(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】エレベーター
(51)【国際特許分類】
B66B 7/08 20060101AFI20241009BHJP
B66B 7/06 20060101ALI20241009BHJP
B66B 11/04 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B66B7/08 D
B66B7/06 A
B66B11/04 B
(21)【出願番号】P 2023550770
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2021035580
(87)【国際公開番号】W WO2023053181
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 隆博
(72)【発明者】
【氏名】金山 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】西野 克典
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225140(WO,A1)
【文献】特開2014-001036(JP,A)
【文献】特開平11-060117(JP,A)
【文献】国際公開第2017/141438(WO,A1)
【文献】特開2010-064873(JP,A)
【文献】国際公開第2016/030943(WO,A1)
【文献】特開2019-123579(JP,A)
【文献】特開2000-318946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00-7/12;
11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を移動するつり合いおもりと、
前記昇降路の頂部に設置され、主索が巻き掛けられる駆動プーリを有する巻上機と、
前記巻上機を支持する巻上機支持台と、
前記つり合いおもりから上方に延在する前記主索の端部が接続されるおもり側主索留め具と、
前記おもり側主索留め具を介して前記主索の端部を支持するおもり側主索端部支持機構と、
前記巻上機支持台に取り付けられ、前記おもり側主索端部支持機構を支持する主索端部支持台と、を備え、
前記おもり側主索端部支持機構は、前記駆動プーリの中心軸方向から見て前記巻上機と重ならないように、前記巻上機の側方に配置されて
おり、
前記巻上機と前記主索端部支持台との間に、前記巻上機の倒れを抑制する倒れ抑制機構が設けられている
エレベーター。
【請求項2】
前記巻上機は、前記巻上機支持台の長手方向の一方側に寄せて配置され、
前記主索端部支持台は、前記巻上機支持台の長手方向の他方側に寄せて配置されている
請求項1に記載のエレベーター。
【請求項3】
前記おもり側主索端部支持機構は、前記駆動プーリの中心軸と直交する水平軸上に配置されている
請求項1に記載のエレベーター。
【請求項4】
前記倒れ抑制機構は、前記主索端部支持台に固定された固定部材を有し、
前記固定部材は、前記巻上機が倒れるときに前記固定部材に加わる横荷重と、前記主索を通して前記おもり側主索端留め具に加わるモーメント荷重とが、互いに打ち消し合う関係となる位置に配置されている
請求項
1に記載のエレベーター。
【請求項5】
前記倒れ抑制機構は、前記巻上機に固定される部材であって、前記固定部材に直接又は間接に接触する状態で配置される倒れ抑制部材を有する
請求項
4に記載のエレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの一つに機械室レスエレベーターがある。機械室レスエレベーターは、ビルやマンションなどの建物の屋上に機械室を設置する必要がないエレベーターである。機械室レスエレベーターとして、たとえば特許文献1に記載されたエレベーターが知られている。
【0003】
特許文献1には、つり合いおもりの移動範囲を確保したまま、巻上機(駆動装置)の保守点検作業を容易に行えるようにするために、つり合いおもり側の主索の端部を支持するおもり側主索端部支持機構(おもり側主索止め部)の最上部の位置を巻上機の位置よりも高くしたエレベーターの構成が開示されている。また、特許文献1には、おもり側主索端部支持機構を昇降路の天井近傍にまとめて配置した構成と、おもり側主索端部支持機構を上下2箇所、具体的には昇降路の天井近傍と昇降路の天井から下方に離れた位置とに分けて配置した構成とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術には次のような課題がある。
まず、おもり側主索端部支持機構を昇降路の天井近傍にまとめて配置した場合は、おもり側主索端部支持機構から昇降路の天井までの空間が狭くなるため、おもり側主索端部支持機構の保守点検作業が困難になる。また、おもり側主索端部支持機構を上下2箇所に分けて配置した場合は、上側のおもり側主索端部支持機構から昇降路の天井までの空間が狭くなるため、おもり側主索端部支持機構の保守点検作業が困難になる。また、下側のおもり側主索端部支持機構は、巻上機を正面から見たときに巻上機の背面側に配置され、この背面側の空間が非常に狭いため、おもり側主索端部支持機構の保守点検作業がますます困難になる。また、おもり側主索端部支持機構を上下2箇所に分けて配置した場合は、保守点検作業を行う作業員が、各々の箇所に応じて作業場所や作業姿勢を大きく変更する必要があるため、作業効率が大きく低下してしまう。
【0006】
本発明の目的は、つり合いおもりの移動範囲を確保したうえで、巻上機およびおもり側主索端部支持機構の保守点検作業を容易に行うことができるエレベーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、たとえば、請求の範囲に記載された構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一つを挙げるならば、昇降路内を移動するつり合いおもりと、昇降路の頂部に設置され、主索が巻き掛けられる駆動プーリを有する巻上機と、巻上機を支持する巻上機支持台と、つり合いおもりから上方に延在する主索の端部が接続されるおもり側主索留め具と、おもり側主索留め具を介して主索の端部を支持するおもり側主索端部支持機構と、巻上機支持台に取り付けられ、おもり側主索端部支持機構を支持する主索端部支持台と、を備えるエレベーターである。おもり側主索端部支持機構は、駆動プーリの中心軸方向から見て巻上機と重ならないように、巻上機の側方に配置されている。そして、巻上機と主索端部支持台との間に、巻上機の倒れを抑制する倒れ抑制機構が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、つり合いおもりの移動範囲を確保したうえで、巻上機およびおもり側主索端部支持機構の保守点検作業を容易に行うことができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るエレベーターの構成例を示す平面図である。
【
図2】本実施形態に係るエレベーターの構成例を示す正面図である。
【
図3】
図1に示すエレベーターの要部を拡大した図である。
【
図4】倒れ抑制機構が有する固定部材の配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るエレベーターの構成例を示す平面図であり、
図2は、本実施形態に係るエレベーターの構成例を示す正面図である。また、
図3は、
図1に示すエレベーターの要部を拡大した図である。なお、
図2は、巻上機が有する駆動プーリの中心軸方向から見た場合の各部の配置状態を示している。また、本明細書においては、駆動プーリが配置される側を巻上機の正面側とし、これと反対側を巻上機の背面側とする。この前提において、
図2は巻上機を正面から見た状態を示している。
【0012】
図1および
図2に示すように、エレベーター10は、昇降路12内を上下方向に移動(昇降)する乗りかご14(
図1)と、乗りかご14の移動を案内する一対のかご側ガイドレール16と、昇降路12内を乗りかご14と反対方向に移動するつり合いおもり18(
図2)と、つり合いおもり18の移動を案内する一対のおもり側ガイドレール20と、乗りかご14を上下方向に移動させるための巻上機22と、巻上機22の駆動力を乗りかご14とつり合いおもり18とに伝達する主索24と、を備えている。エレベーター10は、昇降路12内に巻上機22を設置した機械室レスエレベーターである。
【0013】
昇降路12は、昇降路壁26によって区画される縦長の空間である。昇降路12は、建物の最下階から最上階までを貫通するように形成される。昇降路壁26は、所定の厚みtを有する壁である。
【0014】
乗りかご14は、利用者や荷物を乗せるための空間を有するかごである。乗りかご14の前部28にはかごドア(図示せず)が設けられている。これに対し、昇降路12の各階で乗り場側30に位置する昇降路壁26bには、図示しない出入口を開閉する乗り場ドア31が設置される。乗り場ドア31は、かごドアと同期して開閉動作する。乗りかご14は、一対のかご側プーリ32を有する。一対のかご側プーリ32は、乗りかご14の下部(底部)に設けられている。一対のかご側プーリ32は、それぞれ回転自在に支持されている。一対のかご側プーリ32は、乗りかご14と一体に昇降路12内を移動する。
【0015】
一対のかご側ガイドレール16は、それぞれ鉛直方向に沿って配置されている。また、一対のかご側ガイドレール16は、互いに平行に配置されている。上述した乗りかご14は、一対のかご側ガイドレール16の間に配置されている。具体的には、一対のかご側ガイドレール16のうち、一方のかご側ガイドレール16は乗りかご14の一方の側面14aに近接かつ対向する状態で配置され、他方のかご側ガイドレール16は乗りかご14の他方の側面14bに近接かつ対向する状態で配置されている。また、一対のかご側ガイドレール16は、それぞれ平面視T字形に形成されるとともに、当該T字形の突起部分が水平基準軸J1上で互いに対向するように配置されている。なお、一対のかご側ガイドレール16に沿って乗りかご14を移動させるための構造は公知であるため説明を省略する。
【0016】
つり合いおもり18は、巻上機22の駆動によって乗りかご14を昇降させる際の負荷を軽減するためのおもりである。つり合いおもり18は、おもり側プーリ34を有する。おもり側プーリ34は、つり合いおもり18の上部(最上部)に設けられている。おもり側プーリ34は、回転自在に支持されている。おもり側プーリ34は、つり合いおもり18と一体に昇降路12内を移動する。また、つり合いおもり18は、乗りかご14と干渉しないように、乗りかご14の一方の側面14aと、この側面14aに対向する昇降路壁26の壁面26aとの間の空間に配置される。
【0017】
一対のおもり側ガイドレール20は、それぞれ鉛直方向に沿って配置されている。また、一対のおもり側ガイドレール20は、互いに平行に配置されている。上述したつり合いおもり18は、一対のおもり側ガイドレール20の間に配置されている。一対のおもり側ガイドレール20は、それぞれ平面視T字形に形成されるとともに、当該T字形の突起部分が水平基準軸J2上で互いに対向するように配置されている。鉛直方向と直交する水平面内において、水平基準軸J1と水平基準軸J2とがなす角度は90度である。なお、一対のおもり側ガイドレール20に沿ってつり合いおもり18を移動させるための構造は公知であるため説明を省略する。
【0018】
巻上機22は、乗りかご14とつり合いおもり18とを移動させる駆動力を発生する駆動装置である。巻上機22は、上述したつり合いおもり18と同様に、乗りかご14の一方の側面14aと、この側面14aに対向する昇降路壁26の壁面26aとの間の空間に配置される。また、巻上機22は、つり合いおもり18の直上に配置されている。本実施形態において、巻上機22は、巻上機22の径方向寸法が軸線方向の寸法よりも小さい巻上機、すなわち薄型巻上機である。巻上機22は、昇降路12の頂部に設置されている。昇降路12の頂部は、建物の最上階で乗りかご14が停止した場合に、この乗りかご14の位置よりも高い部分、すなわち昇降路12の天井12aに近い部分である。昇降路12の天井12aから巻上機22までの距離は、巻上機22の設置作業や保守点検作業の作業性を考慮して決定される。
【0019】
巻上機22は、
図2に示すように、駆動源となるモータを内蔵する巻上機本体36と、モータの駆動にしたがって回転する駆動プーリ38と、巻上機22を制動する一対のブレーキ40とを備えている。
【0020】
巻上機22は、巻上機支持台42の上に設置されている。巻上機支持台42は、たとえば梁によって構成される。巻上機支持台42は、
図1に示すように、乗りかご14の一方の側面14aと昇降路壁26の壁面26aとの間の空間に配置されている。また、巻上機支持台42は、
図2に示すように、水平に配置されている。
【0021】
図2に示すように、巻上機支持台42の長手方向Yの一端部には支持台受け部材44aが配置され、これと反対側の他端部には支持台受け部材44bが配置されている。支持台受け部材44a,44bは、それぞれ巻上機支持台42を下から受けて支持する部材である。支持台受け部材44aは、一方(
図2の右側)のおもり側ガイドレール20に固定されている。支持台受け部材44bは、一方(
図1の下側)のかご側ガイドレール16に固定されている。
【0022】
巻上機本体36は、
図2に示すように、防振部材46を介して巻上機支持台42の上面に固定されている。防振部材46は、巻上機22の駆動にともなう振動を抑制する部材であり、たとえばゴムによって構成される。駆動プーリ38は、巻上機22の正面側に配置されている。駆動プーリ38は、設計上の仮想軸である中心軸J3を有し、この中心軸J3を中心に回転する。駆動プーリ38の中心軸J3は、一対のおもり側ガイドレール20を結ぶ水平基準軸J2と直交する向きに配置されている。一対のブレーキ40は、巻上機22の上部に配置されている。
【0023】
主索24は、複数本(図例では4本)の鋼鉄製のワイヤによって構成されている。主索24を構成するワイヤの本数および材質は、エレベーター10の安全性を確保できる範囲で任意に変更可能である。主索24は、上述した一対のかご側プーリ32と、巻上機22の駆動プーリ38と、おもり側プーリ34とに巻き掛けられている。
【0024】
主索24の長さ方向の一端側は、一方(
図1の右側)のかご側プーリ32から上方に延在し、主索24の長さ方向の他端側は、
図2に示すようにつり合いおもり18のおもり側プーリ34から上方に延在している。かご側プーリ32から上方に延在する主索24の端部は、かご側主索留め具48(
図1)に接続されている。おもり側プーリ34から上方に延在する主索24の端部は、おもり側主索留め具50に接続されている。おもり側主索留め具50は、主索24を構成するワイヤの本数分だけ設けられている。
【0025】
図2に示すように、おもり側主索留め具50は、おもり側主索端部支持機構52に取り付けられている。おもり側主索端部支持機構52は、おもり側主索留め具50を介して主索24の端部を支持する機構である。おもり側主索端部支持機構52は、
図2に示すように、駆動プーリ38の中心軸方向から見て巻上機22と重ならないように、巻上機22の側方(
図2では右側)に配置されている。また、おもり側主索端部支持機構52は、駆動プーリ38の中心軸J3と直交する水平軸J4上に配置されている。
【0026】
おもり側主索端部支持機構52は、一対の受け部材54a,54bと、一方の受け部材54aの移動を規制するナット55と、弾性体であるバネ56とを備えている。おもり側主索端部支持機構52を構成する各部品の個数は、おもり側主索留め具50の個数によって決まる。おもり側主索留め具50の下端部には、主索24の上端部をおもり側主索留め具50に留め付けて固定するためのソケット57が設けられている。また、おもり側主索留め具50の上端部50aには雄ネジ(図示せず)が形成され、この雄ネジにナット55が噛み合っている。
【0027】
ナット55は、ナット55自身の緩みを防止するために、2つのナットを重ね合わせて締め付けた、いわゆるダブルナット構造になっている。一対の受け部材54a,54bは、それぞれバネ56の力を受ける部材であって、たとえば座金によって構成される。おもり側主索留め具50のロッド部分は、各々の受け部材54a,54bに挿入されている。バネ56は、圧縮コイルバネによって構成されている。おもり側主索留め具50のロッド部分は、バネ56に挿入されている。バネ56は、主索24、おもり側主索留め具50およびナット55を介して受け部材54aに加わる荷重を受けて圧縮変形している。これに対し、一対の受け部材54a,54bは、それぞれバネ56の圧縮変形による反力を受けている。
【0028】
巻上機支持台42の上には、
図2および
図3に示すように、主索端部支持台60が取り付けられている。主索端部支持台60は、おもり側主索端部支持機構52を支持する台である。主索端部支持台60は、
図2に示すように、駆動プーリ38の中心軸方向から見て門型に形成されている。また、主索端部支持台60は、駆動プーリ38の中心軸方向から見て巻上機22の巻上機本体36と隣り合わせの位置関係で巻上機支持台42に取り付けられている。これにより、巻上機22との干渉を避けて巻上機支持台42の上に主索端部支持台60を配置することができる。巻上機22は、巻上機支持台42の長手方向Yの一方側(
図2の左側)に寄せて配置され、主索端部支持台60は、巻上機支持台42の長手方向Yの他方側(
図2の右側)に寄せて配置されている。
【0029】
主索端部支持台60は、一対の脚部62と、一対の脚部61の上端に固定された天板部64とによって構成されている。各々の脚部62の下端部は巻上機支持台42に固定されている。天板部64は、一対の脚部62の上端部の間に架け渡して配置されている。天板部64は、各々の脚部62の上端部に固定されている。天板部64には、おもり側主索留め具50のロッド部分を通すための貫通孔(図示せず)が形成されている。また、天板部64の上面には、上述した受け部材54bが載置されている。
【0030】
また、駆動プーリ38の中心軸J3に直交する水平軸J4上には、
図2に示すように、第1の倒れ抑制機構66と、第2の倒れ抑制機構68とが設けられている。第1の倒れ抑制機構66は、巻上機22とかご側ガイドレール16との間に設けられている。第2の倒れ抑制機構68は、巻上機22と主索端部支持台60との間に設けられている。第1の倒れ抑制機構66および第2の倒れ抑制機構68は、いずれも、巻上機22の倒れ(傾き)を抑制する機構である。巻上機22の倒れは、駆動プーリ38に巻き掛けられている主索24を通して駆動プーリ38に加わる懸垂荷重によって発生する。この懸垂荷重は、乗りかご14やつり合いおもり18の質量に応じて、駆動プーリ38に下向きに加わる。このため、第1の倒れ抑制機構66および第2の倒れ抑制機構68が設けられていない場合は、駆動プーリ38に加わる懸垂荷重によって巻上機22が
図3のA方向に倒れやすくなる。
【0031】
第1の倒れ抑制機構66は、巻上機本体36の一方の側面に固定された第1の倒れ抑制プレート71と、かご側ガイドレール16に固定されたブラケット72とによって構成されている。第1の倒れ抑制プレート71とブラケット72とは、互いに固定されている。第1の倒れ抑制機構66は、第1の倒れ抑制プレート71およびブラケット72を介して巻上機本体36をかご側ガイドレール16に連結することにより、上記懸垂荷重による巻上機22の倒れを抑制する。
【0032】
第2の倒れ抑制機構68は、巻上機本体36の他方の側面に固定された第2の倒れ抑制プレート74と、主索端部支持台60に固定された固定部材76とによって構成されている。第2の倒れ抑制プレート74は、第1の倒れ抑制プレート71と共に、水平軸J4上に配置されている。第2の倒れ抑制プレート74は、倒れ抑制部材の一例として設けられている。固定部材76は、L字形の金属プレートによって構成されている。固定部材76は、固定片76aと、起立片76bとを一体に有する。固定片76aは、天板部64の上面に固定されている。起立片76bは、固定片76aから垂直に起立している。第2の倒れ抑制プレート74は、駆動プーリ38の中心軸方向(
図3の左右方向)で固定部材76の起立片76bに接触する状態に配置されている。駆動プーリ38の中心軸方向とは、駆動プーリ38の中心軸J3と平行な方向である。第2の倒れ抑制機構68は、上記懸垂荷重によって巻上機22が
図3のA方向に倒れようとしたときに、巻上機22の倒れに抵抗する力(以下、「抵抗力という。」)F(
図3参照)を発生させることにより、巻上機22の倒れを抑制する。抵抗力Fは、第2の倒れ抑制プレート74と固定部材76との接触部分に、A方向と逆向きに発生する力である。
【0033】
また、第2の倒れ抑制機構68の構成において、固定部材76は、
図4に示すように、上記懸垂荷重によって巻上機22が倒れるときに固定部材76に加わる横荷重Pと、主索24を通しておもり側主索留め具50に加わるモーメント荷重Mとが、互いに打ち消し合う関係となる位置に配置されている。本実施形態では、一例として、上記長手方向Yと直交する巻上機支持台42の短手方向Xにおいて、おもり側主索留め具50を有するおもり側主索端部支持機構52は、主索端部支持台60の幅方向中心を通る垂直基準軸J5よりも一方側(
図4の右側)に寄せて配置され、固定部材76は垂直基準軸J5よりも他方側(
図4の左側)に寄せて配置されている。このようにおもり側主索端部支持機構52と固定部材76とを配置することにより、主索端部支持台60上においては、上述した横荷重Pとモーメント荷重Mとが互いに打ち消し合う関係になる。
【0034】
<実施形態の効果>
本実施形態においては、おもり側主索端部支持機構52を巻上機22の側方に配置しているため、昇降路12内でつり合いおもり18を上下方向に移動させる場合に、つり合いおもり18とおもり側主索留め具50との干渉を避けることができる。このため、巻上機22の設置位置を高くしなくても、つり合いおもり18の移動範囲を長く確保することができる。また、駆動プーリ38の中心軸方向から見たときに、巻上機22とおもり側主索端部支持機構52の両方を視野に収めることができる。このため、巻上機22およびおもり側主索端部支持機構52の保守点検作業を容易に行うことができる。また、おもり側主索端部支持機構52を巻上機22の側方1箇所にまとめて配置しているため、保守点検作業を行う作業員は、作業場所や作業姿勢を大きく変更しなくても済む。よって、作業効率を高めることができる。また、巻上機22の背面側におもり側主索端部支持機構52が存在しないため、昇降路壁26の壁面26aに近づけて巻上機22を配置することができる。
【0035】
また、本実施形態においては、巻上機支持台42の上に主索端部支持台60を取り付けているため、主索端部支持台60を取り付けるための部材を別途設ける必要がなく、よってエレベーターの部品点数を削減することができる。また、主索端部支持台60の高さを利用して、おもり側主索端部支持機構52を巻上機支持台42から離して配置することができる。
【0036】
また、本実施形態においては、巻上機支持台42の長手方向Yの一方側と他方側に寄せて巻上機22と主索端部支持台60を配置している。これにより、巻上機支持台42上で巻上機22と主索端部支持台60との干渉を避けることができる。
【0037】
また、本実施形態においては、駆動プーリ38の中心軸J3と直交する水平軸J4上におもり側主索端部支持機構52を配置している。これにより、巻上機22とおもり側主索端部支持機構52の高さ位置が揃うため、巻上機22およびおもり側主索端部支持機構52の保守点検作業を、より一層容易に行うことができる。
【0038】
また、本実施形態においては、巻上機22が倒れるときに固定部材76に加わる横荷重Pと、主索24を通しておもり側主索留め具50に加わるモーメント荷重Mとが、互いに打ち消し合う関係となる位置に固定部材76を配置している。これにより、巻上機支持台42の短手方向Xに作用する荷重のバランスをとることができる。また、おもり側主索留め具50に加わるモーメント荷重Mを、巻上機22の倒れを抑制するための荷重として有効に利用することができる。
【0039】
また、本実施形態において、第2の倒れ抑制機構68は、巻上機22に固定された第2の倒れ抑制プレート74を有し、この第2の倒れ抑制プレート74が固定部材76に接触する状態で配置されている。これにより、懸垂荷重によって巻上機22が倒れるときに、巻上機22の倒れに抵抗する力を、第2の倒れ抑制プレート74と固定部材76との接触部分に発生させることができる。
【0040】
<変形例等>
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。たとえば、上述した実施形態では、本発明の内容を理解しやすいように詳細に説明しているが、本発明は、上述した実施形態で説明したすべての構成を必ずしも備えるものに限定されない。また、ある実施形態の構成の一部を、他の実施形態の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、これを削除し、または他の構成を追加し、あるいは他の構成に置換することも可能である。
【0041】
たとえば、上記実施形態においては、駆動プーリ38の中心軸方向から見て主索端部支持台60を門型に形成したが、主索端部支持台60の形状は門型に限らず、他の形状を採用してもよい。
【0042】
また、第2の倒れ抑制機構68に関して、固定部材76には、固定部材76全体の強度(剛性)を高めるために、必要に応じてリブ(図示せず)を形成してもよい。また、第2の倒れ抑制プレート74と固定部材76の起立片76bの間に、防振ゴム(図示せず)を挟んでいてもよい。つまり、第2の倒れ抑制プレート74は、固定部材76に直接に接触する状態に限らず、固定部材76に間接に接触する状態で配置されていてもよい。また、固定部材76の形状はL字形に限らず、他の形状を採用してもよい。第2の倒れ抑制プレート74を直接、主索端部支持台60に接触または固定してもよい。つまり、固定部材76は、主索端部支持台60と一体構造になっていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…エレベーター、12…昇降路、18…つり合いおもり、22…巻上機、24…主索、38…駆動プーリ、42…巻上機支持台、50…おもり側主索留め具、52…おもり側主索端部支持機構、60…主索端部支持台、68…第2の倒れ抑制機構(倒れ抑制機構)、74…第2の倒れ抑制プレート(倒れ抑制部材)、76…固定部材