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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】靴、および靴の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/14 20060101AFI20241009BHJP
   B29D 35/00 20100101ALI20241009BHJP
【FI】
A43B13/14 A
B29D35/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023127595
(22)【出願日】2023-08-04
(62)【分割の表示】P 2021511777の分割
【原出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2023138630
(43)【公開日】2023-10-02
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】上野 聖逸
(72)【発明者】
【氏名】上田 亙
(72)【発明者】
【氏名】椎名 一平
(72)【発明者】
【氏名】山下 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮本 幹也
(72)【発明者】
【氏名】森安 健太
(72)【発明者】
【氏名】阪口 正律
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-327705(JP,A)
【文献】米国特許第05448839(US,A)
【文献】特開2000-351128(JP,A)
【文献】特表2008-526269(JP,A)
【文献】米国特許第03550597(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第00059660(EP,A1)
【文献】特開2001-299404(JP,A)
【文献】特表2012-527259(JP,A)
【文献】米国特許第04393876(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/122472(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/14
B29D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
つま先と踵とを結ぶ軸に沿って延びる緩衝部材を有し、前記緩衝部材が、前記軸の全長に亘って、前記軸まわりにねじれているソールと、
前記緩衝部材よりも硬い硬質部材で構成され、前記緩衝部材の下に配設されているアウターソールと、を備え、
前記ソールの上面、および前記アウターソールの底面は、前記つま先と前記踵との間の中央部から前記踵へ向かうにつれて内向きにねじれており、かつ、前記中央部から前記つま先へ向かうにつれて外向きにねじれていることを特徴とする靴。
【請求項2】
前記緩衝部材は、発泡粒子で形成されていることを特徴とする請求項に記載の靴。
【請求項3】
つま先と踵とを結ぶ軸に沿って延びており、前記軸の全長に亘って前記軸まわりにねじれている緩衝部材に対応する型枠に、樹脂材料を充填する充填工程と、
前記樹脂材料を加熱して前記緩衝部材を形成する形成工程と、
前記形成工程によって形成された前記緩衝部材にアウターソールを接着し、前記緩衝部材の上面、および前記アウターソールの底面が前記つま先と前記踵との間の中央部から前記踵へ向かうにつれて内向きにねじれており、かつ、前記中央部から前記つま先へ向かうにつれて外向きにねじれている靴を形成する接着工程と、
を備えることを特徴とする靴の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソール、靴、ソールの製造方法、およびソールのねじれ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ等で着用する靴は、着用者が歩行や、走行、運動等を行った際に身体の足部分の動きに追従し、しっかりと足をサポートすることが望まれる。
【0003】
特許文献1には、斜めにねじれたプレートを備えるソールが開示されている。このプレートの上に緩衝部材としてのミッドソールが配置されている。
【0004】
また、非特許文献1のFigure 1には、着地時の足の外転について、コントロールされたランナーと、負傷者との比較結果が示されている。この比較結果では、負傷者の場合には外転している期間が長く継続するのに対し、コントロールされたランナーの場合は、外転している期間が短く、外転から内転へ早く移行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2008-526269号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Biomechanical Factors Associated With Achilles Tendinopathy and Medial Tibial Stress Syndrome in Runners, James Becker、Stanley James、Robert Wayner、Louis Osternig、Li-Shan Chou著、The American Journal of Sports Medicine, Vol. 45、No. 11、pp.2614-2620
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、踵外方から母趾球および親指先まで斜め内方へ移動する荷重線による人の自然な動作がねじれたソールによって達成されることが述べられているものの、ソールの動きや変形については言及されていない。また発明者らは、非特許文献1に示されるように外転から内転へ早い段階で移行するような足の動きを促進することで、靴の機能を改善する余地があることに気付いた。
【0008】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ねじり変形を利用して足の動作を補助することができるソール、靴、ソールの製造方法、およびソールのねじれ制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様はソールである。ソールは、つま先と踵とを結ぶ軸に沿って延びる緩衝部材を備えるソールであって、前記緩衝部材は、前記軸の少なくとも一部において、前記軸まわりにねじれていることを特徴とする。
【0010】
また別の態様のソールは、つま先側と踵側との間に延びる緩衝部材を備えるソールであって、前記緩衝部材は、外側部において、つま先側および踵側が、つま先側と踵側との間の中央部よりも高くなるように形成されていることを特徴とする。
【0011】
また本発明のある態様はソールの製造方法である。ソールの製造方法は、つま先と踵とを結ぶ軸に沿って延びており、前記軸の少なくとも一部において前記軸まわりにねじれている緩衝部材に対応する型枠に、樹脂材料を充填する充填工程と、前記樹脂材料を加熱して前記緩衝部材を形成する形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また本発明のある態様は靴である。靴は、つま先と踵とを結ぶ軸に沿って延びる緩衝部材を備え、前記緩衝部材が前記軸の少なくとも一部において前記軸まわりにねじれているソールと、前記緩衝部材のねじれ角度を変化させるアクチュエータと、を備えることを特徴とする。
【0013】
また本発明のある態様はソールのねじれ制御システムである。ソールのねじれ制御システムは、つま先と踵とを結ぶ軸に沿って延びる緩衝部材を備え、前記緩衝部材が前記軸の少なくとも一部において前記軸まわりにねじれているソールと、前記緩衝部材のねじれ角度を変化させるアクチュエータと、前記アクチュエータを駆動制御する制御部と、位置情報に基づいて前記ソールが接地する路面の情報を取得する路面情報装置と、を備え、前記路面情報装置によって取得された路面の情報に基づいて前記制御部によりねじれ角度を変化させることを特徴とする。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ねじり変形を利用して足の動作を補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1に係る靴の外観を示す分解斜視図である。
図2】ソールの平面図と人体の足の骨格モデルとの位置関係を説明するための模式図である。
図3】ソールの底面図である。
図4図4(a)~図4(e)は、図3に示すA-A線等の各切断線によるソールの断面図である。
図5】着地時の足のプロネーションの一例を示すグラフである。
図6】実施形態2に係るソールの外観を示す斜視図である。
図7】ソールの平面図である。
図8】ソールの底面図である。
図9図9(a)~図9(e)は、図8に示すA-A線等の各切断線によるソールの断面図である。
図10】実施形態3に係るソールの外観を示す斜視図である。
図11】ソールの平面図である。
図12】ソールの底面図である。
図13図13(a)~図13(e)は、図12に示すA-A線等の各切断線によるソール1の断面図である。
図14】ミッドソールの成形工程を示すフローチャートである。
図15】実施形態4に係るソールのねじれ制御システムの機能構成を示すブロック図である。
図16】調節装置のアクチュエータの外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図1から図16を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0018】
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る靴100の外観を示す分解斜視図である。靴100は、アッパー9およびソール1を有する。アッパー9は、ソール1の周縁部に接着または縫合されて足の上側を覆う。ソール1は、アウターソール10およびミッドソール20等を有し、アウターソール10の上にミッドソール20を積層し、さらに図示しない中敷等を積層して構成される。尚、図1に示す靴100は左足用である。
【0019】
図2はソール1の平面図と人体の足の骨格モデルとの位置関係を説明するための模式図である。図2において、人体の足は、主に、楔状骨Ba、立方骨Bb、舟状骨Bc、距骨Bd、踵骨Be、中足骨Bf、趾骨Bgで構成される。足の関節には、MP関節Ja、リスフラン関節Jb、ショパール関節Jcが含まれる。ショパール関節Jcには、立方骨Bbと踵骨Beがなす踵立方関節Jc1と、舟状骨Bcと距骨Bdがなす距舟関節Jc2とが含まれる。
【0020】
本発明において、ソール1の前後方向Yはつま先と踵とを結んだ直線Lの方向とし、前後方向Yおよび鉛直方向(図示略)に対して交差する方向を幅方向Xとする。前後方向Yは、例えばソール1のつま先と踵との外寸法または内寸法が最大となる方向や、踵側の中央とつま先側の中央とを結んだ直線の方向などとする。MP関節Jaの踵側の末端を通ると想定される幅方向X(直線Lに直交する方向)に沿った直線を線Pとする。また着用者のショパール関節Jcのつま先側の末端を通ると想定される幅方向Xに沿った直線を線Qとする。ここで、前足部は線Pからつま先側の領域を、中足部は、線Pから線Qまでの領域を、後足部は、線Qから踵側の領域をいうものとする。線Pおよび線Qの靴100との関係について見れば、例えば、線Pは前後方向Yにおける靴100の全長Mに対して踵側の後端から40%乃至75%の範囲に位置する。より好ましくは後端から55%乃至70%の範囲に位置する。また線Qは直線L方向における靴100の全長Mに対して踵側の後端から20%乃至45%の範囲に位置する。より好ましくは後端から25%乃至40%の範囲に位置する。
【0021】
図3は、ソール1の底面図である。アウターソール10は、路面に接地される底面部分が足の前後方向Yの全長に亘って形成されており、つま先を保護すべく巻き上げられている。図3に示すアウターソール10は、ソール1の周縁に沿って離散的に設けられているが、連続的に形成されるような構成となっていてもよい。アウターソール10の上面にはミッドソール20との間にジェル部材15を配置している。ジェル部材15についても、アウターソール10と同様に、ソール1の周縁に沿って離散的に設けても良いし、連続的に設けられていても良い。ジェル部材15には、路面の凹凸による局所的な荷重を緩和し、また着地時の衝撃を吸収すべく、アウターソール10およびミッドソール20よりも硬度の低い材料を用いる。
【0022】
ミッドソール20は、アウターソール10の上に配置されており、つま先から踵まで形成されている。ミッドソール20は、荷重を受けていない自由状態において、ミッドソール20のつま先20aから踵20bに亘って、内向きまたは外向きにねじれている。ミッドソール20は、前後方向Yに沿って延びる1つの棒状の物体とすると、棒状のミッドソール20の中心軸まわりにねじれていると考えられる。ミッドソール20の中心軸は、断面における図心を前後方向に連続的に求めて繋ぐことで求まる。尚、ミッドソール20の中心軸は、本発明におけるつま先と踵とを結ぶ軸に相当し、ミッドソール20の形状に応じて直線状、曲線状、または部分的な直線と曲線とを組み合わせた線となる。また、ミッドソール20は、本発明における緩衝部材に相当している。
【0023】
図1に示すミッドソール20は、前後方向Yにおいて全体的にねじれているが、部分的にねじれている構成となっていてもよい。ミッドソール20は、つま先20aと踵20bとの間の中央部20cから踵20bへ向かうにつれて内向きにねじれており、中央部20cからつま先20aへ向かうにつれて外向きにねじれている。
【0024】
ミッドソール20は、中足部に対して後足部が内向きにねじれており、中足部に対して前足部が外向きにねじれている。ミッドソール20は、例えば前足部、中足部または後足部で部分的にねじれている構成であってもよい。またミッドソール20は、前足部から中足部にかけて、または、中足部から後足部にかけて部分的にねじれている構成であってもよい。
【0025】
アウターソール10は、例えばゴムや樹脂、またゴムおよび樹脂等の複合材で形成される。ミッドソール20は、例えば樹脂製の発泡体で形成される。樹脂としては、TPA(アミド系熱可塑性エラストマー)のような熱可塑性樹脂(例えばナイロン樹脂材)、TPU、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)等の熱可塑性樹脂が用いられ、適宜、任意の他の成分を含んでいてもよい。アウターソール10は、ミッドソール20よりも硬度が高い硬質部材とすることで、靴100の耐久性を増すとともに鉛直方向への変形を抑えることができる。
【0026】
次に実施形態1に係る靴100の作用について説明する。図4(a)~図4(e)は、図3に示すA-A線等の各切断線によるソール1の断面図である。図4(c)に示す中足部におけるC-C断面からつま先20a側へ向かうにつれて、図4(b)に示すB-B断面、図4(a)に示すA-A断面のように徐々に外向きにミッドソール20がねじれている。また、中足部におけるC-C断面から踵20b側へ向かうにつれて、図4(d)に示すD-D断面、図4(e)に示すE-E断面のように徐々に内向きにミッドソール20がねじれている。靴100の着用者が歩行または走行した場合に、踵20b側から着地し、後足部、中足部および前足部が順に路面に接触する。このときねじれているミッドソール20のうち、路面に接触した部分において、ねじれが少なくなるように変形が進み、変形によって復元力が生じる。
【0027】
例えば、後足部が着地し、E-E断面およびD-D断面がともに路面に接触している状態では、自由状態におけるE-E断面とD-D断面との間のねじれが少なくなる。E-E断面およびD-D断面には、元のねじれた状態に戻ろうとする復元力が発生する。その後、後足部の踵20b側が路面から離れる際に、ミッドソール20は、復元力によって足の踵側がより浮き上がり易くなり、歩行または走行における足の動作を補助する。
【0028】
中足部から前足部へと足が着地していく際に、C-C断面、B-B断面およびA-A断面でも復元力が順に発生していく。その後、足が路面から離れる際に中足部および前足部においても、復元力によって足が路面から浮き上がり易くなり、歩行または走行における蹴り出し時の足の動作を補助する。ミッドソール20は、例えばTPAの熱可塑性樹脂としてナイロン樹脂を用いることで、復元力が大きく、路面から足を浮き上がらせる反発力を瞬時に発生させることができる。
【0029】
ミッドソール20は、図4(a)のA-A断面および図4(e)のE-E断面に示すように、90度程度ねじれているが、ねじれの角度はこれに限られるものではなく、任意の角度とすることができる。例えば、着用者によってプロネーションが小さく、復元力を小さくしたい場合には、ミッドソール20をねじれの角度が例えば45度よりも小さくするなど、個人差に応じてねじれの角度のバリエーションを設定してもよい。
【0030】
図5は、着地時の足のプロネーションの一例を示すグラフである。実施形態1に係る靴100のプロネーションは線T1で表されている。また、ねじれていない靴の例は線T0で表されている。線T1で表されるように、着地時においてプロネーション量が小さくなっており、足が内向きに倒れている時間も短くなっている。また図5に示す矢印U1のように内向きの倒れが解消するスピードは、ねじれていない靴よりも若干大きくなっている。
【0031】
ソール1は、アウターソール10、ジェル部材15およびミッドソール20等によって構成しているが、これらを一体のミッドソール20として形成するようにしてもよい。この場合、ミッドソール20を一の材質としてアウターソール10およびジェル部材15の機能を持たせてもよいし、ミッドソール20の成形の際に、2種類以上の材料を一体成形するようにしてもよい。また、ソール1の内部には、例えば前後方向Yに延びるワイヤーなどを配置して鉛直方向における変形を抑制するようにしてもよい。
【0032】
(実施形態2)
図6は実施形態2に係るソール1の外観を示す斜視図であり、図7はソール1の平面図、図8はソール1の底面図である。実施形態2に係るソール1は実施形態1と同様にアウターソール10、ジェル部材15およびミッドソール20等で構成されている。図6等に示すソール1は左足用である。実施形態2に係るソール1について、以下にとくに説明する以外の構成、材質および作用等は実施形態1と同等である。
【0033】
ミッドソール20は、荷重を受けていない自由状態において、ミッドソール20のつま先20aから踵20bに亘って、内向きまたは外向きにねじれている。ミッドソール20は、中央部20cから踵20bへ向かうにつれて外向きにねじれており、中央部20cからつま先20aへ向かうにつれて内向きにねじれている。
【0034】
ミッドソール20は、中足部に対して後足部が外向きにねじれており、中足部に対して前足部が内向きにねじれている。ミッドソール20は、例えば前足部、中足部または後足部で部分的にねじれている構成であってもよい。またミッドソール20は、前足部から中足部にかけて、または、中足部から後足部にかけて部分的にねじれている構成であってもよい。
【0035】
図9(a)~図9(e)は、図8に示すA-A線等の各切断線によるソール1の断面図である。図9(c)に示す中足部におけるC-C断面からつま先20a側へ向かうにつれて、図9(b)に示すB-B断面、図9(a)に示すA-A断面のように徐々に内向きにミッドソール20がねじれている。また、中足部におけるC-C断面から踵20b側へ向かうにつれて、図9(d)に示すD-D断面、図9(e)に示すE-E断面のように徐々に外向きにミッドソール20がねじれている。靴100の着用者が歩行または走行した場合に、ねじれているミッドソール20のうち、路面に接触した部分において、ねじれが少なくなるように変形が進み、変形によって復元力が生じる。
【0036】
例えば、後足部が着地した状態で、E-E断面とD-D断面との間のねじれが少なくなり、元のねじれた状態に戻ろうとする復元力が発生する。その後、後足部の踵20b側が路面から離れる際に、ミッドソール20は、復元力によって足の踵側がより浮き上がり易くなり、歩行または走行における足の動作を補助する。また、E-E断面では外側が押し上げられる力が復元力によって発生しており、着用者の足におけるアンダープロネーションを抑えることができる。
【0037】
中足部から前足部へと足が着地していく際に、C-C断面、B-B断面およびA-A断面でも復元力が順に発生していく。その後、足が路面から離れる際に中足部および前足部においても、復元力によって足が路面から浮き上がり易くなり、歩行または走行における蹴り出し時の足の動作を補助する。ミッドソール20は、図9(a)のA-A断面および図9(e)のE-E断面に示すように、90度程度ねじれているが、ねじれの角度はこれに限られるものではなく、任意の角度とすることができる。
【0038】
実施形態2に係るソール1のプロネーションの一例は、図5において線T2で表されている。実施形態2に係るソール1における着地直後のプロネーションは、実施形態1の場合(線T1)に比べてやや大きくなるが、ねじれていない靴(線T0)よりも小さい。また、実施形態2に係るソール1は、プロネーションの戻りが良く、実施形態1の場合に比べて、プロネーションが0となる時期が早くなっている。また、図5に示す矢印U2のように内向きの倒れが解消するスピードは、実施形態1の場合よりも大きくなって、内側が押し上げられる力が復元力によってより強く発生し、着用者の足におけるオーバープロネーションを抑えることができる。
【0039】
(実施形態3)
図10は実施形態3に係るソール1の外観を示す斜視図であり、図11はソール1の平面図、図12はソール1の底面図である。実施形態3に係るソール1は実施形態1と同様にアウターソール10、ジェル部材15およびミッドソール20等で構成されている。図10等に示すソール1は左足用である。実施形態3に係るソール1について、以下にとくに説明する以外の構成、材質および作用等は実施形態1と同等である。
【0040】
ミッドソール20は、荷重を受けていない自由状態において、ミッドソール20のつま先20aから踵20bに亘って、内向きまたは外向きにねじれている。ミッドソール20は、中央部20cから踵20bへ向かうにつれて内向きにねじれており、中央部20cからつま先20aへ向かうにつれて同様に内向きにねじれている。ミッドソール20は、外側部において、つま先20a側および踵20b側が中央部20cよりも高くなるように形成されている。ミッドソール20は、中足部に対して後足部が内向きにねじれており、中足部に対して前足部も内向きにねじれている。ミッドソール20は、例えばミッドソールの中心軸の中心からつま先20aへ向かうにつれて内向きにねじれており、中心軸の中心からつま先20aへ向かうにつれて内向きにねじれている。
【0041】
図13(a)~図13(e)は、図12に示すA-A線等の各切断線によるソール1の断面図である。図13(c)に示す中足部におけるC-C断面からつま先20a側へ向かうにつれて、図13(b)に示すB-B断面、図13(a)に示すA-A断面のように徐々に内向きにミッドソール20がねじれている。また、中足部におけるC-C断面から踵20b側へ向かうにつれて、図13(d)に示すD-D断面、図13(e)に示すE-E断面のように徐々に内向きにミッドソール20がねじれている。靴100の着用者が歩行または走行した場合に、ねじれているミッドソール20のうち、路面に接触した部分において、ねじれが少なくなるように変形が進み、変形によって復元力が生じる。
【0042】
例えば、後足部が着地した状態で、E-E断面とD-D断面との間のねじれが少なくなり、元のねじれた状態に戻ろうとする復元力が発生する。その後、後足部の踵20b側が路面から離れる際に、ミッドソール20は、復元力によって足の踵側がより浮き上がり易くなり、歩行または走行における足の動作を補助する。また、E-E断面では内側が押し上げられる力が復元力によって発生しており、着用者の足におけるオーバープロネーションを抑えることができる。
【0043】
中足部から前足部へと足が着地していく際に、C-C断面、B-B断面およびA-A断面でも復元力が順に発生していく。その後、足が路面から離れる際に中足部および前足部においても、復元力によって足が路面から浮き上がり易くなり、歩行または走行における蹴り出し時の足の動作を補助する。尚、ミッドソール20のねじれの角度は図13に示すものに限られるものではなく、任意の角度とすることができる。
【0044】
(ソールの製造方法)
つぎに各実施形態に係るソール1の製造方法について説明する。図14は、ミッドソール20の成形工程を示すフローチャートである。ミッドソール20を成形加工するために、ミッドソール20の形状に応じて1または複数の型枠部品で構成される型枠を製作し、成形加工の準備を行っておく。第1の成形工程において、ミッドソール20の型枠に、樹脂材料を充填する(S1)。樹脂材料は上述の各種の熱可塑性樹脂等の発泡粒子や粉末等を用いて型枠内に充填する。
【0045】
第2の成形工程において、型枠内に充填された樹脂材料を加熱し、ミッドソール20を形成する(S2)。樹脂材料の加熱によりミッドソール20を形成する工程では、樹脂材料が加熱によって発泡する過程も含まれている。つぎに第3の成形工程では、型枠から形成されたミッドソール20を外して離型する(S3)。
【0046】
ミッドソール20は、発泡粒子を用いて成形加工することで、軽量化することができ、ナイロン樹脂等を用いることで復元力を高くすることができる。また、ミッドソール20の成形加工には、スチーム加熱による工程を設けてもよく、また光やマイクロ波を用いた成形やモールド成形を含んでいる。また、ミッドソール20は、3Dプリンタによる形成や、靴型による押圧変形などで形成されてもよい。
【0047】
ソール1は、アウターソール10、ジェル部材15およびミッドソール20を接着工程によって接着して形成される。アウターソール10およびジェル部材15は、予めミッドソール20の形状に応じた形状に加工しておいて接着してもよいし、シート状または板状、あるいはブロック状のものをミッドソール20に押圧変形させつつ接着するようにしてもよい。
【0048】
(実施形態4)
図15は実施形態4に係るソール1のねじれ制御システム110の機能構成を示すブロック図である。図15に示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。ねじれ制御システム110は、調節装置5および路面情報装置6を備え、ソール1におけるねじれ角度の入力設定や、路面情報に基づくねじれ角度の自動制御を行うことができる。
【0049】
調節装置5は、アクチュエータ51、制御部52および位置情報取得部53等を有する。アクチュエータ51は、靴100に埋め込まれており、ミッドソール20におけるねじれ角度を変化させる。制御部52は、アクチュエータ51を駆動制御する。制御部52は、着用者がねじれ角度を設定入力できる入力部54からの設定情報を取得し、アクチュエータ51を駆動して、ねじれ角度を調節する。
【0050】
また制御部52は、通信部55を介して、現在位置を含む位置情報を路面情報装置6へ送信し、路面情報装置6から路面情報を受信し、受信した路面情報に応じてねじれ角度を調節する。位置情報取得部53は、例えばGPS受信機であり、GPS信号を受信して現在位置を取得し、制御部52へ出力する。
【0051】
路面情報装置6は、処理部61および路面情報取得部62等を有する。処理部61は、通信部63を介して、調節装置5から位置情報を受信し、路面情報取得部62へ出力する。路面情報取得部62は、入力された位置情報に含まれる現在位置における路面情報として、例えば路面勾配、現在位置の路面における降雨情報を取得する。路面勾配は例えば地図情報に基づいて求められる。また、降雨情報は、気象情報に基づいて求められる。処理部61は、路面情報取得部62から入力される路面情報を、通信部63を介して調節装置5へ送信する。
【0052】
図16は、調節装置5のアクチュエータ51の外観を示す斜視図である。アクチュエータ51は、例えば板状に形成されたベース部51aにモータ51bが配置されており、モータ51bの駆動によって出力軸51cが回動する。出力軸51cは、前後方向Y(または上述のミッドソール20の中心軸)に沿った方向を軸方向として配置される。出力軸51cには可動部51dが設けられており、例えば板状の可動部51dが出力軸51cとともに回動することでねじれ角度を調節する。
【0053】
アクチュエータ51は、例えば、圧電素子や磁性流体等の動作によって可動部分にねじり変形を発生させる方式や、バイメタルや人工筋肉等の変形によってねじり変形を発生させる方式等によって、ミッドソール20におけるねじれ角度を調節するものであってもよい。
【0054】
ソール1は、調節装置5でねじれ角度を調節することによって、歩行または走行時に発生する復元力を調節することができる。着用者は、個人差や嗜好に合わせてねじれ角度を調節することができる。また、ソール1は、調節装置5によって路面情報である路面勾配や降雨情報に基づいて自動的にねじれ角度を調節することで、足の動作を補助するねじり変形の復元力を状況などに応じて可変することができる。
【0055】
靴100は、ソール1、およびアクチュエータ51を備える。ソール1は、つま先20aと踵20bとを結ぶ軸に沿って延びるミッドソール20を備え、ミッドソール20が前記軸の少なくとも一部において、前記軸まわりにねじれている。アクチュエータ51は、ミッドソール20のねじれ角度を変化させる。これにより、靴100は、足の動作を補助するねじり変形の復元力を、例えば個人差や状況などに応じて可変することができる。
【0056】
ソール1のねじれ制御システム110は、ソール1、アクチュエータ51、制御部52、および路面情報装置6を備える。ソール1は、つま先20aと踵20bとを結ぶ軸に沿って延びるミッドソール20を備え、ミッドソール20が前記軸の少なくとも一部において前記軸まわりにねじれている。アクチュエータ51は、ミッドソール20のねじれ角度を変化させる。制御部52は、アクチュエータ51を駆動制御する。路面情報装置は、位置情報に基づいてソール1が接地する路面の情報を取得する。路面情報装置6によって取得された路面の情報に基づいて、制御部52によってねじれ角度を変化させる。これにより、ソール1のねじれ制御システム110は、例えば路面勾配などの路面の情報に基づいて、ミッドソール20のねじれ角度を可変することができる。
【0057】
次に各実施形態に係るソール1、靴100、ソール1の製造方法、およびソール1のねじれ制御システム110の特徴を説明する。
ソール1は、つま先20aと踵20bとを結ぶ軸、例えばミッドソール20の中心軸に沿って延びる緩衝部材としてのミッドソール20を備える。ミッドソール20は、中心軸の少なくとも一部において、中心軸まわりにねじれている。これにより、ソール1は、着地の際のねじり変形によって復元力が発生し、足の動作を補助することができる。
【0058】
またミッドソール20は、つま先20aと踵20bとの間の中央部20cから踵20bへ向かうにつれて内向きにねじれている。これにより、ソール1は、踵20b側において、プロネーションを抑制することができる。
【0059】
またミッドソール20は、例えば中心軸の中心からつま先20aへ向かうにつれて内向きにねじれている。これにより、ソール1は、蹴り出しの際に復元力によって足の動作を補助することができる。
【0060】
またミッドソール20は、例えば中心軸の中心から踵20bへ向かうにつれて内向きにねじれており、かつ、中心軸の中心からつま先20aへ向かうにつれて内向きにねじれている。これにより、ソール1は、踵20b側におけるプロネーションを抑制し、蹴り出し時に復元力で足の動作を補助することができる。
【0061】
またソール1は、つま先20a側と踵20b側との間に延びる緩衝部材としてのミッドソール20を備える。ミッドソール20は、外側部において、つま先20a側および踵20b側が、つま先20a側と踵20b側との間の中央部20cよりも高くなるように形成されている。これにより、ソール1は、踵20b側におけるプロネーションを抑制し、蹴り出し時に復元力で足の動作を補助することができる。
【0062】
また靴100は上述のソール1を備える。ソール1は、ミッドソール20で構成されていてもよい。これにより、靴100は、ねじれているミッドソール20におけるねじり変形によって復元力が発生し、足の動作を補助することができる。
【0063】
また靴100は、上述のソール1と、ミッドソール20よりも硬い硬質部材で構成されたアウターソール10とを備える。アウターソール10はミッドソール20の下に配設されている。これにより、靴100は、耐久性を増すとともに鉛直方向への変形を抑えることができる。
【0064】
またミッドソール20は、発泡粒子で形成されている。これにより、ミッドソール20は軽量化することができ、ナイロン樹脂等を用いることで復元力を高くすることができる。
【0065】
ソール1の製造方法は、樹脂材料の充填工程と、緩衝部材としてのミッドソール20を形成する形成工程とを備える。充填工程では、つま先20bと踵20bとを結ぶ軸に沿って延びており、前記軸の少なくとも一部において前記軸まわりにねじれているミッドソール20に対応する型枠に、樹脂材料を充填する。形成工程では、樹脂材料を加熱してミッドソール20を形成する。この製造方法は、ナイロン樹脂である発泡粒子によるミッドソール20を用いたソール1の製造に適している。
【0066】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0067】
1 ソール、 10 アウターソール、 20 ミッドソール(緩衝部材)、
20a つま先、 20b 踵、 20c 中央部、
51 アクチュエータ、 52 制御部、 6 路面情報装置、
100 靴、 110 ねじれ制御システム。
図1
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図16