IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

<>
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図1
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図2
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図3
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図4
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図5
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図6
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図7
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図8
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図9
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図10
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図11
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図12
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図13
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図14
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図15
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図16
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図17
  • 特許-検証装置、検証方法及び検証システム 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】検証装置、検証方法及び検証システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/07 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
G06F11/07 190
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022054837
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023129175
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2022032604
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 淳平
(72)【発明者】
【氏名】森重 健洋
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆太郎
【審査官】久々宇 篤志
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-068073(JP,A)
【文献】特開2015-215705(JP,A)
【文献】特開2016-015111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1製品に関する第1文書から抽出した複数のノードを組み合わせた第1リンク構造に基づく情報を記憶する記憶部と、
前記第1文書にマーキングされた前記ノードを組み合わせた前記第1リンク構造を構築し、第2製品に関する第2文書から抽出した複数のノードを組み合わせた第2リンク構造を構築する構築部と、
前記第2リンク構造の構築において、前記記憶部から読み出した前記第1リンク構造に基づく情報のうち少なくとも一部が活用可能かを検証した検証結果であって、前記第1リンク構造が実運用されることで前記第1リンク構造が変更された箇所を、前記第2文書に展開可能であるかを検証した前記検証結果を出力する検証部と、
前記検証結果を前記第2文書にフィードバックするフィードバック部と、を備える
検証装置。
【請求項2】
前記構築部は、
前記第1文書又は前記第2文書にマーキングされた前記ノードを抽出するノード抽出部と、
前記ノードの抽出結果に基づいて前記第1リンク構造又は前記第2リンク構造を生成するリンク構造生成部と、を有する
請求項に記載の検証装置。
【請求項3】
前記ノードは、前記第1製品又は前記第2製品で発生しうる故障の原因を表す原因ノードと、前記故障の原因の調査内容を表す調査項目ノードとで構成され、
マーキングは、前記原因ノード及び前記調査項目ノードに関連する部位が存在する場合に、前記原因ノード及び前記調査項目ノードに前記部位を表すタグを付し、前記原因ノード及び前記調査項目ノードに関連する部位が存在しない場合に、前記原因ノード及び前記調査項目ノードに前記部位が無いこと、及び前記故障が調査で解決する内容でないことを表すタグを付す処理である
請求項に記載の検証装置。
【請求項4】
前記検証部は、
前記第1文書にマーキングされた前記ノードと、前記第2文書とを比較して、前記第2文書にマーキングする処理で、前記第2文書にあって前記第1文書に無い前記ノードに、前記部位を表すタグを付ける文書比較部を有する
請求項に記載の検証装置。
【請求項5】
前記文書比較部は、前記第1文書と前記第2文書にある前記ノードに類似と書き込み、前記第2文書にあって、前記第1文書に無い前記ノードに差分と書き込み、前記第1文書にあって、前記第2文書に無い前記ノードに不要と書き込み、前記第1文書に付されたタグが、前記部位が無いこと、及び前記故障が調査で解決する内容でないことを表す場合に、前記タグが付された前記ノードに除外と書き込んだログを生成する
請求項に記載の検証装置。
【請求項6】
前記検証部は、
前記第1文書から前記ノードを抽出した第1ノード抽出結果と、実運用されている前記第1リンク構造とを比較して、実運用されている前記第1リンク構造が変更された箇所を比較結果として出力する比較部と、
前記第2文書から前記ノードを抽出した第2ノード抽出結果と、前記比較結果とに基づいて、変更可能と判断された前記ノードと、前記第2文書にマーキングされた前記ノードとを組み合わせた第2リンク構造を生成する前記リンク構造生成部を有する
請求項に記載の検証装置。
【請求項7】
前記フィードバック部は、
前記比較部による前記比較結果に基づいて確認された、実運用されている前記第1リンク構造に追加された前記ノードと、既存文書とを比較して、前記第1リンク構造に追加された前記ノードを、前記既存文書に追加する前記文書比較部を有する
請求項に記載の検証装置。
【請求項8】
前記文書比較部は、マーキングされた前記第1文書に存在せず、第3製品に関する第3文書と、前記第2文書とに共通して存在する前記ノードに対して、前記第3文書にマーキングされた前記ノードを前記第2文書にマーキングする
請求項に記載の検証装置。
【請求項9】
記憶部と、構築部と、検証部と、フィードバック部と、を備える検証装置として動作可能なコンピューターで実行される検証方法であって、
前記記憶部が、第1製品に関する第1文書から抽出した複数のノードを組み合わせた第1リンク構造に基づく情報を記憶する処理と、
前記構築部が、前記第1文書にマーキングされた前記ノードを組み合わせた前記第1リンク構造を構築し、第2製品に関する第2文書から抽出した複数のノードを組み合わせた第2リンク構造を構築する処理と、
前記検証部が、前記第2リンク構造の構築において、前記記憶部から読み出した前記第1リンク構造に基づく情報のうち少なくとも一部が活用可能かを検証した検証結果であって、前記第1リンク構造が実運用されることで前記第1リンク構造が変更された箇所を、前記第2文書に展開可能であるかを検証した前記検証結果を出力する処理と、
前記フィードバック部が、前記検証結果を前記第2文書にフィードバックする処理と、を含む
検証方法。
【請求項10】
第1製品に関する第1文書から抽出した複数のノードを組み合わせた第1リンク構造に基づく情報を記憶する記憶部と、
第2製品に関する第2文書から抽出した複数のノードを組み合わせた第2リンク構造を構築する構築部と、
前記第2リンク構造の構築において、前記記憶部から読み出した前記第1リンク構造に基づく情報のうち少なくとも一部が活用可能かを検証した検証結果を出力する検証部と、
前記検証結果を前記構築部にフィードバックするフィードバック部と、
実運用する前記第1リンク構造の運用形態に応じて前記第1リンク構造を変更する運用部と、を備える
検証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検証装置、検証方法及び検証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、精密機器等の製品の異常に対して、原因を特定し、修理を行うために参照される作業員用のマニュアルがある。マニュアルには、複数の異常事例と、それら異常事例に対して、異常を特定し、修理を行って、異常を解消する方法等が記載されている。
【0003】
特許文献1には、管理対象項目と複数の要因との関連についての専門家知識に基づいて特性要因図を作成する技術が開示されている。この特許文献1には、「機械学習では、まず、特性要因図における管理対象項目と複数の要因との関係に基づいて確率モデルのリンク構造を設定し、複数の要因のそれぞれに付された重要度に基づいて確率モデルの各ノードの値を設定する。そして、製造又はサービスの現場において取得されたデータを用いてリンク構造又は各ノードの値を学習する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6600120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、製品の異常に対応するために、マニュアルに記載された異常の原因と、原因を特定するための問診項目とを関連付けたベイジアンネットワークによる検証が、故障分析や修理リコメンドを行う装置、システム等に用いられている。例えば、既存製品Aのベイジアンネットワークは、顧客にサービスを提供する事業者のオペレーターにより、既存製品Aのマニュアルから構築される。本明細書では、事業者とはサービスの提供者であり、顧客とはサービスの被提供者である。そして、事業者側でサービスを利用する者をオペレーターと呼び、顧客側でサービスを利用する者をユーザーと呼ぶ。なお、既存製品Aは、顧客が製造する製品を想定する。そして、顧客が製造した製品を顧客自身が保守している場合と、他社が製造した製品を顧客が保守している場合とがある。
【0006】
オペレーターが既存製品Bのベイジアンネットワークを新規に構築する際には、既存製品Bを利用するオペレーターから、既存製品Aのベイジアンネットワークやマニュアルを利用したいという要望があった。既存製品Aのベイジアンネットワークを一部でも既存製品Bのベイジアンネットワーク構築に利用できれば、その分、ベイジアンネットワークの構築コストを短縮でき、かつ既存製品Aのベイジアンネットワークが既に使用された実績があるため検査の精度面で担保できるからである。しかし、顧客側で使用される既存製品Bには、顧客独自の仕様により新たに部品が取り付けられることが多い。また、そのような顧客独自の仕様が事業者に知らされていなかったり、マニュアル等に反映・更新されていないこともある。このため、単純に既存製品Bのベイジアンネットワークやマニュアルを既存製品Aのベイジアンネットワークやマニュアルを利用できるかどうかは、製品を利用する顧客やオペレーター側で、例えば、既存製品A,Bの実際の構成部品を把握し、さらに既存製品A,Bの実際の構成部品が類似している等の条件を評価して判断するしかなかった。
【0007】
特許文献1には、確率モデルを設定する方法について記載されているが、ベイジアンネットワークを初期構築する方法について記載されていない。また、特許文献1には、既存のベイジアンネットワークを、他の製品の文書に利用する方法は記載されていない。このため、特許文献1に記載された技術では、既存製品Aのベイジアンネットワークを既存製品Bに利用することができなかった。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、既存の製品に対して構築されたリンク構造を、他の製品に利用可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る検証装置は、第1製品に関する第1文書から抽出した複数のノードを組み合わせた第1リンク構造に基づく情報を記憶する記憶部と、第1文書にマーキングされたノードを組み合わせた第1リンク構造を構築し、第2製品に関する第2文書から抽出した複数のノードを組み合わせた第2リンク構造を構築する構築部と、第2リンク構造の構築において、第1リンク構造に基づく情報のうち少なくとも一部が活用可能かを検証した検証結果であって、第1リンク構造が実運用されることで第1リンク構造が変更された箇所を、第2文書に展開可能であるかを検証した検証結果を出力する検証部と、検証結果を第2文書にフィードバックするフィードバック部と、を備える
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、既存の製品に対して構築されたリンク構造を、他の製品に利用可能となる。例えば、既存の製品の第1リンク構造を一部でも、他の製品のベイジアンネットワーク構築に利用することで、他の製品のベイジアンネットワークの構築コストを短縮でき、かつ既存の製品のベイジアンネットワークが既に使用された実績があるため検査の精度面で担保できる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係るベイジアンネットワークの検証の構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る構築部と、現地運用部との内部構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る構築部の処理の例を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施の形態に係るマーキング部がマニュアルAにマーキングする処理を示す図である。
図5】本発明の一実施の形態に係るノード抽出部がマーキング済みマニュアルAからノードを抽出する処理を示す図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る現地運用されるベイジアンネットワークAの例を示す図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る検証部の内部構成例を示すブロック図である。
図8】本発明の一実施の形態に係る検証部の処理の例を示すフローチャートである。
図9】本発明の一実施の形態に係るマーキング済みマニュアルBの生成処理を示す図である。
図10】本発明の一実施の形態に係るノード抽出結果Aと、現地運用中のベイジアンネットワークA’との比較処理を示す図である。
図11】本発明の一実施の形態に係るノード抽出結果Bと比較結果A,A’の確認処理を示す図である。
図12】本発明の一実施の形態に係るフィードバック部の内部構成例を示すブロック図である。
図13】本発明の一実施の形態に係るフィードバック部の処理の例を示すフローチャートである。
図14】本発明の一実施の形態に係るフィードバック処理を示す図である。
図15】本発明の一実施の形態に係るマーキング済みマニュアルA’からのノード抽出処理を示す図である。
図16】本発明の一実施の形態に係るマーキング済みマニュアルDを流用する処理を示す図である。
図17】本発明の一実施の形態に係るマーキング済みマニュアルへのフィードバックの処理の流れを示す図である。
図18】本発明の一実施の形態に係る計算機のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0013】
[一実施の形態]
ここでは、既存製品Bのマニュアルを更新し、既存製品BのベイジアンネットワークBを生成するために、既存製品AのベイジアンネットワークAを展開可能であるかを検証する検証装置について説明する。
図1は、一実施の形態に係るベイジアンネットワークの検証システム1の構成例を示すブロック図である。
【0014】
検証システム1は、検証装置100及び現地運用部200を備える。本実施形態に係る検証システム1は、顧客又はオペレーターに対して故障した製品の故障部位、修理を推奨する修理リコメンドシステムとして用いられる。
【0015】
検証装置100は、構築部110と、検証部120と、フィードバック部130と、記憶部140とを備える。検証装置100は、顧客にマニュアルを提供する事業者の環境で構築されるシステムである。検証装置100は、事業者が管理するPC(Personal Computer)又はサーバーに構築されてもよいし、クラウド上に構築されてもよい。また、本システムを顧客の環境下にて構築してもよい。
【0016】
構築部110は、マニュアルや過去の対応履歴から製品に発生した故障の原因と調査項目を抽出してベイジアンネットワークを構築する。本実施形態では、構築部110がマニュアル内の抽出対象にマーキングを実施する。本明細書に例示するマニュアルとは、例えば、製品ごとに作成されるものであり、製品の仕様や操作方法を説明した製品マニュアル、製品の不具合時の対処法を説明したトラブル対応マニュアル等の文書が想定される。そして、構築部110は、マニュアル内の特定の内容をノードとしてマーキングし、このノードを関連付けたベイジアンネットワークを構築する。後述するように、例えば、製品のある部位が故障した場合、考えられる故障の「原因」と、「原因」を切り分けるための「調査」の方法を、それぞれ「原因ノード」と「調査項目ノード」としている。
【0017】
検証部120は、ベイジアンネットワークBの構築において、記憶部140から読み出したベイジアンネットワークAに基づく情報のうち少なくとも一部が活用可能かを検証した検証結果を出力する。ベイジアンネットワークAに基づく情報のうち少なくとも一部とは、例えば、既存製品Aのマニュアルに記載された内容の一部が想定される。検証部120は、既存製品Aのマニュアルに記載された内容に基づいて、ベイジアンネットワークBを構築可能か検証することができる。
【0018】
なお、検証部120は、既存製品Aのバージョンアップ等により、既存製品Aのマニュアルに追加、削除等の変更が行われた内容を用いて、ベイジアンネットワークAを更新可能か検証することもできる。検証部120は、ベイジアンネットワークAを更新可能であるとの検証結果を得られれば、構築部110は、この検証結果に基づき、既存製品Aのマニュアルに追加された内容等を用いて、ベイジアンネットワークAを更新することが可能となる。
【0019】
また、ベイジアンネットワークAが現地の顧客にて実運用されることでベイジアンネットワークAが変更された箇所を、既存製品B(第2製品の一例)に関するマニュアルBに展開可能であるかを検証した検証結果を出力することもできる。このため、検証部120は、ある製品のマニュアルを基にして構築されたベイジアンネットワークが、現在顧客が保持する他機種の製品に展開可能か否かを検証する。検証結果として、例えば、後述する図10に示す比較結果A,A’がある。
【0020】
また、検証部120は、将来リリースされる新規製品に対して、今回構築したベイジアンネットワークがどの程度有効か否かを検証する。ここで、「将来リリースされる新規製品」とは、新規製品Cが想定される。例えば、既存製品Aのベイジアンネットワークが完成した時点で、新規製品Cは必ずしも完成していなくともよい。検証部120は、新規製品Cのマニュアル完成又は新規製品Cのマニュアル作成中などの過程において、既存製品Aのベイジアンネットワークの有効性を検証する。これにより、新規製品Cの完成とタイムラグなく、新規製品Cに係る技術的な故障分析システムを運用することが可能となる。
【0021】
そして、検証部120は、例えば、既存製品Aのマニュアルで作ったベイジアンネットワークを、既存製品B又は新規製品Cに適用可能であるかを検証する。そして、他の製品にベイジアンネットワークを適用可能であれば、既存製品Aのマニュアルで作ったベイジアンネットワークを、既存製品B又は新規製品Cに流用し、既存製品B又は新規製品Cに合わせたベイジアンネットワークを構築する。このような処理を、構築済みベイジアンネットワークの横展開と呼ぶ。なお、ここで「他の製品」とは、例えば既存製品Aのアップデート版製品等の類似製品も含む。この検証に際して、検証部120は、既存製品Aのマーキング済みマニュアルを既存製品Bのマニュアルと比較し、マーキング済みマニュアルになされたマーキングの箇所に合わせて、既存製品Bのマニュアルにマーキングする。検証部120は、既存製品Bのマニュアルにマーキングを行うことで、既存製品Aの構築済ベイジアンネットワークを既存製品Bに対して横展開することが可能か否かを検証できる。
【0022】
フィードバック部130は、マニュアルBに検証結果をフィードバックする。例えば、フィードバック部130は、既存のベイジアンネットワークから現地運用により変更されたノードを検出し、変更されたノードに合わせて、既存製品B又は新規製品Cのマニュアルを変更するフィードバック処理を行う。この際、フィードバック部130は、既存のベイジアンネットワークに追加されたノードを確認する。そして、追加されたノードが既存製品B又は新規製品Cのマニュアルに追加することが有効であれば、フィードバック部130は、追加されたノードを既存製品B又は新規製品Cのマニュアルに追加することができる。
【0023】
記憶部140は、既存製品A(第1製品の一例)に関するマニュアルA(第1文書の一例)から抽出した複数のノードを組み合わせたベイジアンネットワークA(第1リンク構造の一例)に基づく情報を記憶する。後述する図2図7図12に示す各保存部は、記憶部140により構成される。
【0024】
現地運用部200は、現地で実運用するベイジアンネットワークAの運用形態に応じてベイジアンネットワークAを変更する。この現地運用部200は、既存製品A,B又は新規製品Cを使用する現地の顧客により運用される処理部である。現地の顧客は、運用形態に応じてベイジアンネットワークに新たな事項を追加することがある。そこで、現地運用部200は、現地運用されているベイジアンネットワークに対して変更(原因、調査項目の追加又は削除等)されたベイジアンネットワークを検証装置100に戻す。
【0025】
次に、図1に示した検証装置100の各部と、現地運用部200の内部構成例について、図2に示すブロック図と図3に示すフローチャートとを参照しながら説明する。なお、検証装置100の構築部110と、検証部120と、フィードバック部130は、各部で有する機能部又は保存部を共用する場合がある。
【0026】
<構築部の説明>
図2は、構築部110と、現地運用部200との内部構成例を示すブロック図である。
図3は、構築部110の処理の例を示すフローチャートである。
【0027】
構築部110は、マニュアルAにマーキングしたノードを組み合わせたベイジアンネットワークAを構築する。この構築部110は、マーキング部11、マニュアル保存部12、ノード抽出部13、抽出結果保存部14、ネットワーク生成部15及びネットワーク保存部16を備える。
【0028】
マニュアル保存部12には、製品ごとに複数のマニュアルが保存されている。マニュアルは、テキストや画像等を含む文書の一例であり、以下の説明では、この文書が電子化されたファイルをマニュアルと呼ぶ。マニュアルの記載内容が電子化されたファイルに対して、後述するマーキングが行われる。紙の文書であっても、OCR(Optical Character Recognition)解析が行われ、マニュアルの記載内容をコンピューターが文字列として認識可能な電子データに変換されていれば、この電子データに対してマーキングが行われる。なお、Web上で展開される複数階層のHTML(Hyper Text Markup Language)ファイルで構成されたマニュアルであっても、例えば、PDF(Portable Document Format)形式等で保存されることで、保存されたファイルに対してマーキングが可能となる。つまり、マーキングの対象が電子データであり、マーキングの処理結果が電子的に保存できれば、ファイル形式は問わない。
【0029】
図3に示すように、オペレーターがマーキング部11を通じて、原因ノードをマニュアルAにマーキングする(S1)。次に、オペレーターがマーキング部11を通じて、調査項目ノードをマニュアルAにマーキングする(S2)。マニュアルAは、第1製品に関する第1文書の一例である。本実施形態に係るマニュアルとして、製品の故障時に参照される故障対応マニュアルが想定される。原因ノードと調査項目ノードがマーキングされたマニュアルを、「マーキング済みマニュアル」と呼ぶ。
【0030】
なお、マニュアルAへのマーキングは、構築部110を使用するオペレーターが目視でマニュアルAの記載内容を確認することで行われる。このため、マーキング部11は、後述する図18に示す表示装置35にデータを出力し、入力装置36からデータを受け取ることで、マニュアルAにマーキングする機能を有している。そして、マーキング部11は、マーキング済みマニュアルAをマニュアル保存部12に保存する(S3)。
【0031】
<マーキングの実施例>
ここで、図3のステップS1、S2で行われる、マニュアルAに対するマーキング処理の具体例について説明する。
図4は、マーキング部11がマニュアルAにマーキングする処理を示す図である。
【0032】
マーキングは、原因ノード及び調査項目ノードに関連する部位が存在する場合に、原因ノード及び調査項目ノードに部位を表すタグを付す処理である。また、マーキングは、原因ノード及び調査項目ノードに関連する部位が存在しない場合に、原因ノード及び調査項目ノードに部位が無いこと、及び故障が調査で解決する内容でないことを表すタグを付す処理である。このようにマーキング処理として、タグが付されることで、後述するノード抽出処理によりノードを抽出し、ネットワーク生成処理によりベイジアンネットワークを生成する処理が行いやすくなる。
【0033】
図4の左側に示すマニュアルAには、異常の原因X,Y,Zが記載されている。そして、各原因に対して、複数の調査項目が記載されている。例えば、原因Xには、調査項目X-1,X-2が記載され、原因Yには、調査項目Y-1,Y-2が記載され、原因Zには、調査項目Z-1,Z-2が記載される。原因X,Y,Zは、原因ノードとも呼ばれる。図4の左側に示すマニュアルAに対してマーキング部11(図2を参照)によりマーキングが行われる。そして、ノードは、第1製品又は第2製品で発生しうる故障の原因を表す原因ノードと、故障の原因の調査内容を表す調査項目ノードとで構成される。
【0034】
図4の右側には、マーキング済みマニュアルAの例が示される。マーキング済みマニュアルAには、図4の左側に示すマニュアルAに対して、マーキングが行われた様子が示される。ステップS1における原因ノードのマーキングは、例えば、図4の右下に示すように、原因ノードの一つである原因Xに対して、部位Xというタグが付される処理である。同様の処理により、原因Yに対して部位Yというタグが付され、原因Zには、「部位無し」、「調査で解決する内容ではない」というタグが付される。
【0035】
また、ステップS2における調査項目ノードのマーキングは、例えば、原因Xの調査項目X-1,X-2に対して、部位Xというタグが付される処理である。また、原因Yの調査項目Y-1,Y-2に対して、部位Yというタグが付される処理であり、原因Zの調査項目Z-1,Z-2に対して、「部位無し」というタグが付される処理である。このようにオペレーターが各ノードにタグをつける処理を「マーキング」と呼ぶ。
【0036】
抽出対象除外マーキングは、原因Zがベイジアンネットワークで扱う事象ではない場合に、そのノウハウを蓄積する目的で実施される。例えば、原因Zは調査で解決する内容でないもの、などに抽出対象除外マーキングが行われる。原因ノード及び調査項目ノードに対して抽出対象除外マーキングが付されることで、他のオペレーターが見たときに、部位が無い、調査でないから採用しない、又はその他の理由で抽出しなかった、という抽出除外の理由が分かる。図4では、調査対象除外マーキングが、原因Zと、調査項目Z-1,Z-2に対して行われている。
【0037】
再び、図2図3の説明に戻る。
ノード抽出部13は、マニュアルAにマーキングされたノードを抽出する。すなわち、ノード抽出部13は、マニュアル保存部12から読み出したマーキング済みマニュアルAからノードを抽出する。そして、ノード抽出部13は、抽出したノードをノード抽出結果Aとして抽出結果保存部14に保存する(S4)。なお、後述する図7図8に示すように、ノード抽出部13は、マニュアルBにマーキングされたノードを抽出することも可能である。すなわち、ノード抽出部13は、マニュアル保存部12から読み出したマーキング済みマニュアルAからノードを抽出し、抽出したノードをノード抽出結果Bとして抽出結果保存部14に保存することもできる。
【0038】
<ノード抽出の例>
ここで、図3のステップS4で行われる、ノード抽出の処理の具体例について説明する。
図5は、ノード抽出部13がマーキング済みマニュアルAからノードを抽出する処理を示す図である。
【0039】
図5の左側には、図4に示したマーキング済みマニュアルAが示される。図3のステップS4の処理にて、ノード抽出部13は、マーキング済みマニュアルからノードを抽出する際、図5の右側に示すノード抽出結果Aと、ノード抽出ログとを生成する。
【0040】
図5の右上に示すノード抽出結果Aは、ネットワーク生成部15により生成されるベイジアンネットワークの元になるファイルである。ここでは、「部位無し」というタグ付けがされてない、原因ノードが原因X、Yであり、調査項目ノードが調査項目X-1,X-2、Y-1,Y-2がノード抽出結果Aとして抽出される。
【0041】
図5の右下に示すノード抽出ログには、ノード抽出部13により抽出されたノード、抽出が除外されたノードの情報がログとして書き込まれる。「抽出」は、抽出されたノードであり、上述したように原因ノードとして原因X、Yが該当し、調査項目ノードとして調査項目X-1,X-2、Y-1,Y-2が該当する。ログには、各ノードに対して、部位X、部位Yのタグも書き込まれる。
【0042】
「除外」は、抽出が除外されたノードであり、上述したように原因ノードとして原因Zが該当し、調査項目ノードとして調査項目Z-1,Z-2が該当する。ログには、抽出が除外されたノードに対して、「部位無し」というタグと、「調査で解決する内容ではない」というタグが書き込まれる。これらのタグは、ノードの抽出が除外された理由を表している。
【0043】
再び、図2図3の説明に戻る。
次に、ネットワーク生成部15は、抽出結果保存部14から読み出したノード抽出結果Aに基づいて、ベイジアンネットワークAを生成し(S5)、本処理を終了する。ベイジアンネットワークAは、マニュアルAから抽出したノードを組み合わせた第1リンク構造の一例である。そして、ネットワーク生成部15は、ノードの抽出結果に基づいて第1リンク構造を生成するリンク構造生成部の一例である。ステップS5で生成されたベイジアンネットワークAは、ネットワーク保存部16に保存される。なお、後述する図7図8に示すように、ネットワーク生成部15は、抽出結果保存部14から読み出したノード抽出結果Bに基づいて、ベイジアンネットワークBを生成することも可能である。
【0044】
現地運用部200は、ネットワーク運用部21及びネットワーク変更部22を備える。
ネットワーク運用部21は、ネットワーク保存部16から読み出したベイジアンネットワークAを、現地で運用するベイジアンネットワークA’として運用する。
【0045】
ネットワーク変更部22は、現地で運用するベイジアンネットワークAに対して、運用形態に応じた変更を行ったベイジアンネットワークA’をネットワーク保存部16に保存する。例えば、現地作業員が製品の故障等に対処すると、その対処方法がノウハウとして現地に蓄積される。そこで、現地作業員が、ネットワーク変更部22を通じて現地運用するベイジアンネットワークAにノードの追加または削除等を行うことでベイジアンネットワークA’に変更する際は、現地保守員が対応履歴又は対応状況に応じて画面上(後述する図6を参照)で問診した結果がベイジアンネットワークAに反映される。
【0046】
次に、現地運用により変更されるベイジアンネットワークの例について説明する。
図6は、現地運用されるベイジアンネットワークAの例を示す図である。
ベイジアンネットワークAは、例えば、機器の故障症状、故障原因、問診項目の階層に分かれて構成される。一つの故障症状には、複数の故障原因が考えられる。そして、現地保守員が故障原因に到達するには、複数の問診項目が必要とされる。そこで、図2に示すネットワーク運用部21は、ネットワーク保存部16から取得したベイジアンネットワークAを現地で運用する。例えば、ネットワーク運用部21は、図6に示すベイジアンネットワークAを現地のPC(Personal Computer)等の画面に表示する。
【0047】
図6の上段には、故障症状として、「製品Aは正常?」という項目がある。そして、この故障症状に対して「正常」又は「異常」のいずれかを入力可能なチェックボタンが設けられる。
図6の中段には、故障原因として、製品Aを構成する部位A~Eに対してそれぞれ正常又は異常を入力可能な項目が示される。例えば、故障原因に対して、「正常」又は「異常」のいずれかを入力可能なチェックボタンが設けられる。図6に示す故障原因は、上述した原因ノードに対応する。
【0048】
図6の下段には、問診項目として、部位A~Eの具体的な症状に対してそれぞれ正常で又は異常を入力可能な項目が示される。例えば、問診項目に対して、「正常」又は「異常」のいずれかを入力可能なチェックボタンが設けられる。各問診項目の組み合わせにより、故障原因が判明する。図6に示す問診項目は、上述した調査項目ノードに対応する。
【0049】
製品の故障が発生すると、現地保守員は、画面に表示された複数の問診項目から回答を入力する。この問診項目は、現地保守員に対して、調査の内容を指示し、調査結果の入力を促すために用いられる。複数の問診項目の回答入力を経た後、問診項目に関連付けられた故障の原因が画面に表示される。故障の原因は、故障症状に関連付けられたものである。現地保守員は、故障の原因を確認すると、マニュアルに決められた対処を行って、製品の故障を修復する。
【0050】
上述したように現地で使用される製品には、新たな部品が追加されたり、同じ形状の部品に交換されたりする。このような製品の仕様変更に対処するため、現地保守員が画面を通じて新たな故障原因や問診項目を追加すると、図2に示すネットワーク変更部22により、ベイジアンネットワークAに新たな故障原因が原因ノードとして追加され、新たな問診項目が調査項目ノードとして追加される。ネットワーク変更部22は、新たな原因ノード又は調査項目ノードが追加されたベイジアンネットワークAを、図2に示す現地運用のベイジアンネットワークA’としてネットワーク保存部16に保存する。
【0051】
<検証部の説明>
図7は、検証部120の内部構成例を示すブロック図である。
図8は、検証部120の処理の例を示すフローチャートである。
【0052】
検証部120は、構築部110が有するマニュアル保存部12、ノード抽出部13、抽出結果保存部14、ネットワーク生成部15、ネットワーク保存部16の他、マニュアル比較部17、比較部18、ノード選択部19を備える。
【0053】
マニュアル比較部17は、マーキング済みマニュアルAとマニュアルBとを比較する文書比較部の一例である。始めに、マニュアル比較部17は、マニュアル保存部12からマーキング済みマニュアルAを読み出す(S11)。次に、マニュアル比較部17は、今回対象となるマニュアルBと、ステップS11で読み出したマーキング済みマニュアルAとをページ単位、あるいは各マニュアルに記載の文章の該当箇所単位で比較する(S12)。
【0054】
マニュアルBは、第2製品に関する第2文書の一例である。マニュアルBは、マニュアル保存部12に保存されたものでもよい。マニュアルBの初期状態では、マーキングがされていない。
【0055】
次に、マニュアル比較部17は、マニュアルBにマーキングを行い、マーキング済みマニュアルBとしてマニュアル保存部12に保存する(S13)。従来、作業者がマニュアルBから新たにベイジアンネットワークを構築する場合、作業者が原因ノード、調査項目ノードをどのようにして抽出したかという観点が抜け落ちることが課題であった。
【0056】
このため、構築部110がベイジアンネットワークを構築する際にマニュアルへマーキングを実施し、検証部120が横展開の対象となるマニュアルBと、マーキング済みマニュアルAとを比較することで、マニュアルの記載内容の類似、差分、不要の部分を抽出することができる。類似とは、マニュアルAにあって、マニュアルBにあるものである。差分とは、マニュアルBにあって、マニュアルAにないものである。不要とは、マニュアルAにあって、マニュアルBにないものである。
【0057】
マーキング処理は、例えば、ソフトウェアを用いてマーキング結果をマーキング済みマニュアルAとして保存する処理である。マーキング処理は、項目を抽出するオペレーターが目視で実施してもよいし、テキストマイニング等の技術を使って自動化させてもよい。オペレーターがマニュアルを理解して該当箇所をマーキングすることで、マニュアル内の部位や文脈を汲んで類似、差分、不要等を抽出することが可能となる。一方、マーキング済みマニュアルに対する項目抽出や比較等の処理は、ソフトウェアプログラムにより自動で実施される。なお、類似箇所や差分箇所は、ファイル比較の処理で検出するものではない。ファイル比較の処理では、単純に文字列のみを比較するだけで、文字列が一致したとしても対象となる機器のある部位に関するものとは限らないからである。なお、当該マーキング処理は、マニュアルBにおいては必須ではない。後述のように、マニュアルBはマーキング済みでなくともマニュアルAに係る情報と比較可能なためである。
【0058】
既存製品Aのベイジアンネットワークが、既存製品Bに横展開できるか否かは、マニュアルA,Bの類似度、すなわち、既存製品A,Bの構成部品の類似度により判断される。同様に、既存製品AのベイジアンネットワークAを、新規製品Cに横展開できるか否かは、マニュアルA,Cの類似度、すなわち、既存製品A,Cの構成部品の類似度により判断される。比較の結果、既存製品AのマニュアルAに存在しない、新規製品Cの新規要素がある場合は、その新規要素を追加したベイジアンネットワークCが構築される。
【0059】
<マーキング済みマニュアルBの生成>
ここで、図8のステップS11~S13の処理により行われるマーキング済みマニュアルBの生成処理の具体例について説明する。
図9は、マーキング済みマニュアルBの生成処理を示す図である。
【0060】
上述したように、マニュアル比較部17(図7参照)は、マニュアルAにマーキングされたノードと、マニュアルBとを比較して、マニュアルBにマーキングする処理を行う。この際、マニュアル比較部17は、マニュアルBにあってマニュアルAに無いノードに、部位を表すタグを付ける。このため、マニュアルBにあってマニュアルAに無いノードに対応する部位が明確となる。
【0061】
図9の左側に示すマーキング済みマニュアルAは、ステップS11にてマニュアル保存部12から読み出されたものである。また、マニュアルBは、外部から入力されたものである。マニュアルBは、原因ノードとしてマニュアルAにも記載されていた原因X,Yの他、新たに原因Nを含んでいる。原因Nは、調査項目N-1,N-2を含んでいる。
【0062】
ステップS12にて、マニュアル比較部17により、マーキング済みマニュアルAとマニュアルBとが比較されると、マーキング済みマニュアルBとマーキング時のログとが生成される。
【0063】
図9の右側に示すマーキング済みマニュアルBは、マニュアルBにマーキングされた原因ノードの原因X,N、調査項目ノードの調査項目X-1,X-2、N-1,N-2を含む。ここでは、図示しないが、マーキング済みマニュアルBは、図3のステップS4に示す処理により、図5に示したマーキング済みマニュアルAからノード抽出結果Aと同様にノードが抽出され、ノード抽出時のログが作成される。そして、抽出されたノードを表すノード抽出結果Bが抽出結果保存部14に保存される。
【0064】
マーキング時のログには、「類似」、「差分」、「不要」、「除外」の比較結果が書き込まれる。「類似」は、マニュアルAにあって、マニュアルBにあるノードなので、原因X、調査項目X-1,X-2が該当する。「差分」は、マニュアルBにあって、マニュアルAに無いノードなので、原因N、調査項目N-1,N-2が該当する。なお、差分のノードには、部位Nのタグが新たに付加される。部位Nは、マニュアルBに記載されているので、オペレーターがマニュアルBを読み、内容を解釈しながら差分のノードに部位Nのタグをつける。差分により、部位Nのタグが付けられたノードがマニュアルBに新たに追加されたことが分かる。
【0065】
「差分」がマニュアルBの対象とする機器に影響する部位を含んでいれば、オペレーターに差分が提示される。例えば、既存製品Aに存在した部位Cが、既存製品Bに存在しない場合、タグ付けの結果から、既存製品Bに部位Cが無い等の情報が、ユーザーに理解できる形で提供される。
【0066】
「不要」は、マニュアルAにあって、マニュアルBに無いノードなので、原因Y、調査項目Y-1,Y-2が該当する。「除外」は、マニュアルAに付されたタグが、部位が無いこと、及び故障が調査で解決する内容でないことを表す場合に、このタグが付されたノードに書き込まれる。「除外」は、原因Z、調査項目Z-1,Z-2が該当する。
【0067】
マーキング時のログは、例えば、ベイジアンネットワークを構築する構築部110に対するチェックとして利用可能である。原因Nは、マニュアルBに追加されたノードであるため、新たにマーキングが行われる。本実施形態におけるマーキングとして、大きく2種類の「原因」と「調査項目」が存在する。原因Aが部位Aによるものであれば、「部位A」のタグ付けが行われる。図9に示すように、マニュアルBに新たに追加された原因Nと調査項目N-1,N-2は、オペレーターによる「部位N」のタグ付けが必要な項目であることが示される。一方、原因Bが今回のベイジアンネットワークの構築に際して対象外のものであれば、「除外」としてログに書き込まれる。
【0068】
マーキング時のログにより、原因Y、Zは、マニュアルBの原因及び調査項目として記載されていないため、ノードとして不採用とされたことが分かる。ここで修正が必要な原因や調査項目があれば、オペレーターが適宜、マーキング済みマニュアルBを修正することで、マーキング時のログには修正内容が記載される。
【0069】
再び、図7図8の説明に戻る。
次に、ノード抽出部13は、マニュアル保存部12から読み出したマーキング済みマニュアルBからノードを抽出する。そして、ノード抽出部13は、このノードをノード抽出結果Bとして抽出結果保存部14に保存する(S14)。ノード抽出結果Bは、図3のステップS4に示す処理により、図9に示したマーキング済みマニュアルBからノードが抽出された結果であり、不図示のノード抽出ログも作成され、抽出結果保存部14に保存される。
【0070】
比較部18は、マニュアルAからノードを抽出したノード抽出結果A(第1ノード抽出結果の一例)と、実運用されているベイジアンネットワークA’とを比較して、実運用されているベイジアンネットワークA’が変更された箇所を比較結果A、A’として出力する。そこで、比較部18は、抽出結果保存部14からノード抽出結果Aを読み出す。また、比較部18は、ネットワーク保存部16から、現地で運用されているベイジアンネットワークA’を読み出す。そして、比較部18は、ノード抽出結果Aと、ベイジアンネットワークA’とを比較する(S15)。ノード抽出結果Aは、図3のステップS4で抽出結果保存部14に保存されたものである。
【0071】
ステップS15における比較処理は、初期構築時のベイジアンネットワークAと、現地で運用中のベイジアンネットワークA’との差分を取得するために行われる。ベイジアンネットワークの比較結果A、A’は、今回のベイジアンネットワークの構築だけでなく、顧客で蓄積されたノウハウを次回のマニュアル作成(図12図13に示すフィードバック処理)時に用いられる。このため、比較結果A、A’は、オペレーターが使用するPC等の画面に表示される。オペレーターは、顧客で蓄積されたノウハウが必要な内容であると判断すれば、この内容に合わせたノードが次回に作成されるマニュアルに取り込むことができる。また、ノード抽出結果AからベイジアンネットワークAが生成されるため、ベイジアンネットワークA’をノード抽出結果A’に変換し、ノード抽出結果A’とノード抽出結果Aとを比較することも可能である。
【0072】
なお、運用開始後に蓄積されるノウハウが現地で運用中のベイジアンネットワークAに追加されるとベイジアンネットワークA’として利用される。現地で追加されたノウハウが、ベイジアンネットワークA,A’の差分として生じる。この差分は、マニュアルAに紐づいておらず、ベイジアンネットワークの比較結果A,A’またはマーキング時のログから生成可能である。
【0073】
次に、比較部18は、ノード抽出結果Aと、ベイジアンネットワークA’とを比較した比較結果A,A’を出力する(S16)。比較結果A,A’は、検証部120に接続された表示装置のユーザーインターフェイス画面に表示し、又はファイルに出力される。
【0074】
<ノード抽出結果Aと、現地運用中のベイジアンネットワークA’との比較>
ここで、図8のステップS15、S16の処理により行われるノード抽出結果Aと、現地運用中のベイジアンネットワークA’との比較処理の具体例について説明する。
図10は、ノード抽出結果Aと、現地運用中のベイジアンネットワークA’との比較処理を示す図である。
【0075】
図10の左側に示すノード抽出結果Aは、図8のステップS15で比較部18により抽出結果保存部14から読み出されたものである。ノード抽出結果Aは、現地でのベイジアンネットワークAの運用結果が反映されていない初期状態である。
【0076】
また、図10の左下に示す現地運用中のベイジアンネットワークA’は、比較部18によりネットワーク保存部16から読み出されたものである。ベイジアンネットワークA’には、現地運用の結果、原因Xに調査項目X-3が追加されている。また、原因Yが削除されている。また、原因Mと、調査項目M-1,M-2が追加されている。
【0077】
図10の右上に示す比較結果A,A’は、比較部18がノード抽出結果Aと、現地運用中のベイジアンネットワークA’とを比較した結果を表す。比較結果A、A’は、ユーザーに内容が分かりやすく示されたデータである。比較結果A,A’の原因ノードには、原因X、Y、Mが記載される。原因Xには、運用中のベイジアンネットワークA’に追加された調査項目X-3が追加されている。また、原因Yは、ノード抽出結果Aにしか含まれていないことが示される。また、原因Mと、調査項目M-1,M-2は、運用中のベイジアンネットワークA’に追加されたノードを表す。
【0078】
図10の右下に示す比較ログは、比較部18の比較処理により出力される。比較ログは、オペレーターが処理結果として詳細に比較処理の過程を把握可能となるデータである。
「既存」は、ノード抽出結果Aに含まれるノードなので、原因X、調査項目X-1,X-2が該当する。「追加」は、ノード抽出結果Aに無く、運用中のベイジアンネットワークA’に追加されたノードなので、原因Xの調査項目X-3と、原因Mの調査項目M-1,M-2が該当する。なお、調査項目X-3には、部位Xのタグが新たに付加される必要がある。調査項目X-3は、運用中のベイジアンネットワークA’に含まれるので、オペレーターが運用中のベイジアンネットワークA’を確認しながら部位Xのタグを付けることとなる。同様に、調査項目M-1,M-2には、部位Mのタグが新たに付加される必要がある。部位Mは、運用中のベイジアンネットワークA’に含まれるので、オペレーターが運用中のベイジアンネットワークA’を確認しながら部位Mのタグを付けることとなる。
【0079】
「削除」は、ノード抽出結果Aにあり、ベイジアンネットワークAから削除されたノードであり、運用中のベイジアンネットワークA’にないノードであるため、原因Y、調査項目Y-1,Y-2が該当する。なお、調査項目Y-1,Y-2には、それぞれ運用中に削除された理由が付加される。この削除理由は、例えば、オペレーターが現地保守員にヒアリングすることで比較ログに記録される。
【0080】
再び、図7図8の説明に戻る。
次に、ノード選択部19は、比較部18による比較結果の中から、必要なノードを選択する(S17)。なお、ノード選択部19によるノードの選択処理は、例えば、オペレーターによる目視で行われる。このため、ノード選択部19は、後述する図18に示す表示装置35にデータを出力し、入力装置36からデータを受け取ることで、必要なノードを選択する機能を有している。
【0081】
<ノード抽出結果Bと比較結果A,A’の確認>
ここで、図8のステップS17の処理により行われるノード抽出結果Bと比較結果A,A’の確認処理の具体例について説明する。
図11は、ノード抽出結果Bと比較結果A,A’の確認処理を示す図である。
【0082】
図11の左上に示すノード抽出結果Bは、ノード選択部19が抽出結果保存部14から読み出したものである。ノード抽出結果Bには、原因ノードとして原因X,Nが含まれ、調査項目ノードとして調査項目X-1,X-2、N-1,N-2が含まれる。また、図11の左下に示す比較結果A,A’(図10を参照)は、比較部18から入力されたものである。比較結果A,A’には、原因ノードとして原因X、Y、Mが含まれ、調査項目ノードとして調査項目X-3、Y-1,Y-2、M-1,M-2が含まれる。
【0083】
図8のステップS17にて、オペレーターがノード選択部19を通じてノード抽出結果Bと比較結果A,A’を確認すると、図11の右上に示すノード抽出結果B’が確認結果として出力される。また、ノード選択部19がノード抽出結果Bと比較結果A,A’を比較した比較ログも出力される。オペレーターは、画面に表示されたノード抽出結果B’を見ながら、比較結果A,A’に追加された原因Xの調査項目X-3を、新規製品BのベイジアンネットワークBに追加すべき項目か否かを判断する。ここで、ベイジアンネットワークBは、マニュアルBにマーキングされたノードを組み合わせた第2リンク構造の一例である。オペレーターが追加すべきと判断した場合、オペレーターが操作するノード選択部19を通じて、ノード抽出結果B’の原因Xに調査項目X-3が追加される。
【0084】
同様に、オペレーターは、画面の表示内容に基づいて、原因Yと調査項目Y-1,Y-2が新規製品BのベイジアンネットワークBから削除すべき項目か否かを判断する。オペレーターが削除すべきと判断した場合、ノード抽出結果B’には、原因Yと調査項目Y-1,Y-2が追加されない。また、オペレーターは、画面の表示内容に基づいて、比較結果A,A’に追加された原因Mの調査項目M-1,M-2が追加すべき項目か否かを判断する必要がある。そして、オペレーターが追加すべきでないと判断した場合、ノード抽出結果B’には、原因Mと調査項目M-1,M-2が追加されない。
【0085】
なお、オペレーターが確認可能な画面には、図11の右上に示すノード抽出結果B’が表示されることが想定されるが、図6に示した形態のベイジアンネットワークA’が表示されてもよい。オペレーターは、表示されたベイジアンネットワークA’から追加または削除すべき項目を判断してもよい。
【0086】
図11の右下に示す比較ログは、ノード抽出結果Bと比較結果A,A’をソフトウェアが比較したものであり、ノード選択部19を通じた確認処理の後、ソフトウェアにより出力される。ソフトウェアにより機械的に比較された内容は、オペレーターが比較ログを用いて確認することが可能である。なお、比較ログは、オペレーターによる判断がどのようになされたことでノード抽出結果B’が生成されたかを他のオペレーターも含め検証するために用いられてもよい。
比較ログに書かれた「既存」は、ノード抽出結果Bに含まれるノードなので、原因X,N、調査項目X-1,X-2、N-1,N-2が該当する。「追加」は、ノード抽出結果Bに無く、比較結果A,A’に追加されたノードなので、原因Xの調査項目X-3が該当する。
【0087】
「除外」は、ノード抽出結果Bに無く、比較結果A,A’に存在するが、除外されたノードなので、原因M、調査項目M-1,M-2が該当する。ここで、ベイジアンネットワークの構築を担当するオペレーターは、原因M、調査項目M-1,M-2が除外可能な「原因ノード」、「調査項目ノード」であるか否かを確認する。例えば、オペレーターは、製品の設計文書等を確認して、原因M、調査項目M-1,M-2の必要性を判断し、不要であれば除外する。設計文書には、機器の構成部品、製品の仕様等が記載されている。このため、製品の故障時における解決策は記載されていないものが想定される。一方で、マニュアルには、製品の故障時における解決策が記載されているものが想定される。
【0088】
「削除」は、比較結果A,A’から削除されたノードなので、原因Y、調査項目Y-1,Y-2が該当する。なお、調査項目Y-1,Y-2には、それぞれ運用中に削除された理由が付加される。例えば、オペレーターが現地保守員にヒアリングすることで比較結果A,A’に削除理由が付加され、比較ログに付加された理由の文字列が追加される。
【0089】
再び、図7図8の説明に戻る。
ネットワーク生成部15は、マニュアルBからノードを抽出したノード抽出結果B(第2ノード抽出結果の一例)と、比較結果A,A’とに基づいて、変更可能と判断されたノードと、マニュアルBにマーキングされたノードとを組み合わせたベイジアンネットワークBを生成する。例えば、ネットワーク生成部15は、抽出結果保存部14から読み出したノード抽出結果Bに対して、必要なノードを追加する(S18)。そして、ネットワーク生成部15は、必要なノードを追加したベイジアンネットワークBを生成し(S19)、本処理を終了する。ステップS19で生成されたベイジアンネットワークBは、ネットワーク保存部16に保存される。
【0090】
<フィードバック部の説明>
図12は、フィードバック部130の内部構成例を示すブロック図である。
図13は、フィードバック部130の処理の例を示すフローチャートである。
【0091】
フィードバック部130は、構築部110が有するマニュアル保存部12、抽出結果保存部14、ネットワーク保存部16と、検証部120が有するマニュアル比較部17、比較部18に加えて、追加ノード確認部20を備える。
【0092】
始めに、比較部18は、ネットワーク保存部16から現地で運用されているベイジアンネットワークA’を読み出し、抽出結果保存部14からノード抽出結果Aを読み出す(S21)。次に、比較部18は、読み出したベイジアンネットワークA’とノード抽出結果Aを比較する(S22)。
【0093】
次に、比較部18は、比較結果を出力する(S23)。比較結果の出力は、ユーザーインターフェイス画面に表示すること、又はファイルに出力することで行われる。
【0094】
次に、追加ノード確認部20は、検証装置100を利用するユーザーは、出力された比較結果に基づいて、ベイジアンネットワークA’に追加されたノードを確認する(S24)。この確認作業は、オペレーターによって行われる。確認した結果をマニュアルに反映するか否かの最終判断はオペレーターが行うためである。このため、オペレーターが入力した内容は、追加ノード確認部20を通じて入力される。
【0095】
フィードバック部130が有するマニュアル比較部17は、比較部18による比較結果A,A’に基づいてオペレーターにより追加ノード確認部20を通じて確認された、実運用されているベイジアンネットワークAに追加されたノードと、既存マニュアルとを比較する。既存マニュアルとして、マニュアルBが想定されるが、他の製品のマニュアルであってもよい。そして、マニュアル比較部17は、ベイジアンネットワークAに追加されたノードを、既存マニュアルに追加する。そこで、マニュアル比較部17は、マニュアル保存部12から読み出した既存のマニュアルと、比較部18から出力された比較結果A,A’とを比較する(S25)。比較部18から出力された比較結果は、ベイジアンネットワークA’とノード抽出結果Aの比較結果である。
【0096】
その後、マニュアル比較部17は、必要なノウハウをマニュアルに追記するフィードバックを行う(S26)。必要なノウハウをマニュアルに追記する処理が、運用ベイジアンネットワークA’にフィードバックする処理となる。そして、マニュアル比較部17は、追記したマニュアルをマニュアル保存部12に保存して、本処理を終了する。
【0097】
なお、必要なノウハウが追記されたマニュアルは、マーキング済みマニュアルとして用いられる。そして、図3のステップS4,S5の処理を経て、マーキング済みマニュアルを基にしたベイジアンネットワークが生成される。
【0098】
<フィードバック処理の具体例>
ここで、図13のステップS24~S26で行われるフィードバック処理の具体例について説明する。
図14は、フィードバック処理を示す図である。
【0099】
図14の左側に示す比較結果A,A’は、図13のステップS23にて比較部18により出力されたものである。この比較結果A,A’は、追加ノード確認部20を経て、マニュアル比較部17に入力される。また、図14の真ん中に示すマーキング済みマニュアルAは、図13のステップS25にてマニュアル比較部17によりマニュアル保存部12から読み出されたものである。そして、マニュアル比較部17は、比較結果A,A’と、マーキング済みマニュアルAとを比較し、マーキング済みマニュアルA’を作成する。
【0100】
図14の右側に示すマーキング済みマニュアルA’の原因ノードには、原因X,Y,Z,Mが含まれる。原因Xには、現地運用により追加された調査項目X-3が含まれ、原因Mには、現地運用により追加された調査項目M-1,M-2が含まれる。原因Y,Zは、不要なノードであるが、マーキングされたノードとしてマーキング済みマニュアルA’に含まれている。そして、図13のステップS26にて、必要なノウハウが追記されたマーキング済みマニュアルA’がマニュアル保存部12に保存される。
【0101】
ここで、マニュアル保存部12にフィードバックされたマーキング済みマニュアルA’は、マニュアル保存部12にて世代管理される。また、マニュアル保存部12には、比較結果や比較ログ等が保存される。このため、オペレーターは、どのバージョンにより当該マニュアルが生成され、又はノードが追記されたかを追跡することが可能となる。
【0102】
<マーキング済みマニュアルA’からのノード抽出>
図15は、マーキング済みマニュアルA’からのノード抽出処理を示す図である。図15に示す処理は、図5に示したマーキング済みマニュアルAからノード抽出結果Aとノード抽出ログが作成される処理と同様である。
【0103】
図15の左側には、マニュアル保存部12に保存されたマーキング済みマニュアルA’が示される。図13のステップS26にて、マニュアル保存部12に保存されたマーキング済みマニュアルA’は、図2に示したノード抽出部13により読み出され、ノードが抽出される。
【0104】
図15の右側には、ノード抽出結果A’とノード抽出ログが示される。
ノード抽出結果A’には、原因ノードとして原因X、Mが含まれ、調査項目ノードとして調査項目X-1,X-2、M-1,M-2が含まれる。
ノード抽出ログには、ノード抽出部13により抽出されたノード、ノード抽出が除外されたノード、削除されたノードの情報がログとして書き込まれる。抽出されたノードは、原因ノードが原因X、Mであり、調査項目ノードが調査項目X-1,X-2、M-1,M-2である。ログには、各ノードに対して、部位X、部位Mのタグも書き込まれる。また、除外されたノードは、原因Zであり、「部位無し」というタグと、「調査で解決する内容ではない」というタグが書き込まれる。また、削除されたノードが、原因Yであり、「部位Y」というタグと、「運用中の削除理由」というタグが書き込まれる。
【0105】
<マーキング済みマニュアルDの流用>
ここで、マーキング済みマニュアルBを作成するために、マーキング済みマニュアルDを流用する処理の例について説明する。
図16は、マーキング済みマニュアルDを流用する処理を示す図である。
【0106】
フィードバック部130が有するマニュアル比較部17(図12参照)は、マーキングされたマニュアルAに存在せず、第3製品に関する第3文書と、マニュアルBとに共通して存在するノードに対して、第3文書にマーキングされたノードを、マニュアルBにマーキングする。ここで、第3文書とは、マニュアルDの一例であり、マニュアルDに対して既にマーキング部11によるマーキングが行われているものとする。
【0107】
図16の左側には、マニュアル保存部12から読み出されたマーキング済みマニュアルAと、マニュアルBに加えて、マーキング済みマニュアルDが示される。マーキング済みマニュアルAには、原因X,Y,Zと、調査項目X-1,X-2、Y-1,Y-2、Z-1,Z-2が記載されている。また、マニュアルBには、原因X,Nと、調査項目X-1,X-2、N-1,N-2が記載されている。また、マーキング済みマニュアルDには、原因Nと、調査項目N-1,N-2が記載されている。
【0108】
マニュアル比較部17は、マーキング済みマニュアルAと、マニュアルBとを比較する。比較の結果、類似、差分、不要の判断がなされる。マニュアルBにあって、マーキング済みマニュアルAに無いものは、差分として判断された原因Nと、調査項目N-1,N-2である。ここで、マニュアルBとマーキング済みマニュアルDには、同じ原因Nと、調査項目N-1,N-2が記載されているので、マーキング済みマニュアルDの流用が可能となる。
【0109】
この結果、マニュアル比較部17は、原因X,Nと、調査項目X-1,X-2、N-1,N-2に対してマーキングされたマーキング済みマニュアルBを作成し、マーキング済みマニュアルBをマニュアル保存部12に保存できる。ここで、マニュアル比較部17の機能として、以下のものが想定される。
【0110】
このように従前のマニュアルと、新規のマニュアルとを比較する処理の前段階として、マニュアルの対象とする機構である構成部品の違いを検知する。この場合、インプットが仕様書、アウトプットがマニュアル又はベイジアンネットワークとなる。
そして、各製品の構成部品を参照し、類似製品のマニュアルにマーキングされていれば引用する。例えば、マニュアルBに類似するマニュアルDのノードである原因Nと調査項目N-1,N-2がマーキングされていれば、マーキングされたノードを、マニュアルBのマーキングに流用できる。
【0111】
従来は、マニュアルBからベイジアンネットワークを構築する際、原因ノードと調査項目ノードをどのようにして抽出したかという観点が抜け落ちる事が課題であった。そこで、ベイジアンネットワークの構築時におけるマニュアルに対して、上述したマーキング手法や情報抽出手法を活用して、横展開の対象との差分を取る。オペレーターがマニュアルに対してマーキングをすることで、どの部分が「原因ノード」であり、どの部分が「調査項目ノード」であるか、その認識方法を電子データとして残すことが可能となる。
【0112】
<マーキング済みマニュアルへのフィードバック処理>
次に、現地運用の結果を踏まえてマーキング済みマニュアルにフィードバックされる処理の全体の流れについて説明する。
図17は、マーキング済みマニュアルへのフィードバックの処理の流れを示す図である。
【0113】
図17の左上にはマーキングされていないマニュアルAが示される。現地運用によりマーキングされたマニュアルAは、上述したようにマーキング済みマニュアルAと呼ばれる。以下、図中に付した番号(1)~(6)の順に処理が行われる。
【0114】
(1)マーキング済みマニュアルAからノード抽出結果Aを生成する。
この処理は、図3のステップS4と図5に示したように、ノード抽出部13により行われる。そして、ノード抽出結果Aが次処理で用いられる。また、この処理では、ノード抽出ログも生成される。
(2)マーキング済みマニュアルAからベイジアンネットワークAを生成する。
この処理は、図3のステップS5に示したように、ネットワーク生成部15により行われる。そして、生成されたベイジアンネットワークAがネットワーク保存部16に保存される。
【0115】
(3)生成されたベイジアンネットワークAを現地投入
この処理は、図2に示したように、ネットワーク運用部21により行われる。ネットワーク運用部21は、ネットワーク保存部16からベイジアンネットワークAを取得して運用を開始する。この処理では、生成されたベイジアンネットワークAが顧客の環境で使用される。例えば、顧客環境又はクラウド環境に構築されたサーバーに、生成したベイジアンネットワークAを導入することで、顧客がベイジアンネットワークを利用することが可能となる。
【0116】
(4)現地運用によるベイジアンネットワークの構成変更
この処理は、図2に示したように、ネットワーク変更部22により行われる。ネットワーク変更部22は、現地保守員によるベイジアンネットワークAの構成変更を受付ける。構成が変更されたベイジアンネットワークAを「現地運用のベイジアンネットワークA’」と呼ぶ。
【0117】
(5)ノード抽出結果Aと現地運用のベイジアンネットワークA’の比較
この処理は、図8のステップS15と図10に示したように、比較部18により行われる。そして、ノード抽出結果Aと現地運用のベイジアンネットワークA’の比較結果A,A’、比較ログが出力される。
【0118】
(6)比較結果A,A’からマーキング済みマニュアルAへフィードバック
この処理は、図13のステップS26と図14に示したように、マニュアル比較部17により行われる。マニュアル比較部17は、比較結果A,A’に基づいて、マーキング済みマニュアルAに対するフィードバックを行ってマーキング済みマニュアルAを更新する。このマーキング済みマニュアルAが、再び(1)の処理で用いられる。
【0119】
ここで、フィードバックされたマーキング済みマニュアルAは、上記の処理(3)に示した現地の顧客で用いられてもよい。また、既存製品B又は新規製品Cを使用する他の顧客では、フィードバックされたマーキング済みマニュアルAと、現地運用により構成が変更されたベイジアンネットワークA’が用いられてもよい。このため、現地で用いられるマニュアル、ベイジアンネットワークは、オペレーターが適宜選択することが可能である。
【0120】
<計算機のハードウェア構成>
次に、検証装置100を構成する計算機30のハードウェア構成を説明する。
図18は、計算機30のハードウェア構成例を示すブロック図である。計算機30は、本実施の形態に係る検証装置として動作可能なコンピューターとして用いられるハードウェアの一例である。本実施の形態に係る検証装置100は、計算機30(コンピューター)がプログラムを実行することにより、図2図7図12に示した各機能部が連携して行う検証方法を実現する。
【0121】
計算機30は、バス34にそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit)31、ROM(Read Only Memory)32、及びRAM(Random Access Memory)33を備える。さらに、計算機30は、表示装置35、入力装置36、不揮発性ストレージ37及びネットワークインターフェイス38を備える。
【0122】
CPU31は、本実施の形態に係る各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM32から読み出してRAM33にロードし、実行する。RAM33には、CPU31の演算処理の途中で発生した変数やパラメーター等が一時的に書き込まれ、これらの変数やパラメーター等がCPU31によって適宜読み出される。ただし、CPU31に代えてMPU(Micro Processing Unit)を用いてもよい。図2図7図12に示す各機能部の処理は、CPU31がプログラムコードを実行することで実現される。
【0123】
表示装置35は、例えば、液晶ディスプレイモニターであり、計算機30で行われる処理の結果等をユーザーに表示する。入力装置36には、例えば、キーボード、マウス等が用いられ、ユーザーが所定の操作入力、指示を行うことが可能である。
【0124】
不揮発性ストレージ37としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ又は不揮発性のメモリ等が用いられる。この不揮発性ストレージ37には、OS(Operating System)、各種のパラメーターの他に、計算機30を機能させるためのプログラムが記録されている。ROM32及び不揮発性ストレージ37は、CPU31が動作するために必要なプログラムやデータ等を記録しており、計算機30によって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記憶媒体の一例として用いられる。図2図7図12に示す各種の保存部は、不揮発性ストレージ37に構成される。
【0125】
ネットワークインターフェイス38には、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられ、NICの端子に接続されたLAN(Local Area Network)、専用線等を介して各種のデータを装置間で送受信することが可能である。
【0126】
以上説明した一実施の形態に係る検証装置100は、既存の製品に対して構築されたベイジアンネットワークを、他の製品で利用可能となる。例えば、検証装置100は、既存製品Aのマニュアルに記載された内容と、ベイジアンネットワークAの構造に基づいて、ベイジアンネットワークBを構築可能か検証する。そして、検証装置100は、ベイジアンネットワークBを更新可能であるとの検証結果を得られれば、ベイジアンネットワークBを構築することができる。既存の製品のベイジアンネットワークを一部でも、他の製品のベイジアンネットワーク構築に利用することで、他の製品のベイジアンネットワークの構築コストを短縮でき、かつ既存の製品のベイジアンネットワークが既に使用された実績があるため検査の精度面で担保できる。
【0127】
また、マニュアルは追加、削除等の変更が行われることがある。そこで、検証装置100は、製品ごとの設計時の文書として、例えばマニュアルをインプットとした比較を実施することで、製品の機構(例えば、構成部品)の類似及び差分を確認可能となる。例えば、類似箇所は、既存マニュアルを流用すること、差分箇所は他の類似製品と同機構があればその同機構に追加された部分のマニュアルの流用が可能となる。このため、検証装置100は、既存の製品に対して構築されたベイジアンネットワークAを利用して、ベイジアンネットワークAが変更された箇所をマニュアルBにフィードバックすることで、このマニュアルBからベイジアンネットワークBを生成することが可能となる。この結果、既存の製品に対して構築されたベイジアンネットワークを、顧客が使用する他の製品に利用可能とすることができる。
【0128】
例えば、従来は、オペレーターがマニュアルを全て読み込まなければ、ベイジアンネットワークの流用可否、マニュアルの流用可能な箇所等を判断できなかったのに対し、検証装置100を用いることで、オペレーターによる作業をマーキングと、必要なノードの選択に限定することができる。そして、現地運用されたベイジアンネットワークと、既存のベイジアンネットワークとの差分箇所についてオペレーターが追加または削除等を判断するだけで、現地運用のノウハウが反映された新たなベイジアンネットワークとマニュアルとが生成される。このため、オペレーターによるマニュアル作成、ベイジアンネットワーク作成の負荷が著しく軽減される。
【0129】
また、類似箇所や差分箇所が既存マニュアルに存在しており、それらがマーキング済またはベイジアンネットワーク構築済であれば、検証装置100は、ノード抽出結果やベイジアンネットワークを出力することが可能となる。
【0130】
また、従来は、ベイジアンネットワークを作成するオペレーターが、どのような観点でマニュアルからのノードの抽出可否を判断したかをオペレーター以外の者が知ることができなかった。このため、ノードの抽出根拠が不明確であり、ベイジアンネットワークの信頼性が揺らぎかねなかった。一方、本実施形態に係る検証装置100によれば、オペレーターによるマニュアルからのノードの抽出時にマーキングが行われるため、ノードの抽出根拠が明確となり、ベイジアンネットワークの信頼性を高めることができる。
【0131】
また、従来は、既存製品Aのマニュアルになく、既存製品Bのマニュアルにあるものを抽出する技術として、自然言語で記載された文脈を把握して、自動的にマニュアルの差分を抽出する技術はなかった。一方、本実施形態に係る検証装置100では、既存のマニュアルに対してマーキングを行うことで、マーキングされたノードからベイジアンネットワークを作成できる。さらに新規製品のマニュアルに対してマーキングを行って、既存のマニュアルと比較することで、既存のマニュアルと、新規製品のマニュアルとの差分箇所の抽出等が容易となる。
【0132】
[変形例]
上述した実施形態では、製品ごとに作成されるマニュアルを対象としてマーキングが行われたが、各種のデータが蓄積されたデータベースの情報をマニュアルに置き換えてもよい。ただし、データベースの情報は、予め整理された情報であるため、「原因」カラムや「調査項目」カラムにそれぞれ対象となるデータが蓄積されていることが想定されるので、マーキング処理が不要となる。
【0133】
また、上述した実施形態に係る構築部110は、「原因」ノード、「調査項目」ノードを抽出することで、リンク構造の一例であるベイジアンネットワークを構築した。構築部110は、フリーテキストから抽出した、製品の態様と、製品の事象とに基づいて機械学習を行うことで、ある製品の事象から製品の態様を予測する処理を可能とするネットワークをリンク構造の一例として構築してもよい。
【0134】
なお、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するためにシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0135】
11…マーキング部、12…マニュアル保存部、13…ノード抽出部、14…抽出結果保存部、15…ネットワーク生成部、16…ネットワーク保存部、17…マニュアル比較部、18…比較部、19…ノード選択部、20…追加ノード確認部、100…検証装置、110…構築部、120…検証部、130…フィードバック部、200…現地運用部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18