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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】治療計画の品質を確認すること
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
A61N5/10 P
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022537356
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 EP2020085227
(87)【国際公開番号】W WO2021122203
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】19217514.9
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521505471
【氏名又は名称】レイサーチ ラボラトリーズ,エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ホルムバーグ,リッカード
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-536190(JP,A)
【文献】特表2019-526380(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0140300(US,A1)
【文献】国際公開第2018/235649(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/185063(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/088075(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/048575(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療計画(12)の品質を確認するための方法であって、治療計画は、放射線の分布を指定してそれにより放射線を計画標的体積(3)に与え、前記方法は、品質保証装置(10)によって行われ、かつ
治療計画および対応する第1の線量を得る工程(40)であって、前記治療計画は、治療計画システム(1)において計算されており、前記第1の線量は、前記治療計画を用いて患者に蓄積される予測線量である工程(40)と、
二次線量計算アルゴリズムを用いて前記治療計画によって蓄積される線量である二次線量の計算を開始する工程(42)と、
定められた幾何学的体積にわたって前記第1の線量および前記二次線量を比較することにより比較統計的測定値の信頼区間を繰り返し計算する工程(44)と、
前記信頼区間が少なくとも1つの予め定められた基準よりも良好であるときに前記二次線量の計算を中断する工程(46)であって、前記治療計画(12)は品質保証に合格しているとみなされる工程(46)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記二次線量における各ボクセルは前記ボクセルのための現在の信頼区間の推定値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記定められた幾何学的体積は前記計画標的体積(3)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記定められた幾何学的体積はリスク臓器(5)の体積である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記定められた幾何学的体積は前記計画標的体積(3)およびリスク臓器(5)の体積を包含する体積である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記比較統計的測定値の信頼区間を計算する工程(44)は、前記二次線量におけるボクセルのために利用可能な信頼区間と可能な二次線量の広がりとに基づいている、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記比較統計的測定値は、前記第1の線量および前記二次量において対応するボクセル(9)間での差測定値を累積することにより類似度を計算することに基づいている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記比較統計的測定値は、第3の値と第4の値との差を見つけることにより類似度を計算することに基づいており、ここでは前記第3の値は前記定められた幾何学的体積内の全てのボクセル(9)における第1の線量の線量値を累積することにより得られ、前記第4の値は前記定められた幾何学的体積の全てのボクセル(9)における前記二次線量の線量値を累積することにより得られる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
治療計画(12)の品質を確認するための品質保証装置(10)であって、治療計画は、放射線の分布を指定してそれにより放射線を計画標的体積(3)に与え、前記品質保証装置(10)は、
プロセッサ(60)と、
前記プロセッサによって実行されるときに、前記品質保証装置(10)に、
治療計画および対応する第1の線量を得、前記治療計画は、治療計画システム(1)において計算されており、前記第1の線量は、前記治療計画を用いて患者に蓄積される予測線量であり、
二次線量計算アルゴリズムを用いて前記治療計画によって蓄積される線量である二次線量の計算を開始し、
定められた幾何学的体積にわたって前記第1の線量および前記二次線量を比較することにより比較統計的測定値の信頼区間を繰り返し計算し、かつ
前記信頼区間が少なくとも1つの予め定められた基準よりも良好であるときに前記二次線量の計算を中断し、前記治療計画(12)は品質保証に合格しているとみなされる
ようにさせる命令(67)を記憶しているメモリ(64)と、
を備える品質保証装置(10)。
【請求項10】
前記二次線量における各ボクセルは前記ボクセルのための現在の信頼区間の推定値を含む、請求項9に記載の品質保証装置(10)。
【請求項11】
前記定められた幾何学的体積は前記計画標的体積(3)である、請求項9または10に記載の品質保証装置(10)。
【請求項12】
前記定められた幾何学的体積はリスク臓器(5)の体積である、請求項9または10に記載の品質保証装置(10)。
【請求項13】
前記定められた幾何学的体積は前記計画標的体積(3)およびリスク臓器(5)の体積を包含する体積である、請求項9または10に記載の品質保証装置(10)。
【請求項14】
治療計画(12)の品質を確認するためのコンピュータプログラム(67、91)であって、治療計画は、放射線の分布を指定してそれにより放射線を計画標的体積(3)に与え、前記コンピュータプログラムは、品質保証装置(10)上で走らされるときに、前記品質保証装置(10)に、
治療計画および対応する第1の線量を得、前記治療計画は、治療計画システム(1)において計算されており、前記第1の線量は、前記治療計画を用いて患者に蓄積される予測線量であり、
二次線量計算アルゴリズムを用いて前記治療計画によって蓄積される線量である二次線量の計算を開始し、
定められた幾何学的体積にわたって前記第1の線量および前記二次線量を比較することにより比較統計的測定値の信頼区間を繰り返し計算し、かつ
前記信頼区間が少なくとも1つの予め定められた基準よりも良好であるときに前記二次線量の計算を中断し、前記治療計画(12)が品質保証に合格しているとみなされる
ようにさせるコンピュータプログラムコードを含む、コンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムおよびそこに前記コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読手段を備えたコンピュータプログラム製品(64、90)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は放射線療法の分野に関し、特に放射線療法のための治療計画の品質を確認することに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線療法では、標的体積に1回または数回の治療用ビームを照射する。様々な種類の治療用ビーム、例えば光子、電子およびイオンビームを使用することができる。標的体積は癌腫瘍を表すことができる。治療用ビームは組織を透過し、かつ吸収された放射線線量を送達して腫瘍細胞を死滅させる。
【0003】
治療計画システムを使用して、どのようにして放射線送達システムにより線量を送達するべきかを定める治療計画を決定する。治療計画が決定されるときに、品質保証を使用して治療計画が十分な品質であることを保証することができる。
【0004】
WO 2018/048575 A1(国際公開第2018/048575号公報)は、放射線治療計画のモデルを学習して放射線療法線量分布を予測するためのシステムおよび方法を開示している。WO 2018/077709 A1(国際公開第2018/077709号公報)は、反復的治療計画のためのグラフィカルユーザインタフェースを開示している。EP 3 103 541 A1(欧州特許出願公開第3103541号公報)は、放射線療法のための線量測定技術の改良を開示している。
【0005】
先行技術において行われる品質保証は非常に時間がかかり、完了させるのに数時間を要する可能性がある。これは実際には、例えば治療計画を治療の当日に患者の幾何学的形状に基づいて決定する場合には実行可能でない。
【発明の概要】
【0006】
1つの目的は、より時間効率良く治療計画の品質保証を提供することにある。
【0007】
第1の態様によれば、治療計画の品質を確認するための方法が提供されており、そこで、治療計画は、放射線の分布を指定してそれにより放射線を計画標的体積に与える。本方法は、品質保証装置によって行われ、治療計画および対応する第1の線量を得る工程であって、治療計画は、治療計画システムにおいて計算されており、第1の線量は、治療計画を用いて患者に蓄積されることになる予測線量である工程と、二次線量計算アルゴリズムを用いて治療計画によって蓄積される線量である二次線量の計算を開始する工程と、定められた幾何学的体積にわたって第1の線量と二次線量とを比較することにより比較統計的測定値の信頼区間を繰り返し計算する工程と、信頼区間が少なくとも1つの予め定められた基準よりも良好であるときに二次線量の計算を中断する工程であって、その場合には、治療計画は品質保証に合格しているとみなされる工程とを含む。
【0008】
二次線量における各ボクセルは、ボクセルのための現在の信頼区間の推定値を含んでいてもよい。
【0009】
定められた幾何学的体積は計画標的体積であってもよい。
【0010】
定められた幾何学的体積はリスク臓器であってもよい。
【0011】
定められた幾何学的体積は計画標的体積およびリスク臓器を包含してもよい。
【0012】
比較統計的測定値の信頼区間を計算する工程は、二次線量におけるボクセルのために利用可能な信頼区間と可能な二次線量の広がりとに基づいていてもよい。
【0013】
比較統計的測定値は、第1の線量および第2の線量における対応するボクセル間の差測定値を累積することにより類似度を計算することに基づいていてもよい。
【0014】
比較統計的測定値は、第3の値と第4の値との差を見つけることにより類似度を計算することに基づいていてもよく、第3の値は定められた幾何学的体積内の全てのボクセルにおける第1の線量の線量値を累積することにより得られ、第4の値は定められた幾何学的体積の全てのボクセルにおける第2の線量の線量値を累積することにより得られる。
【0015】
第2の態様によれば、治療計画の品質を確認するための品質保証装置が提供されており、そこで、治療計画は、放射線の分布を指定してそれにより放射線を計画標的体積に与える。品質保証装置は、プロセッサと、プロセッサによって実行されるときに、品質保証装置に、治療計画および対応する第1の線量を得、治療計画は、治療計画システムにおいて計算されており、第1の線量は、治療計画を用いて患者に蓄積されることになる予測線量であり、二次線量計算アルゴリズムを用いて治療計画によって蓄積される線量である二次線量の計算を開始し、定められた幾何学的体積にわたって第1の線量と二次線量とを比較することにより比較統計的測定値の信頼区間を繰り返し計算し、かつ信頼区間が少なくとも1つの予め定められた基準よりも良好であるときに二次線量の計算を中断し、その場合には、治療計画は品質保証に合格しているとみなされるようにさせる命令を記憶しているメモリとを備える。
【0016】
二次線量における各ボクセルはボクセルのための現在の信頼区間の推定値を含んでいてもよい。
【0017】
定められた幾何学的体積は計画標的体積であってもよい。
【0018】
定められた幾何学的体積はリスク臓器であってもよい。
【0019】
定められた幾何学的体積は計画標的体積およびリスク臓器を包含してもよい。
【0020】
第3の態様によれば、治療計画の品質を確認するためのコンピュータプログラムが提供されており、そこで、治療計画は、放射線の分布を指定してそれにより放射線を計画標的体積に与える。コンピュータプログラムは、品質保証装置上で走らされるときに、品質保証装置に、治療計画および対応する第1の線量を得、治療計画は、治療計画システムにおいて計算されており、第1の線量は、治療計画を用いて患者に蓄積されることになる予測線量であり、二次線量計算アルゴリズムを用いて治療計画によって蓄積される線量である二次線量の計算を開始し、定められた幾何学的体積にわたって第1の線量と二次線量とを比較することにより比較統計的測定値の信頼区間を繰り返し計算し、かつ信頼区間が少なくとも1つの予め定められた基準よりも良好であるときに二次線量の計算を中断し、その場合には、治療計画は品質保証に合格しているとみなされるようにさせるコンピュータプログラムコードを含む。
【0021】
第4の態様によれば、第3の態様に係るコンピュータプログラムと、そこにコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読手段とを備えるコンピュータプログラム製品が提供される。
【0022】
一般に特許請求の範囲で使用されている全ての用語は、本明細書において特に明示的に定義しない限り当該技術分野でのそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。「一/一つ/その要素、装置、構成要素、手段、工程など」への全ての言及は、特に明示的に記載しない限り、当該要素、装置、構成要素、手段、工程などの少なくとも1つの例に公に言及しているものとして解釈されるべきである。本明細書に開示されている任意の方法の工程は明示的に記載しない限り、開示されている正確な順序で行う必要はない。
【0023】
次に、添付の図面を参照しながら態様および実施形態を例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本明細書に示されている実施形態を適用することができる環境を示す概略図である。
図2A】品質保証装置の実施形態を示す概略図である。
図2B】品質保証装置の実施形態を示す概略図である。
図3】治療計画の品質を確認するための方法を示すフローチャートである。
図4図1の品質保証装置の構成要素を示す概略図である。
図5】コンピュータ可読手段を含むコンピュータプログラム製品の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に本発明の特定の実施形態が示されている添付の図面を参照しながら、以下に本開示の態様をより完全に説明する。但しこれらの態様は、多くの異なる形態で具体化することができ、限定的なものとして解釈されるべきではなく、それどころかこれらの実施形態は、本開示を徹底的かつ完全なものとし、かつ本発明の全ての態様の範囲を当業者に完全に伝えるために例として提供されている。同様の番号は本明細書全体を通して同様の要素を指す。
【0026】
図1は、本明細書に示されている実施形態を適用することができる環境を示す概略図である。治療計画システム1は、治療計画12の形態で放射線療法の放射線の分布を決定する。治療計画12は、以下により詳細に説明されている治療計画12を評価する品質保証装置10に提供される。なお品質保証装置10は、ここでは治療計画システム1の外部にあるものとして示されているが、品質保証装置10は治療計画システム1の内部にあってもよい。
【0027】
品質保証の結果13は、品質保証装置10から治療計画システム1に提供される。結果13がプラスである場合、治療計画システム1は先に進み、対応する治療計画12を放射線送達システム2に提供する。治療計画12に基づいて、放射線送達システム2はリスク臓器5への放射線を回避しながら患者8の標的体積3に放射線を与えるために、ビーム7を生成する。
【0028】
放射線送達システム2がビームを生成し、かつ線量を送達する方法は当該産業それ自体において周知であるように、治療法(光子、電子またはイオンなど)によって異なる。但し共通の目標は、腫瘍が位置している場所に応じて膀胱、脳および直腸などのリスク臓器5への線量を最小限に抑えながら、処方された線量に可能な限り近い線量を標的体積(すなわち腫瘍)3に送達することである。
【0029】
図2Aおよび図2Bは、品質保証装置10の2つの実施形態を示す概略図である。最初に図2Aの実施形態について説明する。
【0030】
評価装置モジュール20は治療計画12を評価する。その評価は、(治療計画システムからの)治療計画12およびこの計画の線量(ここでは第1の線量として表されている)を評価することに基づいている。第1の線量を線量計算機22aによって計算された二次線量14と比較する。評価がプラスである場合、評価装置20は結果13を治療計画システムに送信し、線量計算機は二次線量のその計算を終了する。また二次線量14の計算が終了条件に達し、かつ評価装置がプラスの評価をまだ決定していない場合には、結果13はマイナスである。図2Aでは、線量計算機22aは品質保証装置10の内部にある線量計算機である。
【0031】
次に図2Bを見ると本実施形態では、線量計算機22bは品質保証装置10の外部にある。
【0032】
図3は、治療計画の品質を確認するための方法を示すフローチャートである。上で説明したように、治療計画は放射線の分布を指定してそれにより放射線を計画標的体積に与える。本方法は品質保証装置により行われる。
【0033】
治療計画を得る工程40では、品質保証装置は治療計画および対応する第1の線量を得る。第1の線量は治療計画によって定められる。治療計画は治療計画システムにおいて計算され、治療計画システムから得ることができる。第1の線量は、治療計画を用いて患者に蓄積される予測線量である。それは品質保証に関して評価される治療計画である。
【0034】
計算を開始する工程42では、品質保証装置は、線量計算機によって計算される二次線量の計算を開始する。二次線量は治療計画によって蓄積されるように定められた線量であり、これはボクセルごとに計算することができる。二次線量は二次線量計算アルゴリズムを用いて計算される。二次線量における各ボクセルはボクセルのための現在の信頼区間の推定値を含むことができる。二次線量計算アルゴリズムは、第1の線量を計算する治療計画の線量計算アルゴリズムとは異なる。そうでなければ第1および第2の線量のあらゆる比較は、それらが同じ量になるので無意味なものとなる。例えば第1の線量計算アルゴリズムは、組織に蓄積されている線量全体の分析モデルに基づいていてもよく、第2の線量アルゴリズムは粒子輸送のモンテカルロ・シミュレーションに基づいていてもよい。なお二次線量の計算は、二次線量の計算が中断されるまでこの方法の全ての他の工程と並行して継続することができる。
【0035】
信頼区間を計算する工程44では、品質保証装置は定められた幾何学的体積にわたって第1の線量と二次線量とを比較することにより、比較統計的測定値の信頼区間を繰り返し計算する。
【0036】
定められた幾何学的体積は、この比較がなされる任意の好適な幾何学的体積であってもよい。例えば、定められた幾何学的体積は計画標的体積、リスク臓器、または計画標的体積およびリスク臓器を包含する体積であってもよい。また定められた幾何学的体積は患者の体全体であってもよい。
【0037】
比較統計的測定値の信頼区間の計算は、二次線量におけるボクセルのために利用可能な信頼区間と、可能な二次線量の広がり(例えばモンテカルロ・シミュレーションからの各ボクセルにおける線量の広がり)とに基づいていてもよい。
【0038】
比較統計的測定値は、例えば第2の線量の標準偏差に基づいていてもよい。
【0039】
一実施形態では信頼区間は、
【数1】
に従って計算される。
【0040】
式中、CIは信頼区間を意味し、Sは類似度演算(例えば以下に説明するようなもの)であり、TPは治療計画であり、DIDは第2の線量であり、σID(t)は第2の線量の標準偏差であり、これは二次線量が連続的に計算および評価されるため時間に依存している。言葉で表現した場合、信頼区間は第1の類似度と第2の類似度との間隔である。第1の類似度は、(治療計画の)第1の線量と「第2の線量およびその標準偏差の合計」との類似度である。第2の類似度は、第1の線量と「第2の線量からその標準偏差を差し引いたもの」との間の類似度である。
【0041】
一実施形態では2つの線量間の類似度は、
【数2】
に従って計算される。
【0042】
式中、Sは類似度であり、D1は第1の線量であり、D2は第2の線量であり、vは定められた幾何学的体積であり、
【数3】
はボクセルである。言葉で表現した場合、類似度は、第1の線量および第2の線量における対応するボクセル間の差測定値を累積することにより計算することができる。
【0043】
一実施形態では類似度は、
【数4】
に従って計算される。
【0044】
言葉で表現した場合、類似度は第3の値と第4の値との差を見つけることに基づいていてもよく、第3の値は定められた幾何学的体積内の全てのボクセルにおける第1の線量の線量値を累積することにより得られ、第4の値は定められた幾何学的体積の全てのボクセルにおける第2の線量の線量値を累積することにより得られる。次いでこの差は、それを幾何学的体積の体積で割ることにより正規化される。
【0045】
条件付きの信頼区間十分良好工程45では、品質保証装置は、工程44で計算した信頼区間が十分に良好であるか否かを決定する。これは、計算された信頼区間を少なくとも1つの予め定められた基準と比較することにより決定することができる。少なくとも1つの基準は1つ以上の閾値であってもよい。一実施形態では、少なくとも1つの予め定められた基準は単一の閾値である。例えば予め定められた基準は、信頼区間が特定の割合よりも小さいときに十分に良好であるとみなされるように定めることができる。この比較は、定められた幾何学的体積の各ボクセルについて行うことができる。この場合に全てのボクセルが、品質保証に合格するのに十分に良好である必要がある。
【0046】
信頼区間が十分に良好であれば、本方法はQA合格工程46に進む。そうでなければ、本方法は工程47で行われる条件付きの計算に進む。
【0047】
QA合格工程46では、品質保証装置は二次線量の計算を中断する。この工程では、治療計画は品質保証に合格しているとみなされる。
【0048】
工程47で行われる条件付きの計算では、品質保証装置は二次線量の計算を行うか否かを決定する。この計算を行う場合、本方法はQA不合格工程49に進む(工程47において信頼区間が本方法を実施するのに十分に良好であるとみなすことができないため)。二次線量の計算を行わない場合には、本方法は任意に休止期間(図示せず)後に、条件付きの信頼区間十分良好工程45に戻る。
【0049】
QA不合格工程49では、この工程は信頼区間が十分に良好でないときおよび二次線量の計算が行われるときにのみ行うことができるため、品質保証装置は品質保証に不合格であると決定する。
【0050】
本明細書に示されている実施形態を用いて、二次線量が品質が十分に良好であることを示すとすぐに品質保証を確認し、それ以上の時間を品質保証のためのさらなる線量計算に費やす必要はなくなる。品質保証に合格するために各ボクセルが十分に良好であることが必要であった先行技術とは異なり、この方法は、定められた体積全体の比較に基づいている。これにより先行技術よりも著しく迅速な品質保証が得られる。特にこの品質保証は、例えばオンライン適応治療計画のために適用することができ、患者の幾何学的形状は、例えば膀胱の状態および胃の状態により著しく異なる可能性があるため、これを治療の当日に使用して患者の幾何学的形状に対して治療計画を決定することができる。
【0051】
図4図1の品質保証装置10の構成要素を示す概略図である。プロセッサ60は、メモリ64に記憶されており、従ってコンピュータプログラム製品であってもよいソフトウェア命令67を実行することができる好適な中央処理装置(CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)などのうちの1つ以上の任意の組み合わせを用いて提供される。プロセッサ60は代わりとして、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などを用いて実装されていてもよい。プロセッサ60は、上の図2を参照して説明されている方法を実行するように構成することができる。
【0052】
メモリ64は、ランダムアクセスメモリ(RAM)および/またはリードオンリーメモリ(ROM)の任意の組み合わせであってもよい。メモリ64は例えば、磁気メモリ、光メモリ、ソリッドステートメモリまたはさらにはリモートでマウントされたメモリのうちの任意の1つまたは組み合わせであってもよい永続記憶装置も含む。
【0053】
プロセッサ60におけるソフトウェア命令の実行中にデータを読み出し、かつ/または記憶するためのデータメモリ66も提供される。データメモリ66は、RAMおよび/またはROMの任意の組み合わせであってもよい。
【0054】
品質保証装置10は、外部および/または内部実体との通信のためにI/Oインタフェース62をさらに備える。任意に、I/Oインタフェース62はユーザインタフェースも含む。
【0055】
品質保証装置10の他の構成要素は、本明細書に示されている概念を曖昧にしないために省略されている。
【0056】
図5はコンピュータ可読手段を含むコンピュータプログラム製品90の一例を示す。このコンピュータ可読手段にはコンピュータプログラム91を記憶することができ、このコンピュータプログラムはプロセッサに本明細書に記載されている実施形態に係る方法を実行させることができる。この例では、コンピュータプログラム製品は、CD(コンパクトディスク)またはDVD(デジタル多用途ディスク)またはブルーレイディスクなどの光ディスクである。上で説明されているように、図3のコンピュータプログラム製品64などのコンピュータプログラム製品は、装置のメモリ内にも具体化することができる。コンピュータプログラム91はここでは描かれている光ディスク上のトラックとして概略的に示されているが、コンピュータプログラムは、取外し可能なソリッドステートメモリ、例えばユニバーサル・シリアル・バス(USB)ドライブなどのコンピュータプログラム製品に適した任意の方法で記憶させることができる。
【0057】
本開示の態様について数個の実施形態を参照しながら上に説明してきた。但し当業者によって容易に理解されるように、上に開示されているもの以外の他の実施形態が、添付の特許請求の範囲によって定められている本発明の範囲内で同等に可能である。従って、様々な態様および実施形態を本明細書において開示してきたが、他の態様および実施形態は当業者には明らかであろう。本明細書に開示されている様々な態様および実施形態は例示のためのものであり、限定的なものではなく、真の範囲および趣旨は以下の特許請求の範囲によって示されている。

図1
図2A
図2B
図3
図4
図5