(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】マイクロエマルション組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 9/107 20060101AFI20241009BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241009BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241009BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241009BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20241009BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20241009BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20241009BHJP
A61P 27/14 20060101ALI20241009BHJP
A61K 31/5575 20060101ALI20241009BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20241009BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
A61K9/107
A61P27/02
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/44
A61P27/04
A61P27/06
A61P27/14
A61K31/5575
A61K31/44
A61K31/05
(21)【出願番号】P 2021572033
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 IT2019000048
(87)【国際公開番号】W WO2020250252
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-05-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511307339
【氏名又は名称】サイファイ エス.ピー.エー.
(73)【特許権者】
【識別番号】502346002
【氏名又は名称】コンシッリョ ナツィオナーレ デッレ リチェルケ
【氏名又は名称原語表記】CONSIGLIO NAZIONALE DELLE RICERCHE
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ソルファト エレーナ
(72)【発明者】
【氏名】アッバテ イレニア
(72)【発明者】
【氏名】ザップッラ クリスティーナ マリア コンチェッタ
(72)【発明者】
【氏名】サントノチート マヌエラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィオラ サンタ
(72)【発明者】
【氏名】デ ファルコ サンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ギウリアーノ フランチェスコ
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0108674(US,A1)
【文献】特表2016-519162(JP,A)
【文献】国際公開第2015/186040(WO,A1)
【文献】特表2018-520093(JP,A)
【文献】特表平11-507038(JP,A)
【文献】特表2016-535777(JP,A)
【文献】特表2015-521182(JP,A)
【文献】AAPS Pharm SciTech,2009年,Vol.10(3),pp.808-819
【文献】European Journal of Pharmaceutical Sciences,2017年,Vol.104,pp.302-314
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
A61K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用薬学的活性成分を水中油型マイクロエマルション中に含む医薬組成物であって、
a)油性成分、1種以上の界面活性剤、及び1種以上の補助界面活性剤を含む脂質相と、
b)1種以上の界面活性剤、及び1種以上の補助界面活性剤を含む水性相と
を含み、
前記薬学的活性成分は眼科用薬剤であり、
前記マイクロエマルションは、
i)油成分、1種以上の界面活性剤及び1種以上の補助界面活性剤を含む脂質相を調製する工程、及び
ii)1種以上の界面活性剤及び1種以上の補助界面活性剤を含む水性相を調製する工程、
ここで、前記脂質相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量と、前記水性相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量との重量/体積比は2~10であり、
前記脂質相中の油成分の量と、前記水性相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量との重量/体積比は0.2~1.0であり、
及び
iii)脂質相を水性相を組み合わせてマイクロエマルション中の平均粒子サイズが30nm未満である水中油型マイクロエマルションを形成する工程、を含む方法によって調製され、
ここで、1種以上の界面活性剤は、Tween80及びKolliphor RH40から選択され、1種以上の補助界面活性剤は、プロピレングリコールであり、
これにより、得られた組成物は水中油型マイクロエマルションであり、
得られた水中油型マイクロエマルションにおいて、平均粒子サイズが30nm未満である医薬組成物。
【請求項2】
得られたマイクロエマルションの中の粒子のサイズ分布が15nm±10nmである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
多分散性指数(PDI)が、0.02~0.380(0.02及び0.380を含む)、若しくは0.02~0.2(0.02及び0.2を含む)、若しくは0.02~0.15(0.02及び0.15を含む)の範囲内にあるか、又は0.2未満、若しくは0.12未満、若しくは0.1未満である請求項1又は請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記脂質相において、前記油性成分と、前記界面活性剤及び補助界面活性剤との重量/体積比が、0.07~1.2(0.07及び1.2を含む)、又は0.1~1(0.1及び1を含む)である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記組成物の0.4~4.0%(w/v)(0.4%及び4.0%を含む)の量の油成分と、
前記組成物の4.0%~36.0%(w/v)(4.0%及び36.0%を含む)の量の前記脂質相の1種以上の界面活性剤及び補助界面活性剤と、
前記組成物の1.66%~4.15%(w/v)(1.66%及び4.15%を含む)の量の前記水性相の1種以上の界面活性剤及び補助界面活性剤と
を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
植物油若しくは動物油、又は合成鉱油の1種以上から選択される油を含む請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記油が、大豆油、トウモロコシ油、アマニ油、ヒマワリ種子油、オキアミ油、タラ肝油、魚油、アボカド油、アーモンド油、ババス油、ボラージ油、キャロブ油、カシューナッツ油、ブドウ種子油、ヤシ油、コメヌカ油、ヒマシ油、麻の実油、ホホバ油、ピーナッツ油、ケシ種子油、ゴマ油、クルミ油、オリーブ油、小麦胚芽油、アルガン油、綿実油、ブラックカラント種子油、及び10%超の割合でPUFAを含む油から選択される植物油又は動物油である請求項
6に記載の組成物。
【請求項8】
前記油が、中鎖脂肪酸及び長鎖脂肪酸のエステル、並びに中鎖及び長鎖のトリグリセリドから選択される合成由来の鉱油である請求項
6に記載の組成物。
【請求項9】
1種以上の薬学的活性成分を含み、前記
組成物が、眼科障害を治療するためのものである請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記障害が、ドライアイ、黄斑変性症、緑内障、感染症、炎症、アレルギー及び糖尿病性網膜症から選択される請求項
9に記載の組成物。
【請求項11】
前記活性成分が、プロスタグランジン誘導体、血管新生阻害剤、及び抗酸化剤である請求項
8から請求項
10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記活性成分が、ラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロスト、ウノプロストン、並びにその薬学的に許容できる誘導体、水和物、溶媒和物、代謝物及び塩、又はその多形結晶体から選択されるプロスタグランジン誘導体である請求項
11に記載の組成物。
【請求項13】
前記活性成分が、ソラフェニブ、ソラフェニブトシル酸塩、レゴラフェニブ、レゴラフェニブトシル酸塩、レゴラフェニブイセチオン酸塩、レゴラフェニブエチルスルホン酸塩、アプレミラスト、ラドチニブ、スピロノラクトン、並びにその薬学的に許容できる誘導体、水和物、溶媒和物、代謝物及び塩、又はその多形結晶体から選択される血管新生阻害剤である請求項
11に記載の組成物。
【請求項14】
前記活性成分が、ノルジヒドログアヤレチン酸、meso-ノルジヒドログアヤレチン酸(マソプロコール)並びにその薬学的に許容できる誘導体、水和物、溶媒和物、代謝物及び塩、又はその多形結晶体から選択される抗酸化剤である請求項
11に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、1種以上の活性成分を0.01~50mg/ml(0.01mg/ml及び50mg/mlを含む)、又は0.01~30mg/mlの濃度で含む請求項1から請求項
14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
マイクロエマルションの調製方法であって、
a)油成分、及び1種以上の界面活性剤、及び1種以上の補助界面活性剤を含む脂質相を調製する工程と、
b)1種以上の界面活性剤、及び1種以上の補助界面活性剤を含む水性相と、
c)脂質相を前記水性相と合わせて、平均粒子サイズが30nm未満である水中油型マイクロエマルションを形成する工程と
を含み、
ここで、1種以上の界面活性剤は、Tween80及びKolliphor RH40から選択され、1種以上の補助界面活性剤は、プロピレングリコールであり、
前記脂質相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量と、前記水性相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量との重量/体積比は2~10であり、
前記脂質相中の油成分の量と、前記水性相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量との重量/体積比は0.2~1.0である方法。
【請求項17】
工程c)が、前記脂質相を前記水性相で滴定することを含む請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
得られたマイクロエマルションの中の粒子のサイズ分布が15nm±10nmであり、滴定速度が下記式で記述され、
V
tit=k×(v
tot/1000ml)
前記式中、V
tit=滴定速度(単位:ml×min-1)、k=2ml×min-1、及びV
tot=配合物の全量(単位:ml)である請求項
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
医薬組成物を配合するための水中油型マイクロエマルションが提供される。このマイクロエマルションは、30nm未満のサイズの分散粒子を含む。このマイクロエマルションは、眼科領域の適応症に有利である。
【背景技術】
【0002】
治療への応用に有用な薬学的活性物質は、一般的に溶解性が低く、また水溶液中では不安定である。これらの物質は、しばしばエマルションに配合される。眼科分野で難溶性の活性成分の供給システムを構築するためにマイクロエマルションを利用した最初の例の1つは、Siebenbrodt及びKeipertの研究に代表される(Siebenbrodt I、Keipert S、Poloxamer - Systems as Potential Ophthalmics - II. Microemulsions、Eur.J.Pharm.Biopharm、1993、39:25-30)。著者らは、トリアセチン溶液中の非イオン性高分子界面活性剤(ポロキサマー)と補助界面活性剤としてのプロピレングリコールをベースにしたマイクロエマルションについて、活性成分(インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム及びクロラムフェニコール)等の難水溶性成分と水とを用いて検討し、界面活性剤濃度15%、プロピレングリコール濃度40%の場合、自発的に安定したマイクロエマルションを得ている。
【0003】
しかしながら、多くのエマルションは安定ではなく、かつ/又は活性物質のバイオアベイラビリティが低い。化学的安定性、生物学的安全性、及び有利なバイオアベイラビリティプロファイルを特徴とする活性物質の配合物が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Siebenbrodt I、Keipert S、Poloxamer - Systems as Potential Ophthalmics - II. Microemulsions、Eur.J.Pharm.Biopharm、1993、39:25-30
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
薬学的活性化合物、特に水溶解度の低い化合物を配合(製剤化)するための水中油型マイクロエマルションが提供される。このエマルションは、様々な経路での投与及び様々な用途のために配合することができ、特に眼科用途にとって有利である。薬理学的活性成分を含むエマルションも提供される。本明細書で提供されるマイクロエマルションは、安定性が上昇しており、室温での保存を含めて長期保存が可能である。組み込まれた活性成分が比較的不安定である場合、マイクロエマルションに配合することで、その構造的完全性を時間的に延長することができる。本発明のエマルションは、安定性が高められているだけでなく、液体剤形中の難水溶性薬物のバイオアベイラビリティを高める。
【0006】
従って、任意の薬学的活性化合物、特に水性組成物に溶解しない化合物を投与するためのマイクロエマルションが提供される。このマイクロエマルションは、経口及び非経口を含む任意の経路で投与されるように調製することができ、特に、活性化合物を目に投与するのに適しており、ドライアイ及び加齢黄斑変性症(AMD)等の障害を治療するための眼科用化合物を含む。当該マイクロエマルションは、水性相と脂質(親油性)相に特定の比率の界面活性剤を組み合わせて調製され、一般的には、各相に2種の界面活性剤(界面活性剤及び補助界面活性剤(共界面活性剤))が含まれるが、これに限定されない。水性相と親油性相とが組み合わされると、結果としてマイクロエマルションが形成される。得られたマイクロエマルションは、平均30nm未満、一般的には15nm以下の非常に小さな粒子と、一般的には約15±10nmの非常に狭い粒子サイズの分布を有する。当該エマルションの得られた特性の一部として、従来技術の同様のエマルションと比較して、熱安定性が向上し、当該エマルションに配合されたあらゆる薬剤のバイオアベイラビリティが高くなる。
【0007】
本明細書で提供されるマイクロエマルションは、油性成分並びに界面活性剤(複数種可)及び補助界面活性剤(複数種可)を含む脂質相と、同じく界面活性剤(複数種可)及び補助界面活性剤(複数種可)を含む水性相とから製造される。小さな粒子サイズを含む有利な特性を達成するためには、以下の基準が必要である。
1)マイクロエマルションを形成する際に、脂質相中の界面活性剤/補助界面活性剤と水性相中の界面活性剤/補助界面活性剤との重量/体積比が、2~10、例えば2.2~9.8又は2.4~8.6であること、及び
2)脂質相の油性成分と水性相中の界面活性剤/補助界面活性剤との重量/体積比が0.2~1.0、例えば0.22~0.98又は0.24~0.96であること、及び
3)脂質相において、油性成分と脂質相中の界面活性剤/補助界面活性剤の混合物との重量/体積比が、0.05~1.4、例えば0.07~1.2又は0.1~1であること。
【0008】
これらの基準のうち、少なくとも1)及び2)が満たされると、得られたマイクロエマルションは、粒子サイズが小さく、結果として高い熱力学的安定性を持つ等、有利な特性を示す。
【0009】
このマイクロエマルションは、活性のある低分子薬剤等の活性物質を眼科領域の適応症用に配合するために使用される。このマイクロエマルションは、経口投与又は他の投与経路用に活性物質を配合するためにも使用することができる。
【0010】
界面活性剤/補助界面活性剤はすべて同じであることができるため、得られるマイクロエマルションは1つの単一の界面活性剤を含有する。しかしながら、一般には、マイクロエマルションを調製する際には、各相は少なくとも1種の界面活性剤と、この界面活性剤とは異なる1種の補助界面活性剤とを含有する。得られるマイクロエマルションが1種の界面活性剤及び1種の補助界面活性剤を有するように、両方の相が同じ界面活性剤及び補助界面活性剤を含有することができる。他の実施形態では、界面活性剤/補助界面活性剤のうちの2種又は3種が脂質相及び水性相で同じであることができ、結果として、得られるマイクロエマルションが2種又は3種の異なる界面活性剤を含有するようにすることができ、又はすべてが異なることができ、結果として、得られるマイクロエマルションが4種の異なる界面活性剤を含有するようにすることができる。当該マイクロエマルションは、マイクロエマルションを製造する際に、いずれかの相に1種以上の界面活性剤及び1種の補助界面活性剤を含むことができる。このように、界面活性剤/補助界面活性剤のうち2種又は3種が脂質相と水性相で同じであることができ、結果として、得られるマイクロエマルションが2種又は3種の異なる界面活性剤を含むことができ、又はすべてが異なることができ、結果として、得られるマイクロエマルションが4種の異なる界面活性剤を含有するようにすることができる。当該マイクロエマルションは、マイクロエマルションを製造する際に、いずれかの相に3種以上の界面活性剤/補助界面活性剤を含有することができる。
【0011】
界面活性剤(複数種可)/補助界面活性剤(複数種可)は、2つの相で異なることができるので、第1の例では、得られるマイクロエマルションは、両方の相で同じ最低1種の補助界面活性剤と、2つの相のそれぞれで異なる界面活性剤とを含有することができる。第2の例では、脂質相は2種の異なる界面活性剤を含有することができ、そのうちの1つは水性相に含まれるものと同じであることができる。従って、例えば、成分としての界面活性剤及び補助界面活性剤は、次のようになることができる。
【0012】
【0013】
本明細書に記載されている特性を持つマイクロエマルションを製造するためには、界面活性剤及び補助界面活性剤の量は、本明細書に記載されているような比率に固執しなければならない。小さい粒子サイズ及び狭い粒子サイズ分布を含む有利な特性を有するマイクロエマルションをもたらすのは、上述のような、特に1)及び2)のような記載された比率である。界面活性剤/補助界面活性剤は、一般的に、生体適合性があり、目に導入するのに適した非イオン性界面活性剤である。
【0014】
例示的な実施形態では、当該マイクロエマルションは、脂質相からの0.4~4.0%(w/v)の天然植物油等の油性成分、得られたマイクロエマルションの4.0%~36.0%(w/v)の脂質相からの界面活性剤/補助界面活性剤、及び得られたマイクロエマルションの1.66%~4.15%(w/v)の水性相からの界面活性剤/補助界面活性剤で構成される。当該組成物の残りの成分は、水等の極性成分又は水性成分、活性化合物(複数種可)、及び医薬組成物に含まれる他の成分、例えばガム等の増粘剤、浸透圧(張度)調整剤、及びpHを約5.0若しくは約8又は5.0~8の間(5.0及び8を含む)、例えばpH5.4若しくは7.5、又は6~7に調整するための生体適合性のある酸である。活性成分は、得られたマイクロエマルションの約5%w/v(0.001mg/ml~50mg/ml)まで含まれることができる。
【0015】
マイクロエマルションであり、水性媒体に難溶性である医薬剤等の活性成分を含有する医薬組成物が提供される。薬学的活性化合物は、眼科用のものを含む。活性化合物の量は、その化合物、及びそれが使用される適応症に依存する。例示的なその範囲は、0.001mg/ml~50mg/ml、又は0.01mg/ml~50mg/ml、例えば0.01mg/ml~30mg/mlである。
【0016】
当該医薬組成物は、a)油性成分、及び1種以上の界面活性剤、及び1種以上の補助界面活性剤を含む脂質相と、b)1種以上の界面活性剤、及び1種以上の補助界面活性剤を含む水性相とを含有し、脂質相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量と、水性相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量との重量/体積比が2~10であり、脂質相中の油成分の量と、水性相中の界面活性剤(複数種可)及び補助界面活性剤(複数種可)の量との重量/体積比が0.2~1.0であり、得られた水中油型マイクロエマルションにおいて、平均粒子サイズは30nm未満である。この組成物は、任意に活性成分、例えば、眼科用活性成分を有する。各相の比率と界面活性剤(複数種可)/補助界面活性剤(複数種可)とにより、得られるマイクロエマルション組成物は狭いサイズ(粒度)分布を有しており、一般に、得られるマイクロエマルションにおける粒子のサイズ分布は15nm±10nmである。多分散性指数(PDI)は、0.02~0.380(0.02及び0.380を含む)、若しくは0.02~0.2(0.02及び0.2を含む)、若しくは0.02~0.15(0.02及び0.15を含む)の範囲内にあるか、又は0.2未満、若しくは0.12未満、若しくは0.1未満である。いくつかの実施形態では、脂質相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量と、水性相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量との重量/体積比は、2.2~9.8(2.2及び9.8を含む)、又は2.4~8.6(2.4及び8.6を含む)である。いくつかの実施形態では、脂質相中の油成分の量と、水性相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量との重量/体積比は、0.22~0.98(0.22及び0.98を含む)、又は0.24~0.96(0.24及び0.96を含む)である。いくつかの実施形態では、油性成分と、界面活性剤(複数種可)及び補助界面活性剤(複数種可)との重量/体積比は、0.05~1.4(0.05及び1.4を含む)、例えば0.07~1.2(0.07及び1.2を含む)、又は0.1~1(0.1及び1を含む)である。
【0017】
これらのマイクロエマルション組成物の例としては、組成物の0.4~4.0%(w/v)(0.4%及び4.0%を含む)の量の油成分と、組成物の4.0%~36.0%(w/v)(4.0%及び36.0%を含む)の量の脂質相の界面活性剤(複数種可)及び補助界面活性剤(複数種可)と、組成物の1.66%~4.15%(w/v)(1.66%及び4.15%を含む)の量の水性相の界面活性剤及び補助界面活性剤とを含有するものである。
【0018】
水中油型マイクロエマルション組成物であって、この組成物の0.4~4.0重量/体積(w/v)の量の油成分と、組成物の5.71~40.15% w/v(5.71%及び40.15%を含む)の量の界面活性剤又は界面活性剤(複数種可)と補助界面活性剤(複数種可)の混合物と、組成物の55.85%~93.89% w/v(55.85%及び93.89%を含む)の量の水性成分と、任意に薬学的活性化合物とを含み、この組成物のすべての成分が生体適合性であり、このマイクロエマルション組成物における平均粒子サイズが30nm未満である水中油型マイクロエマルション組成物が提供される。上記のように、粒子サイズの分布は狭く、一般には15nm±10nmである。多分散性指数(PDI)は、0.02~0.380(0.02及び0.380を含む)、若しくは0.02~0.2(0.02及び0.2を含む)、若しくは0.02~0.15(0.02及び0.15を含む)の範囲内にあるか、又は0.2未満、若しくは0.12未満、若しくは0.1未満である。この水中油型マイクロエマルションは、薬学的活性化合物を含有することができる。薬学的活性化合物の量は、その化合物及びその化合物が意図されている適応症に依存することができる。一般に、濃度は、0.001mg/ml~50mg/ml、又は0.01mg/ml~50mg/ml、又は0.01mg~0mg/ml、例えば0.01mg/ml~30mg/mlである。
【0019】
当該水中油型マイクロエマルション組成物は、油性成分、及び1種以上の界面活性剤、及び任意に1種以上の補助界面活性剤を含む脂質相と、1種以上の界面活性剤、及び1種以上の補助界面活性剤を含む水性相とから形成され、脂質相中の界面活性剤(複数種可)及び補助界面活性剤(複数種可)と、水性相中の界面活性剤(複数種可)及び補助界面活性剤(複数種可)との重量/体積比は2~10(2及び10を含む)であり、脂質相の油性成分と、水性相中の界面活性剤(複数種可)及び補助界面活性剤(複数種可)との重量/体積比は0.2~1.0(0.2及び1.0を含む)である。いくつかの実施形態では、脂質相中の界面活性剤(複数種可)及び補助界面活性剤(複数種可)と水性相中の界面活性剤(複数種可)及び補助界面活性剤(複数種可)との重量/体積比は、2.2~9.8(2.2及び9.8を含む)、又は2.4~8.6(2.4及び8.6を含む)であり、脂質相中の油性成分と水性相中の界面活性剤(複数種可)及び補助界面活性剤との重量/体積比は、0.22~0.98(0.22及び0.98を含む)、又は0.24~0.96(0.24及び0.96を含む)である。他の実施形態では、脂質相において、油性成分と界面活性剤(複数種可)及び補助界面活性剤(複数種可)との重量/体積比は、0.05~1.4(0.05及び1.4を含む)であり、例えば0.07~1.2(0.07及び1.2を含む)、又は0.1~1(0.1及び1を含む)である。一般に、各相は1種の界面活性剤及び1種の補助界面活性剤を含有する。本明細書に記載の比率で混合すると、平均粒子サイズが30nm未満のマイクロエマルションが形成される。一般に、粒子は15nm±10nmの狭いサイズ分布を持つ。得られるマイクロエマルションは、一般に、0.02~0.380(0.02及び0.380を含む)、若しくは0.02~0.2(0.02及び0.2を含む)、若しくは0.02~0.15(0.02及び0.15を含む)の範囲内にあるか、又は0.2未満、若しくは0.12未満、若しくは0.1未満である多分散性指数(PDI)を有する。本明細書で提供される組成物には、分散した相の粒子のミセル寸法(micellar dimension)が約15±10nm又は15±10nmであり、多分散性指数(PDI)が0.02~0.380(0.02及び0.380を含む)、若しくは0.02~0.2(0.02及び0.2を含む)、若しくは0.02~0.15(0.02及び0.15を含む)の範囲内にあるか、又は0.380未満であるか、若しくは0.2未満、若しくは0.12未満、若しくは0.1未満であるものが含まれる。
【0020】
本明細書で提供されるすべての組成物は、眼科の状態又は障害等の疾患及び障害の治療のための医薬剤の配合に使用することができる。眼科用の場合、成分は眼に適合するように、又は眼への投与に適するように選択される必要がある。当該組成物において、界面活性剤(複数種可)及び/又は補助界面活性剤(複数種可)のそれぞれは、非イオン性であることができる。すべての組成物において、界面活性剤及び補助界面活性剤のそれぞれのHLBは、8~16(8及び16を含む)であることができ、例えば、界面活性剤及び補助界面活性剤のそれぞれのHLBは、少なくとも10、例えば10~16、又は12~14である。いくつかの実施形態では、当該組成物は、1種の界面活性剤と補助界面活性剤、又は2種の界面活性剤と1種の補助界面活性剤、又は2種の界面活性剤と2種の補助界面活性剤を含有する。いくつかの実施形態では、当該組成物は、得られるマイクロエマルションが1種の界面活性剤、及び一般に1種又は2種の補助界面活性剤を含むように、界面活性剤が同じである脂質及び水性相から形成される。他の実施形態では、各相の界面活性剤は異なる。いくつかの実施形態では、当該組成物は、水性相が界面活性剤及び補助界面活性剤を含有し、脂質相が界面活性剤及び補助界面活性剤を含有する脂質相と水性相から形成される。各相の補助界面活性剤は、同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0021】
一般には、マイクロエマルションを形成する各相は、1種の界面活性剤及び1種の補助界面活性剤を含有する。この界面活性剤及び補助界面活性剤は、同じであってもよいし異なっていてもよい。例えば、1つの実施形態では、脂質相は、界面活性剤/補助界面活性剤としてTween 80/プロピレングリコールを含有し、水性相は、Kolliphor RH40/プロピレングリコールを含有する。
【0022】
界面活性剤は、例えば、ポロキサマー、PEG化脂肪酸、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸誘導体、ポリオキシエチレン、水添ヒマシ油エトキシレート、脂肪酸のグリセロールエステル、PEG化脂肪酸、ポリオキシルヒマシ油界面活性剤、ポロキサマー、アミンオキシド、アルコールエトキシレート(非イオン性)の中から選択することができる。これらの例は、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20;TWEEN 20)、ポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80;TWEEN 80)、及びポリエチレングリコールソルビタンモノパルミテート(ポリソルベート40;MONTANOX 40)である。他の実施形態では、界面活性剤は、ポリオキシル35ヒマシ油(CREMOPHOR EL、KOLLIPHOR EL)、ポリオキシル40水添ヒマシ油(CREMOPHOR RH40;KOLLIPHOR RH40)、PEG40ヒマシ油(ETOCAS 40)、PEG-60水添ヒマシ油(CRODURET 60)、及びポリエチレングリコール15-ヒドロキシステアレート(KOLLIPHOR HS 15)から選択される。
【0023】
界面活性剤は、非イオン性であることができる。例えば、非イオン性界面活性剤は、Pluronic(登録商標)、Cremophor(登録商標)、Kolliphor(登録商標)、ポリソルベート(Tween(商標))、ラウリルジメチルアンミンオキシド、ポリエトキシル化アルコール、ポリオキシルラウリルエーテル、Brij(登録商標)、ポリオキシエチル化ヒマシ油、レシチン、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、脂肪酸のグリセロールエステルから選択することができる。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ヒマシ油又は水添ヒマシ油エトキシレートから選択される。補助界面活性剤は、グリセロール及び/又はプロピレングリコールを含む。例えば、各相は、同じ又は異なる補助界面活性剤を含むことができる。
【0024】
脂質相は油を含有し、この油は、植物油、動物油、又は合成鉱油の1つ以上の中から選択することができる。いくつかの実施形態では、油は、大豆油、トウモロコシ油、アマニ油、ヒマワリ種子油、オキアミ油(クリルオイル)、タラ肝油、魚油、アボカド油、アーモンド油、ババス油、ボラージ油(ルリジサ種子油)、キャロブ油、カシューナッツ油、ブドウ種子油、ヤシ油、コメヌカ油、ヒマシ油、麻の実油、ホホバ油、ピーナッツ油、ケシ種子油、ゴマ油、クルミ油、オリーブ油、小麦胚芽油、アルガン油、綿実油、ブラックカラント種子油、10%超の割合でPUFAを含む油から選択される植物性又は動物性の油である。他の実施形態では、油は、中鎖脂肪酸及び長鎖脂肪酸のエステル、並びに中鎖及び長鎖のトリグリセリドから選択される合成由来の鉱油であることができる。
【0025】
組成物中の他の成分には、等張性剤(浸透圧剤)、安定化剤、抗酸化剤、抗微生物剤、増粘剤、並びに分岐状及び直鎖状のポリマーの1つ以上が含まれる。
【0026】
当該組成物は、1種以上の薬学的活性成分を含むことができる。この1種以上の活性成分は、使用又は保存に適した濃度で存在する。濃度の範囲としては、0.01~50mg/ml(0.01mg/ml及び50mg/mlを含む)、又は0.01~30mg/mlが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
当該組成物は、薬学的活性成分が非極性である場合は脂質相に、又は極性である場合は水性相に薬学的活性成分を用いて配合することができる。例示的な薬学的活性成分は、1種以上の、胃腸薬、鎮痙薬、血糖値調整薬、栄養補助食品/ミネラル/電解質、血小板調整剤、凝固薬、心臓血管薬、α-アドレナリン作動薬/α-アドレナリン拮抗薬/血管拡張剤/動脈血管拡張剤、炭酸脱水酵素阻害剤利尿剤/ループ利尿剤/カリウム保持性利尿剤/チアジド系利尿剤、他の心臓血管薬、β-アドレナリン拮抗薬、カルシウム拮抗薬、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE)、脂質異常症治療薬/HMG CoA還元酵素阻害剤(スタチン系薬剤)、抗真菌剤、皮膚科治療薬、抗ヒスタミン剤、麻酔剤、抗菌剤、ホルモン刺激剤/置換剤/修飾剤(副腎、下垂体及び性ホルモン)、血糖値上昇剤(glycemic agent)、ホルモン抑制剤(副甲状腺)、抗マイコバクテリア剤、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、免疫調節剤、抗炎症剤、鎮痛剤、抗痙攣剤、抗パーキンソン病薬、抗精神病薬、抗うつ剤/抗認知症剤/抗不安薬、抗筋無力症剤/乱用物質治療剤/中枢神経系薬剤、気管支拡張剤/交感神経刺激剤/抗コリン剤/吸入コルチコステロイド/ホスホジエステラーゼ阻害剤/空気感染症、他の呼吸器系薬剤、抗寄生虫剤、抗緑内障眼科剤、他の眼科用薬剤/抗アレルギー眼科用薬剤、眼科用抗炎症剤、プロスタグランジン類似物質及び眼科用プロスタミド、胃酸関連疾患用薬(A02)、消化管機能障害用薬物(A03)、糖尿病に使用される薬物(A10)、ビタミン(A11)、ミネラル剤(A12)、抗血栓剤(B01)、出血抑制剤(B02)、心臓病治療薬(C01)、降圧剤(C02)、利尿剤(C03)、末梢血管拡張剤(C04)、血管保護剤(C05)、β遮断剤(C07)、カルシウム拮抗剤(C08)、レニン・アンギオテンシン系に作用する薬剤(C09)、脂質低下剤(C10)、皮膚科用抗真菌剤(D01)、皮膚軟化剤及び保護剤(D02)、傷害・潰瘍治療剤(D03)、抗ヒスタミン剤を含む鎮痒剤、麻酔剤(D04)、抗乾癬剤(D05)、皮膚科用の抗生物質及び化学療法剤(D06)、防腐剤及び消毒剤(D08)、下垂体、視床下部ホルモン及び類似物(H01)、全身性コルチコステロイド(H02)、甲状腺療法(H03)、膵臓ホルモン(H04)、恒常性カルシウム(H05)、全身用抗菌剤(J01)、全身用抗真菌薬(anti-mycotic)(J02)、抗マイコバクテリア剤(J04)、全身用抗ウイルス剤(J05)、免疫血清及び免疫グロブリン(J06)、抗腫瘍剤(L01)、内分泌療法(L02)、免疫賦活剤(L03)、免疫抑制剤(L04)、抗炎症剤及び抗リウマチ剤(M01)、関節・筋肉痛用外用剤(M02)、麻酔剤(N01)、鎮痛剤(N02)、抗てんかん剤(N03)、抗パーキンソン病薬(N04)、精神安定剤(N05)、精神賦活剤(N06)、他の神経系薬剤(N07)、鼻腔用調剤(R01)、咽頭洞用調剤(R02)、気道閉塞性障害用薬剤(R03)、咳及び風邪用調剤(R05)、全身用抗ヒスタミン剤(R06)、他の呼吸器系用調剤(R07)、抗感染症剤(S01A)、抗炎症剤(S01B)、抗炎症剤及び抗感染症剤の合剤(S01C)、抗緑内障剤及び縮瞳剤(S01E)、散瞳剤及び調節麻痺剤(S01F)、鬱血除去剤及び抗アレルギー剤(S01G)、局所麻酔剤(S01H)、診断剤(S01J)、手術補助剤(S01K)、眼血管剤(S01L)、抗感染症剤(S03A)、コルチコステロイド(S03B)、並びにコルチコステロイドと抗感染症剤の併用(S03C)である。
【0028】
特定の実施形態では、当該組成物は眼科投与用に配合(処方)され、眼の状態又は障害を治療するための1種以上の活性成分を含有する。そのような状態及び障害としては、ドライアイ、黄斑変性症、緑内障、感染症、炎症、アレルギー及び糖尿病性網膜症が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な薬学的活性剤は、プロスタグランジン阻害剤、血管新生阻害剤、及び/又は抗酸化剤である。このような薬剤としては、ラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロスト、ウノプロストン、並びにその薬学的に許容できる誘導体、水和物、溶媒和物、代謝物及び塩、若しくはその多形結晶体から選択されるプロスタグランジン阻害剤、並びに/又はソラフェニブ、ソラフェニブトシル酸塩、レゴラフェニブ、レゴラフェニブトシル酸塩、レゴラフェニブイセチオン酸塩、レゴラフェニブエチルスルホン酸塩、アプレミラスト、ラドチニブ(radotinib)、スピロノラクトン、並びにその薬学的に許容できる誘導体、水和物、溶媒和物、代謝物及び塩、若しくはその多形結晶体から選択される血管新生阻害剤、並びに/又はノルジヒドログアヤレチン酸、meso-ノルジヒドログアヤレチン酸(マソプロコール)並びにその薬学的に許容できる誘導体、水和物、溶媒和物、代謝物及び塩、若しくはその多形結晶体から選択される抗酸化剤である。
【0029】
当該組成物は、適切な経路で当該組成物を投与することにより、疾患及び障害の治療方法に使用することができる。本明細書で提供される組成物は、眼科障害の治療に使用することができる。眼に組成物を投与することによる、眼科障害の治療方法が提供される。眼科障害又は目の状態としては、ドライアイ、黄斑変性症、緑内障、感染症、炎症、アレルギー、及び糖尿病性網膜症が挙げられるが、これらに限定されない。このような使用のための医薬剤としては、例えば、マソプロコール、ソラフェニブトシル酸塩、及びラタノプロストが挙げられる。
【0030】
当該マイクロエマルション組成物の調製方法が提供される。1つの方法は、a)脂質相を調製する工程であって、界面活性剤/補助界面活性剤の混合物が油に可溶化され、各油部に対して1~10部の上記混合物が混合される工程と、b)水性相を調製する工程であって、界面活性剤及び/又は補助界面活性剤の1つ以上が水に可溶化される工程と、c)上記脂質相を上記水性相で滴定してマイクロエマルションを得る工程であって、当該マイクロエマルションの0.4~4.0%(w/v)が脂質相の油成分で構成され、当該マイクロエマルションの4.0%~36.0%(w/v)が脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤で構成され、全界面活性剤/補助界面活性剤の1.66%~4.15%(w/v)が水性相の界面活性剤/補助界面活性剤である工程とを含む。別の方法では、a)薬学的活性剤を含むことができる脂質相を調製する工程であって、界面活性剤/補助界面活性剤の混合物が油に可溶化され、各油部に対して1~10部の上記混合物が混合される工程と、b)水性相を調製する工程であって、界面活性剤及び/又は補助界面活性剤の1つ以上が水に可溶化される工程と、c)上記脂質相を上記水性相で滴定してマイクロエマルションを得る工程であって、当該マイクロエマルションの0.4~4.0%(w/v)が脂質相の油性成分で構成され、当該マイクロエマルションの4.0%~36.0%(w/v)が脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤で構成され、当該マイクロエマルションの1.66%~4.15%(w/v)が水性相の界面活性剤/補助界面活性剤で構成される工程とを含む。上記薬学的活性剤は、最終組成物の0.001mg/ml~50mg/ml、若しくは0.01mg/ml~50mg/ml、例えば0.01mg/ml~30mg/ml、又は約0.001mg/ml~50mg/ml、若しくは約0.01mg/ml~50mg/ml、例えば約0.01mg/ml~30mg/mlの量で含まれる。
【0031】
当該組成物に含まれる又は添加される薬学的活性剤には、特定の障害の治療に適したあらゆるものが含まれ、本明細書のこれまで及び以降に記載されているあらゆるものが含まれる。当該方法と一致して、滴定速度は以下の式によって記述される:Vtit=k×(vtot/1000ml)。式中、Vtit=滴定速度(単位:ml×min-1)、k=2ml×min-1、及びVtot=配合物の全量(単位:ml)である。得られるマイクロエマルション組成物は、得られるマイクロエマルション中の分散粒子が30nm以下の平均サイズを有し、一般に粒子のサイズ分布が15nm±10nmであり、かつ/又は多分散性指数(PDI)が0.380未満であるか、若しくは0.01~0.380(0.01及び0.380を含む)、若しくは0.01~0.20(0.01及び0.20を含む)、若しくは0.01~0.15(0.01及び0.15を含む)の範囲内にあるか、若しくは0.2未満、若しくは0.1未満であるものである。これまでに又は以降に記載される方法のいずれかで調製されたマイクロエマルション組成物が提供される。
【0032】
他の方法では、当該マイクロエマルション組成物は、a)油成分及び1種以上の界面活性剤、及び1種以上の補助界面活性剤を含む脂質相を調製する工程と、b)1種以上の界面活性剤、及び1種以上の補助界面活性剤を含む水性相であって、脂質相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量と、水性相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量との重量/体積比は~10であり、脂質相中の油成分の量と、水性相中の界面活性剤(複数種可)及び補助界面活性剤(複数種可)の量との重量/体積比は0.2~1.0である水性相と、次いで、c)脂質相を上記水性相と合わせて、平均粒子サイズが30nm未満である水中油型マイクロエマルションを形成する工程とを含む方法によって調製される。工程c)は、脂質相を水性相で滴定することによって行うことができ、滴定速度は下記式で記述される:Vtit=k×(vtot/1000ml)。式中、Vtit=滴定速度(単位:ml×min-1)、k=2ml×min-1、及びVtot=配合物の全量(単位:ml)である。
【0033】
これらの方法では、脂質相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量と、水性相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量との重量/体積比は、2.2~9.8(2.2及び9.8を含む)、又は2.4~8.6(2.4及び8.6を含む)である。
【0034】
水性相は、1種の界面活性剤及び1種の補助界面活性剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、脂質相中の油成分の量と、水性相中の界面活性剤(複数種可)及び補助界面活性剤(複数種可)の量との重量/体積比は、0.22~0.98(0.22及び0.98を含む)又は0.24~0.96(0.24及び0.96を含む)である。他の実施形態では、脂質相において、油性成分と、界面活性剤(複数種可)及び補助界面活性剤(複数種可)との重量/体積比は、0.05~1.4(0.05及び1.4を含む)である。他の実施形態では、脂質相において、油性成分と界面活性剤(複数種可)及び補助界面活性剤(複数種可)との重量/体積比は、0.07~1.2(0.07及び1.2を含む)、又は0.1~1(0.1及び1を含む)である。得られたマイクロエマルション中の粒子のサイズ分布は、一般に15nm±10nmであり、多分散性指数(PDI)は、0.02~0.380(0.02及び0.380を含む)、若しくは0.02~0.2(0.02及び0.2を含む)、若しくは0.02~0.15(0.02及び0.15を含む)の範囲内にあるか、又は0.2未満、若しくは0.12未満、若しくは0.1未満である。本明細書に記載された方法のいずれかによって調製されたマイクロエマルション組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本明細書で提供されるマイクロエマルションプラットフォームの概略図である。
【
図2】
図2は、本明細書で提供されるマイクロエマルションを調製するためのプロセスの図を描く。
【
図3A】
図3A~
図3Dは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを描く。例えば、
図3Aは、pHデータを示す。
【
図3B】
図3A~
図3Dは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを描く。例えば、
図3Bは、浸透圧(重量モル浸透圧濃度)を描く。
【
図3C】
図3A~
図3Dは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを描く。例えば、
図3Cは、平均粒子分布(サイズ)を描く。
【
図3D】
図3A~
図3Dは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを描く。例えば、
図3Dは、ゼータ電位(pZ)を描く。
【
図4A】
図4A及び
図4Bは、配合物1-(A)及び配合物5-(B)の平均粒子分布図を描く。
図4Aは、配合物1-(A)の平均粒子分布図を描く。
【
図4B】
図4A及び
図4Bは、配合物1-(A)及び配合物5-(B)の平均粒子分布図を描く。
図4Bは、配合物5-(B)の平均サイズ分布図を描く。
【
図5A】
図5A~
図5Dは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物の6ヶ月での安定性データを描く。例えば、
図5Aは、浸透圧データを示す。
【
図5B】
図5A~
図5Dは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物の6ヶ月での安定性データを描く。例えば、
図5Bは、pHデータを描く。
【
図5C】
図5A~
図5Dは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物の6ヶ月での安定性データを描く。例えば、
図5Cは、平均粒子分布(サイズ)を描く。
【
図5D】
図5A~
図5Dは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物の6ヶ月での安定性データを描く。例えば、
図5Dは、ゼータ電位(pZ)を描く。
【
図6A】
図6A~
図6Cは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物の、異なる温度及び異なる時間での平均粒子分布(サイズ)及び多分散性指数(PDI)の安定性データを描く。
図6Aは、25℃における安定性データを描く。
【
図6B】
図6A~
図6Cは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物の、異なる温度及び異なる時間での平均粒子分布(サイズ)及び多分散性指数(PDI)の安定性データを描く。
図6Bは、40℃での安定性データを描く。
【
図6C】
図6A~
図6Cは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物の、異なる温度及び異なる時間での平均粒子分布(サイズ)及び多分散性指数(PDI)の安定性データを描く。
図6Cは、60℃での安定性データを描く。
【
図7A】
図7A~
図7Dは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを描く。例えば、
図7Aは、pHデータを示す。
【
図7B】
図7A~
図7Dは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを描く。例えば、
図7Bは、平均粒子分布(サイズ)を描く。
【
図7C】
図7A~
図7Dは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを描く。例えば、
図7Cは、多分散性指数(PDI)を描く。
【
図7D】
図7A~
図7Dは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを描く。例えば、
図7Dは、ゼータ電位(pZ)を描く。
【
図8A】
図8A~
図8Eは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを描く。例えば、
図8Aは、pHデータを示す。
【
図8B】
図8A~
図8Eは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを描く。例えば、
図8Bは、平均粒子サイズ(サイズ)を描く。
【
図8C】
図8A~
図8Eは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを描く。例えば、
図8Cは、多分散性指数(PDI)を描く。
【
図8D】
図8A~
図8Eは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを描く。例えば、
図8Dは、浸透圧を描く。
【
図8E】
図8A~
図8Eは、本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを描く。例えば、
図8Eは、ゼータ電位(pZ)を描く。
【
図9A】
図9A~
図9Eは、ラタノプロスト等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを示す。例えば、
図9Aは、pHデータを示す。
【
図9B】
図9A~
図9Eは、ラタノプロスト等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを示す。例えば、
図9Bは、浸透圧を描く。
【
図9C】
図9A~
図9Eは、ラタノプロスト等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを示す。例えば、
図9Cは、平均粒子分布(サイズ)を描く。
【
図9D】
図9A~
図9Eは、ラタノプロスト等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを示す。例えば、
図9Dは、ゼータ電位(pZ)を描く。
【
図9E】
図9A~
図9Eは、ラタノプロスト等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物に対して実施されたストレス試験後の安定性データを示す。例えば、
図9Eは、回収率を描く。
【
図10A】
図10A~
図10Eは、ラタノプロスト等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物の24ヶ月での安定性データを描く。例えば、
図10Aは、pHデータを示す。
【
図10B】
図10A~
図10Eは、ラタノプロスト等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物の24ヶ月での安定性データを描く。例えば、
図10Bは、浸透圧を描く。
【
図10C】
図10A~
図10Eは、ラタノプロスト等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物の24ヶ月での安定性データを描く。例えば、
図10Cは、平均粒子分布(サイズ)を描く。
【
図10D】
図10A~
図10Eは、ラタノプロスト等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物の24ヶ月での安定性データを描く。例えば、
図10Dは、ゼータ電位(pZ)を描く。
【
図10E】
図10A~
図10Eは、ラタノプロスト等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物の24ヶ月での安定性データを描く。例えば、
図10Eは、回収率を描く。
【
図11A】
図11A~
図11Dは、ラタノプロスト等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物の、異なる温度及び異なる時間での平均粒子分布(サイズ)及び多分散性指数(PDI)の安定性データを描く。
図11Aは、25℃での安定性データを描く。
【
図11B】
図11A~
図11Dは、ラタノプロスト等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物の、異なる温度及び異なる時間での平均粒子分布(サイズ)及び多分散性指数(PDI)の安定性データを描く。
図11Bは、40℃での安定性データを描く。
【
図11C】
図11A~
図11Dは、ラタノプロスト等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物の、異なる温度及び異なる時間での平均粒子分布(サイズ)及び多分散性指数(PDI)の安定性データを描く。
図11Cは、60℃での安定性データを描く。
【
図11D】
図11A~
図11Dは、ラタノプロスト等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物の、異なる温度及び異なる時間での平均粒子分布(サイズ)及び多分散性指数(PDI)の安定性データを描く。
図11Dは、4℃での安定性データを描く。
【
図12A】
図12A~
図12Eは、マソプロコール等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物の3ヶ月及び9ヶ月での安定性データを示す。例えば、
図12Aは、pHデータを示す。
【
図12B】
図12A~
図12Eは、マソプロコール等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物の3ヶ月及び9ヶ月での安定性データを示す。例えば、
図12Bは、浸透圧を描く。
【
図12C】
図12A~
図12Eは、マソプロコール等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物の3ヶ月及び9ヶ月での安定性データを示す。例えば、
図12Cは、平均粒子分布(サイズ)を描く。
【
図12D】
図12A~
図12Eは、マソプロコール等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物の3ヶ月及び9ヶ月での安定性データを示す。例えば、
図12Dは、ゼータ電位(pZ)を描く。
【
図12E】
図12A~
図12Eは、マソプロコール等の活性成分を含有するマイクロエマルションの例示的な配合物の3ヶ月及び9ヶ月での安定性データを示す。例えば、
図12Eは、回収率を描く。
【
図13A】
図13A~
図13Eは、ソラフェニブトシル酸塩等の活性成分を含有する本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物の、3ヶ月での、異なる条件、25±2℃/60±5%RH及び40±2℃/75±5%RHでの安定性データを描く。例えば、
図13Aは、pHデータを示す。
【
図13B】
図13A~
図13Eは、ソラフェニブトシル酸塩等の活性成分を含有する本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物の、3ヶ月での、異なる条件、25±2℃/60±5%RH及び40±2℃/75±5%RHでの安定性データを描く。例えば、
図13Bは、平均粒子分布(サイズ)を描く。
【
図13C】
図13A~
図13Eは、ソラフェニブトシル酸塩等の活性成分を含有する本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物の、3ヶ月での、異なる条件、25±2℃/60±5%RH及び40±2℃/75±5%RHでの安定性データを描く。例えば、
図13Cは、多分散性指数(PDI)を描く。
【
図13D】
図13A~
図13Eは、ソラフェニブトシル酸塩等の活性成分を含有する本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物の、3ヶ月での、異なる条件、25±2℃/60±5%RH及び40±2℃/75±5%RHでの安定性データを描く。例えば、
図13Dは、ゼータ電位(pZ)を描く。
【
図13E】
図13A~
図13Eは、ソラフェニブトシル酸塩等の活性成分を含有する本明細書で提供されるマイクロエマルションの例示的な配合物の、3ヶ月での、異なる条件、25±2℃/60±5%RH及び40±2℃/75±5%RHでの安定性データを描く。例えば、
図13Eは、回収率を描く。
【
図14】
図14は、ラタノプロスト0.005%の標準溶液(溶液)と比較した、ラタノプロスト0.005%を含有するマイクロエマルション(配合物03)の、局所的な処置(6日間、1日1回、12μl)を行ったEVCラットにおける有効性を描く。統計解析は、スチューデント(Student)t検定を用いて行った。
【
図15A】
図15A及び
図15Bは、マイクロエマルション単独又はマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物1、配合物04、及び配合物6又は配合物06)でIRを誘発する2日前及び1時間前に局所的に前処置し、虚血エピソードの6時間後に犠牲にしたIRラットの網膜におけるTNFa(マウス腫瘍壊死因子-a)及びiNosの遺伝子発現を描く。
図15Aは、配合物1又は配合物04で前処置した後の遺伝子発現データを描く。データは、キャリブレーター(較正の基準)(CTRL NAIVE)に対する倍率変化の平均±SEMを表す。
#p≦0.05、
##p≦0.01 対配合物1。
*p≦0.05、
****p≦0.0001 対CTRL NAIVE。一元配置ANOVAの後、ダネット(Dunnett)の事後検定を実施。
【
図15B】
図15A及び
図15Bは、マイクロエマルション単独又はマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物1、配合物04、及び配合物6又は配合物06)でIRを誘発する2日前及び1時間前に局所的に前処置し、虚血エピソードの6時間後に犠牲にしたIRラットの網膜におけるTNFa(マウス腫瘍壊死因子-a)及びiNosの遺伝子発現を描く。
図15Bは、配合物6又は配合物06で前処置した後の遺伝子発現データを描く。データは、キャリブレーター(CTRL NAIVE)に対する倍率変化の平均±SEMを表す。
#p≦0.05、
##p≦0.01 対配合物6(
図15B)。
*p≦0.05、
****p≦0.0001 対CTRL NAIVE。一元配置ANOVAの後、ダネットの事後検定を行った。
【
図16A】
図16A及び
図16Bは、マイクロエマルション単独又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物2、配合物05、配合物7又は配合物07)でIRを誘発する2日前及び1時間前に局所的に前処置し、虚血エピソードの6時間後に犠牲にしたIRラットの網膜におけるTNFa及びiNosの遺伝子発現を描く。
図16Aは、配合物2又は配合物05で前処置した後の遺伝子発現データを描く。データは、キャリブレーター(CTRL NAIVE)に対する倍率変化の平均±SEMを表す。
#p≦0.05、
##p≦0.01、
###p≦0.001 対配合物2。
*p≦0.05、
***p≦0.001、
****p≦0.0001 対CTRL NAIVE。一元配置ANOVAの後、ダネットの事後検定を行った。
【
図16B】
図16A及び
図16Bは、マイクロエマルション単独又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物2、配合物05、配合物7又は配合物07)でIRを誘発する2日前及び1時間前に局所的に前処置し、虚血エピソードの6時間後に犠牲にしたIRラットの網膜におけるTNFa及びiNosの遺伝子発現を描く。
図16Bは、配合物7又は配合物07で前処置した後の遺伝子発現データを描く。データは、キャリブレーター(CTRL NAIVE)に対する倍率変化の平均±SEMを表す。
#p≦0.05、
##p≦0.01、
###p≦0.001 対配合物7。
*p≦0.05、
***p≦0.001、
****p≦0.0001 対CTRL NAIVE。一元配置ANOVAの後、ダネットの事後検定を行った。
【
図17】
図17は、配合物1又はマソプロコール0.302%を含有する配合物04(配合物04)で、CNVを誘発する前に3日間局所的に前処置し、その後7日間処置したCNVマウスにおける新血管形成領域の分析を描く。データは配合物1に対する平均値±SEMで表されている。
*p=0.0395 対配合物1。配合物1又は配合物04で処置した動物の脈絡膜新生血管(CNV)を代表する画像を横に示す。スケールバーは100μmを表す。
【
図18A】
図18A及び
図18Bは、マイクロエマルション単独又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物2、配合物05、配合物7、配合物07)で、CNVを誘発する前に3日間局所的に前処置し、その後7日間処置したCNVマウスにおける新血管形成領域の分析を描く。
図18Aは、配合物2又は配合物05で前処置した後のデータを描く。データは、配合物2に対する平均値±SEMで表されている。
*p=0.0135 対配合物2(
図18A)。配合物2又は配合物05で処置した動物のCNVを代表する画像を横に示す。スケールバーは100μmを表す。
【
図18B】
図18A及び
図18Bは、マイクロエマルション単独又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物2、配合物05、配合物7、配合物07)で、CNVを誘発する前に3日間局所的に前処置し、その後7日間処置したCNVマウスにおける新血管形成領域の分析を描く。
図18Bは、配合物7又は配合物07で前処置を行った後のデータを描く。データは、配合物7に対する平均値±SEMで表されている。
*p=0.0001 対配合物7。配合物7又は配合物07で処置した動物のCNVを代表する画像を横に示す。スケールバーは100μmを表す。
【
図19A】
図19A~
図19Fは、Ctrl-ラット網膜、糖尿病ラット(STZ)、及びマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で21日間、1日2回局所的に処置した糖尿病ラットにおけるTNFa、NFκB、IGF1、IGFR1、VEGFR1及びVEGFR2の遺伝子発現を描く。
図19Aは、TNFaの遺伝子発現を描く。データは、キャリブレーター(Ctrl)に対する倍率変化の平均±SEMを表す。
*p≦0.05、
**p≦0.01、
***p≦0.001 対Ctrl-。
###p≦0.001 対STZ。ANOVAの後、テューキー-クレーマー(Tukey-Kramer)の事後検定を行った。
【
図19B】
図19A~
図19Fは、Ctrl-ラット網膜、糖尿病ラット(STZ)、及びマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で21日間、1日2回局所的に処置した糖尿病ラットにおけるTNFa、NFκB、IGF1、IGFR1、VEGFR1及びVEGFR2の遺伝子発現を描く。
図19Bは、NFκBの遺伝子発現を描く。データは、キャリブレーター(Ctrl)に対する倍率変化の平均±SEMを表す。
*p≦0.05、
**p≦0.01、
***p≦0.001 対Ctrl-。
###p≦0.001 対STZ。ANOVAの後、テューキー-クレーマーの事後検定を行った。
【
図19C】
図19A~
図19Fは、Ctrl-ラット網膜、糖尿病ラット(STZ)、及びマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で21日間、1日2回局所的に処置した糖尿病ラットにおけるTNFa、NFκB、IGF1、IGFR1、VEGFR1及びVEGFR2の遺伝子発現を描く。
図19Cは、IGF1の遺伝子発現を描く。データは、キャリブレーター(Ctrl)に対する倍率変化の平均±SEMを表す。
*p≦0.05、
**p≦0.01、
***p≦0.001 対Ctrl-。
###p≦0.001 対STZ。ANOVAの後、テューキー-クレーマーの事後検定を行った。
【
図19D】
図19A~
図19Fは、Ctrl-ラット網膜、糖尿病ラット(STZ)、及びマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で21日間、1日2回局所的に処置した糖尿病ラットにおけるTNFa、NFκB、IGF1、IGFR1、VEGFR1及びVEGFR2の遺伝子発現を描く。
図19Dは、IGFR1の遺伝子発現を描く。データは、キャリブレーター(Ctrl)に対する倍率変化の平均±SEMを表す。
*p≦0.05、
**p≦0.01、
***p≦0.001 対Ctrl-。
###p≦0.001 対STZ。ANOVAの後、テューキー-クレーマーの事後検定を行った。
【
図19E】
図19A~
図19Fは、Ctrl-ラット網膜、糖尿病ラット(STZ)、及びマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で21日間、1日2回局所的に処置した糖尿病ラットにおけるTNFa、NFκB、IGF1、IGFR1、VEGFR1及びVEGFR2の遺伝子発現を描く。
図19Eは、VEGFR1の遺伝子発現を描く。データは、キャリブレーター(Ctrl)に対する倍率変化の平均±SEMを表す。
*p≦0.05、
**p≦0.01、
***p≦0.001 対Ctrl-。
###p≦0.001 対STZ。ANOVAの後、テューキー-クレーマーの事後検定を行った。
【
図19F】
図19A~
図19Fは、Ctrl-ラット網膜、糖尿病ラット(STZ)、及びマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で21日間、1日2回局所的に処置した糖尿病ラットにおけるTNFa、NFκB、IGF1、IGFR1、VEGFR1及びVEGFR2の遺伝子発現を描く。
図19Fは、VEGFR2の遺伝子発現を描く。データは、キャリブレーター(Ctrl)に対する倍率変化の平均±SEMを表す。
*p≦0.05、
**p≦0.01、
***p≦0.001 対Ctrl-。
###p≦0.001 対STZ。ANOVAの後、テューキー-クレーマーの事後検定を行った。
【
図20A】
図20A~
図20Hは、Ctrl-ラット網膜、糖尿病ラット(STZ)、及びマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で21日間、1日2回局所的に処置した糖尿病ラットにおけるTNFa(TNF-αともいう)、VEGFR1及びVEGFR2のタンパク質発現を描く。
図20Aは、マソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)で処置した後のTNFaのタンパク質発現を描く。データは平均±SEMを表す。
***p<0.001対Ctrl-。
##p<0.01、
###p<0.001 対STZ。ANOVAの後、テューキー-クレーマーの事後検定を行った。
【
図20B】
図20A~
図20Hは、Ctrl-ラット網膜、糖尿病ラット(STZ)、及びマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で21日間、1日2回局所的に処置した糖尿病ラットにおけるTNFa、VEGFR1及びVEGFR2のタンパク質発現を描く。
図20Bは、マソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)で処置した後のVEGFR1のタンパク質発現を描く。データは平均±SEMを表す。
***p<0.001対Ctrl-。
##p<0.01、
###p<0.001 対STZ。ANOVAの後、テューキー-クレーマーの事後検定を行った。
【
図20C】
図20A~
図20Hは、Ctrl-ラット網膜、糖尿病ラット(STZ)、及びマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で21日間、1日2回局所的に処置した糖尿病ラットにおけるTNFa、VEGFR1及びVEGFR2のタンパク質発現を描く。
図20Cは、マソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)で処置した後のVEGFR2のタンパク質発現を描く。データは平均±SEMを表す。
***p<0.001対Ctrl-。
##p<0.01、
###p<0.001 対STZ。ANOVAの後、テューキー-クレーマーの事後検定を行った。
【
図20D】
図20A~
図20Hは、Ctrl-ラット網膜、糖尿病ラット(STZ)、及びマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で21日間、1日2回局所的に処置した糖尿病ラットにおけるTNFa、VEGFR1及びVEGFR2のタンパク質発現を描く。
図20Dは、Ctrl-ラット網膜、糖尿病ラット(STZ)、及びマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)で21日間、1日2回局所的に処置した糖尿病ラットにおけるTNFa、VEGFR1及びVEGFR2のウェスタンブロット分析を描く。
【
図20E】
図20A~
図20Hは、Ctrl-ラット網膜、糖尿病ラット(STZ)、及びマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で21日間、1日2回局所的に処置した糖尿病ラットにおけるTNFa、VEGFR1及びVEGFR2のタンパク質発現を描く。
図20Eは、ソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で処置した後のTNFaのタンパク質発現を描く。データは平均±SEMを表す。
***p<0.001対Ctrl-。
##p<0.01、
###p<0.001 対STZ。ANOVAの後、テューキー-クレーマーの事後検定を行った。
【
図20F】
図20A~
図20Hは、Ctrl-ラット網膜、糖尿病ラット(STZ)、及びマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で21日間、1日2回局所的に処置した糖尿病ラットにおけるTNFa、VEGFR1及びVEGFR2のタンパク質発現を描く。
図20Fは、ソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で処置した後のVEGFR1のタンパク質発現を描く。データは平均±SEMを表す。
***p<0.001対Ctrl-。
##p<0.01、
###p<0.001 対STZ。ANOVAの後、テューキー-クレーマーの事後検定を行った。
【
図20G】
図20A~
図20Hは、Ctrl-ラット網膜、糖尿病ラット(STZ)、及びマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で21日間、1日2回局所的に処置した糖尿病ラットにおけるTNFa、VEGFR1及びVEGFR2のタンパク質発現を描く。
図20Gは、ソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で処置した後のVEGFR2のタンパク質発現を描く。データは平均±SEMを表す。
***p<0.001対Ctrl-。
##p<0.01、
###p<0.001 対STZ。ANOVAの後、テューキー-クレーマーの事後検定を行った。
【
図20H】
図20A~
図20Hは、Ctrl-ラット網膜、糖尿病ラット(STZ)、及びマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で21日間、1日2回局所的に処置した糖尿病ラットにおけるTNFa、VEGFR1及びVEGFR2のタンパク質発現を描く。
図20Hは、Ctrl-ラット網膜、糖尿病ラット(STZ)、及びソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で21日間、1日2回局所的に処置した糖尿病ラットにおけるTNFa、VEGFR1及びVEGFR2のウェスタンブロット分析を描く。
【
図21】
図21は、無処置のままにしたドライアイマウス(CTRL+)又は配合物1若しくはマソプロコール0.302%を含有する配合物04(配合物04)で3日間局所的に処置したドライアイマウスにおけるT3でのフルオレセイン染色によって測定した角膜損傷を描く。各群に割り当てられたスコアは、最小値から最大値までの箱ヒゲ図でグラフ化している。一元配置ANOVAの後、ダネットの事後検定を行った。
**p≦0.01、
****p≦0.0001 対CTRL-。
#p≦0.05 対CTRL+。
【
図22】
図22は、無処置のままにしたドライアイマウス(CTRL+)、又は配合物1又はマソプロコール0.302%を含有する配合物04(配合物04)で3日間局所的に処置したドライアイマウスの角膜におけるTNFaの遺伝子発現を描く。データは、キャリブレーター(CTRL-)に対する倍率変化の平均±SEMを表す。
#p≦0.05 対CTRL+;
****p≦0.0001 対CTRL-。一元配置ANOVAの後、シダック(Sidak)の事後検定を行った。
【発明を実施するための形態】
【0036】
A.定義
本明細書で使用されているすべての技術用語及び科学用語は、特段の定義がない限り、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解しているものと同じ意味を持つ。本明細書の開示全体を通して言及されているすべての特許、特許出願、公開された出願及び公開公報、GenBank配列、データベース、ウェブサイト、並びに他の公開資料は、特段の記載がない限り、参照によりその全体が組み込まれる。本明細書の用語の定義が複数ある場合は、本項の定義が優先される。URL等の識別子やアドレスが参照される場合、そのような識別子は変更される可能性があり、インターネット上の特定の情報が現れたり消えたりする可能性があるが、同等の情報はインターネットを検索することで見つけることができることが理解される。ここでの言及は、そのような情報が利用可能であり、一般に普及していることを証明するものである。
【0037】
本明細書で使用する場合、エマルションは、2つの混じり合わない液相から構成される系であり、一方が他方に密接に混合され、分散されているものである。エマルションは、2つの非混和性液体、例えば、油と水(又は他の水性液体、例えば、極性溶媒)のコロイド状の分散体であって、その一方は連続相の一部であり、その他方は分散した相の一部であるものを指す。本明細書のエマルションは、水中油型であり、これは、水相とも呼ばれる任意の水性相に分散された任意の油溶性相を含み、油相が分散相であり、水相が連続相である。エマルションは、通常、1種以上の界面活性剤及び/若しくは補助界面活性剤、並びに/又はエマルション安定剤によって安定化される。界面活性剤は、エマルションの油相と水性相の間に界面膜を形成し、安定性をもたらす。
【0038】
本明細書で使用する場合、マイクロエマルションは、脂質相と水性相が微細に混ざり合った二相系である。マイクロエマルションは、一般には補助界面活性剤と併用される界面活性剤によって一緒に保持されている脂質相と水性相との透明で等方性の安定した液体混合物である。マイクロエマルションは、油、水、及び界面活性剤、及び任意に補助界面活性剤の透明で熱力学的に安定した等方性の液体混合物である。マイクロエマルションは、水性相と脂質相の混合により自然に形成される。それゆえ、マイクロエマルションは、連続相に粒子が分散した熱力学的に安定した系である。マイクロエマルション中の分散した相の液滴サイズは100nm未満であり、一般には5nm~50nm(5nm及び50nmを含む)の範囲にある。
【0039】
本明細書で使用する場合、「界面活性剤」は、疎水性部分(複数可)と親水性部分(複数可)を有する、合成及び天然の両親媒性分子を指す。界面活性剤は、親水性ドメイン及び疎水性ドメインを含む、すなわち両親媒性の分子である。界面活性剤は、その性質上、ミセルが存在するためにはミセルが水相と油相の両方と相互作用する必要がある水中油型エマルションの形成を促進する。両親媒性(両性)の性質により、界面活性剤及び補助界面活性剤は、非混和性の2つの液体、例えば、マイクロエマルション等のエマルションの油相と水相の間の表面張力を低下させ、エマルションを安定化させることができる。
【0040】
界面活性剤は、その相対的な疎水性及び/又は親水性に基づいて特徴づけることができる。例えば、相対的に親油性の界面活性剤は、脂肪、油及びワックスへの溶解性が高く、典型的には親水性-親油性バランス(HLB)値が10未満又は約10であり、一方、相対的に親水性の界面活性剤は、水性組成物、例えば水への溶解性が高く、典型的にはHLB値が10超又は約10である。相対的に両親媒性の界面活性剤は、油性及び水性の液体に可溶であり、典型的には10に近いか又は約10のHLB値を有する。本発明の組成物で使用するための界面活性剤は、生体適合性があり、8又は約8と16又は約16の間、一般的には10~16、又は12~14のHLB値を有する。
【0041】
本明細書で使用する場合、補助界面活性剤は、液体の表面張力をさらに低下させるために別の界面活性剤に加えて作用する界面活性剤である。マイクロエマルションが界面活性剤を含むという表現は、含まれる界面活性剤及び補助界面活性剤を指す。補助界面活性剤は、親水性で水の表面張力を低下させる。補助界面活性剤は、一般には、例えば、水の表面張力を低下させて水性流体の拡がり性を向上させるため等の湿潤剤として使用される。補助界面活性剤は、主たる界面活性剤の溶解度を高めるためにも使用され、しばしば必要とされる。
【0042】
本明細書では、「粒子サイズ」及び「平均粒子サイズ」は、与えられた液体中の粒子の平均直径と同義であり、例えば、エマルション中の液滴の直径又はミセルの直径を指す。
【0043】
本明細書で使用する場合、「油相」又は「脂質相」は、本明細書で提供されるもののような組成物の部分(又は相)であって、油等の1種以上の親油性成分及び/又は両親媒性成分を含有するものを指すために使用され、一般には、脂質可溶性相である。水中油型(o/w)マイクロエマルションでは、脂質相は、一般に、分散される相であり、水は分散相である。
【0044】
本明細書で使用する場合、油相成分(複数種可)は、提供される組成物の成分であって、その組成物の提供される製造方法において油相に含まれるものを指す。典型的な油相成分には、非極性化合物、例えば、非極性活性成分;少なくとも1種の界面活性剤;非極性溶媒等の油;防腐剤;及びマイクロエマルション安定剤が含まれる。他の親油性及び/又は両親媒性の成分を油相に含めることができる。
【0045】
本明細書で使用する場合、「水相」又は「水性相」は、本明細書で提供されるもののような組成物の部分(相)であって、1種以上の親水性成分及び/又は両親媒性成分(水相成分)を含むものを指し、一般的には水溶性相である。典型的には、本明細書で提供されるマイクロエマルション組成物では、水相は連続相である。「水相」は、マイクロエマルションの調製中に生成される水相成分を含有する液体を指すためにも使用される。
【0046】
本明細書で使用する場合、水相成分(複数種可)は、当該組成物の本明細書で提供される製造方法において水相に含まれる組成物の成分を指す。典型的な水性相成分には、極性溶媒、典型的には水、並びにアルコール、典型的にはグリセロール及びプロピレングリコール等のジヒドロキシアルコール及びトリヒドロキシアルコール等の2つ以上のヒドロキシ基を有するアルコール等の極性プロトン性溶媒;少なくとも1種の界面活性剤;防腐剤;及びエマルション安定剤が含まれうるが、これらに限定されない。他の親水性及び/又は両親媒性の成分を水相に含めることができる。
【0047】
本明細書で使用する場合、マイクロエマルションの熱力学的安定性は、相が分離しないような分散液の安定性を指す。本明細書で提供されるマイクロエマルションは、高温での安定性によって示されるように、高い熱力学的安定性を示す。
【0048】
本明細書で使用する場合、対象は、動物、典型的には哺乳動物、典型的にはヒトを含む。
【0049】
本明細書で使用する場合、室温及び周囲温度は、人間が典型的に存在する、又は居住している1つ以上の囲まれた空間で一般的な温度を記述するために使用される。室温は様々である可能性があるが、一般には、19℃又は約19℃と25℃又は約25℃との間の温度を指す。組成物が室温で保存される場合、その組成物は、一般にはこの範囲内の温度又はほぼこの範囲内の温度に保たれていることを理解すべきである。
【0050】
本明細書で使用する場合、冷蔵温度は、冷蔵庫、例えば、家庭用又はレストランの冷蔵庫で一般的な温度、例えば、室温よりも低いが、典型的には水の凝固点(0℃又は約0℃、又は-19℃又は-20℃)よりも数度高い温度を指す。典型的には、冷蔵温度は、約10℃又は約10℃と0℃又は約0℃との間であり、例えば、4℃又は約4℃である。組成物が冷蔵温度で保存されている場合、その組成物は、家庭用又は業務用の冷蔵庫で一般的な温度に保たれていることを理解すべきである。
【0051】
本明細書で使用する場合、冷凍温度は、水の凝固点付近又はそれより低い温度、例えば、家庭用の冷凍庫で一般的に使用される温度、例えば、0℃又は約0℃、例えば、-19℃又は約-19℃、又は-20℃又は約-20℃、又はそれよりも低い温度を指す。
【0052】
本明細書では、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈上矛盾する場合を除き、複数の指示対象を含む。
【0053】
本明細書で使用する場合、範囲及び量は、特定の値又は範囲を「約」を付して表すことができる。「約」には正確な量も含まれる。従って、「約5グラム」は「約5グラム」を意味し、「5グラム」も意味する。本明細書で表現される範囲は、その範囲内の整数及びその分数(端数)を含むことも理解される。例えば、5グラム~20グラムの範囲には、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、及び20グラム等の整数値、並びにその範囲内の分数、例えば、限定されないが、5.25、6.72、8.5、及び11.95グラムが含まれる。
【0054】
本明細書では、「任意の」又は「任意に」は、その後に記述された事象又は状況が発生するかしないかを意味し、記述にはその事象又は状況が発生する例と発生しない例とが含まれることを意味する。例えば、任意に変異する部分は、その部分が変異しているか、又は変異していないことを意味する。別の例では、任意のライゲーション工程は、プロセスがライゲーション工程を含むこと、又はライゲーション工程を含まないことを意味する。
【0055】
本明細書で使用する場合、範囲及び量は、特定の値や範囲に「約」を付して表現することができる。「約」には正確な量も含まれる。従って、「約10%」は「約10%」を意味し、「10%」も意味する。
【0056】
本明細書で使用する場合、「任意の」又は「任意に」は、その後に記述された事象又は状況又は要素が発生するかしないかを意味し、記述にはその事象又は状況又は要素が発生する例と発生しない例とが含まれることを意味する。例えば、任意に置換された基とは、その基が置換されていないか、又は置換されていることを意味する。
【0057】
B.概説
本明細書では、薬学的活性化合物を可溶化するために使用することができる、熱力学的に安定なマイクロエマルションが提供される。本明細書で提供されるマイクロエマルションは、有利には、眼科用途に使用することができる。当該マイクロエマルションは、油性成分、1種以上の界面活性剤及び補助界面活性剤を含有する脂質相と、1種以上の界面活性剤及び補助界面活性剤を含有する水性相とから調製される。いくつかの実施形態では、水性相は1種の界面活性剤及び1種の補助界面活性剤を含有する。医薬用のエマルション及び組成物に使用される追加の成分も含めることができる。
【0058】
本明細書に記載されるように、本明細書で提供されるマイクロエマルションは、比較的均一なサイズの小粒子を有する。その結果、当該エマルションは非常に安定しており、薬学的活性化合物を配合して、その化合物が高いバイオアベイラビリティを有する非常に安定した組成物を製造するために使用することができる。
【0059】
当該マイクロエマルションは、脂質相に油分を含み、水性相及び脂質相のそれぞれに少なくとも1種の界面活性剤及び1種の補助界面活性剤を正確な比率で含むことによって形成される。これらの比率が使用されるとき、脂質相を水性相で滴定すること(脂質相に水性相を加えること)等、2つの相を混合して生成するマイクロエマルションは、非常に小さな粒子(30nm未満)の非常に狭い分布範囲を有する。その結果、このマイクロエマルションは非常に安定しており、水への溶解度が限られている薬学的活性化合物の配合に使用することができる。その結果、非常に安定したマイクロエマルション組成物は、その医薬化合物を生物学的に利用可能にする。
【0060】
特定の実施形態では、当該マイクロエマルションは、水性相と脂質相とから形成され、
脂質相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量と、水性相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量との重量/体積比は2~10であり、
脂質相中の油成分の量と、水性相中の界面活性剤及び補助界面活性剤の量との重量/体積比は0.2~1.0である。
【0061】
加えて、いくつかの実施形態では、脂質相において、油性成分と界面活性剤及び補助界面活性剤との重量/体積比は0.05~1.4(0.05及び1.4を含む)である。
【0062】
界面活性剤、油、薬学的活性化合物等、当該マイクロエマルションの成分のさらなる詳細は、本明細書に記載されている。
【0063】
C.界面活性剤
当該マイクロエマルションを調製するために、各相は少なくとも1種の界面活性剤を含まなければならず、一般には補助界面活性剤を含む。脂質相及び水性相の界面活性剤は、同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0064】
脂質相及び水性相に使用される界面活性剤並びに補助界面活性剤は、8~16、特に10~16、又は12~14のHLB値を有する。製薬用途に適した生体適合性のある界面活性剤/補助界面活性剤で、HLBがこれらの範囲にあるものは、当該マイクロエマルションに使用することができる。そのような界面活性剤/補助界面活性剤は、当業者には数多く知られている(例示的な界面活性剤については、以下の表及び考察を参照)。当業者であれば、当該マイクロエマルションに使用するための界面活性剤及び補助界面活性剤を容易に選択することができる。選択された界面活性剤は、必要な範囲内のHLBを有し、意図された用途及び活性剤に適したものであることになる。例えば、眼科用の界面活性剤は、目への投与に適したものでなければならない。医薬組成物に使用するのに適した界面活性剤には、眼科用のものが含まれる。このような界面活性剤は周知である(例えば、米国特許第6,267,985号明細書を参照)。
【0065】
本明細書で提供されるマイクロエマルション組成物に使用するのに適した親水性界面活性剤には、当業者に公知である任意の親水性界面活性剤であって、約8~16(8及び16を含む)のHLBを有し、一般に10以上のHLB値を有するものが含まれる。界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸誘導体、ポリオキシエチレン、水添ヒマシ油エトキシレート、脂肪酸のグリセロールエステル、PEG化脂肪酸、ポリオキシルヒマシ油界面活性剤、ポロキサマー、アミンオキシド、及びアルコールエトキシレート(非イオン性界面活性剤)が挙げられるが、これらに限定されない。補助界面活性剤としては、グリセロール及びプロピレングリコールが挙げられる。例としては、TWEEN 20(ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート;ポリソルベート20;例えば、Sigma-Aldrich(シグマ・アルドリッチ)から入手可能)、TWEEN 80(ポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート;ポリソルベート80;Sigma-Aldrichから入手可能)、及びMONTANOX 40(ポリエチレングリコールソルビタンモノパルミテート;ポリソルベート40)等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
上記HLB値を有する親水性界面活性剤としては、ヒマシ油又は水添ヒマシ油エトキシレート、例えば、CREMOPHOR EL(ポリオキシル35ヒマシ油USP、BASF(ビーエーエスエフ)から入手可能)、CREMOPHOR RH40(KOLLIPHOR RH 40;ポリオキシル40水添ヒマシ油USP、BASFから入手可能)、ETOCAS 40(PEG 40ヒマシ油、Croda(クローダ)から入手可能)、CRODURET 60(PEG-60水添ヒマシ油、Crodaから入手可能)、及びKOLLIPHOR HS 15(ポリエチレングリコール15-ヒドロキシステアレート、Sigma-Aldrichから入手可能)が挙げられる。
【0067】
以下の表は、本明細書で提供されるマイクロエマルションを含む、医薬用途の界面活性剤の一般名及び商品名/商標を種類別に示したものである。
【0068】
【0069】
【0070】
上記の表に記載されている界面活性剤及びHLB値は、例示的なものである。医薬組成物での使用に適した、任意の公知の界面活性剤又は補助界面活性剤を、本明細書で提供されるエマルションで使用することができる。
【0071】
1.脂質相における例示的な界面活性剤/補助界面活性剤
例えば、脂質相において、例示的な界面活性剤は、例えば、Pluronic(登録商標)の商標で販売されているもの等のポロキサマー、Kolliphor(登録商標)及びCremophor(登録商標)等の水添ヒマシ油エトキシレート、ポリソルベート(Tween(商標)等)、ラウリルジメチルアミンオキシド、ポリエトキシル化アルコール、ポリオキシルラウリルエーテル、商標Brij(登録商標)で販売されているもの等の非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤、ポリオキシルヒマシ油、レシチン、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、脂肪酸のグリセロールエステル等の非イオン性タイプのものであるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、脂質相の補助界面活性剤は、プロピレングリコール及び/又はグリセロールである。
【0072】
2.水性相中の例示的な界面活性剤/補助界面活性剤
水性相において、例示的な界面活性剤は、例えば、商標Pluronic(登録商標)で販売されているもの等のポロキサマー、Cremophor(登録商標)及びKolliphor(登録商標)等の水添ヒマシ油エトキシレート、Tween(商標)等のポリソルベート、ラウリルジメチルアミンオキシド、ポリエトキシル化アルコール、ポリオキシルラウリルエーテル、商標Brij(登録商標)で販売されているもの等の非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤、ポリオキシルヒマシ油、レシチン、ポリエチレングリコール、脂肪酸のグリセロールエステル等の非イオン性タイプのものであるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、水性相中の補助界面活性剤(複数種可)は、プロピレングリコール及び/又はグリセロールである。
【0073】
D.水性相成分
水性相は、水等の、一般に眼科用途に適したものである極性プロトン性溶媒を含む。水性相は、すべての極性及び水溶性の成分を含み、界面活性剤及び補助界面活性剤を含む。水性相中の他の成分としては、アルコール及びグリセリン、並びに他のそのような溶媒を挙げることができる。
【0074】
E.脂質相成分
脂質相は、少なくとも1種の油(油分)と、水性組成物に溶解しない医薬剤/薬物等の非極性成分とを含む。脂質相は、少なくとも1種の油を含む。油は、天然油又は合成油であることができ、生体適合性を有するものでなければならない。適切な天然油としては、例えば、大豆油、トウモロコシ油,、アマニ油、ヒマワリ油、オキアミ油、タラ肝油、魚油、アボカド油、アーモンド油、ババス油、ボラージ油、キャロブ油、カシューナッツ油、ブドウ種子油、ヤシ油、コメヌカ油、ヒマシ油、麻の実油、ホホバ油、ピーナッツ油、ケシ種子油、ゴマ油、クルミ油、オリーブ油、小麦胚芽油、アルガン油、綿実油、ブラックカラント種子油等、10%超の割合でPUFAを含む油等の植物油及び/又は動物油、並びに、例えば、中鎖脂肪酸及び長鎖脂肪酸のエステル、中鎖及び長鎖のトリグリセリド等の合成由来の鉱油が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
F.追加成分
当該マイクロエマルションは、医薬組成物に適した有用な追加成分を含むことができる。以下は、そのような成分の例示である。いずれも、例えば、目に局所的に適用したり、目に注射したり、非経口的に摂取若しくは投与したりできるように、生体適合性である必要がある。
【0076】
1.緩衝剤
当該マイクロエマルションは、pHを所望の範囲、一般的には約5.0~8、例えば5.2~8、例えば7.4又は7.5に維持するための緩衝剤を含むことができる。例示的な生体適合性のある適切な緩衝剤としては、トロメタモール(トリス(Tris)緩衝剤、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール)、マッキルベイン(McIlvaine)(クエン酸-リン酸緩衝剤)、ゼーレンセン(Sorensen)(0.133M Na2HPO4 0.133M KH2PO4 pH7.2)、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸、及びイミダゾールが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な緩衝剤は、ヒスチジンとクエン酸塩をNaOH又はHClでpH調整したものである。好適な緩衝剤の濃度は、10~50mMの範囲である。
【0077】
2.等張性剤
当該マイクロエマルションは、等張性剤を含むことができる。これらの化合物は、調製物に必要な浸透圧(張度)を達成するために使用される。これらの例示的なものは、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、スクロース、トレハロース、プロピレングリコール、デキストロース、エチレングリコール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、及び塩化カルシウムである。1つの実施形態では、当該マイクロエマルションは、安定化剤、抗酸化剤、抗微生物剤、増粘剤、並びに分岐状ポリマー及び直鎖ポリマー等の賦形剤を含む。等張性剤は、例えば、100~400(100及び400を含む)mOsmol/kg組成物の範囲の配合物の浸透圧(重量モル浸透圧濃度)を保証する濃度で使用される。
【0078】
3.安定化剤
安定化剤は、例えば、グリシン、プロリン、シクロデキストリン、カリックスアレーン、ヒプロメロース、ヒスチジン、ベタイン、アルブミン、L-カルニチン、タウリン、モノステアリン酸グリセリル(グリセリルモノステアレート)、ペクチン、ポリビニルアルコール、プロピレングリコールから選択される。適切な濃度を決定することは当業者であれば可能であり、適切な濃度は例えば、特定の安定化剤(複数種可)及び組成物の他の成分に依存する。例えば、0.0001%~20% w/v(0.0001%及び20%を含む)の量とすることができる。
【0079】
4.増粘剤
当該マイクロエマルションは、増粘剤を含むことができる。増粘剤としては、植物、微生物及び動物から抽出されたものが挙げられるが、これらに限定されない。多くの増粘剤が当業者にとって公知である。植物から抽出された増粘剤の例はガムである。例示的な増粘剤は、例えば、クアスタマメ属(Cyamopsis)、ステルキュリア属(Sterculia)、サツマイモ属(Ipomoea)、レイリョウコウ属(Trigonella)、カシア属(Cassia)、フィサリア属(Physaria)、タマリンド属(Tamarindus)、イナゴマメ属(Ceratonia)、ジャケツイバラ属(Caesalpinia)に属する植物から抽出されたガム;例えば、サポジラ属(Manilkara)、コンニャク属(Amorphophallus)、アカシア属(Acacia)、アノゲイサス属(Anogeissus)、ステルキュリア属、アストラガルス属(Astragalus)に属する種に関連するもの等の植物由来の滲出液;例えば、デキストラン、ジェランガム、キサンタンガム等の微生物由来のガムなどのガム;例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、カラギーナン、寒天、及びオオバアオサ(ウルバ・ラクツカ、Ulva lactuca)、ノリ(海苔、Alga nori)、アルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)の誘導体等の海洋由来の抽出物;例えば、キチン及びキトサン、ヒアルロン酸等の動物由来の誘導体;例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、微結晶セルロース(MCC)等のセルロースの誘導体である。
【0080】
5.抗酸化剤
当該マイクロエマルション組成物には、抗酸化剤を含めることができる。例示的な抗酸化剤は、α-トコフェロール、フラボノイド(例えば、レスベラトロール、エピガロカテキン-3-ガレート、ケルセチン、ナリンゲニン、デルフィニジン)、コエンザイムQ10、NDGA(ノルジヒドログアヤレチン酸)、meso-NDGA、アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸、N-アセチルカルノシン、クエン酸、エリソルビン酸、パルミチン酸L-6-アスコルビル、L-カルノシン、L-グルタチオン、L-システイン、アスコルビン酸システインである。その量は、当業者が決定することができる。その量は、採用する特定の抗酸化剤(複数種可)、及び組成物の他の成分に依存しうる。例示的な範囲は、0.0001%~5.0% w/v(0.0001%及び5.0%を含む)である。
【0081】
G.活性成分を含有するマイクロエマルション組成物
本明細書で提供されるマイクロエマルション組成物は、低分子薬剤及び生物製剤等の生物学的活性分子を配合するための薬学的に許容できる担体として使用される。本明細書で提供されるマイクロエマルションは、水溶液への溶解度が低い活性剤を配合するのに有利である。提供されるマイクロエマルションは、そのような活性剤を、安定で、かつ室温でも保存可能な形態で配合するために使用される。
【0082】
本明細書で提供されるマイクロエマルションは、経口、非経口、局所及び局部的な適用に使用することができる。特定の実施形態では、当該エマルションは眼科投与用である。当該マイクロエマルションは、例えば、適応症に応じて、点眼薬等の局所適用用、又は硝子体内注射等の注射用に配合することができる。
【0083】
1.活性成分
活性成分には、低分子薬剤及び生物製剤物等の薬学的及び生物学的に活性な化合物、特に水性組成物への溶解度が低い薬剤が含まれる。この活性剤は、一般的には、脂質相に添加した後、本明細書に記載されているような滴定等により、脂質相を水性相と混合することで配合される。脂質相及び水性相は、本明細書に記載されているような必要な量と比率の界面活性剤/補助界面活性剤及び脂質を含有する。生成するマイクロエマルションは、小さな粒子(30nm未満、例えば15nm±10nm)、及びPDI<0.2等の狭い粒子サイズ範囲の分布を有すること、高い熱力学的安定性、及び配合された活性剤の良好なバイオアベイラビリティ及び活性を特徴とする。
【0084】
当該マイクロエマルションは、一般的に5%(w/v)未満の活性剤を含有するが、0.01mg/ml~50mg/ml、例えば0.01~30mg/ml等の任意の注目する量を含有することができる。特定の量は、医薬剤、それが使用される適応症、投与経路、及び対象に依存する。適切な濃度で薬剤を配合することは、十分に当業者の技術の範囲内にある。
【0085】
活性成分には、いずれかの公知の医薬剤、特に水性組成物への溶解度が低いものが含まれる。例えば、米国薬局方(USP)で定義されているグループから選ばれた任意の医薬分子が含まれる。それらとしては、胃腸薬、鎮痙薬、血糖値調整薬、栄養補助食品/ミネラル/電解質、血小板調整剤、凝固薬、心臓血管薬、α-アドレナリン作動薬/α-アドレナリン拮抗薬/血管拡張剤/動脈血管拡張剤、炭酸脱水酵素阻害剤利尿剤/ループ利尿剤/カリウム保持性利尿剤/チアジド系利尿剤、他の心臓血管薬、β-アドレナリン拮抗薬、カルシウム拮抗薬、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE)、脂質異常症治療薬/HMG CoA還元酵素阻害剤(スタチン系薬剤)、抗真菌剤、皮膚科治療薬、抗ヒスタミン剤、麻酔剤、抗菌剤、ホルモン刺激剤/置換剤/修飾剤(副腎、下垂体及び性ホルモン)、血糖値上昇剤、ホルモン抑制剤(副甲状腺)、抗マイコバクテリア剤、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、免疫調節剤、抗炎症剤、鎮痛剤、抗痙攣剤、抗パーキンソン病薬、抗精神病薬、抗うつ剤/抗認知症剤/抗不安薬、抗筋無力症剤/乱用物質治療剤/中枢神経系薬剤、気管支拡張剤/交感神経刺激剤/抗コリン剤/吸入コルチコステロイド/ホスホジエステラーゼ阻害剤/空気感染症、他の呼吸器系薬剤、抗寄生虫剤、抗緑内障眼科剤、他の眼科用薬剤/抗アレルギー眼科用薬剤、眼科用抗炎症剤、プロスタグランジン類似物質、及び眼科用プロスタミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
活性成分には、世界保健機関がまとめた解剖治療化学分類法(Anatomical Therapeutic Chemical Classification System、ATC)で定義されたグループのいずれかが含まれるが、これらに限定されない。それらとしては、胃酸関連疾患用薬(A02)、消化管機能障害用薬物(A03)、糖尿病に使用される薬物(A10)、ビタミン(A11)、ミネラル剤(A12)、抗血栓剤(B01)、出血抑制剤(B02)、心臓病治療薬(C01)、降圧剤(C02)、利尿剤(C03)、末梢血管拡張剤(C04)、血管保護剤(C05)、β遮断剤(C07)、カルシウム拮抗剤(C08)、レニン・アンギオテンシン系に作用する薬剤(C09)、脂質低下剤(C10)、皮膚科用抗真菌剤(D01)、皮膚軟化剤及び保護剤(D02)、傷害・潰瘍治療剤(D03)、抗ヒスタミン剤を含む鎮痒剤、麻酔剤(D04)、抗乾癬剤(D05)、皮膚科用の抗生物質及び化学療法剤(D06)、防腐剤及び消毒剤(D08)、下垂体、視床下部ホルモン及び類似物(H01)、全身性コルチコステロイド(H02)、甲状腺療法(H03)、膵臓ホルモン(H04)、恒常性カルシウム(H05)、全身用抗菌剤(J01)、全身用抗真菌薬(J02)、抗マイコバクテリア剤(J04)、全身用抗ウイルス剤(J05)、免疫血清及び免疫グロブリン(J06)、抗腫瘍剤(L01)、内分泌療法(L02)、免疫賦活剤(L03)、免疫抑制剤(L04)、抗炎症剤及び抗リウマチ剤(M01)、関節・筋肉痛用外用剤(M02)、麻酔剤(N01)、鎮痛剤(N02)、抗てんかん剤(N03)、抗パーキンソン病薬(N04)、精神安定剤(N05)、精神賦活剤(N06)、他の神経系薬剤(N07)、鼻腔用調剤(R01)、咽頭洞用調剤(R02)、気道閉塞性障害用薬剤(R03)、咳及び風邪用調剤(R05)、全身用抗ヒスタミン剤(R06)、他の呼吸器系用調剤(R07)、抗感染症剤(S01A)、抗炎症剤(S01B)、抗炎症剤及び抗感染症剤の合剤(S01C)、抗緑内障剤及び縮瞳剤(S01E)、散瞳剤及び調節麻痺剤(S01F)、鬱血除去剤及び抗アレルギー剤(S01G)、局所麻酔剤(S01H)、診断剤(S01J)、手術補助剤(S01K)、眼血管剤(S01L)、抗感染症剤(S03A)、コルチコステロイド(S03B)、及びコルチコステロイドと抗感染症剤の併用(S03C)が挙げられる。
【0087】
2.眼科用薬剤
本明細書に記載されるマイクロエマルションは、眼科用途に特に適している。従って、任意の眼科用薬剤を当該マイクロエマルションに配合することができる。眼科用薬剤としては、ステロイド系抗炎症剤、抗菌剤、抗緑内障剤、降圧剤、診断剤、抗ウイルス剤、血管新生阻害剤、神経保護剤、抗酸化剤が挙げられるが、これらに限定されない。これらの成分は、単独又は組み合わせて使用することができる。
【0088】
例えば、活性成分は、例えば、プロスタグランジン(ラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロスト)、β遮断剤(チモロール、カルテオロール、レボブノロール、ベタキソロール、ネビボロール)、副交感神経刺激剤(ピロカルピン)、α2-アゴニスト(アプラクロニジン、ブリモニジン)、炭酸脱水酵素阻害剤CAI-(ブリンゾラミド、ドルゾラミド)、及びそれらの誘導体等の眼圧亢進症や緑内障の治療を目的としたものであることができる。例示的な1つの実施形態では、当該マイクロエマルション中の活性成分は、例えばラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロスト、及び誘導体等の1種以上のプロスタグランジン類似物質から選択される。
【0089】
実施形態では、活性成分は、例えば、ソラフェニブ、ソラフェニブトシル酸塩、レゴラフェニブ、レゴラフェニブトシル酸塩、レゴラフェニブイセチオン酸塩、レゴラフェニブエチルスルホン酸塩、アプレミラスト、ラドチニブ、スピロノラクトン等の血管新生阻害剤、若しくはノルジヒドログアヤレチン酸、meso-ノルジヒドログアヤレチン酸(マソプロコール)、これらからの医薬的観点から許容できる水和物、溶媒和物、代謝物、若しくは塩、若しくはその分子の多形結晶体等の抗酸化剤であるか、又は、上記分子は、チモロール、ベタキソロール、レボブノロール、ネビボロール及びカルテオロール等のβ遮断剤であるか、又は上記分子は、デキサメタゾン等のコルチコステロイド、若しくは非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、又は2種以上の活性成分の混合物である。
【0090】
当該マイクロエマルションは、約0.01~50mg/ml、例えば0.01~30mg/mlの濃度範囲で活性成分を含有する。本明細書に示され、記載された結果は、当該マイクロエマルションが、活性成分の生物学的作用を妨げることなく、活性成分に強化された安定性を付与することを実証する。例えば、実施例6は、本明細書で提供されるマイクロエマルションが、様々な活性成分を単独及び組み合わせで効果的に運ぶことを示す。当該マイクロエマルションは、配合物に含まれる活性成分に安定性を付与する。例えば、実施例11は、インビボで測定された、得られたマイクロエマルション中のラタノプロスト活性が、市販の点眼液中のラタノプロストを使用して観察されたものと少なくとも同等であることを示す。活性成分の化学的安定性は、室温で維持される。
【0091】
例えば、マソプロコール又はソラフェニブトシル酸塩を含有するマイクロエマルションは、網膜虚血-再灌流、脈絡膜新生血管、及び糖尿病性網膜症の動物モデルにおいて有効である。実施例16に示すように、マソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)は、目の表面の病理であるドライアイのマウスモデルに有効である。
【0092】
このように、本明細書で提供されるマイクロエマルションは、任意の公知の薬学的活性剤の処方を可能にし、強化された安定性を提供する一方で、強化された安定性を付与していない他の処方物と少なくとも同等の活性を保持している。
【0093】
H.眼の疾患及び状態、並びに治療方法
本明細書で提供されるマイクロエマルションは、任意の活性剤、特に水性組成物への溶解度が低い活性剤を投与するためのビヒクルとして機能できる。当該マイクロエマルションは、眼の障害、状態及び疾患の治療に使用される活性剤を配合することにより、眼科障害の治療に使用することができる。本明細書で提供されるマイクロエマルションは、眼の組織と適合性のある成分を含むこと、及び当該マイクロエマルションはこれらの薬剤を安定で良好なバイオアベイラビリティを有する形態で提供することができることから、これらの適応症に特に適している。これらの状態、疾患及び障害には、限定されないが、緑内障、加齢黄斑変性症AMD、糖尿病性網膜症、神経障害(ニューロパチー)、細菌感染症、ウイルス感染症、ドライアイ、眼のアレルギー性及び/又は炎症等の眼科の症状及び病態が含まれる。当該マイクロエマルションは、目への局所投与、注射、又は任意の適切な経路のために配合することができる。
【0094】
様々な種類の疾患が目に影響を及ぼす。目は、(1)角膜、虹彩、瞳孔、結膜、毛様体、前房、房水、線維柱帯網、及び水晶体を含む前眼部と、(2)硝子体液、強膜、脈絡膜、網膜、黄斑、及び視神経を含む後眼部との2つのセグメントに分かれている。目には多くの疾患及び状態(症状)があり、そのような疾患及び状態を治療するために使用される薬学的活性剤がある。投与は、点眼薬を用いて局所的に、及び硝子体内注射等の注射によって等、任意の経路によって行うことができる。疾患によっては、最終的に失明に至るものもあるため、治療は重要である。
【0095】
以下は、治療することができる疾患、及び本明細書で提供されるマイクロエマルションに配合することができる薬剤を例示する。
【0096】
1.緑内障
緑内障は、網膜神経節細胞及びその軸索の損傷によって生じる多面的な疾患であり、進行性の視神経変性を引き起こし、一部の患者では不可逆的な失明に至る。眼圧(IOP)の上昇を特徴とする緑内障には、開放隅角緑内障(OAG)及び閉塞隅角緑内障(ACG)の2大病型がある。OAGは、線維柱帯網又はシュレム管の一部が閉塞し、眼球から房水(AqH)が適切に排出される能力が損なわれ、IOPが上昇する慢性状態である。ACGは、前房内の虹彩角膜角の閉鎖によって定義され、虹彩を前房内に引き上げる、又は押し上げる要因によって引き起こされる。この形態の変化は、虹彩角膜管(iridocorneal canal)及び線維柱帯網を通る流れを制限することにより、AqHの排出を物理的にブロックすることができる。さらに、IOP測定値が常に21mmHg未満の患者で緑内障性視神経症を特徴とするOAGの一形態である正常眼圧緑内障(NTG)がある。
【0097】
緑内障の治療薬としては、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト及びタフルプロスト等のプロスタグランジン類似物質、チモロール、カルテオロール、レボブノロール及びベタキソロール等のβ遮断剤、ブリモニジン及びアプラクロニジン等のα-アドレナリン作動薬、ドルゾラミド及びブリンゾラミド等の炭酸脱水酵素阻害剤、並びにそれらの薬学的に許容できる誘導体、水和物、溶媒和物、代謝物及び塩、又はそれらの分子の多形結晶体が挙げられる。さらに、2014年以降、一酸化窒素(NO)供与型プロスタグランジンF2α類似物質(ラタノプロステンブノド)、Rhoキナーゼ阻害剤(リパスジル、ネタルスジルメシル酸塩)、並びにプロスタグランジンEP2受容体アゴニスト(DE-117)等、新たな作用機序を持つ新クラスの薬剤が開発されている。
【0098】
2.黄斑変性症
加齢黄斑変性症(AMD)は、網膜の黄斑部が侵され、中心部の視力が徐々に低下する疾患であり、AMDは、補体、脂質、血管新生、炎症及び細胞外マトリックス等の経路の異常が病変形成に関与する多因子性障害である。2020年までに世界のAMD患者数は約2億人になり、2040年には約3億人に増加すると予想されている。MDには2大病型があり、予後や治療法が異なる:全症例数の約85~90%を占める萎縮型(ドライタイプ)MD、及び新生血管型(滲出型、ウェットタイプ)MD。眼底の初期変化は、多くの場合、主に後極に見られる黄色がかった色と丸い形をした変性形成物であるいわゆるドルーゼン、又はコロイド小体、で表される。慢性的な網膜損傷を引き起こすメカニズムを考えると、光受容体細胞(桿体及び錐体)及び網膜色素上皮(RPE)の代謝維持の変化が、炎症プロセス及び血管の変化に応じて起こると考えられる。ウェット型AMDの治療薬には、VEGFアンタゴニストや、補体C3又はC5を標的とした補体活性化阻害剤がある。このような薬物は硝子体内注射によって投与され、その例は、ラニビズマブ(商標名:Lucentis)、アフリベルセプト(Eylea(アイリーア))、ペガプタニブ(Macugen(登録商標))、及びベバシズマブ(Avastin(登録商標))である。他の作用機序を持つ薬剤のクラスが開発中である。それらとしては、例えば、抗補体剤(C3阻害剤)(APL-2)、抗補体剤アバシンカプタドペゴル(C5阻害剤;Zimura(登録商標))、α2アドレナリン受容体アゴニスト(Brimo DDS)、DARPinベースの抗VEGF(アビシパルペゴル)、scFv抗VEGF抗体フラグメント(ブロルシズマブ)、抗VEGF-C及びVEGF-D(OPT-302)が挙げられる。C5/相補因子Fを標的にしたもの(CLG561/LFG316併用)、Ang2/VEGFを1分子で結合するもの(RG7716)、抗エンドグリン抗体(DE-122)、VEGF阻害剤(LHA510及びPAN-90806)、インテグリンavβ3アンタゴニスト(SF0166)、PDGF/VEGF阻害剤(X-82)、CTGF阻害剤(RXI-109)、VEGF・PDGF・bFGF阻害剤(スクアラミン乳酸塩)、PPAR-αアゴニスト(BIO-201)、抗酸化剤/NF-kB阻害剤(CPC-551)、mTPP開口遮断剤(ocuvia)、30sリボソームサブユニットの16S rRNA阻害剤(FMX-103)、組織因子阻害剤(ICON-1)、MASP-2抗体(OMS-721)、βアミロイド阻害剤(ALZ-801)、及びROBO4アゴニスト(DS-7080)等、有望な薬剤も開発の初期段階にある。
【0099】
3.ドライアイ
ドライアイは、涙膜の恒常性が失われることを特徴とし、眼症状を伴う多因子性の眼表面疾患であり、涙膜の不安定性及び高浸透圧、眼表面の炎症及び損傷、並びに神経感覚の異常が病因として挙げられる。この眼性疾患の管理には、ヒアルロン酸ナトリウム及びメチルセルロース等のヒドロゲルポリマーを含む人工涙液、フルオロメトロン、プレドニゾロン及びデキサメタゾン等のコルチコステロイド、シクロスポリン等の免疫抑制剤及び抗炎症剤の幅広い使用が支配的である。さらに、P2Y2受容体アゴニスト(ジクアホソル四ナトリウム)、ムチン分泌促進剤(レバミピド)、インテグリン阻害剤及び抗炎症剤(リフィテグラスト)、TrkAアゴニスト及びニューロトロフィンペプチド模倣剤(タビレルミド)、ミトコンドリア抗酸化剤(ビゾミチン、visomitin)、組換えヒト神経成長因子(RH-NGF)等、新しい作用機序の新しいクラスの薬剤が開発されている。他の臨床開発中の医薬剤。これらには、例えば、チモシンβ4/合成ペプチド(RGN-259)、RNAiベースのTRPV1阻害剤(チバニシラン(tivanisiran))、アルデヒドトラップ(レプロキサラップ)、及び組換えヒトラブリシンプロテイン(ECF-843)、並びにラクリチンの合成フラグメント(ラクリペップ(lacripep))、カルシニューリン阻害剤(ボクロスポリン)、上皮性ナトリウムチャネル遮断剤(P-321)等、開発の初期段階で有望な薬剤が含まれる。
【0100】
4.マイボーム腺機能不全(MGD)
マイボーム腺機能不全(MGD)は、慢性的でびまん性のマイボーム腺の異常であり、一般に末端管の閉塞及び/又は腺分泌物の質的/量的変化を特徴とする。この結果、涙膜の変化、眼刺激症状、臨床的に明らかな炎症、及び眼表面疾患が起こる可能性がある。MGDではマイボーム腺分泌物の正常な脂質組成が変化することがある。脂質の異常は、涙膜の組成及び機能の異常を引き起こし、蒸発性ドライアイを引き起こすことがある。MGDの管理には、ミノサイクリン及びドキシサイクリンの全身投与が大きな効果をもたらすことが知られている。
【0101】
5.白内障
白内障は、眼の水晶体が不透明になることであり、屈折率が変化しそれゆえ視力が低下する。加齢に伴う白内障は、不透明化の部位により皮質白内障、核白内障、又は後嚢下白内障に分類することができる。加齢に加えて、目の怪我、感染症、及び手術が原因で白内障が発生することもある。外科的治療は確立されており、効果的であるにもかかわらず、多くの発展途上国では、必要な機器と医療従事者の両方が不足しているため、その外科的治療を行うことができない。白内障の予防と回復のためには、非外科的な治療法の開発が重要である。興味深いことに、抗酸化剤、シャペロン、シャペロン活性化剤、及びタンパク質凝集阻害剤が有望な薬剤候補である。例えば、ラノステロールを含有する点眼薬は視力を改善することが示されている。
【0102】
6.糖尿病性網膜症及び黄斑浮腫
糖尿病性網膜症(DR)及び黄斑浮腫は、糖尿病の合併症として最も恐れられているもので、20~74歳の成人における新規失明症例の原因の中で最も頻度の高いものである(28.5%)。DRは、臨床的には非増殖性病期と増殖性病期に分類される。非増殖性DR(NPDR)では、微小動脈瘤を含む網膜内微小血管の変化が起こり、網膜血管の透過性が変化し、最終的には網膜血管の閉鎖と非灌流が起こる。PDRは、網膜又は視神経乳頭部における新生血管の形成を伴う。これらの新しい異常血管は、網膜の表面を突き破って噴出し、眼球の硝子体腔内で増殖し、そこで硝子体に出血して視力を低下させる。治療法としては、抗炎症剤、及びVEGF阻害剤が挙げられる。
【0103】
7.感染症及びアレルギー
眼の感染症は、適切な抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗炎症剤、及びそれらの組み合わせ、並びに抗生物質との組み合わせで治療される。具体的な治療法は、感染症の種類及び感染の場所によって異なる。
【0104】
I.マイクロエマルションの製造方法
当該マイクロエマルションは、本明細書に記載された比率の範囲内又はその比率の量の界面活性剤/補助界面活性剤を含有する水性相及び親油性相を調製し、次いでそれらの相を混合して、マイクロエマルションを形成することによって調製することができる。本発明のマイクロエマルションの調製方法の例示的なものは、
図1及び
図2に描かれているものである。例示的な方法は、
脂質相を調製する工程であって、1種以上の界面活性剤/補助界面活性剤の混合物が油に可溶化され、各油部に対して1~10部の上記混合物が混合される工程と、
水性相を調製する工程であって、界面活性剤/補助界面活性剤の混合物、及び任意の賦形剤が水又は他の極性プロトン性溶媒に可溶化される工程と、
上記脂質相を上記水性相で滴定して、マイクロエマルションを生成する工程であって、当該マイクロエマルションの0.4~4.0%(w/v)が脂質相の油性成分で構成され、当該マイクロエマルションの4.0%~36.0%(w/v)が脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤で構成され、全界面活性剤/補助界面活性剤の1.66%~4.15%(w/v)が水性相からの界面活性剤/補助界面活性剤である工程と
を含む。
【0105】
1つの実施形態では、脂質相及び水性相は、ゆっくりとした磁気駆動の混合によって合わされる。滴定は、以下の式で記述される速度で行うことができる。
Vtit=k×(vtot/1000ml)
上記式中、Vtit=滴定速度(単位:ml×min-1)、k=2ml×min-1、Vtot=配合物の全量(単位:ml)である。
【0106】
得られた組成物のミセル寸法は約15±10nmであり、多分散性指数(PDI)は、0.02~0.380、若しくは0.02~0.2、若しくは0.02~0.15(0.02及び0.15を含む)の範囲内にあるか、又は0.2未満、若しくは0.12未満、若しくは0.1未満である。調製は、室温で行われる。
【0107】
有利なことに、本明細書で提供されるマイクロエマルション、特に眼科領域の適応症を目的としたマイクロエマルションは、アルコール性の補助界面活性剤を含有しない。従って、得られたマイクロエマルションは、眼の組織との生体適合性、すなわち良好な忍容性を示す。
【実施例】
【0108】
J.実施例
以下の実施例は、例示を目的としてのみ含まれており、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0109】
実施例1
例示的なマイクロエマルション
本明細書に提供されている比率及び量に一致する量の界面活性剤及び補助界面活性剤並びに脂質相を含有する一連のマイクロエマルションを調製した。配合物5と指定される1つの配合物は、比率の効果を示すために、比率外の量で調製した。様々なパラメータ及び活性を評価するために、活性薬剤を含む配合物も調製した。本明細書に記載されている有利な特性を有するマイクロエマルションを形成するための比率は、例えば、以下の通りである。
脂質相中の界面活性剤/補助界面活性剤と、水性相中の界面活性剤/補助界面活性剤との重量/体積比が、2~10、例えば2.2~9.8又は2.4~8.6であること、及び
脂質相の油性成分と水性相中の界面活性剤/補助界面活性剤との重量/体積比が0.2~1.0、例えば0.22~0.98、又は0.24~0.96であること。
【0110】
当該マイクロエマルションの脂質相では、脂質相の油性成分と、界面活性剤/補助界面活性剤の混合物との重量/体積比は、0.05~1.4、例えば0.07~1.2、又は0.1~1である。
【0111】
油性相としてミリスチン酸イソプロピル、分散剤として水、乳化剤(界面活性剤)としてTween 80及びKolliphor RH40、湿潤剤としてプロピレングリコール(補助界面活性剤)、緩衝剤としてクエン酸ナトリウム二水和物、及びpH調整剤としてクエン酸を用いて、5種の配合物を得た。以下に詳述するように、乳化剤及び湿潤剤は、それぞれ脂質相及び/又は水性相に含まれる、それぞれ界面活性剤及び補助界面活性剤である。
【0112】
【0113】
Tween 80及びプロピレングリコールは、脂質相中の界面活性剤/補助界面活性剤である。Tween 80及びプロピレングリコールは2:1の比率である。水性相において、界面活性剤及び補助界面活性剤は、それぞれKolliphor RH40及びプロピレングリコールである。水性相において、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは3:1の比率である。配合物1では、脂質相中の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの4.05%(w/v)であり、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの1.66%(w/v)である。
【0114】
【0115】
Tween 80、プロピレングリコール、及びKolliphor RH40は、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤である。脂質相において、Tween 80、プロピレングリコール及びKolliphor RH40は、1:2:1.5の比率である。RH40及びプロピレングリコールは、水性相中の界面活性剤/補助界面活性剤であり、水性相において、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは3:1の比率である。配合物2では、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの18.67%(w/v)であり、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの4.15%(w/v)である。
【0116】
【0117】
Tween 80、プロピレングリコール、Kolliphor RH40は、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤であり、脂質相においてTween 80、プロピレングリコール及びKolliphor RH40は1:2:1.5の比率であり、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは水性相の界面活性剤/補助界面活性剤であり、水性相において、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは3:1の比率である。配合物3では、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの36%(w/v)であり、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの4.15%(w/v)である。
【0118】
【0119】
Tween 80、プロピレングリコール及びKolliphor RH40は、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤であり、脂質相において、Tween 80、プロピレングリコール及びKolliphor RH40は1:2:1.5の比率であり、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤であり、水性相において、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは3:1の比率である。配合物4では、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの4.05%(w/v)であり、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの1.66%(w/v)である。
【0120】
【0121】
後述する配合物5の成分は、必要な比率を満たしていない。具体的には、配合物5は、油性成分と水性相中の界面活性剤/補助界面活性剤との比率、及び脂質相中の界面活性剤/補助界面活性剤と水性相中の界面活性剤/補助界面活性剤との比率が、本明細書で提供されるようなエマルションのパラメータに入らないように構成されている。配合物5は、本明細書で提供されるマイクロエマルションの有利な特性が比率に由来することを実証するために、本明細書で提供されるマイクロエマルションとの比較のために調製した。
【0122】
Tween 80及びプロピレングリコールは、脂質相中の界面活性剤/補助界面活性剤であり、脂質相において、Tween 80及びプロピレングリコールは2:1の比率であり、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤であり、水性相において、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは、3:1の比率である。配合物5では、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの5.08%(w/v)であり、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの2.62%(w/v)である。
【0123】
配合物6~9
油性相としてオキアミ油又はヤシ油、又はオキアミ油3部とボラージ油1部との混合物、分散剤として水、乳化剤としてTween 80及びKolliphor RH40、湿潤剤としてプロピレングリコール、緩衝剤としてクエン酸ナトリウム二水和物、pH調整剤としてクエン酸を用いて、4種の配合物(6、7、8及び9)を調製した。
【0124】
Tween 80、プロピレングリコール及びKolliphor RH40は、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤であり、脂質相において、Tween 80、プロピレングリコール及びKolliphor RH40は1:2:1.5の比率であり、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤であり、水性相において、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは3:1の比率である。配合物6では、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの4.05%(w/v)であり、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの1.66%(w/v)である。配合物7、8及び9では、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの18.67%(w/v)であり、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの4.15%(w/v)である。
【0125】
【0126】
配合物10~16
油性相としてヒマシ油3部とコメヌカ油1部又はアボカド油1部又はブドウ種子油1部とを含む混合物、分散剤として水、乳化剤としてTween 80及びKolliphor RH40、湿潤剤としてプロピレングリコール、緩衝剤としてクエン酸ナトリウム二水和物、及びpH調整剤としてクエン酸を用いて、3種の配合物(10、11及び12)を得た。
【0127】
油性相としてオキアミ油3部とボラージ油1部又はアマニ油1部又はチア油1部との混合物、分散剤として水、乳化剤としてTween 80及びKolliphor RH40、湿潤剤としてプロピレングリコール、緩衝剤としてクエン酸ナトリウム二水和物、及びpH調整剤としてクエン酸を用いて、3種の配合物(13、14及び15)を得た。
【0128】
油性相としてヤシ油、分散剤として水、乳化剤としてTween 80及びKolliphor RH40、湿潤剤としてプロピレングリコール、緩衝剤としてクエン酸ナトリウム二水和物、及びpH調整剤としてクエン酸を用いて、配合物16を調製した。
【0129】
マイクロエマルション配合物10、11、12、13、14、15及び16において、Tween 80、プロピレングリコール及びKolliphor RH40は、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤であり、脂質相において、Tween 80、プロピレングリコール及びKolliphor RH40は1:2:1.5の比率であり、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤であり、水性相において、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは3:1の比率である。これらの配合物では、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの4.05%(w/v)であり、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの1.66%(w/v)である。
【0130】
【0131】
表1は、本実施例で説明した各配合物の脂質相中の界面活性剤/補助界面活性剤の比率、及び水性相中の界面活性剤/補助界面活性剤の比率をまとめる。例えば、配合物1では、脂質相に界面活性剤であるTween 80と補助界面活性剤であるプロピレングリコールが1種ずつ存在し、Tween 80の量/プロピレングリコールの量が2:1である。
【0132】
【0133】
実施例2
マイクロエマルションのパラメータ及び相対的な化学的安定性及び物理的安定性に対する配合物組成の影響
化学的安定性及び物理的安定性を決定するために、実施例1に記載された配合物1、及びその後に本明細書に記載されたその変形例に対してストレス試験を行った。
【0134】
配合物1は、表2に示す量及び組み合わせの異なる緩衝剤を用いて変化させた。
【0135】
【0136】
60℃で15日間の熱ショックの条件で得られた安定性データが
図3A~
図3Dに示されており、安定性データは、pH(
図3A)、浸透圧(重量モル浸透圧濃度)(
図3B)、平均粒子サイズ(サイズ、
図3C)、及びゼータ電位(pZ、
図3D)に関する。検討したパラメータ及び結果(
図3A~
図3D)から、マイクロエマルション配合物1及びその各変形例は、良好な安定性プロファイルを示した。4種のマイクロエマルションのバリエーション(すなわち、1、1.1、1.2及び1.3)のうち、クエン酸緩衝剤の濃度が低い配合物1を、眼科用に最も適したものとして選択し、さらなる開発及び比較のためのベースとして使用した。
【0137】
油性相と水性相との比率、並びに油性相及び水性相内の界面活性剤と補助界面活性剤との比率を本明細書に記載された比率から外れて変化させると、平均粒子サイズが30nm未満、又は狭い分布15±10nm等の必要な特性を持たない配合物が生成する。例えば、本明細書で提供されるマイクロエマルションと比較するために調製した上述の配合物5は、界面活性剤の必要な比率を含む水性相及び脂質相から形成されておらず、各相における界面活性剤(複数種可)の量が必要な基準を満たす配合物の有利な特性を示さない。表3は、マイクロエマルション配合物1と配合物5との相違をまとめる。配合物5は、本明細書で提供されるマイクロエマルションのパラメータの範囲内ではないが、比較の目的で本明細書に記載されている。
【0138】
【0139】
具体的には、配合物1の場合、脂質相の油性成分と水性相中の界面活性剤-補助界面活性剤との比率は0.24に等しく、0.2~1の範囲内にある。配合物1の場合、脂質相中の界面活性剤/補助界面活性剤と、水性相中の界面活性剤/補助界面活性剤との比率は2.44に等しく、2.0~10の範囲内にある。配合物1は、20nm未満の平均粒子サイズ、及び0.10未満の多分散性指数(PDI)を特徴とする。
【0140】
しかしながら、配合物5の場合、水性相中の油性成分/界面活性剤-補助界面活性剤間の比率は0.19に等しく、脂質相中の界面活性剤/補助界面活性剤/水性相中の界面活性剤-補助界面活性剤の比率は1.93に等しい。配合物5は、30nm超の平均粒子サイズ、及び0.40超のPDIを特徴とする。
【0141】
配合物1及び配合物5についての平均粒子分布図(サイズ)をそれぞれ
図4A及び
図4Bに示す。配合物5はオパール状に見え、熱力学的に不安定である。対照的に、配合物1及び本明細書に記載されているその変形例は、6ヶ月までの期間に実施された研究において、透明に見え、熱力学的に安定している。
【0142】
図5A~
図5Dは、25℃及び40℃における浸透圧(
図5A)、pH(
図5B)、平均粒子サイズ(nm、
図5C)、及びゼータ電位(pZ、
図5D)に関する配合物1の経時的(月単位)な安定性データを示す。これらの結果は、本明細書に記載されている必要な比率から何か逸脱すると、有利な特性を持たないマイクロエマルションになることを示す。このように、これまで観察されていなかった特性を有するマイクロエマルションを調製するためのパラメータ及び成分が提供される。
【0143】
実施例3
配合物4の安定性
図6A~
図6Cは、本明細書で提供される例示的なマイクロエマルション配合物の異なる温度[25℃(
図6A)、40℃(
図B)及び60℃(
図6C)]でのサイズ及びPDIに関する経時的(月単位)な安定性データを示す。分析した各条件において、配合物4は、サイズ及びPDIがそれぞれ15±10nm及び0.070±0.050以内であることを常に示している。このような値は、本明細書に提供されている範囲内であり、研究期間全体で一定であった。
【0144】
実施例4
配合物7、8及び9の安定性
配合物7、8及び9は、25nm以下のサイズ、0.24以下の多分散性指数(PDI)、及び6.0~7.4の範囲内のpH値を特徴とする。
【0145】
図7A~
図7Dは、60℃で30日間の熱ショックの条件での、pH(
図7A)、平均粒子サイズ(nm、
図7B)、多分散性指数(PDI、
図7C)及びゼータ電位(mV、
図7D)に関する配合物7、8及び9の経時的(週単位)な安定性データを示す。
【0146】
分析した条件では、すべての配合物は、常にそれぞれ15±10nm及び0.190±0.050の範囲内のサイズ及びPDIを示す。このような値は、本明細書に提供されている範囲内であり、研究期間全体で一定であった。
【0147】
実施例5
配合物6、10、11、12、13、14、15及び16の安定性
配合物6は、20nm未満のサイズ、0.10未満の多分散性指数(PDI)、及び5~6の示された範囲内にあるpH値を特徴とする。
【0148】
配合物10、11、12、13、14、15及び16は、20nm未満のサイズ、0.10未満の多分散性指数(PDI)、及び6.5~7.5の示された範囲内のpH値を特徴とする。
【0149】
図8A~
図8Eは、60℃で30日間の熱ショックの条件での、pH(
図8A)、平均粒子サイズ(nm、
図8B)、多分散性指数(
図8C)、浸透圧(
図8D)、及びゼータ電位(mV、
図8E)に関する経時的(週単位)な安定性データを示す。
【0150】
分析した条件では、すべての配合物は、常にそれぞれ15±10nm及び0.190±0.050の範囲内のサイズ及びPDIを示す。
【0151】
このような値は、本明細書に提供されている範囲内であり、研究期間全体で一定である。
【0152】
【0153】
実施例6
ラタノプロスト、マソプロコール又はソラフェニブトシル酸塩を含有する例示的なマイクロエマルション
薬学的活性化合物を含有する配合物は、番号の前に「0」を付けて指定する。本明細書に記載されているように調製した01、02、03、04及び05と指定された5種の配合物は、油性成分としてミリスチン酸イソプロピル、分散剤として水、乳化剤としてTween 80及びKolliphor RH40、湿潤剤としてプロピレングリコール、及び緩衝剤としてクエン酸ナトリウム二水和物及び/又はヒスチジン塩酸塩を含有する。
【0154】
06、07、08及び09と指定された4種の配合物は、油性相としてオキアミ油又はヤシ油、又はオキアミ油3部及びボラージ油1部、分散剤として水、乳化剤としてTween 80及びKolliphor RH40、湿潤剤としてプロピレングリコール、緩衝剤としてクエン酸ナトリウム二水和物及び/又はヒスチジン塩酸塩を含有する。
【0155】
以下の表は、眼科用の活性剤を含む例示的なマイクロエマルションを提供する。
【0156】
【0157】
配合物01、02、03及び04では、Tween 80及びプロピレングリコールは、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤であり、脂質相において、Tween 80及びプロピレングリコールは2:1の比率であり、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤であり、水性相において、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは3:1の比率である。配合物1では、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの4.05%(w/v)であり、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの1.66%(w/v)である。
【0158】
【0159】
配合物06では、Tween 80、プロピレングリコール及びKolliphor RH40は脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤であり、脂質相において、Tween 80、プロピレングリコール及びKolliphor RH40は1:2:1.5の比率であり、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤であり、水性相において、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは3:1の比率である。これらの配合物では、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの4.05%(w/v)であり、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの1.66%(w/v)である。
【0160】
【0161】
配合物05、07、08及び09において、Tween 80、プロピレングリコール及びKolliphor RH40は、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤であり、脂質相において、Tween 80、プロピレングリコール及びKolliphor RH40は1:2:1.5の比率であり、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤であり、水性相において、Kolliphor RH40及びプロピレングリコールは3:1の比率である。これらの配合物において、脂質相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの18.67%(w/v)であり、水性相の界面活性剤/補助界面活性剤はマイクロエマルションの4.15%(w/v)である(得られるマイクロエマルション中の全界面活性剤/補助界面活性剤は23.83%である)。
【0162】
実施例7
ラタノプロストを含有する実施例6の配合物01、02及び03の安定性
実施例6に記載した配合物01、02及び03を、その化学的安定性及び物理的安定性を評価するためにストレス試験に供した。60℃で15日間の熱ショック条件で得られた安定性データを
図9A~
図9Eに示し、それらの図はpH(
図9A)、浸透圧(
図9B)、サイズ(
図9C)、pZ(
図9D)、及びラタノプロストの回収率(%)(
図9E)を示す。
【0163】
試験したすべての配合物は、全試験期間中、規格内の化学物理的パラメータを維持することが示された。配合物03は、ラタノプロストの割合の変動が少なく、浸透圧の値が眼科での使用に適していることで際立っていた。
【0164】
安定性試験を配合物03に対して24ヶ月間実施した。その結果を
図10A~
図10E及び
図11A~
図11Dに示す。25℃、40℃及び5℃で得られた安定性データは、
図10A~Eに示されており、これらは、pH(
図10A)、浸透圧(
図10B)、サイズ(
図10C)、及びpZ(
図10D)を示す。
図10Eでは、グラフは、長期安定性試験(25℃±2℃、RH=60%±5%)におけるラタノプロストの濃度を、試験時間の違いに応じて回収率(%)で示す。ラタノプロストの濃度は、分析の全期間において規格範囲内に留まっていた。
図11Aは、長期安定性試験(25℃±2℃、RH=60%±5%)の過程で測定したPDI及び平均サイズ分布を示す。
図11B~
図11Dは、それぞれ40℃で6ヶ月、60℃で3週間、4℃で10ヶ月強の間に測定したPDI及び平均粒子サイズを示す。測定したパラメータは、試験期間中、予想された範囲内であった。
【0165】
実施例8
マソプロコールを含有する実施例6の配合物04及び06の安定性
実施例6に記載した配合物04及び06を、その安定性プロファイルを評価するために長期安定性試験に供した(25℃±2℃、RH=60%±5%、5℃±3℃)。
図12A~
図12Eは、長期安定性試験の過程で測定したpH(
図12A)、浸透圧(
図12B)、サイズ(
図12C)、pZ(
図12D)、及びマソプロコール回収率(%)(
図12E)を示す。測定したパラメータは、試験期間中、予想された範囲内に留まった。
【0166】
実施例9
配合物07、08及び09の安定性
実施例6に記載したソラフェニブトシル酸塩を含有する配合物07、08及び09を、その安定性を評価するために、ストレス試験及び長期安定性試験に供した。
【0167】
図13A~
図13Eは、長期安定性試験(25℃±2℃、RH=60%±5%)及び加速安定性試験(40℃±2℃、RH=75%±5%)の過程で測定したpH(
図13A)、サイズ(
図13B)、多分散性指数(
図13C)、pZ(
図13D)及びソラフェニブ回収率(%)(
図13E)を示す。いずれの条件においても、全試験期間中、すべての配合物が予想された範囲内のパラメータを示した。特に、配合物07は、加速条件試験において、非常に小さいpH値の変動を示した。
【0168】
実施例10
Statens Seruminstitut Rabbit Cornea(SIRC、スタテンス・セルムインスティトゥート・ウサギ角膜)細胞における細胞生存率
SIRC細胞を、完全イーグル基礎培地(BME)中、37℃、5%CO2でサブコンフルエント(70~90%)になるまで増殖させた後、異なる濃度(%)の対照配合物又はマイクロエマルションに繰り返し暴露(6×5分)した(表4参照)。細胞毒性については、細胞を陰性対照(ウシ胎仔血清を含まないBMEを含む滅菌培養培地、CTRL-)及び陽性対照(塩化ベンザルコニウム0.01%、CTRL+)にも曝した。細胞生存率の分析は、ECVAMプロトコル第17番を用いて、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイにより行った。光学密度(O.D.)は、マイクロプレート分光光度計を用いて570nmで読み取った。細胞生存率は、陰性対照に対するパーセンテージとして算出し、統計分析は、カットオフ50%に対する1標本t検定で行った。
【0169】
【0170】
MTTによって評価した生存率は、細胞の死滅は、いずれの試験条件においても、活性成分を含むマイクロエマルションにも含まないマイクロエマルションにも伴わないことを実証した(データは示さず)。植物油及び/又は動物油を含有するマイクロエマルションは、合成由来の鉱油を含有するマイクロエマルションよりも優れた細胞適合性を示した。
【0171】
実施例11
慢性眼圧亢進モデルにおけるインビボでの有効性
ラットの上強膜静脈(EVC)の焼灼によって誘発した慢性眼圧亢進モデルに対して、インビボ薬理学試験を実施した。実施例6に記載したラタノプロスト0.005%を含有するマイクロエマルション(配合物03)の降圧効果を、6日間の治療サイクルの間、1日1滴を投与することによって評価した。
【0172】
マイクロエマルション(配合物03)に配合されたラタノプロストは、平均3.3mmHg[n=15、95%CI(2.9、3.7)]の眼圧の低下をもたらした。
図14に示すように、この効果は、ラタノプロスト0.005%の標準溶液(溶液)で処置した眼における効果[n=11、3.6mmHg、95%CI(3.2、4.1)]と同等であった(p>0.05、スチューデントt検定)。
【0173】
実施例12
網膜虚血-再灌流モデルにおける有効性
ラットの網膜虚血-再灌流(IR)モデルを用いて、実施例6に示したマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(マイクロエマルション配合物04及び06)並びにソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(マイクロエマルション配合物05及び07)のインビボでの有効性を実証した。IRを誘発する前に、体重200~250gのBrown-Norway系の成体雄ラットに、a)配合物1、b)配合物04、c)配合物6、d)配合物06、e)配合物2、f)配合物05、g)配合物7、又はh)配合物07のいずれか1つの配合物を、2日間(12μl、1日2回、右目)、及び傷害の1時間前(12μl、右目)に局所的に処置した。動物を麻酔し、トロピカミド0.5%で散瞳した後、生理食塩水の容器に接続した30ゲージの針を右目の前房に挿入してIRを誘発した。生理食塩水の容器は、手術台からの高さが、眼球レベルの静水圧が約130mmHgになるように配置した。虚血を誘発するために眼圧をこのようなレベルまで上げることは、目の奥が「白くなること」で確認した。45分後、針を抜いて網膜の血流を回復させた。
【0174】
虚血エピソードから6時間後に動物を犠牲にして網膜を採取し、50μlの保存安定化液(RNAlater(登録商標)、ThermoFisher Scientific(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)から入手可能)に保存し、リアルタイムRT-PCRによって、マソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04及び06)又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05及び07)が炎症性遺伝子の発現に及ぼす何らかの潜在的な影響を評価した。
【0175】
マソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルションで処置したラットの網膜における遺伝子発現レベルの解析により、以下のことが示された:a)配合物04で処置すると、担体のみ(配合物1;
図15A参照)で処置した動物の網膜で観察された発現レベルと比較して、TNF-α(28.7%)及びiNos(130%)の発現レベルが有意に低下した(
#p≦0.05、
##p≦0、01);b)配合物06で処置すると、担体のみ(配合物6;
図15B参照)で処置した動物の網膜で観察された発現レベルと比較して、TNF-α(49.5%)及びiNos(82.4%)の発現レベルが有意に低下した(
#p≦0.05、
##p≦0.01)。
【0176】
虚血ラットを、ソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルションで処置したすると、以下のことが示された:a)配合物05は、担体のみ(配合物2、
図16A参照)で処置した動物の網膜で観察された発現レベルと比較して、TNF-α(20.7%)及びiNos(87.3%)のmRNAの発現レベルを有意に低下させた(
#p≦0.05、
##p≦0.01);b)配合物07を用いた処置は、担体のみ(配合物7;
図16B参照)で処置した動物の網膜で観察された発現レベルと比較して、TNF-α(45.3%)及びiNos(96.5%)の発現レベルを有意に低下させた(
#p≦0.05、
##p≦0.01)。
【0177】
植物油(配合物07)及び動物油(配合物06)を含むマイクロエマルションは、合成由来の鉱油を含むマイクロエマルション(配合物04及び05)が示すものよりも優れた有効性プロファイルを示した。
【0178】
実施例13
脈絡膜新生血管のマウスモデルにおける有効性
加齢黄斑変性症(AMD)におけるマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)及びソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05及び07)の抗血管新生作用の可能性を評価するために、脈絡膜新生血管(CNV)のマウスモデルを用いた。この目的のために、6~8週齢の雄のマウスC57Bl6/Jを、CNVの誘発に先立つ3日間とその後の7日間、以下の配合物のいずれかで局所的に前処置した(5μl、1日2回、両眼):a)配合物1、b)配合物04、c)配合物2、d)配合物05、e)配合物7又はf)配合物07。
【0179】
レーザー誘導前に、動物を、ケタミン及びキシラジン(それぞれ80mg/Kg及び10mg/Kg)の溶液を腹腔内注射して麻酔し、0.5%トロピカミドを局所的に塗布して瞳孔を拡張した。その後、2.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロースの水溶液を両眼に導入した。カメラで眼底を観察し、画像誘導型レーザーシステム(Micron IV、Phoenix Research Laboratories(フェニックス・リサーチ・ラボラトリーズ)、プレザントン(Pleasanton)、カリフォルニア州)を用いて光凝固を誘導した。視神経から等距離で両眼に4つの放射状スポットをレーザーインパルス(532nm、持続時間100msec、出力200mW)で照射した。新血管形成領域は、免疫蛍光検査によって決定した。頸椎脱臼で動物を犠牲にし、取り出した眼球を4%パラホルムアルデヒドに入れた後、眼球の前部分を取り除き、「眼杯」と呼ばれる残りの部分(強膜、脈絡膜、網膜色素上皮[RPE]、及び網膜)を0.7%FITC-グリフォニアシンプリシフォリア(Griffonia simplicifolia)イソレクチンの存在下で16時間インキュベートした。各スポットの体積は、RPE細胞に対して上面から最深部の焦点面まで、z軸に沿った画像のスタック(20~25フレーム、各フレームの厚さは1μm)を蛍光取得して求めた。1枚のスタックを構成する各フレームの蛍光面積をプログラムImageJ(NIH、ベセスダ(Bethesda)、メリーランド州)で測定し、加算することで、新生血管の体積の測定値を得た。
【0180】
結果は、マソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)で局所的に処置した動物は、担体のみ(配合物1)と比較して、脈絡膜新生血管を約33%(p=0.0395)もの統計的に有意な減少を示すことを明らかにした(
図17)。ソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)で局所的に処置した動物も、脈絡膜新生血管の54%の減少を示し、この結果は担体のみ(配合物2)で処置した動物と比較して非常に有意であった(
図18A)。同様の結果は、配合物07で局所的に処置した動物においても得られており、配合物07は、担体のみ(配合物7)で処置した場合と比較して、脈絡膜新生血管を約61%(p=0.0001)有意に減少させた(
図18B)。
【0181】
植物油を含有し、ソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物07)は、合成由来の鉱油を含むマイクロエマルション(配合物05)で観察されたものよりも優れた有効性プロファイルを示した。
【0182】
実施例14
ストレプトゾトシン誘発糖尿病性網膜症モデルにおける有効性
ラットのストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病性網膜症のモデルにおいて、マソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)及びソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)の有効性を評価するために実験を計画し行った。この目的のために、スプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)雄性ラット(200~250g)にSTZ(60mg/kg 腹腔内(i.p.))を単回投与で注射し、血糖値が250mg/dlを超える動物のみをこの手順の残りの部分に含めるために、24時間後に血糖値を測定した。血糖値を測定した日から始めて21日間、動物の両眼を1日2回処置し、以下の処置群に分けた。
・12μlの配合物1又は配合物2で処置した陰性対照ラット(ctrl-)及び糖尿病ラット(STZ)、及び
・12μlの配合物04又は配合物05で処置した糖尿病ラット。
【0183】
処置過程が終了した後、動物を犠牲にし、球を取り出し、リアルタイムRT-PCR及びウェスタンブロットによる遺伝子及びタンパク質の発現試験をそれぞれ行うために、網膜を処置した。
【0184】
リアルタイムRT-PCRによる遺伝子発現解析は、STZ処理動物と比較して、マソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)(
図19A~
図19F)、又はソラフェニブトシル酸塩0.300%を含有するマイクロエマルション(配合物05)(
図19A~
図19F)で処置した場合は、解析した炎症性遺伝子及び血管新生遺伝子(すなわち、TNFa、NFκB、IGF1、IGF1R、VEGFR1及びVEGFR2)の発現レベルが有意に低下することを明らかにした。
【0185】
ウェスタンブロットによるタンパク質発現分析は、配合物04(
図20A~
図20D)又は配合物05(
図20E~
図20H)による処置は、STZ誘発動物の網膜と比較して、TNFα、VEGFR1及びVEGFR2の発現レベルを有意に低下させることを示し、従って、本明細書に記載されるように配合された両マイクロエマルションの抗炎症及び抗血管形成効果が確認された(
図20A~
図20H)。
【0186】
実施例15
インビボでの眼の忍容性
以下のマイクロエマルション、a)配合物1、b)配合物04、c)配合物6、d)配合物06、e)配合物2、f)配合物05、g)配合物7、又はh)配合物07の28日間の局所反復治療過程における眼の忍容性(耐容性)を評価するために、長期忍容性試験をニュージーランドシロウサギ(NZW)に対して実施した。
【0187】
体重約2Kgの、雄24匹及び雌24匹の48匹のウサギを使用し、それぞれ6匹(雄3匹及び雌3匹)から構成される8つの実験群に無作為に分けた。ヒトの投与法を模倣するために、50μlの配合物又はビヒクル(Tris pH7.4)を、それぞれ右眼(処置)又は左眼(ビヒクル)の結膜嚢内に注入することにより、1日2回投与した。
【0188】
検討したマイクロエマルションの忍容性は、McDonaldらが1987年に改変したDraize(ドレーズ)試験(Dermatotoxicology、Marzulli及びMaibach編、Hemisphere Publishing Corporation、第3版の中のEye irritation)によって決定した。統計的に有意な差は、一般線形モデル分析及び対応ないt検定によって求めた。改変Draize試験を用いて割り当てられたスコアは、いずれの治療群においても性別間の差を示すものではなかった。
【0189】
統計は、いずれの処置群においても、処置を受けた眼(右)と対照の眼(左)との間に有意な差がなかったことを示す。薬剤を含むマイクロエマルション配合物(すなわち、担持したマイクロエマルション)と、相対するビヒクル(すなわち、担持していないマイクロエマルション)の間には差がなかった。
【0190】
植物油及び/又は動物油をベースにしたマイクロエマルションは、合成由来の鉱油を含むマイクロエマルションよりも優れた眼の忍容性プロファイルを示した。
【0191】
実施例16
ドライアイのマウスモデルにおける有効性
ドライアイのマウスモデルを用いて、実施例6に記載したマソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)の有効性を確認した。この目的のために、C57BL/6雌マウス(8~12週齢)を、低湿度(20%RH未満、21~22℃)、一定の気流(20L/min)の制御環境室(CEC)に3日間暴露した。この環境条件に加えて、5mg/mlのスコポラミンを1日3回、3日間にわたって皮下注射した。同時に、陰性対照動物(CTRL-)のグループを、標準的な環境条件(21~23℃、50~60%RH)で飼育した。
【0192】
CEC内のマウスは、i)配合物1で処置した群、ii)配合物04で処置した群、及びiii)無処置の陽性対照群(CTRL+)の3群に分けた。試験品の7マイクロリットルを1日2回、3日間にわたって両眼に滴下注入した。CECの外側にいる動物、すなわちCTRL-は、試験期間中ずっと無処置であった。
【0193】
角膜の損傷を評価するために、ベースライン(t=0)及び3日間の処置後(T3)に、標準化された段階分けシステムを用いて角膜のフルオレセイン染色を細隙灯(スリットランプ)で評価した。T3時点で動物を犠牲にし、角膜を切り取って、リアルタイムRT-PCRによる炎症性遺伝子の発現に対する処置法の有望な影響を評価することを目的としたさらなる処理のために保存した。
【0194】
T3時点での観察では、CTRL+マウスの角膜の染色性は、CTRL-に対して有意に悪化することが示された(p≦0.0001)。配合物1で処置しても、CTRL+に対する顕著な改善は生じなかったが、配合物04は角膜スコアを有意に低下させた(p<0.05、対CTRL+)(
図21)。
【0195】
遺伝子発現の解析は、配合物04による処置により、CTRL+の動物に比べてTNFaの発現レベルが58%も有意に低下することを示した(
#p<0.05、対CTRL+)(
図22)。マソプロコール0.302%を含有するマイクロエマルション(配合物04)は、眼表面の病理であるドライアイのマウスモデルにおいて、眼徴候の軽減に有効であった。
【0196】
当業者には変更点が明らかになるので、本発明は添付の請求項の範囲によってのみ限定されることが意図されている。