(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】搬送加熱装置
(51)【国際特許分類】
F27B 9/12 20060101AFI20241009BHJP
F27B 9/02 20060101ALI20241009BHJP
F27D 9/00 20060101ALI20241009BHJP
B23K 1/008 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
F27B9/12
F27B9/02
F27D9/00
B23K1/008 C
(21)【出願番号】P 2022051283
(22)【出願日】2022-03-28
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003236
【氏名又は名称】弁理士法人杉浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 彰一
(72)【発明者】
【氏名】志田 淳
(72)【発明者】
【氏名】田森 信章
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勇武
【審査官】齋藤 健児
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-340569(JP,A)
【文献】特開2001-345550(JP,A)
【文献】特開2003-275866(JP,A)
【文献】特開2001-198671(JP,A)
【文献】特開2022-065287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/12
F27B 9/02
F27D 9/00
B23K 1/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加熱炉が配列され、前記加熱炉によってワークに対して熱風を吹きつけるように構成された加熱装置と、前記加熱装置に対してワークを搬入する搬送コンベアを有し、
前記加熱炉のそれぞれは上部炉体及び下部炉体で構成され、
少なくとも一部の
前記加熱炉の前記上部炉体の搬送方向の前又は後に箱状の上部温度調整部が配置され、少なくとも一部の
前記加熱炉の前記下部炉体の搬送方向の前又は後に箱状の下部温度調整部が配置され、
前記上部温度調整部が前記上部炉体の壁面に近接又は接触して位置し、前記下部温度調整部が前記下部炉体の壁面に近接又は接触して位置し、
前記上部温度調整部及び前記下部温度調整部のそれぞれが媒体導入口と、媒体排出口を有する
と共に、内径に比して小さい高さとされた複数の干渉板が互い違いに内部に配置されている搬送加熱装置。
【請求項2】
前記上部炉体及び前記下部炉体の炉壁と対向して空気層壁が設けられ、前記炉壁及び前記空気層壁の間に上部空気層及び下部空気層が形成された請求項
1に記載の搬送加熱装置。
【請求項3】
前記上部温度調整部及び前記下部温度調整部に対する媒体の供給及び供給停止と、前記上部空気層及び前記下部空気層に対する媒体の供給及び供給停止が独立している請求項
2に記載の搬送加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリフロー装置に対して適用される搬送加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リフロー装置は、搬送チェーンによって被加熱物としてのワーク例えばプリント基板が供給されるリフロー炉を備えている。リフロー炉は、例えば、搬入口から搬出口に至る搬送経路に沿って、複数のゾーンに対応する複数の加熱炉が順に配置された構成とされている。複数のゾーンは、加熱ゾーン、冷却ゾーンなどの役割を有する。
【0003】
加熱ゾーンでは、ワークに対して熱風が吹きつけられることによって、はんだ組成物内のはんだを溶融させてプリント基板の電極と電子部品とがはんだ付けされる。リフロー装置では、加熱時の温度を所望の温度プロファイルにしたがって制御することによって、所望のはんだ付けがなされる。すなわち、最初の区間が加熱によって温度が上昇する昇温部とされ、次の区間がほぼ一定温度のプリヒート(予熱)部とされ、次の区間がリフロー(本加熱)部とされ、最後の区間が冷却部とされる。
【0004】
例えば特許文献1には、隣り合うゾーンの温度差を高い状態で維持するリフロー装置が記載されている。特許文献1のリフロー装置では、複数のチャンバ内の雰囲気をチャンバ外に導出し、再び複数のチャンバのそれぞれに導入する外循環経路を形成する外循環ダクトと、外循環経路を通過する雰囲気を冷却する冷却手段と、各チャンバに導入される雰囲気の流量を制御可能な流量制御バルブと、流量制御バルブの開度を制御する制御手段とが設けられている。そして、温度を下げたいチャンバに対して雰囲気を選択的に導入するような制御がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる特許文献1のように、チャンバ内の雰囲気を取り出して冷却し、冷却後の雰囲気の温度を下げてチャンバに導入する構成の場合、雰囲気の温度を低下させるためには冷却手段が大型化するおそれがあった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、チャンバ内の雰囲気を冷却して戻す構成と異なる構成によって炉体の温度を迅速に低下させることができる搬送加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の加熱炉が配列され、加熱炉によってワークに対して熱風を吹きつけるように構成された加熱装置と、加熱装置に対してワークを搬入する搬送コンベアを有し、
加熱炉のそれぞれは上部炉体及び下部炉体で構成され、
少なくとも一部の加熱炉の上部炉体の搬送方向の前又は後に箱状の上部温度調整部が配置され、少なくとも一部の加熱炉の下部炉体の搬送方向の前又は後に箱状の下部温度調整部が配置され、
上部温度調整部が上部炉体の壁面に近接又は接触して位置し、下部温度調整部が下部炉体の壁面に近接又は接触して位置し、
上部温度調整部及び下部温度調整部のそれぞれが媒体導入口と、媒体排出口を有すると共に、内径に比して小さい高さとされた複数の干渉板が互い違いに内部に配置されている搬送加熱装置である。
【発明の効果】
【0009】
少なくとも一つの実施形態によれば、上部温度調整部及び下部温度調整部に対して媒体を供給することによって上部温度調整部及び下部温度調整部が設けられている炉体内の温度を低下させることができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本発明中に記載されたいずれの効果であってもよい。また、以下の説明における例示された効果により本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明を適用できる従来のリフロー装置の概略を示す略線図である。
【
図2】
図2は、リフロー時の温度プロファイルの例を示すグラフである。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態の説明に用いるリフロー装置の断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態の生産時の動作説明に用いる断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態の説明生産時の動作説明に用いる断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態の生産時の他の動作説明に用いる断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態の生産時の他の動作説明に用いる断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態の品種切り替え時の動作説明に用いる断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態の品種切り替え時の動作説明に用いる断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施形態について説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
<1.リフロー装置の一例>
<2.一実施形態>
<3.変形例>
なお、以下に説明する一実施形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において、特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限定されないものとする。
【0012】
<1.リフロー装置の一例>
図1は、本発明を適用できる従来のリフロー装置の概略的構成を示す。プリント配線板の両面に表面実装用電子部品が搭載されたワークが搬送コンベヤの上に置かれ、搬入口11からリフロー装置の加熱装置内に搬入される。搬送コンベヤが所定速度で矢印方向(
図1に向かって左から右方向)へワークを搬送し、ワークが搬出口12から取り出される。搬送コンベアの搬送方向が水平方向とされている。
【0013】
加熱装置は、搬入口101から搬出口102に至る搬送経路に沿って、複数の加熱炉が配列され、加熱炉によってワークに対して熱風(熱せられた雰囲気ガス)を吹きつけるように構成されている。複数の加熱炉(ゾーンと称する)がインライン状に配列されている。入口側から7個のゾーンZ1~Z7が加熱ゾーンであり、出口側の2個のゾーンZ8及びZ9が冷却ゾーンである。冷却ゾーンZ8及びZ9に関連して強制冷却ユニット103が設けられている。加熱ゾーンZ1~Z7のそれぞれは、それぞれ送風機、ヒータ、吹き出しパネルなどを含む上部炉体及び下部炉体を有する。なお、このゾーン数は、一例であり、異なる数のゾーンを有する構成としてもよい。
【0014】
上述した複数のゾーンZ1~Z9がリフロー時の温度プロファイルにしたがってワークの温度を制御する。
図2に温度プロファイルの一例の概略を示す。横軸が時間であり、縦軸がワーク例えば電子部品が実装されたプリント配線板の表面温度である。最初の区間が加熱によって温度が上昇する昇温部R1であり、次の区間がほぼ一定温度のプリヒート(予熱)部R2であり、次の区間がリフロー(本加熱)部R3であり、最後の区間が冷却部R4である。
【0015】
昇温部R1は、常温からプリヒート部R2(例えば150℃~170℃)まで基板を加熱する期間である。プリヒート部R2は、例えば等温加熱を行い、フラックスを活性化し、電極、はんだ粉の表面の酸化膜を除去し、また、プリント配線板の加熱ムラをなくすための期間である。リフロー部R3(例えばピーク温度で220℃~240℃)は、はんだが溶融し、接合が完成する期間である。リフロー部R3では、はんだの溶融温度を超える温度まで昇温が必要とされる。リフロー部R3は、プリヒート部R2を経過していても、温度上昇のムラが存在するので、はんだの溶融温度を超える温度までの加熱が必要とされる。最後の冷却部R4は、急速にプリント配線板を冷却し、はんだ組成を形成する期間である。なお、無鉛ハンダの場合では、リフロー部R3における温度は、より高温(例えば240℃~260℃)となる。
【0016】
図2において、曲線201は、鉛フリーはんだの温度プロファイルの一例を示す。Sn-Pb共晶はんだの場合の温度プロファイルの一例は、曲線202で示すものとなる。鉛フリーはんだの融点は、共晶はんだの融点より高いので、プリヒート部R2及びリフロー部R3における設定温度が共晶はんだに比して高いものとされている。
【0017】
図1に示すリフロー装置では、
図2における昇温部R1の温度制御を、主としてゾーンZ1及びZ2が受け持つ。プリヒート部R2の温度制御は、主としてゾーンZ3、Z4及びZ5が受け持つ。リフロー部R3の温度制御は、ゾーンZ6及びZ7が受け持つ。冷却部R4の温度制御は、ゾーンZ8及びゾーンZ9が受け持つ。上述した複数の炉体間(ゾーン間)には、隙間が存在する。
【0018】
<2.一実施形態>
図3は、複数のゾーンからなる加熱装置の一部の断面図であり、
図4は、
図3のA-A線断面図であり、
図5は、
図3のB-B線断面図である。ワークWの搬送方向に沿って加熱ゾーンに含まれるゾーンZ(n-1)、ゾーンZn、ゾーンZ(n+1)が示されている。リフロー装置の加熱ゾーンZ1~Z7の上部炉体及び下部炉体は、
図3、
図4及び
図5に示す構成と同様の構成とされている。
【0019】
各ゾーンには、上部炉体及び下部炉体が対向して設けられ、上部炉体と下部炉体との対向間隙内で、プリント回路基板の片面又は両面に表面実装用電子部品が搭載されたワークWが搬送コンベア1a,1bによって搬送される。上部炉体内及び下部炉体内は、雰囲気ガスである例えば窒素(N2)ガスが充満している。上部炉体は、ワークWに対して下方に熱風(熱せられた雰囲気ガス)を噴出してワークWを加熱し、下部炉体は、ワークWに対して上方に熱風を噴出してワークWを加熱する。なお、熱風と共に赤外線を照射しても良い。
【0020】
上部炉体は、モータ2により回転されるファン3(回転羽根)が加圧室4内に配置され、加圧室4から吹き出しパネル5に形成されている孔を通じて下方に熱風が吹き出される。ファン3と吹き出しパネル5の間にファン3からの風を分散させてワークW面上の温度むらを防止するための整流板が配置されるようにしてもよい。ファン3は、軸流ファン又は遠心ファンである。ファン3の負圧側にヒータ6が設けられている。これらのファン3、吹き出しパネル5及びヒータ6が炉壁7で囲まれた炉体内に配置されている。
【0021】
さらに、炉壁7と所定の間隔で対向して空気層壁8が設けられ、炉壁7及び空気層壁8の間に上部断熱空気層としての上部空気層9が形成される。上部空気層9には、
図4に示すように、導入口10及び排出口11が取り付けられている。図示しないが、導入口10に対してゾーンごとに設けられたファンから配管を通じてエアが供給され、導出口11からファンに対して配管を通じてエアが導出される。このエアの経路中にバルブ等の制御手段が設けられ、上部空気層9に対してエアが供給/供給停止とされている。なお、複数ゾーンに共通のファン及び配管を設けてもよい。
【0022】
下部炉体は、上部炉体と同様に、炉壁17で囲まれた炉体内に、モータ12により回転されるファン(回転羽根)13、吹き出しパネル15及びヒータ16が配置されている。ファン13は、加圧室14内に配置される。吹き出しパネル15に形成されている孔を通じて上方に熱風が吹き出される。ファン13と吹き出しパネル15の間にファン3からの風を分散させてワークW面上の温度むらを防止するための整流板が配置されるようにしてもよい。
【0023】
さらに、炉壁17と所定の間隔で対向して空気層壁18が設けられ、炉壁17及び空気層壁18の間に下部断熱空気層としての下部空気層19が形成される。下部空気層19には、
図4に示すように、導入口20及び排出口21が取り付けられている。図示しないが、導入口20に対してゾーンごとに設けられたファンから配管を通じてエアが供給され、導出口21からファンに対して配管を通じてエアが導出される。このエアの経路中にバルブ等の制御手段が設けられ、下部空気層19に対してエアが供給/供給停止とされている。なお、複数ゾーンに共通のファン及び配管を設けてもよい。
【0024】
上部空気層9及び下部空気層19はリフローを行うための炉の内部空間とは隔離された構成とされている。したがって、上部空気層9及び下部空気層19に対して導入する媒体としてエアを使用することができる。なお、導入する媒体の種類としては、エア以外の気体(例えば窒素ガス)又は液体(例えば水)を使用してもよい。
【0025】
図3において斜線を付した部材が上部温度調整部31及び下部温度調整部41である。一実施形態では、ゾーンZ(n-1)、ゾーンZn、ゾーンZ(n+1)のワーク搬送方向の前側に存在する上部炉体間の隙間に上部温度調整部31が配置され、ゾーンZ(n-1)、ゾーンZn、ゾーンZ(n+1)のワーク搬送方向の前側に存在する下部炉体間の隙間に下部温度調整部41が配置される。上部温度調整部31は、上部炉体の壁面としての空気層壁8に近接又は接触して位置し、下部温度調整部41は、下部炉体の壁面としての空気層壁18に近接又は接触して位置している。
【0026】
上部温度調整部31は、
図5に示すように、密閉構造を有する。例えば全周溶接した金属の箱状のものであり、箱の一面に媒体導入口32及び媒体排出口33が全周溶接によって取り付けられている。また、箱の対向する面から交互に干渉板34が内側に突出されている。干渉板34の高さは、箱の内径(高さ)よりやや小とされている。したがって、媒体導入口32から供給された媒体例えばエアが干渉板34の先端と内面の隙間を通過して媒体排出口33から排出される。干渉板34を設けることによって、上部温度調整部31内部においてエアの流れる経路の長さが干渉板34を設けない場合と比較してより長くなり、上部温度調整部31による冷却効果を増大することができる。
【0027】
下部温度調整部41は、上述した上部温度調整部31と同様の構成を有する。下部温度調整部41の下側に媒体導入口及び媒体排出口が設けられている。上部温度調整部31及び下部温度調整部41の媒体導入口32は共通の配管と接続され、媒体排出口33は共通の配管(図示しない)と接続される。共通の配管を通じて上部温度調整部31及び下部温度調整部41に対してエアが供給/供給停止とされている。
【0028】
上部温度調整部31及び下部温度調整部41は密閉構造であるので、リフローを行うための炉の内部空間とは隔離された構成とされている。したがって、上部温度調整部31及び下部温度調整部41に対して導入する媒体としてエアを使用することができる。なお、導入する媒体の種類としては、エア以外の気体(例えば窒素ガス)又は液体(例えば水)を使用してもよい。また、上部温度調整部31及び下部温度調整部41に対する媒体の供給及び供給停止と、上部空気層9及び下部空気層19に対する媒体の供給及び供給停止が独立したものとされ、それぞれの媒体の供給及び供給停止が別々に制御される。
【0029】
なお、上部温度調整部31及び下部温度調整部41は加熱ゾーンの全てのゾーンに設ける必要はなく、一部のゾーンに対して設けてもよい。特に、温度が高くなるリフロー部(本加熱)に対して上部温度調整部31及び下部温度調整部41が設けられる。
【0030】
本発明の一実施形態の動作について説明する。
図6及び
図7は、ワークWを流してリフローを行う生産時の動作を示している。
図6、
図8及び
図10は、
図3と対応する図面である。但し、ゾーンZ(n-1)については省略している。
図7、
図9及び
図11は、
図4と対応する図面であり、ゾーンZnの断面を示している。生産時には、ヒータ6,16により加熱された雰囲気がファン3、13により吹き出しパネル5,15を通じてワークWに対して吹きつけられる。また、加圧室4,14と炉壁7,17の間の空間を通じてファン3、13に雰囲気が吸い込まれて吹き出される。生産時では、上部空気層9及び下部空気層19、並びに上部温度調整部31及び下部温度調整部41に対するエアの供給及び排出が停止されている。
【0031】
生産時であっても、
図8及び
図9に示すように、ゾーン間の温度差を増加させるために所定のゾーンの上部温度調整部31及び下部温度調整部41に対してエアの供給及び排出を行い、上部空気層9及び下部空気層19に対するエアの供給及び排出を停止させることもできる。
図8及び
図9の例では、ゾーンZnのワーク搬送方向の前後に配置されている上部温度調整部31及び下部温度調整部41に対してエアの供給及び排出がなされる。したがって、ゾーンZnの炉内温度を隣接するゾーンZ(n-1)及びゾーンZ(n+1)の炉内温度に対して温度干渉することなく大幅に低下させることが可能となる。なお、生産時であっても、上部温度調整部31及び下部温度調整部41のみならず、上部空気層9及び下部空気層19に対するエアの供給及び排出も制御するようにしてもよい。さらに、上部空気層9及び下部空気層19に対するエアの供給及び排出、並びに上部温度調整部31及び下部温度調整部41に対するエアの供給及び排出を別々に、制御するようにしてもよい。これらの制御を組み合わせて炉内温度を所望のものに制御することができる。
【0032】
図10及び
図11は、ワークの種類の変更、プロファイルの変更などの品種切り替え時の動作を示す。
図10における×の記号はエアの流れを表し、紙面垂直方向で、手前から奥に向かっていることを示す。段取り替え時には、上部空気層9及び下部空気層19の全てに対するエアの供給及び排出が行われる。また、上部温度調整部31及び下部温度調整部41の全てに対するエアの供給及び排出がなされる。この処理によって段取り替えに要する時間を短縮化することができ、生産効率を向上できる。
【0033】
本発明の一実施形態では、一例として、リフローゾーンにおいて、240℃から210℃に温度低下させる確認を行ったところ、従来技術と比較して時間が1/2に短縮されたことを確認した。また、隣接するゾーンの温度設定値の差を設け、本発明と従来技術を比較したところ、本発明技術を適用することで、従来技術と比べ低温側のゾーンの温度設定値に対する乖離幅を1/10に低減できたことを確認した。
【0034】
<3.変形例>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えばファンが背面から雰囲気を吸い込む構成に限らず、前面から雰囲気を吸い込む構成としてもよい。また、本発明は、プリント基板に限らず、フレキシブル基板、リジッド基板とフレキシブル基板とを貼り合わせた基板、これらを組み合わせたリジッドフレキ基板のリフローに対しても適用できる。さらに、リフロー装置に限らず、樹脂の硬化のための加熱装置等に対しても適用できる。また、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0035】
Z(n-1),Zn,Z(n+1)・・・ゾーン、
101・・・搬入口、102・・・搬出口、103・・・強制冷却ユニット、
1a,1b・・・搬送コンベア、3,13・・・ファン、6,16・・・ヒータ、
7,17・・・炉壁、8,18・・・空気層壁、9・・・上部空気層、
19・・・下部空気層、31・・・上部温度調整部、41・・・下部温度調整部