(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】物体の吊上げ/吊降し装置及び物体の吊上げ/吊降し方法
(51)【国際特許分類】
B66D 3/16 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
B66D3/16 F
B66D3/16 A
B66D3/16 Z
(21)【出願番号】P 2023203619
(22)【出願日】2023-12-01
(62)【分割の表示】P 2019220307の分割
【原出願日】2019-12-05
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飛騨 隆道
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩平
(72)【発明者】
【氏名】牧戸 俊也
(72)【発明者】
【氏名】川竹 裕顯
(72)【発明者】
【氏名】小出 拓希
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-165996(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0284993(US,A1)
【文献】特開2008-081036(JP,A)
【文献】実開平02-097395(JP,U)
【文献】特開2009-095838(JP,A)
【文献】特開2006-105214(JP,A)
【文献】登録実用新案第3013761(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第107175632(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作チェーンを操作してロードチェーンにより物体を吊上げ/吊降しを行うチェーンブロックと、
前記チェーンブロックにより前記物体を吊上げ/吊降しする位置から離れた位置に設置され、前記操作チェーンが前記物体に干渉するのを防止する干渉防止スタンドと、を具備し、
前記干渉防止スタンドは、
基板と、
前記基板に基端が固定されるポールと、
前部に前記操作チェーンの走行領域となる最大径部、後部に前記最大径部より大きさが絞られ奥行が設けられた前記操作チェーンの挿入口を有するフック状に形成され、前記最大径部を前記チェーンブロック側に向けて前記ポールに設けられ、前記操作チェーンをガイドするガイド部材と、を有する物体の吊上げ/吊降し装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体の吊上げ/吊降し装置において、
前記ポールに沿う方向に前記ガイド部材の位置を調整する位置調整部材を備える物体の吊上げ/吊降し装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の物体の吊上げ/吊降し装置において、
前記基板には、転倒防止部材が設けられている物体の吊上げ/吊降し装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の物体の吊上げ/吊降し装置において、
前記基板の縁端部には、車輪が設けられている物体の吊上げ/吊降し装置。
【請求項5】
操作チェーンを操作してロードチェーンにより物体を吊上げ/吊降しを行うチェーンブロックを設置するステップと、
基板と、前記基板に基端が固定されるポールと、前部に前記操作チェーンの走行領域となる最大径部、後部に前記最大径部より大きさが絞られ奥行が設けられた前記操作チェーンの挿入口を有するフック状に形成され、前記挿入口を前記ポール側に向けて前記ポールに設けられ前記操作チェーンをガイドするガイド部材と、を有する干渉防止スタンドを、前記ガイド部の最大径部を前記チェーンブロック側に向けて前記物体を吊上げ/吊降しする位置から離れた位置に設置するステップと、
前記チェーンブロックの前記操作チェーンを、前記ガイド部の挿入口から最大径部に挿入するステップと、を含む物体の吊上げ/吊降し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、チェーンブロックの操作チェーンの干渉を防止する物体の吊上げ/吊降し技術に関する。
【背景技術】
【0002】
チェーンブロックは、ロードチェーンの先端フックに物体を取付け、人力で操作チェーンを回転し、この先端フック高さを変位させることで、物体の吊上げ/吊降しをするものである。そして、高重量の物体を吊り上げるため、チェーンブロックの操作チェーンの回転ギア比が大きく設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
物体を高く吊り上げようとすると、操作チェーンを連続的に何回も回転させる必要がある。このとき、操作後の操作チェーンが吊り上がる物体に干渉し、円滑な作業が妨げられるだけでなく製品を損傷させる場合がある。このため、操作チェーンを回転駆動させる作業員とは別に、操作チェーンをガイドして干渉の発生を防止する専従の人員を確保する必要があった。
【0005】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、チェーンブロックで物体を吊上げ/吊降しする作業時に、操作チェーンをガイドする専従人員に頼ることのない、物体の吊上げ/吊降し技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る物体の吊上げ/吊降し装置において、操作チェーンを操作してロードチェーンにより物体を吊上げ/吊降しを行うチェーンブロックと、前記チェーンブロックにより前記物体を吊上げ/吊降しする位置から離れた位置に設置され、前記操作チェーンが前記物体に干渉するのを防止する操作チェーンの干渉防止スタンドと、を具備し、前記干渉防止スタンドは、基板と、前記基板に基端が固定されるポールと、前部に前記操作チェーンの走行領域となる最大径部、後部に前記最大径部より大きさが絞られ奥行が設けられた前記操作チェーンの挿入口を有するフック状に形成され、前記最大径部を前記チェーンブロック側に向けて前記ポールに設けられ、前記操作チェーンをガイドするガイド部材と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態により、チェーンブロックで物体を吊上げ/吊降しする作業時に、操作チェーンをガイドする専従人員に頼ることのない、物体の吊上げ/吊降し技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る物体の吊上げ/吊降し装置の斜視図。
【
図2】(A)実施形態に係る物体の吊上げ/吊降し装置における操作チェーンの干渉防止スタンドの上面部分断面図、(B)同 側面部分断面図。
【
図3】実施形態に係る物体の吊上げ/吊降し装置における操作チェーンの干渉防止スタンドにおいて転倒防止部材を収容した状態を示す上面部分断面図。
【
図4】実施形態に係る物体の吊上げ/吊降し装置における操作チェーンの干渉防止スタンドを移動させる様子を示す側面部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る物体の吊上げ/吊降し装置における操作チェーンの干渉防止スタンド10の斜視図である。
図2(A)は実施形態に係る物体の吊上げ/吊降し装置における操作チェーンの干渉防止スタンド10の上面部分断面図である。
図2(B)は本発明の実施形態に係る物体の吊上げ/吊降し装置における操作チェーンの干渉防止スタンド10の側面部分断面図である。
【0010】
図1に示すように操作チェーンの干渉防止スタンド(以下、単に「干渉防止スタンド10」という)は、基板11と、この基板11に基端が固定されるポール12と、ポール12に設けられチェーンブロック20の操作チェーン27をガイドするガイド部材15と、を備えている。
【0011】
図1に示すようにチェーンブロック20は、ロードチェーン24の先端フック25に物体26を取付け、人力19で操作チェーン27を回転し、この先端フック25の高さを変位させることで、物体26の吊上げ/吊降しをするものである。なお操作チェーン27は、円環状に連続して構成されている。そして、チェーンブロック20の本体23の内部で、ロードチェーン24と操作チェーン27の回転ギア比を大きくとることで、重量の大きい物体26を人力19で吊り上げることができる。
【0012】
図2に示すように基板11は、厚さが5mm以上の鋼板を角状に切り出したもので、操作チェーン27(
図1)の回転時に干渉防止スタンド10が安定するのに十分な重量を有している。さらに基板11には、干渉防止スタンド10が安定性を向上させるための転倒防止部材17が、二つで対を成して設けられている。
【0013】
この干渉防止スタンド10は、ポール12の固定位置から離れた基板11の隅に基端が固定され、先端が接地するように設けられている。さらに二つで一対の転倒防止部材17は、基板11に固定されている基端同士の間隔よりも先端同士の間隔が広くなるように形成されている。これにより、干渉防止スタンド10の安定性をさらに向上させることができる。なお、基板11のみで干渉防止スタンド10の安定性を十分に確保できる場合は、転倒防止部材17を設ける必要は特にない。
【0014】
ポール12は、基板11に対し垂直になるように基端が固定され、この基端から距離をおいた位置にガイド部材15が配置される。このポール12は、剛性と高さを確保しつつ干渉防止スタンド10の全体としての重心が低くなるように、中空パイプで形成されている。
【0015】
ガイド部材15は、フック形状を有し、操作チェーン27を外側から側方に挿入して内側に掛けられるようになっている。ガイド部材15の内側では、連続的に循環走行する環状の操作チェーン27がガイドされる。平面視においてガイド部材15は、操作チェーン27の走行領域21の最大径に対し、操作チェーン27の挿入口22の大きさが絞られ奥行が設けられている。これにより、操作チェーン27は、ガイド部材15の内側から外側に外れにくくなり、循環走行における安定性が確保される。
【0016】
位置調整部材16は、ガイド部材15に接続しポール12に挿通しその長手方向の任意位置に移動することができる筒体31と、この筒体31の内周面をポール12の外周面に押し付けて筒体31をポール12に固定する固定部材32と、を有している。なお、固定部材32として、押しネジが例示されている。この押しネジは、回転によりその先端がポール12の周面を押して、片側のクリアランスを広げ、反対側のクリアランスを狭めて筒体31の内周面とポール12の外周面とを密接させる。
【0017】
なお、固定部材32は押しネジに限定されることはなく、筒体31の内周面とポール12の外周面とを密接させる作用を持ち、両者を剛に固定するものであれば適宜採用される。また、位置調整部材16は、筒体31及び固定部材32の構成を持つことに限定されることはなく、ポール12に沿う方向にガイド部材15の位置を調整することができれば適宜採用される。さらに、位置調整部材16を設けずに、ガイド部材15がポール12に直接固定される場合もある。
【0018】
干渉防止スタンド10を移動させるための車輪18が、基板11の縁端部に設けられている。この車輪18は、基板11の表面の縁端部からL字金具等により支持されている。この車輪18は、干渉防止スタンド10の通常設置状態において、接地面から浮いた状態にある。
【0019】
図3は実施形態に係る物体の吊上げ/吊降し装置における操作チェーンの干渉防止スタンド10において転倒防止部材17を収容した状態を示す上面部分断面図である。転倒防止部材17には、その長手方向に沿って溝35が設けられている。そして、基板11に設けられた留め具36が溝35を貫通し、転倒防止部材17の動きを規制している。この留め具36を緩めることで、転倒防止部材17を収容状態(
図3)に位置させたり使用状態(
図2(A))に位置させたりでき、留め具36を緊結することでそれらの状態を固定することができる。
【0020】
図4は実施形態に係る物体の吊上げ/吊降し装置における操作チェーンの干渉防止スタンド10を移動させる様子を示す側面部分断面図である。このように、ポール12を傾けることで、車輪18が接地し、基板11が浮き上がり、干渉防止スタンド10を自由に移動させることができる。
【0021】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の物体の吊上げ/吊降し装置によれば、この操作チェーンのガイド部材を設けることにより、チェーンブロックで物体を吊上げ/吊降しする作業時に、操作チェーンをガイドする専従人員に頼ることなく作業ができる。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0023】
10…干渉防止スタンド、11…基板、12…ポール、15…ガイド部材、16…位置調整部材、17…転倒防止部材、18…車輪、19…人力、20…チェーンブロック、21…走行領域、22…挿入口、23…本体、24…ロードチェーン、25…先端フック、26…物体、27…操作チェーン、31…筒体、32…固定部材、35…溝、36…留め具。