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特許7569369硝子体網膜手術用の適応光学システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】硝子体網膜手術用の適応光学システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/103 20060101AFI20241009BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20241009BHJP
   A61B 3/13 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
A61B3/103
A61F9/007 130H
A61B3/13
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022506973
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 IB2020057123
(87)【国際公開番号】W WO2021024094
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】62/883,293
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ティー.チャールズ
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-236795(JP,A)
【文献】特表2015-523105(JP,A)
【文献】特開2007-330585(JP,A)
【文献】特開2017-006426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0181625(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
A61F 9/00 - 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
適応光学システムであって、
光を検出してプロセッサに信号を送信するように動作可能な少なくとも1つのアクティブピクセルセンサアレイと、
前記アクティブピクセルセンサアレイ上に、関心領域(ROI)ゲイン制御を実施するように動作可能なオンチッププロセッサと、
少なくとも1つの波面制御構造体及び前記プロセッサを含み、且つ
前記プロセッサ上で命令を実行して、前記アクティブピクセルセンサアレイによって検出された前記光の少なくとも1つの波面歪みが部分的に又は完全に補正されているデジタル画像を生成するように動作可能な、波面補正システムと、
を備える、適応光学システム。
【請求項2】
複数のアクティブピクセルセンサアレイを更に備える、請求項1に記載の適応光学システム。
【請求項3】
前記波面制御構造体が、空間光変調器(SLM)、液晶オンシリコン空間光変調器(LCoS-SLM)、透過型LCoS-SLM、反射型LCoS-SLM、変形可能ミラー、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の適応光学システム。
【請求項4】
前記波面制御構造体が、位相のみSLMを含む、請求項1に記載の適応光学システム。
【請求項5】
前記デジタル画像が、デジタルディスプレイ、スクリーン、ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、又はそれらの任意の組み合わせ上に表示される、請求項1に記載の適応光学システム。
【請求項6】
前記適応光学システムが、NGENUITY(登録商標)の構成要素である、請求項1に記載の適応光学システム。
【請求項7】
前記アクティブピクセルセンサアレイが、相補型金属酸化物半導体(CMOS)モノクロセンサ、4KモノクロCMOSセンサ、1080PモノクロCMOSセンサ、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の適応光学システム。
【請求項8】
画像参照システムを更に備える、請求項1に記載の適応光学システム。
【請求項9】
前記画像参照システムが、眼内に配置された手術用器具である参照画像を含む、請求項8に記載の適応光学システム。
【請求項10】
前記手術用器具が、硝子質カッタ、鉗子、はさみ、ピック、スクレーパ、フレックスループ、スパチュラ、マイクロ硝子体網膜(MVR)ブレード、マイクロカニューレ、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項9に記載の適応光学システム。
【請求項11】
一定期間にわたって離間された一連の赤色、緑色、及び青色の光を放出するように動作可能な、赤色光源、緑色光源、及び青色光源を含む時系列カラーシステムを更に備え、
少なくとも1つの前記アクティブピクセルセンサアレイが、前記赤色、緑色、及び青色の光の各々を検出して前記プロセッサに信号を送信するように動作可能である、請求項1に記載の適応光学システム。
【請求項12】
前記時系列カラーシステムが、180Hz以上の総速度で順番にパルス化される赤色発光ダイオード(LED)、緑色LED、及び青色LEDを含む、請求項11に記載の適応光学システム。
【請求項13】
前記時系列カラーシステムが、180Hz以上の総速度で順番にパルス化される赤色スーパールミネッセント発光ダイオード(SLED)、緑色SLED、及び青色SLEDを含む、請求項11に記載の適応光学システム。
【請求項14】
前記時系列カラーシステムが、内部照明器によって提供されている、請求項11に記載の適応光学システム。
【請求項15】
前記アクティブピクセルセンサアレイが、ベイヤーフィルタを備えていないアクティブピクセルセンサアレイである、請求項11に記載の適応光学システム。
【請求項16】
前記アクティブピクセルセンサアレイが、赤色画像、緑色画像、及び青色画像を順次キャプチャする、請求項11に記載の適応光学システム。
【請求項17】
医療システムであって、
プロセッサと、
前記プロセッサに結合された少なくとも1つのアクティブピクセルセンサアレイと、
前記アクティブピクセルセンサアレイ上に、関心領域(ROI)ゲイン制御を実施するように動作可能なオンチッププロセッサと、
前記プロセッサに結合された波面補正システムと、
画像参照システムと、
前記プロセッサに結合されたメモリ媒体であって、前記プロセッサによって実行されると、前記医療システムに、
前記画像参照システムを利用して患者の眼の内部から反射された光の反射波面の波面歪みを判定させ、
前記波面補正システムを利用して前記眼の前記内部から反射された前記光の反射波面の前記波面歪みを補正させる、命令を含む、メモリ媒体と、
を備える、医療システム。
【請求項18】
請求項1に記載の適応光学システムを使用して、波面歪みを補正してデジタル画像を改善する方法であって、
画像参照システムを使用して、眼の内部から反射された光の反射波面の波面歪みを判定することと、
波面補正システムを使用して、前記眼の前記内部から反射された前記光の反射波面の前記波面歪みを補正することと、
を含む、方法。
【請求項19】
横方向の色拡散を排除し、演色性を向上させてデジタル画像を改善する方法であって、
時間にわたって離間された一連の赤色光、緑色光、及び青色光を放出する時系列カラーシステムを使用して、眼の内部を照らすことと、
ベイヤーフィルタを備えていない少なくとも1つのアクティブピクセルセンサアレイを使用して、前記眼の前記内部から反射された光の赤色波面、光の緑色波面、及び光の青色波面を検出することと、
ベイヤーフィルタを備えていない前記アクティブピクセルセンサアレイを使用して、前記眼の前記内部の赤色画像、緑色画像、及び青色画像を順次キャプチャすることと、
前記赤色画像、前記緑色画像、及び前記青色画像を観察者の視覚野に統合するか、又は前記赤色画像、前記緑色画像、及び前記青色画像を有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ用に再フォーマットして、横方向の色拡散が排除された前記眼の前記内部のカラー画像を提供することと、
前記アクティブピクセルセンサアレイ上で動作可能なオンチッププロセッサを使用して、関心領域(ROI)ゲイン制御を実施すること、
を含む、方法。
【請求項20】
適応光学システムであって、
光を検出してプロセッサに信号を送信するように動作可能な少なくとも1つのアクティブピクセルセンサアレイと、
前記アクティブピクセルセンサアレイ上に、ROIゲイン制御を実施するための振幅のみSLMと、
少なくとも1つの波面制御構造体及び前記プロセッサを含み、且つ
前記プロセッサ上で命令を実行して、前記アクティブピクセルセンサアレイによって検出された前記光の少なくとも1つの波面歪みが部分的に又は完全に補正されているデジタル画像を生成するように動作可能な、波面補正システムと、
を備える、適応光学システム。
【請求項21】
医療システムであって、
プロセッサと、
前記プロセッサに結合された少なくとも1つのアクティブピクセルセンサアレイと、
前記アクティブピクセルセンサアレイ上に、ROIゲイン制御を実施するための振幅のみSLMと、
前記プロセッサに結合された波面補正システムと、
画像参照システムと、
前記プロセッサに結合されたメモリ媒体であって、前記プロセッサによって実行されると、前記医療システムに、
前記画像参照システムを利用して患者の眼の内部から反射された光の反射波面の波面歪みを判定させ、
前記波面補正システムを利用して前記眼の前記内部から反射された前記光の反射波面の前記波面歪みを補正させる、命令を含む、メモリ媒体と、
を備える、医療システム。
【請求項22】
請求項20に記載の適応光学システムを使用して、波面歪みを補正してデジタル画像を改善する方法であって、
画像参照システムを使用して、眼の内部から反射された光の反射波面の波面歪みを判定することと、
波面補正システムを使用して、前記眼の前記内部から反射された前記光の反射波面の前記波面歪みを補正することと、
を含む、方法。
【請求項23】
横方向の色拡散を排除し、演色性を向上させてデジタル画像を改善する方法であって、
時間にわたって離間された一連の赤色光、緑色光、及び青色光を放出する時系列カラーシステムを使用して、眼の内部を照らすことと、
ベイヤーフィルタを備えていない少なくとも1つのアクティブピクセルセンサアレイを使用して、前記眼の前記内部から反射された光の赤色波面、光の緑色波面、及び光の青色波面を検出することと、
ベイヤーフィルタを備えていない前記アクティブピクセルセンサアレイを使用して、前記眼の前記内部の赤色画像、緑色画像、及び青色画像を順次キャプチャすることと、
前記赤色画像、前記緑色画像、及び前記青色画像を観察者の視覚野に統合するか、又は前記赤色画像、前記緑色画像、及び前記青色画像を有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ用に再フォーマットして、横方向の色拡散が排除された前記眼の前記内部のカラー画像を提供することと、
前記アクティブピクセルセンサアレイ上の振幅のみSLMを使用して、ROIゲイン制御を実施すること、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硝子体網膜手術及び手術用器具、より具体的には、硝子体網膜手術中のデジタル画像を改善するための適応光学システム、及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科手術は、眼又は眼の任意の部分に対して実行される手術である。眼科手術は、毎年、数万人の患者の視力を保護し且つ向上させる。しかしながら、眼の僅かな変化に対しても視力が敏感であり、多くの眼構造の特性が微細且つ精緻であるため、眼科手術は、実行が困難であり、些細若しくは稀な手術ミスを減らすか、又は手術スキルの精度が僅かに向上するのみで手術後の患者の視力に顕著な差が生じる場合がある。
【0003】
眼科手術の一種である硝子体網膜手術は、硝子体液、網膜、網膜上膜、及び内境界膜など、眼の内部を伴う様々な繊細な手順を含有する。特に、外膜、糖尿病性網膜症、硝子体出血、黄斑円孔、網膜剥離、硝子体黄斑牽引症候群、黄斑分裂症、及び白内障手術の合併症を含む、多くの眼疾患の治療において視覚感覚性能を改善するために、異なる硝子体網膜外科手術が、時にはレーザと共に使用される。
【0004】
硝子体網膜手術などの眼科手術中、眼科医は通常、接眼レンズを備えた非電子の光学的手術用顕微鏡を使用して、手術を受けている眼の拡大画像を観察する。より最近では、硝子体網膜の外科医は、硝子体網膜手術中の視覚化を支援するために、接眼レンズなしのデジタル画像システムを使用する場合がある。これらのシステムには、外科医が偏光眼鏡、デジタル接眼レンズ、又はヘッドマウントディスプレイを使用してディスプレイ画面上で網膜を観察することを可能にする、2D相補型金属酸化物半導体(CMOS)シングルチップのペア又は3チップセンサを備えた3D高ダイナミックレンジ(「HDR」)カメラシステムが含まれ得る。ディスプレイ画面により、接眼レンズを使用して手術を観察する必要から解放し、手術室内の他の人が外科医とまったく同じように見ることを可能にする。このシステムはまた、従来の光学アナログ手術用顕微鏡と比較して、高倍率下での画像の改善、及び被写界深度の拡大を可能にし、それによって眼の視覚化の改善を可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、硝子体網膜手術中のデジタル画像を改善する適応光学システムを提供する。適応光学システムは、光を検出してプロセッサに信号を送信する少なくとも1つのアクティブピクセルセンサアレイを含む。適応光学システムはまた、少なくとも1つの波面制御構造体及びプロセッサを含み、且つプロセッサ上で命令を実行して、アクティブピクセルセンサアレイによって検出された光の少なくとも1つの波面歪みが部分的に又は完全に補正されているデジタル画像を生成する、波面補正システムを備える。
【0006】
適応光学システム及びその使用方法は、以下の追加の特徴を含み得る。i)システムは、複数のアクティブピクセルセンサアレイを含み得、ii)波面制御構造体は、空間光変調器(SLM)、液晶オンシリコン空間光変調器(LCoS-SLM)、透過型LCoS-SLM、反射型LCoS-SLM、変形可能ミラー、又はそれらの任意の組み合わせを含み得、iii)波面制御構造体は、位相のみSLMを含み得、iv)デジタル画像は、デジタルディスプレイ、スクリーン、ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、又はそれらの任意の組み合わせ上に表示され得、v)システムは、NGENUITY(登録商標)(Novartis AG Corp.,Switzerland)の構成要素であり得、vi)アクティブピクセルセンサアレイは、CMOSモノクロセンサ、4KモノクロCMOSセンサ、1080PモノクロCMOSセンサ、又はそれらの任意の組み合わせであり得、vii)システムは、アクティブピクセルセンサアレイ上に、関心領域(ROI)ゲイン制御を実施するオンチッププロセッサを含み得、viii)システムは、アクティブピクセルセンサアレイ上に、ROIゲイン制御を実施するための振幅のみSLMを含み得、ix)システムは、画像参照システムを含み得、x)画像参照システムは、眼内に配置された手術用器具である参照画像を含み得、xi)手術用器具は、硝子質カッタ、鉗子、はさみ、ピック、スクレーパ、フレックスループ、スパチュラ、マイクロ硝子体網膜(MVR)ブレード、マイクロカニューレ、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0007】
本開示は、時間にわたって離間された一連の赤色、緑色、及び青色の光を放出する、赤色光源、緑色光源、及び青色光源を含む、時系列カラーシステムを含む適応光学システムを更に提供する。システムはまた、赤色光、緑色光、及び青色光の各々を検出してプロセッサに信号を送信する少なくとも1つのアクティブピクセルセンサアレイを含む。システムは、以下の追加機能を含み得る。i)時系列カラーシステムは、180Hz以上の総速度で順番にパルス化される赤色発光ダイオード(LED)、緑色LED、及び青色LEDを含み得、ii)時系列カラーシステムは、180Hz以上の総速度で順番にパルス化される赤色スーパールミネッセント発光ダイオード(SLED)、緑色SLED、及び青色SLEDを含み得、iii)時系列カラーシステムは、内部照明器によって提供され得、iv)アクティブピクセルセンサアレイは、ベイヤーフィルタを備えていないアクティブピクセルセンサアレイであり得、v)アクティブピクセルセンサアレイは、赤色画像、緑色画像、及び青色画像を順次キャプチャし得る。
【0008】
本開示は、プロセッサと、プロセッサに結合された少なくとも1つのアクティブピクセルセンサアレイと、プロセッサに結合された波面補正システムと、画像参照システムと、プロセッサに結合されたメモリ媒体と、を含む医療システムを更に提供する。記憶媒体は、プロセッサによって実行されると、医療システムに、画像参照システムを利用して患者の眼の内部から反射された光の反射波面の波面歪みを判定させる命令を含む。記憶媒体は、プロセッサによって実行されると、医療システムに、波面補正システムを利用して眼の内部から反射された光の反射波面の波面歪みを補正させる命令を更に含む。
【0009】
本開示は、画像参照システムを使用して眼の内部から反射された光の反射波面の波面歪みを判定し、且つ波面補正システムを使用して眼の内部から反射された光の反射波面の波面歪みを補正することによって、波面歪みを補正してデジタル画像を改善する方法を更に提供する。本開示はまた、時間にわたって離間された一連の赤色光、緑色光、及び青色光を放出する時系列カラーシステムを使用して、眼の内部を照らすことと、ベイヤーフィルタを備えていない少なくとも1つのアクティブピクセルセンサアレイを使用して、眼の内部から反射された光の赤色波面、光の緑色波面、及び光の青色波面を検出することと、ベイヤーフィルタを備えていないアクティブピクセルセンサアレイを使用して、眼の内部の赤色画像、緑色画像、及び青色画像を順次キャプチャすることと、赤色画像、緑色画像、及び青色画像を観察者の視覚野に統合するか、又は赤色画像、緑色画像、及び青色画像を有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ用に再フォーマットして、横方向の色拡散が排除された眼の内部のカラー画像を提供することと、によって、横方向の色拡散を排除し、演色性を向上させてデジタル画像を改善する方法を提供する。
【0010】
適応光学システムの態様及びその使用方法は、明らかに相互に排他的でない限り、互いに組み合わせられてもよい。加えて、適応光学システムの追加の特徴及び上述のその関連する方法もまた、明らかに相互に排他的でない限り、互いに組み合わせることができる。
【0011】
本開示並びにその特徴及び利点をより完全に理解するために、ここで、添付図面と併せて、以下の説明に対して参照が行われるが、これらの図面は縮尺通りではなく、同様の数字は同様の特徴を指す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、波面補正システム、時系列カラーシステム、及び2つのモノクロアクティブピクセルセンサアレイを含む、適応光学システムの概略図である。
図2図2は、波面補正システム及び時系列カラーシステムを含む、適応光学システムの一部の概略図である。
図3図3は、視覚化システムの構成要素としての適応光学システムの概略図である。
図4図4は、NGENUITY(登録商標)3D視覚化システム(Novartis AG Corp.,Switzerland)の構成要素としての適応光学システムの概略図である。
図5図5は、手術用顕微鏡のカメラヘッドの構成要素としての適応光学システムの概略図である。
図6図6は、画像参照システムを含む適応光学システムの概略図である。
図7図7は、硝子体網膜手術用のデジタル画像を改善するために波面歪みを補正する方法を示すフロー図である。
図8図8は、硝子体網膜手術用のデジタル画像を改善する適応光学システムにおいて横方向の色拡散を排除する方法を示すフロー図である。
図9図9は、適応光学システムを含むコンピュータシステムの概略図である。
図10A-10C】図10A-10Cは、適応光学システムを含む医療システムの概略図である。
図11図11は、適応光学システム、外科医、及び患者を含む、医療システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、硝子体網膜手術用のデジタル画像を改善するための適応光学部品を含むシステム、及び関連する方法を提供する。
【0014】
硝子体網膜の外科医は、眼の内部を視覚化する際に、独自の課題に直面する。例えば、患者の瞳孔を通して得られる全てのビューは、光学収差の影響を受ける。光学収差は、眼疾患又は以前の手術によって引き起こされる場合があり、これが外科医によって観察される収差のある画像をもたらす、角膜の非球面性又は眼内レンズインプラントを引き起こす。球面収差は、瞳孔の拡張、周辺網膜を視覚化するための斜めの観察、白内障、眼内レンズ、及び角膜の非球面性によって引き起こされ得る。横方向又は軸方向にあり得る色収差は、眼の光学システム又は網膜視覚化システムが同じ焦点又は平面に異なる色の焦点を合わせることができないことにより引き起こされ得る。収差は、眼の内部を視覚化する外科医の能力を妨害し、手術をより困難にする場合がある。アナログシステムでは、収差の影響を補正する方法は非常に限られており、その多くは簡単に補正できない。しかしながら、デジタル視覚化システムは、本明細書に記載されるような様々な補正手段を可能するため、硝子体網膜手術を支援する外科医及び他の人に提示される画像を改善することができる。
【0015】
特に、本明細書に開示されるシステム及び方法は、外科医及び他の人によって観察される眼のデジタル画像における収差の影響を低減することができる。そうすることによって、このシステム及び方法は、収差を低減し、硝子体網膜手術の任意の態様での視覚化中のデジタル画像解像度、デジタル画像色演色性、デジタル画像ダイナミックレンジ、又はそれらの任意の組み合わせを改善することができる。本開示のシステム及び方法は、球面収差又は色収差を低減し、近視及び遠視、通常の乱視、コマ、又はトレフォイルによって引き起こされる焦点ぼけからの収差を低減し得る適応光学システムを含むことによって、現在のシステム及び方法と比較して硝子体網膜手術用のデジタル画像を改善し、横方向の色拡散を排除して、関心領域(「ROI」)のゲイン制御、又はそれらの任意の組み合わせを可能にすることができる。
【0016】
硝子体網膜手術中のデジタル視覚化用の現在のシステム及び方法には、適応光学システムが含まれていない。代わりに、それらはツインセンサの高ダイナミックレンジカメラシステムに依存しており、このシステムでは、収差の影響が波面歪みとしてはっきりと現れ得るため、画像歪み及び画質の低下につながり得る。硝子体網膜手術における波面歪みはまた、網膜視覚化システム(例えば、黄斑若しくは広角コンタクトレンズ、又はBIOM(登録商標)(OCULUS Surgical、Inc.,USA)及びReSight(登録商標)(Carl Zeiss Meditec AG,Germany)などの非接触観察システム、又は光屈折角膜切除術(PRK)、レーザ支援現場角膜移植(LASIK)、貫通角膜移植(PK)、放射状角膜切開術(RK)、辺縁弛緩切開(LRI)、デスメ膜内皮角膜移植(DMEK)、デスメのストリッピング内皮角膜移植(DSEK)、前層状角膜移植(ALK)、インレイ、外傷、円錐角膜、又は翼状角膜から生じ得る角膜非球面性によって引き起こされ得る。或いは、硝子体網膜手術における波面歪みは、周辺網膜、拡張した瞳孔、白内障を伴う又は伴わない水晶体、眼内レンズ(特に多焦点又は拡張焦点深度眼内レンズ)、又は無水晶体眼の角膜乱視を観察することによる斜めの視角による傾きによって引き起こされ得る。眼科研究において使用される現在の適応光学システムは、典型的に、非常に高倍率で、非ステレオで、単色で、非リアルタイムで、非常に小さい視野を有し、動きが最小限の対象を必要とし、手術には適していない。本明細書に記載の硝子体網膜手術用のデジタル画像を改善するための適応光学システムは、広帯域白色光を利用し、リアルタイムで動作し、ステレオ画像を表示し、見かけの待ち時間がなく、現在の手術用顕微鏡及び最新式のデジタル支援硝子体網膜手術(「DAVS」)システムNGENUITY(登録商標)(Novartis AG Corp.,Switzerland)と同じ倍率を提供することができる。
【0017】
本明細書に記載の適応光学システムは、波面補正システムを含むことによって、波面歪みを補正して、硝子体網膜手術用のデジタル画像を改善することができる。波面補正システムは、補正された波面を有する反射光をもたらす、波面歪みを制御及び補正する波面制御構造体を含み得る。波面制御構造体は、波面歪みを制御及び補正するためにミラーの表面を変形させることができる変形可能ミラーであり得る。波面制御構造体はまた、空間光変調器(「SLM」)であり得る。SLMは、光波の位相又は偏光を変調するピクセル化されたデバイスであり得る。SLMは、各ピクセルにおいて入射光の位相を制御することによって、波面成形に使用され得る。SLMは、変形可能ミラーと比較してはるかに高い解像度を有し、それによって、複雑な波面成形、点分布関数エンジニアリング、及び収差の影響を低減し得るピクセルエンジニアリングを可能にする。波面制御構造体は、位相のみSLMであってもよい。波面制御構造体はまた、液晶オンシリコンSLM(「LCoS-SLM」)であってもよく、透過型LCoS-SLMであってもよく、又は反射型LCoS-SLMであってもよい。SLMによる波面成形により、波面歪みを補正し、球面収差であり得る収差の影響を低減して、デジタル画像を改善することができる。
【0018】
本明細書に記載の適応光学システムでは、波面補正システムを時系列カラーシステムと組み合わせて利用することができる。時系列カラーシステムは、時間にわたって離間された一連の赤色、緑色、及び青色の光を放出し得る、赤色光源、緑色光源、及び青色光源を提供する。赤色光、緑色光、及び青色光源は、色のちらつき又は色割れを回避するために、180Hzを上回る総速度で順番にパルス化され得る。時系列カラーシステムは、手術中に眼を照らし得る、赤色、緑色、及び青色の光を提供する。赤色光、緑色光、及び青色光源は、毛様体扁平部を通って挿入される光ファイバプローブである、内部照明器によって提供され得る。内部照明器によって提供され、且つ眼によって反射される赤色光、緑色光、及び青色光からの波面歪みは、波面補正システムによって補正され得る。同じ適応光学システムにおいて波面補正システム及び時系列カラーシステムを実装することにより、赤色、緑色、青色の光源の各々に対して異なる波面成形又は変換が可能になり得、それによって、赤色、緑色、青色を同じ収束点又は画像平面に集束させることにより、デジタル画像での色収差を低減することができる。これにより、横方向の色収差、軸方向の色収差、又はそれらの組み合わせを低減することができる。
【0019】
或いは、時系列カラーシステムは、赤色、緑色、又は青色以外の色である、少なくとも1つの光源を利用してもよい。時系列カラーシステムはまた、異なる波長の色であり得る、少なくとも3つの光源を利用してもよい。
【0020】
本明細書に記載の硝子体網膜手術用のデジタル画像を改善するための適応光学システムは、参照画像を使用して、眼のデジタル画像を改善することができる。参照画像は、ガイドスターが天文学用の適応光学システムで使用されるのと同様の方法で使用され得る。一般に、参照画像は、眼内に配置される既知の形状の参照オブジェクトであり得る。本明細書に記載の適応光学システムでは、手術用器具を参照画像として使用することができる。手術用器具は、硝子質カッタ、鉗子、はさみ、ピック、スクレーパ、フレックスループ、スパチュラ、MVRブレード、マイクロカニューレ、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。使用前に手術用器具の形状がわからない場合、手術用器具を眼内に配置する前に、手術用器具の収差のない画像を眼の外側に作成してもよい。これにより、手術中に眼の内部に配置されたときと同じ手術用器具を、参照画像として使用することが可能になり得る。内部照明器からの反射光にあり得る、視路における波面歪みは、波面補正システムを使用して補正されて、参照画像の画像を、手術用器具の収差のない画像であり得る、その収差のない外観に復元することができる。光は、内部照明器によって提供される時系列カラーシステムから到来してもよい。プロセッサは、参照画像のデジタル画像内の波面歪みを分析し、波面補正システムに命令を送信して、波面歪みを制御及び補正して参照画像のデジタル画像を改善することができる。同じ命令を使用して、眼から反射された光の波面歪みを制御及び補正して、眼のデジタル画像を改善することができる。この例では、シャックハルトマン波面センサは使用され得ない。
【0021】
本明細書に記載の硝子体網膜手術用のデジタル画像を改善するための適応光学システムは、光を検出し、且つデジタル画像を作成するために使用される情報を伝達する光センサアレイであるアクティブピクセルセンサアレイを含み得る。アクティブピクセルセンサアレイは、光をキャプチャするセルのアレイであり得、典型的には、各セルがピクセルを表す。アクティブピクセルセンサアレイ内のピクセルは、輝度情報のみを検出し、色情報は検出し得ない。ベイヤーフィルタと呼ばれるカラーフィルタを使用することにより、アクティブピクセルセンサアレイをカラーセンサとして機能させることが可能になる。ベイヤーフィルタは、各ピクセルに赤色、緑色、又は青色のフィルタを適用し、且つアクティブピクセルセンサアレイの前に配置され得る。ベイヤーフィルタにより、各ピクセルに対して正確な輝度及び色の情報を計算することが可能になり、カラーデジタル画像がもたらされ得る。本明細書に記載の適応光学システムは、単一のアクティブピクセルセンサアレイを含み得る。アクティブピクセルセンサアレイは、3Dステレオ画像を提供するための左及び右チャネルを含み得る。或いは、適応光学システムは、2つのアクティブピクセルセンサアレイを含み得るか、又は複数のアクティブピクセルセンサアレイを含み得る。3Dステレオ画像はまた、アクティブピクセルセンサアレイのペアを使用して提供され得る。
【0022】
適応光学システム内のアクティブピクセルセンサアレイは、ベイヤーフィルタを含み得るか、又はベイヤーフィルタを備えていないアクティブピクセルセンサアレイであってもよい。ベイヤーフィルタは、硝子体網膜手術用のデジタル画像内に横方向の色拡散を導入し得、それが演色性の低下につながる場合がある。本明細書に記載の適応光学システムでは、時系列カラーシステムを含むことにより、アクティブピクセルセンサアレイが、赤色画像、緑色画像、及び青色画像を順次キャプチャすることを可能にし得る。赤色画像、緑色画像、青色画像を観察者の視覚野に統合して、眼のカラー画像を提供することができる。或いは、赤色画像、緑色画像、及び青色画像は、画像プロセッサによって電子的に処理され、OLEDディスプレイ、デジタル接眼レンズ、又はヘッドマウントディスプレイ用に再フォーマットされ得る。これにより、カラー画像を取得するためのアクティブピクセルセンサアレイに対するベイヤーフィルタの必要性を排除することができる。したがって、本明細書に記載の適応光学システムは、ベイヤーフィルタを備えていないが時系列カラーシステムを備えたアクティブピクセルセンサアレイを使用する色の視覚化に使用することができ、それによって、アクティブピクセルセンサアレイ上の横方向の色拡散を低減させ、硝子体網膜手術用のデジタル画像の演色性を向上させることができる。
【0023】
本開示での硝子体網膜手術における改善されたデジタル画像用の適応光学システムは、アクティブピクセルセンサアレイ上に、ダイナミックレンジを改善するために関心領域(ROI)ゲイン制御を実施し得るオンチッププロセッサを更に含み得る。ROIゲイン制御はまた、ダイナミックレンジを改善するための追加の振幅のみSLMを含むことによって実施され得る。振幅のみSLMは、アクティブピクセルセンサアレイの前の焦点面に配置され得る。
【0024】
本開示のシステム及び方法は、硝子体網膜手術用の一般的な視覚化センサによって通常提供されるものよりも、以下を含む、多数の利点の任意の組み合わせを提供することができる。(1)波面補正システムを使用して波面歪みを補正することにより画像解像度を改善することによって、硝子体網膜手術用のデジタル画像を改善すること、(2)時系列カラーシステム、及びベイヤーフィルタを備えていないアクティブピクセルセンサアレイを組み合わせて使用することにより演色性を向上させることによって、硝子体網膜手術用のデジタル画像を改善すること、(3)ROIゲイン制御を伴うアクティブピクセルセンサアレイを使用することによりダイナミックレンジを向上させることによって、硝子体網膜手術用のデジタル画像を改善すること。
【0025】
ここで図1を参照すると、適応光学システム100は、波面補正システム110、時系列カラーシステム120、並びにアクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bを含む。適応光学システム100は、画像解像度を改善するための波面補正システム110を使用して、波面歪み140を補正された波面150に補正することができる。波面補正システム110は、波面制御構造体111を含み得る。波面制御構造体111は、波面歪み140の位相を制御及び補正することができる。波面制御構造体111は、SLM、LCoS-SLM、反射型LCoS-SLM、変形可能ミラー、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。波面制御構造体111はまた、波面の位相を補正し得る、位相のみSLMであり得る。時系列カラーシステム120は、適応光学システム100の光源であり得、時間にわたって離間された一連の赤色、緑色、及び青色の光を放出する赤色光源、緑色光源、及び青色光源であり得る。時系列カラーシステム120は、ちらつきを回避するために180Hzを上回る総速度で順番にパルス化され得る赤色発光ダイオード(LED)、緑色LED、及び青色LEDを含み得る。LEDはまた、カニューレ、カッタ、鉗子、及びはさみなどのナノファイバ照明ツールをサポートし得るスーパールミネッセント発光ダイオード(SLED)であり得るか、又はそれらを含み得る。時系列カラーシステム120は、光ファイバ内部照明器プローブによって提供され得、赤色、緑色、及び青色の光は、視覚化される眼の毛様体扁平部を通して提供され得る。内部照明器によって提供され、且つ眼によって反射される赤色光、緑色光、及び青色光の波面歪み140は、波面補正システム110によって補正され得る。この場合、波面歪み140は、内部照明器からの光が網膜、強膜、脈絡膜、瘢痕組織、網膜上膜、内境界膜、出血、又は手術用器具から反射された後に、白内障を伴う又は伴わない眼の水晶体、眼内レンズ、角膜、及び網膜視覚化システムによって引き起こされ得る。波面補正システム110は、時系列カラーシステム120によって放出される赤色、緑色、及び青色の3つの光色の各々に対して異なる波面成形を使用することができ、それによって、適応光学システム100における軸方向及び横方向の色収差を低減することができる。波面補正システム110はまた、プロセッサ180を含むことができ、プロセッサ180上で命令を実行して、アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bによって検出された光における少なくとも1つの波面歪みが部分的に又は完全に補正されているデジタル画像を生成することができる。
【0026】
アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bは、白色光を検出し、又は時系列カラーシステム120によって放出される赤色、緑色、及び青色の光の各々を検出して、プロセッサ180に信号を送信することができる。一例では、プロセッサ180は、特に、ピクセルセンサアレイ130a及び130bのうちの1つ以上から1つ以上のアナログ信号を受信することができる。ピクセルセンサアレイ130a及び130bのうちの1つ以上からの1つ以上のアナログ信号は、眼の内部から反射され得る、検出された光に関連付けられ得る。アナログ信号は、光の1つ以上の周波数に関連付けられた情報を含み得る。別の例では、プロセッサ180は、時系列カラーシステム120から1つ以上のデジタル信号を受信することができる。ピクセルセンサアレイ130a及び130bのうちの1つ以上からの1つ以上のデジタル信号は、眼の内部で反射され得る、検出された光に関連付けられ得る。デジタル信号は、光の1つ以上の周波数に関連付けられた情報を含み得る。
【0027】
アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bは、典型的には各セルがピクセルを表す、光キャプチャセルのアレイであり得る。アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bは、光検出器及びアクティブ増幅器を有するピクセルを含み得る。適応光学システム100は、単一のアクティブピクセルセンサアレイを含み得るか、2つのアクティブピクセルセンサアレイを含み得るか、又は複数のアクティブピクセルセンサアレイを含み得る。光は、アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bに当たる前に、レンズ160を通過し得る。アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bは、モノクロアクティブピクセルセンサアレイであり得るか、相補的金属酸化物半導体(CMOS)センサであり得るか、又は電荷結合デバイス(CCD)センサであり得る。CMOSセンサは、シングルチップ1080P CMOSセンサであり得るか、又は4KモノクロCMOSセンサであり得る。シングルチップCMOSカラーセンサは、通常、横方向の色拡散を引き起こし得るカラーフィルタアレイであるベイヤーフィルタを使用する。アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bは、ベイヤーフィルタを含み得るか、又はベイヤーフィルタを備えていないアクティブピクセルセンサアレイであり得る。時系列カラーシステム120は、赤色画像、緑色画像、及び青色画像を順次キャプチャすることを可能にすることによって、カラーデジタル画像を提供するためにアクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bによるベイヤーフィルタの必要性を排除することができる。ベイヤーフィルタを備えていないアクティブピクセルセンサアレイを使用することにより、横方向の色拡散が排除され、且つ画像の演色性が改善され得る。ベイヤーフィルタを備えていないアクティブピクセルセンサアレイを使用することにより、色収差補正もまた可能になり得る。
【0028】
振幅のみSLM170は、ダイナミックレンジを改善するためのROIゲイン制御を実施することができる。振幅のみSLM170は、アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bの前の焦点面に配置され得る。或いは、アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130b上のオンチッププロセッサ135は、ダイナミックレンジを改善するための関心領域(ROI)ゲイン制御を実施することができる。プロセッサ135は、プロセッサ180に対する追加のプロセッサであり得る。プロセッサ135及びプロセッサ180は、適応光学システム内の物理的に別個のプロセッサであり得るか、又は複数の機能を実行する同じプロセッサの一部であり得る。
【0029】
適応光学システム100内の時系列カラーシステム120は、図2に示されるように、赤色光源200、緑色光源201、及び青色光源202を含み得る。光源200、201、及び202は、時間にわたって離間された一連の赤色、緑色、及び青色の光を放出することができる。光源200、201、及び202は、LEDであり得、ちらつき又は色割れを回避するために、180Hzを上回る総速度で順番にパルス化され得る。光源200、201、及び202もまた、SLEDであり得る。光源200、201、及び202は、内部照明器によって提供され得、光は、視覚化される眼の毛様体扁平部を通って内部照明器光ファイバプローブを通して提供され得る。赤色光源200は、網膜又は手術用器具によって反射された後に、赤色光波面歪み220を有し得る、赤色光波210を放出することができる。緑色光源201は、網膜又は手術用器具によって反射された後に、緑色光波面歪み221を有し得る、緑色光波211を放出することができる。青色光源202は、網膜又は手術用器具によって反射された後に、青色光波面歪み222を有し得る、青色光波212を放出することができる。波面補正システム110は、補正波面成形を実行することによって、波面歪み220、221、及び222を、補正された赤色波面230、補正された緑色波面231、及び補正された青色波面232に補正することができる。波面補正システム110による波面成形は、波面歪み220、221、及び222の各々に対して異なり得、色が同じ収束点又は画像平面に集束されることを確実にすることによって、軸方向及び横方向の色収差を低減することができる。
【0030】
図1に示される適応光学システム100は、図3に示されるように、手術中に眼301を視覚化するための硝子体網膜手術視覚化システム300の構成要素であり得る。視覚化システム300は、手術用顕微鏡310、プロセッサ180を含み得る適応光学システム100、及びスクリーン、ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、又はそれらの任意の組み合わせなどのデジタルディスプレイ330を含み得る。デジタルディスプレイ330はまた、複数のディスプレイを含み得る。視覚化システム300は、DAVSシステム、NGENUITY(登録商標)3D視覚化システム(Novartis AG Corp.,Switzerland)(図4)、又は手術用顕微鏡に取り付けられたカメラヘッド(図5)であり得る。
【0031】
視覚化システム300は、適応光学システム100用の光源であり得る時系列カラーシステム120を含み得、且つ一定期間にわたって離間された一連の赤色、緑色、青色光を放出する赤色光源、緑色光源、及び青色光源であり得る。時系列カラーシステム120は、内部照明器305によって提供され得、赤色、緑色、及び青色の光は、眼301の毛様体扁平部を通って内部照明器光ファイバプローブ306によって提供され得る。時系列カラーシステム120は、順番にパルス化された赤色、緑色、及び青色の光源を使用して眼301を照らすことができる。例えば、時系列カラーシステム120は、180Hzを上回る総速度で順番にパルス化される赤色、緑色、及び青色の光源を使用して眼301を照らすことができ、これを利用してちらつきを回避することができる。波面歪み140は、内部照明器からの光が網膜、強膜、脈絡膜、硝子体、瘢痕組織、出血、又は手術用器具から反射された後に、白内障を伴う又は伴わない眼の水晶体、角膜、及び接触又は非接触網膜視覚化システムによって引き起こされ得る。眼301から反射された赤色、緑色、及び青色の波面に存在する波面歪み140は、収差の影響を低減するために波面補正システム110によって補正され得、デジタルディスプレイ330上の眼301のデジタル画像のデジタル画像解像度を改善し得る。波面補正システム110は、プロセッサ180を含み得る。波面補正システム110は、プロセッサ180を介して命令を実行して、デジタル画像を生成することができる。例えば、波面補正システム110は、アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bによって検出された光の波面歪み140が補正された波面150に部分的に又は完全に補正されているデジタル画像を生成することができる。
【0032】
アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bは、典型的には各セルがピクセルを表す、光キャプチャセルのアレイであり得るか、ベイヤーフィルタを含み得るか、又はベイヤーフィルタを備えていないアクティブピクセルセンサアレイであり得る。時系列カラーシステム120における赤色、緑色、及び青色の光源の利用により、アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bが、ベイヤーフィルタなしでカラー画像を生成することを可能にし得、それによって横方向の色拡散を低減し得る。ベイヤーフィルタなしで生成されたカラー画像の横方向の色拡散は、ベイヤーフィルタを利用して生成されたカラー画像の横方向の色拡散と比較して低減され得る。横方向の色拡散の低減により、デジタルディスプレイ330上の眼301のデジタル画像の演色性を向上させることができる。視覚化システム300は、単一のアクティブピクセルセンサアレイを含み得る。視覚化システム300は、複数のアクティブピクセルセンサアレイを含み得る。アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bは、プロセッサ180に信号を送信することができる。ROIゲイン制御は、アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bによって実施されてもよく、オンチッププロセッサ、又は追加の振幅のみSLMによって実施されてもよい。振幅のみSLMは、アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130b(図示せず)の前の焦点面に配置され得る。アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bによって実施されるROIゲイン制御により、デジタルディスプレイ330上の眼301のデジタル画像のダイナミックレンジを改善することができる。
【0033】
プロセッサ180は、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、グラフィックス処理ユニット(GPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又はプログラム命令及び/若しくは処理データを解釈及び/若しくは実行するように構成された他の任意のデジタル若しくはアナログ回路を含み得る。
【0034】
プロセッサ180は、命令を記憶及び/又は実行することができる任意の物理デバイスを含み得る。プロセッサ180は、本明細書に記載の1つ以上のシステム、1つ以上のフローチャート、1つ以上のプロセス、及び/又は1つ以上の方法の少なくとも一部を実施するためのプロセッサ命令を実行し得る。例えば、プロセッサ180は、命令を実行して、眼301の画像を生成することができる。プロセッサ180は、メモリ媒体から命令を受信するように構成され得る。一例では、プロセッサ180は、メモリ媒体を含み得る。別の例では、メモリ媒体は、プロセッサ180の外部にあり得る。メモリ媒体は、命令を記憶し得る。メモリ媒体によって記憶された命令は、プロセッサ180によって実行可能であり得、且つ本明細書に記載の1つ以上のシステム、1つ以上のフローチャート、1つ以上の方法、及び/又は1つ以上のプロセスの少なくとも一部による命令で構成、符号化、及び/又はエンコードされ得る。
【0035】
FPGAは、本明細書に記載の1つ以上のシステム、1つ以上のフローチャート、1つ以上のプロセス、及び/又は1つ以上の方法の少なくとも一部を実施するように構成、符号化、及び/又はエンコードされ得る。例えば、FPGAは、眼301の画像を生成するように構成、符号化、及び/又はエンコードされ得る。ASICは、本明細書に記載の1つ以上のシステム、1つ以上のフローチャート、1つ以上のプロセス、及び/又は1つ以上の方法の少なくとも一部を実施するように構成され得る。例えば、ASICは、眼301の画像を生成するように構成、符号化、及び/又はエンコードされ得る。DSPは、本明細書に記載の1つ以上のシステム、1つ以上のフローチャート、1つ以上のプロセス、及び/又は1つ以上の方法の少なくとも一部を実施するように構成、符号化、及び/又はエンコードされ得る。例えば、DSPは、眼301の画像を生成するように構成、符号化、及び/又はエンコードされ得る。
【0036】
プロセッサ180は、アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bとは別個に描かれているが、単一のデバイスは、プロセッサ180、並びにアクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bを含み得る。一例では、単一のコンピュータシステムは、プロセッサ180、並びにアクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bを含み得る。別の例では、デバイスは、プロセッサ180、並びにアクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bを含み得る集積回路を含み得る。
【0037】
プロセッサ180は、プログラム命令を解釈及び/若しくは実行し、並びに/又はメモリ媒体に記憶されたデータを処理することができる。メモリ媒体は、部分的又は全体的に、アプリケーションメモリ、システムメモリ、又はその両方として構成され得る。メモリ媒体は、1つ以上のメモリデバイスを保持及び/又は収容するように構成された、任意のシステム、デバイス、又は装置を含み得る。各メモリデバイスは、プログラム命令及び/又はデータを一定期間保持するように構成された任意のシステム、任意のモジュール、又は任意の装置(例えば、コンピュータ可読媒体)を含み得る。記載された1つ以上のサーバ、電子デバイス、又は他のマシンは、関連するマシンの機能を実行するためのプログラム命令を記憶及び実行することができる1つ以上の同様のプロセッサ又はメモリを含み得る。
【0038】
手術用顕微鏡310は、プロセッサ180又は別のプロセッサによって生成されたデジタル画像などの、眼301の画像を表示することができる。手術用顕微鏡310は、眼301の画像に加えて他の情報を表示することができる。そのような他の情報は、プロセッサ180又は別のプロセッサによって生成されてもよく、警告、グラフ、色分け、手術用パラメータ、内視鏡ビデオ、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)画像、又は拡張現実情報などの、グラフィック又はテキスト情報が含まれ得る。
【0039】
デジタルディスプレイ330は、同様に、プロセッサ180又は別のプロセッサによって生成された眼301のデジタル画像、及びプロセッサ180又は別のプロセッサによって生成された他の情報を表示することができる。そのような情報には、手術用パラメータ、手術モード、流量、眼圧、内視鏡ビデオ、OCT画像、警告、デジタル画像、色分け、拡張現実情報などの、グラフィック情報又はテキスト情報が含まれ得る。デジタルディスプレイ330上に表示される情報は、手術用顕微鏡310に表示されるか、又はそれを使用して見られる情報と一致しなくてもよい。プロセッサ180は、円偏光眼鏡、デジタル接眼レンズ、又はヘッドマウントディスプレイを用いて見られ得るデジタルディスプレイ330上の表示用光源として、時系列カラーシステム120を使用して作成されたビデオを再フォーマットすることができる。
【0040】
視覚化システム300は、デジタルディスプレイ330上に表示される画像を記憶するためのメモリ、電気接続、並びにレンズ160などの任意のレンズを配置及び集束してアクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bを配置するためのハードウェアなど、その使用を容易にする他の要素を更に含むことができる。
【0041】
適応光学システム100は、視覚化システム400において、NGENUITY(登録商標)DSM-1システム(Novartis AG Corp.,Switzerland)の構成要素として使用することができ、図4に示されるようにセンサ部分を置き換えることができる。例えば、適応光学システム100は、オプトメカニカルフォーカスシステム410、ズームシステム420、可変作動距離システム430、ディスプレイシステム440、及びメモリ媒体450を利用することができる。一例では、メモリ媒体450は、本明細書に記載の1つ以上のシステム、1つ以上のフローチャート、1つ以上のプロセス、及び/又は1つ以上の方法の少なくとも一部を実施する際に利用され得るデータを記憶することができる。別の例では、メモリ媒体450は、本明細書に記載の1つ以上のシステム、1つ以上のフローチャート、1つ以上のプロセス、及び/又は1つ以上の方法の少なくとも一部を実施する際にプロセッサ180によって実行可能な命令を記憶することができる。図示されるように、メモリ媒体450は、プロセッサ180に通信可能に結合され得る。示されるように、ディスプレイ440は、プロセッサ180に通信可能に結合され得る。
【0042】
適応光学システム100は、図5に示されるように、接眼レンズ520を備えていない手術用顕微鏡を更に含み得る、視覚化システム500のカメラヘッド510の構成要素として使用され得る。視覚化システム500はまた、プロセッサ180を含み得、且つディスプレイシステム540、及びメモリ媒体550を更に含み得る。カメラヘッド510は、NGENUITY(登録商標)1.0(Novartis AG Corp.,Switzerland)カメラヘッドであり得る。一例では、メモリ媒体550は、本明細書に記載の1つ以上のシステム、1つ以上のフローチャート、1つ以上のプロセス、及び/又は1つ以上の方法の少なくとも一部を実施する際に利用され得るデータを記憶することができる。別の例では、メモリ媒体550は、本明細書に記載の1つ以上のシステム、1つ以上のフローチャート、1つ以上のプロセス、及び/又は1つ以上の方法の少なくとも一部を実施する際にプロセッサ180によって実行可能な命令を記憶することができる。図5に示されるように、メモリ媒体550は、プロセッサ180に通信可能に結合され得る。ディスプレイ540はまた、プロセッサ180に通信可能に結合され得る。
【0043】
硝子体網膜手術用のデジタル画像を改善するための適応光学システム100は、図6に示されるように、画像参照システム600を含み得る。図6に示されるように、画像参照システム600は、既知の形状を有する参照オブジェクトであり得る参照画像605を含み得る。参照画像605は、眼301内に配置されたオブジェクト又は手術用器具であり得る。参照画像605は、硝子質カッタ、鉗子、はさみ、ピック、スクレーパ、フレックスループ、スパチュラ、MVRブレード、マイクロカニューレ、又は別の手術用器具であり得る。参照画像605の形状がまだ知られていない場合、参照画像605の収差のない画像を得るために、参照画像605はまた、手術が開始される前に様々なポーズで眼301の外側に配置され得る。これにより、参照画像605は、手術中に眼301の内部に配置されたときに参照画像として使用され得る。内部照明器305によって提供され得る時系列カラーシステム120からの赤色、緑色、及び青色の光は、参照画像605から反射され得、波面歪み610を有し得、光路630をとり得る。時系列カラーシステム120からの赤色、緑色、及び青色の光はまた、眼301から反射され得、波面歪み620を有し得、光路640をとり得る。プロセッサ670は、アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bによって提供される参照画像605のデジタル画像における波面歪み610を分析し、波面補正システム110に命令を送信して、波面歪み610を制御し、補正された波面680に補正して、参照画像605の収差のある画像を収差のない画像に復元することができる。これらの同じ命令を使用して、波面歪み620を補正された波面690に補正することができる。補正された波面690は、アクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bに送信され得、改善された解像度を備えた眼301のデジタル画像を可能にし得る。プロセッサ670は、プロセッサ180、並びにアクティブピクセルセンサアレイ130a及び130bとは別個に描かれているが、それらは、同じプロセッサ、又は単一のコンピュータ若しくは集積回路のセットなどの単一の物理デバイスの一部であってもよい。
【0044】
図7は、本開示によるデジタル画像を改善するために波面歪みを補正する方法のフローチャートを表している。ステップ700では、光は、手術中に眼の内部を照らすために使用される。光は、時系列カラーシステム120によって放出され、且つ内部照明器305によって提供されるような、一連の赤色、緑色、及び青色の光を含み得る。光は、眼の内部から反射されて、光の反射波面を提供する。ステップ710では、光の反射波面の波面歪みが判定される。このステップは、画像参照システム700などの画像参照システムの同時使用を伴い得る。ステップ701では、光は、手術中に参照画像を照らすために使用される。参照画像を照らすために使用される光は、時系列カラーシステム120によって放出され、且つ内部照明器305によって提供されるような、赤色、緑色、及び青色の光を含み得る。参照画像から反射された光の反射波面の波面歪みは、ステップ711において判定される。ステップ720では、SLM、反射型LCoS-SLM、透過型LCoS-SLM、変形可能ミラー、又はそれらの任意の組み合わせであり得る波面制御構造体を含み得る波面補正システムを使用して、眼の内部から反射された光の反射波面の波面歪みを補正し、それによって眼の内部のデジタル画像の画像解像度を向上させる。
【0045】
図8は、硝子体網膜手術用のデジタル画像を改善するために、横方向の色拡散を排除して演色性を改善する方法のフローチャートを表している。ステップ800では、時系列カラーシステム120によって放出されるものなどの赤色光、緑色光、及び青色光は、手術中に眼の内部を照らすために、時間にわたって離間されて順番に放出される。赤色光、緑色光、及び青色光は、ステップ810において眼の内部から反射されて、アクティブピクセルセンサアレイによって検出され得る。アクティブピクセルセンサアレイは、ベイヤーフィルタを備えていないアクティブピクセルセンサアレイであってもよい。ステップ820では、赤色画像、緑色画像、及び青色画像は、ベイヤーフィルタを備えていないアクティブピクセルセンサアレイによって順次キャプチャされる。赤色画像、緑色画像、及び青色画像は、観察者の視覚野に統合されるか、又は画像プロセッサによって再フォーマットされて、OLEDディスプレイ又はヘッドマウントディスプレイ上に表示され、横方向の色拡散が排除された眼の内部のカラー画像を提供することができる。この方法は、眼の内部のデジタル画像の演色性を向上させることができる。
【0046】
コンピュータシステム900が、図9に示されている。コンピュータシステム900は、プロセッサ910、揮発性メモリ媒体920、不揮発性メモリ媒体930、及び入力/出力(I/O)デバイス940を含み得る。揮発性メモリ媒体920、不揮発性メモリ媒体930、及びI/Oデバイス940は、プロセッサ910に通信可能に結合され得る。
【0047】
「メモリ媒体」という用語は、「メモリ」、「記憶デバイス」、「メモリデバイス」、「コンピュータ可読媒体」、及び/又は「有形コンピュータ可読記憶媒体」を意味し得る。例えば、メモリ媒体は、ハードディスクドライブを含む直接アクセス記憶装置、テープディスクドライブなどのシーケンシャルアクセス記憶装置、コンパクトディスク(CD)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、電気的消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、非一時的媒体、又はそれらの任意の組み合わせなどの記憶媒体を限定なしに含み得る。図9に示されるように、不揮発性メモリ媒体930は、プロセッサ命令932を含み得る。プロセッサ命令932は、プロセッサ910によって実行され得る。一例において、プロセッサ命令932の1つ以上の部分が不揮発性メモリ媒体930を介して実行され得る。別の例において、プロセッサ命令932の1つ以上の部分が揮発性メモリ媒体920を介して実行され得る。プロセッサ命令932の1つ以上の部分が揮発性メモリ媒体920に転送され得る。
【0048】
プロセッサ910は、本明細書に記載の1つ以上のシステム、1つ以上のフローチャート、1つ以上のプロセス及び/又は1つ以上の方法の少なくとも一部の実施に際してプロセッサ命令932を実行することができる。例えば、プロセッサ命令932は、本明細書に記載の1つ以上のシステム、1つ以上のフローチャート、1つ以上の方法及び/又は1つ以上のプロセスの少なくとも一部に従い、命令により構成、符号化及び/又はエンコードされ得る。プロセッサ910を単一プロセッサとして示しているが、プロセッサ910は、複数のプロセッサであり得るか、又は複数のプロセッサを含み得る。記憶媒体及びメモリ媒体の1つ以上がソフトウェア生成物、プログラム生成物及び/又は製品であり得る。例えば、ソフトウェア生成物、プログラム生成物及び/又は製品は、本明細書に記載の1つ以上のシステム、1つ以上のフローチャート、1つ以上の方法及び/又は1つ以上のプロセスの少なくとも一部に従い、プロセッサにより実行可能な命令により構成、符号化及び/又はエンコードされ得る。
【0049】
プロセッサ910は、メモリ媒体に保存された及び/又はネットワークを介して受信されたプログラム命令の解釈及び実行、データの処理又はその両方を行うように動作可能な任意の適当なシステム、デバイス、又は装置を含み得る。プロセッサ910は、1つ以上のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)又はプログラム命令の解釈及び実行、データの処理又はその両方を行うように構成された他の回路を更に含み得る。
【0050】
I/Oデバイス940は、ユーザーからの入力及びユーザーへの出力を容易にすることにより、ユーザーがコンピュータシステム900及びその関連構成要素と対話することを許可、許諾及び/又は可能にする任意の1つ又は複数の機能を含み得る。ユーザーからの入力を容易にすることでユーザーがコンピュータシステム900を操作及び/又は制御できるようになり、ユーザーへの出力を容易にすることでコンピュータシステム900がユーザーの操作及び/又は制御の効果を表示できるようになる。例えば、I/Oデバイス940は、ユーザーがデータ、命令又はその両方をコンピュータシステム900に入力できるように、且つ他にコンピュータシステム900及びその関連構成要素を操作及び/又は制御できるようにする。I/Oデバイスは、ユーザーインターフェースデバイス、例えばキーボード、マウス、タッチスクリーン、ジョイスティック、ハンドヘルドレンズ、ツールトラッキングデバイス、座標入力デバイス又はシステムで用いるのに適した他の任意のI/Oデバイスを含み得る。
【0051】
I/Oデバイス940は、プロセッサ910が本明細書に記載の1つ以上のシステム、プロセス、及び/又は方法の少なくとも一部を実施することを容易にし、及び/又は許可し得る、特に、1つ以上のバス、1つ以上のシリアルデバイス、及び/又は1つ以上のネットワークインターフェースを含み得る。一例では、I/Oデバイス940は、プロセッサ910が外部記憶装置と通信することを容易にし、及び/又は許可し得る記憶装置インターフェースを含み得る。記憶装置インターフェースは、特にユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェース、SATA(シリアルATA)インターフェース、PATA(パラレルATA)インターフェース及び小型計算機システムインターフェース(SCSI)の1つ以上を含み得る。第2の例では、I/Oデバイス940は、プロセッサ910がネットワークと通信することを容易にし、及び/又は許可し得るネットワークインターフェースを含み得る。I/Oデバイス940は、無線ネットワークインターフェース及び有線ネットワークインターフェースの1つ以上を含み得る。第3の例では、I/Oデバイス940は、特に、ペリフェラルコンポーネントインタコネクト(PCI)インターフェース、PCIエクスプレス(PCIe)インターフェース、シリアルペリフェラルインタコネクト(SPI)インターフェース、及び集積回路間(I2C)インターフェースのうちの1つ以上を含み得る。第4の例では、I/Oデバイス940は、プロセッサ910が、1つ以上のセンサとデータを通信することを許可し得る回路を含み得る。第5の例では、I/Oデバイス940は、プロセッサ910が、特に、ディスプレイ950及び適応光学システム100の1つ以上とデータを通信することを容易にし、及び/又は許可することができる。図9に示されるように、I/Oデバイス940は、ネットワーク970に結合され得る。例えば、I/Oデバイス940は、ネットワークインターフェースを含み得る。
【0052】
ネットワーク970は、有線ネットワーク、無線ネットワーク、光ネットワーク、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。ネットワーク970は、様々なタイプの通信ネットワークを含み得、及び/又はそれに結合され得る。例えば、ネットワーク970は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット、公衆交換電話網(PSTN)、セルラ電話ネットワーク、衛星電話ネットワーク、又はそれらの任意の組み合わせを含み得、及び/又はそれに結合され得る。WANは、プライベートWAN、コーポレートWAN、パブリックWAN、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0053】
図9は、適応光学システム100の外部としてコンピュータシステム900を示しているが、適応光学システム100は、コンピュータシステム900を含み得る。例えば、プロセッサ910は、プロセッサ180であるか、又はそれを含み得る。
【0054】
図10A図10Cは、医療システム1000の例を示している。図10Aに示されるように、医療システム1000は、適応光学システム100を含み得る。図10Bに示されるように、医療システム1000は、適応光学システム100及びコンピュータシステム900を含み得る。適応光学システム100は、コンピュータシステム900と通信可能に結合され得る。図10Cに示されるように、医療システム1000は、コンピュータシステム900を含み得る、適応光学システム100を備え得る。
【0055】
図11に示されるように、適応光学システム100は、医療システム1100の構成要素として使用され得る。医療システム1100は、適応光学システム100を含み得る。医療システム1100は、コンピュータシステム900を含み得る。外科医1110は、顕微鏡統合ディスプレイ(MID)1130、ディスプレイ1150、又はそれらの任意の組み合わせ上で、患者1120の眼1301のデジタル画像を観察することができる。MID1130、ディスプレイ1150、又はそれらの任意の組み合わせは、眼1301の内部から反射された光の少なくとも1つの波面が完全に又は部分的に補正された眼1301の画像を表示することができる。眼1301のデジタル画像は、適応光学システム100なしでキャプチャされた眼のデジタル画像と比較して、改善された画像解像度、改善された画像演色性、改善された画像ダイナミックレンジ、又はそれらの任意の組み合わせを有し得る。医療システム1100は、プロセッサ、プロセッサに結合された少なくとも1つのアクティブピクセルセンサアレイ、プロセッサに結合された波面補正システム、画像参照システム、及び適応光学システム100又は画像参照システム600におけるものなどのメモリ媒体を含み得る。記憶媒体は、プロセッサに結合され得、且つプロセッサによって実行されると、医療システムに、画像参照システムを利用して患者1120の眼1301の内部から反射された光の反射波面の波面歪みを判定させる命令を含み得る。記憶媒体はまた、プロセッサによって実行されると、医療システムに、波面補正システムを利用して眼1301の内部から反射された光の反射波面の波面歪みを補正させる命令を含み得る。
【0056】
適応光学システム100、視覚化システム300、視覚化システム400、視覚化システム500、画像参照システム600、コンピュータシステム900、及び医療システム1000、医療システム1100、及びそれらの構成要素は、明らかに相互に排他的でない限り、本明細書に記載の視覚化ツール及びシステムの他の要素と組み合わせられ得る。例えば、画像参照システム600内の参照画像及びプロセッサは、本明細書に記載の他の視覚化システムと共に使用され得る。
【0057】
上記の開示された発明の主題は、例示的と見なされるべきであり、限定的と見なされるべきではなく、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨及び範囲内にあるそのような全ての修正、強化、及び他の実施形態を包含することが意図されている。例えば、硝子体網膜手術中のデジタル画像を改善するために適応光学システムが最も一般的に必要とされるが、他の方法では手術とは見なされない純粋な診断手順などの別の手順で有用である場合に、本明細書に記載のシステム及び方法を使用することができる。
態様(1)によれば、適応光学システムであって、
光を検出してプロセッサに信号を送信するように動作可能な少なくとも1つのアクティブピクセルセンサアレイと、
少なくとも1つの波面制御構造体及び前記プロセッサを含み、且つ
前記プロセッサ上で命令を実行して、前記アクティブピクセルセンサアレイによって検出された前記光の少なくとも1つの波面歪みが部分的に又は完全に補正されているデジタル画像を生成するように動作可能な、波面補正システムと、
を備える、適応光学システムである。
態様(2)によれば、複数のアクティブピクセルセンサアレイを更に備える。
態様(3)によれば、前記波面制御構造体が、空間光変調器(SLM)、液晶オンシリコン空間光変調器(LCoS-SLM)、透過型LCoS-SLM、反射型LCoS-SLM、変形可能ミラー、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
態様(4)によれば、前記波面制御構造体が、位相のみSLMを含む。
態様(5)によれば、前記デジタル画像が、デジタルディスプレイ、スクリーン、ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、又はそれらの任意の組み合わせ上に表示される。
態様(6)によれば、前記適応光学システムが、NGENUITY(登録商標)の構成要素である。
態様(7)によれば、前記アクティブピクセルセンサアレイが、相補型金属酸化物半導体(CMOS)モノクロセンサ、4KモノクロCMOSセンサ、1080PモノクロCMOSセンサ、又はそれらの任意の組み合わせである。
態様(8)によれば、前記アクティブピクセルセンサアレイ上に、関心領域(ROI)ゲイン制御を実施するように動作可能なオンチッププロセッサを更に備える。
態様(9)によれば、前記アクティブピクセルセンサアレイ上に、ROIゲイン制御を実施するための振幅のみSLMを更に備える。
態様(10)によれば、画像参照システムを更に備える。
態様(11)によれば、前記画像参照システムが、眼内に配置された手術用器具である参照画像を含む。
態様(12)によれば、前記手術用器具が、硝子質カッタ、鉗子、はさみ、ピック、スクレーパ、フレックスループ、スパチュラ、マイクロ硝子体網膜(MVR)ブレード、マイクロカニューレ、又はそれらの任意の組み合わせである。
態様(13)によれば、一定期間にわたって離間された一連の赤色、緑色、及び青色の光を放出するように動作可能な、赤色光源、緑色光源、及び青色光源を含む時系列カラーシステムを更に備え、
少なくとも1つの前記アクティブピクセルセンサアレイが、前記赤色、緑色、及び青色の光の各々を検出して前記プロセッサに信号を送信するように動作可能である。
態様(14)によれば、前記時系列カラーシステムが、180Hz以上の総速度で順番にパルス化される赤色発光ダイオード(LED)、緑色LED、及び青色LEDを含む。
態様(15)によれば、前記時系列カラーシステムが、180Hz以上の総速度で順番にパルス化される赤色スーパールミネッセント発光ダイオード(SLED)、緑色SLED、及び青色SLEDを含む。
態様(16)によれば、前記時系列カラーシステムが、内部照明器によって提供されている。
態様(17)によれば、前記アクティブピクセルセンサアレイが、ベイヤーフィルタを備えていないアクティブピクセルセンサアレイである。
態様(18)によれば、前記アクティブピクセルセンサアレイが、赤色画像、緑色画像、及び青色画像を順次キャプチャする。
態様(19)によれば、医療システムであって、
プロセッサと、
前記プロセッサに結合された少なくとも1つのアクティブピクセルセンサアレイと、
前記プロセッサに結合された波面補正システムと、
画像参照システムと、
前記プロセッサに結合されたメモリ媒体であって、前記プロセッサによって実行されると、前記医療システムに、
前記画像参照システムを利用して患者の眼の内部から反射された光の反射波面の波面歪みを判定させ、
前記波面補正システムを利用して前記眼の前記内部から反射された前記光の反射波面の前記波面歪みを補正させる、命令を含む、メモリ媒体と、
を備える、医療システムである。
態様(20)によれば、波面歪みを補正してデジタル画像を改善する方法であって、
画像参照システムを使用して、眼の内部から反射された光の反射波面の波面歪みを判定することと、
波面補正システムを使用して、前記眼の前記内部から反射された前記光の反射波面の前記波面歪みを補正することと、
を含む、方法である。
態様(21)によれば、横方向の色拡散を排除し、演色性を向上させてデジタル画像を改善する方法であって、
時間にわたって離間された一連の赤色光、緑色光、及び青色光を放出する時系列カラーシステムを使用して、眼の内部を照らすことと、
ベイヤーフィルタを備えていない少なくとも1つのアクティブピクセルセンサアレイを使用して、前記眼の前記内部から反射された光の赤色波面、光の緑色波面、及び光の青色波面を検出することと、
ベイヤーフィルタを備えていない前記アクティブピクセルセンサアレイを使用して、前記眼の前記内部の赤色画像、緑色画像、及び青色画像を順次キャプチャすることと、
前記赤色画像、前記緑色画像、及び前記青色画像を観察者の視覚野に統合するか、又は前記赤色画像、前記緑色画像、及び前記青色画像を有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ用に再フォーマットして、横方向の色拡散が排除された前記眼の前記内部のカラー画像を提供することと、
を含む、方法である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A-10C】
図11