(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】フレキシブル表示パネル
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20241009BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20241009BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20241009BHJP
H10K 59/80 20230101ALI20241009BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20241009BHJP
H10K 85/00 20230101ALI20241009BHJP
【FI】
G09F9/30 310
C08G73/10
G09F9/30 308Z
G09F9/30 317
G09F9/30 338
H10K59/12
H10K59/80
H10K77/10
H10K85/00
(21)【出願番号】P 2022548929
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 CN2022081367
(87)【国際公開番号】W WO2023168737
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】202210229437.7
(32)【優先日】2022-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517333336
【氏名又は名称】武漢華星光電半導体顕示技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUHAN CHINA STAR OPTOELECTRONICS SEMICONDUCTOR DISOLAY TECHNOLOGY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】305 Room,Building C5 Biolake of Optics Valley,No.666 Gaoxin Avenue,.Wuhan East Lake High-tech Development Zone Wuhan,Hubei 430079 China
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】楊 国強
【審査官】村上 遼太
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113328046(CN,A)
【文献】特表2018-508119(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0006685(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0085237(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第108878446(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112331784(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/133-1/1334
1/1339-1/1341
1/1347
G09F 9/00-9/46
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1有機基板と、
前記第1有機基板の一側に設けられ、少なくとも1つの電子吸引性基を含む電荷パッシベーション層と、
前記電荷パッシベーション層の前記第1有機基板から遠い側に設けられる第1無機層と、
前記第1無機層の第1有機基板から遠い側に設けられる薄膜トランジスタ層と、を含
み、
前記電荷パッシベーション層は、前記第1有機基板の前記薄膜トランジスタ層に近い側の表面に設けられるフレキシブル表示パネル。
【請求項2】
第1有機基板と、
前記第1有機基板の一側に設けられ、少なくとも1つの電子吸引性基を含む電荷パッシベーション層と、
前記電荷パッシベーション層の前記第1有機基板から遠い側に設けられる第1無機層と、
前記第1無機層の第1有機基板から遠い側に設けられる薄膜トランジスタ層と、
前記第1有機基板と前記第1無機層との間に設けられる第2無機層と、
前記第2無機層と前記第1無機層との間に設けられる第2有機基板と、
を含み、
前記電荷パッシベーション層が前記第1有機基板と前記第2無機層との間に設けられ、及び/又は、前記電荷パッシベーション層が前記第2有機基板と前記第1無機層との間に設けられ
、
前記電荷パッシベーション層は、前記第2有機基板の前記薄膜トランジスタ層に近い側の表面に設けられるフレキシブル表示パネル。
【請求項3】
前記電荷パッシベーション層は、前記第1有機基板と同じ有機材料を用いて電荷をパッシベーション化して製造されるか、又は、前記電荷パッシベーション層は、前記第2有機基板と同じ有機材料を用いて電荷をパッシベーション化して製造される請求項
2に記載のフレキシブル表示パネル。
【請求項4】
前記電荷パッシベーション層は、前記第1有機基板と同じ有機材料をフッ素化して製造されるか、又は、前記電荷パッシベーション層は、前記第2有機基板と同じ有機材料をフッ素化して製造される請求項
3に記載のフレキシブル表示パネル。
【請求項5】
前記第1有機基板及び前記第2有機基板は、同じ有機材料を有する請求項
3に記載のフレキシブル表示パネル。
【請求項6】
前記電荷パッシベーション層の誘電率が2.7以下であり、前記電荷パッシベーション層の380nm~780nmの光に対する透過率が79%以上である請求項
3に記載のフレキシブル表示パネル。
【請求項7】
前記電荷パッシベーション層は、-X-Y-(式中、Xは、テトラカルボン酸二無水物に由来する第1構成単位を含み、Yは、ジアミンに由来する第2構成単位を含み、前記第1構成単位及び前記第2構成単位の少なくとも一方が少なくとも1つの電子吸引性基を含む)で表される構成元素を含み、
前記少なくとも1つの電子吸引性基は、ニトロ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、トリヨードメチル基、シアノ基、スルホン酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選ばれる少なくとも1種である請求項1
又は2に記載のフレキシブル表示パネル。
【請求項8】
前記電荷パッシベーション層は、テトラカルボン酸二無水物に由来する第3構成単位及び/又はジアミンに由来する第4構成単位をさらに含み、前記第1構成単位及び前記第3構成単位において、電子吸引性基を含む構成単位の質量%は、前記第1構成単位と前記第3構成単位との2質量%~6質量%を占め、及び/又は
前記第2構成単位及び前記第4構成単位において、電子吸引性基を含む構成単位の質量%は、前記第2構成単位と前記第4構成単位との2質量%~6質量%を占める請求項
7に記載のフレキシブル表示パネル。
【請求項9】
前記電荷パッシベーション層の材料は、下記式(1)~(3)のいずれかで表される構成元素を含む請求項
8に記載のフレキシブル表示パネル。
【化1】
(ただし、式(1)中、R
1~R
8はそれぞれ独立にH及びフッ素含有置換基から選ばれ、R
1~R
8の少なくとも1つはフッ素含有置換基である。)
【化2】
(ただし、式(2)中、R
1~R
7はそれぞれ独立にH及びフッ素含有置換基から選ばれ、R
1~R
7の少なくとも1つはフッ素含有置換基である。)
【化3】
(ただし、式(3)中、R
1~R
4はそれぞれ独立にH及びフッ素含有置換基から選ばれ、R
1~R
4の少なくとも1つはフッ素含有置換基である。)
【請求項10】
前記電荷パッシベーション層の材料は、下記式(4)~(10)のいずれかで表される構成元素を含む請求項
9に記載のフレキシブル表示パネル。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示の技術分野に関し、特にフレキシブル表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の表示技術の急速な発展に伴い、表示技術分野は、より軽く、より薄く、より柔らかく、より透明な方向に発展している。従来のガラス基板は、それ自体が硬く、脆いなどの特性のため、将来のフレキシブル表示技術の要求を満たすことが困難となる。高分子フィルム基板は、軽量で、力学強度が高いなどの特徴を有し、表示パネルの可撓性に対する要求に基づき、可撓性高分子フィルム基板は将来の可撓性表示技術の好ましい材料となる。
【0003】
しかしながら、実用上、有機可撓性高分子材料を基板とする表示パネルの方が、ガラスを基板とする表示パネルよりも残像が発生しやすいことが見出されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑みて、本発明は、残像を低減することができるフレキシブル表示パネルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
第1有機基板と、
前記第1有機基板の一側に設けられ、少なくとも1つの電子吸引性基を含む電荷パッシベーション層と、
前記電荷パッシベーション層の前記第1有機基板から遠い側に設けられる第1無機層と、
前記第1無機層の第1有機基板から遠い側に設けられる薄膜トランジスタ層と、を含むフレキシブル表示パネルを提供する。
【0006】
所望により、一実施形態において、前記電荷パッシベーション層は、前記第1有機基板の前記薄膜トランジスタ層に近い側の表面に設けられる。
【0007】
所望により、一実施形態において、
前記第1有機基板と前記第1無機層との間に設けられる第2無機層と、
前記第2無機層と前記第1無機層との間に設けられる第2有機基板と、をさらに含み、
前記電荷パッシベーション層が前記第1有機基板と前記第2無機層との間に設けられ、及び/又は、前記電荷パッシベーション層が前記第2有機基板と前記第1無機層との間に設けられる。
【0008】
所望により、一実施形態において、前記電荷パッシベーション層は、前記第2有機基板の前記薄膜トランジスタ層に近い側の表面に設けられる。
【0009】
所望により、一実施形態において、前記電荷パッシベーション層は、前記第1有機基板と同じ有機材料を用いて電荷をパッシベーション化して製造されるか、又は、前記電荷パッシベーション層は、前記第2有機基板と同じ有機材料を用いて電荷をパッシベーション化して製造される。
【0010】
所望により、一実施形態において、前記電荷パッシベーション層は、前記第1有機基板と同じ有機材料をフッ素化して製造されるか、又は、前記電荷パッシベーション層は、前記第2有機基板と同じ有機材料をフッ素化して製造される。
【0011】
所望により、一実施形態において、前記第1有機基板及び前記第2有機基板は、同じ有機材料を有する。
【0012】
所望により、一実施形態において、前記電荷パッシベーション層の誘電率が2.7以下であり、前記電荷パッシベーション層の380nm~780nmの光に対する透過率が79%以上である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフレキシブル表示パネルは、第1有機基板と薄膜トランジスタ層との間に電子吸引性基を含む電荷パッシベーション層を形成することにより、電荷パッシベーション層が電子の移動を束縛することができ、第1有機基板の分極により発生した電荷がその上に設けられる薄膜トランジスタに影響を及ぼすことを防止し、薄膜トランジスタの電気的安定性を維持し、残像の発生を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明における技術的手段をより明確に説明するために、以下の実施例の説明で使用する必要がある図面を簡単に紹介し、以下の説明における図面は、本発明の幾つかの実施例に過ぎなく、当業者にとっては創造的努力なしにこれらの図面から他の図面を導き出すこともできることは明らかである。
【
図1】
図1は従来技術においてポリイミドが薄膜トランジスタの電気的特性に影響を与える原理を示す図である。
【
図2】
図2は従来技術のポリイミド分子内及び分子間にCTCを形成する原理図である。
【
図3】
図3はポリイミド上に設けられる薄膜トランジスタと、ガラス上に設けられる薄膜トランジスタとの異なる温度及び電圧下で閾値電圧の変化を示す図である。
【
図4】
図4は本発明の第1実施形態のフレキシブル表示パネルの構造概略図である。
【
図5】
図5(a)は本発明の実施例1のフッ素を含むポリイミドフィルムのEDX(Energy Dispersive X-Ray Spectroscopy,エネルギー分散型X線分析)を示す図であり、
図5(b)は本発明の実施例1のフッ素を含むポリイミドフィルムのC、O及びFの元素分布図である。
【
図6】
図6(a)は比較例のポリイミドフィルムのEDXを示す図であり、
図6(b)は比較例のポリイミドフィルムのC、O及びFの元素分布図である。
【
図7】
図7は実施例1~3及び比較例のポリイミドの誘電率と長時間残像との関係である。
【
図8】
図8は本発明の第2実施形態のフレキシブル表示パネルの構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態における図面を参照しながら、本発明における技術的手段を、明確かつ完全に説明する。説明した実施形態はすべての実施形態ではなく、本発明の一部の実施形態であることは明らかである。本発明における実施形態に基づいて、当業者が創造的努力なしに取得したすべての他の実施形態は、いずれも本発明の保護範囲に属している。
【0016】
本発明において、別途明確な規定及び限定がない限り、第1特徴が第2特徴の「上」または「下」にあることは、第1特徴及び第2特徴が直接接続されていてもよいし、または第1特徴及び第2特徴が直接接続されておらず、それらの間の他の特徴を介して接触されていることを含んでいてもよい。さらに、第1特徴が第2特徴の「上」、「上方」及び「上面」にあることは、第1特徴が第2特徴の真上及び斜め上方にあることを含み、又は単に第1特徴の高さが第2特徴よりも高いことを示してもよい。第1特徴が第2特徴の「下」、「下方」及び「下面」にあることは、第1特徴が第2特徴の真下及び斜め下方にあることを含み、又は単に第1特徴の高さが第2特徴よりも低いことを示してもよい。また、「第1」、「第2」という用語は、単に説明するためのものであり、相対的な重要性を指示又は示唆するか、又は示される技術的特徴の数を暗示すると理解されるべきではない。したがって、「第1」、「第2」によって限定されている特徴は、1つ又は複数の特徴を含むことを明示又は暗示することができる。
【0017】
有機材料を基板とする表示パネルで発生する残像問題に対して、発明者らは、ポリイミド有機基板を例に研究した。現在、パネルメーカが一般的に用いられるポリイミドの材料は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-Biphenyl tetracarboxylic diandhydride,BPDA)及びp-フェニレンジアミン(p-Phenylenediamine,p-PDA)で合成されたポリアミド酸の高分子化合物であることが研究から分かった。このポリイミド材料は、一般的に寸法安定性及び力学特性に優れているが、分子構造の配列が整っていること及び分子の嵩密度が大きいことから、
図1に示すように、分子内及び分子間に電荷移動錯体(charge transfer complex,CTC)を形成する効果が強い。ポリイミド分子内及び分子間の電子が移動することにより、ポリイミドの分極が発生する。
図2に示すように、特にアレイ基板の製造工程において、ポリイミド材料に分極が生じ、ポリイミドフィルムPIの表面に電荷が蓄積される。ポリイミドフィルムPIの表面に設けられる薄膜トランジスタデバイスTFTが動作するときに、ポリイミドフィルムPIの表面に蓄積される電荷がトランジスタデバイスTFTの特性に影響を与え、パネル動作時に残像(Image Sticking)が発生する。
図3を参照すると、発明者らは、ポリイミド上に設けられる薄膜トランジスタと、ガラス基板上に設けられる薄膜トランジスタとの異なる温度及び電圧下で閾値電圧(Vth)をそれぞれ測定した。試験の結果から、同じ温度及び電圧ストレスで、ポリイミド基板上に設けられる薄膜トランジスタの閾値電圧の正側シフトが、ガラス基板上に設けられる薄膜トランジスタの閾値電圧の正側シフトよりも、はるかに大きいことが分かった。さらに、ストレスがキャンセルされると、閾値電圧が元のレベルに速やかに回復し、ポリイミド電荷の薄膜トランジスタ特性への影響が証明された。
【0018】
有機材料の分極により薄膜トランジスタの電気的特性に影響を与えることを防止するために、本発明は、第1有機基板、電荷パッシベーション層、第1無機層及び薄膜トランジスタ層を含むフレキシブル表示パネルを提供する。電荷パッシベーション層は、第1有機基板の一側に設けられ、少なくとも1つの電子吸引性基を含む。第1無機層は、電荷パッシベーション層の第1有機基板から遠い側に設けられる。薄膜トランジスタ層は、第1無機層の第1有機基板から遠い側に設けられる。
【0019】
本発明のフレキシブル表示パネルは、第1有機基板と薄膜トランジスタ層との間に電子吸引性基を含む電荷パッシベーション層を形成することにより、電荷パッシベーション層が電子の移動を束縛することができ、第1有機基板の分極により発生した電荷がその上に設けられる薄膜トランジスタに影響を及ぼすことを防止し、薄膜トランジスタの電気的安定性を維持し、残像の発生を低減する。
【0020】
図4を参照すると、本発明は、フレキシブル表示パネル100を提供する。所望により、フレキシブル表示パネル100が有機発光ダイオード表示パネルであってもよい。フレキシブル表示パネル100は、基板10、第1無機層20及び薄膜トランジスタ層30を含む。第1無機層20は、基板10の一側に設けられ、薄膜トランジスタ層30は、第1無機層20の基板10から遠い側に設けられる。
【0021】
基板10は、第1有機基板11、第2有機基板12、及び第1有機基板11と第2有機基板12との間に設けられる第2無機層13を含む。第2無機層13は、第1有機基板11と第1無機層20との間に設けられる。第2有機基板12は、第2無機層13と第1無機層20との間に設けられる。第1有機基板11及び第2有機基板12は、同じ有機材料を有してもよい。なお、本実施形態において、基板10のうち薄膜トランジスタ層30から遠い有機基板を第1有機基板11と呼び、薄膜トランジスタ層30に近い有機基板を第2有機基板12と呼び、本発明の他の実施形態において、第1有機基板11は薄膜トランジスタ層30に近い有機基板であってもよく、第2有機基板12は薄膜トランジスタ層30から遠い有機基板であってもよい。
【0022】
所望により、第1無機層20は、バッファ層BL及びバリア層3Lの少なくとも一方を含む。本実施形態において、第1無機層20は、バッファ層BL及びバリア層3Lを含む。バッファ層BLは、窒化シリコン、酸化シリコン、又は窒化シリコンと酸化シリコンとの積層を含む。バリア層3Lは、窒化シリコン、酸化シリコン及びa-Siの積層を含む。
【0023】
フレキシブル表示パネル100は、第1有機基板11の薄膜トランジスタ30に近い側に設けられる電荷パッシベーション層14をさらに含む。電荷パッシベーション層14は、少なくとも1つの電子吸引性基を含む。所望により、電荷パッシベーション層14が第1有機基板11と前記第2無機層13との間に設けられ、及び/又は、電荷パッシベーション層14が第2有機基板12と第1無機層20との間に設けられる。さらに、電荷パッシベーション層14が第1有機基板11の薄膜トランジスタ層30に近い側の表面に設けられ、及び/又は、電荷パッシベーション層14が第2有機基板12の薄膜トランジスタ30に近い側の表面にさらに設けられてもよい。
【0024】
電荷パッシベーション層14は、有機基板と薄膜トランジスタ層30との間に位置することで、有機基板の材料の分極により薄膜トランジスタ層30の作動に影響を与えることを防止することができる。さらに、電荷パッシベーション層14と薄膜トランジスタ層30との間には、電荷パッシベーション層14からの水分の侵入を防止することができる無機層がさらに設けられる。
【0025】
所望により、電荷パッシベーション層14は、第1有機基板11と同じ有機材料を用いて電荷をパッシベーション化して製造されるか、又は、電荷パッシベーション層14は、第2有機基板12と同じ有機材料を用いて電荷をパッシベーション化して製造される。さらに、電荷パッシベーション層14は、第1有機基板11と同じ有機材料をフッ素化して製造されるか、又は、電荷パッシベーション層14は、第2有機基板12と同じ有機材料をフッ素化して製造される。
【0026】
具体的には、電荷パッシベーション層14は、第1電荷パッシベーション層141及び第2電荷パッシベーション層142を含むことができる。第1電荷パッシベーション層141は、第1有機基板11と薄膜トランジスタ層30との間に設けられる。さらに、第1電荷パッシベーション層141は、第1有機基板11の薄膜トランジスタ層30に近い側の表面に設けられる。第2電荷パッシベーション層142は、第2有機基板12と薄膜トランジスタ層30との間に設けられる。さらに、第2電荷パッシベーション層142は、第2有機基板12の薄膜トランジスタ層30に近い側の表面に設けられる。所望により、第1有機基板11の厚さが5~15μmであり、第2有機基板12の厚さが5~10μmである。
【0027】
以下、第1有機基板11及び第1電荷パッシベーション層141を例として、第1有機基板11及び第1電荷パッシベーション層141の材料を詳細に説明する。第2有機基板12及び第2電荷パッシベーション層142は、第1有機基板11及び第1電荷パッシベーション層141を参照することができる。
【0028】
第1電荷パッシベーション層141は、第1有機基板11と同じ有機材料を用いて電荷をパッシベーション化して製造される。具体的には、第1電荷パッシベーション層141は、第1有機基板11と同じ有機材料をフッ素化して製造される。第1電荷パッシベーション層141は、第2有機基板12と同じ有機材料を用いて電荷をパッシベーション化して製造されてもよいことを理解されたい。逆に、第2電荷パッシベーション層142は、第1有機基板11と同じ有機材料を用いて電荷をパッシベーション化して製造されてもよい。
【0029】
第1有機基板11の材料が従来のポリイミドである。第1電荷パッシベーション層141の材料は、少なくとも1つの電子吸引性基を含むポリイミドである。第1電荷パッシベーション層141に含まれる少なくとも1つの電子吸引性基は、電子を捕獲(trap)し、電子の移動を束縛することで、電荷をパッシベーション化する役割を果たすことができる。所望により、少なくとも1つの電子吸引性基は、ニトロ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、トリヨードメチル基、シアノ基、スルホン酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選ばれる少なくとも1種であってもよい。なお、第1有機基板11の材料は、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルイミド(PEI)及びポリエーテルスルホン(PES)のいずれか1つであってもよい。したがって、第1電荷パッシベーション層141の材料は、少なくとも1つの電子吸引性基を含む上記材料である。
【0030】
所望により、少なくとも1つの電子吸引性基を含むポリイミドの第1電荷パッシベーション層141は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの縮合反応により形成することができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの少なくとも一方が電子吸引性基を含むか、又はテトラカルボン酸二無水物、ジアミンと電子吸引性基を含むアルコールとを混合して、縮合反応を行いながらテトラカルボン酸二無水物又はジアミンに電子吸引性基の置換基を形成する。具体的には、第1電荷パッシベーション層141の材料は、-X-Y(ただし、Xは、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を表し、Yは、ジアミンに由来する構成単位を表す)で表される構成元素を含む。Xは、テトラカルボン酸二無水物に由来する第1構成単位を含み、Yは、ジアミンに由来する第2構成単位を含み、第1構成単位及び第2構成単位の少なくとも一方が電子吸引性基を含む。
【0031】
テトラカルボン酸二無水物は、式(X1)~(X7)で表されるテトラカルボン酸二無水物から選ばれてもよく、
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【0032】
ジアミンは、式(Y1)~(Y3)で表されるジアミンから選ばれてもよく、
【化8】
【化9】
【化10】
なお、上記(X1)~(X7)及び(Y1)~(Y3)で表される二無水物又はジアミンは、いずれもフッ素を含む電子吸引性基を含むことを例として、本発明の二無水物又はジアミンはこれらに限定されるものではない。
【0033】
フッ素を含む電子吸引性基は、熱安定性に劣り、硬化時に界面位置に濃縮され、OH-等の基と水素結合を形成することによって、表面に第1電荷パッシベーション層141を形成する。さらに、電子吸引性基の添加のため、ポリイミドの熱安定性に影響を及ぼす恐れがある。したがって、第1電荷パッシベーション層141には、電子吸引性基を含むテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位及び電子吸引性基を含むジアミンに由来する構成単位に加えて、電子吸引性基を含まないテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位及び電子吸引性基を含まないジアミンに由来する構成単位、又は、ポリイミドの熱安定性を確保するために、当該技術分野において一般的に用いられているテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位及びジアミンに由来する構成単位が含まれていてもよい。具体的には、第1電荷パッシベーション層141は、テトラカルボン酸二無水物に由来する第3構成単位及び/又はジアミンに由来する第4構成単位をさらに含む。第1構成単位及び第3構成単位において、電子吸引性基を含む構成単位の質量%は、第1構成単位と第3構成単位との2質量%~6質量%、好ましくは3質量%~6質量%を占め、及び/又は第2構成単位及び第4構成単位において、電子吸引性基を含む構成単位の質量%は、第2構成単位と第4構成単位との2質量%~6質量%、好ましくは3質量%~6質量%を占める。電子吸引性基を含む構成単位の質量%が第1構成単位~第4構成単位の質量%に対して6質量%を超えると、ガス放出(outgassing)を発生させ、熱安定性に影響を与える恐れがあり、電子吸引性基を含む構成単位の質量%が第1構成単位~第4構成単位の質量%に対して2質量%未満であると、電子をパッシベーション化する効果が著しくなくなる。
【0034】
以下、様々な状況について具体的に説明する。
【0035】
一実施形態において、第1電荷パッシベーション層141は、下記式で表されるポリイミド構成元素を含み、
-Ya-Xa-Ya-、-Ya-Xb-Ya-(式中、Xaは電子吸引性基を含まないテトラカルボン酸二無水物に由来する第1構成単位であり、Xbは電子吸引性基を含む当該技術分野によく用いられるテトラカルボン酸二無水物に由来する第3構成単位であり、Yaは電子吸引性基を含まないジアミンに由来する第2構成単位である。)Xbの質量%は、XaとXbとの合計質量%の2質量%~6質量%を占める。
【0036】
一実施形態において、第1電荷パッシベーション層141は、下記式:
-Ya-Xa-Ya-、-Yb-Xa-Yb-、-Ya-Xa-Yb-(式中、Xaは電子吸引性基を含まないテトラカルボン酸二無水物に由来する第1構成単位であり、Yaは電子吸引性基を含まないジアミンに由来する第2構成単位であり、Ybは電子吸引性基を含むジアミンに由来する第4構成単位である。)で表されるポリイミド構成元素を含み、Ybの質量%は、YaとYbと計質量%の2質量%~6質量%を占める。
【0037】
一実施形態において、第1電荷パッシベーション層141は、下記式:
-Ya-Xa-Ya-、-Ya-Xb-Ya-、-Yb-Xa-Yb-、-Yb-Xb-Yb-、-Ya-Xa-Yb-(式中、Xaは電子吸引性基を含まないテトラカルボン酸二無水物に由来する第1構成単位であり、Xbは電子吸引性基を含むテトラカルボン酸二無水物に由来する第3構成単位であり、Yaは電子吸引性基を含まないジアミンに由来する第2構成単位であり、Ybは電子吸引性基を含むジアミンに由来する第4構成単位である。)で表されるポリイミド構成元素を含み、電子吸引性基を含む構成単位の質量%は、第1構成単位~第4構成単位の2質量%~6質量%を占めるように、Xbの質量%は、XaとXbとの合計質量%の2質量%~6質量%を占め、Ybの質量%は、YaとYbとの2質量%~6質量%を占める。
【0038】
所望により、第1電荷パッシベーション層141は、第1有機基板11上に独立して設けられていてもよく、即ち、第1有機基板11を先に形成し、第1有機基板11上に第1電荷パッシベーション層141を形成する。なお、第1有機基板11の表面に第1電荷パッシベーション層141を形成することができればよく、本発明は第1電荷パッシベーション層141の形成態様を限定するものではない。本発明の第1電荷パッシベーション層141は、電子吸引性基を含むポリイミドを除く他の材料であってもよい。
【0039】
所望により、第1電荷パッシベーション層141の材料は、下記式(1)~(3)のいずれかで表される構成元素を含み、
【化11】
(ただし、式(1)中、R
1~R
8はそれぞれ独立にH及びフッ素含有置換基から選ばれ、R
1~R
8の少なくとも1つはフッ素含有置換基である。)
【化12】
(ただし、式(2)中、R
1~R
7はそれぞれ独立にH及びフッ素含有置換基から選ばれ、R
1~R
7の少なくとも1つはフッ素含有置換基である。)
【化13】
(ただし、式(3)中、R
1~R
4はそれぞれ独立にH及びフッ素含有置換基から選ばれ、R
1~R
4の少なくとも1つはフッ素含有置換基である。)
【0040】
具体的には、フッ素を含む置換基は、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であってもよい。
【0041】
フッ素を含むポリイミドの硬化の際に、フッ素原子が自発的に移動し、ポリイミド表層に凝集する。分子内及び分子間のCTCを低減する原理は、分子中にフッ素などの強い電子吸収性基を導入することにより、分子内及び分子間の電子の非局在化が低減され、フッ素原子により捕獲されることである。分子間及び分子間の非局在化効果が低減され、ポリイミドの分極を防止する。さらに、フッ素を含む置換基がトリフルオロメチル基である場合に、トリフルオロメチル基が3次元立体配置であるため、立体障害が大きくなり、分子間の非局在化効果が低減され、ポリイミドの分極をさらに防止する。基板10上に設けられる薄膜トランジスタ素子が動作する場合に、ポリイミド基板と薄膜トランジスタデバイスとの界面に作用する電界は、ポリイミド中の電子の自由な移動を発生させることがなく、従来のポリイミド材料の電界作用下による分極移動を効果的に改善し、薄膜トランジスタの閾値電圧に対するポリイミド基板の影響を低減し、長時間残像を改善する役割を果たす。
【0042】
より具体的には、第1電荷パッシベーション層141の材料は、下記式(4)~(10)のいずれかで表される構成元素を含み、
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
下記式(4)~(10)のいずれかで表される構成元素を含む第1電荷パッシベーション層141の材料は、市販材料から容易に合成することができる。
なお、式(7)で表される構成元素を含むポリイミドは、ナノサイズ範囲を有する多孔質6FXDA/6FDAmポリイミドナノフォームである。
【0043】
所望により、第1電荷パッシベーション層141は、第1有機基板11と一体的に形成される。第1電荷パッシベーション層141は、第1有機基板11と同じ工程で製造することができるので、製造工程を簡略化し、第1電荷パッシベーション層141と第1有機基板11との接合力を高めることができる。勿論、第1電荷パッシベーション層141は、第1有機基板11とは別工程で製造されてもよい。
【0044】
以下、本発明の第1実施形態のポリイミド基板の製造方法及び利点を説明する。
【0045】
本発明のポリイミド基板の製造方法の一つは、表面にフッ素化ポリイミドの電荷パッシベーション層を有するポリイミドフィルムを形成する方法であり、その製造方法は、以下の3つの方式を含む。
【0046】
1)テトラカルボン酸二無水物とジアミンモノマーとの合成の際に、フッ素を含むジアミンモノマーを導入するが、フッ素を含むジアミンモノマーの相対含有量(フッ素を含むジアミンモノマーの質量%の、フッ素を含むジアミンモノマーとフッ素を含まないジアミンモノマーとの質量%に対する)を6%以下にし、フッ素を含むポリアミド酸を形成し、イミド化によりポリイミドを形成すること。
2)モノマーとの合成の際に、フッ素を含むテトラカルボン酸二無水物モノマーを導入するが、フッ素を含むテトラカルボン酸二無水物モノマーの相対含有量(フッ素を含むテトラカルボン酸二無水物モノマーの質量%の、フッ素を含むテトラカルボン酸二無水物モノマーとフッ素を含まないテトラカルボン酸二無水物モノマーとの質量%に対する)を6%以下にし、フッ素を含むポリアミド酸を形成し、イミド化によりポリイミドを形成すること。
3)二無水物とジアミンモノマーとの撹拌反応による合成の際に、フッ素を含む小分子を導入し、フッ素を含むポリアミド酸を形成し、イミド化によりポリイミドを形成すること。
【0047】
ポリアミド酸をイミド化によりポリイミドを形成する方式は、塗布(Coating)によりポリアミド酸のウェットフィルム塗布を行い、ウェットフィルム塗布が終了後、HVCD(急速真空乾燥)を行って溶媒を除去して、ウェットフィルムをセットし、さらに高温硬化(Curing)を行い、フッ素化ポリイミドフィルムを形成する。ここで、HVCDの条件は40~80℃、空気圧は0~10Pa、時間は250~550sである。硬化温度は400~450℃、硬化時間は13分である。
【0048】
実施例1
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1-トリフルオロメチル-p-フェニレンジアミンを100:98:2の質量%でN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させて撹拌して反応させ、ポリアミド酸を生成させ、ポリアミド酸をイミド化させてポリイミドフィルムを形成し、ポリイミドフィルムの性能を測定した。ポリイミドフィルムを形成する反応式:
【化21】
で表され、
合成したポリイミドフィルムを基板10とする。上述したように、基板10は、第1有機基板11及び第2有機基板12を含む。第1有機基板11の厚さが5~15μmであり、第2有機基板12の厚さが5~10μmである。
基板10の上方にSiO
x層を堆積した後、その上方に薄膜トランジスタ層30を製造するとともに、その長時間残像を測定した。長時間残像の測定条件は、碁盤目を点灯して10分間エージングした後に、丁度可知差異(Just Notice Diffidences,JND)値を測定した。
また、実施例1の第1有機基板11に対してEDX走査及びEDX表面走査を行った。
【0049】
実施例2
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ジフルオロメチル-4,4’,5,5’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを、97:3:100の質量%でN-メチルピロリドンに溶解させて撹拌して反応させ、ポリアミド酸を生成させ、ポリアミド酸をイミド化させてポリイミドフィルムを形成し、ポリイミドフィルムの性能を測定した。ポリイミドフィルムを形成する反応式:
【化22】
で表され、
合成したポリイミドフィルムを用いて基板10を形成する。上述したように、基板10は、第1有機基板11及び第2有機基板12を含む。第1有機基板11の厚さが5~15μmであり、第2有機基板12の厚さが5~10μmである。
基板10の上方にSiO
x層を堆積した後、その上方に薄膜トランジスタ層30を製造するとともに、その長時間残像を測定した。長時間残像の測定条件は、碁盤目を点灯して10分間エージングした後に、丁度可知差異値を測定した。
【0050】
実施例3
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、フルオロエタノールを100:100:6の質量%でN-メチルピロリドンに溶解させて撹拌して反応させ、ポリアミド酸を生成させ、ポリアミド酸をイミド化させてポリイミドフィルムを形成し、ポリイミドフィルムの性能を測定した。ポリイミドフィルムを形成する反応式:で表され、
【化23】
合成したポリイミドフィルムを用いて基板10を形成する。上述したように、基板10は、第1有機基板11及び第2有機基板12を含む。第1有機基板11の厚さが5~15μmであり、第2有機基板12の厚さが5~10μmである。
基板10の上方にSiO
x層を堆積した後、その上方に薄膜トランジスタ層30を製造するとともに、その長時間残像を測定した。長時間残像の測定条件は、碁盤目を点灯して10分間エージングした後に、丁度可知差異値を測定した。
【0051】
比較例1
従来方法で合成したポリイミドフィルムを用いて基板を形成する。上述したように、基板は、2つのポリイミド基板を含む。薄膜トランジスタから遠いポリイミド基板の厚さが5~15μmであり、薄膜トランジスタに近いポリイミド基板の厚さが5~10μmである。
基板の上方にSiO
x層を堆積した後、その上方に薄膜トランジスタを製造するとともに、その長時間残像を測定した。長時間残像の測定条件は、碁盤目を点灯して10分間エージングした後に、丁度可知差異値を測定した。
また、薄膜トランジスタから遠いポリイミド基板に対してEDX表面走査を行った。
図5(a)を参照すると、
図5(a)は、実施例1では成功に合成したフッ素を含むポリイミドを示し、
図5(b)の第3図の明るい部分は、第1ポリイミド基板中のフッ素原子の含有量及び分布を示す。
図6(a)を参照すると、
図6(a)は、比較例でポリイミドにフッ素が含まれていないことを示し、
図6(b)の第3図は、ポリイミド基板にフッ素原子が含まれていないことを示す。
【0052】
実施例1~3及び比較例の性能データは以下の通りである。
【表1】
表1から、フッ素化ポリイミド材料の特性は、従来のポリイミドと比べて著しく変化されず、実施例1~3のポリイミドフィルムは、誘電率が低減し、いずれも2.7以下であることが分かった。また、フッ素原子の含有量が高くなるにつれて、フッ素化ポリイミドフィルムの誘電率が徐々に低下する。実施例1~3のポリイミドフィルムは、380nm~780nmの光に対する透過率が79%以上であり、従来のポリイミドよりも透過率が僅かに改善され、画面下撮像用OLEDバックプレーンの基板材料として有利である。
【0053】
図7を参照すると、実施例1~3では、フッ素化ポリイミドフィルムをアレイ基板構造の基板として用いるが、薄膜トランジスタデバイスは、電圧及び温度のストレス下で、その閾値電圧が著しくシフトすることはなく、従来のポリイミド材料をアレイ基板の基板として用いた場合に、薄膜トランジスタデバイスは動作時に、閾値電圧が大幅にシフトすることにより長時間残像が深刻になるという問題を効果的に改善することができる。フッ素等の電子吸引性基が存在することにより、フッ素化ポリイミドの誘電率が小さく、電圧及び温度のストレス下で、ポリイミドの分極力が弱く、ポリイミドが分極した後、電荷の分離が遅くても、対応する薄膜トランジスタデバイスは電圧及び温度のストレス下で、閾値電圧シフトが小さく、回復が遅いため、長時間残像が効果的に改善される。
【0054】
上述した実施形態において、2層の電子吸引性基を含むポリイミド基板を電荷パッシベーション層の基板として用いることにより、電子を束縛する能力が強くなることを例示した。本発明の他の実施形態において、第1有機基板11及び第2有機基板12の少なくとも一方の、薄膜トランジスタ層30に近い表面に電荷パッシベーション層が設けられればよいことを理解されたい。
【0055】
所望により、本発明の基板10は、単層のポリイミド基板及び電荷パッシベーション層を含んでいてもよい。単層のポリイミド基板の厚さが15μm又は12μmである。
【0056】
図8を参照すると、本発明の第2実施形態と第1実施形態との相違点は、
第1無機層20がバリア層であることにある。バリア層は、窒化シリコン、酸化シリコン及びa-Siの積層を含む。電荷パッシベーション層24がバッファ層BLと第1無機層20との間に設けられる。
【0057】
本発明の第2実施形態において、バリア層と薄膜トランジスタとの間に電荷パッシベーション層を設けることにより、電子の移動を束縛し、有機基板の分極による薄膜トランジスタへの影響を低減する効果を奏することができる。
【0058】
本発明の一変形例として、バッファ層BLは、窒化シリコン、酸化シリコン、又は窒化シリコンと酸化シリコンとの積層を含む。バリア層は、窒化シリコン、酸化シリコン及びa-Siの積層を含む。バッファ層BL及びバリア層3Lの各々は、第1無機層20と呼ばれてもよい。フレキシブル表示パネル100は、第1無機層20と薄膜トランジスタ層30との間に設けられる少なくとも1つの電荷パッシベーション層24を含んでいてもよい。即ち、電荷パッシベーション層24は、バッファ層BL及びバリア層3Lの外部に設けられていてもよいし、バッファ層BL及びバリア層3Lの内部に設けられていてもよい。
【0059】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本明細書では具体的な実施例を用いて本発明の原理及び実施形態について説明し、以上の実施形態の説明は本発明を理解するためのものに過ぎない。一方、当業者であれば、本発明の構想に基づき、具体的な実施形態及び適用範囲に変更を加えることがあり、要約すると、本明細書の内容は本発明を限定するものとして理解されるべきではない。