(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】釣り用ルアー
(51)【国際特許分類】
A01K 85/02 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
A01K85/02
(21)【出願番号】P 2024108245
(22)【出願日】2024-07-04
【審査請求日】2024-07-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】723004314
【氏名又は名称】玉木 碧
(72)【発明者】
【氏名】玉木 碧
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特許第7374371(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0107653(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 85/00-85/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣針が装着された前部ボディと、
溝部を有する後部ボディと、
前記前部ボディと前記後部ボディとに装着された弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、前記前部ボディの前記弾性部材が装着された部分と、前記後部ボディの前記弾性部材が装着された部分と、を互いに引き付け合う方向に付勢し、
前記後部ボディの前記溝部は、前記釣針の少なくとも一部を隠納し、
前記前部ボディと、前記後部ボディとは、相対的にスライド可能に連結されており、
前記前部ボディと前記後部ボディとが相対的にスライドすると、前記弾性部材が伸長し、前記釣針が前記後部ボディの前記溝部から突出することを特徴とするルアー。
【請求項2】
前記前部ボディと前記後部ボディとは、少なくとも1箇所の部分で嵌合することを特徴とする請求項1に記載のルアー。
【請求項3】
前記前部ボディ及び前記後部ボディのいずれか一方は凸部、他方は凹部を備え、
前記凹部に前記凸部が挿嵌され、
前記凸部と前記凹部とが滑合することを特徴とする請求項2に記載のルアー。
【請求項4】
前記凸部は一対であり、
前記凹部は一対であり、
前記一対の凹部に、前記一対の凸部が挿嵌されることを特徴とする請求項3に記載のルアー。
【請求項5】
前記前部ボディと前記後部ボディとが一定以上の距離を相対的にスライドすると、前記前部ボディと、前記後部ボディと、は前記弾性部材のみによって繋がれることを特徴とする請求項1に記載のルアー。
【請求項6】
前記前部ボディは、第一の孔部を備え、
前記第一の孔部に前記弾性部材が嵌通されることによって、前記前部ボディに前記弾性部材が装着されることを特徴とする請求項1に記載のルアー。
【請求項7】
前記前部ボディは、ヘッド部と、釣針部と、を備え、
前記ヘッド部には釣糸が係止され、
前記釣針部と、前記ヘッド部と、は嵌合することを特徴とする請求項1に記載のルアー。
【請求項8】
前記前部ボディは、第一の孔部を備え、
前記第一の孔部に前記弾性部材が嵌通されることによって、前記前部ボディに前記弾性部材が装着され、
前記前部ボディは、ヘッド部と、釣針部と、を備え、
前記ヘッド部には釣糸が係止され、
前記釣針部と、前記ヘッド部と、は嵌合し、
前記ヘッド部は一対の第二の孔部を備え、
前記釣針部は第三の孔部を備え、
前記第一の孔部は、前記ヘッド部に前記釣針部が装着された状態において、前記一対の第二の孔部と、前記第三の孔部が直線状に連なることで形成されることを特徴とする請求項1に記載のルアー。
【請求項9】
前記弾性部材は、小径部と、前記小径部の両端に前記小径部よりも径の大きい一対の大径部と、を備え、
前記小径部と、前記第一の孔部と、が嵌合することを特徴とする請求項6に記載のルアー。
【請求項10】
前記弾性部材は、一対の伸縮部を備え、
前記釣針の少なくとも一部が、前記溝部に隠納された状態において、前記伸縮部は、自然長よりも伸びた状態にあることを特徴とする請求項1に記載のルアー。
【請求項11】
前記後部ボディは、一対の溝状の弾性部材係止部を備え、
前記弾性部材は、前記弾性部材係止部と嵌合する部分を有し、
前記弾性部材は、前記弾性部材係止部の溝幅よりも幅の広い一対の膨らみ部を備えることを特徴とする請求項1に記載のルアー。
【請求項12】
前記弾性部材係止部は、溝幅の広い部分と、溝幅の狭い部分と、を有し、
前記溝幅の広い部分が、前記溝幅の狭い部分よりも溝底側に位置し、
前記一対の弾性部材係止部のいずれか一方は、2つ以上の部材によって形成されることを特徴とする請求項11に記載のルアー。
【請求項13】
前記前部ボディは、ヘッド部と釣針部と、によって構成され、
前記ヘッド部と、前記釣針部と、は嵌合し、
前記釣針部は、釣針の一部を取り囲むように硬質な素材を取り付けることによって形成され、
前記釣針部及び前記後部ボディのいずれか一方は凸部、他方は凹部を備え、
前記凹部に前記凸部が挿嵌され、
前記凸部と前記凹部とが滑合することを特徴とする請求項1に記載のルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、釣り用ルアーに関する。
【背景技術】
【0002】
コクチバス、オオクチバス、ナマズ、スズキ等の大型の魚は、ベイトとして魚やミミズ、エビ、ザリガニ、カエル、虫、ネズミ等の小動物を補食する。これら大型の魚を捕獲する手段としてルアーフィッシングが普及している。ルアーフィッシングではルアーが用いられる。ルアーには釣糸が連結される。ルアーは、キャストによって空中を飛行し、やがて着水する。ルアーは、釣糸が巻かれることによって水中や水面を泳ぐ。このルアーをベイトと勘違いした上記の魚は、ルアーに喰いつく。ルアーに取り付けられた釣針が上記の魚に刺さり、上記の魚が釣り上げられる。
【0003】
従来、ルアーには、素材にプラスチック、木、金属等の硬質な物質を用いたハードルアーと呼ばれるルアーがあり、このハードルアーは釣針全体が外部に露出した状態でルアーボディに釣針を取り付けることが一般的である(特許文献1の
図1)。
【0004】
そのため、ハードルアーを、一般に魚が潜んでいる可能性が高い水中の木、岩、水底等の障害物周辺で使うと釣針が障害物に引っ掛かり易いという問題がある。
【0005】
上記障害物への釣針の引っ掛かりが抑制されたハードルアーとして、例えば、下記特許文献2の
図1等には、ルアーの前部ボディと後部ボディとが相対的にスライド可能に連結されており、前部ボディに係止された釣針が後部ボディの溝部に隠納され、魚が喰いついた際に前部ボディと後部ボディとがスライドすることによって釣針が後部ボディの溝部より突出するルアーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特許文献1:特開2022ー176045号公報
特許文献2:特許7374371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし上記の特許文献2に開示されたルアーは、釣針が後部ボディの溝部に隠納された状態を保持するための弾性部材を交換することが困難であったため上記弾性部材が消耗や損傷した際に釣針を隠納する機構が機能しなくなるという問題があった。また前部ボディと後部ボディを分離することが困難なため、どちらか一方のボディが損傷した場合に損傷したボディを交換することができないという課題もあった。
【0008】
そこで、本開示では、ルアーの前部ボディと後部ボディとが相対的にスライド可能に連結されており、前部ボディに装着された釣針が後部ボディの溝部に隠納され、釣針が隠納された状態を保持するための弾性部材を容易に交換可能で、且つ、前部ボディと後部ボディが互いに嵌脱自在なルアーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一例であるルアーは、釣針が装着された前部ボディと、溝部を有する後部ボディと、前記前部ボディと前記後部ボディとに装着された弾性部材と、を備え、前記弾性部材は、前記前部ボディの前記弾性部材が装着された部分と、前記後部ボディの前記弾性部材が装着された部分と、を互いに引き付け合う方向に付勢し、前記後部ボディの前記溝部は、前記釣針の少なくとも一部を隠納し、前記前部ボディと、前記後部ボディとは、相対的にスライド可能に連結されており、前記前部ボディと前記後部ボディとが相対的にスライドすると、前記弾性部材が伸長し、前記釣針が前記後部ボディの前記溝部から突出する。
【0010】
本開示の一例であるルアーにおいて、前記前部ボディと前記後部ボディとは、少なくとも1箇所の部分で嵌合してもよい。
【0011】
本開示の一例であるルアーにおいて、前記前部ボディ及び前記後部ボディのいずれか一方は凸部、他方は凹部を備えてもよく、前記凹部に前記凸部が挿嵌され、前記凸部と前記凹部とがしてもよい。
【0012】
本開示の一例であるルアーにおいて、前記凸部は一対であってもよく、前記凹部は一対であってもよく、前記一対の凹部に、前記一対の凸部が挿嵌されてもよい。
【0013】
本開示の一例であるルアーにおいて、前記前部ボディと前記後部ボディとが一定以上の距離を相対的にスライドすると、前記前部ボディと、前記後部ボディと、は前記弾性部材のみによって繋がれてもよい。
【0014】
本開示の一例であるルアーにおいて、前記前部ボディは、第一の孔部を備え、前記第一の孔部に前記弾性部材が嵌通されることによって、前記前部ボディに前記弾性部材が装着されてもよい。
【0015】
本開示の一例であるルアーにおいて、前記前部ボディは、ヘッド部と、釣針部と、を備えてもよく、前記ヘッド部には釣糸が係止され、前記釣針部と、前記ヘッド部と、は嵌合してもよい。
【0016】
本開示の一例であるルアーにおいて、前記前部ボディは、第一の孔部を備え、前記第一の孔部に前記弾性部材が嵌通されることによって、前記前部ボディに前記弾性部材が装着されてもよく、前記前部ボディは、ヘッド部と、釣針部と、を備えてもよく、前記ヘッド部には釣糸が係止されてもよく、前記釣針部と、前記ヘッド部と、は嵌合してもよく、前記ヘッド部は一対の第二の孔部を備えてもよく、前記釣針部は第三の孔部を備えてもよく、前記第一の溝部は、前記ヘッド部に前記釣針部が装着された状態において、前記一対の第二の孔部と、前記第三の孔部が直線状に連なることで形成されてもよい。
【0017】
本開示の一例であるルアーにおいて、前記弾性部材は、小径部と、前記小径部よりも径の大きい一対の大径部と、を備えてもよく、前記小径部と、前記第一の孔部と、が嵌合してもよい。
【0018】
本開示の一例であるルアーにおいて、前記弾性部材は、一対の伸縮部を備えてもよく、前記釣針の少なくとも一部が、前記溝部に隠納された状態において、前記伸縮部は、自然長よりも伸びた状態にあってもよい。
【0019】
本開示の一例であるルアーにおいて、前記後部ボディは、一対の溝状の弾性部材係止部を備えてもよく、前記伸縮部の一部は、前記弾性部材係止部と嵌合してもよく、前記弾性部材は、前記弾性部材係止部の溝幅よりも幅の広い一対の膨らみ部を備えてもよい。
【0020】
本開示の一例であるルアーにおいて、前記弾性部材係止部は、溝幅の広い部分と、溝幅の狭い部分と、を有してもよく、前記溝幅の広い部分が、前記溝幅の狭い部分よりも溝底側に位置してもよく、前記一対の弾性部材係止部のいずれか一方は、2つ以上の部材によって形成されてもよい。
【0021】
本開示の一例であるルアーにおいて、前記前部ボディは、ヘッド部と釣針部と、によって構成されてもよく、前記ヘッド部と、前記釣針部と、は嵌合してもよく、前記釣針部は、釣針の一部を取り囲むように硬質な素材を取り付けることによって形成されてもよく、
前記釣針部及び前記後部ボディのいずれか一方は凸部、他方は凹部を備え、
前記凹部に前記凸部が挿嵌され、
前記凸部と前記凹部とが滑合してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本開示に係るルアーによれば、例えば、水中の障害物への引っ掛かりを防止し、且つ、長期間ルアーを使い続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第一実施形態におけるルアーを示す斜視図である。
【
図9】同ルアーの前部ボディに弾性部材を装着する様子を示した斜視図である。
【
図10】同ルアーの前部ボディと後部ボディとを連結する様子を示した斜視図である。
【
図11】同ルアーの後部ボディに弾性部材を装着する様子を示した斜視図である。
【
図12】同ルアーの前部ボディを示す側面図である。
【
図14】同ルアーの後部ボディを示す側面図である。
【
図17】同ルアーの前部ボディに対する後部ボディの動きを示す側面図である。
【
図20】同ルアーの前部ボディの構成を示した斜視図である。
【
図24】同ルアーの後部ボディの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第一実施形態に係るルアー1について
図1から
図24を参酌しつつ説明する。なお、各図面において、各構成部材を視認可能な大きさとするために必要に応じて各構成部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0025】
図1から
図4に示すように本実施形態のルアー1は、魚釣り用として使用され、硬質プラスチック製で小魚の形態を摸したルアーを一例とする。
【0026】
ここで、ルアー1において、頭部と尾部とが結ぶ方向を前後方向とし、頭部側を前方、前側とし、尾部側を後方、後側と定義する。また、ルアー1における泳ぐ姿勢のときの上下方向を上下方向と定義し上方から見て、前後方向と直交する横方向を左右方向と定義して以下説明する。
【0027】
以下、ルアー1の機能と構成の概要を説明する。
【0028】
ルアー1は、前部ボディ2と、後部ボディ3と、弾性部材4と、を備える。前部ボディ2は、ヘッド部5と、釣針部6と、で構成され、さらに釣針部6は、釣針7と、錘部8と、で構成される。前部ボディ2と、後部ボディ3と、は連結され、また、前部ボディ2と、後部ボディ3と、に弾性部材4が装着される。
【0029】
後部ボディ3は、溝部3aを有し、釣針7の少なくとも一部は、溝部3aに隠納される。
【0030】
前部ボディ2は、釣糸係止部2dを備え、釣糸係止部2dには釣糸が係止される。
【0031】
前部ボディ2と、後部ボディ3とは、相対的にスライド可能に連結されている。弾性部材4によって前部ボディ2の弾性部材4が装着された部分と、後部ボディ3の弾性部材4が装着された部分は、互いに引き付け合う方向に付勢されるため、ルアー1に大きな外力が加わっていない場合(リーリング時、保管時等)には
図2、
図3に示すように、後部ボディ3の溝部3aに釣針7は隠納された状態が保たれる。魚がルアー1に喰いついた際に釣糸を引張ることで、
図1、
図4に示すように、弾性部材4が弾性変形し(伸長し)、前部ボディ2と後部ボディ3とが相対的にスライドし、前部ボディ2に備えられた釣針7が溝部3aの外部へ突出し魚に突き刺さることで魚を釣り上げることができる。ここで、前部ボディ2と後部ボディ3とが相対的にスライドする方向をXと定義し、釣針7が溝部3aの外部へ突出する際に前部ボディ2が後部ボディ3に対してスライドする方向をXプラス方向、その逆の方向をXマイナス方向と定義する。
【0032】
以下、前部ボディ2、後部ボディ3及び弾性部材4をそれぞれ連結する構造について説明する。
【0033】
図12、
図13に示すように、前部ボディ2の釣針部6の錘部8は、それぞれ左右方向に凸設された1対の凸部2aを備え、
図15、
図16に示すように、後部ボディ3は、それぞれ左右方向に凹設された1対の凹部3bを備える。一対の凸部2aと一対の凹部3bは嵌合であり、
図10に示すように前部ボディ2のXマイナス方向の端部から一対の凹部3bが一対の凸部2aにそれぞれ挿嵌E1され、挿嵌E1は遊嵌であり嵌脱自在である(凸部2aと凹部3bとは嵌脱自在である)。また、凸部2aが凹部3bに挿嵌E1された状態を示す断面図が
図8である。凸部2aが凹部3bに挿嵌された状態において、凸部2aと凹部3bとは滑合し、凸部2aと凹部3bとが滑合することによって前部ボディ2と後部ボディ3とは相対的にスライド可能に連結される。
【0034】
ルアー1においては、前部ボディに凸部、後部ボディに凹部がそれぞれ備えられ凸部と凹部が滑合するが、前部ボディに凹部、後部ボディに凸部が備えられても良い。
【0035】
図12に示すように前部ボディ2は、左右方向に開かれた孔部2bを備え、
図9に示すように弾性部材4は、孔部2bに嵌通E2される。嵌通E2は弾性部材4の弾性変形により嵌脱自在である(小径部4aと孔部2bとは嵌脱自在である)。孔部2bに弾性部材4が嵌通E2された状態を示す断面図が
図7である。
図18、
図19に示すように、弾性部材4は、小径部4aと小径部4aの径よりも径の大きい大径部4bとを有する。
図19に小径部4aの径の大きさをk1、大径部4bの径の大きさをk2で示し、
図12に孔部2の径の大きさをk3で示す(k1<k2)。
図7に示されるように、小径部4aと前部ボディ2の孔部2bとは略同径であり、小径部4aと、前部ボディ2の孔部2bと、が嵌合し、さらに、大径部4bの径が孔部2bの径よりも大きいため前部ボディ2に弾性部材4は固定される。また、嵌通E2の際は、弾性部材4が弾性変形することによって大径部4bの径が孔部2bの径よりも小さくなることで嵌通E2が達成される。また、弾性部材4は一体成型され、嵌通E2は弾性部材4の端部である膨らみ部4dから行われる。
【0036】
ルアー1において、孔部2b、小径部4a、大径部4bを左右方向から見た断面形状はそれぞれ円形であるが、それぞれ略円形、略楕円形、略多角形であっても良い。
【0037】
図14、
図15に示すように、後部ボディ3は、左右に一対の弾性部材係止部3cを備える。弾性部材係止部3cは、弾性部材4を後部ボディ3に係止するための部分である。弾性部材係止部3cは、後部ボディ3の前端部分、凹部3bの左右方向の裏側に左右方向に凹設された溝状の部分であり、広幅部3dと広幅部3dより幅の狭い狭幅部3eとから成り、広幅部3dは狭幅部3eより溝底側に位置する。
【0038】
図24に示すように、後部ボディ3は、左右それぞれが2つの部材、計4つの部材で形成され、左右の広幅部3dと狭幅部3eは、それぞれ左右の2つの部材を接着することによって形成される。これにより射出成型で各部材を成型しても、溝幅の異なる部分を作ることが可能となる。
【0039】
図18、
図19に示すように弾性部材4は、左右に一対の伸縮部4cを備え、伸縮部4cのXのマイナス方向の端部には、Xと直行する方向の断面において断面積が伸縮部4cよりも大きな膨らみ部4dが設けられる。
【0040】
図8に示すように、弾性部材4の伸縮部4cと弾性部材係止部3cの広幅部3dは嵌合であり、X方向と直行する方向の断面において、広幅部3dの幅k4の大きさと伸縮部4cの幅k5の大きさは、略同値である。X方向と直行する方向の断面において、弾性部材係止部3cの狭幅部3eの幅k6の大きさはk4の大きさよりも小さいが、伸縮部4cを弾性変形させ、
図11に示すように、左右の伸縮部4cの一部を左右の弾性部材係止部3cにそれぞれ嵌入E3することによって、弾性部材4は後部ボディ3に装着され、ルアー1は、
図2、
図3、
図8に示す状態になる。嵌入E3は、弾性部材係止部3cの弾性変形により嵌脱自在である(伸縮部4cと広幅部3dとは嵌脱自在である)。伸縮部4cが広幅部3dに嵌入された状態において、膨らみ部4dが弾性部材係止部3cのXマイナス方向の端部と当接することによって伸縮部4cが広幅部3dからXプラス方向に抜けることが防がれる
【0041】
弾性部材4が、前部ボディ2と後部ボディ3とに装着され、凸部2aが凹部3bに挿嵌E1された状態(ルアーの遊泳時、保管時、キャスティング時等の状態)において、弾性部材4の伸縮部4cは、自然長(大きな外力が加わっていない際の長さ)よりも長い状態(伸びた状態)にあり、前部ボディ2と後部ボディ3とを互いに引き付け合う方向に付勢する。
図3に示すように弾性部材4が、前部ボディ2と後部ボディ3とに装着され、凸部2aが凹部3bに挿嵌E1された状態において、後部ボディ3の前部ボディ2に対するXプラス方向のスライドの限度は、弾性部材係止部3cのXプラス方向の端部である当接部3fが前部ボディ2の受け部2cに当接することによって決定される。換言すると弾性部材4によって互いに引き付け合う方向に付勢された状態の前部ボディ2と後部ボディ3とが互いに当接し合うことによってルアー1のリーリング時、キャスト時等は釣針7が溝部3aに隠納された状態が保たれる
【0042】
図17に矢印Mで示し、魚がルアー1に喰いつ際の前部ボディ2に対する後部ボディ3の動きと前記の動きを可能にする構造について説明する。凸部2aのXマイナス側の端部は開かれており、魚が喰いついた際に前部ボディ2の釣糸係止部2dに係止された釣糸を引張ることで凸部2aと凹部3bとが滑合し(m1)、さらに後部ボディ3が前部ボディ2に対して凸部2aのXマイナス方向の端部までスライドすると凹部3bと凸部2aとの嵌合が外れ、前部ボディ2と後部ボディ3は弾性部材4のみによって連結される(m2)。凹部3bと凸部2aとの挿嵌が外れ弾性部材4のみによって連結された後部ボディ3は、弾性部材4が弾性変形する範囲で前部ボディ2に対して自由に動くことが可能である(m3)。凹部3bから凸部2aが外れることにより前部ボディ2に対する後部ボディ3のスライド可能距離が限定されないため、フッキング時に釣針7の露出する部分が多くなり魚の口に針が刺さりやすく、加えて深く刺さりやすくなる。また、フッキング後に凹部3bと凸部2aとの挿嵌が外れ弾性部材4のみによって前部ボディ2と後部ボディ3とが連結され、後部ボディ3が、弾性部材4が弾性変形する範囲で前部ボディ2に対して自由に動くことが可能であることによって魚から釣針7が外れにくくなる。
【0043】
以下、弾性部材4、ヘッド部5及び釣針部6をそれぞれ連結する構造について説明する。
【0044】
図12に示すように、前部ボディ2は、ヘッド部5と、釣針部6と、で構成され、さらに釣針部6は、釣針7と、錘部8と、で構成される。釣針部6は、釣針7の一部を取り囲むように錘部8が釣針7に取り付けられることで形成され、錘部8は、比重が1よりも大きい硬質の物質である。
図20に示すように、ヘッド部5は、釣針部6を挿入するために凹設された部分、釣針部挿入部5cを備え、釣針部挿入部5cに釣針部6が挿嵌E4されることによって釣針部6はヘッド部5に装着される。挿嵌E4は嵌脱自在である(釣針部挿入部5cと釣針部6とは嵌脱自在である)。加えて、
図21、
図22、
図23に示すように、釣針部6は、左右方向に凸設された凸部6aを左右に一対備え、釣針部挿入部5cは、左右方向に凹設された凹部5aを左右に一対備え、左右の凸部6a が左右の凹部5aにそれぞれ挿嵌されることによって釣針部6はヘッド部5に対して動くことなく装着される。
【0045】
ルアー1においては、凸部6aが釣針部6に、凹部5aがヘッド部5に、それぞれ備えられるが、凹部と凸部が互いに挿嵌可能であれば釣針部に凹部が、ヘッド部に凸部が備えられてもよい。また、ルアー1においては、凸部6aと凹部5aはそれぞれ左右に一対ずつ備えられるが、それぞれ左右に2対以上備えられても良い。
【0046】
図20、
図21に示すように、ヘッド部5は、釣針部挿入部5cの左右の側面に一対のAの孔5bを備え、
図20、
図22に示すように、釣針部6は、Bの孔6bを備える。
図12に示すように、釣針部挿入部5cに釣針部6が挿嵌E4された状態において、Aの孔5bとBの孔6bとは左右方向に直線上に並び、孔部2bを形成する。
図7に示すように、孔部2bは、前部ボディ2を左右方向に貫通し、孔部2bに弾性部材4が嵌通E2されることによって、釣針部6は、ヘッド部5に係止され、弾性部材4とヘッド部5と釣針部6とが一体となる。
【0047】
ヘッド部と釣針部とを連結する方法については、弾性部材ではなくネジ、ピン等を挿入してもよい。
【0048】
ルアー1において、弾性部材4は、軟質ゴム、ゲル又は軟質樹脂で形成されている。
(1)軟質ゴム
軟質ゴムとしては例えばシリコーンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブタジエンーアクリロニトリルゴム(NBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリクロロプレンゴム(CR)、エチレンープロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレンープロピレンー非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどの合成ゴム、熱可塑性エラストマー(TPE)として、スチレン系TPE、オレフィン系TPE、塩化ビニル系TPE、ウレタン系TPE、エステル系TPE、アミド系TPE、塩素化ポリエチレン系TPE、Syn-1,2-ポリブタジエン系TPE、Trans-1,4ポリイソプレン系TPE、フッ素系TPEなどが挙げられる。
(2)ゲル
ゲルとしてはシリコーンゲル、アクリル樹脂ゲルなどが挙げられる。
(3)軟質樹脂
軟質樹脂としては例えば塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0049】
図15に示すように、後部ボディ3は、空気室3gを備える中空構造である。
【0050】
図16に示すように、後部ボディ3は、凹設された窪み部3hを備え、前部ボディ2と後部ボディ3とが相対的にスライドする際に前部ボディ2の一部が窪み部3hに侵入することによって前部ボディ2と後部ボディ3とに角度が生じより釣針7のより多くの部分を突出させることが可能となる。
【0051】
図18に示されるように、弾性部材4は、全ての部分が同一の素材で形成された一体成型の部材である。
【0052】
図6に示されるように、釣針部6は、釣針7をインサートとして金属、樹脂等の素材で錘部8をインサート成型することにとって形成される。
【0053】
図2、
図3に示されるように、大径部4bは、ルアー1を左右方向から見た際に目を模した形状である。
【0054】
図1、
図2に示されるように、本実施形態においては、前部ボディ2はリップ2eを備えるが、必ずしもリップを備える必要はなく、対象魚等に応じてリップの有無は決定される。
【0055】
図21に示されるように、本実施形態においては、前部ボディ2にエイト環9の約半分を埋め込み装着することで釣糸係止部2dが形成されるが、他の手段により釣糸係止部を形成しても良い。
【0056】
図5、
図6に示すように、溝部3aの上部は釣針が突出する際に釣針が溝部3aの縁を通過可能であるために開かれている。
【0057】
本実施形態のルアー1は、魚を模した形状であるが、例えば昆虫や甲殻類等、必ずしも魚を模した形状である必要はない。
【符号の説明】
【0058】
1:ルアー
2:前部ボディ
2a:凸部
2b:孔部
2c:受け部
2d:釣糸係止部
2e:リップ
3:後部ボディ
3a:溝部
3b:凹部
3c:弾性部材係止部
3d:広幅部
3e:狭幅部
3f:当接部
3g:空気室
4:弾性部材
4a:小径部
4b:大径部
4c:伸縮部
4d:膨らみ部
5:ヘッド部
5a:凹部
5b:Aの孔
5c:釣針部挿入部
6:釣針部
6a:凸部
6b:Bの孔
7:釣針
8:錘部
9:エイト環
E1:凹部3bの凸部2aへの挿嵌
E2:孔部2bへの弾性部材4の嵌通
E3:伸縮部4cの一部の弾性部材係止部3cへの嵌入
E4:釣針部挿入部5bへの釣針部6の挿嵌
【要約】
【課題】
魚がルアーに食いついたときのみ釣針が突出することを可能とする。
【解決手段】
釣り用ルアーであって、釣針が装着された前部ボディと、溝部を有する後部ボディと、前記前部ボディと前記後部ボディとに装着された弾性部材と、を備え、前記弾性部材は、前記前部ボディの前記弾性部材が装着された部分と、前記後部ボディの前記弾性部材が装着された部分と、を互いに引き付け合う方向に付勢し、前記後部ボディの前記溝部は、前記釣針の少なくとも一部を隠納し、前記前部ボディと、前記後部ボディとは、相対的にスライド可能に連結されており、前記前部ボディと前記後部ボディとが相対的にスライドすると、前記弾性部材が伸長し、前記釣針が前記後部ボディの前記溝部から突出する。
【選択図】
図1