(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品
(51)【国際特許分類】
A24D 1/20 20200101AFI20241009BHJP
A24D 1/02 20060101ALI20241009BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20241009BHJP
A24F 40/40 20200101ALI20241009BHJP
【FI】
A24D1/20
A24D1/02
A24F40/20
A24F40/40
(21)【出願番号】P 2022544617
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2021030961
(87)【国際公開番号】W WO2022045121
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/032013
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】小野 広善
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/130446(WO,A1)
【文献】特公昭46-040199(JP,B1)
【文献】特公昭49-005931(JP,B1)
【文献】特表2013-536697(JP,A)
【文献】特開平02-270589(JP,A)
【文献】特表2019-523639(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0013307(KR,A)
【文献】国際公開第2015/177907(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/187628(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/20
A24D 1/02
A24F 40/20
A24F 40/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこロッド部及びマウスピース部を備え、これらの部材がチップペーパーにより巻装されてなる巻装部を有する非燃焼加熱式たばこであって、
前記巻装部を構成するチップペーパーの少なくとも一部に樹脂組成物が塗工され、
前記樹脂組成物が塗工された領域は、非燃焼加熱式たばこの使用時の加熱部位を含み、
前記樹脂組成物は、エチルセルロー
スと、可塑剤とを含み、
前記可塑剤が、トリアセチンを含む、非燃焼加熱式たばこ。
【請求項2】
たばこロッド部及びマウスピース部を備え、これらの部材がチップペーパーにより巻装されてなる巻装部を有する非燃焼加熱式たばこであって、
前記巻装部を構成するチップペーパーの少なくとも一部に樹脂組成物が塗工され、
前記樹脂組成物が塗工された領域は、非燃焼加熱式たばこの使用時の加熱部位を含み、
前記樹脂組成物は、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン-アクリル樹脂、メタクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂と、可塑剤とを含
み、
前記樹脂組成物が、色素成分をさらに含む、非燃焼加熱式たばこ(ただし、樹脂組成物がニトロセルロースを含む場合を除く。)。
【請求項3】
たばこロッド部及びマウスピース部を備え、これらの部材がチップペーパーにより巻装されてなる巻装部を有する非燃焼加熱式たばこであって、
前記巻装部を構成するチップペーパーの少なくとも一部に樹脂組成物が塗工され、
前記樹脂組成物が塗工された領域は、非燃焼加熱式たばこの使用時の加熱部位を含み、
前記樹脂組成物は、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン-アクリル樹脂、メタクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂と、可塑剤とを含み、
前記樹脂組成物が、感熱顕色剤をさらに含む、非燃焼加熱式たばこ(ただし、樹脂組成
物がニトロセルロースを含む場合を除く。)。
【請求項4】
前記樹脂組成物が塗工された領域は、非燃焼式加熱式たばこの長軸方向のチップペーパーの全長に対して、たばこロッド側端部から吸口端部方向に向かって10%以下の長さまでの領域を少なくとも含む、請求項1
~3のいずれか一項に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項5】
前記樹脂組成物が塗工された領域が、巻装部の長軸方向のたばこロッド側端部から5mm以下までの領域を少なくとも含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項6】
前記樹脂組成物が、色素成分をさらに含む、請求項1
、4~5のいずれか一項に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項7】
前記樹脂組成物が、感熱顕色剤をさらに含む、請求項1~
2、4~6のいずれか一項に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項8】
前記チップペーパーにおける樹脂組成物に起因する固形分の塗工量が、0.0001~3重量%である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項9】
前記マウスピース部が冷却部及びフィルター部を有する、請求項1~
8のいずれか一項に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項10】
前記非燃焼加熱式たばこが、前記チップペーパーと前記樹脂組成物とを貫通する開孔を有する、請求項1~
9のいずれか一項に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項11】
ヒーター部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱型デバイスと、該ヒーター部材に接触するように挿入される、請求項1~
10のいずれか一項に記載の非燃焼加熱式たばこと、から構成される、電気加熱式たばこ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒーター部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱式デバイスと、該ヒーター部材に接触するように挿入される非燃焼加熱式たばことから構成される電気加熱式たばこ製品が開発されている(特許文献1)。該非燃焼加熱式たばこは、一般的に、たばこ刻みやエアロゾル生成基材等が巻紙により巻装されてなるたばこロッド、加熱によりたばこロッドから発生したエアロゾルを吸引するためのマウスピース、及びこれらを巻装するチップペーパーを備える。
電気加熱式たばこ製品を使用する際には、前記非燃焼加熱式たばこを電気加熱式デバイスに挿入する。そして、ヒーター部材を発熱させることにより、該ヒーター部材に接触する箇所を起点としてたばこロッドが加熱され、たばこロッドが含むエアロゾル生成基材とともに、香味成分が使用者にデリバリーされる。
【0003】
たばこに関連する技術分野、特に非燃焼加熱式たばこ製品の分野では、香味のさらなる改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非燃焼加熱式たばこに関連する技術分野において、非燃焼加熱式たばこの巻装部を構成するチップペーパー上の、使用時に加熱される部位を含む領域に対して、所望の色、文字、模様等を付与し、非燃焼加熱式たばこに所望の外観を付与したり、そのような所望の外観を付与するための下地を形成することで、製品としての価値を高めたいという要望がある。
一方で、該塗工剤に含まれる成分が分解されることで、当該分解された成分が、喫味等に不所望な影響を与える物質の発生量の増加に寄与することが分かってきた。
【0006】
そこで、本発明は、非燃焼加熱式たばこの使用時に、喫味等に不所望な影響を及ぼす物質の発生が抑制されるとともに、巻装部に対して所望の外観の付与が可能となる非燃焼加熱式たばこ、及び電気加熱式たばこ製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、チップペーパーにより巻装された巻装部の少なくとも一部に樹脂組成物が塗工され、前記樹脂組成物が塗工された領域は、非燃焼加熱式たばこの使用時の加熱部位を含み、前記樹脂組成物が特定の組成を有していることで、非燃焼加熱式たばこの使用時に、喫味等に不所望な影響を及ぼす物質の発生を抑制できるとともに、巻装部に対して所望の外観の付与が可能となることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1] たばこロッド部及びマウスピース部を備え、これらの部材がチップペーパーにより巻装されてなる巻装部を有する非燃焼加熱式たばこであって、
前記巻装部を構成するチップペーパーの少なくとも一部に樹脂組成物が塗工され、
前記樹脂組成物が塗工された領域は、非燃焼加熱式たばこの使用時の加熱部位を含み、
前記樹脂組成物は、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン-アクリル樹脂、メタクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂と、可塑剤とを含む、非燃焼加熱式たばこ。
[2] 前記樹脂組成物が塗工された領域は、非燃焼加熱式たばこの長軸方向のチップペーパーの全長に対して、たばこロッド側端部から吸口端部方向に向かって10%以下の長さまでの領域を少なくとも含む、[1]に記載の非燃焼加熱式たばこ。
[3] 前記樹脂組成物が塗工された領域が、巻装部の長軸方向のたばこロッド側端部から5mm以下までの領域を少なくとも含む、[1]または[2]に記載の非燃焼加熱式たばこ。
[4] 前記樹脂組成物が、色素成分をさらに含む、[1]~[3]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ。
[5] 前記樹脂組成物が、感熱顕色剤をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ。
[6] 前記チップペーパーにおける樹脂組成物に起因する固形分の塗工量が、0.0001~3重量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ。
[7] 前記マウスピース部が冷却部及びフィルター部を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ。
[8] ヒーター部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱型デバイスと、該ヒーター部材に接触するように挿入される、[1]~[7]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこと、から構成される、電気加熱式たばこ製品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非燃焼加熱式たばこの使用時に、喫味等に不所望な影響を及ぼす物質の発生を抑制できるとともに、巻装部において所望の外観の形成が可能となる非燃焼加熱式たばこ、及び電気加熱式たばこ製品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】チップペーパーに樹脂組成物を塗布した非燃焼加熱式たばこの一態様を示す概略図である。
【
図2】チップペーパーに樹脂組成物を塗布した非燃焼加熱式たばこの別の一態様を示す概略図である。
【
図3】チップペーパーに樹脂組成物を塗布した非燃焼加熱式たばこのさらに別の一態様を示す概略図である。
【
図4】電気加熱式たばこ製品の一態様である、たばこロッドの外周面を加熱する態様を示す概略図である。
【
図5】電気加熱式たばこ製品の一態様である、たばこロッドの内部を加熱する態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これら説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
なお、
図1~3に示す非燃焼加熱式たばこの概略図は、説明のために各種の部材を適宜大きく表したり、小さく表したりしており、本発明の実施形態の実際の大きさや比率を表したものではない。
また、巻装部とは、チップペーパー及びこれに塗工される樹脂組成物を含む概念である。
また、本発明において、特段の断りが無い限り、巻装部の「外側」とは、非燃焼加熱式たばこの使用時に使用者の唇が接触する面を意味し、「内側」とは、その反対側の面を意味する。
また、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0012】
<非燃焼加熱式たばこ>
本発明の一実施形態である非燃焼加熱式たばこ(以下、単に「非燃焼加熱式たばこ」とも称する。)は、たばこロッド部及びマウスピース部を備え、これらの部材がチップペーパーにより巻装されてなる巻装部を有する非燃焼加熱式たばこであって、前記巻装部を構成するチップペーパーの少なくとも一部に樹脂組成物が塗工され、
前記樹脂組成物が塗工された領域は、非燃焼加熱式たばこの使用時の加熱部位を含み、
前記樹脂組成物は、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン-アクリル樹脂、メタクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂と、可塑剤とを含む、非燃焼加熱式たばこである。
上記実施形態である非燃焼加熱式たばこの一例を
図1に示す。以下、当該
図1を参照しながら非燃焼加熱式たばこの説明を行う。なお、
図1では、チップペーパーの片側の一部に樹脂組成物が均一に塗工されているように図示されているが、そのような限定はされず、その塗工箇所によって濃度差が生じていてよい。これは他の図においても同様とする。
図1におけるhの方向が、非燃焼加熱式たばこの長軸方向である。
【0013】
非燃焼加熱式たばこは、以下のように定義されるアスペクト比が1以上である形状を満たす柱状形状を有していることが好ましい。
アスペクト比=h/w
wは柱状体の底面の幅(本発明においては、たばこロッド部側の底面の幅とする。)、hは高さであり、h≧wであることが好ましい。しかし、本発明においては、上述した通り、長軸方向はhで示された方向であると規定している。したがって、w≧hである場合においてもhで示された方向を便宜上長軸方向と呼ぶ。底面の形状は限定されず、多角、角丸多角、円、楕円等であってよく、幅wは当該底面が円形の場合は直径、楕円形である場合は長径、多角形または角丸多角である場合は外接円の直径または外接楕円の長径である。例えば、
図1に示す態様においては、底面が円であるのでその直径を認定できる。当該直径が幅w、これに直交する長さが高さhとなる。
【0014】
非燃焼加熱式たばこの長軸方向の長さhは、特段制限されず、例えば、通常35mm以上であり、40mm以上であることが好ましく、45mm以上であることがより好ましい。また、通常105mm以下であり、95mm以下であることが好ましく、85mm以下であることがより好ましい。
非燃焼加熱式たばこの柱状体の底面の幅wは、特段制限されず、例えば、通常5mm以上であり、5.5mm以上であることが好ましい。また、通常10mm以下であり、9mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましい。
以下、非燃焼加熱式たばこを構成する各構成部の説明を行う。
【0015】
<巻装部>
図1に示すように、本発明の実施形態の一態様は、たばこロッド部10及びマウスピース部11がチップペーパー12により巻装されてなる巻装部を有する。なお、
図1には示されていないが、たばこロッド部10は、後述するように、たばこ充填物が巻紙により巻装されたものである。さらに、当該チップペーパーは、少なくとも一部に樹脂組成物13が塗工されている。樹脂組成物13が塗工された領域は、非燃焼加熱式たばこの使用時の加熱部位を含む。具体的には、樹脂組成物13が塗工された領域は、
図1で示すようにチップペーパーのたばこロッド側端部を含むことが好ましい。
このような実施形態である場合、樹脂組成物が塗工された領域に対して、例えば色、模様、文字などを付与でき、所望の外観を形成することができる。また、上記樹脂組成物は特定の組成を有しているので、非燃焼加熱式たばこの加熱部位を含む領域に塗工されていても、使用時に不快な香味が生成しない。
【0016】
前記樹脂組成物が塗工された領域は、非燃焼加熱式たばこの長軸方向のチップペーパーの全長に対して、たばこロッド側端部から吸口端部方向に向かって10%以下の長さまでの領域を少なくとも含むことが好ましい。通常、非燃焼加熱式たばこを形成するチップペーパーの上記の領域に色、模様、文字などを付与することが多い。そのため、チップペーパーの上記の領域を少なくとも含む領域に上記樹脂組成物を塗工することは、非燃焼加熱式たばこに所望の外観を付与するための好ましい態様である。一方で、樹脂組成物を塗工する領域は、非燃焼加熱式たばこの長軸方向のチップペーパーの全長に対して、たばこロッド側端部から吸口端部方向に向かって、例えば20%以下の長さまでの領域を含む領域、40%以下の長さまでの領域を含む領域、60%以下の長さまでの領域を含む領域、80%以下の長さまでの領域を含む領域、または、チップペーパーの全長、すなわちチップペーパーの全面に塗工する態様を挙げることもできる。これらの態様は、チップペーパー上に、色、模様、文字などを付与する位置に応じて適宜変更することができる。
【0017】
また、別の実施態様として、上記樹脂組成物が塗工された領域が、巻装部の長軸方向のたばこロッド側端部から5mm以下までの領域を少なくとも含む態様も挙げることができる。この態様が好ましく挙げられるのは、通常、非燃焼加熱式たばこを形成するチップペーパーの上記の領域に色、模様、文字などを付与することが多いことによるものである。一方で、樹脂組成物を塗工する領域は、巻装部の長軸方向のたばこロッド側端部から7mm以下までの領域を含む領域、9mmまでの領域を含む領域、11mmまでの領域を含む領域、13mmまでの領域を含む領域、15mmまでの領域を含む領域、17mmまでの領域を含む領域、または、巻装部の全長、すなわち、巻装部の全面に塗工する態様を挙げることもできる。これらの態様は、チップペーパー上に、色、模様、文字などを付与する位置に応じて適宜変更することができる。
【0018】
[チップペーパー]
巻装部12を構成するチップペーパーの材料は、特段制限されず、一般的な植物性の繊維(パルプ)で作製された紙や、ポリマー系(ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなど)の化学繊維を用いたシート、ポリマー系のシート、アルミ箔のような金属箔等を用いることができる。なお、ここでいうチップペーパーとは、例えば、たばこロッド部とマウスピース部とを連結するなど、非燃焼加熱式たばこにおける複数のセグメントを接続するシートのことである。
【0019】
チップペーパーの製造方法は、特段制限されず、一般的な方法を適用することができ、例えば、パルプを主成分とする態様の場合、パルプを用いて長網抄紙機、円網抄紙機、円短複合抄紙機等による抄紙工程の中で、地合いを整え均一化する方法が挙げられる。なお、必要に応じて、湿潤紙力増強剤を添加して巻紙に耐水性を付与したり、サイズ剤を添加して巻紙の印刷具合の調整を行ったりすることができる。さらに、硫酸バンド、各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性或いは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、及び紙力増強剤等の抄紙用内添助剤、並びに、染料、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、及びスライムコントロール剤等の製紙用添加剤を添加することができる。
パルプとしては、針葉樹パルプや広葉樹パルプなどの木材パルプで抄造される以外にも、亜麻パルプ、大麻パルプ、サイザル麻パルプ、エスパルトなど一般的に喫煙物品用の巻紙に使用される非木材パルプを混抄して製造して得たものでもよい。また、パルプの種類としては、クラフト蒸解法、酸性・中性・アルカリ亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用できる。
【0020】
チップペーパー11の長軸方向の高さは、特段制限されないが、エアロゾルのデリバリー量や製造適正の観点から、通常15mm以上であり、20mm以上であることが好ましく、25mm以上であることがより好ましい。一方で、通常55mm以下であり、50mm以下であることが好ましい。
チップペーパー11の厚さは、特段制限されないが、エアロゾルのデリバリー量や製造適正の観点から、通常30μm以上であり、35μm以上であることが好ましい。一方で、通常150μm以下であり、140μm以下であることが好ましい。
【0021】
チップペーパー11の坪量は、特段制限されないが、エアロゾルのデリバリー量や製造適正の観点から、通常30g/m2以上であり、35g/m2以上であることが好ましい。一方で、通常150g/m2以下であり、140g/m2以下であることが好ましい。
チップペーパー11の通気度は、特段制限されないが、エアロゾルのデリバリー量や製造適正の観点から、10コレスタ単位以下であることが好ましい。
【0022】
[樹脂組成物]
チップペーパー上に塗布される樹脂組成物は、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン-アクリル樹脂、メタクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂と、可塑剤とを含む。
上記巻装部を構成するチップペーパーの少なくとも一部に上記樹脂組成物が塗工されることで、非燃焼加熱式たばこの巻装部に対して、所望の外観を付与したり、そのような所望の外観を付与するための下地を形成することができる。下地を形成した場合、その下地に対して、樹脂組成物とは異なる手段により印刷を行った場合には、インクの定着性を向上させることができ、また、インクのチップペーパーへの染み込み、滲みを防止することができる。さらに、下地を形成することで、下地となった面を平滑にすることができ、所望のデザインの再現性が高まる。
さらには、チップペーパーに上記の樹脂組成物とは異なる手段により印刷が行われている場合、その印刷箇所を覆うように上記樹脂組成物が塗工されることで、その印刷箇所の剥がれ、かすれを防止することができる。
なお、前記樹脂組成物が塗工された領域は、非燃焼加熱式たばこの使用時の加熱部位を含む。従来の技術では、加熱部位に何らかの塗工剤が付与されていると、不所望な香味が生じていたが、本発明にかかる樹脂組成物が塗工された場合には、そのような問題が生じない。
【0023】
エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのようなセルロースエーテルは、いずれも市販品のものを適宜選択して用いることができる。
これらのセルロースエーテルは、20℃における2重量%水溶液の粘度が例えば、3~140000mPa・sであるものを用いることができる。
【0024】
アルキド樹脂の合成には、例えば多塩基酸及び脂肪酸と多価アルコールが用いられる。多塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、安息香酸、ロジン、テトラヒド無水フタル酸、無水マレイン酸、アジピン酸、コハク酸などを挙げることできる。脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などを挙げることができる。多価アルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンを挙げることができる。これらを所望の割合で反応させることで、アルキド樹脂を得ることができる。
アルキド樹脂の重量平均分子量としては、例えば10000~200000を挙げることができる。重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出することができる。
【0025】
ポリアミド樹脂は、例えば、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、2-エチルテトラメチレンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、シス1,4-ジアミノシクロヘキサン、及びトランス1,4-ジアミノシクロヘキサンから選ばれるジアミンと、フタル酸/無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、コハク酸/無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、コハク酸/グルタル酸/アジピン酸の混合物、シクロヘキサンジカルボン酸、ジメチルイソフタレート、ジメチルフタレート、ジメチルテレフタレート、ジメチル2,6-ナフタレンジカルボキシレート、ジエチルオキサレート、ジメチルアジペート、ジメチルグルタレート、及びメチルスクシネートから選ばれるジカルボン酸またはエステルもしくは無水物誘導体とを反応させて得られるものを挙げることができる。
ポリアミド樹脂の重量平均分子量としては、例えば10000~200000を挙げることができる。
ポリアミド樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、単分散ポリメチルメタクリレートの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリメチルメタクリレート換算の分子量として算出することができる。
【0026】
スチレン-アクリル樹脂は、スチレン系単量体と、(メタ)アクリル酸系単量体を共重合して得ることができる。なお、スチレン-アクリル樹脂は、スチレン-メタクリル樹脂も含む。スチレン系単量体として、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン等の単独または混合物を挙げることができ、好ましくはスチレンを挙げることができる。(メタ)アクリル酸系単量体として、アクリル酸、メタクリル酸等を挙げることができ、メタクリル酸を好ましく挙げることができる。
スチレン-アクリル樹脂の重量平均分子量は、例えば140000~400000を挙げることができる。重量平均分子量は、上記のアルキド樹脂と同じ方法で求めることができる。
【0027】
メタクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル樹脂は、メタクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルを任意の割合で共重合させて得られる共重合体であり、通常、重量平均分子量は20000~200000である。重量平均分子量は、上記のアルキド樹脂と同じ方法で求めることができる。
【0028】
ポリエステル樹脂は、通常、多塩基酸及び多価アルコールを既知の方法で、エステル化反応することによって得ることができる。
多塩基酸としては1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であって、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4´-ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4´-ジカルボン酸などの芳香族多塩基酸及びその無水物;ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸及びその無水物;アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、アゼライン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸などの脂肪族多塩基酸及びその無水物;これらのジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル;トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメット酸、トリメシン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、テトラクロロヘキセン多塩基酸及びその無水物などの3価以上の多塩基酸などが挙げられる。
多価アルコールとしては、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4―ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-4,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピヴァリン酸ネオペンチルグリコールエステルなどの2価アルコール;これらの2価アルコールにε-カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルジオール類;プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドなどのα-オレフィンエポキシド、カージュラE10[シェル化学社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル]などのモノエポキシ化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニットなどの3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε-カプロラクトンなどのラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類;1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールA及び水添ビスフェノールFなど脂環族多価アルコールなどが挙げられる。
ポリエステル樹脂の数平均分子量は、例えば、5000~100000を挙げることができる。
ポリエステル樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出することができる。
【0029】
上記のアルキド樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン-アクリル樹脂、メタクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル樹脂及びポリエステル樹脂の重量分子量は、重合工程の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって制御することができる。また、上記のアルキド樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン-アクリル樹脂、メタクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル樹脂及びポリエステル樹脂はいずれも塗料・印刷の技術分野で用いられている市販品を用いることができる。
上記で挙げた樹脂の中でも好ましく用いられるのは、エチルセルロースである。上記樹脂組成物が従来の塗工剤として用いられるニトロセルロースを含まないことで、非燃焼加熱式たばこの加熱時に生成する不所望な香味を生じさせることがない。通常、ニトロセルロースは、セルロースを硝酸及び硫酸の混酸で処理して得られるものである。このニトロセルロースが加熱により分解されて硝酸が生じ、当該硝酸とたばこ原料中のマイナーアルカノイドとが反応することによりTSNAが生じる。このTSNAが不所望な香味の原因となる。なお、TSNAとは、たばこ特異的なニトロソアミンの総称であり、N’-ニトロソノルニコチン(NNN)、4-(N-ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)、N’-ニトロソアナタビン(NAT)、N’-ニトロソアナバシン(NAB)により代表される。
【0030】
上記樹脂組成物は、可塑剤を含む。樹脂組成物が可塑剤を含むことで、チップペーパーへの樹脂組成物の塗工性を高めることができる。また、樹脂組成物が可塑剤を含むことで、樹脂組成物の柔軟性の向上、塗工面のひび割れ(クラック)防止、塗工面のカール性防止、塗工面の光沢増加、などに寄与する。特に塗工面のカール性防止については、樹脂組成物がニトロセルロース以外の樹脂、例えばエチルセルロースを含有する場合に顕著に向上する。可塑剤としては、トリアセチンを挙げることができる。
また、樹脂組成物は、樹脂や可塑剤を溶解するための溶剤を含んでもよい。
樹脂組成物における、樹脂の重量割合は、樹脂組成物を100重量部としたときに、5~40重量部を挙げることができ、10~30重量部であることが好ましい。
また、樹脂組成物における、樹脂と可塑剤の割合は、樹脂を1としたときの可塑剤の重量割合として、例えば0.05~0.5、より好ましくは0.1~0.3であることが好ましい。
【0031】
なお、上記樹脂組成物のチップペーパーへの塗工量については、チップペーパーにおける樹脂組成物に起因する固形分の塗工量として、0.0001~3重量%であることが好ましい。このような塗工量であることで、非燃焼加熱式たばこの巻装部に対して、所望の外観を付与したり、そのような所望の外観を付与するための下地を良好に形成することができる。
なお、上記の樹脂組成物は、後述する顔料、染料のような色素成分、感熱顕色剤を含む場合には、非燃焼加熱式たばこの巻装部に対して、所望の外観を付与することができ、上記色素成分、感熱顕色剤を含まない場合でも、チップペーパーに所望の外観を付与するための下地を形成することができる。また、下地としてではなく、予め別の手段により印刷が施された箇所に上記の樹脂組成物が塗工されることで、印刷箇所の剥がれ、かすれを防止する役割を果たすことができる。
チップペーパー上における、樹脂組成物を塗工した領域における、樹脂組成物に起因する固形分の塗工は、厚さ、分布共に均一であっても、そうでなくてもよい。また、樹脂組成物の塗工領域が、無地の部分と、色、文字及び模様のいずれか1以上からの部分から構成される態様を好ましく挙げることができる。その態様を実現するには、色、文字及び模様のいずれか1以上を付与するための単一の樹脂組成物を1回塗工するだけでもよく、異なる2種以上の樹脂組成物を用いて複数回に分けて塗工することでも可能である。
【0032】
上記樹脂組成物は、色素成分を含んでもよい。色素成分としては、例えば顔料及び染料から選ばれる1種以上を挙げることができる。
顔料としては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化鉄、雲母、アルミニウム、銅、二酸化ケイ素等を挙げることができる。
染料としては、C.I.ピグメントイエロー42、C.I.ピグメントイエロー100、C.I.ピグメントブラック11、C.I.ピグメントブルー78、C.I.ピグメントイエロー139、キノリンイエロー、C.I.ピグメントブラック 7、C.I.ピグメントレッド 48:1、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントイエロー104、C.I.ピグメントブルー 63、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37等を挙げることができる。
上記樹脂組成物における色素成分の含有量は、色素成分の種類にもよるが、0.00005重量%以上、0.8重量%以下を挙げることができる。
上記樹脂組成物における顔料の含有量は、顔料の種類にもよるが、二酸化チタンの場合、0.8重量%以下、炭酸カルシウムの場合、0.7重量%以下、酸化鉄または雲母の場合、0.09重量%以下、アルミニウム、銅または二酸化ケイ素の場合、0.01重量%以下を挙げることができる。
上記樹脂組成物における染料の含有量は、染料の種類にもよるが、C.I.ピグメントイエロー100の場合、0.01重量%以下、ピグメントブラック11、C.I.ピグメントブルー78、C.I.ピグメントイエロー139、またはキノリンイエローの場合、0.005重量%以下、C.I.ピグメントブラック 7、C.I.ピグメントレッド 48:1、C.I.ピグメントレッド48:3、またはC.I.ピグメントイエロー185の場合、0.001重量%以下、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド57:1、またはC.I.ピグメントイエロー104の場合、0.0005重量%以下、C.I.ピグメントブルー 63、C.I.ピグメントバイオレット23、またはC.I.ピグメントバイオレット37の場合、0.0001重量%以下を挙げることができる。
【0033】
上記樹脂組成物は、感熱顕色剤を含んでもよい。感熱顕色剤とは、元々は色を有していなかったものが、加熱により色を呈するようになる物質のことである。具体的には、非燃焼加熱式たばこの加熱に伴い、色を呈するようになる物質である。
感熱顕色剤としては、例えば、有機酸又はその塩、単糖、二糖、多糖およびアミノ酸から選択される1種以上を挙げることができる。これらの中で、複数種を組み合わせて用いる場合には、例えば、有機酸又はその塩と、単糖、二糖、及び多糖から選ばれる1種以上の糖との組み合わせ(有機酸又はその塩と単糖の組み合わせ、有機酸又はその塩と二糖の組み合わせ、有機酸又はその塩と多糖の組み合わせを含む)、単糖とアミノ酸の組み合わせ、単糖と多糖の組み合わせ等を挙げることができる。
樹脂組成物における感熱顕色剤の濃度は特に制限されず、例えば0.01~3重量%、好ましくは0.2~2重量%を挙げることができる。
前記有機酸又はその塩として、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸マグネシウム、乳酸、乳酸カルシウムから選ばれる1種以上を挙げることができる。これらの有機酸またはその塩を用いることで、チップペーパー原紙のパルプの酸化反応に必要な熱量を下げることで発色が起こると考えられる。
前記単糖は、フラクトース、ガラクトース、及びグルコースから選ばれる1種以上であることが好ましい。前記二糖は、マルトース、ラクトース、及びスクロースから選ばれる1種以上であることが好ましい。
前記多糖は、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、ペクチン、及びデンプンから選ばれる1種以上であることが好ましい。
上記の単糖、二糖、多糖を用いた場合には、カラメル化反応による発色が起こると考えられる。
前記アミノ酸は、バリン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、アラニン、アスパラギン及びアルギニンから選ばれる1種以上であることが好ましい。これらのアミノ酸は、巻紙原紙のパルプに含まれるカルボニル基と、メイラード反応により発色すると考えられる。
なお、上記の感熱顕色剤の水溶液は外観上、透明である。またこれらの感熱顕色剤をチップペーパー原紙に添加しても、チップペーパーの色の変化はない。つまり上記の感熱顕色剤は、加熱前は外観上、透明である。これにより、非燃焼加熱式たばこの使用前にはチップペーパー原紙に表れていなかった色を、使用時の加熱によりチップペーパー上で発色させることができる。
【0034】
上記樹脂組成物のチップペーパーへの塗工方法は特段制限されず、一般的な塗工方法を適用することができる。樹脂組成物は、水溶液もしくは酢酸エチル溶液として用いることができ、そのような水溶液もしくは酢酸エチル溶液を、例えばグラビア印刷のような適当な印刷法を用いることにより、本発明の実施形態にかかるチップペーパーに塗工できる。印刷以外の公知の手段、例えば、インクジェット印刷により不透明インキを塗工する方法や、噴霧する方法や含浸する方法により樹脂組成物を本発明の実施形態にかかるチップペーパーに塗工してもよい。
また、樹脂組成物は、少なくともチップペーパーの非燃焼加熱式たばこの外側表面を構成する面の一部に塗工されている必要があるが、さらに、内側表面に塗工されていてもよい。
【0035】
チップペーパーにおける樹脂組成物に起因する固形分の含有量は、以下の吸光光度測定法により測定することができる。
まず、以下に示す方法により検量線用標準試料作製し、吸光光度測定を行い、ASTM D3133-01に従って、検量線用標準試料の吸光光度測定結果から検量線を作成する。そして、以下に示す方法により測定試料を作製し、吸光光度測定を行う。上記検量線及び測定試料の吸光光度測定の結果から、測定試料中の樹脂組成物に起因する固形分の含有重量を求めることができる。
【0036】
<検量線用標準試料の作製>
(1)標準試料(塗工前の樹脂組成物)を6g程度ナス型フラスコ等の容器に計り取った後、エバポレーターを用いて揮発成分を飛ばして濃縮する。
(2)得られた不揮発成分をアセトンで溶解させながらピペットで100mlメスフラスコに移し、アセトンで100mlにメスアップする。
(3)50mlのナス型フラスコを4個準備し、それぞれに、(2)で得られた溶液を0、1、3、5mlずつ計り取り、合計量が10mlとなるように10、9、7、5mlのアセトンを添加する。さらに、これら全てのナス型フラスコに10%KOH 10mlを添加し、冷却管にセットして60℃の恒温水槽上で1時間の還流を行う。
(4)還流後、氷上で室温まで冷却し、濾紙を用いて濾過を行った後、得られた濾液を50mlのメスフラスコに入れ、アセトン/水(重量比で2/1)の混合溶液を用いてメスアップする。
【0037】
<測定試料の作製>
(1)非燃焼加熱式たばこから、その巻装部を構成するチップペーパーを剥離し、これを細片化した後、該細片化されたチップペーパーを三角フラスコ等の容器に入れ、アセトン100mlを加えた後、30分の超音波抽出を行う。
(2)該抽出液を300mlナス型フラスコに移し、エバポレーターを用いてアセトンを揮発させた後、アセトン10mlと10%KOH 10mlを加え、60℃の湯浴上で1時間の還流を行う。
(3)該ナス型フラスコを氷上で室温まで冷却し、濾過を行った後、得られた濾液を50mlメスフラスコに入れて、アセトン/水(重量比で2/1)の混合溶液を用いてメスアップする。
【0038】
<たばこロッド部>
たばこロッド部10の構成は、特段制限されず、一般的な態様とすることができる。例えば、たばこ充填物が巻紙により巻装されたものを用いることができる。
【0039】
[たばこ充填物]
たばこ充填物の構成は、特段制限されないが、たばこ刻みを含む組成物から構成されるもの(以下、第一のたばこ充填物ともいう)と、後述する複数のたばこシートから構成されるもの(以下、第二のたばこ充填物ともいう)、又は単一のたばこシートから構成されるもの(以下、第三のたばこ充填物ともいう)を挙げることができる。
たばこロッド部は、柱状形状を有していることが好ましく、この場合には、たばこロッド部の底面の幅に対するたばこロッド部の長軸方向の高さで表されるアスペクト比が1以上であることが好ましい。
底面の形状は限定されず、多角、角丸多角、円、楕円等であってよく、幅は当該底面が円形の場合は直径、楕円形である場合は長径、多角形または角丸多角である場合は外接円の直径または外接楕円の長径である。例えば、
図1~3に示す態様においては、底面を円とする。よって、当該直径が幅となり、これに直交する長さが高さとなる。たばこロッドを構成するたばこ充填物の高さは12~70mm程度、幅は4~9mm程度であることが好ましい。
たばこロッド部は、非燃焼加熱式たばこを加熱するためのヒーター部材等との嵌合部を有していてもよい。
【0040】
まず、第一の充填物から説明する。第一の充填物に含まれるたばこ刻みの材料は特に限定されず、ラミナや中骨等の公知のものを用いることができる。また、乾燥したたばこ葉を平均粒径が20~200μmになるように粉砕して均一化したものをシート加工したもの(以下、単に均一化シートともいう)を刻んだものであってもよい。さらに、たばこロッドの長手方向と同程度の長さを有する均一化シートを、たばこロッドの長手方向と略水平に刻んだものをたばこロッドに充填する、いわゆるストランドタイプであってもよい。たばこ刻の幅は0.5~2.0mmがたばこロッドに充填するうえで好ましい。たばこロッド中のたばこ充填物の含有量は、円周22mm、長さ20mmのたばこロッドの場合、200~800mg/ロッド部を挙げることができ、250~600mg/ロッドが好ましい。前記たばこ刻み及び均一化シートの作製に用いるたばこ葉について、使用するたばこの種類は、様々なものを用いることができる。例えば、黄色種、バーレー種、オリエント種、在来種、その他のニコチアナ-タバカム系品種、ニコチアナ-ルスチカ系品種、及びこれらの混合物を挙げることができる。混合物については、目的とする味となるように、前記の各品種を適宜ブレンドして用いることができる。前記たばこの品種の詳細は、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に開示されている。前記均一化シートの製造方法、すなわち、たばこ葉を粉砕して均一化シートに加工する方法は従来の方法が複数存在している。1つ目は抄紙プロセスを用いて抄造シートを作製する方法である。2つ目は水等の適切な溶媒を、粉砕したたばこ葉に混ぜて均一化した後に金属製板もしくは金属製板ベルトの上に均一化物を薄くキャスティングし、乾燥させてキャストシートを作製する方法である。3つ目は水等の適切な溶媒を、粉砕したたばこ葉に混ぜて均一化したものをシート状に押し出し成型して圧延シートを作製する方法である。前記均一化シートの種類については、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に詳細が開示されている。
【0041】
たばこ充填物の水分含有量は、たばこ充填物の全量に対して10~15重量%を挙げることができ、11~13重量%であることが好ましい。このような水分含有量であると、巻染みの発生を抑制し、たばこロッドの製造時の巻上適性を良好にする。
第一のたばこ充填物に含まれるたばこ刻みの大きさやその調製法については特に制限はない。例えば、乾燥したたばこ葉を、幅0.5~2.0mmに刻んだものを用いてもよい。
また、均一化シートの粉砕物を用いる場合、乾燥したたばこ葉を平均粒径が20~200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.5~2.0mmに刻んだものを用いてもよい。
【0042】
第一のたばこ充填物は、エアロゾル煙を生成するエアロゾル生成基材を含む。当該エアロゾル生成基材の種類は、特に限定されず、用途に応じて種々の天然物からの抽出物質および/またはそれらの構成成分を選択することができる。エアロゾル生成基材としては、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、及びこれらの混合物を挙げることができる。
第一のたばこ充填物中のエアロゾル生成基材の含有量は、特に限定されず、十分にエアロゾルを生成させるとともに、良好な喫味の付与の観点から、たばこ充填物の全量に対して通常5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上であり、また、通常50重量%以下であり、好ましくは15~25重量%である。
【0043】
第一のたばこ充填物は、香料を含んでいてもよい。当該香料の種類は、特に限定されず、良好な喫味の付与の観点から、アセトアニソール、アセトフェノン、アセチルピラジン、2-アセチルチアゾール、アルファルファエキストラクト、アミルアルコール、酪酸アミル、トランス-アネトール、スターアニス油、リンゴ果汁、ペルーバルサム油、ミツロウアブソリュート、ベンズアルデヒド、ベンゾインレジノイド、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、2,3-ブタンジオン、2-ブタノール、酪酸ブチル、酪酸、カラメル、カルダモン油、キャロブアブソリュート、β-カロテン、ニンジンジュース、L-カルボン、β-カリオフィレン、カシア樹皮油、シダーウッド油、セロリーシード油、カモミル油、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、シンナミルアルコール、ケイ皮酸シンナミル、シトロネラ油、DL-シトロネロール、クラリセージエキストラクト、ココア、コーヒー、コニャック油、コリアンダー油、クミンアルデヒド、ダバナ油、δ-デカラクトン、γ-デカラクトン、デカン酸、ディルハーブ油、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジヒドロフラン-2-オン、3,7-ジメチル-6-オクテン酸、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2-メチル酪酸エチル、酢酸エチル、酪酸エチル、ヘキサン酸エチル、イソ吉草酸エチル、乳酸エチル、ラウリン酸エチル、レブリン酸エチル、エチルマルトール、オクタン酸エチル、オレイン酸エチル、パルミチン酸エチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ステアリン酸エチル、吉草酸エチル、エチルバニリン、エチルバニリングルコシド、2-エチル-3,(5または6)-ジメチルピラジン、5-エチル-3-ヒドロキシ-4-メチル-2(5H)-フラノン、2-エチル-3-メチルピラジン、ユーカリプトール、フェネグリークアブソリュート、ジェネアブソリュート、リンドウ根インフュージョン、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ブドウ果汁、グアヤコール、グァバエキストラクト、γ-ヘプタラクトン、γ-ヘキサラクトン、ヘキサン酸、シス-3-ヘキセン-1-オール、酢酸ヘキシル、ヘキシルアルコール、フェニル酢酸ヘキシル、ハチミツ、4-ヒドロキシ-3-ペンテン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-4-(3-ヒドロキシ-1-ブテニル)-3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、4-(パラ-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、4-ヒドロキシウンデカン酸ナトリウム、インモルテルアブソリュート、β-イオノン、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、フェニル酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、フェニル酢酸イソブチル、ジャスミンアブソリュート、コーラナッツティンクチャー、ラブダナム油、レモンテルペンレス油、カンゾウエキストラクト、リナロール、酢酸リナリル、ロベージ根油、マルトール、メープルシロップ、メンソール、メントン、酢酸L-メンチル、パラメトキシベンズアルデヒド、メチル-2-ピロリルケトン、アントラニル酸メチル、フェニル酢酸メチル、サリチル酸メチル、4’-メチルアセトフェノン、メチルシクロペンテノロン、3-メチル吉草酸、ミモザアブソリュート、トウミツ、ミリスチン酸、ネロール、ネロリドール、γ-ノナラクトン、ナツメグ油、δ-オクタラクトン、オクタナール、オクタン酸、オレンジフラワー油、オレンジ油、オリス根油、パルミチン酸、ω-ペンタデカラクトン、ペパーミント油、プチグレインパラグアイ油、フェネチルアルコール、フェニル酢酸フェネチル、フェニル酢酸、ピペロナール、プラムエキストラクト、プロペニルグアエトール、酢酸プロピル、3-プロピリデンフタリド、プルーン果汁、ピルビン酸、レーズンエキストラクト、ローズ油、ラム酒、セージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スチラックスアブソリュート、マリーゴールド油、ティーディスティレート、α-テルピネオール、酢酸テルピニル、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、1,5,5,9-テトラメチル-13-オキサシクロ(8.3.0.0(4.9))トリデカン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、タイム油、トマトエキストラクト、2-トリデカノン、クエン酸トリエチル、4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)2-ブテン-4-オン、2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1,4-ジオン、4-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエニル)2-ブテン-4-オン、2,3,5-トリメチルピラジン、γ-ウンデカラクトン、γ-バレロラクトン、バニラエキストラクト、バニリン、ベラトルアルデヒド、バイオレットリーフアブソリュート、N-エチル-p-メンタン-3-カルボアミド(WS-3)、エチル-2-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート(WS-5)が挙げられ、特に好ましくはメンソールである。また、これらの香料は1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0044】
第一のたばこ充填物中の香料の含有量は、特に限定されず、良好な喫味の付与の観点から、通常10000ppm以上であり、好ましくは20000ppm以上であり、より好ましくは25000ppm以上であり、また、通常50000ppm以下であり、好ましくは40000ppm以下であり、より好ましくは33000ppm以下である。
【0045】
第一のたばこ充填物における充填密度は、特に限定されないが、非燃焼加熱式たばこの性能を担保し、良好な喫味の付与の観点から、通常250mg/cm3以上であり、好ましくは320mg/cm3以上であり、また、通常800mg/cm3以下であり、好ましくは600mg/cm3以下である。
上記の第一のたばこ充填物は、それが内側になるように巻紙によって巻装されてたばこロッドを形成する。
【0046】
第二のたばこ充填物は、同心状に配置された複数のたばこシートから構成される。本発明において、「同心状に配置されている」とは、すべてのたばこシートの中心が略同じ位置にあるように配置されていることをいう。本発明において「シート」とは、略平行な1対の主面、および側面を有する形状をいう。第二の充填物は、非燃焼加熱式たばこの長手方向と直交する方向に、複数のたばこシートを同心状に巻き回して構成される。
シート基材としては、例えば、たばこ粉末等のたばこ材料等が挙げられるが、特に、たばこ材料が好ましい。たばこ材料の基材シートに、必要に応じて香味を発生じうる成分を担持したたばこシートであることが好ましい。たばこシートは、加熱に伴ってエアロゾルを生成する。エアロゾル生成基材としてグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール等のポリオール等のエアロゾル源を添加する。かかるエアロゾル生成基材の添加量は、たばこシートの乾燥重量に対して5~50重量%が好ましく、15~25重量%がより好ましい。
【0047】
同心状に配置される前の素材としてのたばこシートについて説明する。
たばこシートは、抄造、スラリー、圧延、等の公知の方法で適宜製造できる。なお、第一のたばこ充填物で説明した均一化シートを用いることもできる。
抄造の場合は、以下の工程を含む方法で製造できる。1)乾燥たばこ葉を粗砕し、水で抽出して水抽出物と残渣に分離する。2)水抽出物を減圧乾燥して濃縮する。3)残渣にパルプを加え、リファイナで繊維化した後、抄紙する。4)抄紙したシートに水抽出物の濃縮液を添加して乾燥し、たばこシートとする。この場合、ニトロソアミン等の一部の成分を除去する工程を加えてもよい(特表2004-510422号公報参照)。
スラリー法の場合は、以下の工程を含む方法で製造できる。1)水、パルプ及びバインダと、砕いたたばこ葉を混合する。2)当該混合物を薄く延ばして(キャストして)乾燥する。この場合、水、パルプ及びバインダと、砕いたたばこ葉を混合したスラリーに対して紫外線照射もしくはX線照射することでニトロソアミン等の一部の成分を除去する工程を加えてもよい。
【0048】
この他、国際公開第2014/104078号に記載されているように、以下の工程を含む方法によって製造された不織布状のたばこシートを用いることもできる。1)粉粒状のたばこ葉と結合剤を混合する。2)当該混合物を不織布によって挟む。3)当該積層物を熱溶着によって一定形状に成形し、不織布状のたばこシートを得る。
前記の各方法で用いる原料のたばこ葉の種類は、第一の充填物で説明したものと同じものを用いることができる。
たばこシートの組成は特に限定されないが、例えば、たばこ原料(たばこ葉)の含有量はたばこシート全重量に対して50~95重量%であることが好ましい。また、たばこシートはバインダを含んでもよく、係るバインダとしては、例えば、グアーガム、キサンタンガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、CMC-Na(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩)等が挙げられる。バインダ量としては、たばこシート全重量に対して1~20重量%であることが好ましい。たばこシートはさらに他の添加物を含んでもよい。添加物としては、例えばパルプなどのフィラーを挙げることができる。本発明においては複数のたばこシートを用いるが、係るたばこシートはすべて同じ組成あるいは物性であってもよいし、各たばこシートの中の一部または全部が異なる組成あるいは物性であってもよい。
【0049】
第二のたばこ充填物は、幅の異なる複数のたばこシートを準備して、底部から頂部に向かって幅が小さくなるように積層した積層体を調製し、これを巻管に通して巻き上げ成形することで製造できる。この製造方法によれば、該複数のたばこシートが、長手方向に延在するとともに、該長手方向軸を中心として同心状に配置されるようになる。また、該長手方向軸と、最内層のたばこシートとの間に、長手方向に延在する嵌合部が形成されてもよい。
この製造方法において、積層体は巻上げ成形後に隣接する前記たばこシート間に非接触部が形成されるように調製されることが好ましい。
複数のたばこシート間に、当該たばこシートが接触しない非接触部(隙間)が存在すると、香味流路を確保して香味成分のデリバリー効率を高めることができる。他方で、複数のたばこシートの接触部分を介してヒーターからの熱を外側のたばこシートに伝達できるので高い熱伝熱効率を確保することができる。
【0050】
複数のたばこシート間に、当該たばこシートが接触しない非接触部を設けるために、例えば、エンボス加工したたばこシートを用いる、隣接するたばこシート同士の全面を接着せずに積層する、隣接するたばこシート同士の一部を接着して積層する、あるいは隣接するたばこシート同士の全面あるいは一部を、巻上げ成形後に剥がれるように軽度に接着して積層することで積層体を調製する方法を挙げることができる。
巻紙を含めたたばこロッドを調製する場合には、積層体の最底部に上記の巻紙を配置してもよい。
また、積層体の最頂部にマンドレル等の筒状ダミーを載置して第二のたばこ充填物を形成した後に、当該ダミーを除去することで、嵌合部を形成することもできる。
各たばこシートの厚みについては制限されないが、伝熱効率と強度の兼ね合いから、200~600μmが好ましい。各たばこシートの厚みについては、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
第二のたばこ充填物を構成するたばこシートの枚数は、特段制限されないが、例えば2枚、3枚、4枚、5枚、または6枚を挙げることができる。
【0051】
第三のたばこ充填物は、折りたたまれた単一のたばこシートから構成される。当該シートは、たばこロッドの長手方向と同程度の長さを有し、たばこロッドの長手方向と水平に複数回折り返され充填される、いわゆるギャザーシートであってもよい。当該シートの厚さは伝熱効率と強度の兼ね合いから、200~600μmが好ましい。
第三のたばこ充填物に用いられるシート基材は、上記第二のたばこ充填物と同様のものを用いることができる。
【0052】
[巻紙]
巻紙の構成は、特段制限されず、一般的なものを用いることができる。例えば、巻紙に用いられる原紙としては、セルロース繊維紙を用いることができ、より具体的には、麻もしくは木材あるいはそれらの混合物を挙げることができる。なお、ここでいう「巻紙」とは、たばこ充填物を巻装するためのものである。本願明細書の図面ではこの巻紙については図示していない。
巻紙は填料を含んでいてもよく、填料の種類は限定されるものではなく、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの金属硫酸塩、硫化亜鉛などの金属硫化物、石英、カオリン、タルク、ケイソウ土、石膏などが挙げられ、特に、白色度・不透明度の向上及び加熱速度の増加の観点から炭酸カルシウムを含んでいることが好ましい。
巻紙中の填料の配合割合は、特に限定されるものではなく、通常1~50重量%であり、5~45重量%であることが好ましく、10~42重量%であることがより好ましく、20~40重量%であることが特に好ましい。なお、例えば、炭酸カルシウムの含有量を求める場合、灰分測定により、又は、抽出後、カルシウムイオンを定量することにより求めることができる。
上記範囲の下限を下回ると巻紙が焦げやすくなり、また、上限を上回ると巻紙の強度が大きく低下し、巻上性が悪化し得る。
【0053】
巻紙には、原紙や填料以外の種々の助剤を添加してもよく、例えば、耐水性を向上させるために、耐水性向上剤を添加することができる。耐水性向上剤には、湿潤紙力増強剤(WS剤)及びサイズ剤が含まれる。湿潤紙力増強剤の例を挙げると、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン(PAE)等である。また、サイズ剤の例を挙げると、ロジン石けん、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、ケン化度が90%以上の高ケン化ポリビニルアルコール等である。
助剤として、紙力増強剤を添加してもよく、例えば、ポリアクリルアミド、カチオンでんぷん、酸化でんぷん、CMC、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリビニルアルコール等を挙げられる。特に、酸化でんぷんについては、極少量用いることにより、通気度が向上することが知られている(特開2017-218699号公報)。
また、巻紙は、適宜コーティングされていてもよい。
【0054】
巻紙には、その表面及び裏面の2面うち、少なくとも1面にコーティング剤が添加されてもよい。コーティング剤としては特に制限はないが、紙の表面に膜を形成し、液体の透過性を減少させることができるコーティング剤が好ましい。例えばアルギン酸及びその塩(例えばナトリウム塩)、ペクチンのような多糖類、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロースのようなセルロース誘導体、デンプンやその誘導体(例えばカルボキシメチルデンプン、ヒドロキシアルキルデンプン及びカチオンデンプンのようなエーテル誘導体、酢酸デンプン、リン酸デンプン及びオクテニルコハク酸デンプンのようなエステル誘導体)を挙げることができる。
【0055】
巻紙の坪量は、通常20~45g/m2であり、20~45g/m2であることが好ましい。この範囲内であると、適度な強度及び巻上性を維持することができる。
巻紙の通気度は、通常0~120コレスタ単位であり、5~100コレスタ単位であることが好ましく、10~80コレスタ単位であることがより好ましい。この範囲内であると、適度な強度及び喫味を維持することができる。
【0056】
<マウスピース部>
非燃焼加熱式たばこ1の構成は、特段制限されず、一般的な態様とすることができる。例えば、
図1や
図2に示すように、マウスピース部は単一の部材から形成されてもよいし、
図3に示すように、たばこロッド側に冷却部14、吸い口側にフィルター部15が配置された複数のセグメントから構成されていてもよい。
【0057】
[冷却部]
冷却部14の構成は、たばこ主流煙を冷却する機能を有していれば、特段制限されず、例えば、厚紙を円筒状に加工したものを挙げることができる。この場合は円筒状の内側は空洞であり、エアロゾル生成基材とたばこ香味成分とを含む蒸気が空洞内の空気と接触して冷却される。
【0058】
非燃焼加熱式たばこ1は、冷却部14と、その冷却部14を覆うチップペーパー12の一部に、外部からの空気を取り入れるための開孔(図示せず)を有してもよい。そのような開孔が存在することで、使用時に外部から冷却部14の内部に空気が流入し、前記たばこロッドが加熱されることで生じるエアロゾル生成基材とたばこ香味成分とを含む蒸気が、外部からの空気と接触して温度が低下することで液化し、エアロゾルが生成されることを促進させることができる。また、冷却部14が複数の開孔を有する場合、該複数の開孔が冷却部14の外周面の周方向に配置される。その周方向の配置の数は、特段制限されず、2つ以上存在していてもよい。なお、冷却部14は、空洞を有する円筒形状とする態様を挙げることができるが、該形状には限定されない。
開孔は、径が100~1000μmであることが好ましく、300~800μmであることがより好ましい。開孔は、略円形もしくは略楕円形であることが好ましく、略楕円形の場合の前記径は長径を表す。
【0059】
また、チップペーパー12や樹脂組成物13についても、冷却部14の開孔が貫通するように孔を有していてよく、また、孔を有していなくともよいが、冷却効果を促進する観点から、孔を有している方が好ましい。
また、開孔は、冷却部14の外周面の周方向に配置されるが、その周方向の配置(「円周配置」とも称する。)の数は、特段制限されず、2つ以上存在していてもよい。
また、冷却部14の内側に、紙、ポリマーフィルム、または金属箔などシート形状の部材をギャザー加工したものを充填してもよい。この場合、これら部材の比熱を利用して前記蒸気を冷却することもできる。
冷却部14の長軸方向の高さは、特段制限されないが、冷却機能を確保する観点から、通常5~40mmであり、10~35mmであることが好ましく、15~30mmであることがより好ましい。
【0060】
[フィルター部]
フィルター部15の構成は、一般的なフィルターとしての機能を有していれば、特段制限されず、例えば、セルロースアセテートトウを円柱状に加工したものを挙げることができる。セルロースアセテートトウの単糸繊度、総繊度は特に限定されないが、円周22mmのフィルター部の場合は、単糸繊度は5~12g/9000m、総繊度は12000~30000g/9000mであることが好ましい。セルロースアセテートトウの繊維の断面形状は、Y断面でもよいしR断面でもよい。セルロースアセテートトウを充填したフィルターの場合は、フィルター硬さを向上するためにトリアセチンをセルロースアセテートトウ重量に対して、5~10重量%添加してもよい。
図3ではフィルター部15は単一のセグメントから構成されているが、複数のセグメントから構成されていてもよい。複数のセグメントから構成されている場合、例えば上流側(たばこロッド側)にセンターホール等の中空のセグメントを配置し、下流側(使用者の吸口端側)のセグメントとして吸口断面がセルロースアセテートトウで充填されたアセテートフィルターを配置する態様を挙げることができる。このような態様によれば、生成するエアロゾルの無用な損失を防ぐとともに、非燃焼加熱式たばこの外観を良好にすることができる。また、吸いごたえの感覚変化や咥え心地の観点から、上流側にアセテートフィルターを配置し、下流側にセンターホール等の中空のセグメントを配置する態様でもよい。なお、当該アセテートフィルターの代わりに、シート状のパルプ紙を充填したペーパーフィルターを用いる態様でもよい。
また、フィルターの製造において、通気抵抗の調整や添加物(公知の吸着剤や香料、香料保持材等)の添加を適宜設計できる。
【0061】
<電気加熱式たばこ製品>
電気加熱式たばこ製品の一実施形態は、ヒーター部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱型デバイスと、該ヒーター部材に接触するように挿入される、上記の非燃焼加熱式たばこと、から構成される、電気加熱式たばこ製品である。
電気加熱式たばこ製品の態様としては
図4に示すような、非燃焼加熱式たばこの外周面を加熱する態様であってもよく、
図5に示すような、非燃焼加熱式たばこにおけるたばこロッド部の内部から加熱する態様であってもよい。なお、
図4及び
図5に示す電気加熱式デバイス2には空気導入孔が設けられているが、ここでは図示しない。以下、
図4を用いて電気加熱式たばこ製品を説明する。
電気加熱式たばこ製品3は、電気加熱式デバイス2の内部に配置された、ヒーター部材23に、上記で説明した非燃焼加熱式たばこ1が接触するように挿入されて使用される。
電気加熱式デバイス2は、例えば樹脂性の躯体22の内部に、電池ユニット20と制御ユニット21とを有する。
非燃焼加熱式たばこ1を電気加熱式デバイス2に挿入すると、たばこロッド部の外周面が電気加熱式デバイス2のヒーター部材23と接触し、やがてたばこロッド部の外周面の全部と巻装部の外周面の一部がヒーター部材に接触する。
電気加熱式デバイス2のヒーター部材23は、制御ユニット20による制御により発熱する。その熱が非燃焼加熱式たばこのたばこロッド部に伝わることで、たばこロッド部のたばこ充填物に含まれるエアロゾル生成基材や香味成分等が揮発する。
【0062】
該ヒーター部材は、例えばシート状ヒーター、平板状ヒーター、筒状ヒーターであってよい。シート状ヒーターとは柔軟なシート形のヒーターであり、例えばポリイミド等の耐熱性ポリマーのフィルム(厚み20~225μm程度)を含むヒーターが挙げられる。平板状ヒーターとは剛直な平板形のヒーター(厚み200~500μm程度)であり、例えば平板基材上に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒーターが挙げられる。筒状ヒーターとは中空または中実の筒形のヒーター(厚み200~500μm程度)であり、例えば金属製等の筒の外周面に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒーターが挙げられる。また、内部に抵抗回路を有し、当該部分を発熱部とする金属製等の棒状ヒーター、錐状ヒーターも挙げられる。筒状ヒーターの断面形状は円、楕円、多角、角丸多角等であってよい。
図4に示すような、非燃焼加熱式たばこの外周面を加熱する態様である場合、上記のシート状ヒーター、平板状ヒーター、筒状ヒーターを用いることができる。一方で、
図5に示すような、非燃焼加熱式たばこにおけるたばこロッド部の内部から加熱する態様である場合は、上記の平板状ヒーターや柱状ヒーター、錐状ヒーターを用いることができる。
該ヒーター部材の長軸方向の長さは、たばこロッド部の長軸方向の長さをLmmとしたときに、L±5.0mmの範囲内とすることができる。該ヒーター部材の長軸方向の長さは、たばこロッド部に十分に熱を伝え、たばこ充填物に含まれるエアロゾル生成基材や香味成分等を十分に揮発させる、すなわちエアロゾルデリバリーの観点から、Lmm以上であることが好ましく、喫味等へ不所望な影響を及ぼす成分の発生を抑制する観点からL+0.5mm以下、L+1.0mm以下、L+1.5mm以下、L+2.0mm以下、L+2.5mm以下、L+3.0mm以下、L+3.5mm以下、L+4.0mm以下、L+4.5mm以下又はL+5.0mm以下であることが好ましい。
【0063】
該ヒーター部材による非燃焼加熱式たばこの加熱時間や加熱温度といった加熱強度は、電気加熱式たばこ製品ごとにあらかじめ設定することができる。例えば、電気加熱式デバイスに非燃焼加熱式たばこを挿入した後に、一定時間の予備加熱を行うことで、非燃焼加熱式たばこにおける、該デバイスに挿入されている部分の所定の位置の外周面の温度がX(℃)になるまで加熱し、その後、該温度がX(℃)以下の一定温度を保つように、あらかじめ設定することができる。
上記X(℃)は、エアロゾルデリバリー量の観点から、80℃以上400℃以下であることが好ましい。具体的には、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃、280℃、290℃、300℃、310℃、320℃、330℃、340℃、350℃、360℃、370℃、380℃、390℃、400℃とすることができる。
上記巻装部を構成するチップペーパーにおける、樹脂組成物が塗工された領域で、上記のヒーター部材により加熱される部位の温度は、通常、使用時に230℃を超えることはない。当該部位の使用時の加熱温度については、200℃以上、230℃未満、180℃以上、200℃未満、または160℃以上、180℃未満でありうる。なお、従来のニトロセルロースを含む塗工剤を用いた場合には、通常、その塗工領域が200℃を超えて加熱されると、上記で挙げたTSNAが生じ得る。
電気加熱式デバイスで非燃焼加熱式たばこを加熱する際の、該非燃焼加熱式たばこにおける所定の位置の外周面の温度は、後述する方法で測定する。
ヒーター部材による加熱により、たばこロッド部から生じるエアロゾル生成基材や香味成分等を含む蒸気は、冷却部やフィルター部等から構成されるマウスピース部を通して使用者の口腔内に到達する。
【0064】
<非燃焼加熱式たばこにおける外周面の温度の測定方法>
電気加熱式デバイスで非燃焼加熱式たばこを加熱する際の、該非燃焼加熱式たばこにおける外周面の温度は、以下の方法で測定する。
非燃焼加熱式たばこの巻装部の外周面において、該非燃焼加熱式たばこを使用する際に、所定の位置の温度測定ができるように、熱電対(東亜電器株式会社製、型番TI-SP-K)を貼り付ける。熱電対の貼り付けには、ポリイミドテープ(厚さ50μm)をカットして用いる。
熱電対を貼り付けた前記非燃焼加熱式たばこを、電気加熱式デバイスに挿入した後、上述の<喫煙試験>におけるヒーター温度下での、各測定点の最高温度を記録し、非燃焼加熱式たばこにおける所定の位置の外周面の温度とする。
【0065】
<喫煙試験>
喫煙試験は、Canadian Intense Smoking(CIR)を参考に下記の条件で行う。
例えば、上述した電気加熱式たばこ製品を使用し、非燃焼加熱式たばこのたばこロッド部を挿入した後に、ヒーター温度を17秒間以内で230℃まで昇温し、当該温度を23秒間維持した後、170℃~175℃の温度範囲で一定に保つ。この後、喫煙試験はボルグワルド社製1本がけ自動喫煙機を用いて、流量55cc/2秒、喫煙間隔30秒の条件で自動喫煙を行う。この際、冷却部の外周に施された外部空気導入孔はふさがずに喫煙試験を行う。喫煙試験で発生した主流煙をケンブリッジパッドに捕集し、パフ動作を10回行なった後にケンブリッジパッドを取り出す。
【0066】
<TSNA量の測定方法>
非燃焼加熱式たばこ中のTSNA量の測定方法は、特段制限されないが、例えば、測定対象を0.1M(mol/L)の酢酸アンモニウム水溶液に加え、攪拌抽出(180rpm、60min)を行い、その後、ガラス繊維フィルターでろ過し、得られたろ液をイオンクロマトグラフィーに供して行うことができる。なお、移動相としては、酢酸水溶液及び酢酸メタノール溶液を用いることができる。
【実施例】
【0067】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨から逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0068】
<実施例及び比較例>
[巻装部を形成するチップペーパーの準備]
表1に示す組成を有する樹脂組成物を準備した。各樹脂組成物では、固形分重量が14~15重量%となるように固形分成分を溶媒(酢酸エチル)に溶解して調整した。また、チップペーパーとして、日本製紙パピリア製のチップペーパー(坪量37g/mm2、厚み40μm)を使用し、巻円周は22mm、巻き長さは40mmとなるような大きさで準備した。
上記のチップペーパーに対し、参考例1以外では、20μl用のマイクロピペットチップ先で樹脂組成物を塗工した。この際、チップペーパーにおける樹脂組成物に起因する固形分の重量が0.21重量%となるように均一に塗工した。参考例1では、上記のチップペーパー原紙をそのまま用いた。
【0069】
[たばこロッド部の作製]
たばこ充填物として、あらかじめ香料2g/100g、エアロゾル生成基材(グリセリン)40/100gをシートたばこの刻みに混合したものを準備した。高速巻き上げ機を用い、巻紙(日本製紙パピリア製、坪量35g/m2、厚み52μm)でたばこ充填物を巻き上げた。
1本あたりの刻み重量は0.8g、巻円周は22mm、巻き長さは68mmとした。
巻き上げたたばこロッドは水準毎に200本ずつプラスチックの密閉容器に入れて保管した。
【0070】
[非燃焼加熱式たばこの作製]
前記方法で作製したたばこロッド部を長さ20mmに切断した。その後、たばこロッド部を、長さ20mmの紙管の外周に希釈空気孔を施した冷却部と、長さ8mmの貫通孔を有したセンターホールフィルターで構成される支持部と、長さ7mmの酢酸セルロース繊維が充填されたフィルター部とを、上記で準備したチップペーパーにより手作りで巻装することで巻装部を形成し、実施例及び比較例の非燃焼加熱式たばこを作製した。
【0071】
<喫煙試験>
実施例及び比較例で作製した各非燃焼加熱式たばこを喫煙試験に供した。喫煙試験に供した電気加熱式たばこ製品として、上述した構成を有するものを使用した。非燃焼加熱式たばこのたばこロッド部を挿入した後に、ヒーター温度を17秒間以内で230℃まで昇温し、当該温度を23秒間維持した後、170℃~175℃の温度範囲で一定に保った。この後、喫煙試験はボルグワルド社製1本がけ自動喫煙機を用いて、流量55cc/2秒、喫煙間隔30秒の条件で自動喫煙を行った。冷却部の外周に施された外部空気導入孔はふさがずに喫煙試験を行なった。喫煙試験で発生した主流煙はケンブリッジパッドに捕集された。パフ動作を10回行なった後でケンブリッジパッドを取り出した。
【0072】
<TSNAの測定>
以下の方法に従い、喫煙試験後の非燃焼加熱式たばこに含まれるTSNA量を測定した。
取り出したケンブリッジパッドを用いて攪拌抽出(180rpm、60min)を行った。その後、抽出液をガラス繊維フィルターでろ過し、得られたろ液をイオンクロマトグラフィーに供することでTSNA量を測定した。なお、移動相としては、酢酸水溶液及び酢酸メタノール溶液を用いた。実施例及び比較例の非燃焼加熱式たばこを用いて行った各測定対象のTSNA含有量を表1に示す。
【0073】
<チップペーパーのカール性の評価>
15秒/ZC#3に溶剤で調整した表1に記載の各樹脂組成物を上記のチップペーパー原紙にコーターで塗工(版深度30μm相当)後、ドライヤーで乾燥し、試料を作製した。
原紙幅を6cmにカットし、室温に24時間放置した状態で試料の凹カールの状態(原紙幅6cmの両端の浮き)を評価した。5点評価の平均を算出した(単位:mm)。結果を表1に示す。
【表1】
【0074】
表1において、樹脂組成物にエチルセルロースを添加した場合(比較例3、実施例1)と、ニトロセルロースを添加した場合(比較例1、比較例2)とを比較すると、ニトロセルロースを添加した場合の方が、TSNAの生成量が明らかに多いことが分かった。
【0075】
また、表1の結果から、樹脂組成物がニトロセルロースを含む場合では、それを単独で含む場合(比較例1)と、可塑剤とを合わせて含む場合(比較例2)とで大きな差はなく、可塑剤の添加による効果は見られなかった。一方、樹脂組成物がエチルセルロースを含む場合では、それを単独で含む場合(比較例3)と可塑剤とを合わせて含む場合(実施例1)とでは、実施例1の方がカール性の数値が半減しており、可塑剤の添加による顕著な効果が認められた。
【0076】
樹脂組成物に任意成分として顔料または感熱顕色剤を添加した場合の影響を確認するため、以下の試験を行った。
(実施例4)
上記実施例等と同様に、樹脂組成物に顔料(アルミニウム(東京インキ社製))を、重量比で、顔料:エチルセルロース=2:1となるように添加したものを調製し、実施例と同様の手順でチップペーパーを作製した。作製したチップペーパーを用いてたばこロッド部を上記実施例と同様に作製し、さらに非燃焼加熱式たばこを作製した。
(比較例4)
上記実施例等と同様に、樹脂組成物に顔料(アルミニウム(東京インキ社製))を、重量比で顔料:ニトロセルロース=2:1となるように添加したものを調製し、実施例と同様の手順でチップペーパーを作製した。作製したチップペーパーを用いてたばこロッド部を上記実施例と同様に作製し、さらに非燃焼加熱式たばこを作製した。
(実施例5)
上記実施例等と同様に、樹脂組成物に感熱顕色剤(クエン酸三カリウム・一水和物(扶桑化学工業(株)社製))を、重量比で感熱顕色剤:エチルセルロース=4:3となるように添加したものを調製し、実施例と同様の手順でチップペーパーを作製した。作製したチップペーパーを用いてたばこロッド部を上記実施例と同様に作製し、さらに非燃焼加熱式たばこを作製した。
(比較例5)
上記実施例等と同様に、樹脂組成物に感熱顕色剤(クエン酸三カリウム・一水和物(扶桑化学工業(株)社製))を、重量比で感熱顕色剤:ニトロセルロース=4:3となるように添加したものを調製し、実施例と同様の手順でチップペーパーを作製した。作製したチップペーパーを用いてたばこロッド部を上記実施例と同様に作製し、さらに非燃焼加熱式たばこを作製した。
【0077】
上記で作製したチップペーパー及び非燃焼加熱式たばこを用いて、上記実施例等と同様に、喫煙試験、TSNA測定、カール性の評価を行った。結果を以下の表2に示す。
【0078】
【0079】
上記表2の結果から、樹脂組成物に任意成分として顔料または感熱顕色剤を添加した場合でも、本発明の所定の樹脂を用いた場合にはTSNA発生抑制効果が得られ、可塑剤との併用でカール性の低減も確認できた。一方で、樹脂としてニトロセルロースを用いた比較例では、そのような効果は得られなかった。
【符号の説明】
【0080】
1 非燃焼加熱式たばこ
10 たばこロッド部
11 マウスピース部
12 チップペーパー
13 樹脂組成物
14 冷却部
15 フィルター部
2 電気加熱式デバイス
20 電池ユニット
21 制御ユニット
22 躯体
23 ヒーター部材
3 電気加熱式たばこ製品