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特許7569461電子銃のアライメント機構および該アライメント機構を用いた検査方法
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  • 特許-電子銃のアライメント機構および該アライメント機構を用いた検査方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】電子銃のアライメント機構および該アライメント機構を用いた検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/04 20060101AFI20241009BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20241009BHJP
   H01J 37/16 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
H01J37/04 B
H01J37/22 501D
H01J37/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024003341
(22)【出願日】2024-01-12
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】522193547
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳川 明夫
(72)【発明者】
【氏名】市村 亮
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-294182(JP,A)
【文献】国際公開第2020/031399(WO,A1)
【文献】特開2002-216686(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第117276038(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/04
H01J 37/22
H01J 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを照射する電子銃の前記電子ビームの出射方向に対して垂直な平面で前記電子銃の配置を調整して、前記電子銃の前記電子ビームの出射軸調整を行うアライメント機構であって、
前記電子銃が備えられて内部空間が真空状態となる鏡筒の開口部に立設する外筒と、
前記外筒の内部に配置され、一端が前記鏡筒の開口部に固定されて前記鏡筒の内部空間と連通するベローズと、
前記ベローズの他端に接続され、前記電子銃を前記ベローズの内側に気密に支持する可動部と、
を有し、
前記可動部は前記外筒の外側端面に載置されて、前記外側端面の面上を移動可能に支持され
前記外筒の内周面と前記可動部の外周面の間に配置され、前記可動部に係止して前記可動部の水平移動を抑制する係止部材がさらに備えられ、
前記内周面および前記外周面はそれぞれ、対向配置されて、前記鏡筒から離れる程に互いの距離が離れるように傾斜した平面の勾配面を有し、
前記係止部材は、前記内周面および前記外周面の各前記勾配面に対応する一対の傾斜側面を有しており、前記勾配面の間に入り込んで、前記勾配面に前記傾斜側面を接面させて挟持されて、前記可動部に係止する、
ことを特徴とするアライメント機構。
【請求項2】
前記外筒にはネジ孔が形成されており、前記ネジ孔に螺合する固定部材が、前記係止部材に設けられた貫通孔に挿通して、前記ネジ孔に螺合する、
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント機構。
【請求項3】
内部空間が真空状態となる鏡筒と、前記鏡筒に備えられて電子ビームを出射する電子銃と、前記電子ビームを撮像する撮像装置と、前記電子銃の前記電子ビームの出射方向に対して垂直な平面で前記電子銃を移動させての配置を調整して、前記電子銃の前記電子ビームの出射軸調整を行うアライメント機構と、を備えた電子ビーム照射装置における前記電子ビームの通過路の周壁に付着した微細ゴミを検出する検査方法であって、
前記アライメント機構は、
前記鏡筒の開口部に立設する外筒と、
前記外筒の内部に配置され、一端が前記鏡筒の開口部に固定されて前記鏡筒の内部空間と連通するベローズと、
前記ベローズの他端に接続され、前記電子銃を前記ベローズの内側に気密に支持され、前記外筒の外側端面に載置されて前記外側端面の面上を移動可能に支持される可動部とを有し、
前記鏡筒の真空状態として前記電子ビームを出射させて、前記電子ビームが出射した状態を維持しながら、前記アライメント機構を用いて、前記電子ビームの少なくとも一部が前記周壁の外形に係るように、前記周壁の外形に沿って移動させ、前記電子ビームが出射している間、前記撮像装置に前記電子ビームの通過路の前記周壁を撮像させる、
ことを特徴とする、検査方法。
【請求項4】
前記撮像装置は、前記電子銃の前記電子ビームの照射軸上に、受光軸を一致させて、前記電子ビームの照射形状を撮像可能に配置され、
前記電子ビームが前記周壁に係るように照射されて、前記周壁の投影形状が、前記電子ビームの照射形状の一部を画成する外形として前記撮像装置で撮像される、
ことを特徴とする請求項3に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子銃の電子ビーム出射軸を調整するアライメント機構、および該アライメント機構を用いた前記電子ビームの通過路の周壁に付着した微細ゴミを検出する検査方法
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡などに搭載される電子銃は、電子ビームを出射して試料を照射する。電子ビーム光学系が非常に緻密に調整されており、電子銃の設置位置も同様に正確に所定位置にあることが要求される。電子銃のフィラメント交換後や、いったん電源を切って再度電源を入れた後は、再び配置の調整を行う必要がある。例えば特許文献1、特許文献2には、電子ビームの出射軸を合わせる方法が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-97767号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、電流値を記憶させて配置されるため、電子銃の移動は、直交二方向に配置されたパルスモータを用いている。電子ビームを発生させたまま、もっと容易にかつ自在に電子ビームの出射軸を調整したいというニーズがある。
【0005】
また、電子ビームの通過路の周壁に微細ゴミが付着していると、その分だけビーム出力が低下してしまうが、微細ゴミは確認し難いため、取り除くことが難しい。微細ゴミを検査により発見して除去したいというニーズある。
【0006】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、容易にかつ自在に電子ビームの出射軸を調整可能なアライメント機構、および同アライメント機構を用いた微細ゴミ検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するため、本開示のある態様においては、電子ビームを照射する電子銃の前記電子ビームの出射方向に対して垂直な平面で前記電子銃の配置を調整して、前記電子銃の前記電子ビームの出射軸調整を行うアライメント機構であって、前記電子銃が備えられて内部空間が真空状態となる鏡筒の開口部に立設する外筒と、前記外筒の内部に配置され、一端が前記鏡筒の開口部に固定されて前記鏡筒の内部空間と連通するベローズと、前記ベローズの他端に接続され、前記電子銃を前記ベローズの内側に気密に支持する可動部と、を有し、前記可動部は前記外筒の外側端面に載置されて、前記外側端面の面上を移動可能に支持されるアライメント機構を提供する。
【0008】
この態様によれば、ベローズにより、鏡筒内が真空状態であっても電子銃を移動可能であり、さらに電子銃が電子ビームを照射した状態であっても電子銃を移動可能である。水平面上を前後左右に自在に可動部を移動させることができる。段階的な機械的移動だけでなくアナログ移動も可能である。これにより、容易にかつ自在に電子ビームの出力軸を調整できる。ベローズを用いて可動部が移動しており、可動部により摺動される箇所が真空内ではないため、可動部の移動により、真空内のシール材の寿命を短くさせることや、真空度を下げることがない。
【0009】
また、ある態様においては、前記外筒の内周面と前記可動部の外周面の間に配置され、前記可動部に係止して前記可動部の水平移動を抑制する係止部材がさらに備えられ、前記内周面および前記外周面はそれぞれ、対向配置されて、前記鏡筒から離れる程に互いの距離が離れるように傾斜した平面の勾配面を有し、前記係止部材は、前記内周面および前記外周面の各前記勾配面に対応する一対の傾斜側面を有しており、前記勾配面の間に入り込んで、前記勾配面に前記傾斜側面を接面させて挟持されて、前記可動部に係止する、ようにアライメント機構を構成した。この態様によれば、勾配面によって、可動部の係止が容易になる。また傾斜面を介して係止部材によって、電子銃の水平度が向上して、電子ビームが鉛直に打ち出されて、電子銃による測定精度が向上する。
【0010】
また、ある態様においては、前記外筒の外周端面にはネジ孔が形成されており、前記ネジ孔に螺合する固定部材が、前記係止部材に設けられた貫通孔に挿通して、前記ネジ孔に螺合するように構成した。この態様によれば、可動部が前後左右に強固に固定されて、電子銃の水平度が向上する。電子ビームが鉛直に打ち出されて、電子銃による測定精度が向上する。
【0011】
また、本開示のある検査方法においては、内部空間が真空状態となる鏡筒と、前記鏡筒に備えられて電子ビームを出射する電子銃と、前記電子ビームを撮像する撮像装置と、前記電子銃の前記電子ビームの出射方向に対して垂直な平面で前記電子銃を移動させての配置を調整して、前記電子銃の前記電子ビームの出射軸調整を行うアライメント機構と、を備えた電子ビーム照射装置における前記電子ビームの通過路の周壁に付着した微細ゴミを検出する検査方法であって、前記アライメント機構は、前記鏡筒の開口部に立設する外筒と、前記外筒の内部に配置され、一端が前記鏡筒の開口部に固定されて前記鏡筒の内部空間と連通するベローズと、前記ベローズの他端に接続され、前記電子銃を前記ベローズの内側に気密に支持され、前記外筒の外側端面に載置されて前記外側端面の面上を移動可能に支持される可動部とを有し、前記鏡筒の真空状態として前記電子ビームを出射させて、前記電子ビームが出射した状態を維持しながら、前記アライメント機構を用いて、前記電子ビームの少なくとも一部が前記周壁の外形に係るように、前記周壁の外形に沿って移動させ、前記電子ビームが出射している間、前記撮像装置に前記電子ビームの通過路の前記周壁を撮像させるように構成した。
【0012】
この態様によれば、アライメント機構により、電子ビームを出力したまま電子銃を移動できるため、電子ビームの行路の周壁として、壁面に設けられた電子ビームの挿通孔の周壁面に付着した微細ゴミを検出できる。
【0013】
また、ある態様の検査方法では、前記撮像装置は、前記電子銃の前記電子ビームの照射軸上に、受光軸を一致させて、前記電子ビームの照射形状を撮像可能に配置され、前記電子ビームが前記周壁に係るように照射されて、前記周壁の投影形状が、前記電子ビームの照射形状の一部を画成する外形として前記撮像装置で撮像されるものとした。この態様によれば、周壁を容易に検査できる。また、電子ビームの挿通孔として、壁面が二重壁面であっても挿通孔が軸一致の同形であれば、二重壁面を一度に検査することができる。
【発明の効果】
【0014】
上記構成によれば、電子ビームを発生させて電子銃の出射軸を調整できるアライメント機構、および同アライメント機構を用いた電子ビーム通路の微細ゴミ検査方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るアライメント機構を有する電子顕微鏡の概略図である。
図2】同アライメント機構の斜視図である。
図3】同アライメント機構の平面図である。
図4図3のA-A線に沿った断面図である。
図5】同アライメント機構の軸調整方法を説明する説明図である。
図6】同アライメント機構を用いた電子ビーム通過路の周壁に付着した微細ゴミ検査方法を説明する説明図である。
図7】同アライメント機構を用いた微細ゴミ検査の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(電子顕微鏡100)
以下、本開示の構成に係る好ましい実施形態を図面に従って説明する。図1は、実施形態に係るアライメント機構1を備えた電子顕微鏡100の概略図である。
【0017】
図1に示すように、電子顕微鏡100は、電子銃6と、電子銃6から出射された電子ビームEBを試料Wの所定部位に収束させるレンズ機構および電子ビームEBを走査させるための走査機構などからなる電子ビーム制御機構2と、電子銃6および電子ビーム制御機構2を内部に有する鏡筒3を備える。
【0018】
電子顕微鏡100は、電子銃6から出射した電子ビームEBによって試料Wを照射することにより発生した二次電子などを検出し、この検出信号に基づき試料W上の電子ビームEBの二次元走査に同期して、試料像を表示する走査型電子顕微鏡(SEM)である。試料Wから放出される二次電子などは検出手段Dで検出され、撮像装置(本実施形態ではカメラC)にて視覚化されて記録される。
【0019】
電子銃6の鉛直下方の鏡筒3の底面には、蛍光膜ビューポート9が設けられており、試験時に試料Wは蛍光膜ビューポート9に載置される。蛍光膜ビューポート9のさらに下方には受光光軸を真上に向けたカメラCが配置されており、蛍光膜ビューポート9を介して電子ビームEBや試料Wを撮像可能である。
【0020】
本開示の構成は、電子顕微鏡100の適用に限られず、試料Wに電子ビームEBをあて、それを透過してきた電子を拡大して観察する透過型電子顕微鏡(TEM)や、電線描画装置、電子ビーム露光装置などにも好適である。また、本開示の構成は、電子銃6の電子ビームEBの軸調整に適用しているが、イオン銃などの他の電子ビーム照射機構の出射軸調整にも適用できる。本開示の構成は、上記電子ビーム照射装置の全てに問題なく適用される。
【0021】
鏡筒3は、内部を仕切る仕切壁3bを有し、内部に仕切壁3bによって仕切られた空間として、電子銃6を収容する電子銃室4と、電子ビーム制御機構2を収容する制御機構室5とを有する。仕切壁3bには、電子銃室4と制御機構室5とを連通する開口部が、ビーム通過孔3cとして設けられている。ビーム通過孔3cは、電子銃6の鉛直下方に設けられており、電子銃6から出射した電子ビームEBはビーム通過孔3cを通過する。電子顕微鏡100の特性上、電子銃室4は真空排気機構8Aにより真空(10-5Pa以下の超高真空、または10-8Pa以下の極高真空)にされる。また、制御機構室5も同様に、真空排気機構8Bにより真空にされる。
【0022】
ビーム通過孔3cには、ビーム通過孔3cを封止/封止解除(以下、開閉と表現)を行う真空封止弁7を備えている。電子顕微鏡100の真空引きには時間を要することから、電子銃6の修理や試料Wの交換時には、真空封止弁7を用いて、電子銃室4または制御機構室5を真空に保った状態で作業が行われる。また、電子顕微鏡100輸送の際は、真空封止弁7にてビーム通過孔3cを封止して輸送する。
【0023】
電子銃6は、鏡筒3の上面に形成された上面開口部3aに配置されたアライメント機構1に保持されている。アライメント機構1は、電子銃6の出射軸調整機構である。アライメント機構1は、電子ビームEBの出射方向に垂直な平面上で、電子銃6の配置を調整可能であり、アライメント機構1によって電子銃6の出射軸が調整され、電子銃6から出射された電子ビームEBは、仕切壁3bに設けられたビーム通過孔3cの略中央を通過して試料Wに到達する。
【0024】
アライメント機構1は、概略二重構造の円筒に構成され、二重筒の外筒となる外筒10と、内筒となるベローズ30と、両者に係り配置される可動部99を備える。可動部99は、ベローズ30の内部で電子銃6を支持して、ベローズ30の上方開口部に蓋のように配置される。可動部99は、外筒10の外側端面である上面に載置され、外側端面の面上(水平面)を移動可能である。ベローズ30の上端は可動部99の下部に接続される。電子銃6は、ベローズ30の内側で、可動部99によって鉛直に保持される。
【0025】
ベローズ30は金属板を溶接して作られた、一種のバネ構造体であり、可動部99の移動に対しては収縮してこれに追従する。可動部99が移動すると、ベローズ30が追従し、可動部99に保持された電子銃6も移動する。ベローズ30の下端は上面開口部3aに固定されて、ベローズ30の内側の空間は鏡筒3の内部空間と連通する。鏡筒3の内部が真空状態となると、ベローズ30の内側の空間も真空状態となる。可動部99は鏡筒3内が真空であっても移動可能であり、ベローズ30の内側に保持される電子銃6は、真空状態のまま移動可能である。電子銃6が電子ビームEBを放出した状態でも可動部99は移動可能であり、可動部99の移動によって、電子銃6も電子ビームEBを放出した状態のまま移動する。
【0026】
上記構成により、アライメント機構1は、電子銃6が電子ビームEBを出力した状態の電子銃6を移動させて軸調整を行うことが可能である。アライメント機構1を用いて、電子銃6に電子ビームEBを出射させて、電子ビームEBの通過路を確認しながら、可動部99を水平方向に移動させて、電子銃6の出射軸の調整を行うことができる。
【0027】
(アライメント機構1)
アライメント機構1を、図2図4を用いて詳細に説明する。図2はアライメント機構1の斜視図である。図3はアライメント機構1の平面図である。図4図3のA-A線に沿ったアライメント機構1の鉛直断面図である。図2図4は、アライメント機構1が電子銃6を保持した状態を示す。なお、各図の電子銃6は、概略外形のみを示す。
【0028】
図2図4に示すように、アライメント機構1は、外筒10、移動基体40、ホルダー80、接続部材70、ベローズ30、取付基体20を有し、いずれも円筒状またはリング状に構成されて中央に軸方向に貫通する中央孔を有し、初期状態ではそれぞれ中央孔の軸を鉛直な中心軸AXに一致させて配置される。
【0029】
前述の通り、アライメント機構1は、内筒と外筒からなる概略二重筒構造となっており、それぞれの中心軸を中心軸AXに合わせて配置されている。二重筒構造の外筒が外筒10であり、内筒がベロース30であり、ベローズ30のさらに内側に電子銃6が鉛直に配置される。移動基体40、ホルダー80、接続部材70が、電子銃6の配置を調整する可動部99を構成する。
【0030】
アライメント機構1は、鏡筒3の上面開口部3aに設けられる。上面開口部3aは、ビーム通過孔3c鉛直上に設けられている。アライメント機構1の設置には取付基体20が用いられる。取付基体20の開口部の縁部に周設された円環突出部21が、上面開口部3aに入り込み、上面開口部3aに嵌合する。さらに取付基体20の外周側面に外筒10の内孔が挿通して嵌合する。上面開口部3aの外表面の縁部には鏡筒ネジ孔3dが設けられており、第1固定部材B1が鏡筒ネジ孔3dに螺合して外筒10および取付基体20を共締めすることにより、取付基体20および外筒10は、鏡筒3に固定される。これにより、外筒10が取付基体20と一体化し、上面開口部3aの外表面に外筒10が立設する。真空状態を維持するため、取付基体20と鏡筒3との間にはシール材Pが配置される。
【0031】
ベローズ30の下端部は取付基体20の上端面に溶接により接続されており、ベローズ30の上端部は移動基体40の下端面に溶接で接続されている。両基体はベローズ30と中心軸を一致させて固定されており、取付基体20および外筒10が設置されると、ベローズ30は中心軸を中心軸AXに一致させて外筒10の内側に配置される。
【0032】
移動基体40の上面には、接続部材70を固定するための複数個の第1ネジ孔41、およびホルダー80を固定するための複数個の第2ネジ穴42が、円周方向に交互に等間隔に形成されている。まず接続部材70が移動基体40に重ねて配置されて、第3固定部材B3である低頭ボルトが第1ネジ孔41に締結されることで、接続部材70が移動基体40に固定される。第3固定部材B3のボルト頭部が埋没するように、接続部材70には凹部が設けられており、第3固定部材B3は接続部材70の上面から突出しない。ついで接続部材70の上部にホルダー80が重ねて配置される。接続部材70には第2ネジ穴42の配置に対応したネジ挿通孔73が形成されている。さらにホルダー80にも同様にネジ挿通孔82が形成されており、第4固定部材B4である足長ボルトのネジ部がネジ挿通孔82、73に挿通して第2ネジ穴42に締結されて、ホルダー80も移動基体40に固定される。これにより、移動基体40、接続部材70、およびホルダー80が一体化する。
【0033】
外筒10の上端開口部近傍の内周壁には、内側に突出する内フランジ部13が周設されている。内フランジ部13の上面には溝が周設されており、その溝にリング状の介在部材60が係合する。介在部材60は、溝の深さよりもその高さが高く、かつ、溝に配置されるとその上面が水平となるように構成されている。接続部材70の外周面には、外側に向かって突出する外フランジ部71が周設されており、介在部材60の上面に外フランジ部71が載置される。これにより内フランジ部13の上面に、可動部99が載置される。本実施形態においては、内フランジ部13が設けられ、介在部材60は内フランジ部13の溝に配置されたが、これに限られず、内フランジ部を設けず、外筒10の外側端面(上面)に介在部材60を配置するように構成してもよい。
【0034】
接続部材70は、移動基体40およびホルダー80に挟持される箇所は、薄肉かつ内孔径が大きくなるように構成されており、この接続部材70の薄肉部の内周部にシール材Pが配置される。ホルダー80および移動基体40がシール材Pを挟持して、移動基体40とホルダー80の接続部がシールされる。本実施形態においては、可動部99を構成する移動基体40、接続部材70、およびホルダー80を上記態様により一体化してシールしたが、これに限られず、ダイキャストやロストワックス製法などにより、これらを統合した1つの部材として可動部99を構成してもよい。
【0035】
ホルダー80の内孔の中央に、電子銃6がその出射軸が鉛直となるように配置され、図示しないシール材および固定部材により、電子銃6がホルダー80にシールされて固定される。
【0036】
(作用効果)
可動部99は、内フランジ部13の上面に介在部材60を介して載置されており、介在部材60の上面を水平方向に移動可能となっている。電子銃6は可動部99に支持されてベローズ30の内側に鉛直にかつ気密に保持される。可動部99が介在部材60の上面を移動すると、ベローズ30は移動に追従し、電子銃6も水平移動して、電子銃6の軸が調整される。
【0037】
ベローズ30の内部空間30aは電子銃室4と連通しており、電子銃室4を含む鏡筒3の内部空間が、真空排気機構8A、8Bにより真空状態になると、ベローズ30の内部空間30aも真空状態となる。真空排気機構8A、8Bで真空引きされて、電子銃室4と外気とで圧力差が生じると、鏡筒3には内側に向かう力がかかり、内部空間30aを区画する壁面の一部として、ベローズ30に連結された可動部99にも、下方へ引く力が生じる(図4点線矢印参照)。しかし、立設した外筒10の内フランジ部13に、介在部材60を介して外フランジ部71が載置されているため、可動部99は圧力差により下方へ向かう負荷がかかるが、下方への移動は制限される。
【0038】
前述の通りベローズ30は一種のバネ構造体であるため、伸縮することで可動部99の水平移動にも追従する。ベローズ30はシールされており、鏡筒3の内部空間が真空状態であっても、可動部99は水平方向に移動可能であり、電子銃6も真空状態で水平に移動可能である。電子銃6が電子ビームEBを出射した状態であっても、電子ビームEBを出射した状態のまま、可動部99の移動と共にベローズ30の内側で電子銃6も移動する。
【0039】
電子銃6に電子ビームEBを出射させながら、可動部99を水平移動させることで、電子ビームEBの出射軸をリアルタイムに確認しながら調整することができる。可動部99は、水平方向に自在にかつ容易に移動が可能である。アライメント機構1により、電子銃6の出射軸を精度良く合わせることができる。
【0040】
介在部材60は青銅や真鍮などの銅合金や、SUS304(非磁性体)などの比較的柔らかい金属で構成されており、接触するホルダー80との摩擦抵抗を下げて、摺動によるごみの発生を抑制している。また摩擦軽減のために、二硫化モリブデン、潤滑用ニッケル、グリスなどの潤滑剤を使用してもよい。なお、介在部材60を用いらずに、外筒10の上面(外側端面17)に直接載置されても本開示の構成は実施可能である。
【0041】
電子銃6を保持する可動部99は、鏡筒3が真空状態でも移動可能であり、例え電子銃6が電子ビームEBを出射している状態であっても移動可能である。可動部99は、鏡筒3の外に配置されており、手動でも自動でも真空状態かつ電子ビームEBが出射された状態で可動部99を、水平方向に自在に移動可能である。例えば、電子パルスを用いた段階的な機械移動だけではなく、手動による連続したアナログ移動も可能であり、複雑な移動も直観的に行うことができ、電子銃6の軸調整や、後述する検査を容易に行うことができる。
【0042】
本実施形態においては、ベローズ30を用いて真空を画成するシール面ごと水平移動することができる。また、金属部材の介在部材60を用いて、介在部材60との接触面を移動面として可動部99を摺動させて移動している。このため、真空内のシール材を摺動させることがない。従来では、シール材を挟持させながら可動部が摺動しており、シール材のシール面を擦り減らしながら移動するため、シール性能も劣化しやすい。シール材を摺動させない本構成は、従来の構成と比較して、鏡筒3の真空度を高く保つことができ、電子銃6のエミッタの寿命も長く、シール材の寿命も長い。加えて、介在部材60を用いることで、可動部99が介在部材60の上面を移動することから、精度の高い平面度を担保できる。また、シール材を摺動させないことから、シール材Pに、ゴム材などの一般的なシール部材ではなく、メタルシールなどの、非常に機密性能が高く、極端な温度環境、腐食、放射線にも強い、安定性と信頼性の高いシール部材を使用できる。このようなシール材は、交換期間も長い。シール材やエミッタの交換のために試験を中断する回数を減少させることができる。
【0043】
(係止部材50と係止ネジSW)
係止部材50および係止ネジSWについて詳しく説明する。係止部材50は、外筒10の内周側面と、可動部99の外周面の間に配置されて、両者に係止して可動部99の移動を抑制する。係止ネジSWは係止部材50を締結して可動部99の配置を固定する。
【0044】
内フランジ部13から外筒10の上端までは、径が大きくなり外側に膨らむ拡径部11となっている。可動部99の外フランジ部71が内フランジ部13の上に介在部材60を介して載置されることから、拡径部11の内周面と外フランジ部71の外周面は対向する。なお、拡径部11を用いず、外筒10の上端部の内周面に可動部99との対向部を設ける構成でもよい。
【0045】
ここで、図2に示すように、外フランジ部71には、外フランジ部71の外周面と上端面の角が直線状に切り欠かれた切り欠き部72が、周方向に90度毎に四カ所で設けられている。切りかかれて形成された、上端に向かうほどに中心軸AXに近づくように傾斜する平面を、内勾配面75と称する。同様に、拡径部11には、周方向に90度毎に四ケ所で、拡径部11の上面と内周面にかかる凹部12が形成されている。なお、これらは4の倍数ならば、いつくでも構わない。凹部12の内周面となる面は、上端に向かうほどに中心軸AXから遠ざかるように傾斜する平面となっており、この平面を外勾配面15と称する。内勾配面75と外勾配面15とは同じ角度で鉛直から傾斜して形成されており、上方へ向かうほどに両勾配間の距離が大きくなる。
【0046】
図4に示すように、内勾配面75と外勾配面15とが対向するように配置され、この両勾配面の間の空間に、係止部材50が配置される。
【0047】
係止部材50は略直方体で、一対の対向する側面が、内勾配面75、外勾配面15と同じ角度で傾斜した傾斜側面となっている。係止部材50が、一対の傾斜側面を両勾配面に合わせて配置され、内勾配面75と外勾配面15の間に入り込む。係止部材50の底面は、内フランジ部13には接触せず、係止部材50は、一対の傾斜側面が内勾配面75と外勾配面15にのみ接面して保持される。
【0048】
四つの係止部材50がそれぞれ両勾配面の間に配置されると、外筒10の内周側面と可動部99の外周面の間に、等間隔に四つの係止部材50が入り込み、可動部99の移動が制限される。
【0049】
可動部99が、初期状態から移動して、内勾配面75と外勾配面15の距離が狭くなった場合、係止部材50は、初期状態から上方向に配置が変更するだけで、そのまま内勾配面75と外勾配面15の間に入り込む。同様に、可動部99が、初期状態から移動して、内勾配面75と外勾配面15の距離が広くなった場合、係止部材50は、初期状態から下方向に配置が変更するだけで、そのまま内勾配面75と外勾配面15の間に入り込む。このため、可動部99が電子銃6の軸調整のために初期状態から移動して、内勾配面75と外勾配面15の距離が変更されても、係止部材50は、くさびとして内勾配面75と外勾配面15の間に入り込んで可動部99の移動を制限する。
【0050】
係止部材50の真ん中には、上下に貫通する鉛直貫通孔53が形成されている。内フランジ部13の上面である外側端面17には、係止ネジSWが螺合する係止ネジ孔14が鉛直に形成されている。内勾配面75および外勾配面15に接面して保持された係止部材50に、係止ネジSWが鉛直貫通孔53に挿通して、係止ネジ孔14に螺合されると、係止部材50が外筒10に締結される。係止部材50が締結されると、係止部材50に接面して配置された可動部99も配置が固定され、可動部99に保持されている電子銃6も配置が固定される。なお、内フランジ部13を設けず、外筒10の外側端面に直接係止ネジ孔14を設ける構成でもよい。
【0051】
可動部99は、介在部材60の上面に載置されているだけであり、係止ネジSWおよび係止部材50が取付けられると、係止部材50は移動が制限され、配置が固定される。係止ネジSWおよび係止部材50が取り外されると、介在部材60の水平な上面で移動が可能となる。
【0052】
係止部材50および係止ネジSWにより、可動部99の配置が固定される。立設する外筒10に固定されるため、可動部99は強固に固定される。従来の電子銃の配置が移動される構成では、可動部分の固定は自重と大気圧だけであった。これに対し、本実施形態においては、電子銃6を保持する可動部99を、係止ネジSWを用いて立設する外筒10に勾配面を介して上下方向および左右方向に強固に固定される。これにより高い平面度が確保されて、電子ビームEBを試料Wに対して垂直に打ち出すことでき、測定の精度が向上する。
【0053】
調整方向に移動可能な係止部材に勾配面を設けて貫通孔に係止ネジSWを挿通させて螺着で固定することで、各係止部材50を上下方向に移動させて半径方向に移動させることを可能として、調整および固定を容易にしている。
【0054】
(出射軸の調整方法)
次に、アライメント機構1による電子銃6の軸調整方法を、図を用いて説明する。図5の各図は、図4のF部であり、アライメント機構1の軸調整の工程を示す。
【0055】
図5(A)は初期状態を示す。初期状態では、外筒10、ベローズ30、可動部99、および可動部99に保持された電子銃6は、それぞれの中心軸を中心軸AXに一致させて配置されている。
【0056】
係止部材50に設けられた鉛直貫通孔53は中心軸AXに向かう方向(図5では左右方向)に延びる長孔となっている。この方向は、可動部99が各係止部材50に対して移動可能な方向となる。係止ネジSWは、座金を用いて、鉛直貫通孔53を挿通して係止ネジ孔14に締結される。初期状態では、係止ネジSWは鉛直貫通孔53の略中央を挿通して締結されており、係止ネジSWと鉛直貫通孔53との隙は周方向に均一である。係止ネジSWと鉛直貫通孔53との隙の分だけ、電子銃6は水平方向に移動可能である。
【0057】
まず、図5(B)に示すように、可動部99を移動させるため、係止ネジSWが取り外される。図5に不図示の残り三か所の係止ネジSWも取り外される。次に、図5(C)に示すように、係止部材50も取り外される。(実際にはどちらも取り外しまではせずに可動部99が移動可能に緩める程度である)
【0058】
そして、図5(D)に示すように、移動可能となった可動部99を、所望の位置へ移動させる。図5(D)では可動部99を中心軸AXから離れる方向として左側へ移動させている。
【0059】
可動部99を所望の位置へ移動させた後、図5(E)に示すように、係止部材50を、再び内勾配面75と外勾配面15とに接面するようにして、両勾配面の間に配置する。可動部99を初期位置より中心軸AXから離れる方向に移動させた場合、内勾配面75が外勾配面15に近づき、両勾配面の距離が短くなるため、係止部材50は、初期位置より僅かに上に、かつ、可動部99と移動方向と同方向に移動して配置される。例えば、図5(E)では、可動部99を初期状態から左方へ移動させたため、係止部材50は、初期状態よりも、下方かつ左方に配置される。可動部99を初期位置よりも中心軸に近づく方向に移動させた場合、内勾配面75が外勾配面15から離れ、両勾配面の距離が長くなるため、係止部材50は、初期位置より僅かに下に、かつ、可動部99の移動方向とは逆方向に移動して配置される。
【0060】
最後に、図5(F)に示すように、係止ネジSWが鉛直貫通孔53を挿通して係止ネジ孔14に締結される。可動部99が初期状態から水平方向に移動したため、係止ネジSWとの隙が、可動部99の移動方向に広くなる。図5(F)では、可動部99が初期状態から左方へ移動したため、係止ネジSWと鉛直貫通孔53の左方の隙が広くなっている。
【0061】
(ビーム通過路の周壁面に付着した微細ゴミの検査方法)
上記アライメント機構1を用いて、電子ビームEBの通過路の周壁に付着した微細ゴミを検出することができる。これを図6および図7を用いて詳しく説明する。図6は検査方法の概略説明図である。
【0062】
真空排気機構8A,8Bで、電子銃室4および制御機構室5を真空状態とし、電子銃6から電子ビームEBを出射させる。電子ビームEBを出射した状態を維持したまま、アライメント機構1を用いて、電子銃6を電子ビームEBの通過路の周壁の外形に沿って移動させ、カメラCで電子ビームEBの通過孔の周壁を撮像させる。これにより、従来は照射されない周壁が電子ビームEBに照らされ、付着していた微細ゴミを検出することができる。
【0063】
前述の通り、鏡筒3の内部には、電子ビームEBが通過するビーム通過孔3cが形成された仕切壁3bが設けられている。ビーム通過孔3cの周壁3eに微細ゴミが付着して、微細ゴミが電子ビームEBの一部に干渉してしまう場合がある。このため一例として、図7に電子ビームEBが挿通するビーム通過孔3cを画成する周壁3eに付着する微細ゴミGを、カメラCを用いて検出する様子を示す。
【0064】
図7は、電子ビームEBが照射された状態のビーム通過孔3cを鉛直下方から見た図(図6の電子銃6の鉛直下方に配置されたカメラCの位置から見たH部)である。図7(A0)~図7(A3)が、実際の状態を示す図である。図7(B0)~図7(B3)が、カメラCが撮像した画像である。図7(B0)~図7(B3)は、図7(A0)~図7(A3)に対応する。なお、図7においては電子ビームEBを薄墨で示す。図7(B0)~図7(B2)においては、指示線を濃い薄墨示す。
【0065】
図7(A0)および図7(B0)は、初期状態を示す。前述の通り、アライメント機構1は、電子ビームEBを照射させたまま、電子銃6を移動させることが可能である。図7(A0)に示すように、アライメント機構1により電子銃6の出射軸が微調整され、電子銃6から出射された電子ビームEBは、円形のビーム通過孔3cの略中央を通過する。カメラCは、電子銃6の鉛直下方に配置されており、ビーム通過孔3c画成する周壁3eの延伸方向の延長上に配置されており、周壁3eの全面を撮像する。
【0066】
図7(B0)に示すように、鏡筒3内に光源はなく、電子が当たると光る蛍光体を散布した蛍光膜ビューポート9を介して、カメラCは電子ビームEBを受光して撮像する。撮像されるのは電子ビームEBの照射形状であり、微細ゴミGが周壁3eに付着していても、初期状態ではカメラCでは仕切壁3bやビーム通過孔3cを撮像できず、撮像画像から微細ゴミGを確認することができない。
【0067】
このため、まず図7(A1)に示すように、アライメント機構1を用いて、電子ビームEBの一部が仕切壁3bに係るように、電子銃6の配置を調整する。これにより、電子ビームEBの一部が仕切壁3bに遮られ、残りの一部がビーム通過孔3cを通過し、図7(B1)に示すように、ビーム通過孔3cを通過した電子ビームEBの一部が撮像される。
【0068】
カメラCは電子銃6の鉛直下、すなわち電子ビームEBの照射軸上に、その受光軸を照射軸と一致させて配置されており、電子ビームの照射形状が撮像可能となっている。電子ビームEBが周壁3eに係るように照射されると、周壁3eの投影形状が、電子ビームEBの照射形状の一部を画成する外形としてカメラCに撮像される。
【0069】
図に示すように、円形の電子ビームEBの一部が仕切壁3bで遮られ、電子ビームEBの円形の照射形状の一部が、周壁3eで画成された、ラグビーボール形状の電子ビームEBの照射形状が撮像される。このように、電子ビームEBの外形の一部として、照射を遮る周壁3eの一部も撮像画像で確認できることとなる。なお、図6に示すように、鏡筒3内の仕切壁は二重に設けられており、第2仕切壁3fに設けられた第2ビーム通過孔3gは、ビーム通過孔3cと同形で軸を一致させて設けられていることから、カメラCからはほぼ両者が一致して見える。このため、第2ビーム通過孔3gの第2周壁3hも同時に撮像して検査することができる。便宜的に仕切壁3bのみ存在するものとして、図7およびその説明では仕切壁3bのみに限定して行う。
【0070】
つぎに、図7(A2)~(A3)に示すように、アライメント機構1を用いて、電子ビームEBを出射させた状態のまま電子銃6を周壁3eの外形(ビーム通過孔3cの形状)に沿って移動させる。図7(B1)でビーム通過孔3cの外形は概ね把握され、周壁3eに沿うように電子銃6を移動させて、電子ビームEBの一部を遮らせることにより、撮像される電子ビームEBの照射形状の外形の一部として周壁3eが確認される。
【0071】
図7(A3)に示すように、周壁3eに微細ゴミGが付着していた場合、微細ゴミGも電子ビームEBの照射を遮ることになる。その結果、電子ビームEBが曲がってしまう可能性がある。図7(B3)に示すように、微細ゴミGが電子ビームEBの照射を遮るため、電子ビームEBのラグビーボール形状の外形の一部が微細ゴミGで凹んだ状態で撮像される。このように、電子ビームEBの照射形状の一部を遮る影として、微細ゴミGを撮像画像で確認することができる。
【0072】
電子ビームEBの通過路の周壁に微細ゴミが付着していると、微細ゴミに遮られて電子ビーム出力が低下してしまう。アライメント機構1を用いて、電子ビームEBを出射させたまま、電子銃6を周壁に係るようにして移動させ、それを撮像装置で撮像することで、周壁に微細ゴミが付着しているか否かの検査を実施することができる。微細ゴミが発見された場合、大きさや位置を把握して、緊急性や試験への影響度を考慮して総合的に判断することで、適切に取り除くことができる。
【0073】
本実施形態においては、電子ビームEBのビーム通過路であるビーム通過孔3cの中心軸とが一致して設けられており、カメラCの受光軸が電子銃6の軸に沿うように配置されて、カメラCは、電子ビームEBの照射形状、および周壁3eの投影形状を撮像する。電子ビームEBが周壁3eに係るように照射されると、照射形状の一部を画成する外形として周壁3eがカメラCで撮像される。周壁3eに微細ゴミGが付着していると、微細ゴミGは周壁3eに形成された凸部となり、カメラCには、微細ゴミGは電子ビームEBの照射形状の外形に形成された凹部として、カメラCに撮像される。周壁3eの縁に沿って可動部99を移動させることで、周壁3eの全面を検査することができる。
【0074】
本構成においては、電子ビームEBを出射させたまま、水平面上を比較的広範囲に自由に調整できる。電子銃6を、水平方向に、電子ビームEBの挿通孔に掛かる箇所にまで移動可能であり、これを用いて出射軸を電子ビームEBの挿通孔、即ち電子ビームEBの通過路の周壁面に掛かる箇所にまで移動させて、この周壁面に沿って移動させることで、電子ビームEBの通過路の周壁に付着した微細ゴミを検出することができる。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施形態及を述べたが、当業者の知識に基づいて変形させることも可能であり、そのような形態は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1 :アライメント機構
3 :鏡筒
3a :上面開口部(開口部)
3e :周壁
6 :電子銃
10 :外筒
14 :係止ネジ孔(ネジ孔)
15 :外勾配面(勾配面)
17 :外側端面
30 :ベローズ
50 :係止部材
53 :鉛直貫通孔(貫通孔)
75 :内勾配面(勾配面)
99 :可動部
C :カメラ(撮像装置)
EB :電子ビーム
G :微細ゴミ
SW :係止ネジ(固定部材)
【要約】      (修正有)
【課題】電子銃の電子ビーム出射軸を容易に調整するアライメント機構、および該アライメント機構を用いた前記電子ビームの通過路の周壁に付着した微細ゴミを検出する検査方法を提供する。
【解決手段】電子銃の前記電子ビームの出射方向に対して垂直な平面で前記電子銃の配置を調整して、電子ビームの出射軸調整を行うアライメント機構であって、前記電子銃が備えられて内部空間が真空状態となる鏡筒の開口部に立設する外筒と、前記外筒の内部に配置され、一端が前記鏡筒の開口部に固定されて前記鏡筒の内部空間と連通するベローズと、前記ベローズの他端に接続され、前記電子銃を前記ベローズの内側に気密に支持する可動部とを有し、前記可動部は前記外筒の外側端面に載置されて、前記外側端面の面上を移動可能に支持されるアライメント機構を提供する。ベローズにより電子ビームを出射したまま可動部をスムーズに移動でき、容易に電子銃の出射軸が調整される。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7