(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】成形システム及び成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 51/32 20060101AFI20241009BHJP
B29C 51/08 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B29C51/32
B29C51/08
(21)【出願番号】P 2023029557
(22)【出願日】2023-02-28
【審査請求日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】202210260016.0
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】川田 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 隼也
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-136736(JP,A)
【文献】特開平06-270365(JP,A)
【文献】特開平05-220828(JP,A)
【文献】特開平02-305627(JP,A)
【文献】特開昭57-133019(JP,A)
【文献】特公昭48-044182(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/32
B29C 51/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型と、
当該下型に対し進退自在に設けられた上型と、
前記下型及び前記上型の間に設けられたシート材料を切断するトリム刃と、を備える成形システムであって、
前記下型の側面視における下型端よりも外側に設けられかつ前記上型側へ延びる下プレートと、
前記上型と共に進退するように前記上型の側面視における上型端よりも外側に設けられかつ前記下プレート側へ延びる上プレートと、を備え、
前記トリム刃による切断面は、前記シート材料のうち前記下型端より外側の部分である余剰縁部と交差し、
前記余剰縁部の少なくとも一部は、前記下型及び前記上型を型締めした状態では前記下プレート及び前記上プレートの間に挟み込まれ
、
前記下プレート及び前記上プレートには、それぞれ前記切断面に沿ったスリット状の下ガイド部及び上ガイド部が形成され、
前記トリム刃は、前記下ガイド部及び前記上ガイド部を移動することによって前記余剰縁部を切断することを特徴とする成形システム。
【請求項2】
前記下型は、第1基材が設置された第1下型面及び第2基材が設置された第2下型面を備え、
前記第1及び第2基材は、前記下型及び前記上型を型締めすることによってそれぞれ前記シート材料に張り付けられ、
前記トリム刃は、平面視では前記第1下型面と前記第2下型面との間において前記シート材料を切断することにより、前記シート材料を前記第1基材が張り付けられた第1製品部と前記第2基材が張り付けられた第2製品部とに切り分けることを特徴とする請求項
1に記載の成形システム。
【請求項3】
前記下型及び前記上型の間において、平面視では前記下プレート及び前記上プレートが前記シート材料の端辺よりも内側に配置されるように前記端辺の少なくとも一部を把持する枠体をさらに備えることを特徴とする請求項1
又は2に記載の成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形システム及び成形方法に関する。より詳しくは、シート材料を挟んで設けられた下型及び上型を型締めし、このシート材料をトリム刃で切断することによって製品を成形する成形システム及び成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂製のシート材料を成形して、自動車のインストルメントパネルの表皮を形成する方法として、シート材料を加熱してからさらに延伸し、真空成形しながらインストルメントパネルの基材をシート材料に接着する方法が知られている(例えば、本願出願人による特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の方法では、シート材料を把持枠によって把持し、このシート材料を加熱装置によって加熱し、このシート材料を予め基材が設置された下型と上型との間に配置し、さらにこれら下型及び上型を型締めすることによって、基材にシート材料を接着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1に記載の成形方法では、1つの下型に2つの同形の下型面を形成しておくことにより、1枚のシート材料から2つの同形の製品を製造している。しかしながらこの特許文献1では、下型及び上型を型締めした後、シート材料を切断し、これら2つの製品を切り分ける工程については十分に検討されていない。このような場合、製品の製造にかかるサイクルタイムの短縮や設備の簡素化を考慮すると、下型及び上型を型締めして成形する際に、同じ設備に設けられたトリム刃によってシート材料を切断することが好ましい。
【0006】
図17は、特許文献1に記載の成形装置に、下型101及び上型102を型締めした後のシート材料103を切断するためのトリム刃104を設けた成形装置100を模式的に示す図である。
【0007】
上述のように特許文献1に記載の成形装置では、下型101及び上型102を型締めする前にシート材料103の端部を把持枠によって把持する必要があるため、シート材料103には、下型101及び上型102の側面視における金型端105からはみ出た余剰縁部103aが存在する。このため上型101に設けたトリム刃104を下降させると、
図17に示すように余剰縁部103aが下方に逃げてしまい、切断不良が生じてしまう場合がある。
【0008】
本発明は、金型端からはみ出た余剰縁部を含めて適切にシート材料を切断できる成形システム及び成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る成形システム(例えば、後述の成形システム1)は、下型(例えば、後述の下型60)と、当該下型に対し進退自在に設けられた上型(例えば、後述の上型66)と、前記下型及び前記上型の間に設けられたシート材料(例えば、後述のシート材料2)を切断するトリム刃(例えば、後述のトリム刃7)と、前記下型の側面視における下型端(例えば、後述の第1下型端60a及び第2下型端60b)よりも外側に設けられかつ前記上型側へ延びる下プレート(例えば、後述の第1下プレート81及び第2下プレート91)と、前記上型と共に進退するように前記上型の側面視における上型端(例えば、後述の第1上型端66a)よりも外側に設けられかつ前記下プレート側へ延びる上プレート(例えば、後述の第1上プレート85及び第2上プレート95)と、を備え、前記トリム刃による切断面(例えば、後述の切断面71)は、前記シート材料のうち前記下型端より外側の部分である余剰縁部(例えば、後述の第1余剰縁部25及び第2余剰縁部26)と交差し、前記余剰縁部の少なくとも一部は、前記下型及び前記上型を型締めした状態では前記下プレート及び前記上プレートの間に挟み込まれることを特徴とする。
【0010】
(2)この場合、前記下プレート及び前記上プレートには、それぞれ前記切断面に沿ったスリット状の下ガイド部(例えば、後述の第1下ガイド部83)及び上ガイド部(例えば、後述の第1上ガイド部87)が形成され、前記トリム刃は、前記下ガイド部及び前記上ガイド部を移動することによって前記余剰縁部を切断することが好ましい。
【0011】
(3)この場合、前記下型は、第1基材(例えば、後述の第1基材63)が設置された第1下型面(例えば、後述の第1下型面61a)及び第2基材(例えば、後述の第2基材64)が設置された第2下型面(例えば、後述の第2下型面62a)を備え、前記第1及び第2基材は、前記下型及び前記上型を型締めすることによってそれぞれ前記シート材料に張り付けられ、前記トリム刃は、平面視では前記第1下型面と前記第2下型面との間において前記シート材料を切断することにより、前記シート材料を前記第1基材が張り付けられた第1製品部と前記第2基材が張り付けられた第2製品部とに切り分けることが好ましい。
【0012】
(4)この場合、前記下型及び前記上型の間において、平面視では前記下プレート及び前記上プレートが前記シート材料の端辺(例えば、後述の端辺25a,26a)よりも内側に配置されるように前記端辺の少なくとも一部を把持する枠体(例えば、後述の把持枠30)をさらに備えることが好ましい。
【0013】
(5)本発明に係る成形方法は、シート材料(例えば、後述のシート材料2)を挟んで設けられた下型(例えば、後述の下型60)及び上型(例えば、後述の上型66)を型締めし、前記シート材料をトリム刃(例えば、後述のトリム刃7)で切断することによって製品を成形する方法であって、前記下型及び前記上型の間に前記シート材料を配置し、前記下型及び前記上型を型締めする成形工程(例えば、後述の
図12のステップS3の工程)と、前記下型及び前記上型を型締めした後、前記トリム刃を移動させることによって前記シート材料を切断する切断工程(例えば、後述の
図12のステップS4の工程)と、を備え、前記切断工程では、前記トリム刃による切断面が前記シート材料のうち前記下型の側面視における下型端(例えば、後述の第1下型端60a及び第2下型端60b)よりも外側の部分である余剰縁部(例えば、後述の第1余剰縁部25及び第2余剰縁部26)と交差するように前記余剰縁部の少なくとも一部を位置決めした状態で前記シート材料を切断することを特徴とする。
【0014】
(6)この場合、前記切断工程では、前記下型端よりも外側に設けられかつ前記上型側へ延びる下プレート(例えば、後述の第1下プレート81及び第2下プレート91)と、前記上型と共に進退するように前記上型の側面視における上型端(例えば、後述の第1上型端66a)よりも外側に設けられかつ前記下プレート側へ延びる上プレート(例えば、後述の第1上プレート85及び第2上プレート95)との間に前記余剰縁部の少なくとも一部を挟み込むことによって前記余剰縁部を位置決めすることが好ましい。
【0015】
(7)この場合、前記成形工程では、前記下型に形成された第1下型面(例えば、後述の第1下型面61a)及び第2下型面(例えば、後述の第2下型面62a)にそれぞれ第1基材(例えば、後述の第1基材63)及び第2基材(例えば、後述の第2基材64)を設置した状態で前記下型及び前記上型を型締めすることによって前記第1基材及び前記第2基材を前記シート材料に張り付け、前記切断工程では、平面視では前記第1下型面と前記第2下型面との間において前記シート材料を切断することにより、前記シート材料を前記第1基材が張り付けられた第1製品部と前記第2基材が張り付けられた第2製品部とに切り分けることが好ましい。
【0016】
(8)この場合、前記成形工程では、前記下型及び前記上型の間において、平面視では前記下プレート及び前記上プレートが前記シート材料の端辺よりも内側に配置されるように枠体(例えば、後述の把持枠30)によって前記端辺を把持した状態で前記下型及び前記上型を型締めすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
(1)本発明に係る成形システムは、シート材料を切断するトリム刃と、下型の側面視における下型端よりも外側に設けられかつ上型側へ延びる下プレートと、上型と共に進退するように上型の側面視における上型端よりも外側に設けられかつ下プレート側へ延びる上プレートと、を備える。また本発明に係る成形システムでは、トリム刃による切断面(すなわち、トリム刃を可動範囲内で移動させたときに、このトリム刃の刃先によって形成される面)は、シート材料の余剰縁部と交差し、この余剰縁部の少なくとも一部は、下型及び上型を型締めした状態では下プレート及び上プレートの間に挟み込まれることによって位置決めされる。よって本発明によれば、トリム刃をその可動範囲内で移動させたときに、シート材料の余剰縁部がトリム刃の切断面の外へ逃げてしまうことを防止できるので、シート材料の切断不良を防止することができる。
【0018】
(2)本発明に係る成形システムでは、トリム刃の切断面に沿ったスリット状の下ガイド部及び上ガイド部が形成された下プレート及び上プレートによってシート材料の余剰縁部を位置決めすることにより、トリム刃を移動させたときにこの余剰縁部が切断面の外へ逃げてしまうことをより確実に防止することができるので、シート材料の切断不良をより確実に防止することができる。
【0019】
(3)本発明に係る成形システムによれば、シート材料の余剰縁部の少なくとも一部を下プレート及び上プレートによって位置決めした上で、トリム刃によってシート材料のうち余剰縁部を含む部分を切断することにより、第1基材が張り付けられた第1製品部と、第2基材が張り付けられた第2製品部とに切り分けることができる。
【0020】
(4)本発明に係る成形システムによれば、下型及び上型の間において、平面視では下プレート及び上プレートがシート材料の端辺よりも内側に配置されるように、シート材料の端辺の少なくとも一部を枠体によって把持することにより、下型及び上型を型締めしたときに、シート材料の余剰縁部の一部を下プレート及び上プレートの間に確実に挟み込ませることができるので、トリム刃を可動範囲内で移動させたときに、シート材料の余剰縁部がトリム刃の切断面の外へ逃げてしまうことをより確実に防止できるので、シート材料の切断不良をより確実に防止することができる。
【0021】
(5)本発明に係る成形方法は、下型及び上型の間にシート材料を配置し、下型及び上型を型締めする成形工程と、下型及び上型を型締めした後、トリム刃を移動させることによってシート材料を切断する切断工程と、を備える。また本発明では、切断工程では、トリム刃による切断面がシート材料の余剰縁部と交差するように余剰縁部を位置決めした状態でシート材料を切断する。よって本発明によれば、トリム刃をその可動範囲内で移動させたときに、シート材料の余剰縁部がトリム刃の切断面の外へ逃げてしまうことを防止できるので、シート材料の切断不良を防止することができる。
【0022】
(6)本発明に係る成形方法では、上型の進退方向に沿って延びる下プレートと上プレートとの間に挟み込むことによってシート材料の余剰縁部を位置決めすることにより、トリム刃を移動させたときにこの余剰縁部が切断面の外へ逃げてしまうことをより確実に防止することができるので、シート材料の切断不良をより確実に防止することができる。
【0023】
(7)本発明に係る成形方法によれば、シート材料の余剰縁部の少なくとも一部を位置決めした上で、トリム刃によってシート材料のうち余剰縁部を含む部分を切断することにより、第1基材が張り付けられた第1製品部と、第2基材が張り付けられた第2製品部とに切り分けることができる。
【0024】
(8)本発明に係る成形方法によれば、下型及び上型の間において、平面視では下プレート及び上プレートがシート材料の端辺よりも内側に配置されるように、シート材料の端辺の少なくとも一部を枠体によって把持することにより、下型及び上型を型締めしたときに、シート材料の余剰縁部の一部を下プレート及び上プレートの間に確実に挟み込ませることができるので、トリム刃を可動範囲内で移動させたときに、シート材料の余剰縁部がトリム刃の切断面の外へ逃げてしまうことをより確実に防止できるので、シート材料の切断不良をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る成形方法が適用された成形システムの構成を模式的に示す図である。
【
図4A】第1辺部材の第1X端右クランプユニットの部分断面図である。
【
図4B】第1辺部材の第1X端右クランプユニットの部分断面図である。
【
図5A】把持装置を第1X辺部材側からY方向に沿って視た側面図を模式的に示す図である。
【
図5B】把持装置を第1X辺部材側からY方向に沿って視た側面図を模式的に示す図である。
【
図6A】把持装置を第1Y辺部材側からX方向に沿って視た側面図を模式的に示す図である。
【
図6B】把持装置を第1Y辺部材側からX方向に沿って視た側面図を模式的に示す図である。
【
図7】成形装置を把持装置の第1X辺部材側からY方向に沿って視た側面図を模式的に示す図である。
【
図8】成形装置を上方側からZ方向に沿って視た平面図を模式的に示す図である。
【
図10】
図7の側面図において成形装置の一部を破断した図である。
【
図11B】下型及び上型を型締めした時における第1位置決め部の側面図である。
【
図12】本実施形態に係る成形方法の具体的な手順を示すフローチャートである。
【
図13】成形工程において把持装置を下降させる手順を示す図である(その1)。
【
図14】成形工程において把持装置を下降させる手順を示す図である(その2)。
【
図17】従来の成形装置に、下型及び上型を型締めした後のシート材料を切断するためのトリム刃を設けた成形装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る成形方法が適用された成形システムの構成について、図面を参照しながら説明する。成形システム1及びこの成形システム1を用いた成形方法は、シート材料(例えば、樹脂製)を成形し、このシート材料を自動車のインストルメントパネルの基材に対し、その表皮として張り付けることによって製品(自動車用のインストルメントパネル)を製造する装置及び方法である。
【0027】
図1は、本実施形態に係る成形方法が適用された成形システム1の構成を模式的に示す図である。成形システム1は、後に
図2~
図7等を参照して説明するように、シート材料2を把持すると共にこのシート材料2を延伸したり屈曲させたりする把持装置3と、この把持装置3に新たなシート材料2を供給するシート供給部4と、把持装置3によって把持されたシート材料2を加熱し、軟化させる加熱装置5と、加熱装置5による加熱を経て軟化したシート材料2を真空成型する成形装置6と、を備える。
【0028】
把持装置3は、シート供給部4から供給されるシート材料2を把持し、シート材料2を把持しながら加熱装置5、及び成形装置6へ順次移動する。成形装置6では、把持装置3によって把持されているシート材料2を真空成型することにより、このシート材料2を表皮として基材61に張り付ける。把持装置3は、成形装置6における処理が完了した後、シート供給部4に戻る。
【0029】
シート材料2としては、インストルメントパネルである基材61の表皮に適した材質のもの、例えば、サーモプラスチックオレフィンの薄膜にポリプロピレン発泡体の発泡層を接合させたものを用いることができる。シート材料2は、インストルメントパネルの表皮に対応して、平面視では矩形状である。
【0030】
シート材料2は、巻回方向に牽引しながらロール巻きにされた樹脂シート素材を、長手方向寸法毎に切断し、さらに幅方向中央で切断して得られる。従ってシート材料2は、樹脂シート素材がロール巻きにされた時点で既に長手方向に延伸されている。すなわち、上記樹脂シート素材を巻回方向に牽引しながらロール巻きにする装置及び樹脂シート素材を切断する装置は、長手方向に延伸した状態のシート材料2を得る手段として機能する。
【0031】
シート供給部4は、シート供給部4の下部に積み重ねられたシート材料2の1枚を把持して把持装置3に受け渡すシート受け渡し機構41を備える。
【0032】
図2は、把持装置3の構成を示す斜視図である。
図2に示すように、把持装置3は、平面視では矩形の枠状である。以下では、把持装置3の短手方向に沿った方向をX軸方向とし、このX軸方向と直交しかつ把持装置3の長手方向に沿った方向をY軸方向とし、これらX軸方向及びY軸方向と直交する方向をZ軸方向とする。
【0033】
把持装置3は、平面視において矩形の枠状である固定枠39と、平面視ではこの固定枠39よりも一回り小さな矩形の枠状でありかつシート材料2を把持する把持枠30と、を備える。
【0034】
把持枠30は、シート材料2のY方向両側の第1X辺端部21X及び第2X辺端部22Xに沿ってそれぞれ延びる第1X辺部材31及び第2X辺部材32と、シート材料2のX方向両側の第1Y辺端部23Y及び第2Y辺端部24Yに沿ってそれぞれ延びる第1Y辺部材33及び第2Y辺部材34と、を備える。第1X辺部材31は、シート材料2の第1X辺端部21Xを把持し、第2X辺部材32は、シート材料2の第2X辺端部22Xを把持し、第1Y辺部材33は、シート材料2の第1Y辺端部23Yを把持し、第2Y辺部材34は、シート材料2の第2Y辺端部24Yを把持する。これにより平面視で矩形状のシート材料2の四辺端部は、把持枠30によって把持される。
【0035】
固定枠39は、シート材料2の第1X辺端部21Xに沿って延びる第1X枠部材391と、シート材料2の第2X辺端部22Xに沿って延びる第2X枠部材392と、シート材料2の第1Y辺端部23Yに沿って延び第1X枠部材391及び第2X枠部材392のX方向負側の端部を連結する第1Y枠部材393と、シート材料2の第2Y辺端部24Yに沿って延び第1X枠部材391及び第2X枠部材392のX方向正側の端部を連結する第2Y枠部材394と、を備える。
【0036】
第1X辺部材31は、後述の第1屈曲ポスト67の先端部が当接する第1屈曲部310と、この第1屈曲部310に対しX方向負側に設けられかつ第1X辺端部21Xを把持する第1X端右クランプユニット311と、第1屈曲部310に対しX方向正側に設けられかつ第1X辺端部21Xを把持する第1X端左クランプユニット312と、第1屈曲部310のX方向正側の端部と第1X端右クランプユニット311とを連結する第1右シャフト313と、第1屈曲部310のX方向負側の端部と第1X端左クランプユニット312とを連結する第1左シャフト314と、を備える。
【0037】
図3は、第1屈曲部310の断面図である。第1屈曲部310は、X方向に沿って延びる柱状である。第1屈曲部310のZ方向に沿った下面は後述の第1屈曲ポスト67の先端部が接するポスト当接面310aとなっており、そのZ方向に沿った上面はシート材料2が当接するシート当接面310bとなっている。また第1屈曲部310の中央部には、ポスト当接面310aからシート当接面310bへZ方向に沿って延びる貫通孔としてのガイド孔310cが形成されている。またこのガイド孔310cのうちポスト当接面310a側にはテーパ面310dが形成されている。
【0038】
第1屈曲部310のX方向両側の端部には、それぞれY方向に沿って延びる第1右回動軸310e及び第1左回動軸310fが設けられている。第1右回動軸310eは、第1右シャフト313の先端部313aを回動自在に軸支し、第1左回動軸310fは、第1左シャフト314の先端部314aを回動自在に軸支する。これにより第1X辺部材31は、この第1屈曲部310の両端部において、第1右回動軸310e及び第1左回動軸310f周りで屈曲自在となっている。
【0039】
図2に戻り、第1X端右クランプユニット311は、平面視ではX方向に沿って延びる矩形状である。第1X端右クランプユニット311のX方向正側の端部には、第1右シャフト313の基端部をX方向に沿って摺動自在に支持する第1右シャフト支持部311aが設けられている。このため第1X端右クランプユニット311と第1屈曲部310との間のX方向に沿った間隔は、第1X端右クランプユニット311を第1右シャフト313に沿って摺動することによって調整することが可能となっている。
【0040】
また第1X端右クランプユニット311のX方向負側の端部は、第1Y辺部材33と、後述の第1X端クランプ支持部333を介して第1支持シャフト331に連結されている。このため第1X端右クランプユニット311のX方向負側の端部は、第1支持シャフト331周りで回動自在となっている。
【0041】
図4A及び
図4Bは、第1X端右クランプユニット311のY方向に沿った部分断面図である。第1X端右クランプユニット311は、クランプ基部315と、クランプアーム316と、クランプレバー317と、リンク318と、を備える。
【0042】
クランプ基部315は、シート材料2の下面側においてY方向に沿って延びる。クランプ基部315の先端部には、シート材料2の下面が接する接触面315aが形成されている。クランプアーム316は、シート材料2の上面側においてY方向に沿って延びる。クランプアーム316の先端部には、シート材料2の上面が接する爪部316aが設けられている。またクランプアーム316の基端部は、X方向に沿って延びる開閉シャフト315bを介してクランプ基部315と連結されている。またクランプアーム316のうち、爪部316aと開閉シャフト315bとの間には、X方向に沿って延びるアームシャフト316bが設けられている。
【0043】
クランプレバー317は、Y方向に沿って延びる。クランプレバー317の先端部は、上述のアームシャフト316bを介してクランプアーム316と連結されている。リンク318の両端部には、それぞれX方向に沿って延びる第1リンクシャフト318a及び第2リンクシャフト318bが設けられている。第1リンクシャフト318aは、リンク318の基端部とクランプ基部315のうち開閉シャフト315bよりも基端側とを連結する。第2リンクシャフト318bは、リンク318の先端部とクランプレバー317のうちアームシャフト316bと基端部317aとの間とを連結する。
【0044】
以上のような第1X端右クランプユニット311によれば、シート供給部4に設けられたクランプシリンダ42によってクランプレバー317の基端部317aをZ方向に沿って下方側へ押し下げると、クランプアーム316の爪部316aとクランプ基部315の接触面315aとによってシート材料2の縁部が挟持される(
図4B参照)すなわち、クランプレバー317の基端部317aを下方側へ押し下げると、クランプレバー317は、第2リンクシャフト318bにおいて反時計周りで回動しながら爪部316a側へ移動する。またクランプレバー317が爪部316a側へ移動すると、クランプアーム316が開閉シャフト315bにおいて時計周りで回動し、その爪部316aが接触面315aへ接近する。これによりシート材料2の端部は、第1X端右クランプユニット311によって把持される。
【0045】
また以上のような第1X端右クランプユニット311によれば、後述の第1右アンクランプユニット691によってクランプレバー317の基端部317aをZ方向に沿って上方側へ押し上げると、クランプアーム316の爪部316aがクランプ基部315の接触面315aから離れ、シート材料2の把持が解除される(
図4A参照)。すなわち、クランプレバー317の基端部317aを上方側へ押し上げると、クランプレバー317は、第2リンクシャフト318bにおいて時計周りで回動しながら基端部317a側へ移動する。またクランプレバー317が基端部317a側へ移動すると、クランプアーム316が開閉シャフト315bにおいて反時計周りで回動し、その爪部316aが接触面315aから離れる。これにより第1X端右クランプユニット311によるシート材料2の把持が解除される。
【0046】
図2に戻り、第1X端左クランプユニット312は、平面視ではX方向に沿って延びる矩形状である。第1X端左クランプユニット312のX方向負側の端部には、第1左シャフト314の基端部をX方向に沿って摺動自在に支持する第1左シャフト支持部312aが設けられている。このため第1X端左クランプユニット312と第1屈曲部310との間のX方向に沿った間隔は、第1X端左クランプユニット312を第1左シャフト314に沿って摺動することによって調整することが可能となっている。
【0047】
また第1X端左クランプユニット312のX方向正側の端部は、第2Y辺部材34と、後述の第1X端クランプ支持部343を介して第2支持シャフト341に連結されている。このため第1X端左クランプユニット312のX方向正側の端部は、第2支持シャフト341周りで回動自在となっている。なおこの第1X端左クランプユニット312は、
図4A及び
図4Bを参照して説明した第1X端右クランプユニット311と同じ構成のクランプ基部、クランプアーム、クランプレバー、及びリンクを備える。従って以下では、第1X端左クランプユニット312の詳細な構成及び説明を省略する。
【0048】
第2X辺部材32は、後述の第2屈曲ポスト68の先端部が当接する第2屈曲部320と、この第2屈曲部320に対しX方向正側に設けられかつ第2X辺端部22Xを把持する第2X端左クランプユニット321と、第2屈曲部320に対しX方向負側に設けられかつ第2X辺端部22Xを把持する第2X端右クランプユニット322と、第2屈曲部320のX方向正側の端部と第2X端左クランプユニット321とを連結する第2左シャフト323と、第2屈曲部320のX方向負側の端部と第2X端右クランプユニット322とを連結する第2右シャフト324と、を備える。
【0049】
なおこれら第2屈曲部320、第2X端左クランプユニット321、第2X端右クランプユニット322、第2左シャフト323、及び第2右シャフト324の構成は、それぞれ第1X辺部材31の第1屈曲部310、第1X端右クランプユニット311、第1X端左クランプユニット312、第1右シャフト313、及び第1左シャフト314の構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0050】
第1Y辺部材33は、Y方向に沿って延びる第1基部330と、Y方向に沿って延びかつこの第1基部330に支持された第1支持シャフト331と、この第1支持シャフト331に設けられた複数(
図2の例では、6つ)のY端クランプ332と、第1支持シャフト331のうちY方向正側の端部に設けられた第1X端クランプ支持部333と、第1支持シャフト331のうちY方向負側の端部に設けられた第2X端クランプ支持部334と、を備える。
【0051】
Y端クランプ332は、第1支持シャフト331を回動軸として開閉可能なクランプ対を備え、これらクランプ対によってシート材料2の第1Y辺端部23Yを把持する。
【0052】
第1基部330は、固定枠39のZ方向下方側において第1Y枠部材393と平行に延びる。第1基部330のうちY方向正側の端部は、第1X枠部材391の下面側に設けられたX軸ガイドレール(図示せず)に連結され、第1基部330のうちY方向負側の端部は、第2X枠部材392の下面側に設けられたX軸ガイドレール(図示せず)に連結されている。このため第1基部330は、これらX枠部材391,392に設けられたX軸ガイドレールにより、固定枠39に対しX方向に沿って摺動自在となっている。
【0053】
第1X端クランプ支持部333は、第1X辺部材31の第1X端右クランプユニット311のX方向負側の端部を、第1支持シャフト331周りで回動自在に支持する。またこの第1X端クランプ支持部333は、第1基部330に設けられたY軸ガイドレール(図示せず)に連結されている。このため第1X辺部材31は、第1基部330に設けられたY軸ガイドレールにより、固定枠39に対しY方向に沿って摺動自在となっている。
【0054】
第2X端クランプ支持部334は、第2X辺部材32の第2X端左クランプユニット321のX方向負側の端部を、第1支持シャフト331周りで回動自在に支持する。またこの第2X端クランプ支持部334は、第1基部330に設けられたY軸ガイドレール(図示せず)に連結されている。このため第2X辺部材32は、第1基部330に設けられたY軸ガイドレールにより、固定枠39に対しY方向に沿って摺動自在となっている。
【0055】
第2Y辺部材34は、Y方向に沿って延びる第2基部340と、Y方向に沿って延びかつこの第2基部340に支持された第2支持シャフト341と、この第2支持シャフト341に設けられた複数のY端クランプ(図示せず)と、第2支持シャフト341のうちY方向正側の端部に設けられた第1X端クランプ支持部343と、第2支持シャフト341のうちY方向負側の端部に設けられた第2X端クランプ支持部344と、を備える。
【0056】
第2支持シャフト341に設けられた複数のY端クランプは、第1Y辺部材33に設けられた複数のY端クランプ332と同様に、第2支持シャフト341を回動軸として開閉可能なクランプ対を備え、これらクランプ対によってシート材料2の第2Y辺端部24Yを把持する。
【0057】
第2基部340は、固定枠39のZ方向下方側において第2Y枠部材394と平行に延びる。第2基部340のうちY方向正側の端部は、第1X枠部材391の下面側に設けられたX軸ガイドレール(図示せず)に連結され、第2基部340のうちY方向負側の端部は、第2X枠部材392の下面側に設けられたX軸ガイドレール(図示せず)に連結されている。このため第2基部340は、これらX枠部材391,392に設けられたX軸ガイドレールにより、固定枠39に対しX方向に沿って摺動自在となっている。
【0058】
第1X端クランプ支持部343は、第1X辺部材31の第1X端左クランプユニット312のX方向正側の端部を、第2支持シャフト341周りで回動自在に支持する、またこの第1X端クランプ支持部343は、第2基部340に設けられたY軸ガイドレール(図示せず)に連結されている。このため第1X辺部材31は、第2基部340に設けられたY軸ガイドレールにより、固定枠39に対しY方向に沿って摺動自在となっている。
【0059】
第2X端クランプ支持部344は、第2X辺部材32の第2X端右クランプユニット322のX方向正側の端部を、第2支持シャフト341周りで回動自在に支持する。またこの第2X端クランプ支持部344は、第2基部340に設けられたY軸ガイドレール(図示せず)に連結されている。このため第2X辺部材32は、第2基部340に設けられたY軸ガイドレールにより、固定枠39に対しY方向に沿って摺動自在となっている。
【0060】
図5A及び
図5Bは、把持装置3を第1X辺部材31側からY方向に沿って視た側面図を模式的に示す図である。上述のように、第1X辺部材31の第1X端右クランプユニット311のX方向負側の端部は、第1Y辺部材33の第1X端クランプ支持部333を介して第1基部330に連結されている。また第1X辺部材31の第1X端左クランプユニット312のX方向正側の端部は、第2Y辺部材34の第1X端クランプ支持部343を介して第2基部340に連結されている。また第1基部330及び第2基部340は、それぞれ固定枠39の第1X枠部材391に設けられたX軸ガイドレールに連結されており、固定枠39に対しX方向に沿って摺動自在となっている。
【0061】
また固定枠39には、第1基部330をX軸ガイドレールに沿って摺動させる第1X軸アクチュエータ395と、第2基部340をX軸ガイドレールに沿って摺動させる第2X軸アクチュエータ396と、が設けられている。したがって把持装置3では、これらX軸アクチュエータ395,396を駆動し、第1基部330をX方向負側へ摺動させかつ第2基部340をX方向正側へ摺動させることにより、
図5Bに示すように、第1X端右クランプユニット311及び第1X端左クランプユニット312によって把持されているシート材料2をX方向に沿って延伸することができる。なお把持装置3のうち第2X辺部材32側の構成も
図5A及び
図5Bと同様であるので、図示及び詳細な説明を省略する。
【0062】
図6A及び
図6Bは、把持装置3を第1Y辺部材33側からX方向に沿って視た側面図を模式的に示す図である。なお
図6A及び
図6Bでは、理解を容易にするため、第1支持シャフト331の図示を省略する。上述のように第1Y辺部材33の第1X端クランプ支持部333は、第1基部330に設けられたY軸ガイドレールに連結されている。このため第1X端クランプ支持部333は、第1基部330のY軸ガイドレールによって、固定枠39に対しY方向に沿って摺動自在となっている。また第1Y辺部材33の第2X端クランプ支持部334は、第1基部330に設けられたY軸ガイドレールに連結されている。このため第2X端クランプ支持部334は、第1基部330のY軸ガイドレールによって、固定枠39に対しY方向に沿って摺動自在となっている。
【0063】
また固定枠39には、第1X端クランプ支持部333をY軸ガイドレールに沿って摺動させる第1Y軸アクチュエータ397と、第2X端クランプ支持部334をY軸ガイドレールに沿って摺動させる第2Y軸アクチュエータ398と、が設けられている。したがって把持装置3では、これらY軸アクチュエータ397,398を駆動し、第1X端クランプ支持部333をY方向正側へ摺動させかつ第2X端クランプ支持部334をY方向負側へ摺動させることにより、
図6Bに示すように、第1X辺部材31及び第2X辺部材32によって把持されているシート材料2をY方向に沿って延伸することができる。なお把持装置3のうち第2Y辺部材34側の構成も
図6A及び
図6Bと同様であるので、図示及び詳細な説明を省略する。
【0064】
次に、
図7から
図11Bを参照しながら、成形装置6の構成について説明する。
図7は、成形装置6を把持装置3の第1X辺部材31側からY方向に沿って視た側面図を模式的に示す図である。
図8は、成形装置6を上方側からZ方向に沿って視た平面図を模式的に示す図である。なお
図8では、把持装置3のうち把持枠によって把持されるシート材料2と、この把持枠の構成部品である屈曲部310,320と、シート材料2を把持する第1X端右クランプユニット311,321及び第1X端左クランプユニット312,322と、を破線で示す。
【0065】
成形装置6は、下型60と、下型60のZ方向正側(鉛直方向上方側)においてシート材料2を挟んで設けられた上型66と、下型60と上型66との間において把持装置3をZ方向に沿って下降し、この把持装置3によって把持されているシート材料2を下型60に接近させる下降装置65と、下型60の鉛直方向上方側においてシート材料2を挟み下型60に対し挟んで設けられた上型66と、下型60の下型面61a,62aに対しY方向両側に設けられた第1屈曲ポスト67及び第2屈曲ポスト68と、下型面61a,62aに対しY方向正側に設けられた第1右アンクランプユニット691及び第1左アンクランプユニット692と、下型面61a,62aに対しY方向負側に設けられた第2左アンクランプユニット693及び第2右アンクランプユニット694と、を備える。
【0066】
図8に示すように、下型60は、平面視ではY方向を長手方向としX方向を幅方向とする矩形状であり、幅方向中央において第1下型61と第2下型62との2つに分けられている。これら第1下型61及び第2下型62には、それぞれ同形の第1下型面61a及び第2下型面62aが形成されている。またこれら第1下型面61a及び第2下型面62aには、それぞれ同形の第1基材63及び第2基材64が設置されている。
【0067】
図8に示すように、これら第1下型面61a及び第2下型面62aは同形であり、平面視では互いに背中合わせにして設けられている。このため第1下型61及び第2下型62を合せた下型60全体は、Y方向に沿った側面視では上に凸状である。これら第1下型面61a及び第2下型面62aには、図示しない吸引装置が接続されており、これら下型面61a,62aから気体を吸引可能となっている。
【0068】
またこれら第1下型面61aに設置されている第1基材63及び第2下型面62aに設置されている第2基材64もまた同形であり、平面視では互いに背中合わせにして設けられている。したがって成形装置6では、2つの基材63,64に対し同時にシート材料2を張り付けることが可能となっている。このためこの成形装置6によれば、シート材料2を挟んで設けられた下型60及び上型66を型締めすることにより、第1下型面61aによって成形される第1製品部と、第2下型面62aによって成形される第2製品部と、を同時に製造することができる。
【0069】
上型66は、Y方向に沿った側面視では上に凹状である。上型66は、平面視ではY方向を長手方向としX方向を幅方向とする矩形状であり、幅方向中央において第1上型661と第2上型662との2つに分けられている。第1上型661は、型締めすると第1下型面61aと対向する第1上型面661aと、第2下型面62aと対向する第2上型面662aと、を備える。この上型66は、図示しない昇降機構によってZ方向に沿って下型60に対し進退自在となっている。またこれら上型面661a,662aには、図示しない吸引装置が接続されており、これら上型面661a,662aから気体を吸引可能となっている。
【0070】
なお以下では、
図8に示すように、把持装置3によって把持されているシート材料2のうち、下型60のX方向に沿った側面視におけるY方向正側の第1下型端60aよりも外側の部分を第1余剰縁部25といい、Y方向負側の第2下型端60bよりも外側の部分を第2余剰縁部26という。
【0071】
把持装置3の把持枠30は、下型60及び上型66の間において、平面視では後述の第1位置決め部8及び第2位置決め部9がシート材料2のY方向正負両側の端辺よりも内側に配置されるように、クランプユニット311,312,321,322によってこれら端辺の少なくとも一部を把持する。
【0072】
下降装置65は、下型60と上型66との間に設けられている。下降装置65は、油圧シリンダや電磁アクチュエータ等で発生した駆動力によって把持装置3をZ方向に沿って下降させ、把持枠30によって把持されているシート材料2を下型60に接近させる。なおこの際、下降装置65は、把持装置3のうち固定枠39のみを把持することが好ましい。これにより把持装置3を下降させながら把持枠30を変形させることができる。
【0073】
第1屈曲ポスト67は、下型60の近傍に立設されZ方向に沿って延びる第1柱部材671と、この第1柱部材671の先端部に設けられた第1屈曲ポストピン672と、を備える。また
図3に示すように、第1屈曲ポストピン672の外径は、第1屈曲部310のガイド孔310cの内径よりもやや小さい。またこの第1屈曲ポストピン672の先端部は、基端側から先端側へ向かうに従い縮径するテーパ面673が形成されている。したがって第1屈曲部310を第1屈曲ポスト67の先端部に接近させることにより、第1屈曲部310のガイド孔310cに第1屈曲ポストピン672を挿入させ、第1屈曲部310を第1屈曲ポスト67に位置合わせしながら、第1屈曲部310のポスト当接面310aを第1柱部材671の先端面671aに当接させることができる。また
図7に示すように、第1屈曲ポスト67の先端面671aのZ方向に沿った高さは、下型60のうちZ方向に沿った高さが最も高い部分よりも高い。ここで下型60のうちZ方向に沿った高さが最も高い部分とは、Y方向に沿って視た側面視では下型60のうちX方向と平行な幅方向中央の部分であり、第1下型61と第2下型62との間においてY方向に沿って延びる下型稜線60t(
図8参照)である。すなわち第1屈曲ポスト67の先端面671aは、下型稜線60tよりも鉛直方向上方側に設けられている。なお図示及び詳細な説明は省略するが、第2屈曲ポスト68は、上述の第1柱部材671及び第1屈曲ポストピン672と同じ構成の第2柱部材681及び第2屈曲ポストピン682を備える。
【0074】
図8に示すように、第1屈曲ポスト67は、下型60の第1下型端60aよりも外側に設けられ、第2屈曲ポスト68は、下型60の第2下型端60bよりも外側に設けられている。これら第1屈曲ポスト67及び第2屈曲ポスト68は、平面視では下型60を挟みX方向に沿って対向する位置に設けられている。またこれら第1屈曲ポスト67及び第2屈曲ポスト68は、Y方向に沿った側面視における下型60の幅方向中央、すなわち下型稜線60tの延長線上に設けられている。また第1屈曲ポスト67は、シート材料2を把持する把持枠の一部である第1屈曲部310のZ方向下方側に設けられ、第2屈曲ポスト68は、把持枠の一部である第2屈曲部320のZ方向下方側に設けられている。このため下降装置65によって把持装置3をZ方向に沿って下降させることにより、シート材料2が下型面61a,62aに接触する前に屈曲部310,320をそれぞれ屈曲ポスト67,68に当接させることができる。またこれら屈曲部310,320が屈曲ポスト67,68に当接した後、下降装置65によって把持装置3の固定枠39をさらに下降させることにより、これら屈曲ポスト67,68により、把持枠30をY方向に沿った側面視で上に凸状に屈曲させることができる。
【0075】
図9は、下型60及び把持装置3の斜視図である。なお
図9では、理解を容易にするため下型60のうち第2下型62の図示を省略する。
図9及び
図8に示すように、第1右アンクランプユニット691及び第1左アンクランプユニット692は、それぞれ下型60の第1下型端60aより外側に設けられ、第2左アンクランプユニット693及び第2右アンクランプユニット694は、それぞれ下型60の第2下型端60bより外側に設けられている。第1右アンクランプユニット691は、第1屈曲ポスト67よりもX方向負側に設けられ、第1左アンクランプユニット692は、第1屈曲ポスト67よりもX方向正側に設けられている。第2左アンクランプユニット693は、第2屈曲ポスト68よりもX方向負側に設けられ、第2右アンクランプユニット694は、第2屈曲ポスト68よりもX方向正側に設けられている。
【0076】
図8に示すように、第1右アンクランプユニット691は、平面視では把持枠の第1X端右クランプユニット311に対しZ方向下方側に設けられており、後述のように把持装置3を下降させるとこの第1X端右クランプユニット311と対向する。第1左アンクランプユニット692は、平面視では把持枠の第1X端左クランプユニット312に対しZ方向下方側に設けられており、把持装置3を下降させるとこの第1X端左クランプユニット312と対向する。第2左アンクランプユニット693は、平面視では把持枠の第2X端左クランプユニット321に対しZ方向下方側に設けられており、後述のように把持装置3を下降させるとこの第2X端左クランプユニット321と対向する。第2右アンクランプユニット694は、平面視では把持枠の第2X端右クランプユニット322に対しZ方向下方側に設けられており、把持装置3を下降させるとこの第2X端右クランプユニット322と対向する。これらアンクランプユニット691,692,693,694は、把持装置3を下降させたときに各々と対向するクランプユニット311,312,321,322のクランプレバーの基端部をZ方向に沿って上方へ押し上げることにより、これらクランプユニット311,312,321,322によるシート材料2の把持を解除させる(上述の
図4A参照)。
【0077】
図10は、
図7と同じ向きに沿って視た成形装置6の側面図を模式的に示す図である。なお
図10には、理解を容易にするため、成形装置6のうち第1屈曲ポスト67の一部を破断したものを示す。
【0078】
図8及び
図10に示すように、成形装置6は、下型60と上型66との間に設けられたシート材料2を切断するトリム刃7と、このトリム刃7によるシート材料2の切断時にシート材料2の第1余剰縁部25の一部及び第2余剰縁部26の一部をそれぞれ位置合わせする第1位置決め部8及び第2位置決め部9と、を備える。
【0079】
トリム刃7は、Y方向に沿って延びる刃先を備える板状であり、上型66に設けられている。より具体的には、トリム刃7は、第1上型661と第2上型662との間に設けられており、図示しない駆動装置によりこれら上型661,662に対しZ方向に沿って移動自在となっている。
図8には、このトリム刃7による切断面71(すなわち、トリム刃7をZ方向に沿って可動範囲内で移動させたときに、このトリム刃7の刃先によって形成される面)を太破線で示す。
図8に示すように、トリム刃7の切断面71は、平面視では、第1下型端60aと第1屈曲ポスト67との間から、第2下型端60bと第2屈曲ポスト68との間まで、Y方向に沿って下型稜線60tの上を延びる。したがってトリム刃7の切断面71は、シート材料2のうちY方向正側の第1余剰縁部25及びY方向負側の第2余剰縁部26と交差する。
【0080】
図8及び
図10に示すように、第1位置決め部8は、下型60の第1下型端60aよりも外側(すなわち、第1下型端60aよりも第1屈曲ポスト67側)において、シート材料2の第1余剰縁部25を挟んで設けられた第1下プレート81及び第1上プレート85を備える。第1位置決め部8は、下型60及び上型66の型締め時には、これら下プレート81及び上プレート85の間で第1余剰縁部25のうちトリム刃7の切断面71と交差する部分を挟み込むことによってこの第1余剰縁部25の位置決めをする。
【0081】
図11Aは、第1位置決め部8の側面図である。
図11Bは、下型60及び上型66を型締めした時における第1位置決め部8の側面図である。
【0082】
図10及び
図11Aに示すように、第1下プレート81は、上型66側へ延びる板状であり、下型60の第1下型端60aと略平行になるように第1下型端60aよりも外側に設けられている。この第1下プレート81は、その上型66側の上端部82が、下型60の下型稜線60tよりもZ方向に沿って高い位置に配置されるように、下型60の第1下型端60aに固定されている。このように以下では、第1下プレート81を下型60に固定した場合について説明するが、本発明はこれに限らない。第1下プレート81は、第1屈曲ポスト67と同様に下型60の第1下型端60aの近傍に立設してもよい。また第1下プレート81には、トリム刃7の切断面71に沿ったスリット状の第1下ガイド部83が形成されている。
【0083】
第1上プレート85は、下型60側及び上述の第1下プレート81側へ延びる板状であり、第1下プレート81と略平行になるように上型66のX方向に沿った側面視におけるY方向正側の第1上型端66aよりも外側に設けられている。またこの第1上プレート85は、上型66と共に進退するように上型66の第1上型端66aに固定されている。なお以下では、第1上プレート85を第1下プレート81よりも外側に設けた場合について説明するが、本発明はこれに限らない。第1上プレート85は、第1下プレート81よりも内側に設けてもよい。
【0084】
また
図11Bに示すように、この第1上プレート85は、下型60及び上型66の型締め時には、その下型60側の下端部86が第1下プレート81の上端部82よりもZ方向に沿った高さが低くなるように、上型66に固定されている。このため下型60及び上型66の型締め時には、第1下プレート81及び第1上プレート85の少なくとも一部が側面視で重複するため、第1下プレート81の上端部82を含む一部は第1上プレート85の内側に隠れる。
【0085】
また第1上プレート85には、トリム刃7の切断面71に沿ったスリット状の第1上ガイド部87が形成されている。
図11Bに示すように、この第1上ガイド部87と第1下プレート81に形成された第1下ガイド部83とは、下型60及び上型66の型締め時には、Y方向に沿った側面視で重複する。このためトリム刃7は、下型60及び上型66を型締めした後、これら第1下ガイド部83及び第1上ガイド部87に沿って移動することによって、これら第1下プレート81及び第1上プレート85によって位置決めされている第1余剰縁部25を切断することが可能となっている。
【0086】
図8に戻り、第2位置決め部9は、下型60の第2下型端60bよりも外側(すなわち、第2下型端60bよりも第2屈曲ポスト68側)において、シート材料2の第2余剰縁部26を挟んで設けられた第2下プレート91及び第2上プレート95を備える。第2位置決め部9は、下型60及び上型66の型締め時には、これら下プレート91及び上プレート95の間で第2余剰縁部26のうちトリム刃7の切断面71と交差する部分を挟み込むことによってこの第2余剰縁部26の位置決めをする。なおこれら第2下プレート91及び第2上プレート95の構成は、上述の第1下プレート81及び第1上プレート85の構成とほぼ同じであるので、図示及び詳細な説明を省略する。
【0087】
次に、以上のような成形システム1を用いた成形方法の手順について説明する。
【0088】
図12は、樹脂成形方法の具体的な手順を示すフローチャートである。
始めに把持工程S1では、シート供給部4は、シート受け渡し機構41を用いることによって、把持装置3の把持枠30に新たなシート材料2を1枚、把持させた後、この把持装置3を加熱装置5へ搬送する。より具体的には、シート材料2のY辺端部23Y,24Yを把持枠30のY辺部材33,34のY端クランプによって把持させると共に、シート材料2のX辺端部21X,22Xを把持枠30の第1X辺部材31のクランプユニット311,312及び第2X辺部材32のクランプユニット321,322によって把持させる。
図4Bを参照して説明したように、シート供給部4には、クランプシリンダ42が設けられている。そこでこの把持工程S1では、クランプシリンダ42によって各クランプユニット311,312,321,322のクランプレバーの基端部をZ方向に沿って下方側へ押し下げることにより、これらクランプユニット311,312,321,322によってシート材料2を把持させる。
【0089】
次に加熱・延伸工程S2では、加熱装置5は、把持装置3の把持枠30によって把持されているシート材料2を加熱し、軟化させる。またこの加熱・延伸工程S2では、把持装置3は、X軸アクチュエータ395,396やY軸アクチュエータ397,398を駆動することによって、加熱装置5で加熱することで軟化したシート材料2をX方向やY方向に沿って延伸した後(上述の
図5A,5B及び
図6A,6B参照)、この把持装置3を成形装置6へ搬送する。なおこの加熱・延伸工程S2では、シート材料2をX方向及びY方向の両方に沿って延伸してもよいし、X方向及びY方向の何れかのみに沿って延伸してもよいし、X方向及びY方向の何れにも延伸しなくてもよい。すなわちこの延伸工程は必須の構成ではない。
【0090】
次に成形工程S3では、下型60及び上型66の間に加熱・延伸工程S2を経たシート材料2を配置し、これら下型60及び上型66を型締めし、基材63,64に対しシート材料2を表皮として張り付けることによって製品を製造する。より具体的には、この成形工程S3では、加熱・延伸工程S2を経た把持装置3を下降装置65によってZ方向下方側へ下降し、把持枠30によって把持されているシート材料2を下型60に接近させた後、これら下型60及び上型66を型締めし、さらにこれら下型面61a,62a及び上型面661a,662aから図示しない吸引装置によって気体を吸引することにより、基材63,64に対しシート材料2を張り付ける。
【0091】
次に、
図8~
図9及び
図13~
図14を参照して、成形工程S3において把持装置3を下降させる手順について詳細に説明する。
図13~
図14は、把持装置3を下降させる手順を示す図である。なおこれら
図13~
図14においても、理解を容易にするため第2下型62の図示を省略する。
【0092】
先ずこの成形工程S3では、図示しない搬送装置は、
図9に示すようにシート材料2を把持する把持装置3を下型60と上型66との間に搬送する。より具体的には、
図8に示すように平面視では第1下プレート81及び第1上プレート85並びに第2下プレート91及び第2上プレート95が、把持枠30によって把持されているシート材料2の端辺よりも内側に配置されるように、把持装置3を下型60と上型66との間に搬送する。
【0093】
次に下降装置65は、
図13に示すように、把持枠30の屈曲部310,320が屈曲ポスト67,68の先端部に当接するまで把持装置3の固定枠39をZ方向に沿って下方側へ下降させる。より具体的には、下降装置65は、屈曲部310,320に形成されたガイド孔に屈曲ポスト67,68の先端部に設けられた屈曲ポストピン672,682が挿入され、かつ屈曲部310,320のポスト当接面が屈曲ポスト67,68の先端面に当接するまで、固定枠39をZ方向に沿って下降させる。
【0094】
なお
図3を参照して説明したように、屈曲部310,320のガイド孔及び屈曲ポストピン672,682にはそれぞれテーパ面が形成されている。このため把持装置3の屈曲ポスト67,68及び下型61,62に対する位置が正規の位置に対しずれている場合であっても、把持装置3を正規の位置に位置合わせしながら、屈曲部310,320を屈曲ポストピン672,682に挿入させることができる。またこのように把持装置3を屈曲ポスト67,68及び下型61,62に対し位置合わせすることにより、この把持装置3の把持枠30によって把持されているシート材料2を、下型61,62に設置されている基材63,64に対し常に同じ位置に張り付けることができるので、製品の品質を向上できる。
【0095】
次に下降装置65は、
図14に示すように把持装置3の固定枠39をZ方向に沿ってさらに下方側へ下降させる。
図3を参照して説明したように、把持枠30の第1X辺部材31及び第2X辺部材32は、それぞれ屈曲部310,320のX方向両端側において屈曲自在となっている。したがってこれら屈曲部310,320が屈曲ポスト67,68の先端部に当接した後、さらに固定枠39を下降させると、
図14に示すように、第1X辺部材31及び第2X辺部材32は、屈曲部310,320の両端側で屈曲する。
【0096】
また
図5A及び
図5Bを参照して説明したように、第1X辺部材31及び第2X辺部材32の両端部が連結される第1基部330及び第2基部340は、それぞれ固定枠39に対しX方向に沿って摺動自在となっている。このため下降装置65によって把持装置3の固定枠39を下降させると、シート材料2の張力によって第1基部330及び第2基部340は、X方向に沿って互いに接近するように摺動する。このため
図14に示すように、第1X辺部材31及び第2X辺部材32は、屈曲部310,320の両側で屈曲し、Y方向に沿って視て上に凸状となる。
【0097】
またこのように固定枠39を下降させると、これら辺部材31,32によって把持されているシート材料2のX辺端部21X,22XのうちX方向に沿って中央の部分が屈曲部310,320のシート当接面に当接するので、このシート材料2も屈曲部310,320の両端側で屈曲し、Y方向に沿って視て上に凸状となる。以上より成形工程S3では、下降装置65によって把持装置3の固定枠39を下降させるだけで、シート材料2を下型面61a,62aの凸形状に追従するように屈曲させることができる。
【0098】
このように本実施形態では、面状のシート材料2のうち四辺端部21X,22X,23Y,24Yを把持する把持枠30を屈曲させることでシート材料2を上に凸状に屈曲させることにより、シート材料2の各部分の面方向への延びを均一にでき、ひいてはシート材料2の各部分の厚みも均一にできるので、製品の品質をさらに向上できる。
【0099】
図15は、
図11Aの線A-Aに沿った第1位置決め部8の断面図である。より具体的には、
図15は、
図14に示すように把持装置3を下型60へ下降させた時における第1位置決め部8の断面図である。
【0100】
上述のように成形工程S3では、シート材料2は、平面視では第1下プレート81及び第1上プレート85が第1余剰縁部25の端辺25aよりも内側に配置されるように、下型60及び上型66の間に配置される。このため把持装置3を下型60へ下降させると、
図15に示すようにシート材料2は、第1余剰縁部25において第1下プレート81の上端部82に係止した状態となる。なおこの状態では、第1余剰縁部25の端辺25aは、トリム刃7の切断面71の外である。
【0101】
また成形工程S3では、以上のようにしてシート材料2を下型60に接近させた後は、下型60及び上型66を型締めし、さらにこれら下型面61a,62a及び上型面661a,662aから図示しない吸引装置によって気体を吸引することにより、基材63,64に対しシート材料2を張り付ける。
【0102】
図16は、
図11Bの線B-Bに沿った第1位置決め部8の断面図である。より具体的には、
図16は、
図15に示す状態から下型60及び上型66を型締めした時における第1位置決め部8の断面図である。
【0103】
図16に示すように、
図15に示す状態から上型66を下型60へ接近させ、第1上プレート85をZ方向に沿って第1下プレート81側へ下降させると、第1上プレート85の下端部86がシート材料2の第1余剰縁部25に当接する。また上型66を下型60へさらに接近させると、端辺25aが第1下プレート81と第1上プレート85との間に引きずり込まれるようにして第1余剰縁部25が折り畳まれる。これにより下型60及び上型66を型締めした状態では、第1余剰縁部25のうちトリム刃7の切断面71と交差する部分は、
図16に示すように端辺25aを含めて第1下プレート81及び第1上プレート85の間に挟み込まれる。これにより第1余剰縁部25は、その端辺25aをトリム刃7の切断面71の範囲内に収めた状態で第1下プレート81及び第1上プレート85によって位置決めされる。
【0104】
なお図示及び詳細な説明を省略するが、上述のような手順によって下型60及び上型66を型締めすることにより、シート材料2の第2余剰縁部26は、第1余剰縁部25と同じ手順によって第2位置決め部9の第2下プレート91及び第2上プレート95により位置決めされる。
【0105】
なお
図14に示すように、下降装置65によって固定枠39を下降させると、シート材料2の第1X辺端部21Xを把持するクランプユニット311,312及び第2X辺端部22Xを把持するクランプユニット321,322は、それぞれアンクランプユニット691,692,693,694と対向する。したがって成形工程S3では、以上の手順によって基材63,64にシート材料2を張り付けた後は、これらアンクランプユニット691,692,693,694によってクランプユニット311,312,321,322のクランプレバーをZ方向に沿って上方側へ押し上げることにより、これらクランプユニット311,312,321,322によるシート材料2の把持を解除する。
【0106】
このように本実施形態では、把持装置3によるシート材料2の把持を解除するアンクランプユニット691~694を、把持装置3とは別体にし、下型61,62の近傍に設けることにより、これらアンクランプユニット691~694を常に常温下にできる。すなわち、これらアンクランプユニットを把持装置3に設けることも考えられるが、上述のように把持装置3は加熱装置5によってシート材料2と共に加熱される。これに対し本実施形態によれば、上述のようにアンクランプユニット691~694を常に常温下にできるので、これらアンクランプユニット691~694が熱によって故障したり変形したりするのを防止できる。
【0107】
図12に戻り、切断工程S4では、上述のように下型60及び上型66を型締めし、トリム刃7による切断面71がシート材料2の第1余剰縁部25及び第2余剰縁部26の両方と交差するように、第1位置決め部8及び第2位置決め部9によってこれら余剰縁部25,26を位置決めした状態でトリム刃7をZ方向に沿って下型60側へ移動させ、シート材料2を切断する。上述のように下型60及び上型66を型締めすると、第1余剰縁部25は第1下プレート81及び第1上プレート85の間に挟み込まれ、第2余剰縁部26は第2下プレート91及び第2上プレート95の間に挟み込まれる。またこの際、第1余剰縁部25の端辺25a及び第2余剰縁部26の端辺26aは、何れもトリム刃7の切断面71の範囲内に引き込まれる。このため切断工程S4では、トリム刃7を切断面71に沿って移動させることにより、シート材料2を第1基材63が張り付けられた第1製品部と第2基材64が張り付けられた第2製品部との2つの部分に切り分けることができる。
【0108】
搬送工程S5では、図示しない搬送装置は、シート材料2の把持を解除した後の把持装置3を、成形装置6からシート供給部4へ搬送する。より具体的には、この搬送工程S5では、搬送装置は、加熱・延伸工程S2においてX方向及びY方向へ延伸した把持枠30を原点に復帰させながら把持装置3をシート供給部4へ搬送する。
【0109】
なお上記実施形態では、把持装置3の把持枠30の第1屈曲部310及び第2屈曲部320が当接する一対の屈曲支持部として、下型61,62の近傍に立設された一対の屈曲ポスト67,68を利用した場合について説明したが、本発明はこれに限らない。把持枠30の一対の屈曲部310,320が当接し、この把持枠30を屈曲させる一対の屈曲支持部は、例えば下型の一部を利用してもよいし、成形装置とは別の設備の一部を利用してもよい。
【0110】
本実施形態に係る成形システム1及び成形方法によれば、以下の効果を奏する。
(1)成形システム1は、シート材料2を切断するトリム刃7と、下型60のX方向に沿った側面視における下型端60a,60bよりも外側に設けられかつ上型66側へ延びる下プレート81,91と、上型66と共に進退するように上型66のX方向に沿った側面視における上型端よりも外側に設けられかつ下プレート81,91側へ延びる上プレート85,95と、を備える。また成形システム1では、トリム刃7による切断面71(すなわち、トリム刃7を可動範囲内で移動させたときに、このトリム刃7の刃先によって形成される面)は、シート材料2の余剰縁部25,26と交差し、これら余剰縁部25,26の少なくとも一部は、下型60及び上型66を型締めした状態では下プレート81,91及び上プレート85,95の間に挟み込まれることによって位置決めされる。よって成形システム1によれば、トリム刃7をその可動範囲内で移動させたときに、シート材料2の余剰縁部25,26がトリム刃7の切断面71の外へ逃げてしまうことを防止できるので、シート材料2の切断不良を防止することができる。
【0111】
(2)成形システム1では、トリム刃7の切断面71に沿ったスリット状の下ガイド部83及び上ガイド部87が形成された下プレート81及び上プレート85によってシート材料2の余剰縁部25を位置決めすることにより、トリム刃7を移動させたときにこの余剰縁部25が切断面71の外へ逃げてしまうことをより確実に防止することができるので、シート材料2の切断不良をより確実に防止することができる。
【0112】
(3)成形システム1によれば、シート材料2の余剰縁部25のうちトリム刃7の切断面71と交差する部分を下プレート81及び上プレート85によって位置決めした上で、トリム刃7によってシート材料2のうち余剰縁部25を含む部分を切断することにより、第1基材63が張り付けられた第1製品部と、第2基材64が張り付けられた第2製品部とに切り分けることができる。
【0113】
(4)成形システム1によれば、下型60及び上型66の間において、平面視では下プレート81及び上プレート85がシート材料2の余剰縁部25側の端辺25aよりも内側に配置されるように、シート材料2の端辺25aの少なくとも一部を把持枠30によって把持することにより、下型60及び上型66を型締めしたときに、シート材料2の余剰縁部25のうち切断面71と交差する部分を下プレート81及び上プレート85の間に確実に挟み込ませることができるので、トリム刃7を可動範囲内で移動させたときに、シート材料2の余剰縁部25がトリム刃7の切断面71の外へ逃げてしまうことをより確実に防止できるので、シート材料2の切断不良をより確実に防止することができる。
【0114】
(5)本実施形態に係る成形方法は、下型60及び上型66の間にシート材料2を配置し、下型60及び上型66を型締めする成形工程と、下型60及び上型66を型締めした後、トリム刃7を移動させることによってシート材料2を切断する切断工程と、を備える。また切断工程では、トリム刃7による切断面71がシート材料2の余剰縁部25,26と交差するように余剰縁部25,26を位置決めした状態でシート材料2を切断する。よってこの成形方法によれば、トリム刃7をその可動範囲内で移動させたときに、シート材料2の余剰縁部25,26がトリム刃7の切断面71の外へ逃げてしまうことを防止できるので、シート材料2の切断不良を防止することができる。
【0115】
(6)本実施形態に係る成形方法では、上型66の進退方向に沿って延びる下プレート81,91と上プレート85,95との間に挟み込むことによってシート材料2の余剰縁部25,26を位置決めすることにより、トリム刃7を移動させたときにこれら余剰縁部25,26が切断面71の外へ逃げてしまうことをより確実に防止することができるので、シート材料2の切断不良をより確実に防止することができる。
【0116】
(7)本実施形態に係る成形方法によれば、シート材料2の余剰縁部25,26のうちトリム刃7の切断面71と交差する部分を位置決め部8,9によって位置決めした上で、トリム刃7によってシート材料2のうち余剰縁部25,26を含む部分を切断することにより、第1基材63が張り付けられた第1製品部と、第2基材64が張り付けられた第2製品部とに切り分けることができる。
【0117】
(8)本実施形態に係る成形方法によれば、下型60及び上型66の間において、平面視では下プレート81,91及び上プレート85,95がシート材料2の端辺25a,25bよりも内側に配置されるように、シート材料2の端辺25a,25bの少なくとも一部を把持枠30によって把持することにより、下型60及び上型66を型締めしたときに、シート材料2の余剰縁部25,26の一部を下プレート81,91及び上プレート85,95の間に確実に挟み込ませることができるので、トリム刃7を可動範囲内で移動させたときに、シート材料2の余剰縁部25,26がトリム刃7の切断面71の外へ逃げてしまうことをより確実に防止できるので、シート材料2の切断不良をより確実に防止することができる。
【0118】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0119】
1…成形システム
2…シート材料
25…第1余剰縁部(余剰縁部)
25a…端辺
26…第2余剰縁部(余剰縁部)
26a…端辺
3…把持装置
30…把持枠(枠体)
4…シート供給部
5…加熱装置
6…成形装置
60…下型
60a,60b…下型端
60t…下型稜線
61…第1下型
61a…第1下型面
62…第2下型
62a…第2下型面
63…第1基材
64…第2基材
65…下降装置
66…上型
66a…第1上型端
67…第1屈曲ポスト
68…第2屈曲ポスト
7…トリム刃
8…第1位置決め部
81…第1下プレート(下プレート)
82…上端部
83…第1下ガイド部(下ガイド部)
85…第1上プレート(上プレート)
86…下端部
87…第1上ガイド部(ガイド部)
9…第2位置決め部
91…第2下プレート(下プレート)
95…第2上プレート(上プレート)