(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】可撓性指針を作動させる時計機構
(51)【国際特許分類】
G04B 19/02 20060101AFI20241009BHJP
G04B 19/04 20060101ALI20241009BHJP
G04B 45/00 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
G04B19/02 Z
G04B19/04 Z
G04B45/00 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023060665
(22)【出願日】2023-04-04
【審査請求日】2023-04-05
(32)【優先日】2022-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ストランツル
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・マテ-ドゥ-ランドロワ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ハイド
(72)【発明者】
【氏名】ルネ・ピゲ
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-78983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ムーブメントのディスクが第1の角回転θ1を適用する可撓性指針(162)の作動機構(160;191;220)であって、前記可撓性指針(162)は、可撓性アーム(166)を介して前記可撓性指針(162)の先端(164)に接続された第1のキャノン(166A)および第2のキャノン(166B)を有し、前記第1のキャノンおよび前記第2のキャノン(166A、166B)は、前記可撓性指針(166)が応力のかかっていない自由な状態にあって前記可撓性指針(166)が所定の形状および長さである動作位置で、前記第1のキャノン(166A)と前記第2のキャノン(166B)が退出軸(D0)周りで同軸である応力位置にあるときに互いに離れ、前記第1のキャノン(166A)は、第1の所定のプレストレス角度で取り付けられ、前記第2のキャノン(166B)は、前記第1のキャノン(166A)とは逆方向の第2の所定のプレストレス角度で取り付けられ、前記作動機構(160;191;220)は、前記退出軸(D0)周りに枢動して前記第2のキャノン(166B)の
角度位置を前記第1のキャノン(166A)に対して変化させることで前記可撓性指針が形状および長さを所望の方法で変化するように、前記可撓性指針(162)を作動させるように構成され、前記可撓性指針(162)の各々の前記可撓性アーム(166)は、前記時計ムーブメントの前記ディスクが前記作動機構(160;191;220)に適用する前記角回転θ1を行い、
前記可撓性指針(162)の前記先端(164)が2つの互いに異なる経路を描くように、直接連続する2回転にわたって、前記可撓性指針(162)の形状および長さの変化を決定し、前記形状および長さの変動ΔL(φ)は、前記時計ムーブメントの歯車列によって前記作動機構の進入に適用される角度2xθ1の回転のために行われ
、
前記作動機構(160;191;220)は、前記可撓性指針(162)の形状および長さの変化を決定するカム(190;218;242)の輪郭部(188;216;240)を感知するカム追従フィンガ(186;214;238)を有し、前記可撓性指針(162)は、2つの同一ではない連続する回転を行い、前記カム追従フィンガ(186;214;238)は、前記輪郭部全体に沿って前記カム(190;218;242)の前記輪郭部(188;216;240)に沿って移動し、
前記作動機構(160;191;220)は、前記時計ムーブメントの前記ディスクに駆動され前記カム追従フィンガ(186;214;238)を支持する少なくとも1つの回転遊星歯車保持フレーム(172;192、194;228)を含み、
前記時計ムーブメントの前記ディスクは、角回転θ1を適用する、作動機構
(160;191;220)。
【請求項2】
前記角回転θ1を前記作動機構(160;191;220)に適用する前記時計ムーブメントの前記ディスクは、前記カム追従フィンガ(186;214;238)が前記カム(190;218;242)の前記輪郭部(188;216;240)全体に沿って移動し、前記可撓性指針(162)の前記先端(164)が2つの同一ではない完全な回転に対応する経路(244、246)を描くように、2つの完全な回転を行う必要があることを特徴とする、請求項
1に記載の作動機構(160;191;220)。
【請求項3】
前記カム追従フィンガ(186;214;238)は、前記可撓性指針(162)に応力をかけて取り付けることで誘発される機械的張力により、前記カム(190;218;242)の前記輪郭部(188;216;240)に当接して保持されることを特徴とする、請求項
1に記載の作動機構(160;191;220)。
【請求項4】
前記カム追従フィンガ(186;214;238)は、前記可撓性指針(162)に応力をかけて取り付けることで誘発される機械的張力により、前記カム(190;218;242)の前記輪郭部(188;216;240)に当接して保持されることを特徴とする、請求項
2に記載の作動機構(160;191;220)。
【請求項5】
時計ムーブメントのディスクが第1の角回転θ1を適用する可撓性指針(162)の作動機構(160;191;220)であって、前記可撓性指針(162)は、可撓性アーム(166)を介して前記可撓性指針(162)の先端(164)に接続された第1のキャノン(166A)および第2のキャノン(166B)を有し、前記第1のキャノンおよび前記第2のキャノン(166A、166B)は、前記可撓性指針(166)が応力のかかっていない自由な状態にあって前記可撓性指針(166)が所定の形状および長さである動作位置で、前記第1のキャノン(166A)と前記第2のキャノン(166B)が退出軸(D0)周りで同軸である応力位置にあるときに互いに離れ、前記第1のキャノン(166A)は、第1の所定のプレストレス角度で取り付けられ、前記第2のキャノン(166B)は、前記第1のキャノン(166A)とは逆方向の第2の所定のプレストレス角度で取り付けられ、前記作動機構(160;191;220)は、前記退出軸(D0)周りに枢動して前記第2のキャノン(166B)の角度位置を前記第1のキャノン(166A)に対して変化させることで前記可撓性指針が形状および長さを所望の方法で変化するように、前記可撓性指針(162)を作動させるように構成され、前記可撓性指針(162)の各々の前記可撓性アーム(166)は、前記時計ムーブメントの前記ディスクが前記作動機構(160;191;220)に適用する前記角回転θ1を行い、
前記可撓性指針(162)の前記先端(164)が2つの互いに異なる経路を描くように、直接連続する2回転にわたって、前記可撓性指針(162)の形状および長さの変化を決定し、前記形状および長さの変動ΔL(φ)は、前記時計ムーブメントの歯車列によって前記作動機構の進入に適用される角度2xθ1の回転のために行われ、
前記作動機構(160;191;220)は、前記可撓性指針(162)の形状および長さの変化を決定するカム(190;218;242)の輪郭部(188;216;240)を感知するカム追従フィンガ(186;214;238)を有し、前記可撓性指針(162)は、2つの同一ではない連続する回転を行い、前記カム追従フィンガ(186;214;238)は、前記輪郭部全体に沿って前記カム(190;218;242)の前記輪郭部(188;216;240)に沿って移動し、
前記角回転θ1を前記作動機構(160;191;220)に適用する前記時計ムーブメントの前記ディスクは、前記カム追従フィンガ(186;214;238)が前記カム(190;218;242)の前記輪郭部(188;216;240)全体に沿って移動し、前記可撓性指針(162)の前記先端(164)が2つの同一ではない完全な回転に対応する経路(244、246)を描くように、2つの完全な回転を行う必要があり、
前記作動機構(160;191;220)は、前記時計ムーブメントの前記ディスクに駆動され前記カム追従フィンガ(186;214;238)を支持する少なくとも1つの回転遊星歯車保持フレーム(172;192、194;228)を含み、
前記時計ムーブメントの前記ディスクは、角回転θ1を適用することを特徴とする、
作動機構(160;191;220)。
【請求項6】
時計ムーブメントのディスクが第1の角回転θ1を適用する可撓性指針(162)の作動機構(160;191;220)であって、前記可撓性指針(162)は、可撓性アーム(166)を介して前記可撓性指針(162)の先端(164)に接続された第1のキャノン(166A)および第2のキャノン(166B)を有し、前記第1のキャノンおよび前記第2のキャノン(166A、166B)は、前記可撓性指針(166)が応力のかかっていない自由な状態にあって前記可撓性指針(166)が所定の形状および長さである動作位置で、前記第1のキャノン(166A)と前記第2のキャノン(166B)が退出軸(D0)周りで同軸である応力位置にあるときに互いに離れ、前記第1のキャノン(166A)は、第1の所定のプレストレス角度で取り付けられ、前記第2のキャノン(166B)は、前記第1のキャノン(166A)とは逆方向の第2の所定のプレストレス角度で取り付けられ、前記作動機構(160;191;220)は、前記退出軸(D0)周りに枢動して前記第2のキャノン(166B)の角度位置を前記第1のキャノン(166A)に対して変化させることで前記可撓性指針が形状および長さを所望の方法で変化するように、前記可撓性指針(162)を作動させるように構成され、前記可撓性指針(162)の各々の前記可撓性アーム(166)は、前記時計ムーブメントの前記ディスクが前記作動機構(160;191;220)に適用する前記角回転θ1を行い、
前記可撓性指針(162)の前記先端(164)が2つの互いに異なる経路を描くように、直接連続する2回転にわたって、前記可撓性指針(162)の形状および長さの変化を決定し、前記形状および長さの変動ΔL(φ)は、前記時計ムーブメントの歯車列によって前記作動機構の進入に適用される角度2xθ1の回転のために行われ、
前記作動機構(160;191;220)は、前記可撓性指針(162)の形状および長さの変化を決定するカム(190;218;242)の輪郭部(188;216;240)を感知するカム追従フィンガ(186;214;238)を有し、前記可撓性指針(162)は、2つの同一ではない連続する回転を行い、前記カム追従フィンガ(186;214;238)は、前記輪郭部全体に沿って前記カム(190;218;242)の前記輪郭部(188;216;240)に沿って移動し、
前記カム追従フィンガ(186;214;238)は、前記可撓性指針(162)に応力をかけて取り付けることで誘発される機械的張力により、前記カム(190;218;242)の前記輪郭部(188;216;240)に当接して保持され、
前記作動機構(160;191;220)は、前記時計ムーブメントの前記ディスクに駆動され前記カム追従フィンガ(186;214;238)を支持する少なくとも1つの回転遊星歯車保持フレーム(172;192、194;228)を含み、
前記時計ムーブメントの前記ディスクは、角回転θ1を適用することを特徴とする、
作動機構(160;191;220)。
【請求項7】
時計ムーブメントのディスクが第1の角回転θ1を適用する可撓性指針(162)の作動機構(160;191;220)であって、前記可撓性指針(162)は、可撓性アーム(166)を介して前記可撓性指針(162)の先端(164)に接続された第1のキャノン(166A)および第2のキャノン(166B)を有し、前記第1のキャノンおよび前記第2のキャノン(166A、166B)は、前記可撓性指針(166)が応力のかかっていない自由な状態にあって前記可撓性指針(166)が所定の形状および長さである動作位置で、前記第1のキャノン(166A)と前記第2のキャノン(166B)が退出軸(D0)周りで同軸である応力位置にあるときに互いに離れ、前記第1のキャノン(166A)は、第1の所定のプレストレス角度で取り付けられ、前記第2のキャノン(166B)は、前記第1のキャノン(166A)とは逆方向の第2の所定のプレストレス角度で取り付けられ、前記作動機構(160;191;220)は、前記退出軸(D0)周りに枢動して前記第2のキャノン(166B)の角度位置を前記第1のキャノン(166A)に対して変化させることで前記可撓性指針が形状および長さを所望の方法で変化するように、前記可撓性指針(162)を作動させるように構成され、前記可撓性指針(162)の各々の前記可撓性アーム(166)は、前記時計ムーブメントの前記ディスクが前記作動機構(160;191;220)に適用する前記角回転θ1を行い、
前記可撓性指針(162)の前記先端(164)が2つの互いに異なる経路を描くように、直接連続する2回転にわたって、前記可撓性指針(162)の形状および長さの変化を決定し、前記形状および長さの変動ΔL(φ)は、前記時計ムーブメントの歯車列によって前記作動機構の進入に適用される角度2xθ1の回転のために行われ、
前記作動機構(160;191;220)は、前記可撓性指針(162)の形状および長さの変化を決定するカム(190;218;242)の輪郭部(188;216;240)を感知するカム追従フィンガ(186;214;238)を有し、前記可撓性指針(162)は、2つの同一ではない連続する回転を行い、前記カム追従フィンガ(186;214;238)は、前記輪郭部全体に沿って前記カム(190;218;242)の前記輪郭部(188;216;240)に沿って移動し、
前記角回転θ1を前記作動機構(160;191;220)に適用する前記時計ムーブメントの前記ディスクは、前記カム追従フィンガ(186;214;238)が前記カム(190;218;242)の前記輪郭部(188;216;240)全体に沿って移動し、前記可撓性指針(162)の前記先端(164)が2つの同一ではない完全な回転に対応する経路(244、246)を描くように、2つの完全な回転を行う必要があり、
前記カム追従フィンガ(186;214;238)は、前記可撓性指針(162)に応力をかけて取り付けることで誘発される機械的張力により、前記カム(190;218;242)の前記輪郭部(188;216;240)に当接して保持され、
前記作動機構(160;191;220)は、前記時計ムーブメントの前記ディスクに駆動され前記カム追従フィンガ(186;214;238)を支持する少なくとも1つの回転遊星歯車保持フレーム(172;192、194;228)を含み、
前記時計ムーブメントの前記ディスクは、角回転θ1を適用することを特徴とする、
作動機構(160;191;220)。
【請求項8】
前記カム(190;218)は固定されることを特徴とする、請求項
1に記載の作動機構(160;191;220)。
【請求項9】
前記カム(190;218)は固定されることを特徴とする、請求項
5に記載の作動機構(160;191;220)。
【請求項10】
前記カム(190;218)は固定されることを特徴とする、請求項
6に記載の作動機構(160;191;220)。
【請求項11】
前記カム(190;218)は固定されることを特徴とする、請求項
7に記載の作動機構(160;191;220)。
【請求項12】
前記遊星歯車保持フレーム(172)は、互いに対して同軸に構成された第1のソーラー歯車セットと第2のソーラー歯車セットを支持し、前記第1のソーラー歯車セットは、第1のソーラーピニオン(176)と第1のソーラー歯車(180)からなり、前記第2のソーラー歯車セットは、第2のソーラーピニオン(178)と第2のソーラー歯車(182)からなり、前記第1のソーラーピニオン(176)は、前記遊星歯車保持フレーム(172)で支持される遊星歯車(184)と噛み合い、前記遊星歯車保持フレームは、前記カム追従フィンガ(186)を支持し、前記遊星歯車(184)は、中間歯車(189)と噛み合い、前記中間歯車自体は、前記第2のソーラーピニオン(178)と噛み合い、前記作動機構(160)は、互いに対して同軸に構成された第1のキャノンピニオン(168)と第2のキャノンピニオン(170)も有し、前記可撓性指針(162)の前記第1のキャノン(166A)は前記第1のキャノンピニオン(168)に固定され、前記可撓性指針(162)の前記第2のキャノン(166B)は前記第2のキャノンピニオン(170)に固定されることを特徴とする、請求項
8に記載の作動機構(160;191;220)。
【請求項13】
を特徴とする、請求項
12に記載の作動機構(160;191;220)。
【請求項14】
前記第1の遊星歯車保持フレーム(192)は、同心である第1のキャノンピニオン(196)と第2のキャノンピニオン(198)を支持し、前記可撓性指針(162)の前記可撓性アーム(166A、166B)の各々は、キャノンピニオン(196、198)のいずれか一方で駆動され、前記第1のキャノンピニオンと前記第2のキャノンピニオン(196、198)とは、前記第1の遊星歯車保持フレーム(21)に対して回転して互いに対して逆方向に回転するように互いに運動学的につながり、前記第2の遊星歯車保持フレーム(194)は、第2のキャノンピニオン(198)と係合するソーラーディスクを支持し、前記第2の遊星歯車保持フレーム(194)は、ソーラーディスクと係合する遊星歯車(212)も支持し、前記遊星歯車は、前記カム(218)の前記輪郭部(216)に沿って移動するように構成された前記カム追従フィンガ(214)を備え、前記カム追従フィンガ(214)は、前記
カム
(218)の前記輪郭部(216)を感知し、
を特徴とする、請求項
8に記載の作動機構(160;191;220)。
【請求項15】
前記カム(242)は可動式であることを特徴とする、請求項
1に記載の作動機構(160;191;220)。
【請求項16】
前記作動機構(220)は、前記時計ムーブメントの歯車に角度θ1で駆動される遊星歯車保持フレーム(228)を有し、前記遊星歯車保持フレームは、減速中間ディスク(222)を駆動し、前記遊星歯車保持フレーム(228)は、第1のキャノンピニオン(230)と、前記第1のキャノンピニオン(230)と同心の第2のキャノンピニオン(232)とを支持し、前記遊星歯車保持フレーム(228)は、第1の遊星歯車(234)も支持し、前記第1の遊星歯車は、前記第1のキャノンピニオン(230)と噛み合う一方で、第2の遊星歯車(236)とも噛み合い、前記第2のキャノンピニオン(232)と噛み合う前記第2の遊星歯車(236)は、回転カム
(242)
の前記輪郭部(240)に沿って移動するように構成されたカム追従フィンガ(238)を備え、前記
カム追従フィンガ
(238)に当接して弾性によって保持され、
前記可撓性指針(162)が長さおよび形状を所望の方法で変化させるようにすることを特徴とする、請求項
15に記載の作動機構(160;191;220)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性指針を作動させる時計機構に関する。
【背景技術】
【0002】
指針は、特に時間をアナログで表現する最も一般的な表示方式である。本出願人は、可撓性指針を提案することでこの表示方式を解釈し直し、この指針の形状および長さは、例えば指針の先端が時計の文字盤の卵形の周縁部にできる限り接近して沿うように修正されている。このように具現化された表示は、時間の経過とともに指針の形状が変化するため、直感的に判断される。このような可撓性指針は特に、本出願人が保有している欧州特出願第3159751A1号および欧州特出願第3605243A1号の主題である。
【0003】
20年にわたり、可撓性構造は時計製造の分野で貴重な研究課題となっている。このような可撓性構造は、案内機能を果たすように弾性で変形する可撓性部材を介して互いに接続している剛性部材で構成される。その動作原理は、材料の塑性変形を防止することによる構造の弾性変形に基づいているため、これらの構造は、時計製造プロセス特有の高い精度で一体として製造することが可能である。
【0004】
従来の案内機構と比較して、可撓性構造では、摩擦がなく、それ故に潤滑の必要がない極めて正確なムーブメントが可能になる。構造の剛性は、印加される力とこの構造のムーブメントとの関係を意味するものである。戻り力を受けるムーブメントは、遊びまたはヒステリシスを含まない。
【0005】
本出願人は、可撓性構造の原理を研究し、Reine de Naplesコレクションの「Coeur」モデルの分表示に適用した。この図像的なモデルは、Maison Breguetを最も象徴するモデルの1つである。これは、手首に装着するように設計された世界初の時計に敬意を表して製作され、中央の卵形の形状が特徴で、文字盤の下部に向かって中心から外れたアワーサークルがある。
【0006】
従来の指針の先端の経路は純粋に円形だが、可撓性の構造を使用することで、Reine de Naplesの「Coeur」時計の分針の長さおよび形状を変えることが可能になる。そのため、分針の先端は、文字盤の卵形の周囲に追従することができる。したがって、分針自体は、可撓性の案内として作用する。時表示の場合は、文字盤中央の開口部で行われる。
【0007】
図1Aおよび
図1Bは、時計の2つの表示状態を示している。
図1Aでは、時計は9:00を指している。この状況では、可撓性の分針1は、細長い形状で、長さLは16.8mmで、可撓性指針1の先端2は、アワーサークルの目盛り「60」を指している。
図1Bでは、時計は9:23を指していて、可撓性指針1は、弾性により変形してハート形になり、先端2は、アワーサークルの目盛り「23」を指している。このときの指針の長さLはわずか7.7mmである。
【0008】
可撓性指針1の製造過程での立体形状を
図2Aに示している。ハート形では、可撓性指針1は、2つのアーム4および6に接続している先端2で構成され、各アームは可撓性部分4A、6A、剛性部分4B、6Bおよびキャノン4C、6Cを有する。LIGAプロセスに従って、好ましくはニッケルとリンの合金の類の材料から作製され、その特性は、求められる特異性に特によく適合する。実際、この材料のヤング率は可撓性を確保するのに十分低く、その降伏強度は高く、それによって塑性変形のリスクが最小限に抑えられる。この材料の疲労サイクルに対する耐性は、その機械特性および物理特性の長期にわたる安定性も保証するものである。別の利点は、この材料が磁場の影響を受けないことである。
【0009】
可撓性指針1の変形の原理を
図2Bに示している。ムーブメントに取り付けられると、可撓性指針1の2つのキャノン4C、6Cは重なり、2つの同軸のキャノンピニオン(図示せず)を介して作動する。
図2Bに示した概略例では、可撓性指針1は、形状および長さが変化するが回転せず、長さLが16.8mmの第1の静止位置から長さLが7.7mmの第2の弾性変形位置に切り替わる。可撓性指針1を第1の位置から第2の位置に切り替えるために、角度φの同じ回転だが逆方向の回転を可撓性指針1のアーム4、6のそれぞれに適用する。したがって、例えば有限部材のシミュレーションによって、可撓性指針1のキャノン4C、6Cに適用する角度φを正確に決定して、求められる長さの変動ΔLを得ることが可能である。
【0010】
可撓性指針1の作動原理を本特許出願に添付している
図3A~
図3Cに示している。可撓性指針1の作動機構の複雑さは、2つのキャノン4C、6Cに適用する回転を決定して求められる長さの変動ΔLを得ることにあることがわかる。実際、可撓性指針1の形状および長さを修正するためには、2つのアーム4、6の各々を別々に作動させる必要がある。
【0011】
そのために、可撓性指針1の作動の概略図である
図3Aに示したように、作動機構は、例えば時計ムーブメントのキャノンピニオンによって駆動され、キャノンピニオンは、作動機構全体を含む追加プレート7の進入に角度θ1の回転を適用する。作動機構は、進入角度θ1を、可撓性指針1の右キャノン4Cの角度α(θ1)の回転、および左キャノン6Cの角度β(θ1)の回転に変換する必要がある。
【0012】
本特許出願に添付している
図3Bは、可撓性指針1のキャノン4Cおよび6Cの回転角度を表しており、この可撓性指針1の先端2は、時計ムーブメントによって適用される回転に相当する角度θ1に沿って作動機構の進入まで移動するようになっている。この
図3Bからわかるように、可撓性指針1の先端2が角度θ1を枢動し、この可撓性指針1が実質的にアーモンド形からハート形に変化するには、右キャノン4Cは角度α(θ1)を回転し、左キャノン6Cは角度β(θ1)を回転する必要がある。
【0013】
本特許出願に添付している
図3Cは、可撓性指針1のキャノン4Cおよび6Cの回転角度αおよびβが、時計ムーブメントによって作動機構の進入に適用される回転に相当する回転角度θ1に応じて変化することを示している。
【0014】
可撓性指針1が形状および長さを変化させながらその先端2で分を指すように、各キャノン4C、6Cは、時計ムーブメントのキャノンピニオンによって従来の分針に適用される角度に相当する角度θ1を回転する必要があり、この角度θ1は、可撓性指針1が形状および長さを所望の方法で変化させるように、作動機構によって角度φを調整される。2つのキャノン4Cおよび6Cに逆方向に適用されるこの角度φ(θ1)は、可撓性指針1の形状および長さの変動ΔL(φ)を決定する。
【0015】
よって作動機構の退出角度α(θ1)およびβ(θ1)には、以下の関係が見られる。
α(θ1)=θ1+φ(θ1) (1)
β(θ1)=θ1-φ(θ1) (2)
【0016】
ここに示した可撓性指針1は対称なため、可撓性指針1の先端2の角度位置θ2は、2つのアーム4と6の二等分線、すなわち以下の関係に従って角度α(θ1)とβ(θ1)の平均であると定義する。
【0017】
【0018】
したがって、可撓性指針1の先端2の角度位置θ2は、θ1と同じである。
【0019】
あらゆる複雑さは、調整角度φ(θ1)の値を決定することにある。この値は、可撓性指針1の変形特性に左右され、この変形特性が、求められる形状および長さの変動ΔLを得るために適用する調整角度φ(θ1)を決定する。θ1に応じた角度α、βおよびθ2の変化を表すグラフを
図3Cに示している。
【0020】
可撓性指針1の作動機構をいくつか検討できる。このような作動機構の第1の例を本特許出願に添付している
図4A~
図4Cに示している。全体的に符号8で表記したこの作動機構は、第1の形状歯車列10および第2の形状歯車列12を備えている。以下にさらに詳細に説明するように、この第1の形状歯車列および第2の形状歯車列10、12は、歯並びが円形ではない歯車列を含み、角度α(θ1)およびβ(θ1)を得るために進入角度θ1で調整φ(θ1)を右キャノン4Cには足して左キャノン6Cには引くように意図されている。
【0021】
本特許出願に添付している
図4Aは、可撓性指針1の作動機構8の第1の実施形態の展開斜視図であり、図の下部の時計ムーブメントでムーブメント歯車14が2つの形状歯車列10、12を駆動するように配置され、第1の形状歯車列10は、第1の右キャノン4Cを駆動するために設けられ、第2の形状歯車列12は、第2の左キャノン6Cを駆動するために設けられ、第1の矢印および第2の矢印は、それぞれ第1のキャノン4C、第2のキャノン6Cへ動きを伝達する様子を示している。
図4Aからわかるように、第1の形状歯車列および第2の形状歯車列10、12は、一方のキャノンの他方のキャノンに対する回転に位相シフトを導入するように配置されている形状歯車列を含む。
【0022】
さらに詳細には、第1の右キャノン4Cを駆動するために、第1の形状歯車列10は、第1の軸DAの周りに取り付けられた歯車と、主要枢動軸Dの周りに同軸に取り付けられた歯車とを含む。第2の形状歯車列12に関しては、第2の左キャノン6Cを駆動するために、第2の軸DBの周りに取り付けられた歯車と、主要枢動軸Dに取り付けられた歯車とを含む。取り付けられたこの状態では、可撓性指針1は、作動機構8全体が緊張状態になるようにプレストレスがかけられ、それによって歯車列で遊びを補うことが可能になることに留意されたい。
【0023】
本特許出願に添付している
図4Bは、前述した類の作動機構を駆動する時計ムーブメントの部分概略図であり、本特許出願に添付している
図4Cは、
図4Aに示した第1の代替実施形態に従って作動機構を組み立てた状態の斜視図である。これらの
図4Bおよび
図4Cでは、時計ムーブメントの退出歯車と協働するように構成されている作動機構の進入歯車が、駆動シャフトおよびキャノンピニオンと同軸であり、この軸に可撓性指針の第1のキャノンが取り付けられているのが示され、第2のキャノンは、第1のキャノンと同軸で駆動シャフトに位置付けられる前の可撓性指針の自由な状態で示されている。各形状歯車は、適切な形状列効果が出るように角度のある案内指標を含んでいる。
【0024】
さらに詳細には、
図4Bは、可撓性指針1を用いた分表示の作動機構8を示し、
図4Cは、このような作動機構8を駆動する時計ムーブメントを示している。この実施形態では、進入歯車32が、主要枢動軸Dを中心とする固定管34に沿って案内される。この進入歯車32は、時計ムーブメントの退出ディスクで形成されたムーブメント歯車14と協働するように構成されている。この進入歯車32、例えばキャノンピニオンは、それと同軸の駆動キャノンピニオン38を直接駆動するか、あるいは指針の設定を可能にする摩擦のあるぎざぎざを介して駆動する。
【0025】
この駆動キャノンピニオン38は、回転していて、第1の形状歯車40を駆動し、第1の形状歯車は、第1の軸DAの周りに取り付けられた相補型の第2の形状歯車42と噛み合う。この第2の形状歯車42は、第1の形状歯車44に枢動可能に固定され、相補型の第4の形状歯車46と噛み合い、第4の形状歯車は、主要枢動軸Dの周りに取り付けられ、第1のキャノン4Cを固定するためのキャノンピニオン48を有する。
【0026】
同じ駆動キャノンピニオン38は、第5の形状歯車50を駆動し、第5の形状歯車は、第2の軸DBの周りに取り付けられた相補型の第6の形状歯車52と噛み合う。この第6の形状歯車52は、第7の形状歯車54に枢動可能に固定され、相補型の第8の形状歯車56と噛み合い、第8の形状歯車は、主要枢動軸Dの周りを枢動し、第2のキャノン6Cが固定されているキャノンピニオン58を有する。
【0027】
各形状歯車は、
図5に示したように適切な割り出しができるように角度のある案内指標を含むことができ、この図は、第7の形状歯車および第8の形状歯車54、56を用いて形状歯車を詳細に示している。これらの形状歯車54、56は、回転しておらず、各々が互いに対して割り出しするための案内指標60、62を有するとともに、歯車の位置決めをしやすくする長円形の孔64、66を有する。
【0028】
前述の作動機構8は、その仕様を満たし、多くの利点を有し、特に動作が単純で力強く、表示が正確である。しかしながら、形状歯車列の作用にはいくつかの限界もある。可撓性指針1の先端2の経路の変更は、2つの形状歯車列10および12の修正を意味するため、設計を修正するのは容易ではない。さらに、可撓性指針1のアーム4、6の角運動φの調整は、中程度の値に限られる。値が大きくなると、円形から大きく逸脱した形状歯車列が必要になるからである。
【0029】
図2Bを参照した前述の例では、可撓性指針1が静止位置にあるときの長さと、この可撓性指針1が弾性変形位置にあるときの長さとの比は、ほぼ2.2で、これは、形状歯車列10、12を含む作動機構8の調整φ(θ1)のための技術能力を超えている。したがって、可撓性指針1の先端2がReine de Naplesの「Coeur」時計の文字盤の卵形の周縁部に正確に追従できるように、新規の作動機構を開発した。
【0030】
全体的に符号68で表記したこの作動機構の第2の実施形態を、本特許出願に添付している
図6Aおよび
図6Bに示している。この作動機構68は、可撓性指針70を駆動するように構成され、この可撓性指針は、
図6Cに示したように、2つのアーム74および76に接続している先端72からなり、2つのアームの各々はキャノンピニオン78、80に固定されている。この可撓性指針70の動作位置は、退出軸D’の周りで互いに同軸となるように、可撓性指針70の2つのアーム74、76がそれぞれ第1のキャノンピニオン78、第2のキャノンピニオン80に固定されて応力がかかった位置である。
【0031】
作動機構68は、退出軸D’の周りに第1のキャノンピニオン78の第1の駆動手段82および第2のキャノンピニオン80の第2の駆動手段84を有する。
【0032】
第1の駆動手段82および第2の駆動手段84は、第2のキャノンピニオン80の第1のキャノンピニオン78に対する角度位置を退出軸D’の周りを枢動させることで変化させて可撓性指針70を変形するように構成され、これは、先端72のこの退出軸D’に対する径方向の位置を変化させる効果を有する。
【0033】
作動機構68は、第1の進入が第1のカム92からなる第1の差動装置90、および第1の進入が第2のカム88からなる第2の差動装置86を含む。採用した構成よれば、これらの第1のカムおよび第2のカム88、92は、固定してもよいし可動式でもよい。
【0034】
作動機構68は、第1の差動装置および第2の差動装置86、90の第2の進入を形成する遊星歯車保持フレーム94を以て完成する。この遊星歯車保持フレーム94は、第1の遊星歯車および第2の遊星歯車96、98を支持し、両遊星歯車は、該当するカム88、92の輪郭部104、106に追従するように構成されたカム追従フィンガ100、102を備えている。
【0035】
最後に、第1の差動装置90は、第1のキャノンピニオン78を出口として有し、第2の差動装置86は、第2のキャノンピニオン80を出口として有する。
【0036】
図6Bからわかるように、第2の遊星歯車98は、遊星歯車保持フレーム94の上ピボット108で自由回転するように取り付けられ、この遊星歯車保持フレームは、退出軸D’の周りを自由回転するように取り付けられる。
【0037】
ソーラーピニオンは、第2のキャノンピニオン80で支持される第2の歯並び110で形成される。
【0038】
第1の遊星歯車96は、特に本特許出願に添付している
図6Dからわかるように、第2の遊星歯車98を支持する面とは反対側の面で、遊星歯車保持フレーム94と接して自由回転するように取り付けられ、この図は、上面および下面にカウンターボア112を有し、上ピボット108および下ピボット114を有する遊星歯車保持フレーム94を示している。最後に、ソーラーピニオンは、第1のキャノンピニオン78で支持される第1の歯並び116で形成される。
【0039】
前述したように、第1の遊星歯車96は、第1のカム88の輪郭部104に沿って移動するように構成されたカム追従フィンガ100を有し、このフィンガに当接して可撓性指針70の弾性によって保持される。同じように、第2の遊星歯車98は、第2のカム92の輪郭部106に沿って移動するように構成されたカム追従フィンガ102を有すると同時に、可撓性指針70の弾性によって弾性で戻る。
【0040】
カム追従フィンガ100、102がカム88、92のそれぞれの輪郭部104、106に対して弾性で戻るようにするために、可撓性指針70の弾性を利用することが有利である。なぜなら、それによって、カム追従フィンガ100、102をカム88、92の輪郭部104、106に押し付けるのに必要な戻り部材を節約することが可能になるからである。
【0041】
前述した作動機構68の動作は以下のとおりである。この作動機構68は、遊星歯車保持フレーム94に載った状態であり、遊星歯車保持フレームは、例えば時計ムーブメントの駆動キャノンピニオン118と一緒に回転することができ、このキャノンピニオンに固定して取り付けられる。この遊星歯車保持フレーム94は、唯一の固定部材であるカム88、92を除いて作動機構68全体を角度θ1に沿って回転駆動する。この遊星歯車保持フレーム94では、可撓性指針70のアーム74、76が固定されている2つのキャノンピニオン78、80が、第1の遊星歯車および第2の遊星歯車96、98と相互作用し、各遊星歯車は、カム88、92のそれぞれの輪郭部104、106に追従するように構成されたフィンガ100、102を支持する。
【0042】
弾性によりプレストレスをかけられた可撓性指針70は、作動機構68全体を常に緊張状態に維持し、それによってカム追従フィンガ100、102は、カム88、92のそれぞれの輪郭部104、106と常に接触している。
【0043】
可撓性指針70の右アーム76に対応するキャノンピニオン80は、第2の遊星歯車98と直接噛み合って駆動される。可撓性指針70の左アーム74に対応するキャノンピニオン78は、第1の遊星歯車96と直接噛み合って駆動される。可撓性指針70のアーム74、76が固定されている第1のキャノンピニオンおよび第2のキャノンピニオン78、80は、遊星歯車保持フレーム94を介して互いに接続されている。遊星歯車保持フレーム94が角度θ1を回転すると、第1の遊星歯車および第2の遊星歯車96、98は、それぞれの下ピボット114および上ピボット108で枢動し、カム88、92との相互作用の影響で角度φ(θ1)を回転する。可撓性指針70の右アーム76が固定されているキャノンピニオン80は、角度α(θ1)を得るために遊星歯車保持フレーム94の回転θ1にこの角度φ(θ1)を足す。逆に、可撓性指針70の左アーム74が固定されているキャノンピニオン78は、角度β(θ1)を得るために回転θ1からこの角度φ(θ1)を引く。
【0044】
作動機構68全体を含む追加プレートの組み立ては、比較的簡単である。特定のプロトコルを適用する通常ではない指針の取り付けには特に注意を払う。上記で指摘したように、可撓性指針70は、弾性戻りが作動機構の歯車列の遊びを補い、カム追従フィンガ100、102をカム88、92に当てて保持するように、継続的に緊張状態にある。可撓性指針70を取り付けるとき、カム追従フィンガ100、102がカム88、92と当接しているように、キャノンを予め位置決めしなければならない。その後、可撓性指針70の右アーム76は、対応するキャノンピニオン80で所定のプレストレス角度で駆動され、次に左アーム74は、同じプレストレス角度だが、退出軸D’および可撓性指針70の先端72を通る線D’’に対して右アーム76とは逆方向にキャノンピニオン78で駆動される。
【0045】
いくつかの部材で構成されている作動機構68は、単純で頑丈である。製造公差の影響は最小である。この作動機構68は、カム88、92の立体形状を変更するだけで可撓性指針70の先端72の経路を適度に変更できるため、設計の修正にも応じることができる。
【0046】
BreguetのReine de Naplesの「Coeur」時計は、着用者が革新さを直接目にすることができる調和のとれた創作物である。その審美側面に加えて、前述の時計機構を備えた時計は、従来の時計コードに準拠しつつ、非円形の文字盤の技術的課題への対応を何よりも提供するものである。時計の底を通して歯車列の神秘的な動きを観察するときに感じられる魅力は、ここでは文字盤側に移り、可撓性指針の動きならびにその形状および長さの変化が確かな魅力をもたらしている。
【0047】
可撓性指針の作動機構の別の実施形態を本特許出願に添付している
図7Aおよび
図7Bに示している。全体的に符号120で表記したこの作動機構は、例えば2つのアーム126および128に接続している先端124からなる可撓性指針122を駆動するように構成され、各アームはキャノン130、132を有する。この可撓性指針122の動作位置は、プレストレスがかかった位置で、第1のキャノン130と第2のキャノン132が退出軸D’’’の周りで互いに対して同軸である。
【0048】
作動機構120は、遊星歯車138が回転するように取り付けられている第1のピボット136を備えている遊星歯車保持フレーム134を以て完成する。前述したように、この遊星歯車138は、カム144の輪郭部142に沿って移動するように構成されたカム追従フィンガ140を備え、このフィンガに当接して可撓性指針122の弾性によって保持される。カム144は、作動機構120の唯一の固定部材である。遊星歯車保持フレーム134は、第1の駆動キャノンピニオン148および第2の駆動キャノンピニオン150が同一の中心で自由回転するように取り付けられている固定管146も備えている。可撓性指針122の右アーム126は、第2の駆動キャノンピニオン150で所定のプレストレス角度で駆動され、次に同じ可撓性指針122の左アーム128は、第1の駆動キャノンピニオン148で、同じプレストレス角度だが右アーム126とは逆方向に駆動される。最後に、作動機構120は、第1の駆動キャノンピニオン148で支持された歯並びで形成された第1のソーラーピニオン152と、第2の駆動キャノンピニオン150で支持された歯並びで形成された第2のソーラーピニオン154とを以て完成する。遊星歯車保持フレーム134が時計ムーブメントによって、例えば時計回りの方向に回転駆動されると、遊星歯車保持フレームは、遊星歯車138を同じ方向に駆動し、遊星歯車は、カム144の輪郭部142に沿って移動する際にカム追従フィンガ140と一緒に自転する。第1の駆動キャノンピニオン148は、この遊星歯車138と直接噛み合っているため、遊星歯車保持フレーム134に対して自転する。第2の駆動キャノンピニオン150に関しては、遊星歯車138の回転が第2のピボット158で自由回転するように取り付けられた中間歯車156を介して伝達される際に、遊星歯車保持フレーム134に対して第1の駆動キャノンピニオン148と同じ速度だが逆方向に回転する。
【0049】
可撓性指針122を第1の位置から第2の位置へ切り替えるために、作動機構120は、角度φの同じ回転だが逆方向の回転を可撓性指針122の各々のアーム126、128に適用する。そのために、作動機構120は、角度θ1の回転を遊星歯車保持フレーム134の進入に適用する時計ムーブメントによって駆動される。この角度θ1の回転は、作動機構120によって可撓性指針122の右キャノン130の角度α(θ1)の回転、および左キャノン132の角度β(θ1)の回転に変換される。よって作動機構の退出角度α(θ1)およびβ(θ1)には以下の関係が見られる。
α(θ1)=θ1+φ(θ1) (1)
β(θ1)=θ1-φ(θ1) (2)
【0050】
可撓性指針122が対称であると仮定して、可撓性指針122の先端の角度位置θ2は、以下の関係に従って、2つのアーム126と128の二等分線、すなわち角度α(θ1)とβ(θ1)の平均であると定義する。
【0051】
【0052】
上記の3つの作動機構により、可撓性指針の先端が完全な一回転で非円形の経路を描くことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【文献】欧州特出願第3159751A1号
【文献】欧州特出願第3605243A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0054】
本発明の目的は、時計ムーブメントによって駆動される機構であって、直接連続する2回転で形状および長さが変化する可撓性指針を作動させ、可撓性指針の先端が2つの互いに異なる経路を描くようにすることを意図した機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0055】
この目的のため、本発明は、時計ムーブメントのディスクが第1の角回転θ1を適用する可撓性指針の作動機構であって、可撓性指針は、可撓性アームを介して可撓性指針の先端に接続された第1のキャノンおよび第2のキャノンを有し、第1のキャノンおよび第2のキャノンは、可撓性指針が応力のかかっていない自由な状態にあって可撓性指針が所定の形状および長さである動作位置で、第1のキャノンと第2のキャノンが退出軸周りで同軸である応力位置にあるときに互いに離れ、第1のキャノンは、第1の所定のプレストレス角度で取り付けられ、第2のキャノンは、第1のキャノンとは逆方向の第2の所定のプレストレス角度で取り付けられ、作動機構は、退出軸周りに枢動して第2のキャノンの角度位置を第1のキャノンに対して変化させることで可撓性指針が形状および長さを所望の方法で変化するように、可撓性指針を作動させるように構成され、可撓性指針の各々の可撓性アームは、時計ムーブメントのディスクが作動機構に適用する角回転θ1を行い、時計ムーブメントのディスクによって適用された角回転θ1は、作動機構によって追加角度
で調整され、この追加角度
は、可撓性指針の2つの可撓性アームに逆方向に適用され、この可撓性指針の先端が2つの互いに異なる経路を描くように、直接連続する2回転にわたって、可撓性指針の形状および長さの変化を決定し、形状および長さの変動ΔL(φ)は、時計ムーブメントの歯車列によってこの作動機構の進入に適用される角度2xθ1の回転のために行われる、作動機構に関する。
【0056】
本発明の特別な実施形態によれば、
-カム追従フィンガが、可撓性指針の形状および長さの変化を決定するカムの輪郭部を感知し、可撓性指針は、2つの同一ではない連続する回転を行い、カム追従フィンガは、カムの輪郭部の長さ全体に沿って移動し;
-角回転θ1を作動機構に適用する時計ムーブメントのディスクは、カム追従フィンガがカムの輪郭部全体に沿って移動し、可撓性指針の先端が2つの同一ではない完全な回転に対応する経路を描くように、2つの完全な回転を行う必要があり;
-カム追従フィンガは、可撓性指針に応力をかけて取り付けることで誘発される機械的張力により、カム輪郭部に当接して保持され;
-作動機構は、時計ムーブメントのディスクに駆動されカム追従フィンガを支持する少なくとも1つの回転遊星歯車保持フレームを含み、この遊星歯車保持フレームは、完全な回転を行い、時計ムーブメントのディスクは、角回転θ1を適用することによって2つの完全な回転を行い;
-カムは固定され;
-遊星歯車保持フレームは、互いに対して同軸に構成された第1のソーラー歯車セットと第2のソーラー歯車セットを支持し、第1のソーラー歯車セットは、第1のソーラーピニオンと第1のソーラー歯車からなり、第2のソーラー歯車セットは、第2のソーラーピニオンと第2のソーラー歯車からなり、第1のピニオンは、遊星歯車保持フレームで支持される遊星歯車と噛み合い、遊星歯車保持フレームは、カム追従フィンガを支持し、この遊星歯車は、中間歯車と噛み合い、中間歯車自体は、第2のソーラーピニオンと噛み合い、作動機構は、互いに対して同軸に構成された第1のキャノンピニオンと第2のキャノンピニオンも有し、可撓性指針の第1のキャノンは第1のキャノンピニオンに固定され、可撓性指針の第2のキャノンは第2のキャノンピニオンに固定され;
-第2のソーラー歯車は、角度
【0057】
【0058】
を倍数比2で回転する第1のキャノンピニオンと噛み合い、第1のソーラー歯車は、角度
【0059】
【0060】
を倍数比2で回転する第2のキャノンピニオンと噛み合い;
-作動機構は、第2の遊星歯車保持フレームと歯車減速比
で係合する第1の遊星歯車保持フレームを含み、第1の遊星歯車保持フレームは、同心である第1のキャノンピニオンと第2のキャノンピニオンを支持し、可撓性指針の可撓性アームの各々は、キャノンピニオンのいずれか一方で駆動され、第1のキャノンピニオンと第2のキャノンピニオンとは、逆方向に回転するように互いに運動学的につながり、第2の遊星歯車保持フレームは、第2のキャノンピニオンと係合するソーラーディスクを支持し、第2の遊星歯車保持フレームは、ソーラーディスクと係合する遊星歯車も支持し、遊星歯車は、カムの輪郭部に沿って移動するように構成されたカム追従フィンガを備え、カム追従フィンガは、固定カムの輪郭部を感知し、遊星歯車は、時計ムーブメントのディスクによってソーラーディスクに適用される角度
の角回転θ1を回転すると同時に調整し、このソーラーディスクは、角度
【0061】
【0062】
を倍数比2で回転する第2のキャノンピニオンを駆動し、第2のキャノンピニオンは、角度
【0063】
【0064】
で第1のキャノンピニオンを駆動し、
-カムは可動式であり;
-作動機構は、時計ムーブメントの歯車に駆動される減速中間ディスクを有し、減速中間ディスクは、遊星歯車保持フレームを角度θ1で回転させるように駆動し、この遊星歯車保持フレームは、第1のキャノンピニオンと、第1のキャノンピニオンと同心の第2のキャノンピニオンとを支持し、遊星歯車保持フレームは、第1の遊星歯車も支持し、第1の遊星歯車は、第1のキャノンピニオンと噛み合う一方で、第2の遊星歯車とも噛み合い、第2のキャノンピニオンと噛み合うこの第2の遊星歯車は、回転カムの輪郭部に沿って移動するように構成されたカム追従フィンガを備え、このフィンガに当接して弾性によって保持され、この回転カムは、遊星歯車保持フレームが角度θ1を回転したときに、回転カムが角度
を回転するように、時計ムーブメントによって減速比
で駆動され、したがって第2の遊星歯車は、退出軸周りを角度θ1で遊星歯車保持フレームと一緒に回転しながら、可撓性指針の2つの可撓性アームの回転を角度
で調整するように決定した回転角度で自転し、可撓性指針が長さおよび形状を所望の方法で変化させるようにする。
【0065】
可撓性指針が、形状および長さを変化させることによって2つの連続する同一ではない完全な回転を行うことができるように、指針の各アームは、時計ムーブメントのキャノンピニオンによって従来の分針に適用される角度に相当する角度θ1を回転する必要があり、この角度θ1は、可撓性指針が形状および長さを所望の方法で変化させるように、作動機構によって角度φで調整される。可撓性指針の2つのアームに逆方向に適用されるこの角度φ(θ1)は、可撓性指針の形状および長さの変動ΔL(φ)を決定する。
【0066】
本発明のその他の特徴および利点は、可撓性指針を作動させる時計機構についての以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。この実施例は、添付の図面を参照して純粋に例示として挙げるものであって単なる限定ではない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1A】上記に引用した、9:00を指しているときの時計を示し、可撓性指針が細長い形状で、その先端がアワーサークルの目盛り「60」を指している図である。
【
図1B】上記に引用した、9:23を指しているときの時計を示し、可撓性指針が弾性で変形してハート形を形成し、先端がアワーサークルの目盛り「23」を指している図である。
【
図2A】上記に引用した、可撓性指針の製造過程での立体形状を示す図である。
【
図2B】上記に引用した、可撓性指針の変形原理を示す図である。
【
図3A】上記に引用した、可撓性指針の作動の概略図である。
【
図3B】上記に引用した、キャノンおよび可撓性指針の回転角度を表し、この可撓性指針の先端が、時計ムーブメントが作動機構の進入に適用した回転に相当する角度θ1に沿って移動する図である。
【
図3C】上記に引用した、可撓性指針の回転角度αおよびβが、時計ムーブメントが作動機構の進入に適用した回転に相当する回転角度θ1に応じて変化する様子を示す図である。
【
図4A】上記に引用した、可撓性指針の作動機構の第1の実施形態の展開斜視図である。
【
図4B】作動機構を駆動する時計ムーブメントの部分断面図である。
【
図4C】上記に引用した、
図4Aの作動機構を組み立てた状態の斜視図である。
【
図5】上記に引用した、適切な割り出しができるように角度のある案内指標が取り付けられている形状歯車の図である。
【
図6A】上記に引用した、可撓性指針の作動機構を組み立てた状態の第2の実施形態の図である。
【
図6B】上記に引用した、
図6Aの作動機構を分解した状態の斜視図である。
【
図6C】上記に引用した、
図6Aおよび
図6Bの作動機構によって作動するように構成された可撓性指針の斜視図である。
【
図6D】上記に引用した、上面および下面にカウンターボアを有し、上ピボット108および下ピボット114を有する遊星歯車保持フレームを示す図である。
【
図7A】上記に引用した、先行技術による可撓性指針の作動機構の第3の実施形態の展開斜視図であり、この作動機構は、遊星歯車保持フレームで支持された差動装置の類の装置を含み、可撓性指針の2つのキャノンは、第1のキャノンピニオンおよび第2のキャノンピニオンの周りで同軸である図である。
【
図7B】上記に引用した、
図7Aの作動機構を組み立てた状態の図である。
【
図8A】本発明による可撓性指針の作動機構の第1の実施形態の概略図である。
【
図9A】本発明による可撓性指針の作動機構の第2の実施形態の概略図である。
【
図10A】本発明による可撓性指針の作動機構の第3の実施形態の概略図である。
【
図11A】本発明による作動機構のうちの1つで駆動されている可撓性指針の2つの異なる直接つながっている経路を示す図である。
【
図11B】本発明による作動機構のうちの1つで駆動されている可撓性指針の2つの異なる直接つながっている経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明は、時計ムーブメントによって駆動される機構であって、直接連続する2回転で形状および長さが変化する可撓性指針を作動させ、指針の先端が2つの互いに異なる経路を描くようにすることを意図した機構を提供することからなる、全体的に発明性のある案に由来するものである。
【0069】
本発明による作動機構の第1の実施形態を
図8A~
図8Cに示している。全体的に符号160で表記したこの作動機構は、第1のキャノンおよび第2のキャノン166A、166Bにそれぞれの可撓性アーム166を介して接続された先端164からなる前述した類の可撓性指針162を駆動するように構成されている。可撓性指針162が、形状および長さを変化させることによって2つの連続する同一ではない完全な回転を行うことができるように、可撓性指針162の各々の可撓性166は、時計ムーブメントのキャノンピニオンによって従来の分針に適用される角度に相当する角度θ1を回転する必要があり、可撓性指針162が形状および長さを所望の方法で変化させるように、この角度θ1は作動機構160によって角度φを調整される。この角度φは、可撓性指針162の2つの可撓性アーム166に逆方向に適用され、可撓性指針の形状および長さの変動ΔL(φ)を決定する。そのために、可撓性指針162の右の可撓性アーム166に対応する第1のキャノン166Aは、第2のキャノンピニオン170に固定され、可撓性指針162の左の可撓性アーム166に対応する第2のキャノン166Bは、第1のキャノンピニオン168に固定され、2つのキャノンピニオン168、170は、退出軸D0の周りで同心に配置される。
【0070】
作動機構160は、遊星歯車保持フレーム172を有し、この遊星歯車保持フレームの入口で、時計ムーブメントの歯車174は、歯車174が角度θ1を回転したときに遊星歯車保持フレーム172が角度
を回転するように、角度θ1の回転を適用する。遊星歯車保持フレーム172は、同軸に配置された第1のソーラーピニオン176および第2のソーラーピニオン178を支持する。第1のソーラーピニオン176は第1のソーラー歯車180を支持し、第2のソーラーピニオン178は第2のソーラー歯車182を支持する。第1のソーラーピニオン176は、遊星歯車184と噛み合い、この遊星歯車は、固定カム190の輪郭部188に沿って動くように構成されたカム追従フィンガ186を支持し、このフィンガに当接して上記で詳述した類の可撓性指針の弾性によって保持される。遊星歯車184は中間歯車189と噛み合い、中間歯車は第2のソーラーピニオン178と噛み合う。歯車174は、カム追従フィンガ186が固定カム190の輪郭部188全体に沿って移動し、可撓性指針162の先端164が2つの同一ではない完全な回転に相当する経路を描くように、2つの完全な回転を行う必要があることが理解される。第2のソーラー歯車182は、角度
【0071】
【0072】
を倍数比2で回転する第1のキャノンピニオン168と噛み合い、第1のソーラー歯車180は、角度
【0073】
【0074】
を倍数比2で回転する第2のキャノンピニオン170と噛み合う。可撓性指針162の右の可撓性アーム166は、第2のキャノンピニオン170で駆動され、可撓性指針162の左の可撓性アーム166は、第1のキャノンピニオン168で駆動される。よって可撓性指針162左右の可撓性アーム166は、以下の角度を描く。
【0075】
【0076】
可撓性指針162が対称であると仮定して、可撓性指針162の先端164の角度位置θ2は、以下の関係に従って、2つのアーム166の二等分線、すなわち角度α(θ1)とβ(θ1)の平均であると定義する。
【0077】
【0078】
本発明による可撓性指針162の作動機構の第2の実施形態を
図9A~
図9Cに概略的に示している。全体的に符号191で表記したこの作動機構は、歯車減速比
で第2の遊星歯車保持フレーム194と係合する第1の遊星歯車保持フレーム192を有する。可撓性指針162が、形状および長さを変化させることによって2つの連続する同一ではない完全な回転を行うことができるように、可撓性指針162の各々の可撓性166は、時計ムーブメントのキャノンピニオンによって従来の分針に適用される角度に相当する角度θ1を回転する必要があり、可撓性指針162が形状および長さを所望の方法で変化させるように、この角度θ1は作動機構191によって角度φを調整される。この角度φ(θ1)は、退出軸D0の周りで可撓性指針162の2つの可撓性アーム166に逆方向に適用され、可撓性指針の形状および長さの変動ΔL(φ)を決定する。
【0079】
このために、第1の遊星歯車保持フレーム192は、同心である第1のキャノンピニオン196と第2のキャノンピニオン198を支持する。可撓性指針162の右の可撓性アーム166は第2のキャノンピニオン198で駆動され、可撓性指針162の左の可撓性アーム166は第1のキャノンピニオン196で駆動される。第1のキャノンピニオン196で支持された第1の歯並びで形成される第1のソーラーピニオン200は、第1の遊星歯車保持フレーム192で自由回転するように取り付けられた第1の遊星歯車202と噛み合う。この第1の遊星歯車202は、同じく第1の遊星歯車保持フレーム192で自由回転するように取り付けられた第2の遊星歯車204と噛み合い、第2の遊星歯車は、第2のキャノンピニオン198で支持された第2の歯並びで形成される第2のソーラーピニオン206と係合する。この第1の遊星歯車202および第2の遊星歯車204の機能は、第1のキャノンピニオンと第2のキャノンピニオン196、198を退出軸D0の周りで第1の遊星歯車保持フレーム192に対して互いに逆方向に回転させることである。
【0080】
第2の遊星歯車保持フレーム194は、ソーラーピニオン208と、第2のキャノンピニオン198の第2のソーラーピニオン206と係合しているソーラー歯車210とで形成されたソーラーディスクを支持する。第2の遊星歯車保持フレーム194は、ソーラーピニオン208と係合している第3の遊星歯車212も支持し、第3の遊星歯車は、固定カム218の輪郭部216に沿って移動するように構成されたカム追従フィンガ214を備え、このフィンガに当接して上記で詳述した方法で可撓性指針の弾性によって保持される。第1の遊星歯車保持フレーム192が角度θ1を自転するとき、第2の遊星歯車保持フレーム194もそれに伴って角度
を自転する。この遊星歯車保持フレーム194は、角度
を回転することで固定カム218の輪郭部216を感知する第3の遊星歯車212を支持する。第3の遊星歯車212は、固定カム218の輪郭部216に追従しながら回転し、それと同時に、時計ムーブメントによってソーラー歯車210に角度
で適用される角回転θ1を調整し、このソーラー歯車210は、角度
【0081】
【0082】
を倍数比2で回転する第2のキャノンピニオン198を駆動する。第1のキャノンピニオンおよび第2のキャノンピニオン196、198は、第1の遊星歯車保持フレーム192に対して互いに逆方向に回転することが理解されるであろう。
【0083】
最後に、第2のキャノンピニオン198は、第1のキャノンピニオン196を角度
【0084】
【0085】
を駆動する。
【0086】
よって可撓性指針162の左右の可撓性アーム166は、以下の角度を描く。
【0087】
【0088】
可撓性指針162が対称であると仮定して、可撓性指針162の先端164の角度位置θ2は、以下の関係に従って、2つのアーム166の二等分線、すなわち角度α(θ1)とβ(θ1)の平均であると定義する。
【0089】
【0090】
本発明による可撓性指針の作動機構の第3の実施形態を
図10A~
図10Cに概略的に示している。全体的に符号220で表記したこの作動機構は、減速中間車226と減速中間ピニオン224からなる減速中間車セット222を含む。一方、時計ムーブメントの歯車によって角度θ1で駆動される遊星歯車保持フレーム228は、減速中間車226を駆動する。この遊星歯車保持フレーム228は、第1のキャノンピニオン230および第1のキャノンピニオン230と同心の第2のキャノンピニオン232を支持する。遊星歯車保持フレーム228は、第1の遊星歯車234も支持し、第1の遊星歯車は、ピボットで自由回転するように取り付けられ、第1のキャノンピニオン230と噛み合う一方で、別のピボットで自由回転するように取り付けられた第2の遊星歯車236とも噛み合う。第2のキャノンピニオン232と噛み合うこの第2の遊星歯車236は、回転カム242の輪郭部240に沿って移動するように構成されたカム追従フィンガ238を備え、このフィンガに当接して可撓性指針162の弾性によって保持される。この回転カム242は、ランナー243に案内され、減速中間車222と係合し、それによって遊星歯車保持フレーム228が角度θ1を回転したときに、回転カム242が角度
を回転するようになる。したがって、第1のキャノンピニオン230は、可撓性指針が形状および長さを所望の方法で変化させるように、作動機構220によって角度
で調整した角度θ1を回転する。この角度
は、可撓性指針162の2つの可撓性アーム166に逆方向に適用され、可撓性指針162の形状および長さの変動ΔL(φ)を決定する。よって可撓性指針162の左右の可撓性アーム166は、以下の角度を描く。
【0091】
【0092】
最後に、
図11Aおよび
図11Bは、前述した本発明による作動機構のうちの1つによって駆動されることが可能な可撓性指針162の2つの異なる位置を示し、可撓性指針の形状および長さの変動ΔL(φ)は、時計ムーブメントの歯車列によってこの作動機構の進入に適用される角度2xθ1の回転のために行われる。
図11Aおよび
図11Bでは、可撓性指針162の先端164は、2つの実質的に円形の経路244および246を描くことができ、両経路は、互いに半径値が異なり、同心ではないことがわかる。
【0093】
言うまでもなく、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されず、当業者は、添付の特許請求の範囲で規定したとおりの本発明の範囲を逸脱しないかぎり、様々な修正および単純な変形を構想してよい。特に、この可撓性指針が2つの連続する完全な回転を行うときに、本発明による作動機構によって駆動される可撓性指針の先端が描く経路は、互いに異なり、明らかに円形形状から逸脱し得ることが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0094】
1 可撓性指針
2 先端
4 アーム
4A 可撓性部分
4B 剛性部分
4C キャノン
6 アーム
6A 可撓性部分
6B 剛性部分
6C キャノン
7 追加プレート
8 作動機構
10 第1の形状歯車列
12 第2の形状歯車列
14 ムーブメント歯車
16 時計ムーブメント
DA 第1の軸
D 主要枢動軸
DB 第2の軸
32 固定管
34 進入ディスク
38 駆動キャノンピニオン
40 第1の形状歯車
42 第2の形状歯車
44 第3の形状歯車
46 第4の形状歯車
48 キャノンピニオン
50 第5の形状歯車
52 第6の形状歯車
54 第7の形状歯車
56 第8の形状歯車
58 キャノンピニオン
60 案内指標
62 案内指標
64 長円孔
66 長円孔
L 長さ
68 作動機構
70 可撓性指針
72 先端
74 アーム
76 アーム
78 第1のキャノンピニオン
80 第2のキャノンピニオン
D’ 退出軸
82 第1の駆動手段
84 第2の駆動手段
86 第1の差動装置
88 第1のカム
90 第2の差動装置
92 第2のカム
94 遊星歯車保持フレーム
96 第1の遊星歯車
98 第2の遊星歯車
100 カム追従フィンガ
102 カム追従フィンガ
104 輪郭部
106 輪郭部
108 上ピボット
110 第2の歯並び
112 カウンターボア
114 下ピボット
116 第1の歯並び
118 駆動キャノンピニオン
D’’ 直線
120 作動機構
122 可撓性指針
124 先端
126 第1のアーム
128 第2のアーム
130 第1のキャノン
132 第2のキャノン
D’’’ 退出軸
134 遊星歯車保持フレーム
136 第1のピボット
138 遊星歯車
140 カム追従フィンガ
142 輪郭部
144 カム
146 固定管
148 第1の駆動キャノンピニオン
150 第2の駆動キャノンピニオン
152 第1のソーラーピニオン
154 第2のソーラーピニオン
156 中間歯車の歯車
158 第2のピボット
160 作動機構
162 可撓性指針
164 先端
166 可撓性アーム
166A キャノン
166B キャノン
168 第1のキャノンピニオン
170 第2のキャノンピニオン
172 遊星歯車保持フレーム
174 歯車
176 第1のソーラーピニオン
178 第2のソーラーピニオン
180 第1のソーラー歯車
182 第2のソーラー歯車
184 遊星歯車
186 カム追従フィンガ
188 輪郭部
189 中間歯車
190 固定カム
191 作動機構
192 第1の遊星歯車保持フレーム
194 第2の遊星歯車保持フレーム
196 第1のキャノンピニオン
198 第2のキャノンピニオン
200 第1のソーラーピニオン
202 第1の遊星歯車
204 第2の遊星歯車
206 第2のソーラーピニオン
208 ソーラーピニオン
210 ソーラー歯車
212 第3の遊星歯車
214 カム追従フィンガ
216 輪郭部
218 固定カム
220 作動機構
222 中間減速ディスク
224 中間減速ピニオン
226 中間減速歯車
228 遊星歯車保持フレーム
230 第1のキャノンピニオン
232 第2のキャノンピニオン
234 第1の遊星歯車
236 第2の遊星歯車
238 カム追従フィンガ
240 輪郭部
242 回転カム
243 ランナー
244 円形経路
246 円形経路