(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】蓄電池遠隔監視システム及び蓄電池遠隔監視方法
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20241009BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241009BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20241009BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241009BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20241009BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20241009BHJP
G16Y 20/30 20200101ALI20241009BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20241009BHJP
【FI】
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L58/10
H01M10/48 P
G06Q10/20
G16Y10/40
G16Y20/30
G16Y40/10
(21)【出願番号】P 2023578553
(86)(22)【出願日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2023003011
(87)【国際公開番号】W WO2023149416
(87)【国際公開日】2023-08-10
【審査請求日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2022016241
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 穂南
(72)【発明者】
【氏名】米元 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】上田 克
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 健志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智晃
(72)【発明者】
【氏名】内藤 駿弥
(72)【発明者】
【氏名】円子 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】大樂 陽介
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-164343(JP,A)
【文献】特開2021-146758(JP,A)
【文献】特開2018-005554(JP,A)
【文献】特表2021-518826(JP,A)
【文献】特開2020-141465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
H01M 10/42 - 10/48
G06Q 10/00 - 10/30
G06Q 30/00 - 30/08
G06Q 50/00 - 50/20
G06Q 50/26 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池を搭載した移動体と外部サーバを備える蓄電池遠隔監視システムであって,
前記移動体は,移動体状態データ及び蓄電池状態データを取得するデータ取得装置と,
前記データ取得装置が取得した移動体状態データ及び蓄電池状態データを前記外部サーバに送信する通信装置を備え,
前記外部サーバは,
前記移動体から受信した移動体状態データ,蓄電池状態データ及び外気温を含む気象データから,前記蓄電池状態データのパラメータに対する警告内容ごとに定められる複数の段階の警告閾値に基づいて警告を生成し,
前記警告に対して前記警告閾値の段階及び外気温に応じて重み付けを行い,
メンテナンスの優先指標として,前記重み付けを乗算した警告重要度又は前記警告重要度に過去の警告重要度を加算した累計重要度を算出する
蓄電池遠隔監視システム。
【請求項2】
前記重み付けは,さらに初回の警告と2回目以降の警告の場合で異なる重み付けとする
ことを特徴とする請求項1に記載の蓄電池遠隔監視システム。
【請求項5】
前記警告重要度及び累積重要度は,前記蓄電池の搭載された移動体毎又は前記移動体の編成ごとに算出される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電池遠隔監視システム。
【請求項6】
前記外部サーバは,前記移動体状態データ,前記蓄電池状態データ及び気象データに基づき,警告の要因推定を行い,前記メンテナンスの優先指標に応じた措置内容を含むメンテナンス計画を提示する
ことを特徴とする請求項1,2又は5のいずれか一項に記載の蓄電池遠隔監視システム。
【請求項7】
蓄電池を搭載した移動体と外部サーバを備える蓄電池遠隔監視システムにおいて,
前記移動体は,移動体の移動体状態データ及び蓄電池状態データを外部サーバに送信し,
前記外部サーバは,前記移動体から受信した移動体状態データ、蓄電池状態データ及び外気温を含む気象データから,前記蓄電池状態データのパラメータに対する警告内容ごとに定められる複数の段階の警告閾値に基づいて警告を生成し,
前記警告に対して前記警告閾値の段階及び外気温に応じて重み付けを行い,
メンテナンスの優先指標として,前記重み付けを乗算した警告重要度又は前記警告重要度に過去の警告重要度を加算した累計重要度を算出する蓄電池遠隔監視方法。
【請求項8】
前記重み付けは,さらに初回の警告と2回目以降の警告の場合で異なる重み付けとする
ことを特徴とする請求項7に記載の蓄電池遠隔監視方法。
【請求項11】
移動体に搭載された各種機器の状態を計測する計測装置が計測した各種機器の状態を監視する状態監視装置と,
前記状態監視装置が監視した状態のデータを記録する状態データ記録部と,
移動体が搭載する蓄電池のデータを記録する蓄電池データ記録部と,
前記状態データ記録部及び前記蓄電池データ記録部に記録されたデータを外部サーバに送信する通信装置とを備え,
請求項1,2,5又は6のいずれか一項に記載の蓄電池遠隔監視システムに接続可能な移動体。
【請求項12】
前記状態データ記録部または前記蓄電池データ記録部のいずれかには,移動体の外気温データが記録されていることを特徴とする
請求項11に記載の移動体。
【請求項13】
前記外部サーバが検出した警告,警告重要度,累計重要度,措置内容を含むメンテナンス計画を取得することができる
請求項11又は12に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,蓄電池遠隔監視システム及び蓄電池遠隔監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両などの移動体に,リチウムイオン電池などの蓄電池が用いられている。リチウムイオン電池等の蓄電池は,温度,充電率,電流パターンなどの負荷条件によって蓄電池の性能劣化の進行速度が異なる性質を有する。
また,蓄電池の劣化が進行すると,蓄電池の容量維持率が低下し,電欠(電力がなくなった状態)が発生しやすくなる。さらに,蓄電池の抵抗劣化が進行すると,異常発熱が発生しやすくなり,蓄電池の容量維持率の低下及び抵抗劣化の進行により蓄電池電圧のアンバランス等が発生することがある。
このため,電動化する社会インフラを支える移動体システムについては,蓄電池の異常予兆を正確に検知し,これに対応することが重要な技術課題となっている。
【0003】
特許文献1には,移動体の故障発生時における故障から異常に繋がる可能性を適切に予測し,誤検知を低下させて稼働率の向上を目的とする移動体異常判断支援システムが開示されている。
特許文献1に開示された移動体異常判断支援システムは,移動体に,各種計測装置と,計測装置からの移動体状態データを用いて故障発生を検知する状態監視装置と,地上システムに故障情報を送信し,地上システムからの異常判定結果を受信する通信装置とを備える。
【0004】
また,特許文献1の地上システムは,移動体とデータを送受信する通信装置と,過去の故障情報を蓄積する蓄積部と,過去の故障が異常であるか否かを分析・判定する異常診断部と,過去の故障情報と異常診断結果とを関連付けて記憶する異常分析データベースと,故障発生時の故障情報と異常分析データベースとを対比して異常判定結果を出力する異常発生予測部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では,移動体に異常が発生した場合,異常内容の有無と異常発生予測部の状
態が作業員に通知されるため,移動体の異常診断に有効である。しかし,特許文献1は,
移動体に搭載された蓄電池について遠隔監視を行うことは想定されていない。
蓄電池から検出されるデータは多岐にわたり,蓄電池の使用条件等に応じて様々な値を示すため,一律の閾値を設けただけでは,対応を要する重要度の高い異常を的確に見分けることは難しい。
【0007】
そこで,本発明では,蓄電池が搭載された移動体システムについて遠隔監視を行い,蓄電池を含む移動体の警告の重要度を判別可能とし,異常対策の優先度を策定可能な蓄電池遠隔監視技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために,代表的な本発明の蓄電池遠隔監視システムの一つは,
蓄電池を搭載した移動体と外部サーバを備える蓄電池遠隔監視システムであって,
前記移動体は,移動体状態データ及び蓄電池状態データを取得するデータ取得装置と,
前記データ取得装置が取得した移動体状態データ及び蓄電池状態データを前記外部サーバに送信する通信装置を備え,
前記外部サーバは,
前記移動体から受信した移動体状態データ及び蓄電池状態データの少なくとも一方から,警告内容ごとに定められる警告閾値に基づいて警告を生成し,
前記警告に対して重み付けを行い,前記検出した警告に対応するメンテナンスの優先指標を算出するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば,蓄電池が搭載された移動体システムについて遠隔監視を行い,移動体における異常の重要度を判別可能とし,異常対策の優先度を策定可能な蓄電池遠隔監視技術を提供することができる。
上記した以外の課題,構成および効果は,以下の発明を実施するための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は,本開示における移動体用蓄電池遠隔監視システムのシステム構成図である。
【
図2】
図2は,警告重み付け演算部のシステム構成図である。
【
図3】
図3は,警告重み付け演算部におけるフローチャートである。
【
図5】
図5は,警告閾値及び重み付係数の設定例を示す図である。
【
図6】
図6は,警告重要度及び累積重要度の算出例を示す図である。
【
図7】
図7は,メンテナンスの優先度を可視化した例を示す図である。
【
図8】
図8は,警告要因を推定するためのデータを示す図である。
【
図11】
図11は,警告要因を推定するためのデータを示す図である。
【
図14】
図14は,モニタに出力されるメンテナンス提案の画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下,図面を参照して,本発明の実施形態について説明する。なお,この実施形態により本発明が限定されるものではない。また,図面の記載において,同一部分には同一の符号を付して示している。
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には,同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また,これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には,添字を省略して説明する場合がある。
【0012】
なお,本開示において,
「故障」とは,機器が通常の状態と異なる状態であることを意味する。通常の状態と判断される範囲は,一般的には,それぞれの機器の仕様書などに規定されるものを採用するが,必ずしも仕様書に規定された範囲に限定される必要はない。
「異常」とは,機器の故障によりシステムとして望まれない状態,機器を停止するなどして回復が必要な状態であることを意味する。
「異常データ」とは,「異常」に至った際の種々のデータを意味する。
「異常データ履歴」とは,同種の異常データや警告データが過去に記録されたことの有無あるいは発生した頻度を意味する。
「警告閾値」とは,「警告」が生成される判定条件を意味する。
「警告データ」とは,警告として送信されたデータを意味する。
「季節要因」とは,月や日付などによって定められる期間ごとに規定される要素や係数を意味する。
「移動体状態データ」とは,移動体が備える計測装置が移動体の機器(例えば,台車,ブレーキ等)の状態や機器が備えるセンサの状態を示すデータを意味する。
「運行モード」とは,移動体の運行状況を類型化したものであり,例えば,移動体の蓄電池については,急速充電中,普通充電中,放電中等に類型化している。また,走行状態について,力行,ブレーキ(制動),惰行,回生中等に類型化している。これらの類型化された少なくとも一つの類型を含んで運行モードとして表現することができる。
【0013】
「蓄電池状態データ」とは,蓄電池のセル単位またはモジュール単位で取得された,電流,電圧,電力,充電率,温度,容量維持率(蓄電池劣化度の内の容量劣化に関する情報),抵抗上昇率(蓄電池劣化度の内の抵抗劣化に関する情報)のいずれか1つ以上を含むデータを意味する。
「気象データ」とは,外気温,湿度,雲量,雨量,日時,日射量,月日,季節のいずれ
か1つ以上を含むデータを意味する。
「運用状況」とは,運行モード,蓄電池システム導入時期,蓄電池運用期間,車両情報(乗車率,車両重量,車両位置情報,ダイヤグラム,乗車人員等)のいずれか1つ以上を
含むデータを意味する。
特に,「蓄電池の運用状況」とは,蓄電池システム導入時期,蓄電池運用期間,車両情報(乗車率,車両重量,車両位置情報,ダイヤグラム,乗車人員等)のいずれか1つ以上を含むデータを意味する。
「遠隔監視取得データ」とは,電流,電圧,電力,充電率,温度,気温,容量維持率(蓄電池劣化度の内の容量劣化に関する情報),抵抗上昇率(蓄電池劣化度の内の抵抗劣化に関する情報),速度(ロータ周波数)のいずれか1つ以上を含むデータを意味する。
「メンテナンスの優先指標」とは,部品交換や修理,メンテナンスの必要性,緊急性を示す指標であり,ランクまたは数値として示すことができる指標である。
「外部サーバ」とは,監視対象の蓄電池が搭載された移動体の外部に備えられたデータサーバを意味する。このような外部サーバは移動体を監視する地上システム内に備えられてもよいし,クラウド上に置かれるものであてもよい。
【0014】
<システム構成>
まず,
図1を参照して,本開示の蓄電池遠隔監視システムのシステム構成について説明する。
図1は本発明の蓄電池遠隔監視システムを移動体の一例として鉄道の車両に適用した場合のシステム構成図である。
図1において,蓄電池遠隔監視システム100は,車両101と外部サーバ102から構成されている。
車両101は,車両101の各種機器の状態を計測する計測装置103,計測装置103が計測した各種機器の状態を監視する状態監視装置104,状態監視装置104が監視した状態のデータを記録する状態データ記録部105,運転台モニタ106を備えている。また,車両101は,蓄電池120,蓄電池120を制御する蓄電池制御装置110,蓄電池制御装置110から蓄電池状態を記録する蓄電池データ記録部109,状態監視装置104が監視した状態のデータと蓄電池データ記録部109の蓄電池状態データを取得するデータ取得装置108を備えている。
さらに,車両101は,外部サーバ102とデータの送受信を行う通信装置107を備えている。通信装置107はデータ取得装置108と接続されている。
なお,データ取得装置108が状態監視装置104から取得するデータXには,運行モード,車両情報等のデータが含まれる。
【0015】
外部サーバ102は,蓄電池データ蓄積部112,車両101に備わる各種機器の移動体状態データ203を蓄積する状態データ蓄積部111,過去の警告データや異常データなどの過去の警告を蓄積する異常データ蓄積部113,走行路線の気象データを取得する気象データ取得部114を備えている。
また,外部サーバ102は,蓄電池状態データ204,移動体状態データ203から,閾値に基づいて異常データを検出し,警告を生成し,生成した警告に重み付け演算を行い,警告の重要度の高い順に並べ,メンテナンスの優先度を算出する警告重み付演算部115を備えている。
さらに,外部サーバ102は,警告重み付演算部115の結果を表示するモニタ116を備えている。
【0016】
<処理とデータの流れ>
次に,本開示の蓄電池遠隔監視システムが警告を生成し,重み付演算を行う処理とデータの流れについて説明する。
【0017】
図1における計測装置103は,車両101が備える機器の状態や機器が備えるセンサの計測データを取得する装置である。計測装置103はセンサの計測データを状態監視装置104に送信する。状態監視装置104は,計測装置103から計測データを受信し,受信したデータに基づいて状態判定を行い,受信した計測データおよび状態判定の結果を状態データ記録部105に記録する。
ここで,車両の計測データ(移動体状態データ)としては,気温,湿度,風速,ロータ
周波数,各種部材の温度など車両101に備えられたセンサによって取得可能な種々の物理量が含まれる。
なお,状態データ記録部105は,運行モード,車両情報(乗車率,車両重量,車両位置情報,ダイヤグラム,乗車人員等)等を記憶することもでき,状態監視装置104は,運行モード及び車両情報にアクセスすることが可能である。
また,状態監視装置104の状態判定結果は,運転台モニタ106に表示することができる。
【0018】
次に,蓄電池制御装置110は,蓄電池120から取得した蓄電池状態データに基づき,蓄電池をセル単位またはモジュール単位で制御する。蓄電池状態データ204は,セル単位またはモジュール単位で取得した,蓄電池の電流,電圧,電力,充電率,温度,容量維持率(蓄電池劣化度の内の容量劣化に関する情報),抵抗上昇率(蓄電池劣化度の内の抵抗劣化に関する情報)のいずれか1つ以上のデータを含むデータである。
【0019】
データ取得装置108は,状態監視装置104から移動体状態データ,運行モード及び車両情報等の抽出に必要な情報(X)を取得し,蓄電池制御装置110から蓄電池状態データを取得することができる。データ取得装置108が取得した各種データ(Y)は通信装置107を介して外部サーバ102に送信される。
また,外部サーバへ送信される種々のデータは,それぞれのデータが取得された時刻データと紐づけられて外部サーバ102に送信されてもよい。
なお,外部サーバ102への送信方法は,近接無線による方法,LTE回線による方法等
任意の通信手段を採用することができる。
【0020】
<<警告重み付演算部>>
次に,
図2,
図3を参照して,警告重み付演算部115の詳細について説明する。
図2は,
図1で説明した警告重み付演算部115における処理とデータの流れを示した図であり,
図3は,処理のフローチャートである。
【0021】
(ステップ301)
図3のステップ301において,
図2の警告生成部205は,移動体状態データ(State data)203,蓄電池状態データ(Storage battery Data)204,気象データ(Meteorological data)201を取得する。
【0022】
(ステップ302)
次に,警告生成部205は,移動体状態データ203,蓄電池状態データ204に基づき,車両の運行モード212及び蓄電池の運用状況213を抽出する。
【0023】
(ステップ303)
次に,警告生成部205は,運行モード212及び蓄電池の運用状況213,気象データ201について,警告内容ごとに定められる警告閾値(Warning threshold)206を設定する。
警告閾値206は1つの指標について複数段階で設定することが可能であり,その詳細については後述する。
なお,警告閾値206は一度設定した後は,修正の必要が生じるまでは,再設定しなくともよい。その場合,本ステップ303は,スキップし,ステップ302からステップ304に進むことができる。
【0024】
(ステップ304)
次に,警告生成部205は,設定した警告閾値206に基づいて,蓄電池状態データ204が警告閾値206の範囲を超えているか否かを判断する。蓄電池状態データ204が警告閾値206の範囲を超えていない場合には,ステップ310に進む。また,蓄電池状態データ204が警告閾値206の範囲を超えている場合には,警告を生成し,ステップ305に進む。
【0025】
(ステップ305)
警告生成部205は,蓄電池状態データ204が警告閾値206の範囲を超えていると判断した時刻を警告発生時刻(t1)として記録する。
また,警告生成部205は,警告発生時刻(t1),蓄電池状態データ204が範囲を逸脱した警告閾値206の内容(警告内容),警告発生時刻における運行モード212を警告通知機209に送信する。
さらに,警告生成部205は,警告閾値206を重み付積算値演算部207に送信する。
なお,警告閾値206の重み付積算値演算部207への送信のタイミングは,ステップ305に限定されるものではなく,警告閾値206が設定された後のタイミングであれば,いずれのタイミングでも差し支えない。
【0026】
(ステップ306)
次に,重み付積算値演算部207は,異常データ蓄積部113から過去の警告データを読み出す。
【0027】
(ステップ307)
次に,重み付積算値演算部207は,蓄電池状態データ204,運行モード212,蓄電池の運用状況213,気象データ201に基づいて警告の重要度を重み付演算し,重み付係数の積算値である警告重要度を算出する。
なお,具体的な警告重要度を算出する方法については後述する。
【0028】
(ステップ308)
次に,重み付積算値演算部207は,異常データ蓄積部113に警告内容及びその重み付係数の積算値(警告重要度)を記録する。
【0029】
(ステップ309)
次に,重み付積算値演算部207は,警告内容及びその重み付係数の積算値(警告重要度)を異常対策優先順位判定部208に送信する。
なお,異常データ蓄積部113が異常データ蓄積部113から警告内容及びその重み付積算値を取得できる場合には,重み付積算値演算部207は,警告内容及びその重み付積算値を必ずしも異常対策優先順位判定部208に送信する必要はない。
【0030】
(ステップ310)
異常対策優先順位判定部208は,過去の同種の警告回数及び重要度を踏まえて,累計重要度を算出する。そして,累計重要度に基づいて,異常対策の順位判定を行い,判定結果を警告通知機209に送信する。つまり,この例では,累計重要度が,メンテナンスの優先指標となる。
警告通知機209は,異常対策優先指標に基づき,表示形式を選択し,警告表示部211に表示画像を送信する。
なお,警告表示部211にて表示する内容は,蓄電池単位,車両単位,車両の走行する路線単位等様々な単位で表示することができ,表示方法はこれらに限定されるものではない。
【0031】
以下では,ステップ307から310において説明した,警告閾値,重み付係数,警告重要度,累計重要度の具体的算出方法について
図4,
図5,
図6,
図7を参照して説明する。
【0032】
<警告閾値の設定>
まず,
図4を参照して,警告閾値206の設定について説明する。
図4(a)は運行モードが急速充電モード,季節要因が春(3~6月),運用状況としての蓄電池の稼働履歴としての運用期間が2年の場合の蓄電池温度の警告閾値の例を示したものである。つまり
,蓄電池の過温度という警告に対する指標を示したものである。
横軸は時刻であり,縦軸が蓄電池温度である。警告閾値206は,車両の運行モード,季節,蓄電池運用期間に応じて設定される。
警告閾値206は,1つの指標について複数段階で設定することが可能であり,例えば,3段階に設定することができ,それぞれに重みを設定することができる。
【0033】
図4の例では,過温度の警告閾値206は,軽警告閾値(Th:L),中警告閾値(Th:M),重警告閾値(Th:H)の3段階に設定している。
例えば,重警告閾値(Th:H)は異常と判断される直前のレベルで設定し,中警告閾値(Th:M)は,抜本的な対策準備を行う必要があるレベルや早期対策するため電池の抜き取りやメンテナンス準備するためのレベルとして設定することができる。
また,軽警告閾値(Th:L)は,軽微な対策を準備する段階や早期対策は不要であるが,警告の一つとして設定することができる。
具体的な閾値の数値や重みは,過去の経験則や電池仕様書から求められことができる。
【0034】
図4(a)においては,蓄電池の温度データが軽警告閾値(Th:L),中警告閾値(Th:M),重警告閾値(Th:H)の3段階に設定されており,重警告閾値(Th:H)は,閾値温度が最も高く,より深刻な故障状態であることを示す閾値として設定されている。また,中警告閾値(Th:M)は重警告閾値(Th:H)と軽警告閾値(Th:L)の中間の温度に設定されていることを示している。
このように,警告閾値を複数段階で設定することにより,きめ細かな警告判定を行うことが可能となる。
図4(a)においては,蓄電池の温度が軽警告閾値(Th:L)を超えた時間を警告発生時刻(t1)としている。
【0035】
図4(b)は,
図4(a)における軽警告閾値(Th:L)の季節ごとの変動を模式的に示したものである。
図4(b)の例では,冬季に外気温が下がる上半球の例を示しており,冬季(日本の場合は12~2月)の警告閾値は,春季(日本の場合は3~6月)・秋季(日本の場合は10~11月)の警告閾値よりも低い温度設定となり,夏季(日本の場合は7~9月)の警告閾値は,春季・秋季の警告閾値よりも高い温度設定となることを示している。
【0036】
一般的に,夏は平均気温が高いので,電池自身の温度も高くなるが,冬の場合には,平均気温が低いので,電池自身の温度は他季節と比べて低くなる。
夏は電池温度が高くなったとしても,気温が高いことが原因であり,電池異常の可能性は低くなるが,冬の場合は気温が低いため,電池の異常発熱により過温度に達した可能性が高くなる。したがって,冬の過温度については,電池異常による発熱の可能性が高いことを踏まえて,メンテナンスの優先度を上げるため,閾値を厳しく設定したり,係数を大きく設定することが望ましい。
なお,上記の例では季節ごとに警告閾値を設定していたが,季節に関わらず,蓄電池の温度データと外気温の差分に警告閾値を設けてもよい。これにより,季節ごとの閾値や警告の管理が不要となる。
外気温は,気象データだけでなく,蓄電池システムを収納する蓄電池システム箱,前記蓄電池システム箱に隣接する他機器の外側側面,または車体に前記蓄電池システム箱を設置する箇所の近傍のいずれかに設置する温度センサにて,取得する車両周囲温度でもよい。
【0037】
<閾値及び重み付係数の設定>
重み付係数は重警告,中警告,軽警告で異なるほか,警告の発生が初回か2回目以降かによって重み付係数を警告種別ごとに可変とすることができる。
【0038】
温度以外の警告内容についても季節要因として重み付係数を可変とすることができ,稼働履歴として,運用日数により重み付けを可変とすることもできる。また,蓄電池劣化度により重みづけを可変とすることもできる。
例えば,異常データ履歴として,1年以内に警告が発生した場合,電池異常の可能性が高く,経年劣化によるものとは考えづらい。このため,運用期間が1年以内の場合には,早期原因究明のために,重みを大きくして検出しやすくすることが考えられる。これに対して,運用期間が6年目以降に警告が発生した場合,電池の経年劣化の可能性が高く,緊
急性を要する初期不良による異常とは考えにくいので,重み付係数は一定とするのが望ましい。
なお,蓄電池の温度データにおける季節要因の重み付係数は,季節に関わらず,蓄電池の温度データと外気温の差分に警告閾値を設けてもよい。これにより,季節ごとの閾値や警告の管理が不要となる。
また,蓄電池データ(温度や電圧等)における重み付係数や警告閾値は,蓄電池劣化度に応じて可変としてもよい。これにより,蓄電池劣化度のばらつきを考慮した異常な蓄電池の特定が可能となる。
【0039】
次に,上述の観点を踏まえた
図5の例を参照して,警告閾値及び重み付係数の設定例について説明する。
図5は,蓄電池の各セルの電圧501,充電率(SOC)502,各セルの温度503について,警告閾値504を月ごとに,重警告閾値(Th:H),中警告閾値(Th:M),軽警告閾値(Th:L)の3段階に設定した例を示している。
また,重み付係数505については,警告閾値504の3段階毎に,初回の警告の場合と2回目以降の警告の場合に分けて重み付係数を示している。
さらに,季節ごとの係数506も係数に乗する倍率を示すとともに,蓄電池の運用期間507によっても係数に乗ずる倍率を示している。
なお,重み付係数の積算値である重要度は,上限を一定の数値に定めるなどの措置を講じておき,計算上の値が突出した数値とならないようにすることも可能である。
【0040】
<警告重要度,累計重要度の設定>
次に,
図6を参照して,閾値及び重み付を用いた具体的な警告重要度の算出例及び累積重要度例について説明する。
図6は,警告が検知された時刻601毎の状態及び重要度などを表形式に示した例である。縦方向に警告が検知された時刻601毎に警告が検知された事象が621,622のように記載されている。また,横軸には,蓄電池の電圧602,蓄電池温度603,過電圧警告回数604,過温度警告回数605,総警告回数606,運用日数607,警告内容608,警告重要度609,累計重要度610が記載されている。
【0041】
警告重要度609は,
図5に示した警告閾値及び重み付係数の設定例に従って,以下の式1に従って算出される
警告重要度=(警告重み係数)×(季節重み係数)×(運用日数重み係数)・・・(1)
また,累計重要度は過去の同一の警告内容の重要度が加算されて表示されることとなる。
なお,蓄電池劣化度に応じた重み付係数を追加して警告重要度を算出してもよい。これにより,運用日数よりも蓄電池劣化度を優先して異常対策することもできる。運用日数だけでは判断が難しい急速な劣化による異常に対する対策を講じることができる。場合により,運用日数に依らず,蓄電池劣化度を考慮した警告及び異常抽出することも可能である。
【0042】
(ケース621)
図6の621の場合は,7月に蓄電池の温度が56°Cとなり,過温度についての中警告閾値を超えた状態となっている。そして,今回の事象ははじめて発生した事象ではないことから,重み付係数は10となる。また,7月の季節重み付係数は,0.5である。運用日数重み付係数については,運用日数が300日であることから1年以内であり,重み
は2となる。この結果,621の事象についての警告重要度は,10×0.5×2=10と算出される。
なお,621については,過去にも過温度の警告がなされており,過去の警告による重要度が仮に20であったとすると,累積の警告重要度は,10+20=30と算出されることとなる。
【0043】
(ケース622)
図6の622の事象は,620の事象の1分後に再度過温度の警告が発生した事象を示している。この場合,電池温度は重警告閾値を超えた57°Cとなり,重み付係数は100となる。式1にしたがって算出する警告重要度609は,100×0.5×2=100と算出される。
この場合,累計重要度610は,前回までの累積重要度30を加算して,130と算出されることとなる。
【0044】
このように,警告閾値に季節ごとに段階分けされた警告閾値を採用し,車両の運行モード,季節,および蓄電池運用期間によっても閾値を可変として,さらに重み付演算の係数を設定することを可能とすることで,季節ごとに変動する異常予兆を見落とすことなく検出することができる。
なお,蓄電池劣化度に応じた閾値を追加してもよい。これにより,蓄電池劣化度を考慮した異常予兆を見落とすことなく検出することができる。
【0045】
<メンテナンスの優先順位>
次に,
図7を参照して,重み付係数を用いて,メンテナンスの優先順位を可視化した例について説明する。
図7(a)は警告の発生回数701と警告の重要度702をそれぞれ斜線パターンの柱と白抜きの柱を用いてグラフ形式で表示した一例である。
図7(a)の例は,重み付演算された警告の重要度702を車両の編成毎に表示させている。
図7(a)では,編成2が最も警告の重要度が高く,最優先にメンテナンスを行うべきであることを示している。編成1,4では警告の重要度は同じであるが,警告の発生回数が多い編成4を優先してメンテナンスを行うべきことを示している。
なお,優先順位を決定する指標に蓄電池劣化度を追加して,蓄電池劣化度が高い順番(容量維持率では低い順,抵抗上昇率では高い順)に可視化してもよい。例えば,その他指標が同じ場合,蓄電池劣化度が高い順番に警告を表示してもよい。また例えば,蓄電池劣化度が同じ場合,その他指標が高い順番に警告を表示してもよい。これにより,蓄電池劣化度を優先してメンテナンスを行うことができる。場合により,蓄電池劣化度のみを考慮した警告及び異常抽出も可能である。
【0046】
蓄電池を搭載した車両については,同様な使用形態や同様な運行時間を経たものであっても,故障や異常の発生程度が蓄電池のセル,車両,編成毎に異なることがある。このため,走行距離,蓄電池導入時期,ダイヤグラムなど,同様な使用形態と思われる車両の母集団を形成したり,蓄電池の電流パターンが類似しているものをAI(人工知能)を用いて抽出した母集団を形成し,その母集団に対して,蓄電池単位,編成単位,または路線単位ごとに異常の重要度を検出できることは,効率的なメンテナンスを実現する上では重要である。
このような優先順位の表現方法は,様々形態を採用することが可能であり,蓄電池単位,編成単位,または路線単位で早期異常対策を優先順位付けすることも可能である。
【0047】
また,
図7(b)は,
図6で説明した警告重要度,累計重要度610の内容を累計重要度610が高い順に並び変えた例を示している。この例では,累計重要度610が同じであれば総警告回数606が高い順に並べることとしている。
なお,優先順位を決定する指標に蓄電池劣化度を追加して,蓄電池劣化度が高い順番(容量維持率では低い順,抵抗上昇率では高い順)に並べ替えてもよいし,警告重要度,または累計重要度が同じ場合に,優先順位を決めるために蓄電池劣化度が高い順番にしてもよい。
このように,本開示のシステムによれば,メンテナンスの優先順位を様々な観点で視覚化することが可能であるため,メンテナンスに要する時間や予算に応じて,最も合理的なメンテナンス計画を策定することが可能となる。
【0048】
<要因推定>
警告発生時には,蓄電池状態データおよび気象データから警告発生要因を推定することが可能な場合がある。例えば,
図2に示した警告生成部205において,
【0049】
(ケース801)
本ケースでは過温度警告発生時において,気象データより警告発生時の気温が平均より逸脱しているか否か,車両の運用モードと運用モードに基づく蓄電池パラメータに故障が発見されるか否か,過温度警告要因である蓄電池の抵抗劣化度において故障が派遣されるか否かを判定し,判定結果の組み合わせに基づき警告要因を推定する例を以下の2つのケ
ースについて説明する。
【0050】
まず,ケース801では,運行モードが「急速充電モード」であり,季節が「春(3,
4,5月のいずれか)」であり,蓄電池運用期間が「2年」の場合に,
図8(a)に示す
ように過温度警告が発生したと仮定する。
図8(a)は,蓄電池温度の推移を示すグラフである。
図8(a)は,時刻t1において蓄電池温度が閾値Th:Hを超えて,過温度の重警告が発生していることを示している。
この場合,
図2の警告生成部205は,移動体状態データ203,蓄電池状態データ204,気象データ201,運行モード212及び蓄電池の運用状況213などに基づき,
図8(b)の外気温の状況,
図8(c)の蓄電池の電流値,
図8(d)の抵抗劣化度(SOHR)を参照する。
【0051】
図8(b)において,外気温が平均気温(Ave. Temperature)に達していないことから過温度の原因が外気温でないと判断する。次に,
図8(c)の電流値を確認し,警告発生時刻において,運行状況が急速充電中であり,電流値が過大となっており,しかも蓄電池の抵抗劣化度(SOHR)が新品の時と比較して一定以上劣化していることから,警告発生要因として,「急速充電モードによる大電流の入出力」と「蓄電池の抵抗劣化度(SOHR)の増大」が重なって警告発生に至ったものと推定できる。そして,早期異常対策のための措置案として,(1)急速充電時の電流値を下げること,(2)蓄電池交換を選定する。その後,要因推定結果に基づく措置案を通知することとなる。
【0052】
このような要因推定は,
図9に示す要因分析表に従って推定される。
図9に記載した要因分析表は,まず外気温判定901,電流値判定902,抵抗劣化度判定903の順に判定を行い,要因推定904と措置内容905を提示することができる。具体的には,
図10に示す要因推定の手順を実現する自動判定プログラムによって,警告生成部205が要因推定を行うこととなる。
【0053】
(ケース1101)
次に,
図11から13を参照して,電欠の警告発生時における要因推定について説明する。
まず,ケース1101においては,運行モードが「急速充電モード」であり,季節が「春(3,4,5月のいずれか)」であり,蓄電池運用期間が「2年」の場合に,
図11(a)に示すように電欠警告が発生したと仮定する。
【0054】
図11(a)は,蓄電池の充電率の推移を示すグラフである。
図11(a)は,時刻t1において蓄電池充電率(SOC)が閾値Thを超えて,充電率の警告が発生していることを示している。本ケースでは電欠警告発生時において,気象データより警告発生時の気温が平均より逸脱しているか否か,鉄道車両の運用モードと運用モードに基づく蓄電池パラメータに故障が発見されるか否か,電欠警告要因である蓄電池の容量維持率に故障が発見されるか否かを判定し,判定結果の組み合わせに基づき警告要因推定する。
【0055】
本ケースの例では,
図11(b),
図11(c)に見られるように,外気温(Temperature)の影響及び異常な充放電はない。一方,
図11(d)にみられるように,容量維持率(SOH)が新品時のSOHから一定以上低下していることから,蓄電池の容量劣化による電欠警告と推定される。
このような警告要因推定結果から早期異常対策のための措置内容としては,容量劣化による充電不足を解消するため(1)上限充電率を上げること,または,(2)蓄電池を交換することを措置案として提示することとなる。
【0056】
このような要因推定は,
図12に示す要因分析表に従って推定される。
図12に記載した要因分析表は,まず外気温判定1201,放電電力判定1202,容量劣化度判定1203の順に判定を行い,要因推定1204と措置内容1205を提示することができる。
具体的には,
図13に示す要因推定の手順を実現する自動判定プログラムによって,警告生成部205が要因推定を行うこととなる。
【0057】
<メンテナンス提案の表示>
図14は
図1に示した外部サーバ102のモニタ116に出力されるメンテナンス提案の画面例である。本画面例では蓄電池,編成,または,路線ごとに警告の重要度,メンテナンス時期の提案を表示することができる。
本画面例においては,グラフ化した情報によってメンテナンスの重要度を表示することができるため,保守員または運行管理者が容易にメンテナンスの優先順位を認識することができる。
【0058】
また,外部サーバ102が検知した警告やその程度を示す警告重要度,累計重要度,警告要因推定結果から得られた早期異常対策のための措置内容等の情報は,情報セキュリティーを確保した上で,外部サーバ102から車両101に送信することとしてもよいし,車両101がそれらの情報を確認できる形態で保存されてもよい。
このように,外部サーバ102が検出した警告や対応措置を車両101においても即時に確認可能とすることにより,車両101の蓄電池に対して,望ましい制御を迅速に実施することが可能となる。
【0059】
さらに,蓄電池等の部材の交換を伴うメンテナンスについては,蓄電池等の部材の調達に要する時期に関する情報を組み合わせることにより,メンテナンスを行うべき時期から逆算して,調達開始時期を画面上で表示するメンテナンス計画を提示することができる。
具体的には,上記のメンテナンスを行うべき時期から蓄電池の調達及び設計に要する時間を差し引いた結果を出力し,早期調達による蓄電池保存劣化の防止と,調達が遅れることによるダウンタイムの削減可能な蓄電池調達時期を最適化することが可能となる。
これによって,早期にメンテナンスが必要な事項について,調達が遅れることによる影響を最小化することが可能となる。
なお,蓄電池等の部材の交換を伴うメンテナンスについて,蓄電池劣化度を組み合わせてもよい。これにより,蓄電池劣化度が高い順(容量維持率では低い順,抵抗上昇率では高い順)にメンテナンス計画を提示できる。
【0060】
さらに,上記したようなメンテナンス情報は,外部サーバのモニタに表示されるだけでなく,メールによって,直接的に保守員または運行管理者に伝達することも可能である。
図15(a),(b)は,メールによる通知の例を示したものである。
優先順位が最も高い蓄電池,編成,または路線に対して警告発生要因推定結果とグラフ,および措置内容を表示する画面を備えることにより,蓄電池,編成,または路線について早期メンテナンスが必要なものに対しメンテナンススケジュールを立てることが可能となる。
【0061】
図8は警告発生時における警告通知の一例である。本例では編成単位で警告を出力しているが,通知単位は蓄電池単位,編成単位,路線単位でもよい。なお,画面構成や画面に表示する項目,内容等は自在に選択することができる。
【0062】
以上,本発明の実施の形態について説明したが,本発明は,上述した実施の形態に限定されるものではなく,本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
例えば,移動体および蓄電池の状態を示すデータの種類は上記されたものに限定されるものではなく,様々な指標やパラメータなどを採用することができる。
また,警告閾値の種類や程度についても種々の変更が可能であり,重み付けの程度や演算の方式についても様々な変更が可能であることは言うまでもない。例えば,重み付け係数の項目としては,蓄電池の材料,電池容量,充放電回数,急速充電回数と時間,電池未使用時間,蓄電池劣化度等を採用することができる。
さらに,警告内容の設定,異常データ履歴の内容,季節要因の内容,蓄電池の稼働履歴の考慮の仕方,データの要因分析表の構成や判断手法などについても様々な変更が可能である。
また,本開示に記載された様々な機能部の構成については,それぞれの機能を支障がない範囲で他の機能部に移行することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
100 蓄電池遠隔監視システム
101 車両
102 外部サーバ
103 計測装置
104 状態監視装置
105 状態データ記録部
106 運転台モニタ
107 通信装置
108 データ取得装置
109 蓄電池データ記録部
110 蓄電池制御装置
111 状態データ蓄積部
112 蓄電池データ蓄積部
113 異常データ蓄積部
114 気象データ取得部
115 警告重み付演算部
116 モニタ
120 蓄電池
201 気象データ
203 移動体状態データ
204 蓄電池状態データ
205 警告生成部
207 重み付積算値演算部
208 異常対策優先順位判定部
209 警告通知機
211 警告表示部
212 運行モード
213 蓄電池の運用状況
t1 警告発生時刻