(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】成形体
(51)【国際特許分類】
D21H 11/18 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
D21H11/18
(21)【出願番号】P 2022160768
(22)【出願日】2022-10-05
(62)【分割の表示】P 2020165301の分割
【原出願日】2020-09-30
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】591045703
【氏名又は名称】利昌工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【氏名又は名称】田中 勝也
(72)【発明者】
【氏名】古田 尚
(72)【発明者】
【氏名】奥村 浩史
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-036529(JP,A)
【文献】特開2018-100466(JP,A)
【文献】特開2018-062727(JP,A)
【文献】特開平07-322390(JP,A)
【文献】国際公開第2017/144009(WO,A1)
【文献】特開2013-011026(JP,A)
【文献】特開2002-292608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロフィブリル化セルロースのみから構成され、
板状であって、厚さが4.0mm以上100.0mm以下であり、
厚さ方向の材質が均一であり、
曲げ弾性率が
11.9GPa以上である、成形体。
【請求項2】
板状であって、厚さが10.0mm以上である、請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
密度が1.30g/cm
3以上1.55g/cm
3以下である、請求項1または請求項2に記載の成形体。
【請求項4】
前記ミクロフィブリル化セルロースの繊維径は、10nm以上1000nm以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルロースミクロフィブリルを含む材料に関する技術が、特許第3641690号(特許文献1)に開示されている。また、ミクロフィブリル化セルロースの成形体の製造方法に関する技術が、特開2018-100466号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3641690号
【文献】特開2018-100466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、木質材料のような自然物由来の材料において、広範な用途としての材料に用いるため、金属材料と比較した際の軽さが求められる他、剛性の大きな材料が求められている。剛性の大きな材料を製造する場合においては、もちろん効率的に製造できることが好ましい。また、種々の用途への適用を考えた場合に、剛性の大きな材料において、平面的なサイズが大きいものが求められる。さらに、剛性を得るためにはある程度の厚さを有することが望ましい。
【0005】
特許文献1によると、固形分の65~100重量%のセルロースミクロフィブリルおよび0~35重量%の添加剤からなり、室温および相対湿度60%の条件における三点支持中央集中荷重方式による測定法における曲げ強度が200MPa~400MPaである高強度材料が開示されている。特許文献1によると、ミクロフィブリルのみからなる材料の製造方法として、固形分10%のミクロフィブリルの懸濁液を成形し、ミクロフィブリルシートを作った後、そのシートの水分量が約40%になるまで脱水し、70℃で24時間乾燥させ、その後100MPa、150℃で30分間加熱圧締することとしている。
【0006】
しかし、このような製造方法では、成形時において100MPaという極めて高い圧力を加えなければならない。そうすると、サイズの小さい成形体を得るには対応が可能であるとしても、ある程度サイズの大きい成形体を得るためには、大がかりな設備が必要となる。つまり、設備に対して得られる成形体のサイズに制約がかかることとなる。よって、このような製造方法によると、望ましいサイズの成形体を得ることが困難となる。また、得られる成形体の厚さについても極めて高い圧力での成形となってしまうため、薄板状になってしまう等の制約を受けることとなる。したがって、厚さ方向に厚い成形体を得ることが困難となる。
【0007】
特許文献2によると、水、有機溶媒、または水に有機溶媒を混合した混合溶媒に、ミクロフィブリル化セルロースを分散したミクロフィブリル化セルロース懸濁液を用意し、ミクロフィブリル化セルロース懸濁液を密閉した状態で予備脱水し、その後、加熱加圧成形することを特徴とするミクロフィブリル化セルロースの成形体の製造方法が開示されている。
【0008】
しかし、特許文献2における予備脱水においては、袋やシールテープを用いた密封空間を形成する必要がある。よって、作業の煩雑さの観点からも効率的な成形体の製造が困難となる。また、厚さ方向に厚い成形体を得るために、得られたミクロフィブリル化セルロース分散体を複数枚積層して加熱加圧成形を行い、厚い成形体を得ることが考えられる。しかしこの手法によると、厚さ方向における一枚一枚の境界部分でミクロフィブリル化セルロース同士が結着せず、厚さ方向に均一な材質の成形体を得ることができない。一方、積層した場合の一枚一枚の境界の発生をなくすべく、加熱加圧成形前のミクロフィブリル化セルロース分散体の厚さを予めある程度厚くしておくことも考えられる。しかし、このような厚いミクロフィブリル化セルロース分散体を得るための予備脱水には多大な時間を要することになる。このような観点からも、効率的な成形体の製造方法が求められる。
【0009】
本開示の目的は、剛性が大きく、サイズの大きい成形体を効率的に製造することができる成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に従った成形体の製造方法は、ミクロフィブリル化セルロースを含む成形体の製造方法である。成形体の製造方法は、水中にミクロフィブリル化セルロースを所定の濃度分散させた分散液を準備する工程と、含水率が65質量%以上85質量%以下となるよう、分散液を濾過してシート状のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を形成する工程と、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物を複数枚準備する工程と、複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を厚さ方向に積層する工程と、積層した複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を、厚さ方向の両側に配置した不織布によって挟む工程と、不織布によって挟んだ複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物の厚さ方向に0.1MPa以上4.0MPa以下の圧力で加圧しながら加熱して一枚の板状の成形体とする加熱加圧成形をする工程と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
このような構成の成形体の製造方法によると、剛性が大きく、サイズの大きい成形体を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る成形板の外観を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す成形板の一部を拡大して示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、他の実施形態に係る成形体を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係るミクロフィブリル化セルロース含有組成物の製造方法における代表的な製造工程を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、得られたミクロフィブリル化セルロース含有組成物を示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、
図1および
図2に示す本開示の一実施形態に係る成形体の製造方法における代表的な製造工程を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図1および
図2に示す成形体を得る場合の加熱加圧成形を行う際の各部材を示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、
図3に示す成形体の製造方法における代表的な製造工程を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図3に示す成形体を得る場合の加熱加圧成形を行う際の各部材を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。本開示に従った成形体の製造方法は、ミクロフィブリル化セルロース(以下、単に「MFC(Microfibrillated cellulose)」と省略する場合がある。)を含む成形体の製造方法である。成形体の製造方法は、水中にミクロフィブリル化セルロースを所定の濃度分散させた分散液を準備する工程と、含水率が65質量%以上85質量%以下となるよう、分散液を濾過してシート状のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を形成する工程と、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物を複数枚準備する工程と、複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を厚さ方向に積層する工程と、積層した複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を、厚さ方向の両側に配置した不織布によって挟む工程と、不織布によって挟んだ複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物の厚さ方向に0.1MPa以上4.0MPa以下の圧力で加圧しながら加熱して一枚の板状の成形体とする加熱加圧成形をする工程と、を備える。
【0014】
本発明者らは、木質材料のような自然物由来の材料において、広範な用途としての材料に用いるため、金属材料と比較した際の軽さが求められる他、剛性の大きい成形体を得る製造方法について検討を行った。ここでまず、木質材料のような自然物由来の材料として、ミクロフィブリル化セルロースを用いることを考えた。さらに本発明者らは、ミクロフィブリル化セルロースを用いて成形体を製造するに際し、サイズの大きな成形体の効率的な製造の観点から、加熱加圧成形時における高い圧力での加圧を回避すると共に、得られた成形体について剛性の大きいものとなるよう鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本開示に従った成形体の製造方法によると、含水率が65質量%以上85質量%以下となるよう、分散液を濾過してシート状のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を形成する工程を含む。したがって、シート状のミクロフィブリル化セルロース含有組成物の形成時において、袋やシールテープを準備して密封空間を設ける必要はない。よって、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物を効率的に製造することができる。すなわち、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物を複数枚製造するに際し、短時間かつ少ない労力で製造することができる。
【0016】
上記したように濾過によって得られたミクロフィブリル化セルロース含有組成物は、表面の性状が比較的粗い状態となる。本発明者らは、濾過により水をある程度除去したシート状のミクロフィブリル化セルロース含有組成物の表面性状がこのようになることを見出したのである。そして、このようなミクロフィブリル化セルロース含有組成物を用い、複数枚積層して加熱加圧成形して得らえる成形体について、積層された複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物のうちの表面側に位置するミクロフィブリル化セルロース同士が厚さ方向において適度に絡み合って厚さ方向の境界をなくし、厚さ方向の材質を均一とすることができることを本発明者らはさらに見出したのである。よって、このように構成することにより、任意の厚さの成形体を得ることができる。また、濾過によって得られたミクロフィブリル化セルロース含有組成物は、ミクロフィブリル化セルロースを緻密に絡ませることができる。したがって、得られた成形体について、剛性を大きくすることができる。なお、このようにして得られた成形体については、ミクロフィブリル化セルロースが一方向に揃っておらず、ランダムに配置されているため、等方性を有する。すなわち、たとえば成形体を板状とした場合に、縦方向における剛性および横方向における剛性をそれぞれ大きいものとすることができる。
【0017】
積層した複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物の加熱加圧成形において、0.1MPa以上4.0MPa以下の圧力で加圧して一枚の板状の成形体を得ることができる。よって、加熱加圧成形時において、比較的低い圧力で成形することができるため、大がかりな設備を必要とせず、設備による成形体のサイズの制約を受けにくくすることができる。また、高い圧力で材料を厚さ方向に押しつぶしてしまうことを抑制できる。よって、サイズのある程度大きな成形体を比較的簡易な設備構成で製造することができる。また、所望の厚さの積層体を得ることが容易となる。
【0018】
以上より、上記成形体の製造方法によると、剛性が大きく、サイズの大きい成形体を効率的に製造することができる。
【0019】
上記成形体の製造方法において、シート状であって、水およびパルプから構成されるパルプ含有組成物を準備する工程と、複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物の間にパルプ含有組成物を挟む工程と、をさらに備えてもよい。パルプは汎用的に用いられるものであるため、上記構成のパルプ含有組成物は、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物よりも安価に製造することができる。ここで、得られた成形体の厚さ方向の両側には、ミクロフィブリル化セルロースから構成される層が配置されることになるため、剛性の低下を抑制することができる。したがって、このような成形体の製造方法によると、剛性が大きく、所望の厚さの成形体を安価に得ることができる。
【0020】
上記成形体の製造方法において、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物を形成する工程は、分散液を吸引濾過する工程を含んでもよい。このようにすることにより、濾過を短時間で行うことができる。したがって、より効率的に成形体を製造することができる。
【0021】
上記成形体の製造方法において、不織布は、ガラス不織布であってもよい。複数枚積層したミクロフィブリル化セルロース含有組成物の加熱加圧成形時においては、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物中の水は、加圧されて主に厚さ方向に移動した後、厚さ方向の両側に配置された不織布の側面側から排出される。ここで、不織布としてガラス繊維を用いたガラス不織布を用いることにより、不織布内における水の通り道を十分に確保して、円滑に水を排出することができる。したがって、剛性が大きく、サイズの大きい成形体をより効率的に製造することができる。
【0022】
上記成形体の製造方法において、加熱加圧成形をする工程は、積層した複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を100度以上150度以下の温度に加熱し、0.1MPa以上4.0MPa以下の圧力で、30分以上120分以下の時間維持する工程を含んでもよい。複数枚積層したミクロフィブリル化セルロース含有組成物の加熱加圧成形時において、上記温度範囲内および上記圧力範囲内で上記時間の範囲内の加熱加圧成形を行うことにより、より確実かつより効率的に剛性が大きく、サイズの大きい成形体を製造することができる。
【0023】
上記成形体の製造方法において、加熱加圧成形をする工程は、0.1MPaの圧力から4.0MPaの圧力まで段階的に引き上げて加圧を行う工程を含んでもよい。このようにすることにより、加熱加圧成形時において成形体の形状が崩れることを抑制して、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物中の水を効率的に排除することができる。したがって、より確実かつより効率的に剛性が大きく、サイズの大きい成形体を製造することができる。
【0024】
本開示に従った成形体は、ミクロフィブリル化セルロースのみから構成され、曲げ弾性率が11.0GPa以上である。このような成形体は、ミクロフィブリル化セルロースのみから構成されており、樹脂や金属材料等を含んでいないため、地球環境の観点から良好である。また、曲げ弾性率が11.0GPa以上であるため、電子材料や建材といった剛性が求められる部材として、有効に利用することができる。
【0025】
本開示に従った成形体は、板状であって、ミクロフィブリル化セルロースのみから構成される第1層と、パルプのみから構成され、第1層上に配置される第2層と、ミクロフィブリル化セルロースのみから構成され、厚さ方向において第1層が配置される側と反対側の第2層上に配置される第3層と、を備え、曲げ弾性率が11.0GPa以上である。このような成形体は、ミクロフィブリル化セルロースのみから構成される第1層および第3層の間にパルプのみから構成される第2層が挟み込まれた構成である。パルプのみから構成される第2層は、比較的安価に製造することができる。したがって、成形体全体としてある程度の厚さを有しながら、安価に製造することができる。また、この場合、パルプのみから構成される第2層の厚さ方向の両側にミクロフィブリル化セルロースのみから構成される第1層および第3層が配置されることになる。第1層および第3層は、厚さ方向に均質であり、剛性が大きい。よって、曲げ弾性率を11.0GPa以上として、成形体の剛性を大きくすることができる。したがって、このような成形体についても、ある程度の厚さを有し、剛性が求められる場合に、有効に利用することができる。
【0026】
上記成形体において、板状であって、厚さが2.0mm以上であってもよい。このような成形体によると、厚さが2.0mm以上であるため、剛性が求められる部材としてある程度の厚さが求められる場合に、有効に利用することができる。ここで、ある程度の厚さを有する成形体を得る際に、特許文献1に開示の技術や特許文献2の開示の技術で得られた薄板状の成形体を複数枚積層し、たとえば接着剤によって互いに接着する場合がある。しかし、このような構成では、製造工程における接着の手間が多大となってしまう。また、接着剤と成形体との境界が多く生ずることとなり、厚さ方向における材料の均質性を確保することが困難となる。ここで、本開示の成形体によると、接着の手間を簡略化することができ、また、厚さ方向における材料の均質性を確保することができる。なお、上記したミクロフィブリル化セルロースのみから構成される本開示の成形体においては、厚さ方向の材質が均一であるため、複数枚を積層し、接着して得られた成形体と比べて境界部分における割れや欠け、剥離等のおそれが低減される。よって、剛性が求められる部材として有効に利用することができる。
【0027】
上記成形体において、密度が1.30g/cm3以上1.55g/cm3以下であってもよい。このような成形体は、より確実に剛性の大きいものとすることができる。
【0028】
上記成形体において、ミクロフィブリル化セルロースの繊維径は、10nm以上1000nm以下であってもよい。このようにすることにより、成形体におけるミクロフィブリル化セルロースをより緻密に絡ませることができる。したがって、より剛性を大きくすることができる。
【0029】
本開示に従ったミクロフィブリル化セルロース含有組成物の製造方法は、水中にミクロフィブリル化セルロースを所定の濃度分散させた分散液を準備する工程と、含水率が65質量%以上85質量%以下となるよう、分散液を濾過してシート状のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を形成する工程と、を含む。
【0030】
このようなミクロフィブリル化セルロース含有組成物の製造方法によると、シート状のミクロフィブリル化セルロース含有組成物の形成時において、袋やシールテープを準備して密封空間を設ける必要はない。よって、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物を効率的に製造することができる。すなわち、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物を複数枚製造するに際し、短時間かつ低い労力で製造することができる。また、このようにして得られたミクロフィブリル化セルロース含有組成物を複数枚積層して加熱加圧成形を行って成形体とした場合、成形体の厚さ方向の境界をなくし、厚さ方向の材質を均一とすることができる。よって、剛性の大きい成形体を得ることができる。
【0031】
上記ミクロフィブリル化セルロース含有組成物の製造方法において、分散液を準備する工程は、水中にミクロフィブリル化セルロースを10質量%の濃度で分散された分散液を準備する工程を含んでもよい。このようにすることにより、より効率的にミクロフィブリル化セルロース含有組成物を得ることができる。
【0032】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0033】
図1は、本開示の一実施形態に係る成形板の外観を示す概略斜視図である。
図2は、
図1に示す成形板の一部を拡大して示す概略断面図である。
図2は、
図1に示すII-II断面で切断した場合の断面図である。
【0034】
図1および
図2を参照して、この発明の一実施形態に係る成形体11は、Z方向を厚さ方向とする平板状である。成形体11は、厚さ方向に見てY方向を長手方向、X方向を短手方向とする矩形状である。成形体11の厚さS
1、すなわち、成形体11のZ方向の一方の面13aから他方の面13bまでの長さ、そしてX方向の長さS
2およびY方向の長さS
3は、用途や使用箇所等により任意に定められる。具体的には、X方向の長さS
2としては、100mm以上1200mm以下のものが好適に用いられ、Y方向の長さS
3としては、100mm以上2400mm以下のものが好適に用いられる。もちろん、このようなサイズの成形体11についても、たとえば後述する成形体11の製造方法を用いて、効率的に製造することができる。
【0035】
成形体11の厚さS1は、1.0mm以上100.0mm以下である。具体的には、たとえば成形体11の厚さS1は、2.0mmである。なお、成形体11の厚さS1としては、たとえば2.0mm以上のものがさらに好適に用いられる。また、たとえば4.0mm以上100.0mm以下のものがさらに好適に用いられる。もちろん、このような厚さを有する成形体11についても、たとえば後述する成形体11の製造方法を用いて、効率的に製造することができる。
【0036】
成形体11は、ミクロフィブリル化セルロース12のみから構成されている。具体的には、成形体11は、ミクロフィブリル化セルロース12が凝集した平板状である。
【0037】
ミクロフィブリル化セルロース12については、セルロースナノファイバーとも呼ばれるものであり、ミクロフィブリル状のセルロース繊維である。ミクロフィブリル化セルロース12の原材料としては、例えば、植物由来のもの、動物由来のもの、また、微生物由来のもの等を用いることができる。さらにキチン由来のもの、キトサン由来のものを用いることとしてもよい。
【0038】
ミクロフィブリル化セルロース12の繊維径は、10nm以上50nm以下であってもよい。このようにすることにより、成形体11内におけるミクロフィブリル化セルロース12をより緻密に絡ませることができる。したがって、より剛性を大きくすることができる。
【0039】
成形体11の曲げ弾性率は、11.0GPa以上である。このような成形体11は、大きい剛性が求められる種々の用途への適用が可能である。成形体11の曲げ弾性率は、JIS-K6911に準拠した方法で測定される。なお、成形体11については、ミクロフィブリル化セルロース12が一方向に揃っておらず、ランダムに配置されている。よって、成形体11は、等方性を有する。すなわち、たとえば成形体11を板状とした場合に、縦方向(X方向)における剛性および横方向(Y方向)における剛性がそれぞれ大きいものである。
【0040】
上記成形体11において、密度が1.30g/cm3以上1.55g/cm3以下である。このような成形体11は、より確実に剛性の大きいものとすることができる。なお、密度を、1.35g/cm3以上1.55g/cm3以下とすることにより、より確実に剛性の大きいものとすることができる。
【0041】
なお、成形体は、板状であって、ミクロフィブリル化セルロースのみから構成される第1層と、パルプのみから構成され、第1層上に配置される第2層と、ミクロフィブリル化セルロースのみから構成され、厚さ方向において第1層が配置される側と反対側の第2層上に配置される第3層と、を備えてもよい。そして、曲げ弾性率が11.0GPa以上であってもよい。
【0042】
図3は、他の実施形態に係る成形体を示す概略断面図である。
図3を参照して、成形体21は、第1層22と、第2層23と、第3層24と、を含む。第1層22および第3層24は、ミクロフィブリル化セルロースのみから構成される。第2層23は、パルプのみから構成される。第2層23は、第1層22上に配置される。具体的には、第1層22の厚さ方向の一方の面25aは露出しており、第1層22の厚さ方向の他方の面25bは、第2層23の厚さ方向の一方の面26aと接触している。また、第3層24の厚さ方向の一方の面27aは、第2層23の厚さ方向の他方の面26bと接触しており、第3層24の厚さ方向の他方の面27bは、露出している。成形体21の厚さS
4、すなわち、第1層22の一方の面25aから第3層24の他方の面27bまでのZ方向の長さとしては、たとえば必要とされる成形体の厚さによって任意に変わる。
【0043】
成形体21は、ミクロフィブリル化セルロースのみから構成される第1層22および第3層24の間にパルプのみから構成される第2層23が挟み込まれた構成である。パルプのみから構成される第2層23は、比較的安価に製造することができる。したがって、成形体21全体としてある程度の厚さを有しながら、安価に製造することができる。また、この場合、パルプのみから構成される第2層23の厚さ方向の両側にミクロフィブリル化セルロースのみから構成される第1層22および第3層24が配置されることになる。第1層22および第3層24は、厚さ方向に均質であり、剛性が大きい。よって、曲げ弾性率を11.0GPa以上として、成形体21の剛性を大きくすることができる。したがって、このような成形体21についても、ある程度の厚さを有し、大きな剛性が求められる場合に、有効に利用することができる。
【0044】
ここで、
図1および
図2に示す成形体は、例えば、以下の構成のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を用いて製造することができる。
図4は、本開示の一実施形態に係るミクロフィブリル化セルロース含有組成物の製造方法における代表的な製造工程を示すフローチャートである。
【0045】
図4を参照して、まず、水中にミクロフィブリル化セルロースを所定の濃度分散させた分散液を準備する(
図4において、ステップS11、以下、「ステップ」を省略する。)。次に、分散液を水で希釈して、所望のミクロフィブリル化セルロースの濃度とする(S12)。具体的には、たとえばミクロフィブリル化セルロースの濃度が1質量%程度となるよう希釈する。次に、脱水しながらシート状となるよう成形を行う(S13)。この場合、分散液を濾過して、シート状となるように成形を行う。このようにして、含水率が65質量%以上85質量%以下となるよう、分散液を濾過してシート状のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を形成する。なお、濾過については、自然濾過の他、圧力を加えて濾過を行う加圧濾過を用いてもよいし、減圧濾過や遠心濾過を利用してもよく、吸引濾過を利用してもよい。すなわち、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物を形成する工程は、分散液を吸引濾過する工程を含んでもよい。このようにすることにより、濾過を短時間で行うことができる。したがって、より効率的に成形体を製造することができる。
【0046】
このように、本開示に係るミクロフィブリル化セルロース含有組成物の製造方法は、含水率が65質量%以上85質量%以下となるよう、分散液を濾過してシート状のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を形成する工程を含む。したがって、シート状のミクロフィブリル化セルロース含有組成物の形成時において、袋やシールテープを準備して密封空間を設ける必要はない。よって、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物を効率的に製造することができる。すなわち、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物を複数枚製造するに際し、短時間かつ少ない労力で製造することができる。
【0047】
図5は、得られたミクロフィブリル化セルロース含有組成物を示す概略断面図である。
図5を参照して、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物14は、ミクロフィブリル化セルロース12と、水15と、を含む。ミクロフィブリル化セルロース含有組成物14は、多量の凝集したミクロフィブリル化セルロース12中に水15が分散して混在した状態となっている。ミクロフィブリル化セルロース含有組成物14は、いわゆる酒粕のような状態となっている。ミクロフィブリル化セルロース含有組成物14は、シート状である。ミクロフィブリル化セルロース含有組成物14の厚さS
5、すなわち、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物14の一方の面16aから他方の面16bまでの長さとしては、例えば0.5mm以上2.5mm以下のものが用いられる。
【0048】
次に、本開示の一実施形態に係る成形体の製造方法の概略について、説明する。
図6は、
図1および
図2に示す本開示の一実施形態に係る成形体の製造方法における代表的な製造工程を示すフローチャートである。
【0049】
図6を参照して、上記した
図4に示す製造方法により得られたミクロフィブリル化セルロース含有組成物を複数枚準備する(S21)。この場合、X方向の長さおよびY方向の長さが揃っているものを準備する。そして、準備した複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を積層する(S22)。すなわち、厚さ方向に複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を積み重ねる。
【0050】
その後、積層した複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を、厚さ方向の両側に配置した不織布によって挟む(S23)。この場合、不織布として、ガラス不織布を用いる。次に、不織布によって挟んだ複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物の厚さ方向に0.1MPa以上4.0MPa以下の圧力で加圧しながら加熱して一枚の板状の成形体とする加熱加圧成形を行う(S24)。具体的には、ガラス不織布のさらに両側にステンレス製の金属板を配置し、厚さ方向に圧力を加える。
【0051】
図7は、
図1および
図2に示す成形体11を得る場合の1加熱加圧成形を行う際の各部材を示す概略断面図である。
図7を参照して、4枚の積層されたミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31b,31c,31dの厚さ方向の両側にガラス不織布32a,32bが配置されている。すなわち、ガラス不織布32a,32bによって積層されたミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31b,31c,31dが挟み込まれた形となっている。そして、さらにガラス不織布32a,32bの厚さ方向の両側にステンレス製等の金属板33a,33bが配置される。この金属板33a,33bを介して積層されたミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31b,31c,31dが加熱されると共に矢印D
1で示す方向に加圧され、成形される。加熱加圧成形時においては、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31b,31c,31d中に含まれる水が、主に矢印D
2に示すように、まず厚さ方向に移動する。そして、ガラス不織布32a,32bの側面側から水が排出される。
【0052】
このようにして、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31b,31c,31dの厚さ方向に0.1MPa以上4.0MPa以下の圧力で加圧しながら加熱して
図1および
図2に示すような一枚の板状の成形体とする。
【0053】
上記成形体の製造方法によると、上記したように濾過によって得られたミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31b,31c,31dは、表面の性状が比較的粗い状態となっている。このようなミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31b,31c,31dを用い、複数枚積層して加熱加圧成形して得らえる成形体について、積層された複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31b,31c,31dのうちの表面側に位置するミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31b,31c,31d同士が厚さ方向において適度に絡み合って厚さ方向の境界をなくし、厚さ方向の材質を均一とすることができる。よって、このように構成することにより、任意の厚さの成形体を得ることができる。また、濾過によって得られたミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31b,31c,31dは、ミクロフィブリル化セルロースを緻密に絡ませることができる。したがって、得られた成形体について、剛性を大きくすることができる。また、得られた成形体については、等方性を有する。すなわち、縦方向における剛性も横方向における剛性もそれぞれ大きくすることができる。よって、たとえば電子材料を削り出して製造する際にも方向性を気にする必要はなく、極めて利用価値の高い成形体となっている。
【0054】
積層した複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31b,31c,31dの加熱加圧成形において、0.1MPa以上4.0MPa以下の圧力で加圧して一枚の板状の成形体を得ている。よって、加熱加圧成形時において、比較的低い圧力で成形することができるため、大がかりな設備を必要とせず、設備による成形体のサイズの制約を受けにくくすることができる。また、高い圧力で材料を厚さ方向に押しつぶしてしまうことを抑制できる。よって、サイズの大きな成形体を比較的簡易な設備構成で製造することができる。また、所望の厚さの積層体を得ることが容易となる。
【0055】
以上より、上記成形体の製造方法によると、剛性が大きく、サイズの大きい成形体を効率的に製造することができる。
【0056】
次に、
図3に示す成形体の製造方法について説明する。
図8は、
図3に示す成形体の製造方法における代表的な製造工程を示すフローチャートである。
【0057】
図8を参照して、上記した
図4に示す製造方法により得られたミクロフィブリル化セルロース含有組成物を複数枚準備する(S31)。また、シート状であって、水およびパルプから構成されるパルプ含有組成物を準備する(S32)。そして、準備した複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を積層して、パルプ含有組成物を挟む(S33)。すなわち、本開示の成形体の製造方法は、積層した複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を、厚さ方向の両側に配置した不織布によって挟む工程の前に、複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物の間にパルプ含有組成物を挟む。具体的には、間にパルプ含有組成物を挟むように、複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物を積み重ねる。
【0058】
その後、積層した複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物およびパルプ含有組成物を、厚さ方向の両側に配置した不織布によって挟む(S34)。次に、不織布によって挟んだ複数枚のミクロフィブリル化セルロース含有組成物およびパルプ含有組成物の厚さ方向に0.1MPa以上4.0MPa以下の圧力で加圧しながら加熱して一枚の板状の成形体21とする加熱加圧成形を行う(S35)。
【0059】
図9は、
図3に示す成形体を得る場合の加熱加圧成形を行う際の各部材を示す概略断面図である。
図9を参照して、2枚の積層されたミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31bと、2枚の積層されたミクロフィブリル化セルロース含有組成物31c,31dの間に、1枚のパルプ含有組成物34aが挟まれている。そして、厚さ方向の両側にガラス不織布32a,32bが配置されている。すなわち、ガラス不織布32a,32bによって積層されたミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31b、パルプ含有組成物34a、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物31c,31dが挟み込まれた形となっている。そして、さらにガラス不織布32a,32bの厚さ方向の両側にステンレス製の金属板33a,33bが配置される。この金属板33a,33bを介して積層されたミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31b、パルプ含有組成物34a、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物31c,31dが加熱されると共に矢印D
1で示す方向に加圧され、成形される。加熱加圧成形時においては、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31b、パルプ含有組成物34a、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物31c,31d中に含まれる水が、主に矢印D
2に示すように、まず厚さ方向に移動する。そして、ガラス不織布32a,32bの側面側から水が排出される。
【0060】
このようにして、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31b、パルプ含有組成物34a、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物31c,31dの厚さ方向に0.1MPa以上4.0MPa以下の圧力で加圧しながら加熱して
図3に示すような一枚の板状の成形体とする。
【0061】
このような成形体は、ミクロフィブリル化セルロースのみから構成される第1層および第3層の間にパルプのみから構成される第2層が挟み込まれた構成である。パルプのみから構成される第2層は、比較的安価に製造することができる。したがって、成形体全体としてある程度の厚さを有しながら、安価に製造することができる。また、この場合、パルプのみから構成される第2層の厚さ方向の両側にミクロフィブリル化セルロースのみから構成される第1層および第3層が配置されることになる。第1層および第3層は、厚さ方向に均質であり、剛性が大きい。よって、曲げ弾性率を11.0GPa以上として、成形体の剛性を大きくすることができる。したがって、このような成形体についても、ある程度の厚さを有し、大きな剛性が求められる場合に、有効に利用することができる。
【0062】
また、パルプは汎用的に用いられるものであるため、上記構成のパルプ含有組成物34aは、ミクロフィブリル化セルロース含有組成物31a,31b,31c,31dよりも安価に製造することができる。ここで、得られた成形体21の厚さ方向の両側には、ミクロフィブリル化セルロースから構成される層が配置されることになるため、剛性が低下することを抑制することができる。したがって、このような成形体の製造方法によると、剛性が大きく、所望の厚さの成形体を安価に得ることができる。
【0063】
なお、上記の実施の形態においては、ミクロフィブリル化セルロースの繊維径として、10nm以上1000nm以下のものを用いることとしたが、これに限らず、用途やコスト等に応じて、数nm~数千nmの繊維径のものが用いられる。
【0064】
また、上記の実施の形態において、不織布としてガラス不織布を用いることとしたが、これに限らず、有機系の材料の繊維から構成される不織布や無機系の材料の繊維から構成される不織布を用いてもよい。もちろん、両側に配置される不織布について、同じものを用いず、異なるものを用いてもよい。
【実施例】
【0065】
サンプル1~サンプル13に示す配合、手法に沿って成形体を成形し、評価試験を実施した。評価結果については、表1に示す。なお、サンプル11、サンプル12およびサンプル13については、成形体を得ることができなかったため、表1に示していない。サンプル1~サンプル8が、本発明の範囲内となる。サンプル9~サンプル13が、本発明の範囲外となる。
【0066】
(サンプル1)
水中に10質量%の濃度で分散させたミクロフィブリル化セルロース(株式会社スギノマシン製「BiNFi-S(ビンフィス) BMa10010」:繊維径10nm~50nm以下)を準備した。そして、水で1質量%となるまで希釈し、その後、濾過により含水量が65質量%以上85質量%以下となるように水を除去して、厚さが2.5mmのシート状のMFC含有組成物を得た。ここでは、吸引濾過により水を除去した。このようにして、2枚のMFC含有組成物を製造し、積層した。その後、目付47g/cm2のガラス不織布を2枚準備して積層したMFC含有組成物を挟み、さらに2枚のステンレス製の金属板で挟んだ。そして、150℃で1時間加熱加圧成形を行った。圧力については、0.5MPaから段階的に上昇していき、最終的な圧力が4.0MPaとなるように行った。得られた成形体の厚さは、1.0mmであった。この成形体について、曲げ弾性率、曲げ強度および密度を測定した。測定は、JIS-K6911に準拠した。以下のサンプルの測定についても同様である。
【0067】
(サンプル2)
図3に示す製造方法により得られたMFC含有組成物を4枚積層した以外はサンプル1と同様にして、サンプル2に係る成形体を得た。得られた積層体の厚さは、2.0mmであった。
【0068】
(サンプル3)
図3に示す製造方法により得られたMFC含有組成物を8枚積層した以外はサンプル1と同様にして、サンプル3に係る成形体を得た。得られた積層体の厚さは、4.0mmであった。
【0069】
(サンプル4)
図3に示す製造方法により得られたMFC含有組成物を20枚積層した以外はサンプル1と同様にして、サンプル4に係る成形体を得た。得られた積層体の厚さは、10.0mmであった。
【0070】
(サンプル5)
図3に示す製造方法により得られたMFC含有組成物を100枚積層した以外はサンプル1と同様にして、サンプル5に係る成形体を得た。得られた積層体の厚さは、50.0mmであった。
【0071】
(サンプル6)
図3に示す製造方法により得られたMFC含有組成物を200枚積層した以外はサンプル1と同様にして、サンプル6に係る成形体を得た。得られた積層体の厚さは、100.0mmであった。
【0072】
(サンプル7)
MFCを、MFC(ダイセルファインケム株式会社製「セリッシュKY-100G」繊維径:0.01~1μm)に変更した以外はサンプル1と同様にして、サンプル7に係る成形体を得た。得られた積層体の厚さは、100.0mmであった。
【0073】
(サンプル8)
水中に10質量%の濃度で分散させたMFC(株式会社スギノマシン製「BiNFi-S BMa10010」)を準備した。そして、水で1質量%となるまで希釈し、その後、濾過により含水量が65質量%以上85質量%以下となるように水を除去して、厚さが1.2mmのシート状のMFC含有組成物を得た。ここでは、吸引濾過により水を除去した。このようにして、2枚のMFC含有組成物を製造した。また、パルプとして、市販のトイレットペーパー(例えば王子ネピア株式会社製のフレッシュパルプ100%のネピアロール)を水中に10質量%の濃度で離解した分散液を準備した。そして、水で1質量%となるまで希釈し、その後、濾過により含水量65質量%以上85質量%以下となるように水を除去して、厚さが2.5mmのシート状のパルプ含有組成物を得た。ここでは、吸引濾過により水を除去した。得られた2枚のMFC含有組成物の間に得られたパルプ含有組成物を挟み、その後、目付47g/cm2のガラス不織布を2枚準備してMFC含有組成物を挟み、さらに2枚のステンレス製の金属板で挟んだ。そして、150℃で1時間加熱加圧成形を行った。圧力については、0.5MPaから段階的に上昇していき、最終的な圧力が4.0MPaとなるように行った。得られた成形体の厚さは、1.0mmであった。
【0074】
(サンプル9)
水中に10質量%の濃度で分散させたMFC(株式会社スギノマシン製「BiNFi-S BMa10010」)を用いて、特許文献2の製造方法に基づいて一体成型の手法で、1.0~4。0mmの厚さの成形体を得た。
【0075】
(サンプル10)
サンプル9におけるMFCをMFC(ダイセルファインケム株式会社製「セリッシュKY-100G」)に変更した以外はサンプル9と同様にして、サンプル10に係る成形体を得た。得られた積層体の厚さは、1.0mmであった。
【0076】
(サンプル11)
製造時において積層したMFC含有組成物をガラス不織布によって挟まない以外はサンプル1と同様にした。この場合、積層したMFC含有組成物同士の界面が結着せず、成形体を得ることができなかった。
【0077】
(サンプル12)
水中に10質量%の濃度で分散させたMFC(株式会社スギノマシン製「BiNFi-S BMa10010」:繊維径10nm~50nm以下)を準備した。そして、このままの状態で(脱水を行わず)厚さが5.0mmとなるよう成形したシート状のMFC含有組成物を用いた以外はサンプル1と同様にした。この場合、加圧時にMFCが流動し、所望の厚さの成形体を得ることができなかった。
【0078】
(サンプル13)
水中に10質量%の濃度で分散させたMFC(株式会社スギノマシン製「BiNFi-S BMa10010」:繊維径10nm~50nm以下)を準備した。そして、水で1質量%となるまで希釈し、その後、濾過により含水量が65質量%未満となるように水を除去して、厚さが2.0mmとなるよう成形したシート状のMFC含有組成物を用いた以外はサンプル1と同様にした。この場合、積層したMFC含有組成物同士の界面が結着せず、成形体を得ることができなかった。
【0079】
【0080】
表1を参照して、サンプル1、サンプル2、サンプル3、サンプル4、サンプル5およびサンプル6については、曲げ弾性率が12.8GPaであり、非常に高い値である。すなわち、極めて剛性の大きい成形体となっている。サンプル2については、成形体の厚さが2.0mmであり、サンプル3については、成形体の厚さが4.0mmである。サンプル4については、成形体の厚さが10.0mmと十分に厚いものとなっている。サンプル5については、成形体の厚さが50.0mmであり、非常に厚いものとなっている。サンプル6については、成形体の厚さが100.0mmであり、極めて厚いものとなっている。サンプル1~サンプル6について、密度は、1.40g/cm3であり、高い値を示している。なお、サンプル1~6における曲げ強度は、210MPaであり、強度の観点からも高い値を示している。
【0081】
サンプル7については、曲げ弾性率が11.9GPaであり、こちらも相当に高い値であり、剛性の大きい成形体となっている。サンプル7については、密度が、1.35g/cm3であり、高い値を示している。なお、サンプル7の曲げ強度は、170MPaであり、強度の観点からも高い値を示している。
【0082】
さらにサンプル8についても、曲げ弾性率が12.0GPaと高い値であり、剛性の大きい材料となっている。サンプル8については、密度が、1.30g/cm3であり、高い値を示している。なお、サンプル8の曲げ強度は、160MPaであり、強度の観点からも高い値を示している。
【0083】
一方、サンプル9については、水を除去する時間(脱水時間)に12時間以上も要しており、製造面において非常に効率が悪くなっている。また、得られた成形体についても、曲げ弾性率が8.8GPaであり、小さい値となっている。密度も1.30g/cm3である。
【0084】
サンプル10については、水を除去する時間は2.5時間であり、サンプル1~サンプル8と比較して長くなっている。また、得られた成形体についても、曲げ弾性率が7.3GPaであり、非常に小さい値となっている。密度も1.25g/cm3であり、相当に低い値となっている。
【0085】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本開示に係る成形体の製造方法、成形体およびミクロフィブリル化セルロース成形体の製造方法は、剛性が大きく、サイズの大きい成形体の効率的な製造が要求される場合に、特に有効に利用される。
【符号の説明】
【0087】
11,21 成形体、12 ミクロフィブリル化セルロース、13a,13b,16a,16b,25a,25b,26a,26b,27a,27b 面、14,31a,31b,31c,31d ミクロフィブリル化セルロース含有組成物、15 水、22 第1層、23 第2層、24 第3層、32a,32b ガラス不織布、33a,33b 金属板、34a パルプ含有組成物。