(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】工作機械の回転スピンドルのバランス調整システムおよび関連する制御方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4155 20060101AFI20241009BHJP
G05B 19/414 20060101ALI20241009BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20241009BHJP
B23Q 17/12 20060101ALI20241009BHJP
B24B 45/00 20060101ALI20241009BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20241009BHJP
F16F 15/10 20060101ALI20241009BHJP
F16F 15/22 20060101ALI20241009BHJP
G01M 1/36 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
G05B19/4155 N
G05B19/414 R
B23Q11/00 B
B23Q17/12
B24B45/00 B
B24B49/10
F16F15/10 Z
F16F15/22 A
G01M1/36
(21)【出願番号】P 2021557777
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2020058633
(87)【国際公開番号】W WO2020201035
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】102019000004703
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】500200708
【氏名又は名称】マーポス、ソチエタ、ペル、アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MARPOSS S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ、ルッジェーリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア、トゥリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエーレ、ランツォーニ
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01870198(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0088346(US,A1)
【文献】特開昭61-090857(JP,A)
【文献】特開2015-200650(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106768642(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416
G05B 19/42-19/46
B23Q 17/00
B23Q 11/00
B24B 45/00
B24B 49/10
F16F 15/10
F16F 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械(1)の回転スピンドル(3)のバランス調整システムであって、前記バランス調整システムは、
・前記
回転スピンドル(3)に接続された回転部品であって、
・回転軸(4)に対して偏心して配置された少なくとも1つの平衡質量体(8)と、前記平衡質量体(8)の位置を調整するように適合された少なくとも1つの電気モータ(9)とを有する少なくとも1つのバランス調整ヘッド(7)と、
・少なくとも1つの振動センサ(10)と、
・少なくとも1つのハードウェア(12)と、前記ハードウェア(12)によって実行されるように適合された少なくとも1つのソフトウェア(13)とを備える制御システム(11)と
を備える回転部品と、
・処理および制御電子機器(15)を有する固定部品と、
・前記制御システム(11)と前記処理および制御電子機器(15)との間の通信を確立するように適合された双方向非接触通信システム(14)と
を含み、
前記バランス調整システムは、前記制御システム(11)の前記ソフトウェア(13)が、
-通常動作中に前記バランス調整ヘッド(7)および前記振動センサ(10)の全体管理を実行するように構成された管理アプリケーション(19)と、
-電力供給の中断後に前記制御システム(11)が通電されると、自動的に起動し、前記管理アプリケーション(19)を起動するか、または既存バージョンの前記管理アプリケーション(19)を新しいバージョンの前記管理アプリケーション(19)で上書きするように構成されている、サービスアプリケーション(18)と
を備えることを特徴とする、バランス調整システム。
【請求項2】
電力供給の中断後に前記制御システム(11)が通電されると、前記サービスアプリケーション(18)のみが自動的に起動される、請求項1に記載のバランス調整システム。
【請求項3】
前記電力供給の中断後に前記制御システム(11)が通電されると、前記サービスアプリケーション(18)は、前記
双方向非接触通信システム(14)を通じて前記処理および制御電子機器(15)から受信した制御に応じて、
-前記管理アプリケーション(19)を起動し、前記バランス調整システムが正常に動作しなければならない場合に停止するか、または
-前記サービスアプリケーション(18)が前記ハードウェア(12)
のメモリに書き込んで前記既存バージョンの前記管理アプリケーション(19)を上書きするコードパケットを、前記
双方向非接触通信システム(14)を通じて前記処理および制御電子機器(15)から受信する準備をする
ように構成されている、請求項1または2に記載のバランス調整システム。
【請求項4】
前記サービスアプリケーション(18)および前記管理アプリケーション(19)は両方とも、互いに独立して前記
双方向非接触通信システム(14)とインターフェースで接続するように構成されている、請求項1、2または3に記載のバランス調整システム。
【請求項5】
前記管理アプリケーション(19)は、砥石車(5)が処理中にワークピースと接触している機械加工の間、または前記砥石車(5)がドレッシング工具と接触している前記砥石車(5)のメンテナンスの間、前記振動センサ(10)の読み取り値を前記処理および制御電子機器(15)
に連続的に送信するために、前記
双方向非接触通信システム(14)を使用するように構成されている、前記砥石車(5)を担持する回転スピンドル(3)のための請求項1から4のいずれか一項に記載のバランス調整システム。
【請求項6】
前記回転部品は、少なくとも1つのセンサを含み、前記管理アプリケーション(19)は、前記砥石車(5)が処理中にワークピースと接触している機械加工の間、または前記砥石車(5)がドレッシング工具と接触している前記砥石車(5)の前記メンテナンスの間、前記回転部品の少なくとも1つのパラメータの現在値を前記少なくとも1つのセンサによって周期的に読み取り、前記パラメータの前記現在値が許容値の範囲内であるか否かをチェックするように構成されている、請求項5に記載のバランス調整システム。
【請求項7】
前記管理アプリケーション(19)は、前記パラメータの前記現在値が前記対応する許容値の範囲外である場合に、検出された異常の記録を前記ハードウェア(12)
のメモリ内に記憶し、前記振動センサ(10)の前記読み取り値の送信を中断するように構成されている、請求項6に記載のバランス調整システム。
【請求項8】
前記管理アプリケーション(19)は、前記振動センサ(10)のアナログ読み取り値の前記送信を中断した後に、前記検出された異常の前記以前記憶された記録を前記処理および制御電子機器(15)に送信するように構成されている、請求項7に記載のバランス調整システム。
【請求項9】
工作機械(1)の回転スピンドル(3)のバランス調整システムの制御方法であって、前記バランス調整システムは、
・
前記回転スピンドル(3)に接続された回転部品であって、
・回転軸(4)に対して偏心して配置された少なくとも1つの平衡質量体(8)と、前記平衡質量体(8)の位置を調整するように適合された少なくとも1つの電気モータ(9)とを有する少なくとも1つのバランス調整ヘッド(7)と、
・少なくとも1つの振動センサ(10)と、
・少なくとも1つのハードウェア(12)と、前記ハードウェア(12)によって実行されるように適合された少なくとも1つのソフトウェア(13)とを備える制御システム(11)と
を備える回転部品と、
・前記工作機械(1)の制御ユニット(20)に接続された処理および制御電子機器(15)を有する固定部品と、
・前記制御システム(11)と前記処理および制御電子機器(15)との間の通信を確立するように適合された双方向非接触通信システム(14)と
を含み、
前記制御システム(11)の前記ソフトウェア(13)は、通常動作中に前記バランス調整ヘッド(7)および前記振動センサ(10)の全体管理を実行するように構成された管理アプリケーション(19)と、前記管理アプリケーション(19)を起動するように構成されたサービスアプリケーション(18)とを備え、
前記制御方法は、電力供給の中断後に前記制御システム(11)が通電されると、
・前記サービスアプリケーション(18)のみを自動的に起動する段階と、
・前記サービスアプリケーション(18)に前記管理アプリケーション(19)を起動させ、次いで前記サービスアプリケーション(18)を停止する段階と、
・ソフトウェア更新を実行する必要があるとき、前記サービスアプリケーション(18)によって
、既存バージョンの前記管理アプリケーション(19)を新しいバージョンの前記管理アプリケーション(19)で上書きする段階と
を備える
制御方法。
【請求項10】
前記電力供給の中断後に前記制御システム(11)が通電されると、前記サービスアプリケーション(18)は、前記
双方向非接触通信システム(14)を通じて前記処理および制御電子機器(15)から受信した制御に応じて、
前記管理アプリケーション(19)を起動し、前記バランス調整システムが正常に動作しなければならない場合に停止するか、または
前記既存バージョンの前記管理アプリケーション(19)を上書きすることによって、前記サービスアプリケーション(18)が前記ハードウェア(12)
のメモリに書き込むコードパケットを、前記
双方向非接触通信システム(14)を通じて前記処理および制御電子機器(15)から受信する準備をする、
請求項9に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の回転スピンドルのバランス調整システムおよび関連する制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、欧州特許出願公開第0690979号明細書、欧州特許出願公開第1870198号明細書、および欧州特許出願公開第3134980号明細書に記載されるように、工作機械、具体的にはスピンドルがフレームに対して回転し、(少なくとも)1つの砥石車を支持する研削盤の回転スピンドル(ハブ)のためのバランス調整システムが知られている。バランス調整システムは、砥石車に実質的に対応してスピンドルの軸方向開口部に全体的に収容された、またはやはり軸方向に揃えられてスピンドルの一端に配置されたバランス調整ヘッドを有する回転部品を含む。バランス調整ヘッドは、回転軸に対して偏心した少なくとも1つの平衡質量体を含み、その位置は調整可能であり、たとえば電気モータによって制御される。
【0003】
一般に、回転部品は、砥石車とワークピースとの間、または砥石車とドレッシング工具(ドレッサ)との間の接触によって放出された超音波音響放出を検出するための、典型的にはバランス調整ヘッドに関連付けられて現実的な理由のために物理的に一体化された、振動センサも担持する。振動センサによって生成された電気信号は、作業サイクルを制御するために(既知の方法で)使用される。
【0004】
回転部品には、バランス調整ヘッドおよび振動センサの動作を管理し、ハードウェア(典型的にはメモリを備えたマイクロコントローラ)およびソフトウェア(マイクロコントローラのメモリ、またはマイクロコントローラによってアクセス可能な外部メモリに記憶されている)からなる、電子機器、または制御システムがある。
【0005】
回転部品、具体的には制御システムと、工作機械のフレームに対して固定位置にあり、工作機械の制御ユニットに接続された処理および制御電子機器との間でアナログおよび/またはデジタル情報を送信する、双方向非接触通信システムが提供される。具体的には、通信システムは、(たとえば振動センサの読み取りを起動/停止するため、または平衡質量体を移動させる電気モータを駆動するため)回転部品の制御システムに制御信号を送信するために処理および制御電子機器によって使用され、診断信号および振動センサの読み取り値を処理および制御電子機器に送信するために、反対方向で使用される。振動センサによって供給されるアナログ電気信号は、回転部品上で処理およびデジタル化されることが可能であり、またはアナログ形式で送信され、処理および制御電子機器内で処理およびデジタル化されることが可能である。第2の選択肢は、より大きなシステムの複雑さを要するが、より大きな柔軟性を提供するため一般的に好ましい。
【0006】
非接触電力伝送システムは、回転部品内に存在する制御システムに必要な電力供給を提供するために提供される。一般に、電力伝送システムは、工作機械のフレームに固定された構成要素内に配置された一次巻線と、回転部品内に配置された二次巻線とを有する空心変圧器を含む。
【0007】
場合により、回転部品の制御システムのソフトウェアを更新する必要があり、メモリ内に含まれるものを完全に上書きするために提供するこの更新操作は、ツーリング操作を必要とするため比較的長く複雑である。具体的には、回転部品の制御システムのソフトウェアを更新するには、回転部品は、制御システムハードウェアを、すなわちケーブルによって、メモリ内に含まれるものを新しいバージョンのソフトウェアで上書きする外部コンピュータに物理的に接続するために、スピンドルから分解されなければならない。上書きが完了すると、回転部品は再組み立てされなければならない。
【0008】
さらに、既知のバランス調整システムでは、バランス調整ヘッドによって提供され得る診断は限定される。具体的には、双方向非接触通信システムによって定義された通信チャネルは、対応する砥石車を通じて機械的処理を実行するためのスピンドルの使用中、振動センサの読み取り値を回転部品から処理および制御電子機器にアナログ形式で送信するためにこのような通信チャネルが係合されるとき、回転部品の制御システムによって生成されたデジタル診断信号を送信するために、使用されることが不可能である。その結果、制御システムは、スピンドルが動作していないときに処理および制御電子機器から来る診断クエリに応答することしかできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許出願公開第0690979号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1870198号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3134980号明細書
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、工作機械の回転スピンドルのバランス調整システムおよび関連する制御方法を提供することであり、このバランス調整システムは、上述の欠点がないと同時に、製造が容易かつ安価である。
【0011】
本発明によれば、添付請求項の請求内容による、工作機械の回転スピンドルのバランス調整システムおよび関連する制御方法が提供される。
【0012】
請求項は、本説明の不可欠な部分を形成する本発明の実施形態を記載する。
【0013】
ここで、本発明は、以下の、実施形態を参照し、非限定的な例として与えられる添付図面を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】砥石車を支持し、バランス調整システムを備えた回転スピンドルが設けられた工作機械の概略部分断面図である。
【
図2】バランス調整システムの制御構成要素および関連するソフトウェアの一部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1では、工作機械、具体的には研削盤が概略的かつ部分的に示され、参照番号1で示されている。
【0016】
工作機械1は、スピンドル3が回転軸4の周りで回転できるように、図示しない軸受を介在させることによってスピンドル3を回転可能に支持するフレーム2を備える。
【0017】
スピンドル3は、対応する砥石車ハブによって砥石車5を支持し、後者は、たとえば円錐クラッチを備える既知の図示されない手段によって、スピンドル3に取り外し可能に固定されている。スピンドル3および砥石車ハブは、工作機械1の回転部品を画定する。スピンドル3は、バランス調整ヘッド7を有するバランス調整システムの回転部品が収容される中央軸方向開口部6を有する。バランス調整ヘッド7は、既知のタイプであり、回転軸4に対して偏心した2つの平衡質量体8と、平衡質量体8の角度位置を調整するための関連する電気モータ9とを備える。振動センサ10(すなわち音響センサ)もまた、バランス調整ヘッド7に関連付けられ、従来、バランス調整システムの一部と見なされている。好適な実施形態では現実的な理由のためバランス調整ヘッド7に関連付けられ、具体的にはこれと一体化された振動センサ10は、回転部品内に異なるように配置されることが可能である。
【0018】
バランス調整ヘッド7および振動センサ10を有するバランス調整システムは、典型的に、2つの機能を有する。砥石車5が加工を実行するために実際に使用される前に砥石車5が交換されるたびに、および砥石車の寿命の間に必要なときまたは適切と思われるときにいつでも実行される操作である、砥石車5をバランス調整すること、ならびにバランス調整ヘッド7に関連付けられた振動センサ10を通じて監視するプロセスを実行すること。
【0019】
この点に関して、スピンドル3は製造業者によってバランス調整されるが、これに実装された砥石車5は典型的にバランス調整されず、その寿命の間、砥石車5の不平衡は変化することに留意することが重要である。したがって、必要なときはいつでもバランス調整ヘッド7が砥石車5の不平衡を直ちに修正できるように、砥石車5と一体のバランス調整ヘッド7を有することは、工作機械1の生産性およびワークピースの品質に対して大きな影響を及ぼす。
【0020】
バランス調整システムは、回転部品を制御するための制御システム11を備え、これはバランス調整ヘッド7および関連する振動センサ10の動作を監視し、ハードウェア12(典型的にはメモリを備えたマイクロコントローラ)およびソフトウェア13からなり、後者はマイクロコントローラのメモリ内に記憶されている。
【0021】
バランス調整システムはまた、工作機械1のフレーム2によって支持され、工作機械1の制御ユニット20に接続された処理および制御電子機器15を有する固定部品も含む。
【0022】
バランス調整システムの回転部品と固定部品との間に双方向非接触通信システム14が設けられ、通信システムは、アナログおよびデジタル情報を送信するために、制御システム11と処理および制御電子機器15との間の通信を確立するのに適している。通信システム14は、好ましくは光学式であり、工作機械1のフレーム2に結合され、電気ケーブル(図示せず)によって処理および制御電子機器15に接続された、固定部品内の第1の送受信装置16と、第1の送受信装置16に面し、軸方向開口部6内に収容されたコイル状電気ケーブルによって制御システム11に接続された回転部品内の第2の送受信装置17とを備える。
【0023】
通信システム14は、たとえば、前述の欧州特許出願公開第0690979号明細書に記載された代替案のうちの1つに従って、既知の方法で作成され、ここでは詳細に示されない。
【0024】
通信システム14は、(たとえば振動センサ10の読み取りを起動/停止するため、または平衡質量体8を移動させる電気モータ9を駆動するため)回転部品の制御システム11にデジタル制御信号を送信するために処理および制御電子機器15によって使用され、処理および制御電子機器15に、デジタル診断信号、および振動センサ10の一般にアナログ形式の読み取り値を送信するために、回転部品の制御システム11によって、反対方向で使用される。
【0025】
回転部品の制御システム11に必要な電力供給を提供するために、無線電力伝送システムが提供される(一般に通信システム14と一体化されている)。一般に、電力伝送システムは、(たとえば、第1の送受信装置16に一体化された)工作機械1のフレーム2に固定された構成要素内に配置された一次巻線と、(たとえば、第2の送受信装置17に一体化された)スピンドル3に接続された回転部品内に配置された二次巻線とを有する空心変圧器を備える。
【0026】
図2に示されるように、制御システム11のソフトウェア13は、サービスアプリケーション18および管理アプリケーション19を備え、これらの両方は、互いに独立して通信システム14によって処理および制御電子機器15とインターフェースするように構成されている。サービスアプリケーション18は、回転部品、具体的には制御システム11が電力供給を受け取る(すなわち、オンになっている)ときにのみ限られた数のタスクを実行するように構成されており、その一方で(バランス調整ヘッド7のファームウェアを構成する)管理アプリケーション19は、通常動作中に、バランス調整ヘッド7および関連する振動センサ10の全ての管理を実行するように構成されている。具体的には、制御システム11が通電されているか、または中断後、もしくは電力の不在期間の後に電力供給を受け取るとき(つまりオンになったとき)、サービスアプリケーション18のみが自動的に起動し、処理および制御電子機器15から受信した命令に従って、バランス調整システムの通常動作を開始するかまたはソフトウェア更新を実行するために必要なステップを実行するように構成されている。具体的には、バランス調整システムは正常に動作しなければならず、次いでサービスアプリケーション18は、管理アプリケーション19を起動し、次にオンになるまで停止する。反対に、ソフトウェア更新を実行する必要がある場合、サービスアプリケーション18は、管理アプリケーション19を起動せず、処理および制御電子機器15コードから(通信システム14を通じて)コードパケットを受信する準備をする。サービスアプリケーション18は、管理アプリケーション19の以前の既存バージョンを上書きすることによって、ハードウェア12のメモリにコードパケットを書き込み、管理アプリケーション19は明らかに、更新の完了まで起動することができない。より具体的には、更新が完了すると、サービスアプリケーション18は、管理アプリケーション19を起動した後に停止することができるか、または制御システム11をオフにすることができる。
【0027】
処理中に砥石車5がワークピースと接触している機械加工の間、または砥石車5がドレッシング工具(ドレッサ)と接触している砥石車5のメンテナンスの間、制御システム11のソフトウェアの管理アプリケーション19は、好ましくはアナログ形式で、振動センサ10の読み取り値を連続的に送信するために、通信システム14を使用する。同時に、管理アプリケーション19は、回転部品内、たとえばバランス調整ヘッド7内、および/またはハードウェア12内、および/または第2の送受信装置17内に存在する1つ以上のセンサ(たとえば、回転部品の温度を検出する1つ以上の温度センサ)によって、回転部品の1つ以上のパラメータの現在値を周期的に読み取り、パラメータ(または複数のパラメータ)の現在値が許容値の範囲内にあるか否かをチェックする。少なくとも1つのパラメータ(たとえば、回転部品の温度値)の現在値が対応する許容値の範囲から著しく外れている場合(たとえば、検出温度が高すぎる場合)、管理アプリケーション19は、ハードウェア12のメモリ内に検出された異常の記録を記憶し、振動センサ10の読み取り値の送信を中断する。振動センサ10の読み取りが中断されると、処理および制御電子機器15は警報を生成し、関連する制御プログラムの規定に基づいて進行中の動作を直ちに停止することを決定することができる工作機械1の制御ユニット20にこれを送信する。加えて、処理および制御電子機器15は、回転部品の制御システム11、より具体的には管理アプリケーション19に、振動センサ10のアナログ読み取りを再開するように要求する。処理および制御電子機器15からのこの要求に応答して、管理アプリケーション19は、振動センサ10のアナログ読み取りは再開せず、記録されたばかりの異常をデジタル形式で通信するようにプログラムされ、その結果、振動センサ10のアナログ読み取りが中断され、その後、進め方の最終決定を処理および制御電子機器15に委ねる。
【0028】
これまでに説明された内容は、振動センサ10の読み取り値がアナログ形式で送信される好適な場合を参照している。一方、振動センサ10の読み取り値が回転部品内で処理およびデジタル化され、処理および制御電子機器15にデジタル送信される場合、この送信を、異常が検出されるとすぐにこれを特定するデジタル信号に関連付けることが可能である。したがって、この場合、振動センサ10の読み取り値の送信は中断されず、ハードウェア12のメモリに異常の記録を書き込むことは任意選択的であり、これを記録することは、後続の処理にとって依然として有用であり得る。
【0029】
添付図面に示される実施形態では、回転部品の制御システム11は、単一のハードウェア12(すなわち、単一のマイクロコントローラ)を備える。図示されない別の実施形態によれば、回転部品の制御システム11は、物理的に分離され、たとえばBUS通信チャネルによって互いに接続された複数のハードウェア12、典型的には2つまたは3つのハードウェア12(すなわち、2つまたは3つのマイクロコントローラ)を有する、モジュラーアーキテクチャを有する。この場合、制御システム11の全てのハードウェア12は同様の構造を有し、それ自体のサービスアプリケーション18および管理アプリケーション19に分割された同じタイプのソフトウェア13によって制御される。
【0030】
添付図面に示される実施形態では、工作機械1のスピンドル3は、単一の砥石車5を支持する。図示されない別の実施形態によれば、工作機械1のスピンドル3は、スピンドル3の2つの対向する端部に配置された2つの砥石車5を支持する。
【0031】
添付図面に示される実施形態では、バランス調整システムは、単一のバランス調整ヘッド7を有する回転部品を備え、図示されない別の実施形態によれば、バランス調整システムの回転部品は、いくつかのバランス調整ヘッド7を備える。たとえば、単一の砥石車5または2つの異なる砥石車5を備える実施形態では、スピンドル3の2つの対向する端部に2つのバランス調整ヘッド7が配置されることが可能である。
【0032】
前述のように、バランス調整ヘッド7は、砥石車5内に存在する不平衡を補償するように、スピンドル3の回転軸4の周りを回転することができる、たとえば同一平面上の質量体など、2つの平衡質量体8を備えている。1つの平面内の不平衡を修正するだけで十分な場合、1つのバランス調整ヘッド7で十分である。場合によっては、スピンドル3の両側の不平衡を修正する必要があり、したがって、適切に調整されてスピンドル3の両端に配置された、2つのバランス調整ヘッド7を使用する必要がある。単一のバランス調整ヘッド7の使用は、2つの平衡質量体8を操縦することを伴い、2つのバランス調整ヘッド7の使用は、4つの平衡質量体8(各バランス調整ヘッド7に2つ)を操縦することを伴う。
【0033】
砥石車5をバランス調整するには、基本的に、発見的戦略および決定論的戦略の2つの戦略がある。発見的戦略は、不平衡が解消されるまで、または不平衡が所定の閾値を下回るまで、アクションの実行、結果の観察、および次のアクションの計画に基づいており、不平衡は、既知の方法で工作機械1のフレーム2に接続された、図示されない、少なくとも1つの特定の振動センサ(低周波)によって検出される。とられたアクション、たとえば平衡質量体8の特定の運動が不平衡の低減の方向に進む場合、これは同じ方向に進行し、そうでなければ異なるアクションが行われる。決定論的戦略は、不平衡ベクトル、したがってこれを相殺するためにバランス調整ヘッド7(または複数のバランス調整ヘッド7)の平衡質量体8がとらなければならない位置の計算に基づいている。このタイプの戦略を実施するために、バランス調整ヘッド7の平衡質量体8の位置、たとえば角度位置の正確な知識が必要とされ、これは、適切な位置センサまたはその他の装置、たとえば角度エンコーダを使用することによって取得されることが可能である。
【0034】
発見的戦略が使用される場合、バランス調整ヘッド7内の位置センサまたはエンコーダは必要ではないが、バランス調整ヘッド7の平衡質量体8が回転部品上の不平衡をゼロにさせるような位置にあるときを検出することが可能な「中立位置」センサ、または「ホーム」センサが有用である。
【0035】
2つの戦略は、たとえば、不平衡を実質的に低減するために決定論的タイプの戦略が採用される第1の段階と、発見的タイプの戦略が残りの不平衡をさらに低減させ、実質的に解消させる第2の改善段階とを含むバランス調整プロセスにおいて、相互に組み合わせられることが可能である。
【0036】
両方の可能な戦略を採用することによって、より多くのバランス調整ヘッド7、たとえば2つのバランス調整ヘッドを駆動することが可能な制御システム11は、システムをより柔軟にし、特定の用途の需要に容易に適合できるようにする。
【0037】
回転部品の制御システム11の制御下で同じバランス調整ヘッド7の平衡質量体8を移動させる電気モータ9を駆動する2つの主な方法がある。より具体的には、2つの平衡質量体8は、同時にまたは交互に、すなわち一度に1つずつ、移動することができる。用途が同じスピンドル3上に2つのバランス調整ヘッド7を有する回転部品を有する場合、同じ原理が適用され、つまり2つのバランス調整ヘッド7が、制御システム11によって同時にまたは交互に駆動されることが可能である。使用される組合せに応じて、1つ以上の平衡質量体8は、最小1から最大4まで、同時に移動することができる。
【0038】
本発明によるバランス調整システムの追加の態様は、帯域幅および利得を容易に変化させる可能性にあり、これは、振動センサ10によって供給されるアナログ信号を処理する処理および制御電子機器15のアプリケーションプログラムの構成を簡略化し、その有効性を高める。
【0039】
本発明によるバランス調整システムは、図に概略的に示され、これまでに説明された内容に関して、異なるように具現化されることが可能である。制御システム11は、たとえば、コイル状電気ケーブルによってバランス調整ヘッド7に接続された第2の送受信装置17内に部分的にまたは完全に一体化されるか、またはこれと一体化されることが可能である。異なる代替案は、一体型のピースとして回転部品を実現することにあり、つまり、この場合、第2の送受信装置17、制御システム11、およびバランス調整ヘッド7は、単一の要素または互いにしっかり接続された複数の要素の一部であり、コイル状電気ケーブルはない。
【0040】
既に上述されたように、単一のピースで実現され得る本発明によるバランス調整システムの回転部品は、スピンドル3の軸方向開口部6内に収容される代わりに、スピンドル3の一端に配置されることも可能である。
【0041】
図示されない本発明の別の実施形態によれば、工作機械1のスピンドル3は、砥石車5とは異なる回転工具を実装することができる。
【0042】
本明細書に記載される実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく、互いに組み合わせられることが可能である。
【0043】
上述の制御方法は、多くの利点を有する。
【0044】
第一に、上述の制御方法は、機械部品を分解および再組み立てし、ケーブルおよび適切なコネクタを使用してこれらを電気的に接続および切断するために、オペレータによる物理的介入なしにソフトウェア13の更新が実行されるので、回転部品の制御システム11のソフトウェア13を簡単かつ迅速な方法で更新することを可能にする。言い換えると、(バランス調整ヘッド7のファームウェアである)管理アプリケーション19は、オペレータによる物理的介入、より具体的には、更新のプロセスを必然的に大幅に遅くし、結果的に工作機械が動作する可能性のない期間を長くする、潜在的に複雑で繊細な介入を必要とせずに、処理および制御電子機器15によって直接更新されることが可能である。この点に関して、サービスアプリケーション18は、2つの単純で迅速なタスクを実行するだけなので、いかなるタイプの更新も必要とせず、サービスアプリケーション18が効果的であることで十分、つまり2つの上述のタスクを正しく実行することで十分なので、サービスアプリケーション18をより速くおよび/またはより効率的に作成することに実際の利点はないことに留意することが重要である。当然ながら、必要な場合には、サービスアプリケーション18は、ハードウェア12を外部コンピュータに物理的に接続するために、ハードウェア12を分解することによって、いずれの場合も更新されることが可能である。
【0045】
常にアクティブであり、したがって回転部品の制御システム11、および結果的にスピンドル3および/または砥石車5を損傷する可能性のある故障または環境現象の発生を直ちに伝達することができる診断機能を有することで、アプリケーションおよび工作機械1の信頼性を高める。故障および潜在的な問題の発生を直ちに知ることで、スピンドル3および/または砥石車5に対する深刻な損傷を防止することができる。たとえばスピンドル3の内部の温度の上昇など、システムに対する損傷を引き起こす可能性のある環境変化がある場合、この情報の処理および制御電子機器15への迅速な伝達により、工作機械1の制御ユニット20は、損傷を防止するためのアクションを起こすことができる。
【0046】
最後に、上述の制御方法の実施は、2つのアプリケーション18および19で構成されたソフトウェア13が、既知のバランス調整システムで通常採用されるものに対して追加のまたはより性能の高いハードウェアを必要としないので、コストの増加を伴わない。
【0047】
ハードウェア(たとえばマイクロコントローラ)およびソフトウェアを有する固定制御システムは、固定部品内に、たとえば処理および制御電子機器15内に提供されてもよく、このようなソフトウェアは、回転部品の制御システム11内のソフトウェア13の上述のサービスおよび管理アプリケーション18および19のうちの1つと同様の特徴および動作方法を有するサービスアプリケーションおよび管理アプリケーションを含み得る。