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特許7569373触覚ガイダンスを提供するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】触覚ガイダンスを提供するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20241009BHJP
   A61B 34/32 20160101ALI20241009BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B34/32
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022519272
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 US2020052466
(87)【国際公開番号】W WO2021067113
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】62/908,890
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507280594
【氏名又は名称】マコ サージカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナザダイ マーク
(72)【発明者】
【氏名】クラナ リシャブ
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0303568(US,A1)
【文献】特開平08-117238(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0083191(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0180290(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0172902(US,A1)
【文献】特表2007-534351(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0133791(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00 - 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
想オブジェクトを定義する工程と、
術用ツールの仮想表現に関連付けられる第1の点及び第2の点を定義する工程であって、前記手術用ツールの前記仮想表現の移動は、実空間内の前記手術用ツールの移動に対応する、工程と、
記第1の点が前記仮想オブジェクトに沿った閾値位置に達する前に、前記第1の点を中心とする前記第2の点の自由回転を可能にするように、前記第1の点を前記仮想オブジェクトに拘束するように、前記手術用ツールに結合されるロボットデバイスを制御する工程と、
記第1の点が前記仮想オブジェクトに沿った前記閾値位置に達することに対応して、前記第2の点を前記仮想オブジェクトに誘導するように、前記ロボットデバイスを制御する工程と、を行う処理回路を備えるロボットデバイス
【請求項2】
前記第1の点を前記仮想オブジェクトに拘束するように、前記ロボットデバイスを制御することは、前記仮想オブジェクトから離れる前記第1の点の移動を防止し、前記第1の点を中心とする前記手術用ツールの回転を可能にするように、前記ロボットデバイスを制御することを含む、請求項1に記載のロボットデバイス
【請求項3】
前記第2の点が前記仮想オブジェクトに位置付けられると判定することと、
前記第1の点及び前記第2の点を前記仮想オブジェクトに拘束することと、
をさらに含む、請求項1に記載のロボットデバイス
【請求項4】
既定方向における前記手術用ツールにかかる力を検出することであって、前記既定方向は前記仮想オブジェクトに対して直角である、前記検出することと、
前記既定方向の前記力が閾値力を超えているかどうかを判定することと、
前記既定方向の前記力が閾値力を超えているとの判定に応答して、前記第1の点及び前記第2の点が前記仮想オブジェクトからずれることを可能にするように、前記ロボットデバイスを制御することと、
をさらに含む、請求項3に記載のロボットデバイス
【請求項5】
前記仮想オブジェクトに沿った減衰ゾーンを定義することと、
前記第1の点が前記減衰ゾーン内にあると判定することと、
前記減衰ゾーンを通る前記第1の点の移動に抵抗するように、前記ロボットデバイスを制御することと、
をさらに含む、請求項1に記載のロボットデバイス
【請求項6】
前記第1の点が前記減衰ゾーンを通過していると判定することと、
前記第1の点が前記減衰ゾーンを通過しているとの判定に応答して、前記減衰ゾーンを前記仮想オブジェクトから除去することと、
を含む、請求項5に記載のロボットデバイス
【請求項7】
前記第2の点を前記仮想オブジェクトに誘導するように、前記ロボットデバイスを制御することは、補助力を前記手術用ツールに提供するように、前記ロボットデバイスを制御することを含み、前記補助力は、前記仮想オブジェクトへの前記第2の点の移動が容易になるように指向される、請求項1に記載のロボットデバイス
【請求項8】
前記第1の点が前記仮想オブジェクトに向かって移動していると判定することと、
前記第1の点が前記仮想オブジェクトに向かって移動しているとの判定に応答して、補助力を前記手術用ツールに提供するように、前記ロボットデバイスを制御することであって、前記仮想オブジェクトは仮想線であり、前記補助力は、前記仮想線への前記第1の点の移動が容易になるように指向される、前記制御することと、
を含む、請求項1に記載のロボットデバイス
【請求項9】
信号を受信することと、
前記信号に応答して、前記第1の点と前記仮想オブジェクトとの制御相互作用を変えることと、
を含む、請求項1に記載のロボットデバイス
【請求項10】
前記仮想オブジェクトを定義することは、
標的骨の計画された穴を含む手術計画を取得することと、
前記仮想オブジェクトを前記計画された穴に合わせて整列させることと、
を含む、請求項1に記載のロボットデバイス
【請求項11】
前記仮想オブジェクトに沿った前記閾値位置は、解剖学的特徴からの閾値距離に対応する、請求項1に記載のロボットデバイス
【請求項12】
前記仮想オブジェクトに沿った前記閾値位置は、解剖学的特徴への貫入量に対応する、請求項1に記載のロボットデバイス
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2019年10月1日に出願された米国仮出願第62/908,890号の利益及び優先権を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、概して、整形外科の手術システム、例えば、関節置換術が容易になる手術システムに関する。関節置換術(関節形成手術)を広範囲に使用して、関節の一部を人工装具構成要素と交換することによって、骨関節炎及び患者の関節に対する他の損傷を治療する。関節置換術は、臀部、膝、肩、または他の関節を1つ以上の人工装具構成要素と交換する手技を含み得る。
【0003】
関節形成手術に使用される1つの可能であるツールは、ロボット支援手術システムである。ロボット支援手術システムは、通常、インプラントを受ける患者の解剖学的構造を調製するために使用されるロボットデバイスと、患者の解剖学的構造に対してロボットデバイスの場所を監視するように構成される追跡システムと、ロボットデバイスを監視及び制御するように構成されるコンピューティングシステムとを含む。ロボット支援手術システムは、様々な形態で、手術タスクを自律的に実施し、手術デバイスを操作して手術タスクを完了するユーザに力フィードバックを提供し、外科医の器用さ及び正確性を高め、ならびに/または安全及び正確な外科手術が容易になる他のナビゲーションキューを提供する。
【0004】
手術計画は、通常、ロボット支援手術システムによって外科手技を行う前に設定される。手術計画に基づいて、手術システムは、外科手技の一部の期間に、手術用ツールの移動を誘導、制御、または制限する。手術用ツールのガイダンス及び/または制御は、手術計画の実施中に、外科医を補助する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】例示的な実施形態による、インプラント構成要素を受けるために調製された大腿骨の斜視図である。
図2】例示的な実施形態による、手術システムの説明図である。
図3】例示的な実施形態による、図2の手術システムによって実行できる第1のプロセスのフローチャートである。
図4】例示的な実施形態による、図2の手術システムによって実行できる第2のプロセスのフローチャートである。
図5】例示的な実施形態による、図4のプロセスの説明図である。
図6】例示的な実施形態による、図2の手術システムによって実行できる第3のプロセスのフローチャートである。
図7】例示的な実施形態による、図6のプロセスで使用できる仮想制御オブジェクトの説明図である。
図8】例示的な実施形態による、図2の手術システムによって実行できる第4のプロセスのフローチャートである。
図9】例示的な実施形態による、図2の手術システムによって実行できる第5のプロセスのフローチャートである。
図10】例示的な実施形態による、図9のプロセスで使用できる仮想制御オブジェクトの説明図である。
図11】例示的な実施形態による、図2の手術システムによって実行できる第6のプロセスのフローチャートである。
図12】例示的な実施形態による、図2の手術システムによって実行できる第7のプロセスのフローチャートである。
図13】例示的な実施形態による、図2の手術システムによって実行できる第8のプロセスのフローチャートである。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一実施態様は、ロボットデバイスを制御するための方法である。本方法は、仮想オブジェクトを定義することと、手術用ツールの仮想表現に関連付けられる第1の点及び第2の点を定義することとを含む。手術用ツールの仮想表現の移動は、実空間内の手術用ツールの移動に対応する。本方法は、手術用ツールに結合されるロボットデバイスを制御して第1の点を仮想オブジェクトに拘束することと、第1の点が仮想オブジェクトに沿った閾値位置にあると判定することと、ロボットデバイスを制御して第2の点を仮想オブジェクトに誘導することとを含む。
【0007】
本開示の別の実施態様は、ロボットデバイスと、ロボットデバイスと通信可能である処理回路とを含む、システムである。処理回路は、仮想オブジェクトを定義し、手術用ツールの仮想表現に関連付けられる第1の点及び第2の点を定義するように構成され得る。処理回路は、手術用ツールの仮想表現の移動が、実空間内の手術用ツールの移動に対応するように構成される。処理回路は、さらに、手術用ツールに結合されるロボットデバイスを制御して第1の点を仮想オブジェクトに拘束することと、第1の点が仮想オブジェクトに沿った閾値位置にあると判定することと、ロボットデバイスを制御して第2の点を仮想オブジェクトに誘導することとを行うように構成される。
【0008】
本開示の別の実施態様は、ツールが結合されるロボットデバイスを動作させる方法である。本方法は、ロボットデバイスを制御して第1の触覚オブジェクトに基づいて手術用ツールを拘束することと、信号及びユーザが定義した方向を受信することと、第1の触覚オブジェクトをユーザが定義した方向に延在させることによって信号に応答して、触覚制御相互作用を調整することとを含む。
【0009】
本開示の別の実施態様は、ロボットデバイスと、ロボットデバイスと通信可能である処理回路とを含む、システムである。処理回路は、ロボットデバイスを制御して第1の触覚オブジェクトに基づいて手術用ツールを拘束することと、信号及びユーザが定義した方向を受信することと、第1の触覚オブジェクトをユーザが定義した方向に延在させることによって信号に応答して、触覚制御相互作用を調整することとを行うように構成される。
【0010】
本開示の別の実施態様は、ツールが結合されるロボットデバイスを動作させる方法である。本方法は、ロボットデバイスを制御して、第1の触覚オブジェクトに基づいてツールを拘束することと、信号及びユーザが定義した方向を受信することと、ツールの仮想寸法を調整することによって信号に応答して、触覚制御相互作用を調整することとを含む。
【0011】
本開示の別の実施態様は、ロボットデバイスと、ロボットデバイスと通信可能である処理回路とを含む、システムである。処理回路は、ロボットデバイスを制御して、第1の触覚オブジェクトに基づいてツールを拘束することと、信号及びユーザが定義した方向を受信することと、ツールの仮想寸法を調整することによって信号に応答して、触覚制御相互作用を調整することとを行うように構成される。
【0012】
本開示の別の実施態様は、ロボットデバイスを動作させる方法である。本方法は、ロボットデバイスに結合されるツールの移動を追跡することと、ツールの移動方向を判定することと、移動方向が仮想制御オブジェクトに向かっているかどうかを判定することと、移動方向が仮想制御オブジェクトに向かっているとの判定に応答して、ロボットデバイスを制御してツールを仮想制御オブジェクトに誘導することとを含む。
【0013】
本開示の別の実施態様は、ロボットデバイスと、ロボットデバイスと通信可能である処理回路とを含む、システムである。処理回路は、ロボットデバイスに結合されるツールの移動を示す追跡データを受信することと、ツールの移動方向を判定することと、移動方向が仮想制御オブジェクトに向かっているかどうかを判定することと、移動方向が仮想制御オブジェクトに向かっているとの判定に応答して、ロボットデバイスを制御してツールを仮想制御オブジェクトに誘導することとを行うように構成される。
【0014】
本開示の別の実施態様は、ロボットデバイスを動作させる方法である。本方法は、ロボットデバイスに結合されるツールを追跡することと、ロボットデバイスを制御してツールを仮想制御オブジェクト内に拘束することと、仮想オブジェクトのゾーンを定義することと、ツールがゾーン内にあると判定することと、ロボットデバイスを制御してゾーン内のツールの移動に抵抗することとを含む。
【0015】
本開示の別の実施態様は、ロボットデバイスと、ロボットデバイスと通信可能である処理回路とを含む、システムである。処理回路は、ロボットデバイスを制御してツールを仮想制御オブジェクト内に拘束することと、仮想オブジェクトのゾーンを定義することと、ツールがゾーン内にあると判定することと、ロボットデバイスを制御してゾーン内のツールの移動に抵抗することとを行うように構成される。
【0016】
本開示の別の実施態様は、ツールが結合されるロボットデバイスを動作させる方法である。本方法は、ロボットデバイスによって、ツールを仮想制御オブジェクトに拘束することと、ほぼ既定方向におけるツールにかかる力を検出することと、ほぼ既定方向の力が閾値力を超えているかどうかを判定することと、ほぼ既定方向の力が閾値力を超えているとの判定に応答して、ロボットデバイスを制御してツールを仮想制御オブジェクトから出すことを可能にすることとを含む。
【0017】
本開示の別の実施態様は、ロボットデバイスと、ロボットデバイスと通信可能である処理回路とを含む、システムである。処理回路は、ロボットデバイスを制御してツールを仮想制御オブジェクトに拘束することと、ほぼ既定方向におけるツールにかかる力を検出することと、ほぼ既定方向の力が閾値力を超えているかどうかを判定することと、ほぼ既定方向の力が閾値力を超えているとの判定に応答して、ロボットデバイスを制御してツールを仮想制御オブジェクトから出すことを可能にすることとを行うように構成される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、本発明の好ましい実施形態は図面に示される。図面全体にわたって同じまたは同様の参照数字を使用して、同じまたは同様の部分を表す取り組みがなされている。本明細書では、主に、整形外科関節置換術のためのロボットアームを表すが、本明細書に説明される主題は、非外科用途と、同様に、他の解剖学的領域を対象とする処置(例えば、脊柱手技または歯科処置)とに使用されるものを含む、他のタイプのロボットシステムに利用可能であることを理解されたい。
【0019】
ここで図1を参照すると、例示的な実施形態による、膝関節形成手技中に修正された大腿骨101が示される。図1に示されるように、大腿骨101は、複数の平面切断部によって修正されている。示される例では、大腿骨100は、5つの実質的に平面切断部によって修正されており、5つの実質的に平面、すなわち、遠位表面102、後面取り面104、後面106、前面108、及び前面取り面110が作成される。矢状鋸または他の手術用ツール(例えば、下記に説明される例のように、ロボットデバイスに結合される手術用ツール)を使用して、平面を実現し得る。平面102~110が大腿骨インプラント構成要素の対応する表面と噛合するように、平面102~110を作成する。平面102~110の位置及び角度方向により、インプラント構成要素の整列及び位置決めを判定し得る。したがって、手術用ツールを動作して、平面102~110を高精度に作成して、関節置換術の結果を改善し得る。
【0020】
図1に示されるように、大腿骨101、また、1対のパイロット穴120を有するように修正されている。パイロット穴120は大腿骨101に延在し、パイロット穴120が、ねじ、インプラント構成要素の表面から延在する突起、または大腿骨101へのインプラント構成要素の結合が容易になるように構成される他の構造を受けることができるように作成される。下記に説明されるようなドリル、球状バー、または他の手術用ツールを使用して、パイロット穴120を作り得る。パイロット穴120は事前に計画された位置、配向、及び深さを有し得、所望の位置及び配向における骨へのインプラント構成要素の安全な結合が容易になる。場合によって、パイロット穴120は、骨の高密度エリアと交差するならびに/または他のインプラント構成要素及び/もしくは敏感な解剖学的特徴を回避するように計画される。したがって、手術用ツールを動作して、パイロット穴120を高精度に作成して、関節置換術の結果を改善し得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、本明細書に説明されるシステム及び方法は、平面102~110及びパイロット穴120を作成するために、ロボット支援を提供する。図1に示されるような5つの平面切断部及び2つの円柱状パイロット穴の作成は一例にすぎないことと、本明細書に説明されるシステム及び方法は、様々な実施形態で、いずれかの骨及び/または関節を調製するために、任意の数の平面切断部または非平面切断部、任意の数のパイロット穴、いずれかのそれらの組み合わせ等の作成を計画し及び容易にするように適応し得ることを理解されたい。例えば、股関節形成手技または肩関節形成手技では、球状バーは、曲面インプラントカップを受けるように構成される曲面の穴を広げるために、本明細書のシステム及び方法に従って使用され得る。さらに、他の実施形態では、本明細書に説明されるシステム及び方法を使用して、骨に対するインプラント構成要素の留置が容易になり得る(例えば、股関節形成手技でカップインプラントの固着が容易になる)。そのような多くの外科及び非外科の実施態様は、本開示の範囲内にある。
【0022】
ここで図2を参照すると、例示的な実施形態により、整形外科手術のための手術システム200が示される。概して、手術システム200は、手術計画の計画及び実行が容易になるように、例えば、関節関連手技が容易になるように構成される。図2に示されるように、手術システム200は、テーブル205の上に座っているまたは横になっている患者204の脚202を治療するためにセットアップされる。図2に示される説明図では、脚202は大腿骨206(例えば、図1の大腿骨101)及び脛骨208を含み、それらの間に、人工膝関節インプラントは、膝関節鏡視下手技の全体で移植されるはずである。他のシナリオでは、手術システム200は、患者の臀部(すなわち、患者の大腿骨及び骨盤)を治療するためにセットアップされる。さらに、また他のシナリオでは、手術システム200は、患者の肩を治療するためにセットアップされ、すなわち、肩関節の構成要素の置換及び/または増強が容易になる(例えば、上腕骨構成要素、関節窩構成要素、及び移植片増強部またはインプラント増強部の留置が容易になる)。また、様々な他の解剖学的領域及び手技も可能である。手技が容易になるために、手術システム200は、ロボットデバイス220、追跡システム222、及びコンピューティングシステム224を含む。
【0023】
ロボットデバイス220は、コンピューティングシステム224の制御の下、患者の解剖学的構造(例えば、患者204の大腿骨206)を修正するように構成される。ロボットデバイス220の一実施形態は触覚デバイスである。「触覚」は触れる感覚を指し、触覚の分野は、特に、フィードバックをオペレータに提供する人間対話型デバイスに関する。フィードバックは、例えば、振動等の触感を含み得る。フィードバックは、また、力(正の力または移動に対する抵抗力等)をユーザに提供することを含み得る。触覚の1つの使用として、デバイスの操作のためのガイダンスまたは制限を、そのデバイスのユーザに提供する。例えば、触覚デバイスは、外科手技を行う外科医によって操作できる手術用ツールに結合され得る。外科医による手術用ツールの操作は、手術用ツールの操作中にフィードバックを外科医に提供するために、触覚を使用することによって誘導または制限できる。
【0024】
ロボットデバイス220の別の実施形態は、自律ロボットまたは半自律ロボットである。「自律」は、その状況についての情報を集め、一連の行動を判定し、及びその一連の行動を自動的に実行することによって、人間の制御から独立してまたは半ば独立して作動するロボットデバイスの能力を指す。例えば、そのような実施形態では、追跡システム222及びコンピューティングシステム224と通信するロボットデバイス220は、直接的な人間の介入なしで上述した一連の大腿骨の切断を自律的に完了し得る。
【0025】
ロボットデバイス220は、ベース230、ロボットアーム232、及び手術用ツール234を含み、コンピューティングシステム224及び追跡システム222に通信可能に結合される。ベース230はロボットアーム232のための移動可能土台を提供して、必要に応じて、ロボットアーム232及び手術用ツール234を患者204及びテーブル205に対して再配置することを可能にする。ベース230は、また、電力システム、コンピューティング要素、モータ、及び他の電子システムまたは機械システムを含み得、これらは、下記に説明されるロボットアーム232及び手術用ツール234が機能するために必要である。
【0026】
ロボットアーム232は、手術用ツール234を支持し、コンピューティングシステム224によって命令されるように力を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、ロボットアーム232は、ユーザが手術用ツールを操作することを可能にし、力フィードバックをユーザに提供する。そのような実施形態では、ロボットアーム232は、モータ、アクチュエータ、または他の機構を含む関節236及びマウント238を含み、これらの機構は、ユーザが許容可能な姿勢によって、ロボットアーム232及び手術用ツール234を自由に並進及び回転することを可能にするように構成され、同時に、力フィードバックを提供して、コンピューティングシステム224によって命令されるように、ロボットアーム232及び手術用ツール234のいくつかの移動を拘束または防止する。下記に詳細に説明されるように、ロボットアーム232は、したがって、外科医が、そのオブジェクトの境界に沿って力フィードバック(例えば、振動、境界の貫入を防止または抵抗する力)を提供しながら、制御オブジェクト内の手術用ツール234を思いどおりに制御することを可能にする。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、必要に応じて、ロボットアームを位置付ける及び/または特定の手術タスク(例えば、大腿骨206の切断を含む)を完了するために、コンピューティングシステム224によって命令されるように、ユーザの直接操作なしで手術用ツールを自動的に移動して新しい姿勢になるように構成される。
【0027】
手術用ツール234は、骨を切断する、ギザギザを付ける、研削する、穿設する、部分的に切除する、再形成する、及び/もしくはそうでなければ修正するように構成される、または骨を切断する、ギザギザを付ける、研削する、穿設する、部分的に切除する、再形成する、及び/もしくはそうでなければ修正するために使用されるデバイスの移動を拘束/制限するように構成される。手術用ツール234は、いずれかの適切なツールであり得、ロボットデバイス220に交換可能に接続可能である複数のツールのうちの1つであり得る。例えば、図2に示されるように、手術用ツール234は球状バー244を含む。他の例では、手術用ツールは、また、例えば、ツール軸に平行にまたはツール軸に垂直に整列されたブレードを伴う矢状鋸であり得る。また、手術用ツールは、例えば、ツール軸に平行にまたはツール軸に垂直に整列された回転ビットを伴うドリルであり得る。様々な実施形態では、手術用ツール234は、例えば、それを通って挿入されるのこぎり、ドリル、または他の器具を有するように構成されるジグ、ドリルガイド、切断ガイド等であり得る。手術用ツール234は、また、インプラント構成要素(例えば、カップ28a、インプラント増強部等)を適所に保持するように構成される保持アームまたは他の支持物であり得る一方、インプラント構成要素は、骨にねじで留められる、骨もしくは他のインプラント構成要素に接着される(例えば、セメントで結合される)、またはそうでなければ好ましい位置に設置される。いくつかの実施形態では、手術用ツール234は、固着力をカップインプラントに提供して、計画された場所及び配向で骨盤へのカップインプラントの固定が容易になるように構成される固着ツールである。
【0028】
追跡システム222は、患者の解剖学的構造(例えば、大腿骨206及び脛骨208)及びロボットデバイス220(すなわち、手術用ツール234及び/またはロボットアーム232)を追跡して、ロボットアーム232に結合される手術用ツール234の制御を可能にし、手術用ツール234によって行われた修正の位置及び配向または他の結果を判定し、コンピューティングシステム224のディスプレイ上に、骨(例えば、様々な手技に適用可能な大腿骨206、脛骨208、骨盤、上腕骨、肩甲骨等)、手術用ツール234及び/またはロボットアーム232をユーザが見ることを可能にするように構成される。より具体的には、追跡システム222は、座標系に対するオブジェクト(例えば、手術用ツール234、大腿骨206)の位置及び配向(すなわち、姿勢)を判定し、外科手技中にオブジェクトの姿勢を追跡する(すなわち、連続的に判定する)。様々な実施形態に従って、追跡システム222は、非機械追跡システム(例えば、光学追跡システム)、機械追跡システム(例えば、ロボットアーム232の関節236の相対角度の測定に基づく追跡)、または非機械追跡システム及び機械追跡システムのいずれかの組み合わせを含むいずれかのタイプのナビゲーションシステムであり得る。
【0029】
図2に示される実施形態では、追跡システム222は光学追跡システムを含む。したがって、追跡システム222は、脛骨208に結合される第1の基準木240、大腿骨206に結合される第2の基準木241、ベース230に結合される第3の基準木242、手術用ツール234に結合される1つ以上の基準、及び基準(すなわち、基準木240~242のマーカー)の3次元位置を検出するように構成される検出デバイス246を含む。基準木240、241は、様々な手技に適切に他の骨(例えば、股関節形成手技における骨盤及び大腿骨)に結合され得る。検出デバイス246は、カメラまたは赤外線センサ等の光学検出器であり得る。基準木240~242はマーカーである基準を含み、マーカーは、光学検出器をはっきり見えるように構成される、及び/または光学検出器からのデータを使用して、画像処理システムによって、例えば、赤外線放射(例えば、追跡システム222の要素によって放射された赤外線放射)に高反射性であることによって容易に検出可能であるように構成される。検出デバイス246におけるカメラの立体視装置は、三角測量アプローチによって、3次元空間内の各基準の位置を判定することを可能にする。各基準は対応するオブジェクトに対する幾何学的関係を有し、それにより、基準の追跡により、オブジェクトの追跡を可能にし(例えば、第2の基準木241の追跡により、追跡システム222が大腿骨206を追跡することを可能にし)、追跡システム222は、登録プロセスを実施して、この幾何学的関係を判定または検証するように構成され得る。基準木240~242の基準の固有の配置(すなわち、第1の基準木240の基準は、第2の基準木241の基準と異なる幾何学形状に配置される)は、基準木、ひいては、追跡されるオブジェクトを相互に区別することを可能にする。
【0030】
図2の追跡システム222または手術ナビゲーション及び追跡のいくつかの他のアプローチを使用して、手術システム200は、患者の解剖学的特徴(例えば、大腿骨206)に対する手術用ツール234の位置を判定でき、これは、手術用ツール234を使用して、解剖学的特徴を修正する、またはそうでなければ外科手技が容易になるためである。さらに、図2の追跡システム222または手術ナビゲーション及び追跡のいくつかの他のアプローチを使用して、手術システム200は追跡された骨の相対姿勢を判定できる。
【0031】
コンピューティングシステム224は、手術計画を作成し、手術計画に従って、ロボットデバイス220を制御して、1つ以上の骨修正を行い及び/または1つ以上の人工装具構成要素の移植が容易になるように構成される。したがって、コンピューティングシステム224は、追跡システム222及びロボットデバイス220に通信可能に結合され、ロボットデバイス220、追跡システム222、及びコンピューティングシステム224の間の電子通信が容易になる。さらに、コンピューティングシステム224はネットワークに接続され、例えば、電子健康記録システムによってアクセスすることによって、患者の医療履歴または他の患者プロフィール情報、医用画像、手術計画、外科手技に関する情報を受信し、外科手技の動作に関する様々な機能を行い得る。コンピューティングシステム224は処理回路260及び入力/出力デバイス262を含む。
【0032】
入力/出力デバイス262は、本明細書に説明される機能及びプロセスに対して、必要に応じて、ユーザ入力を受信し、出力を表示するように構成される。図2に示されるように、入力/出力デバイス262はディスプレイ264及びキーボード266を含む。ディスプレイ264は、処理回路260によって生成されるグラフィカルユーザインターフェースを表示するように構成され、グラフィカルユーザインターフェースには、例えば、手術計画、医用画像、手術システム200の設定及び他のオプションについての情報、追跡システム222及びロボットデバイス220に関連するステータス情報、ならびに追跡システム222によって供給されたデータに基づく追跡可視化が含まれる。キーボード266は、それらのグラフィカルユーザインターフェースへのユーザ入力を受信して、手術システム200の1つ以上の機能を制御するように構成される。
【0033】
処理回路260はプロセッサ及びメモリデバイスを含む。プロセッサは、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ以上のフィールドプログラムゲートアレイ(FPGA)、処理コンポーネントのグループ、または他の適切な電子処理コンポーネントとして実装できる。メモリデバイス(例えば、メモリ、メモリユニット、ストレージデバイス等)は、本願に説明される様々なプロセス及び機能を完了または容易にするように、データ及び/またはコンピュータコードを記憶するための1つ以上のデバイス(例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスクストレージ等)である。メモリデバイスは、揮発性メモリまたは不揮発性メモリであり得るまたは含み得る。メモリデバイスは、本願に説明される様々なアクティビティ及び情報構造をサポートするために、データベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント、またはいずれかの他のタイプの情報構造を含み得る。例示的な実施形態に従って、メモリデバイスは処理回路260を介してプロセッサに通信可能に接続され、本明細書に説明される1つ以上のプロセスを(例えば、処理回路260及び/またはプロセッサによって)実行するためのコンピュータコードを含む。
【0034】
より具体的には、処理回路260は、外科手技前に術前手術計画の作成が容易になるように構成される。いくつかの実施形態に従って、術前手術計画は、患者の解剖学的構造の3次元表現(また、本明細書では「仮想骨モデル」とも称される)を利用して開発されている。「仮想骨モデル」は、骨に加えて、軟骨または他の組織の仮想表現を含み得る。仮想骨モデルを取得するために、処理回路260は、外科手技を行う予定の患者の解剖学的構造の撮像データを受信する。コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像(MRI)、及び/または超音波を含む、関連の解剖学的特徴を撮像する適切な医用画像技術のいずれかを使用して、撮像データを作成し得る。次に、撮像データを分割して(すなわち、異なる解剖学的特徴に対応する撮像の領域を区別しする)、仮想骨モデルを取得する。例えば、関節のMRIベーススキャンデータを分割して、周囲の靱帯、軟骨、事前に移植された人工装具構成要素、及び他の組織と骨を区別し、撮像された骨の3次元モデルを取得できる。
【0035】
代替として、骨モデルのデータベースまたはライブラリから3次元モデルを選択することによって、仮想骨モデルを取得し得る。一実施形態では、ユーザは入力/出力デバイス262を使用して、適切なモデルを選択し得る。別の実施形態では、処理回路260は、記憶された命令を実行して、患者について提供された画像または他の情報に基づいて、適切なモデルを選択し得る。次に、特定の患者特性に基づいて、データベースから選択された骨モデル(複数可)を変形でき、本明細書に説明される手術計画及び実施態様に使用される仮想骨モデルを作成する。
【0036】
次に、仮想骨モデルに基づいて、術前手術計画を作成できる。手術計画は、処理回路260、入力/出力デバイス262を用いるユーザによる入力、または2つのいくつかの組み合わせによって自動的に生成され得る(例えば、処理回路260は、ユーザが作成した計画のいくつかの特徴を制限し、ユーザが修正できる計画を生成する等)。いくつかの実施形態では、手術計画は、手術中に収集された伸延力の測定値に基づいて、生成及び/または修正され得る。
【0037】
術前手術計画は、手術システム200を使用して作られる患者の解剖学的構造への所望の切断部、穴、表面、バー、または他の修正を含む。例えば、膝関節鏡視下手技の全体について、術前計画は、外科手技中に大腿骨に接合される人工装具の対応する表面に噛合するのに適切な相対配向及び相対位置において、大腿骨上に、遠面、後面取り面、後面、前面、及び前面取り面を形成することが必要な切断と、同様に、脛骨上に、外科手技中に脛骨に接合される人工装具に噛合するのに適切な表面(複数可)を形成するのに必要な切断部とを含み得る。別の例として、術前計画は、骨に穴(例えば、パイロット穴120)を作成するのに必要な修正を含み得る。別の例として、股関節形成手技では、手術計画は、骨盤の寛骨臼領域に1つ以上の表面を形成し、カップ(適切な場合、インプラント増強部)を受ける必要なバーを含み得る。したがって、処理回路260は、人工装具のモデルを受信し得、そのモデルにアクセスし得、及び/または記憶し得、手術計画の生成が容易になる。
【0038】
処理回路260は、さらに、手術計画に従って、ロボットデバイス220の制御オブジェクトを生成するように構成される。制御オブジェクトは、様々なタイプの可能性のあるロボットデバイス(例えば、触覚デバイス、自律デバイス)に従って、様々な形態をとり得る。例えば、いくつかの実施形態では、制御オブジェクトは、ロボットデバイスを制御して制御オブジェクト内を移動するロボットデバイスに対する命令(すなわち、追跡システム222からのフィードバックによって案内された手術計画の1つ以上の切断を自律的に行う命令)を定義する。いくつかの実施形態では、制御オブジェクトは、ディスプレイ264上に手術計画及びロボットデバイスの可視化を含み、これにより、手術ナビゲーションが容易になり、(例えば、ロボットデバイスのアクティブ制御または力フィードバックなしで)外科医が手術計画に従うことを導くことを助ける。ロボットデバイス220が触覚デバイスである実施形態では、制御オブジェクトは以下の段落で説明される触覚オブジェクトであり得る。
【0039】
ロボットデバイス220が触覚デバイスである実施形態では、処理回路260は、さらに、術前手術計画に基づいて、1つ以上の触覚オブジェクトを生成し、外科手技中に手術用ツール234の拘束を可能にすることによって、手術計画の実施中に外科医を補助するように構成される。触覚オブジェクトは、1次元、2次元、または3次元で形成され得る。例えば、触覚オブジェクトは、線、平面、または3次元体積であり得る。触覚オブジェクトは、曲面で曲がり得及び/または平面を有し得、いずれかの形状(例えば、漏斗形)であり得る。触覚オブジェクトを作成して、外科手技中に手術用ツール234を移動させるために様々な所望の結果を表すことができる。3次元触覚オブジェクトの1つ以上の境界は、骨の表面上に作成される切断部等の1つ以上の修正を表し得る。平面触覚オブジェクトは、骨の表面上に作成される切断部等の修正を表し得る。曲面触覚オブジェクトは、カップインプラント及び/またはインプラント増強部を受けるために修正される結果として生じる骨の表面を表し得る。線触覚オブジェクトは、ねじまたは他の突起を受けるために骨を調製するために、骨に作られたパイロット穴に対応し得る。
【0040】
ロボットデバイス220が触覚デバイスである実施形態では、処理回路260は、さらに、手術用ツール234の仮想ツール表現を生成するように構成される。仮想ツールは、物理的な手術用ツール234の場所を表し、その場所に関連付けられる1つ以上の触覚相互作用点(HIP)を含む。手術用ツール234が球状バー(例えば、図2に示される)である実施形態では、HIPは球状バーの中心を表し得る。1つのHIPを使用して、手術用ツールを仮想的に表し、HIPは、本明細書では、ツール中心点(TCP)と称され得る。手術用ツール234が不規則な形状である場合、例えば、矢状鋸に関して、矢状鋸の仮想表現は多くのHIPを含み得る。複数のHIPを使用して、手術用ツールに触覚力(例えば、正の力フィードバックまたは移動に対する抵抗力)を生成することは、2011年12月28日に出願された「System and Method for Providing Substantially Stable Haptics」と題された米国出願第13/339,369号に説明され、当該特許文献は本明細書によって全体として参照によって本明細書に組み込まれる。本発明の一実施形態では、矢状鋸を表す仮想ツールは11個のHIPを含む。本明細書に使用される場合、「HIP」の言及は、「1つ以上のHIP」の引用も含むと見なされる。下記に説明されるように、HIPと触覚オブジェクトとの関係は、手術システム200が手術用ツール234を拘束することを可能にする。
【0041】
外科手技が動作する前に、患者の解剖学的構造(例えば、大腿骨206)は、いずれかの既知の登録技術によって、患者の解剖学的構造の仮想骨モデルに登録される。1つの可能な登録技術は、2011年8月30日に特許が付与された「Haptic Guidance System and Method」と題された米国特許第8,010,180号に説明されるポイントベース登録であり、当該特許文献は本明細書によって全体として参照によって本明細書に組み込まれる。代替として、2012年7月30日に出願された「Radiographic Imaging Device」と題された米国出願第13/562,163号に説明されるハンドヘルド放射線撮像デバイスを利用する2次元/3次元登録によって、登録は達成され得、当該特許文献は本明細書によって全体として参照によって本明細書に組み込まれる。登録は、また、手術用ツール234の仮想ツール表現への手術用ツール234の登録を含み、これにより、手術システム200は、患者(すなわち、大腿骨206)に対する手術用ツール234の姿勢を判定及び監視できる。登録により、外科手技中に、正確なナビゲーション、制御、及び/または力フィードバックを可能にする。いくつかの実施形態では、股関節形成手技のために登録に関連する追加の詳細は、下記に詳細に説明される。
【0042】
処理回路260は、仮想ツール表現、仮想骨モデルの仮想位置と、患者の骨(例えば、大腿骨206)、手術用ツール234、及びロボットデバイス220によって作成される力によって定義された1つ以上の線、平面、または3次元空間の実世界位置に対応する制御オブジェクト(例えば、仮想触覚オブジェクト)とを監視するように構成される。例えば、患者の解剖学的構造が追跡システム222によって追跡されるように外科手技中に移動する場合、処理回路260は対応するように仮想骨モデルを移動させる。したがって、仮想骨モデルは、患者の実際の(すなわち、物理的な)解剖学的構造と、実空間/物理空間のその解剖学的構造の位置及び配向とに対応する、または関連付けられる。同様に、いずれかの触覚オブジェクト、制御オブジェクト、またはその解剖学的構造になされる切断、修正等に関係がある手術計画中に生じる他の計画された自動ロボットデバイス運動は、また、患者の解剖学的構造と一致して移動する。いくつかの実施形態では、手術システム200はクランプまたはブレースを含み、これらにより、大腿骨206を実質的に固定し、大腿骨206の動きを追跡及び処理する必要性を最小にする。
【0043】
ロボットデバイス220が触覚デバイスである実施形態について、手術システム200は、HIPと触覚オブジェクトとの関係に基づいて、手術用ツール234を拘束するように構成される。すなわち、処理回路260が追跡システム222によって供給されたデータを使用して、ユーザが手術用ツール234を操作して、HIPを動かして、触覚オブジェクトと仮想的に接触していることを検出するとき、処理回路260は、ロボットアーム232に対する制御信号を生成し、触覚フィードバック(例えば、力、振動)をユーザに提供し、手術用ツール234の移動に対する拘束を伝える。概して、用語「拘束」は、本明細書に使用される場合、移動を限定する傾向を説明するために使用される。しかしながら、手術用ツール234に強いられる拘束の形成は関連の触覚オブジェクトの形成に依存する。触覚オブジェクトは、いずれかの形状または構成で形成され得る。上記に留意したように、3つの例示的な実施形態は、線、平面、または3次元体積を含む。一実施形態では、手術用ツール234のHIPが線状触覚オブジェクトに沿って移動することを限定するため、手術用ツール234を拘束する。別の実施形態では、触覚オブジェクトは3次元体積であり、手術用ツール234は、3次元触覚オブジェクトの壁によって包囲される体積の外側でHIPの移動を実質的に防止することによって拘束され得る。別の実施形態では、平面触覚オブジェクトが、平面触覚オブジェクトの平面の外側で及び境界の外側でHIPの移動を実質的に防止するため、手術用ツール234を拘束する。例えば、処理回路260は、計画された遠位切断を実施する必要がある平面に手術用ツール234を実質的に制限するために、大腿骨206に遠面を作成する必要がある計画された平面遠位切断部に対応する平面触覚オブジェクトを構築できる。
【0044】
ロボットデバイス220が自律デバイスである実施形態について、手術システム200は、制御オブジェクトに従って、手術用ツール234を自律的に移動及び動作するように構成される。例えば、制御オブジェクトは、切断が行われるはずである大腿骨206に対するエリアを定義し得る。そのような場合、ロボットアーム232及び手術用ツール234の1つ以上のモータ、アクチュエータ、及び/または他の機構は、例えば、追跡システム222からの追跡データを使用して、閉ループ制御を可能にするために、手術用ツール234を、計画された切断を行うために制御オブジェクト内で必要に応じて移動及び動作させるように制御可能である。
【0045】
ここで図3を参照すると、例示的な実施形態による、図2の手術システム200によって実行できるプロセス300のフローチャートが示される。プロセス300は、全体的及び部分的な関節置換手術を含む様々な外科手技が容易になるように適応し得る。図4図13に示される及び下記に詳細に説明される様々なステップ及び特徴を使用して、それらのステップ及び特徴の組み合わせを含むプロセス300を実行し得る。
【0046】
ステップ302において、手術計画を取得する。手術計画(例えば、コンピュータ可読データファイル)は、骨修正の所望の結果を定義し得る、例えば、患者の解剖学的構造に対して人工装具構成要素の所望の位置に基づいて定義し得る。例えば、膝関節形成手技の場合、手術計画は、図1に示される平面102~110及びパイロット穴120の計画された位置及び配向を提供し得る。医用画像、3次元モデリング、外科医による入力等に基づいて、手術計画を生成し得る。
【0047】
ステップ304において、1つ以上の制御境界(触覚オブジェクト等)は、手術計画に基づいて定義される。1つ以上の触覚オブジェクトは、1次元(例えば、線触覚)、2次元(すなわち、平面)、または3次元(例えば、円柱状、漏斗状、曲面等)であり得る。触覚オブジェクトは、計画された骨修正(例えば、平面102~110のそれぞれ及び図1に示されるパイロット穴120のそれぞれの触覚オブジェクト)、手術計画によって定義されたインプラント構成要素、外科的アプローチ軌道等を表し得る。触覚オブジェクトは、患者の解剖学的構造の追跡位置に対して3次元空間内に指向及び位置付けできる。
【0048】
ステップ306において、手術用ツールの姿勢は、例えば、上記に説明した追跡システム222によって触覚オブジェクト(複数可)に対して追跡される。いくつかの実施形態では、手術用ツール上の1点を追跡する。他の実施形態では、(例えば、図4図5の例では)手術用ツール上の2点は、例えば、手術用ツールの先端/有効端におけるツール中心点(TCP)と、手術用ツールの本体またはハンドル部に沿って位置付けられる第2の相互作用点(SIP)とを追跡する。他の実施形態では、手術用ツール上の3つ以上の点を追跡する。手術用ツールの姿勢は、1つ以上の触覚オブジェクトを定義する座標系に対して把握され、いくつかの実施形態では、患者の1つ以上の解剖学的特徴の姿勢も追跡する。
【0049】
ステップ308において、手術用ツールを触覚オブジェクト(複数可)に誘導する。例えば、手術システム200のディスプレイ264は、手術用ツール及び/またはロボットデバイスを移動させ、手術用ツールを触覚オブジェクトまでどのように(例えば、どの方向に)動かすかをユーザに指示するグラフィカルユーザインターフェースを表示し得る。別の例として、手術用ツールは、米国特許第9,289,264号に説明される崩れ触覚境界を使用して、触覚オブジェクトまで誘導され得、当該特許文献の開示は本明細書に参照によって組み込まれる。
別の例として、ロボットデバイスを制御して、手術用ツールを触覚オブジェクトまで自動的に移動させ得る。別の例として、下記に詳細に説明される図8のプロセス800を使用して、ステップ308を実行し得る。
【0050】
ステップ310において、ロボットデバイスを制御して、手術用ツールの追跡姿勢及び1つ以上の触覚オブジェクトの姿勢に基づいて、手術用ツールの移動を拘束する。図2を参照して上記に説明したように、手術用ツールの拘束を実現し得る。いくつかの実施形態では、ステップ310は、図4図5に示される2段階アプローチを含み、それらの図を参照して下記に説明される。いくつかの実施形態では、ステップ310は、例えば、図9図10に示され、それらの図を参照して下記に説明されるように、特定のゾーンを通る手術用ツールの移動に抵抗する減衰力を提供することを含む。いくつかの実施形態では、ステップ310は、例えば、図11図13の例に従って、それらの図を参照して下記に説明されるように、ユーザ入力に応答して触覚相互作用を調整することを含む。これらの特徴の様々な組み合わせは、ステップ310において可能である。
【0051】
ステップ312において、触覚オブジェクト(複数可)からの手術用ツールの取り出しが容易になり、すなわち、触覚オブジェクトの拘束を解放することが容易になる。例えば、いくつかの実施形態では、ロボットデバイスを制御して、触覚オブジェクトの軸に沿って、手術用ツールを触覚オブジェクトから出すことを可能にする。いくつかの実施形態では、例えば、図6図7に示され、それらの図を参照して下記に詳細に説明されるように、手術用ツールは、触覚オブジェクトに対して既定方向に触覚オブジェクトを出すことを可能にし得る。したがって、手術用ツールは、手術野及び触覚オブジェクトから除去され、外科手技の後続ステップが容易になり得る。さらに、場合によって、プロセス300はステップ308に戻り得、ステップ312において触覚オブジェクトから出した後に、手術用ツールを同じまたは異なる触覚オブジェクトまで誘導することを理解されたい。
【0052】
したがって、プロセス300は、手術システム200によって実行され、外科手技が容易になり得る。いくつかの実施形態に従って、プロセス300の特徴は下記の図4図13に示され、そのような特徴は、様々な実施形態において様々な組み合わせで及び/または特定の手技のために選択された設定に基づいて、組み合わせできる。さらに、図4図13の特徴は、プロセス300のいくつかのステップまたは全ての他のステップを省略しながら、提供され得ることを理解されたい。そのような全ての起こり得ることは、本開示の範囲内にある。
【0053】
ここで図4図5を参照すると、例示的な実施形態により、2段階の触覚相互作用が示される。図4は2段階の触覚相互作用を提供するためのプロセス400のフローチャートを示す一方、図5は、2段階の触覚相互作用(すなわち、プロセス400の触覚相互作用)の絵コンテ式の説明図を示す。プロセス400は、例えば、プロセス300のステップ310において手術システム200によって実行できる。
【0054】
ステップ402において、ツール中心点(TCP)500を線触覚502に拘束すると同時に、ツール中心点500を中心とする手術用ツール234の回転及び線触覚502に沿ったTCP500の並進を可能にする。線触覚502は、図1に示されるような計画された骨修正(例えば、計画されたパイロット穴120)に対応し得る。線触覚502は、計画されたパイロット穴120の軸として定義され得、計画されたパイロット穴120の底部(最深端)から延在し、解剖学的特徴(例えば、大腿骨101)を越えて延在し得る。線触覚502は図5の例の直線である。他の実施形態では、線触覚502は曲がり得る、例えば、スプラインとして定義され得る。他の実施形態では、図4のプロセス400は、平面触覚オブジェクト、体積触覚オブジェクト、または線触覚502の代わりに、線、平面、及び/または体積のいずれかの組み合わせとして定義される触覚オブジェクトを使用するように適応し得る。
【0055】
線触覚502に対してTCP500を追跡し、ロボットデバイスを制御して、TCP500を拘束し、線触覚502上に留まるまたは線触覚502上に実質的に留まるようにする(例えば、線触覚502からのずれを防止またはそれに抵抗し、TCP500を駆動して線触覚502に戻すスプリング力を提供する等が行われる)。ステップ402において、TCP500は線触覚502に沿って並進できる。(例えば、アドミタンス制御によって)ロボットデバイスを制御して、(例えば、ユーザによって操作されるように)手術用ツール234がTCP500を中心に回転することを可能にする。すなわち、ステップ402において、手術用ツール234のハンドルまたは本体部に沿って位置する第2の相互作用点(SIP)504は拘束を解放する。
【0056】
ステップ402でのTCP500を中心とする手術用ツール234の回転により、外科医が好ましいアプローチ軌道に沿って線触覚502に達することが容易になり得る。場合によって、周辺軟組織及び/または骨構造は、周囲組織または骨に望ましくない分裂または不必要な分裂を生じさせないで(例えば、そのような組織または骨を通る穴を作成する必要がなく)、線触覚502に沿って骨表面に対して患者の十分外側の位置から手術用ツール234を挿入することが困難になり得るまたは不可能になり得る。そのような場合、TCP500が線触覚502に達し、線触覚502によって拘束されるまで、手術用ツール234を好ましい軌道に沿って挿入できる。ステップ402において、手術用ツール234が回転して、手術用ツールのシャフトまたは本体の側面を伴うそのような特徴を押すことによって、解剖学的特徴を変位できる。ステップ402において、TCP500を線触覚502に拘束することによって、外科医は、TCP500の位置も監視する負担及び/または所望の軸から離れてTCP500の移動を手動で防止する試みる負担がなく、要望どおり、手術用ツール234を回転することに集中することを可能にする。したがって、ステップ402は、様々な解剖学的領域内で手術用ツール234の挿入及び配向が容易になり得る。
【0057】
ステップ404において、TCP500が線触覚502に沿って閾値位置に達していることを(例えば、処理回路260によって)判定する。場合によって、閾値位置は、骨(例えば、大腿骨101)の表面から離れた距離に基づいて定義され、それにより、手術用ツール234が骨に接触する前に、閾値位置に達する。そのような場合、下記に説明されるように、手術用ツール234が骨の修正を開始する前に、ステップ406~408を実行し得、したがって、骨修正の開始前に、手術用ツール234の所望の配向を確実にする。
【0058】
他の場合、閾値位置は、骨の表面の下の深さに基づいて定義され、それにより、手術用ツール234が骨に接触した後、閾値位置に達する。そのような場合、ステップ406~408を参照して下記に説明されるように、線触覚502と整列して回転する前に、手術用ツール234は第1の配向に骨の修正が開始することを可能にし、例えば、スカイビングのリスクを減らす、またはそうでなければ骨への手術用ツール234の侵入が容易になり得る。図5に示されるように、例えば、手術用ツール234と骨101との間で最初の接触が行われ得、上側フレーム(すなわち、ステップ402中に)に示されるように、手術用ツールは骨の表面にほぼ垂直であり、これにより、計画された場所(すなわち、線触覚502と骨101との交差点)で骨101にスパッと切れた切断部/孔/小溝等を実現する可能性を改善し得る。そのような場合、骨101への手術用ツール234の最初の貫入後に(すなわち、TCP500が骨101の表面を交差している状態になると)、TCP500が閾値位置に達しているとの判定が行われ得る。
【0059】
ステップ406において、ステップ404でのTCP500が閾値位置に達しているとの判定に応答して、SIP504は線触覚502に向かって誘導される。いくつかの実施形態では、ロボットデバイスを制御して補助力を提供し得、補助力は、TCP500を中心に手術用ツール234を回転させ、線触覚502に向かってSIP504を移動させることを行うユーザを補助する。いくつかの実施形態では、崩れ触覚オブジェクトは、ステップ406で使用される。線触覚502から離れていくSIP504の回転を防止すると同時に、線触覚502に向かうSIP504の回転を可能にする。いくつかの実施形態では、ディスプレイ264によって、命令を表示することによって、SIP504を線触覚502に向かって誘導することが実現する。いくつかの実施形態では、ロボットデバイスを制御して、手術用ツール234を自動的に回転させ、線触覚502に合わせてSIP504を整列することによって、SIP504を線触覚502に向かって誘導することが実現する。TCP500は、ステップ406中に(すなわち、SIP504が線触覚502に誘導する間に)、線触覚502(ステップ402について説明される)に拘束される。場合によって、ロボットデバイスを制御して、線触覚502に沿ってTCP500の並進を防止すると同時に、SIP504がステップ406中に誘導される。
【0060】
ステップ408において、ステップ406の結果として、SIP504が線触覚502に誘導された後に、ロボットデバイスを制御して、TCP500及びSIP504を線触覚502に拘束する。手術用ツール234は、線触覚502に沿って並進して、計画された骨修正を実行できる(例えば、パイロット穴120を作成する)。示される例では、SIP504は手術用ツール234の軸に沿って位置する。したがって、他の手術用ツール234を線触覚502に2つの点(すなわち、TCP500及びSIP504)を拘束することによって、線触覚502との手術用ツール234の整列を維持する。他の実施形態では、SIP504を第2の触覚(すなわち、線触覚502と異なる仮想触覚オブジェクト)に誘導する。そのような実施形態では、TCP500及びSIP504は、異なる触覚オブジェクトに制限される。例えば、手術用ツール234が曲がっている場合、手術用ツール234の移動の所望の解放及び限定を実現するために、SIP504は曲線に制限され得る一方、TCP500は直線に制限される(または、逆の場合も同様である)。
【0061】
また、他の幾何学形状及び挙動は、SIP504及びTCP500の異なる触覚オブジェクトを使用することによって可能になり得る。例えば、TCP500は、計画された切断部または穿設経路の幾何学形状に対応する触覚オブジェクトに制限され得る一方、SIP504は、手術野内の1つ以上のオブジェクトとの手術用ツール234(またはロボットアームの他の点)のシャフトの衝突を防止またはそれに抵抗するように構成される異なる触覚オブジェクトに制限される。例えば、SIP504は、手術野内の開創器または他のツールの位置(例えば、追跡された開創器の位置)に基づいて、幾何学形状を有する触覚オブジェクトに制限され得る。別の例として、SIP504は、解剖学的特徴の位置に基づいて、幾何学形状を有する触覚オブジェクトに制限され得る。例えば、解剖学的特徴は、手術用ポートの形状、または手術用ツール234のシャフトが計画された骨調製の実行中に延在する他の切り込みまたは開口に対応する。したがって、ロボットデバイスの制御により、SIP504を制限することによって、ツールシャフトの望まない挙動を回避しながら、計画された骨調製に従って、TCP502を第1の触覚オブジェクトに制限し、SIP504を第2の触覚オブジェクトに制限して、TCP502を誘導するように構成できる。したがって、プロセス400は、手術システム200によって実行され、信頼性があり使い易い方式で正確な骨修正を提供できる。
【0062】
ここで図6図7を参照すると、例示的な実施形態により、触覚オブジェクトからの手術用ツールの取り出しを容易にするためのプロセス600は示される。図6はプロセス600のフローチャートを示す一方、図7図6のプロセス600で一緒に使用され得る触覚オブジェクトを示す。プロセス600は、例えば、プロセス300のステップ312において手術システム200によって実行できる。図6図7の例では、円柱状触覚オブジェクトが想到されているが、プロセス600は、様々な幾何学形状を有する制御オブジェクトに適応し得ることを理解されたい。
【0063】
ステップ602において、ロボットデバイスを制御して、手術用ツール234を円柱状触覚オブジェクトに拘束する。図7は、標的軸702が中心になる円柱状触覚オブジェクト700の例を示す。いくつかの実施形態では、円柱状触覚オブジェクト700は、外科的アプローチ軌道及び/または計画された骨修正(例えば、計画されたパイロット穴120)に対応する。円柱状触覚オブジェクト700は、敏感な解剖学的領域を越えて(から離れて)実質的に延在し得る。手術用ツール234が円柱状触覚オブジェクト700に拘束される場合、手術用ツール234は、手術野へのアクセスを部分的に妨害し得る。したがって、外科医が、手術用ツールを円柱状触覚オブジェクト700から外に安全方向に移動させ、外科手技の様々なステップが容易になることが望ましくなり得る。
【0064】
ステップ604において、円柱状触覚オブジェクトの境界に対してかかる手術用ツールの力234を検出する。ロボットデバイス220によって、力(例えば、ロボットアーム232の関節にかかる捻り)を検出できる。例えば、手術用ツール234に関連付けられるHIPは、円柱状触覚オブジェクト700の境界に位置付けられ得る一方、ユーザは手術用ツール234に力をかけ、境界に対してまたは境界内に手術用ツール234を押す。
【0065】
ステップ606において、ステップ604で検出された力が既定の取り出し方向に指向されているかどうかを(例えば、処理回路260によって)判定する。既定の取り出し方向は、手術用ツール234を触覚オブジェクトから出すことを可能にし得る安全な方向及び/または好都合な方向として選ばれ得る。例えば、既定の出口方向は、円柱状触覚オブジェクト700の出口領域704と、出口領域704において円柱状触覚オブジェクト700から延在する壁706とによって定義される。そのような例では、力が円柱状触覚オブジェクト700の境界に対してかかるとき、手術用ツール234のHIPが出口領域704にある場合、処理回路260は力が既定の出口方向に指向されることを判定できる。いくつかの実施形態では、図7に示されるように、出口704は、触覚オブジェクト700の長さの一部だけにまたがり、例えば、デッドゾーン708に遮断される。別の例として、いくつかの実施形態では、処理回路260は、ユーザがツールを押し出す方向を指す方向ベクトルを判定できる。そのような場合、方向ベクトルが既定の出口方向の閾値角度の範囲内にあるかどうかを判定できる。この例では、方向ベクトルが既定の出口方向の閾値角度の範囲内になる場合、力は既定の出口方向に指向されると見なされる(すなわち、ステップ606において「はい」に進む)。したがって、結果として生じる出口境界は、漏斗の形状をとり得る。
【0066】
力が既定の出口方向に指向されない場合、プロセス600はステップ602に戻り、手術用ツール234は円柱状触覚オブジェクト700に拘束される。すなわち、ロボットデバイス220を制御して、力フィードバックを提供し、手術用ツールが円柱状触覚オブジェクト700から出ないように拘束し、例えば、外科手技の1つ以上のステップが容易になる。
【0067】
力が既定の出口方向に指向される場合(ステップ606で判定されるとき)、ステップ608において、力の閾値量よりも力が大きいかどうかに関して(例えば、処理回路260によって)判定する。いくつかの実施形態では、手術用ツール234にかかる力の量は、ロボットアーム232の関節によって測定され得る。ユーザは、力の閾値量を超えることによって、触覚オブジェクトを出す要望を示し得る一方、力の閾値量が、触覚オブジェクトから偶発的または不意に出ることを実質的に防止するために十分に高く設定できる。
【0068】
力が力の閾値量未満である場合、ロボットデバイス220を制御して、手術用ツール234が触覚オブジェクトから出ないように拘束する(例えば、円柱状触覚オブジェクト700の出口領域704を通過しないように拘束する)。プロセス600がステップ602に戻り、手術用ツール234は円柱状触覚オブジェクト700に拘束され続け、外科手技のステップを実行する手術用ツール234の使用が容易になる。
【0069】
ステップ608において力が力の閾値量を超えていると判定される場合、ステップ610において、手術用ツールは既定の出口方向に触覚オブジェクトを出す。図7の例では、出口領域704に関連付けられる拘束を解除することにより、手術用ツール234は、出口領域704を通って移動し、円柱状触覚オブジェクト700から出ることを可能にする。壁706は、既定方向に手術用ツール234を軸702から離れるように誘導するための触覚境界として含まれ得る。言い換えれば、円柱状触覚オブジェクト700の出口領域704の全体にわたって、手術用ツール234を押し、既定方向に円柱状触覚オブジェクトを出すことができる。
【0070】
したがって、手術用ツール234が触覚オブジェクトから出ることが可能になることにより、手術用ツール234を触覚オブジェクトに拘束するように、ロボットデバイスを制御しない。場合によって、手術用ツール234は、出口領域704を介して及び/またはいずれかの他の触覚開始手技(例えば、図8のプロセスに続く手技)を使用して、触覚オブジェクトに再挿入できる(すなわち、触覚拘束を再開する)。場合によって、手術用ツール234が触覚オブジェクトから出るとき、触覚オブジェクトは除去される(削除等がされる)。場合によって、触覚オブジェクトが調整される、または新しい触覚オブジェクトがアクティブになり、外科手技の後続ステップが容易になる。したがって、プロセス600は外科手技によって1回以上実行され、外科手技が容易になり得る。
【0071】
ここで図8を参照すると、例示的な実施形態により、手術用ツールを仮想制御オブジェクト(例えば、触覚オブジェクト)に誘導するためのプロセス800を示すフローチャートが示される。プロセス800は、例えば、プロセス300のステップ308において手術システム200によって実行できる。
【0072】
ステップ802において、仮想制御オブジェクトを構築する。すなわち、仮想制御オブジェクトが生成され、仮想制御オブジェクトの姿勢を定義する。仮想制御オブジェクトは、図2を参照して上記に詳細に説明したように、点オブジェクト、線オブジェクト、平面オブジェクト、または3次元表面もしくは3次元体積の1つ以上を含み得る。場合によって、仮想制御オブジェクトは触覚オブジェクトである。プロセス800は、様々な形状を有する様々な仮想制御オブジェクトとともに使用するように適応し得る。
【0073】
ステップ804において、(例えば、追跡システム222によって)手術用ツール234の移動を追跡する。例えば、手術用ツール234に関連付けられる点(例えば、ツール中心点)は、経時的に判定及び更新できる。点の位置は、仮想制御オブジェクトに対して(すなわち、仮想制御オブジェクトの姿勢も定義される座標系に)定義され得る。手術用ツール234は、ユーザによる操作によって移動させられ得る。
【0074】
ステップ806において、手術用ツールの移動方向を(例えば、処理回路260によって)判定する。例えば、手術用ツール234に関連付けられる点の位置は繰り返して収集され、経時的に時系列の位置データを取得できる。2つの位置(例えば、後続の時間ステップに関する位置)を考えると、手術用ツール234の移動方向を特徴付けるベクトル(例えば、速度ベクトル)を定義できる。場合によって、使用される位置の間の距離及びそれらの収集されたデータ点の間の経過時間に基づいて、移動速度(例えば、速度ベクトルの大きさ)を判定する。場合によって、速度ベクトルの大きさが閾値を超える場合、プロセス800はステップ808に進まない。
【0075】
ステップ808において、移動方向が仮想制御オブジェクトに向かっているかどうかに関して、(例えば、処理回路260によって)判定される。例えば、ステップ806において判定された速度ベクトルは、移動方向における手術用ツールの最新の追跡位置から(例えば、無限に)延在し得る。例えば、延在する速度ベクトルが仮想制御オブジェクトを交差する場合、移動方向が仮想制御オブジェクトに向かっていることが判定され得る。延在する速度ベクトルが仮想制御オブジェクトを交差しない場合、移動方向が仮想制御オブジェクトに向かっていないことが判定され得る。様々な実施形態では、様々な他の統計的手法、座標変換等を使用して、手術用ツールの移動方向が仮想制御オブジェクトに向かっているかどうかを判定し得る。例えば、いくつかの実施形態では、標的体積は、仮想制御オブジェクトにおいて定義され(例えば、そのオブジェクトの周囲に、それに隣接する、そこから延在するように定義され)、延在する速度ベクトルが標的体積を交差する場合、移動方向は仮想制御オブジェクトに向かっていると判定され得る。仮想制御オブジェクトが線である場合、標的体積は、例えば、線が中心にある円柱として定義され得る。
【0076】
移動方向が仮想制御オブジェクトに向かっていない場合、プロセス800はステップ804に戻り、手術用ツール234の移動を追跡する。移動方向が仮想制御オブジェクトに向かうまで、ステップ804~808は繰り返され得る。
【0077】
移動方向が仮想制御オブジェクトに向かっていると判定する場合、ステップ810において、ロボットデバイス220を制御して、力を提供し、手術用ツール234を仮想制御オブジェクトに誘導する。例えば、正の補助力が提供され得、その補助力により、ユーザが手術用ツール234を仮想制御オブジェクトに向かって移動させることを補助する。正の補助力は、ユーザによって供給された外力なしで手術用ツール234を独立して移動させるのに不十分であり得る。場合によって、ステップ810で加えられた力は、手術用ツールを仮想制御オブジェクトに(ユーザ操作なしで)自動的に移動させる。別の例として、いくつかの実施形態では、力が触覚境界(例えば、崩れ触覚境界)として提供され、手術用ツール234が仮想制御オブジェクトから離れて移動しないように及び/または仮想制御オブジェクトに向かって移動方向がずれないように拘束される。
【0078】
したがって、手術システム200はプロセス800を実行して、ユーザが仮想制御オブジェクトに向かう手術用ツールの移動が開始したことに応答して、ユーザが手術用ツールを仮想制御オブジェクトに移動させることが容易になり得る。例えば、仮想制御オブジェクトから離れる手術用ツールの様々な移動は、仮想制御オブジェクトの使用が望まれる前に、手術用ツール234、ロボットアーム232、解剖学的構造、他の手術用機器等を適切に位置付けることが望まれ得る。プロセス800は、ユーザが利用し使いやすい効率的なワークフローを提供し、手術用ツールが仮想制御オブジェクトに向かって移動するまで(例えば、仮想制御オブジェクトが位置する手術野に向かうまで)、手術用ツールが自由に移動でき、その点において、システム200が仮想制御オブジェクトへの手術用ツールのガイダンスを自動的に開始する。
【0079】
ここで図9図10を参照すると、例示的な実施形態により、減衰ゾーンを含む触覚相互作用を提供するためのプロセスが示される。図9は減衰ゾーンを含む触覚相互作用を提供するためのプロセス900を示す一方、図10は減衰ゾーンを含む例示的な触覚オブジェクトを示す。プロセス900は、例えば、プロセス300のステップ310において手術システム200によって実行できる。円柱状触覚オブジェクトは例示するために図10に示されているが、図9図10の特徴は、様々な幾何学形状の仮想制御オブジェクトとともに使用するように適応できることを理解されたい。
【0080】
ステップ902において、減衰ゾーンを有する触覚オブジェクトを構築する(例えば、処理回路260によって仮想空間内に定義される)。減衰ゾーンは、触覚オブジェクトのサブ部として及び/または触覚オブジェクト内の領域として定義され得る。減衰ゾーン1002を有する例示的な触覚オブジェクト1000は図10に示される。図10に示されるように、触覚オブジェクト1000は円柱状触覚オブジェクトであり、減衰ゾーン1002は触覚オブジェクト1000に位置付けられる円柱状ディスクである。図10の例では、触覚オブジェクト1000及び減衰ゾーン1002は等しい直径を有する一方、減衰ゾーン1002の高さは、触覚オブジェクト1000の高さよりもかなり低くなり、共有軸1004が中心にある。他の実施形態では、様々な相対的サイズ及び寸法は可能である。
【0081】
いくつかの例では、減衰ゾーン1002は、解剖学的特徴(例えば、骨)の表面に近接する触覚オブジェクト1000に沿って位置付けられる。例えば、減衰ゾーン1002は骨の表面の外側にあり得る。そのような場合、追跡された手術用ツール234が触覚オブジェクト1000によって拘束されながら骨に近づくとき、手術用ツール234は最初に減衰ゾーン1002に達する。
【0082】
ステップ904において、手術用ツール234が減衰ゾーン1002の第1の側に入っていることが(例えば、追跡システム222からのデータを使用して、処理回路260によって)判定される。図10の例では、手術用ツール234のTCPの位置は減衰ゾーン1002に対して追跡され得、TCPが減衰ゾーン1002の第1の表面1006に交差するとき、手術用ツール234は減衰ゾーン1002の第1の側に入っていると判定され得る。
【0083】
ステップ906において、ロボットデバイス220を制御して、減衰ゾーンを通って手術用ツールの移動に部分的に抵抗する触覚フィードバックを提供する。例えば、減衰ゾーンに基づくロボットデバイス220の制御により、手術用ツール234が減衰ゾーンを通過するとき、手術用ツール234の移動を遅らせ得る(例えば、事前設定した速度を超えないように遅らせる)。減衰ゾーンが骨の表面に位置付けられる場合、したがって、減衰ゾーンは、手術用ツール234と骨との間の最初の衝撃で手術用ツール234の並進速度を管理する(例えば、減速する)ように作動し得る。したがって、手術用ツール234の並進速度を減速することによって、プロセス900によって提供される減衰ゾーンは、スカイビングを減らし、切断穴または孔/穿穴の品質を高くし、切断または穴留置の精度を向上させる。
【0084】
図9図10では、上記に説明したように、ロボットデバイス220の移動が減衰される減衰ゾーンが示されているが、他の実施形態では、他の影響に関連付けられる他のタイプのゾーンが提供され、その場合、ステップ906は状況に応じて適応する。例えば、いくつかの実施形態では、減衰ゾーンは加速ゾーンと置き換えられ、ステップ906において、手術用ツールが加速ゾーンを通過するとき、ロボットデバイス220が手術用ツール234の速さを増加させる。別の例として、いくつかの実施形態では、減衰ゾーンは、引力ゾーン(ロボットデバイス220を制御して、引力ゾーン(例えば、引力ゾーンの中間点)の位置に向かって指向される力を手術用ツール234に提供する)、または反発ゾーン(ロボットデバイス220を制御して、反発ゾーンの位置から離れて指向される力を手術用ツール234に提供する)に置き換えられる。
【0085】
ステップ908において、手術用ツールが減衰ゾーンの第2の側から出たことが(例えば、追跡システム222からのデータを使用して、処理回路260によって)判定される。図10の例では、手術用ツール234のTCPの位置は減衰ゾーン1002に対して追跡され得、TCPが減衰ゾーン1002の第2の側1008を通過するとき、手術用ツール234は減衰ゾーン1002の第2の側から出ていると判定され得る。
【0086】
ステップ910において、手術用ツールが減衰ゾーンの第2の側から出ているとの判定に応答して、減衰ゾーンを触覚オブジェクトから(例えば、処理回路260によって)除去する。ステップ906において適用される抵抗フィードバックが適用されない。いくつかの実施形態では、手術用ツールは、ステップ906の抵抗を受けることなく、減衰ゾーンによって事前に占有された領域を繰り返して通過できる。したがって、手術システム200は、減衰抵抗を提供し、手術用ツール234と骨との最初の接触が容易になり、最初の接触後にそのような抵抗を自動的に除去するように構成できる。
【0087】
ここで図11図13を参照すると、例示的な実施形態により、手術用ツールまたはロボットアーム上に搭載されたボタン(キー、トリガ、スイッチ、圧力センサ、手位置センサ等)によってユーザから受信された入力に応答して触覚相互作用を調整するためのプロセスを示すフローチャートが示される。図2を参照すると、図11図13のプロセスで想到されることとして、ボタンが、ロボットアーム232または手術用ツール234のグリップ領域またはハンドル領域上に位置付けられ、それにより、ボタンはユーザ(例えば、外科医)に容易に利用可能である一方、ユーザは、外科手技の実行中にロボットアーム232及び手術用ツール234を操作する。ユーザがロボットアーム232及び/または手術用ツール234のユーザの握りを変える必要がなく、ならびにユーザがユーザの視覚または注目を手術野から離れるように変える必要がなく、ボタンはユーザによって選択され得る。図11図13のプロセスは、例えば、図3のステップ310の一部として、手術システム200によって実行され得る。
【0088】
図11はプロセス1100のフローチャートを示し、プロセス1100では、ボタンによって、ユーザが第1の触覚オブジェクト及び第2の触覚オブジェクトを切り替えることを可能にする。ステップ1102において、手術用ツール234は第1の触覚オブジェクトに拘束される。第1の触覚オブジェクトは、本明細書に説明される寸法、形状等のいずれかを有し得る。ステップ1104において、電気信号は(例えば、処理回路260で)受信され、その電気信号は手術用ツールまたはロボットアーム上に搭載されたボタンのプッシュを示す。ステップ1106において、手術用ツール234の触覚制御は、第1の触覚オブジェクトから第2の触覚オブジェクトに切り替えられ、その結果、ステップ1108において、手術用ツール234は第2の触覚オブジェクトに拘束される。場合によって、ボタンをプッシュして、第1の触覚オブジェクトに基づいて、再度、制御に戻すことができる。
【0089】
プロセス1100は、第1の触覚オブジェクト及び第2の触覚オブジェクトの相対的サイズ、形状等に基づいて、様々な利点をもたらし得る。いくつかの実施形態では、第1の触覚オブジェクトは第2の触覚オブジェクトのサブ部である(すなわち、第2の触覚オブジェクトは第1の触覚オブジェクトよりも広範囲の運動が可能になる)。そのような場合、ユーザは、ボタンを選択して、手術用ツール234が第1の触覚オブジェクトに基づいて制御され手術用ツールが達しないように拘束されたエリアに達することが可能になり得る。一例は、平面触覚オブジェクトのセットであり、第1の触覚オブジェクトは仮想的に判定された範囲の平面切断部に対応する一方、第2の触覚オブジェクトは大きい同一平面上のオブジェクトである。外科医の経験及び手術中の観察に基づいて、外科医は、ボタンをプッシュして、必要に応じて、手術中に切断部を延在できる。別の例として、第1の触覚オブジェクト及び第2の触覚オブジェクトは部分的にだけ重なり得る。そのような例では、プロセス1100では、外科手技の異なるステップの切り替えが容易になり得る。いくつかの実施形態では、手術用ツールが触覚オブジェクトの両方の内部に現在位置しない限り、処理回路260は触覚制御オブジェクトの切替を防止する。
【0090】
図12はプロセス1200を示し、プロセス1200では、ボタンによって、ユーザがユーザによってかけられた力の方向に触覚オブジェクトを延在させることを可能にする。ステップ1202において、手術用ツールは第1の触覚オブジェクトに拘束される。第1の触覚オブジェクトは、本明細書に説明される寸法、形状等のいずれかを有し得る。ステップ1204において、電気信号は(例えば、処理回路260で)受信され、その電気信号は手術用ツールまたはロボットアーム上に搭載されたボタンのプッシュを示す。
【0091】
ステップ1206において、ボタンからの信号に応答して、手術用ツールにかかる力の方向を(例えば、処理回路260によって)判定する。手術用ツールのHIPが第1の触覚オブジェクトの境界に位置付けられ得、それにより、触覚制御相互作用は、力の方向に力が手術用ツールをさらに移動させることを防止する。そのようなシナリオでは、ボタンのプッシュは、ユーザが力の方向に手術用ツールをさらに移動させたいと望むことを示す。したがって、ステップ1208において、第1の触覚オブジェクトが力の方向に延在し、したがって、第1の触覚オブジェクトによって拘束される前に、当該方向に手術用ツールをさらに移動させることを可能にする。第1の触覚オブジェクトは、ステップ1208において、事前設定した距離または体積によって延在し得る。次に、手術用ツールは延在した第1の触覚オブジェクトによって拘束される。
【0092】
したがって、プロセス1200では、ユーザが選択した特定の方向に第1の触覚オブジェクトを越えて、ユーザにより手術用ツールを延在することが容易になり得る。例えば、場合によって、第1の触覚オブジェクトに基づく制御により、外科医が手術用ツールで修正することを望む解剖学的特徴の全範囲に手術用ツールが達しないように抑制され得る。次に、外科医は、手術用ツールを標的特徴に向かって押し出し、ボタンを選択して、触覚オブジェクトを標的特徴に向かって延在させ得る。したがって、プロセス1200は、触覚オブジェクトへの手術中の便利な調整が容易になる。
【0093】
図13はプロセス1300のフローチャートを示し、プロセス1300では、ボタンによって、ユーザが仮想ツールの仮想寸法を調整することが可能になり、それによって、仮想制御相互作用を調整する。プロセス1300によって想到される実施形態では、手術用ツールに関連付けられる触覚相互作用点(例えば、HIP)を追跡することによって、触覚制御相互作用を実現する。HIPは1次元点である。処理回路は、HIPの位置に基づいて、手術用ツールの1つ以上の仮想寸法を使用して、手術用ツールによって占有された体積を決定する。例えば、球状バーについて、HIPは球状バーの中心に位置し得、バーの半径を使用して、HIP位置及び半径寸法に基づいて、仮想空間内で、球状バーによって占有された3次元体積を決定し得る。手術用ツールによって占有された体積(または手術用ツールの境界)と触覚オブジェクトとの相互作用に基づいて、触覚制御は提供される。球状バーの例では、HIPは、少なくとも球状バーの半径寸法だけ触覚境界からずれた位置に拘束され得る。そのような場合、球状バーの仮想半径を変更することで、HIPが触覚境界の近くに移動することを可能にし得る。したがって、手術用ツールの仮想寸法を修正することによって、ロボットデバイスの制御を変えることができる。
【0094】
ステップ1302において、手術用ツールは第1の触覚オブジェクトに拘束される。第1の触覚オブジェクトは、本明細書に説明される寸法、形状等のいずれかを有し得る。ステップ1304において、電気信号は(例えば、処理回路260で)受信され、その電気信号は手術用ツールまたはロボットアーム上に搭載されたボタンのプッシュを示す。ステップ1306において、ボタンからの信号に応答して、手術用ツールの仮想寸法を(例えば、処理回路260によって)調整する。例えば、手術用ツールが球状バーであるシナリオでは、球状バーの仮想半径が小さくなり得る。
【0095】
ステップ1308において、ロボットデバイスを使用して、手術用ツールの調整された仮想寸法に基づいて、手術用ツールを第1の触覚オブジェクトに拘束する。手術用ツールの仮想寸法が小さくなる(例えば、半径が減少する)例では、手術用ツールは、ステップ1302と比較して、ステップ1308において広範囲の運動がもたらされ得る。そのような場合、外科医が、手術用ツールがステップ1302において手術用ツールが達しないように拘束される位置に達することを可能にすることを望むとき、外科医はボタンをオンにし得る。手術用ツールの仮想中心点の位置は、また、(例えば、ステップ1306において)手術用ツールの追跡位置に対してシフトされ得、それにより、例えば、小さくなったサイズの仮想ツールは、元のサイズの仮想ツールの境界に合わせて整列される。このシフトにより、境界線に沿って運動範囲を保持しながら、手術用ツールにいくつかの方向における広範囲の運動がもたらされ得る。例えば、手術用ツールの仮想寸法が小さくなるとき、手術用ツールの遠位端に向かって仮想中心点がシフトすると、手術用ツールを元の切断部の深さに制限しながら、横方向の運動範囲の増加(すなわち、手術用ツールの軸に対して直角である運動範囲の増加)を可能にし得る。したがって、プロセス1300では、手術計画に従って手術用ツールによって修正できる解剖学的特徴の範囲に対する手術中の微調整が容易になり得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、ボタンを繰り返して選択して、手術用ツールの1つ以上の仮想寸法に対する調整の繰り返しをもたらし得る(例えば、ますます小さいサイズになるようにステップを行い、2つの利用可能なサイズを切り替え、3つの以上の利用可能なサイズに連続的に移行する等を行う)。そのような多くの起こり得ることは、本開示の範囲内にある。
【0097】
他の実施形態では、入力は、別のソース(例えば、フットペダル、音声起動、マウス、キーボード、タッチスクリーン等)から受信される。他の実施形態では、ユーザ入力(図11図13に説明される、ボタンにおいて生じるユーザ入力)は、手術用ツール及び/またはロボットデバイスの追跡位置または挙動に基づいて、自動応答に置き換えられる。例えば、いくつかの実施形態では、触覚オブジェクトの境界における手術用ツールの滞在時間を検出する。滞在時間が閾値時間を超えるとき、触覚制御は、ステップ1106~1108、ステップ1206~1210、及び/またはステップ1306~1308において説明されるように修正され得る。そのような様々な修正は本開示の範囲内にある。
【0098】
上記に言及したように、図4図13に示される様々な特徴の全ての組み合わせは本開示の範囲内にある。例えば、プロセス400、プロセス600、プロセス800、プロセス900、プロセス1100、プロセス1200、及びプロセス1300の1つ以上のステップを使用して、プロセス300を実施できる。さらに、本明細書に説明される様々な特徴、方法のステップ等は、全体的及び部分的な臀部、膝、及び肩関節形成手術を含む様々な外科手技を容易にする使用、ならびに非外科タスクを実行する際の使用に適応し得ることを理解されたい。
【0099】
様々な例示的な実施形態に示されるシステム及び方法の構成及び配置は例証にすぎない。ほんのわずかだけの実施形態が本開示に詳細に説明されているが、多くの修正は可能である(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状及び割合、パラメータの値、材料の使用、色、配向等の変更は可能である)。例えば、要素の位置は逆になり得またはそうでなければ変更され得、個別の要素または位置の性質または数は変わり得るまたは変更され得る。したがって、そのような全ての修正は、本開示の範囲内に含まれることが意図される。いずれかのプロセスまたは方法のステップの順番または順序は、代替の実施形態に従って、変更され得るまたは並べ直され得る。本明細書に説明されるシステムは、本明細書に説明される方法を実行するように適応し得る。他の置換、修正、変化、及び省略は、本開示の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態の設計、動作状態、及び配置になされ得る。
【0100】
本明細書に利用される場合、用語「ほぼ(approximately)」、「約(about)」、「実質的に(substantially)」、及び同様の用語は、本開示の主題に関係する当業者によって、一般的な語法及び一般に認められた語法と一致する広義の意味を有することが意図される。これらの用語が、これらの特徴の範囲を提供される正確な数値範囲に限定することなく、説明及び主張される特定の特徴の記述を可能にすることを意図することが本開示を精査する当業者によって理解されるはずである。したがって、これらの用語は、説明される主題のわずかなまたは重要ではない修正または改変を示すと解釈すべきであり、本開示の範囲内にあると見なされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13