番号】P 2021547841
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(86)【国際出願番号】 US2020018636
(87)【国際公開番号】W WO2020172162
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-01-27
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518145695
【氏名又は名称】ティーシーワン エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤラマン、ラメシュ・バブ
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-502380(JP,A)
【文献】特開平09-173361(JP,A)
【文献】米国特許第05584875(US,A)
【文献】特開平03-254752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00-27/60
A61K 9/00- 9/14
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管グラフトをシールするための方法であって、
前記血管グラフトに、植物由来の材料及び架橋剤を含むヒドロゲルシーラントを適用することにより、前記血管グラフトをシールするステップを含み、
前記植物由来の材料は、植物由来の組換えヒト血清アルブミンを含み、
前記架橋剤は、活性化ポリ(エチレン)オキシドを含み、
前記活性化ポリ(エチレン)オキシドは、コハク酸スクシンイミジル、バレリン酸スクシンイミジル、グルタル酸スクシンイミジル、炭酸スクシンイミジル、コハク酸スクシンイミジルアミド、及びこれらの組み合わせからなる群のうちから選択される少なくとも1つの反応性エステルを含み、
シールされた前記血管グラフトは、前記血管グラフトの外側及び内腔側のいずれにおいても、生地と互いに絡み合った前記ヒドロゲルシーラントを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記血管グラフトに、前記植物由来の材料を含む第1の溶液、及び前記架橋剤を含む第2の溶液を、同時に又は逐次的に適用することにより、前記ヒドロゲルシーラントを前記血管グラフトに適用する方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記第1の溶液の適用及び前記第2の溶液の適用の前に、前記血管グラフトをマンドレル上に配置する方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記ヒドロゲルシーラントの適用の後に、前記血管グラフトを脱水する方法。
【請求項5】
血管グラフトであって、
生体適合性材料と、
架橋ヒドロゲルシーラントと、を含み、
前記架橋ヒドロゲルシーラントが、植物由来の材料及び架橋剤を含み、
前記植物由来の材料は、植物由来の組換えヒト血清アルブミンを含み、
前記血管グラフトは、前記血管グラフトの外側及び内腔側のいずれにおいても、生地と互いに絡み合った前記ヒドロゲルシーラントを含む血管グラフト。
【請求項6】
請求項5に記載の血管グラフトであって、
前記生体適合性材料が、ポリ(エチレン)テレフタレート、PTFE、ePTFE、ポリ(エステル)、ポリ(ウレタン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(グリセロールセバケート)、セルロース、及びこれらの組み合わせからなる群のうちから選択される血管グラフト。
【請求項7】
請求項6に記載の血管グラフトであって、
前記架橋剤が、活性化ポリ(エチレン)オキシドを含む血管グラフト。
【請求項8】
請求項7に記載の血管グラフトであって、
前記活性化ポリ(エチレン)オキシドが、1~10kDの範囲の数平均分子量を有する血管グラフト。
【請求項9】
請求項8に記載の血管グラフトであって、
前記活性化ポリ(エチレン)オキシドが、バレリン酸スクシンイミジル、グルタル酸スクシンイミジル、炭酸スクシンイミジル、コハク酸スクシンイミジルアミド、及びこれらの組み合わせからなる群のうちから選択される少なくとも1つの反応性エステルを含む血管グラフト。
【請求項10】
血管グラフトをシールするための方法であって、
前記血管グラフトに、
植物由来の材料及び架橋剤を含む
架橋ヒドロゲルシーラントを適用することにより、前記血管グラフトが0.5mL/分/cm
2未満の水浸透速度を有するように前記血管グラフトをシールするステップ
であって、前記架橋剤は、活性化ポリ(エチレン)オキシド及びポリ(アミン)を含み、前記植物由来の材料は、植物由来の組換えヒト血清アルブミンを含む、該ステップを含み、
シールされた前記血管グラフトは、前記血管グラフトの外側及び内腔側のいずれにおいても、生地と互いに絡み合った前記ヒドロゲルシーラントを含
む方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記血管グラフトに、前記活性化ポリ(エチレン)オキシドを含む第1の溶液、及び前記ポリ(アミン)を含む第2の溶液を、同時に又は逐次的に適用することにより、前記ヒドロゲルシーラントを前記血管グラフトに適用する方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記第1の溶液の適用及び前記第2の溶液の適用の前に、前記血管グラフトをマンドレル上に配置する方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、
前記ヒドロゲルシーラントの適用の後に、前記血管グラフトを脱水する方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であって、
前記ポリ(エチレン)オキシドが、複鎖型のスターポリマーである方法。
【請求項15】
血管グラフトであって、
生体適合性材料と、
植物由来の材料及び架橋剤を含む架橋ヒドロゲルシーラントと、を含み、
前記
架橋剤は、活性化ポリ(エチレン)オキシド及びポリ(アミン)を含み、
前記植物由来の材料は、植物由来の組換えヒト血清アルブミンを含み、
前記血管グラフトは、前記血管グラフトの外側及び内腔側のいずれにおいても、生地と互いに絡み合った前記ヒドロゲルシーラントを含み、かつ、
前記血管グラフトが0.5mL/分/cm
2未満の水浸透速度を有するように前記血管グラフトをシー
ルする血管グラフト。
【請求項16】
請求項15に記載の血管グラフトであって、
前記生体適合性材料が、ポリ(エチレン)テレフタレート、PTFE、ePTFE、ポリ(エステル)、ポリ(ウレタン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(グリセロールセバケート)、セルロース、及びこれらの組み合わせからなる群のうちから選択される血管グラフト。
【請求項17】
請求項15に記載の血管グラフトであって、
前記ポリ(エチレン)オキシドが、複鎖型のスターポリマーである血管グラフト。
【請求項18】
請求項15に記載の血管グラフトであって、
前記ポリ(アミン)が、2~10個のアミン官能基を含む血管グラフト。
【請求項19】
血管グラフトをシールするための方法であって、
前記血管グラフトに、ヒドロゲルシーラントを適用することにより、前記血管グラフトが約0.5mL/分/cm
2未満の水浸透速度を有するように前記血管グラフトをシールするステップを含み、
前記ヒドロゲルシーラントが、植物由来の組換えヒト血清アルブミン及び架橋剤を含み、
シールされた前記血管グラフトは、前記血管グラフトの外側及び内腔側のいずれにおいても、生地と互いに絡み合った前記ヒドロゲルシーラントを含む方法。
【請求項20】
血管グラフトであって、
生体適合性材料と、
架橋ヒドロゲルシーラントと、を含み、
前記架橋ヒドロゲルシーラントが、植物由来の組換えヒト血清アルブミン及び架橋剤を含み、
前記血管グラフトは、前記血管グラフトの外側及び内腔側のいずれにおいても、生地と互いに絡み合った前記ヒドロゲルシーラントを含み、かつ、
前記血管グラフトが0.5mL/分/cm
2未満の水浸透速度を有するように前記血管グラフトをシールする血管グラフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年2月19日出願の米国仮特許出願第62/807,498号明細書に対する優先権を主張するものであり、その開示内容は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、概して、人体内で使用される医療機器に関する。詳細には、本発明は、種々の血管グラフト、並びに、柔軟性及び生体適合性を有するヒドロゲルシーラントを用いて血管グラフトをシールするための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
血管グラフトは、一般的に、例えば心室補助装置などの医療機器と組み合わせて使用される。多くの血管グラフトは、人体内で良好に機能する大径のポリエステル製織編物から作製される。いくつかの場合では、これらの大径のポリエステル製織編物は、該グラフトの材料が高い多孔性を有することに起因して、人体内に導入された後、短時間に亘って血液が漏出することがある。多くの場合、グラフトを介した血液の漏出を最小限に抑えるか又は排除するために、グラフトは1以上の材料を用いてシールされる。いくつかの特定の場合では、グラフトは、ウシ由来のゼラチンを用いてシールされる(例えば、バスクテック社のグラフト)。しかしながら、このような動物由来の製品に対する規制要件は動的なものであり、時折変化したり、国ごとに異なったりする場合がある。また、いくつかの国では、ヒトに対する動物由来の製品の投与が認可されていない。更に、追加の規制要件に起因して、動物由来の製品を含む製品は、動物由来の製品を含まない製品と比較して、規制当局による承認プロセスがより複雑であり、承認に、より長い時間を要する場合がある。しかしながら、合成ポリマー又は植物由来の製品から作製された合成シーラントは、そのような厳しい規制の対象とはならず、用途によっては有利かつ望ましい場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書は、血管グラフトをシールするための方法を開示する。この方法は、ヒドロゲルシーラントを血管グラフトに適用することにより、血管グラフトをシールするステップを含む。このヒドロゲルシーラントは、ヒト又は植物由来の材料及び架橋剤を含む。
【0005】
本明細書はまた、生体適合性材料及び架橋ヒドロゲルシーラントを含む血管グラフトを開示する。この架橋ヒドロゲルシーラントは、ヒト又は植物由来の材料及び架橋剤を含む。
【0006】
本明細書はまた、血管グラフトをシールするための方法を開示する。この方法は、ヒドロゲルシーラントを血管グラフトに適用することにより、血管グラフトをシールするステップを含む。このヒドロゲルシーラントは、活性化ポリ(エチレン)オキシド及びポリ(アミン)を含み、かつ、血管グラフトが約0.5mL/分/cm2未満の水浸透速度を有するように血管グラフトをシールする。
【0007】
本明細書はまた、生体適合性材料及び架橋ヒドロゲルシーラントを含む血管グラフトを開示する。この架橋ヒドロゲルシーラントは、活性化ポリ(エチレン)オキシド及びポリ(アミン)を含み、かつ、血管グラフトが約0.5mL/分/cm2未満の水浸透速度を有するように血管グラフトをシールする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、流出血管グラフトを含む左心補助人工心臓(LVAD)の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、LVAD及び右心補助人工心臓(RVAD)を共に含む体外設置型補助人工心臓(PVAD)の一例を示す図であり、該LVAD及び該RVADは、それぞれ流入血管グラフト及び流出血管グラフトを含む。
【
図3】
図3は、本発明に従って、SS-PEO-SS及び組換えヒト血清アルブミンを含むヒドロゲルシーラントが適用された後の血管グラフトの内表面及び外表面を、それぞれ、互いに異なる2つの倍率で示す図である。
【
図4】
図4は、本発明に従って、PEO及びtri-(Lys)架橋剤を含むヒドロゲルシーラントが適用された後の血管グラフトの内表面及び外表面を、それぞれ、互いに異なる2つの倍率で示す図である。
【
図5】
図5は、シドロゲルシーラントを含む流入導管を含む心臓弁置換物(heart valve replacement)用の弁導管を示す図である。
【0009】
対応する参照符号は、本発明の図面のいくつかの図に亘って対応する部分を示す。本発明の図面は、必ずしも縮尺通りであるわけではない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
補助人工心臓(VAD)は、患者の循環系を、冠動脈欠損の性質に応じて短期的又は長期的にサポートするために用いられる。VADは、心臓の下側の部屋(lower chamber)から脱血し、この血液を心臓と同じ方法で患者の全身及び重要な器官に送血するのを補助する。VADには2つの基本的な種類が存在し、それは左心補助人工心臓(LVAD)及び右心補助人工心臓(RVAD)である。
【0011】
LVADは、最も一般的な種類のVADである。LVADは、左心室による大動脈への送血を補助する。大動脈は、酸素を豊富に含む血液を心臓から全身に運ぶ主たる動脈である。一部の患者では、代わりに、許容可能である近くの別の動脈がLVADに接続される。いくつかの例では、LVADは、患者の心臓の底部に取付けられ、かつ、LVADから患者の循環系に送血するための血管グラフト(流出グラフト)、又は心臓の心室からポンプに送血するための血管グラフト(流入グラフト)を必要とする。本明細書に記載のいくつかの実施形態では、血管グラフトはLVAD用の流出グラフトである。本明細書に記載のいくつかの実施形態では、血管グラフトはLVAD用の流入グラフトである。他の実施形態では、本明細書に記載の血管グラフトは、短期的又は長期的なサポートに使用可能な、RVADと共に使用されてもよい。RVADは、肺での再酸素化を目的とした、右心室による肺動脈への送血を補助する。
【0012】
本発明は、血管グラフトをシールすることで人体内での使用時に血管グラフトが血液を実質的に透過しないようにするために、大径の編物製ポリエステル、織物製ポリエステル、又はその他のポリエステルから作製された血管グラフト、及びそれに類するものに対してシーリング特性を与えるためのヒドロゲルシーラント材料の利用方法を提供する。本発明はまた、ヒドロゲルシーラント材料を含む、シールされた血管グラフトを提供する。本明細書に記載のヒドロゲルシーラントは、本明細書に後述されているように、生体内で所望の期間に亘って分解することが望ましい。本明細書では、主として、血管グラフトは、心室補助用医療機器及び心臓弁置換物と組み合わせて使用されるものとして説明されている。しかしながら、本明細書の開示内容に基づく分野における当業者であれば、本明細書に記載のヒドロゲルシーラントを用いたシーリング方法、及び本明細書に記載のヒドロゲルシーラントを含む血管グラフトが、他の血管グラフト及び医療機器にも同様に適用可能であることを理解できるであろう。
【0013】
本明細書中における「動物」という用語は、特にヒトを除外している。動物由来の製品は、ウシ、ブタ、イヌ、及びヒツジを含むがこれらに限定されない、任意の数の動物からなる材料を含む。本開示に関連する動物由来の製品の具体的な一例は、ウシ血清アルブミン(BSA)である。BSAは多くの生物学的用途で一般的に使用されているが、その一方で、BSAには動物由来の材料が使用されている。したがって、BSAは、本明細書に記載の方法及び組成物における使用から特に除外されている。対して、例えば植物又はヒトなどの非動物由来の遺伝子を利用した組換え製品は、本明細書の方法及び組成物に特に含まれる。いくつかの実施形態では、組換え製品は、完全に植物(例えば米又は酵母)由来の材料である。他の実施形態では、組換え製品は、完全にヒト由来の材料である。更に他の実施形態では、組換え製品は、植物由来の材料及びヒト由来の材料の組み合わせである。加えて、例えば生体適合性ポリマーなどの合成材料も好適であり、本明細書の方法及び組成物の使用において、合成材料が含まれてもよい。合成材料は、植物由来の材料と組み合わされてもよいし、人間由来の材料と組み合わされてもよい。或いは、いくつかの実施形態では、合成材料は、植物由来の材料及び人間由来の材料の両方と組み合わされる。
【0014】
ゲルとは、液体状態と固体状態との中間的な性質を有する物質のことである。ゲルは、弾性変形及び回復するが、高応力下ではしばしば流動する。ゲルは、伸長された3次元ネットワーク構造を有し、かつ多孔質である。したがって、多くのゲルでは、固体に対する液体の割合が非常に高い。このネットワーク構造は、ポリマー分子に基づいて、恒久的にもなり得るし、一時的にもなり得る。したがって、ヒドロゲルは、その液体成分が水であるゲルと表現することができる。
【0015】
本明細書における「ヒドロゲル」という用語は、水中で溶解することなく膨潤し、かつその構造中に相当量の水を保持するポリマー材料を意味する。このような材料は、液体状態と固体状態との間の中間的な性質を有する。したがって、本開示の目的のために、ヒドロゲルは、水により膨潤した親水性ポリマーの3次元ネットワークをなす。ポリマーは、天然由来のものであってもよいし、合成のものであってもよいし、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0016】
本明細書における「シール」及び「シーリング」という用語は、例えば本明細書に記載の編物製又は織物製グラフト材料などの材料における多孔性を低減させることを意味する。すべての実施形態において、材料における多孔性の低減は、その材料の多孔性をゼロにするということを意味することを意図したものではない。しかしながら、材料の多孔性をゼロ又は実質的にゼロにすることは本開示の実施形態の範囲内である。
【0017】
上述したように、血管グラフトは、患者の血管を置換する必要がある場合、又はその流路を変更する必要がある場合のいずれかにおいて一般的に使用される。いくつかの例では、血管グラフトは、同一患者の他の場所の血管又はドナーの血管のいずれかを使用することができる。上述したように、血管グラフトは、利用されている装置の種類に応じて、短期的に使用されてもよいし、長期的に使用されてもよい。いくつかの例では、血管グラフトは合成性である。合成性血管グラフトは、一般的に、ポリ(エチレン)テレフタレート、PTFE、ePTFE、ポリ(エステル)、ポリ(ウレタン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(グリセロールセバケート)、セルロース、及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されるものではない、互いに異なる多数の生体適合性材料から形成される。他の望ましい実施形態では、血管グラフトは、ポリ(エチレン)テレフタレートを含む。本開示の範囲内にあるいくつかの実施形態では、血管グラフトは、互いに織られていても又は編まれていてもよいし、互いに織られていなくても又は編まれていなくてもよい、2以上の互いに異なるポリマーを含む。
【0018】
血管グラフトと組み合わせて使用するための、本明細書に記載された本開示のヒドロゲルシーラントは、上述したように、生体適合性を有し、生体内で安全にかつ実質的に又は完全に分解及び/又は溶解することが望ましい。いくつかの態様では、ヒドロゲルシーラントは、100日未満、90日未満、80日未満、70日未満、60日未満、50日未満、40日未満、30日未満、20日未満、15日未満、又は10日未満で生体内に分解する。いくつかの態様では、シーラントは、5~100日の範囲、10~60日の範囲、又は15~45日の範囲で分解する。当業者であれば、本明細書の開示に基づいて、生体適合性グラフトが、所望の分解時間サイクル又は所望の用途に応じたサイクルを有するように構成されてもよいことを理解できるであろう。
【0019】
図1は、流出血管グラフト106及び流入血管グラフト(又は導管)104を含むLVAD102の一例を示す図である。心臓100は、大動脈110に接続される流出血管グラフト106及び流入導管血管グラフト104を有するLVAD102を含む。また、
図1には、LVADコントローラ(
図1には図示せず)に繋がる駆動系108(コントロールケーブルとも呼ばれる)が示されている。
【0020】
図2を参照すると、患者の心臓200は、LVAD202及びRVAD204を共に含み、このLVAD202及びRVAD204は、体外式装置又は埋込み型装置のうちのいずれでもよい。LVAD202及びRVAD204は、共に、流入血管グラフト又は導管206(LVAD)、210(RVAD)と、流出血管グラフト又は導管208(LVAD)、212(RVAD)とを含む。流入グラフト206、210は、心臓200をLVAD202又はRVAD204のうちのいずれかに直接接続し、その一方で、流出グラフト208、212は、装置を大動脈214又は肺動脈216のうちのいずれかに接続する。いくつかの例(
図2では図示せず)では、流出グラフト208は、大動脈214以外の動脈に接続してもよい。血管グラフトを有するLVAD及び/又はRVADのための他の構成もまた、本開示の範囲内に含まれる。
【0021】
本開示における他の実施形態では、本明細書に記載の血管グラフトは、心臓に接続される箇所である、患者の大動脈の下部を治療するために、大動脈基部置換に使用できる。大動脈基部置換は、大動脈弁置換を伴って行われてもよいし、大動脈弁置換を伴わずに行われてもよい。いくつかの態様では、血管グラフトは、心臓弁置換物に使用される重要な導管である。
【0022】
人体内で使用されるほとんどの血管グラフトには柔軟性が要求され、これに起因して、そのような血管グラフトは、それ自体では流体に対して不透過性を有さない、タイトなメッシュ、織物、又は編物から作製されることが多い。この文脈における流体とは、水、血液、及び、人体内で血管グラフトに一般的に接触する可能性を有する他の体液を意味する。グラフトの壁部を介して浸透する流体の量を低減し、かつ人体内での使用時におけるグラフトの性能を向上させるために、本開示に従って、生体適合性ヒドロゲルシーラントをグラフトに適用してもよい。ヒドロゲルシーラントは、意図した用途に応じて、単層として適用されてもよいし、又は複数層として適用されてもよい。ヒドロゲルシーラントは、グラフトの長さ全体に適用されてもよいし、グラフトの長さの一部のみに適用されてもよいし、グラフトの1以上の表面に亘って適用されてもよい。一度体内に移植されてからは、ヒドロゲルシーラントが生分解するにつれて、血管グラフトの周囲に組織が経時的に成長及び形成され、これにより、その後の浸透を防止又は低減することが可能となる。いくつかの態様では、200mmHgの圧力下で浸透速度を計測した場合に、浸透速度が、約2.0mL/分/cm2未満、約1.5mL/分/cm2未満、約1.25mL/分/cm2未満、約1.0mL/分/cm2未満、約0.75mL/分/cm2未満、約0.5mL/分/cm2未満、又は約0.25mL/分/cm2未満に低減される。いくつかの態様では、浸透速度がゼロに低減される。これは、200mmHg未満の圧力下で浸透速度を計測した場合に、シーラントが、血管グラフトに対して、液体に対する不透過性を付与することを意味する。このようなゼロの浸透速度は、多くの実施形態において望ましい。
【0023】
上述したように、所望のヒドロゲルは、本明細書に記載された通りに血管グラフトに適用された場合にシーラントとして機能することが可能であり、これにより、グラフトからの血液の浸透が低減又は排除される。好適なヒドロゲルシーラントの一例は、ヒト血清アルブミン及び好適な架橋剤から調製される。また、本明細書に記載されたヒドロゲルシーラントの調製に、他の非動物由来のアルブミン、例えば、これに限定されるものではないが、植物由来(例えば米又は酵母)のアルブミンが使用されてもよい。アルブミンは、天然物から単離することにより調製されてもよいし、組換えDNA技術を用いて調製されてもよい。いくつかの実施形態では、アルブミンは、植物由来の組換えヒト血清アルブミンである。
【0024】
本明細書のヒドロゲルの使用において、アルブミンのための多くの架橋剤が好適となり得る。非限定的な架橋剤の一例は、末端基活性化ポリ(エチレン)オキシド(PEO)(ポリ(エチレン)グリコール(PEG)としても知られる)である。架橋剤は、1~10KDの範囲の数平均分子量を有する。架橋剤は、直鎖状であってもよいし、又は分枝していてもよい。いくつかの態様では、PEO架橋剤の数平均分子量は、約1KD、約2KD、約3KD、約4KD、約5KD、約6KD、約7KD、約8KD、約9KD、又は約10KDである。この文脈で使用される「約」とは、±0.5KDを意味する。
【0025】
架橋剤をアルブミンと反応させるために、架橋剤は、それぞれの末端の官能基がアルブミンの少なくとも1つの官能基と反応するように活性化される。いくつかの実施形態では、架橋剤は、コハク酸スクシンイミジル、バレリン酸スクシンイミジル、プロピオン酸スクシンイミジル、グルタル酸スクシンイミジル、炭酸スクシンイミジル、コハク酸スクシンイミジルアミド、及びこれらの組み合わせからなる群のうちから選択される少なくとも1つの反応性エステルを含む。いくつかの実施形態では、反応性エステルは、コハク酸スクシンイミジルである。他の実施形態では、反応性エステルは、コハク酸スクシンイミジルバレレートである。更に他の実施形態では、反応性エステルは、プロピオン酸スクシンイミジルである。いくつかの他の実施形態では、反応性エステルは、グルタル酸スクシンイミジルである。他の実施形態では、反応性エステルは、スクシンイミジルカーボネートである。いくつかの実施形態では、反応性エステルは、コハク酸スクシンイミジルアミドである。いくつかの態様では、架橋剤中に、互いに異なる2つの反応性エステルが存在する。
【0026】
本明細書に記載の様々な方法における使用において好適である合成ヒドロゲルシーラントの非限定的な別例としては、PEO及びポリ(アミン)の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、PEOは、3~8本の腕、3本の腕、4本の腕、5本の腕、6本の腕、7本の腕、又は8本の腕を有する多腕スターポリマーである。各腕は、存在する他の腕と独立して、1~10KDの範囲の数平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、各腕は、約1KD、約2KD、約3KD、約4KD、約5KD、約6KD、約7KD、約8KD、約9KD、又は約10KDの数平均分子量を有する。この文脈で使用される「約」とは、±0.5KDを意味する。
【0027】
PEO架橋剤について上述したように、PEOは活性化されてもよい。PEOは活性化エステルを含むため、PEOはアミンと反応する。また、ポリ(アミン)は架橋剤として機能する。いくつかの実施形態では、ポリ(アミン)は、3個のアミン官能基、4個のアミン官能基、5個のアミン官能基、6個のアミン官能基、7個のアミン官能基、8個のアミン官能基、9個のアミン官能基、又は10個のアミン官能基を含む、2~10個のアミン官能基を含む。いくつかの実施形態では、ポリ(アミン)中のアミンは、第一級アミン、第二級アミン、又はそれらの組み合わせである。ポリ(ペプチド)は、一方の末端及び一部の側鎖のいずれにおいてもアミン官能基を有する。したがって、ポリ(ペプチド)は、本明細書における使用に適したポリ(アミン)の非限定的な一例である。いくつかの実施形態では、ポリ(アミン)は、α-アミノ酸及びβ-アミノ酸を含むポリ(ペプチド)であり、各アミノ酸は、他の任意のアミノ酸に対して独立的に選択される。各アミノ酸は、他の任意のアミノ酸とは独立して、D体であってもよいし、L体であってもよい。他の実施形態では、ポリ(アミン)は、少なくとも1つのリジンアミノ酸を含む。更に他の実施形態では、ポリ(アミン)は、Lys-Lys-Lysトリペプチドである。
【0028】
本明細書はまた、血管グラフトの浸透性を低減するための関連方法を開示する。この方法は、一般的に、血管グラフトの透過性を低減すべく構成された、血管グラフト用の生体適合性ヒドロゲルシーラントを、血管グラフトの外面又は他の表面に適用するステップを含む。いくつかの実施形態では、シーラントは、本明細書の他の箇所に記載の生体適合性ヒドロゲルである。
【0029】
本明細書は、更に、血管グラフトをヒドロゲルシーラントでコーティングすることにより、血管グラフトに対して1以上の有益な特性を付与するための関連方法を開示する。この方法は、概して、第1の溶液を調製するステップと、第2の溶液を調製するステップと、第1の溶液及び第2の溶液を、それらの適用中に第1の溶液及び第2の溶液が混合されるべく血管グラフトに同時に適用することにより、血管グラフトをヒドロゲルシーラントでコーティングするステップであって、この第1の溶液及び第2の溶液の混合が、血管グラフト上においてヒドロゲルシーラントの形成を惹き起こす、該ステップ、とを含む。
【0030】
本明細書は、更に、血管グラフトをヒドロゲルシーラントでコーティングすることにより、血管グラフトに対して1以上の有益な特性を付与するための関連方法を開示する。この方法は、概して、第1の溶液を調製するステップと、第2の溶液を調製するステップと、第1の溶液を血管グラフトの表面に適用し、その後、第2の溶液が血管グラフトの表面上の第1の溶液に接触したときに第1の溶液及び第2の溶液が混合されるべく第2の溶液を血管グラフトに適用することにより、血管グラフトをヒドロゲルシーラントでコーティングするステップであって、この第1の溶液及び第2の溶液の混合が、血管グラフト上においてヒドロゲルシーラントの形成を惹き起こす、該ステップ、とを含む。
【0031】
上述したように、血管グラフトに対する第1の溶液の適用及び第2の溶液の適用は、同時に行われてもよいし、逐次的に行われてもよい。非限定的な一例では、各溶液は、デュアルチャンバーシリンジを用いて個別に保持される。適用の際に、2つの溶液は、シリンジの先端から混合物として同時に排出されるべく、シリンジの先端において化合及び混合される。非限定的な一代替例では、第1の溶液を血管グラフトの表面に適用した後に、第2の溶液を適用する。第1の溶液の適用及び第2の溶液の適用の間の期間は、第1の溶液が劣化しない、蒸発しない、又は効果を失わないような長さである。第1の溶液を含む血管グラフトの表面に第2の溶液が適用されると、2つの溶液が混合されてヒドロゲルの形成が開始される。
【0032】
非限定的な例では、第1の溶液がアルブミンを含み、かつ、第2の溶液が、例えば活性化PEOなどの架橋剤を含む。更に別の非限定的な例では、第1の溶液が活性化PEOを含み、かつ、第2の溶液がポリ(アミン)を含む。この方法における使用に好適であるヒドロゲルシーラントの非限定的な2つの例は、本明細書の他の箇所に記載のアルブミン/PEO及びPEO/ポリ(アミン)ヒドロゲルである。また、いくつかの実施形態に記載の、2以上のヒドロゲル材料又はシステムを互いに組み合わせて使用することにより、所望のシール機能が提供されてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1の溶液及び第2の溶液を適用するステップの前に、血管グラフトをマンドレル上に配置するステップを更に含む。血管グラフトを均一にコーティングするために、マンドレルは回転されてもよい。グラフトの回転は、ヒドロゲルが血管グラフト上に均一に形成され、かつ遠心力によってヒドロゲルが血管グラフトから離脱しないような速度で行われる。
【0034】
いくつかの実施形態では、血管グラフトの性能を更に向上させるために、ヒドロゲルが形成された後、血管グラフト上のヒドロゲルを脱水する。脱水は、当技術分野で既知の方法を用いて行うことができる。脱水方法の非限定的な一例としては、ヒドロゲルシーラントでコーティングされた血管グラフトを非水溶液中に配置することにより、ヒドロゲル中の水を別の溶媒に置換する方法が挙げられる。いくつかの実施形態では、血管グラフト上のヒドロゲルシーラントを脱水するために、アルコール及びグリセリン溶液が使用される。ヒドロゲルの脱水においては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノールなどのアルコールが特に好適である。いくつかの実施形態では、アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、又はそれらの組み合わせである。
【0035】
他の実施形態では、ヒドロゲルの脱水は、ヒドロゲル中の水をグリセリンで置換するステップを含む。これは、ヒドロゲルシーラントでコーティングされた血管グラフトを非水溶液中に配置し、これにより、水をグリセリンで置換することによって達成される。いくつかの態様では、非水溶液は、2以上の溶媒の混合物である。いくつかの態様では、非水溶液は、本明細書の他の箇所に記載されているように、グリセリン及びアルコールの混合物である。非限定的な一例では、グリセリン及びアルコールの混合物が使用される。この非水溶液は、約10~90%の範囲のグリセリンを含む。いくつかの態様では、非水溶液は、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、又は約90%のグリセリンを含む。いくつかの態様では、非水溶液は、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、又は約90%のアルコールを含む。これらのアルコールは、本明細書の他の箇所に記載されている通りの種類のアルコールである。
【0036】
更に、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、脱水後に、脱水化ヒドロゲルシーラント中のアルコールを除去するステップを含む。アルコールの除去は、例えば、減圧下、昇温下、又はそれらの組み合わせなどの、当技術分野で既知の方法を用いて行われる。
【0037】
いくつかの任意選択的な実施形態では、本明細書に記載の方法は、ヒドロゲルシーラントでコーティングされた血管グラフトを滅菌及び/又はパッケージングするステップを更に含む。いくつかの態様では、ヒドロゲルシーラントでコーティングされた血管グラフトは、保存及び後の使用のために、滅菌及びパッケージングの両方が行われる。いくつかの態様では、ヒドロゲルシーラントでコーティングされた血管グラフトは、滅菌され、その直後に患者の体内に挿入して使用される。
【0038】
本開示の更なる非限定的な実施形態では、本明細書に開示された血管グラフトを患者の内部に配置するために、この血管グラフトが、心臓弁置換物(又は同様の種類の弁)に取付けられる。心臓弁置換物/血管グラフトの組み合わせを患者の体内に導入する前に、血管グラフトは、本明細書の他の箇所に記載されているようなヒドロゲルシーラントでシールされてもよい。
図5は、流入導管血管グラフト500に取付けられた心臓弁置換物502を示す図である。流入導管血管グラフト500は、本明細書に記載されたような所望のシール機能を付与するために、その表面にヒドロゲルシーラント504を含む。
【0039】
実施例1
【0040】
実施例1では、アルブミンをベースにしたヒドロゲルシーラントを調製して特定のグラフト材料に適用し、結果として得られる、ヒドロゲルでシールされたグラフト材料の水透過性を測定する。
【0041】
rHSAの30%溶液をpH9.6の炭酸水素塩溶液に溶解させ、更にS二官能活性化エステルSS-PEO-SS(分子量約3400g/mol)を、アルブミン溶液1mLあたり0.130gのSS-PEO-SSの割合で、pH7.4のリン酸緩衝液に溶解させた。2つの溶液を別々の2つのシリンジに装填し、血管グラフト(8~22mm)をマンドレルで伸ばしてモータに取付けた。グラフトを約600rpmで軸回転させ、その一方で2つの溶液をグラフトに対して噴霧した。rHSAとPEOとの反応は数秒以内に起こり、ヒドロゲルシーラントが形成された(
図3)。
図3に示すように、ヒドロゲルシーラント302は、血管グラフトの外側及び内腔側のいずれにおいても、生地300と互いに密接に絡み合っていた。この絡み合いは、血管グラフトの透過性を低減させる。
【0042】
ヒドロゲル中の水は、イソプロパノール/グリセリン(75/25)混合液で一晩脱水することにより、除去及び安定化させた。ヒドロゲル中の水は、ヒドロゲルの加水分解を防ぐためにグリセリンで置換した。このようにしてコーティングされた14mmの低多孔性PETグラフトに対して、200mmHgの圧力下で、その水透過性をテストした。グラフトを水で浸して200mmHgの圧力を印加し、グラフトの水透過性を測定した。水透過性は、1.2mL/分/cm2であった。
【0043】
実施例2
【0044】
実施例2では、Lys-Lys-Lysを有する4-ARM PEGをベースにしたヒドロゲルシーラントを調製して特定のグラフト材料に適用し、結果として得られる、ヒドロゲルでシールされたグラフト材料の水透過性を測定する。
【0045】
4-ARM-PEO-SG(0.675g;6.2μmol)を4mLのPBS(pH7.4)に、Lys-Lys(0.025g;6.2μmol)を4mLの炭酸-重炭酸緩衝液(pH9.6)に、それぞれ別々に溶解した。デュアルシリンジカートリッジに、これらの2つの溶液を個別に装填した。14mmの低多孔性グラフトをマンドレル上で引き伸ばし、このマンドレルをモータに取付けた。このグラフトを軸方向に約600rpmで回転させた。溶液を混合し、窒素圧力下で回転中のグラフトに噴霧することにより、グラフト上に均一なコーティングを形成させた。ヒドロゲルは、約15分かけてセットアップされた。ヒドロゲル中の水は、イソプロパノール/グリセリン(75/25)混合液で一晩脱水することにより、除去及び安定化させた。ヒドロゲル中の水は、ヒドロゲルの加水分解を防ぐためにグリセリンで置換した(
図4)。
図4に示すように、ヒドロゲルシーラント402は、血管グラフトの外側及び内腔側のいずれにおいても、生地400と互いに密接に絡み合っていた。この絡み合いは、血管グラフトの透過性を低減させる。
【0046】
このようにしてコーティングされた14mmの低多孔性PETグラフトに対して、200mmHgの圧力下で、その水透過性をテストした。グラフトを水で浸して200mmHgの圧力を印加し、グラフトの水透過性を測定した。このグラフトは、200mmHgの圧力下では、水に対して本質的に非透過性であった。
【0047】
本明細書に開示された実施形態及び例は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、これらの実施形態及び例は、単に本開示の原理及び応用例を例示するものに過ぎないことを理解されたい。したがって、例示的な実施形態及び実施例に多数の改変を加えることが可能であり、かつ、特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱しない範囲で、他の構成が考案されてもよいことを理解されたい。したがって、本願は、これらの実施形態及びその等価物の改変及び変形をカバーすることを意図している。
【0048】
本明細書は、最良の実施形態を含めて本発明を開示するために、また当業者が、任意の装置又はシステムを製造及び使用し、任意の組み込まれた方法を実行することを含めて、本発明を実施できるようにするために、様々な例を使用した。本発明の特許請求可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者には想到される他の例を含むことができる。そのような他の例は、特許請求の範囲における文字通りの言葉と同様の構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲における文字通りの言葉と僅かに異なる同等な構造要素を有する場合、特許請求の範囲の範囲内にあるものとして意図される。