(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】バイオマス燃料の製造方法及びバイオマス燃料製造システム
(51)【国際特許分類】
C10L 5/44 20060101AFI20241009BHJP
C10B 53/02 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
C10L5/44
C10B53/02
(21)【出願番号】P 2024554192
(86)(22)【出願日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2024023838
【審査請求日】2024-09-11
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2023/037518
(32)【優先日】2023-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519247121
【氏名又は名称】株式会社FUKUMURA
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】福村 猛
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-21173(JP,A)
【文献】国際公開第2022/232311(WO,A1)
【文献】特開2004-256767(JP,A)
【文献】特開2017-43657(JP,A)
【文献】特開2016-142603(JP,A)
【文献】特開平9-5194(JP,A)
【文献】特開2022-178280(JP,A)
【文献】特開2014-19765(JP,A)
【文献】国際公開第2020/067384(WO,A1)
【文献】実開昭52-143709(JP,U)
【文献】実開昭50-138618(JP,U)
【文献】特開昭62-258924(JP,A)
【文献】仏国特許発明第1292530(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/44
C10B 53/02
F04F 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系のバイオマス原料を収容した炭化室の外周側面と前記炭化室を収容した炭化炉ケースの内側面との間にジグザグ構造に設けた熱流路に、燃焼室で生起した熱風を流して、前記木質系のバイオマス原料を低温加熱して炭化又は半炭化する
炭化処理であって、下流に向けて内径断面積が漸次拡大して駆動流空気を導入する導入部と、前記導入部の下流端に接続され湾曲した円管である湾曲部と、前記湾曲部の下流端に接続され内径断面積が漸次縮小して前記駆動流空気を加速する加速部と、前記加速部の下流端に接続された円管である合流部と、前記合流部の中心軸に一致し、前記加速部の下流端の径に比して小さい径の円管であって、前記湾曲部の径が大きい側の外壁外側から内部に貫通し、先端開口が前記加速部の下流端の上流側に配置され、前記炭化室で発生した乾留ガスが流れる吸引管とを備えるエジェクタによって、前記加速部において前記加速部の内壁と前記吸引管の先端部の外壁との間で前記駆動流空気を加速して、前記駆動流空気の減圧により前記吸引管内部の前記乾留ガスを下流側に吸引し、前記合流部において前記駆動流空気と吸引された前記乾留ガスとを合流及び混合させて吐出して前記燃焼室に供給する工程を含む、前記炭化処理を実行する工程と、
前記炭化処理によって得られた複数種類の炭化物を粉砕部で粉砕して、混練部で混練する工程と、
粉砕混練された前記複数種類の炭化物を成型部で所定形状のバイオマス燃料に成型する工程と
を含むことを特徴とするバイオマス燃料の製造方法。
【請求項2】
前記複数種類の炭化物が、種類毎に予め設定された所定の割合で混練されることを特徴とする請求項1に記載のバイオマス燃料の製造方法。
【請求項3】
燃焼カロリーが異なる複数種類の炭化物が、前記バイオマス燃料が所定の燃焼カロリーとなるように予め設定された割合で混練されることを特徴とする請求項
2に記載のバイオマス燃料の製造方法。
【請求項4】
前記複数種類の炭化物に加水する工程と、前記バイオマス燃料に水を散布する工程との少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする請求項1に記載のバイオマス燃料の製造方法。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のバイオマス燃料の製造方法を実行するバイオマス燃料製造システム。
【請求項6】
自走移動可能な車両に搭載されていることを特徴とする請求項
5に記載のバイオマス燃料製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイオマス原料から燃料を製造するバイオマス燃料の製造方法及びバイオマス燃料製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、林業、農業、畜産業、製造業、サービス業を含む各種産業で、バイオマス原料として利用可能な様々な廃棄物が発生している。バイオマス原料は、再生可能なエネルギー資源として活用することができる。例えば、特許文献1及び2には、植物性のバイオマス原料を炭化する炭化処理装置が開示されている。炭化処理装置で得られた炭化物は、例えば、燃料や土壌改良材として利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6233910号公報
【文献】特許第6711532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、バイオマス原料への注目が高まっているが、未利用系のバイオマス原料や廃棄物系のバイオマス原料の中には、再利用されずに放置されたり廃棄されたりするものが多くある。これらのバイオマス原料から燃料を製造して再利用することができれば、二酸化炭素の排出削減、廃棄物の削減、再生可能エネルギーの利用促進等、様々な効果を得ることができる。バイオマス原料の再利用を促進するためには、製造されるバイオマス燃料が、燃焼性能や取扱性の面で使いやすいものであることが望まれる。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、その目的の1つは、バイオマス原料から、従来に比べて使いやすいバイオマス燃料を製造することができるバイオマス燃料の製造方法及びバイオマス燃料製造システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るバイオマス燃料の製造方法は、木質系のバイオマス原料を収容した炭化室の外周側面と前記炭化室を収容した炭化炉ケースの内側面との間にジグザグ構造に設けた熱流路に、燃焼室で生起した熱風を流して、前記木質系のバイオマス原料を低温加熱して炭化又は半炭化する炭化処理であって、下流に向けて内径断面積が漸次拡大して駆動流空気を導入する導入部と、前記導入部の下流端に接続され湾曲した円管である湾曲部と、前記湾曲部の下流端に接続され内径断面積が漸次縮小して前記駆動流空気を加速する加速部と、前記加速部の下流端に接続された円管である合流部と、前記合流部の中心軸に一致し、前記加速部の下流端の径に比して小さい径の円管であって、前記湾曲部の径が大きい側の外壁外側から内部に貫通し、先端開口が前記加速部の下流端の上流側に配置され、前記炭化室で発生した乾留ガスが流れる吸引管とを備えるエジェクタによって、前記加速部において前記加速部の内壁と前記吸引管の先端部の外壁との間で前記駆動流空気を加速して、前記駆動流空気の減圧により前記吸引管内部の前記乾留ガスを下流側に吸引し、前記合流部において前記駆動流空気と吸引された前記乾留ガスとを合流及び混合させて吐出して前記燃焼室に供給する工程を含む、前記炭化処理を実行する工程と、前記炭化処理によって得られた複数種類の炭化物を粉砕部で粉砕して、混練部で混練する工程と、粉砕混練された前記複数種類の炭化物を成型部で所定形状のバイオマス燃料に成型する工程とを含む。
【0011】
上記構成において、前記複数種類の炭化物が、種類毎に予め設定された所定の割合で混練されてもよい。
【0013】
上記構成において、燃焼カロリーが異なる複数種類の炭化物が、前記バイオマス燃料が所定の燃焼カロリーとなるように予め設定された割合で混練されてもよい。
【0014】
上記構成において、前記複数種類の炭化物に加水する工程と、前記バイオマス燃料に水を散布する工程との少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。
【0021】
本開示に係るバイオマス燃料製造システムは、上記構成に係るバイオマス燃料の製造方法を実行可能なシステムである。
【0022】
上記構成において、バイオマス燃料システムが、自走移動可能な車両に搭載されていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本開示に係るバイオマス燃料の製造方法及びバイオマス燃料製造システムによれば、未利用系のバイオマス原料や廃棄物系のバイオマス原料から、従来に比べて使いやすいバイオマス燃料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本開示に係るバイオマス燃料の製造方法に使用する熱分解炭化処理装置の構成を説明するための模式図である。
【
図2】
図2は、熱分解炭化処理装置の外観を示す正面図である。
【
図3】
図3は、燃焼室の構成を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、熱流路の構成を一側面上方側からみた斜視図である。
【
図5】
図5は、熱流路の構成を他側面下方側からみた斜視図である。
【
図6】
図6は、炭化室の正面側を除いた五側面に形成された各熱流路の構成を示す模式展開図である。
【
図7】
図7は、エジェクタの構成一部を破断して示した一部断面模式図である。
【
図8】
図8は、熱分解炭化処理装置の平断面図である。
【
図9】
図9は、炭化トレイを炭化室に装入設置した状態を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、炭化トレイの構成を説明するための図である。
【
図11】
図11は、炭化室を炭化炉ケースへ収容するための載置構造の斜視図である。
【
図12】
図12は、炭化室を炭化炉ケースへ収容するための載置構造の側面図である。
【
図13】
図13は、熱分解炭化処理装置の炭化処理車両への搭載を説明するための図である。
【
図14】
図14は、熱分解炭化処理装置を搭載した炭化処理車両の側面図である。
【
図15】
図15は、炭化室内部におけるガスの対流を説明するための図である。
【
図16】
図16は、バイオマス燃料の製造方法概要を説明するための模式図である。
【
図17】
図17は、バイオマス燃料製造装置の構成例を説明するための図である。
【
図18】
図18は、バイオマス燃料製造装置の別の構成例を説明するための図である。
【
図20】
図20は、制御装置による熱分解炭化処理制御時の炭化室温度の時間変化の例を示す図である。
【
図21】
図21は、過熱水蒸気と熱風の保有熱量を比較した図である。
【
図22】
図22は、制御装置が行う燃焼制御モードの概要を説明するための図である。
【
図23】
図23は、制御装置による圧力センサの利用例を説明するための図である。
【
図24】
図24は、制御装置による熱分解炭化処理の流れの例を示すフローチャートである。
【
図25】
図25は、制御装置による熱分解炭化処理の流れの例を示すフローチャートである(その2)。
【
図26】
図26は、制御装置による熱分解炭化処理の流れの例を示すフローチャートである(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係るバイオマス燃料の製造方法及びバイオマス燃料製造システムについて説明する。
図1は、本実施形態に係るバイオマス燃料の製造方法に使用する熱分解炭化処理装置100の構成を説明するための模式図である。
図2は、熱分解炭化処理装置100の外観例を示す正面図である。
図4は、熱分解炭化処理装置100の炭化室2を取り囲んで設けられた熱流路4の構成を一側面上方側からみた斜視図であり、
図5は、熱流路4の構成を他側面下方側からみた斜視図である。
【0026】
<熱分解炭化処理装置の構成概要>
図1及び
図2に示すように、熱分解炭化処理装置100は、中央部に設けられた燃焼室6と、燃焼室6の両側に設けられた2つの炭化室2、2’とを備える。燃焼室6は熱風を発生させる。炭化室2、2’は、熱風が流通する熱流路層3、3’によって、正面を除いた外周を囲まれている。熱分解炭化処理装置100は、燃焼室6で発生した熱風を熱流路層3、3’全域に亘って送風循環させる。炭化室2、2’内に収容した炭化処理対象物は、炭化室2、2’の外部から間接的に加熱される。また、炭化処理対象物は、炭化室2、2’の内部に発生した水蒸気等の輻射熱によって加熱される。加熱された炭化処理対象物は熱分解されて炭化される。
【0027】
以下、左右対称の構造を有する2つの炭化室2、2’と、各炭化室2、2’に対応して設けられた熱流路層3、3’、熱流路4、4’等の各構成については、一方の炭化室2を中心に説明を行って、他方の炭化室2’については説明を省略する場合がある。本実施形態に記載する熱風とは、炭化室2を加熱するために燃焼室6で発生させて熱流路層3を流通させる高温のガスである。このようなガスは、高温ガス、燃焼ガス、熱ガス等の別の称呼で呼ばれることもあるが、本実施形態では、単に熱風と記載する。また、炭化処理対象物を収容した炭化室2を加熱した際に、炭化室2内部で発生するガスは、水蒸気以外に複数種類の成分を含む場合がある。以下、炭化室2内で発生したガスを、水蒸気と乾留ガスに分けて説明する場合と、単に乾留ガスと記載する場合とがある。
【0028】
熱流路層3には、
図4に示すように、ジグザグ構造の熱流路4が形成されている。炭化室2の外周で、熱流路4に沿って熱風を規則的に流通させて、熱エネルギーを効果的かつ効率よく炭化室2内部の炭化処理対象物に伝熱することができる。熱流路層3は、冷風を流通させることで、炭化室2の冷却にも利用することもできる。
【0029】
熱風や冷風といった気体(流体)が炭化室2へ与える様々な影響、例えば熱交換に伴う炭化室2側壁の熱膨張や熱斑、伝熱効率、熱流路4内を流通する流体の流速等を加味して、複数の隔壁41を、炭化室2の外周に一定の規則性に従って配設することで、ジグザグ構造の熱流路4a、4bが形成されている。
【0030】
ジグザグ構造の熱流路4a、4b内を熱風が流通することにより、熱風の熱エネルギーが炭化室2、2’内部の炭化処理対象物に効果的かつ効率よく伝わる。これにより、炭化処理速度や固定炭素率といった炭化装置としての熱分解炭化処理装置100の性能を飛躍的に向上させている。
【0031】
ジグザグ構造の熱流路4a、4bに冷風を流通させて、高温状態にある炭化室2を急速冷却すれば、炭化室2、2’の熱斑に起因する歪や劣化を防止しつつ、炭化室2、2’側壁の均一な熱収縮を実現することができる。
【0032】
このように、間接加熱方式の熱分解炭化処理装置100は、熱媒流体又は冷媒流体との間で加熱又は冷却といった熱交換時の熱交換率を飛躍的に向上させる熱流路4a、4bを、炭化室2に対して一定の規則性に従って備えることで、熱交換時に発生する弊害を防止している。
【0033】
炭化室2は、
図4、
図5等に示すように、前面側にフランジ2iが設けられた箱型形状を有する。炭化室2は、炭化室2と相似形の炭化炉ケース1内に収容されている。
【0034】
炭化炉ケース1と炭化室2とは入れ子構造で配設される。炭化炉ケース1の内側面と、炭化室2の炭化処理対象物出入口2f側を除いた外周五側面との間に、外気と遮断するように炭化室2の外周を外側板3aで閉塞して熱流路層3が形成されている。この熱流路層3に、ジグザグ構造の熱流路4が形成される。
【0035】
図1及び
図8に示すように、炭化炉ケース1と、その内部に入れ子構造で収容した炭化室2との間、すなわち炭化炉ケース1の内側面と熱流路層3の外側板3aとの間に介在する形で、断熱空気層80が形成される。断熱空気層80は、炭化炉ケース1と、炭化室2の扉部12がある面及び底面を除いた他の周側面との間に介在して形成されている。
【0036】
図2及び
図8に示すように、炭化室2は、内部に炭化処理対象物を収容する空間を有する。炭化室2の正面側には、炭化処理対象物の炭化室2内部への装入と炭化室2内部からの回収とを可能とする炭化処理対象物出入口2fが形成されている。炭化室2は、正面開口である炭化処理対象物出入口2fに対応して、開閉自在に枢支された扉部12を有している。
【0037】
扉部12の内部には、
図8に示すように、セラミックウール等の断熱素材81が充填されている。具体的には、扉部12の内側に、シート状の断熱素材81であるセラミックウールが複数枚積層されて貫通ボルト等の固定部材によって固定されている。
【0038】
炭化室2は、
図1及び
図4に示すように、その一側面2aの後方上部に設けられた乾留ガス移送管7を介して、燃焼室6内と連通連設している。炭化室2内で発生した乾留ガスを、乾留ガス移送管7を介して燃焼室6内に還流して、高燃焼効率化を図っている。
【0039】
炭化室2の内部には、炭化処理対象物として、廃棄材木や、日用品のうち有機材料でできている廃棄物等を収容することができる。未利用系や廃棄物系の植物性のバイオマス原料が、炭化処理対象物として、炭化室2の内部に収容される。例えば、木質系のバイオマス原料が炭化室2の内部に収容される。炭化室2は、炭化処理対象物の収容機構90を、取り出し自在に内部に収容する。
【0040】
<燃焼室>
図3は、燃焼室6について説明するための模式図である。
図3(a)は、燃焼室6の全体構成を説明するための図である。
図3(b)は、燃焼室6内部における熱風の旋回流の発生状態を示す図である。
【0041】
燃焼室6は、
図1及び
図2に示すように、直方体形状を有し、2つの炭化室2の間に挟まれるように配設されている。熱分解炭化処理装置100を、炭化処理車両30に搭載する際には、車両左右方向に長い直方体形状を有する燃焼室6が、車両前後方向に並ぶ2つの炭化炉ケース1の間に配置される(
図14参照)。
【0042】
図3(a)に示すように、燃焼室6の前側壁6a略中央に、熱風生成用のバーナー61が設けられている。燃焼室6の上側壁6bの前部位置に、上側壁6bから燃焼室6内方にその一部が突出するように、乾留ガス移送管7、7’が設けられている。燃焼室6の上側壁6bの後部位置には、熱風供給路5である2つの熱風流入管5a、5a’と、上部で熱風流入管5a、5a’と連通する熱風送気部62とが配設されている。燃焼室6の後部位置で、熱風送気部62の後方に、混焼部63が形成されている。燃焼室6の外周は、
図1に示すように、耐熱性壁体64で取り囲まれている。耐熱性壁体64は、耐火煙瓦やセラミックウール等の耐火材料で構成されている。
【0043】
バーナー61の燃料には、例えば灯油ガスが用いられる。バーナー61が、燃焼室6の内部で燃焼室6の後側壁6cに向かう火炎を噴射し、灯油ガス、移送空気等を燃焼加熱して、熱風が発生する。
【0044】
図3に示す符号7c、7c’は 燃焼室6の前部位置で燃焼室6内部に突出した乾留ガス移送管7、7’の先端開口部を示している。一対の乾留ガス移送管7、7’の先端開口部7c、7c’は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、乾留ガス移送管7、7’から燃焼室6内部へ噴出供給される乾留ガスや燃焼用空気が、左右の側壁6d、6d’に斜め方向に突き当たると共に、バーナー61の火炎噴射方向両側に沿って互いに回転方向を違える2つの旋回流を発生させるように配設されている。
【0045】
混焼部63は、熱風送気部62の後方で、燃焼室6の後側壁6c、上下側壁6b、6e及び左右側壁6d、6d’で囲まれる所定空間として設けられている。
【0046】
熱風送気部62は、燃焼室6の上側壁6bの後部位置から上方に向けて突設された所定空間を有する箱型部材である。熱風送気部62は下面で燃焼室6と連通している。熱風送気部62の上部に、2つの熱風流入管5a、5a’が連設されている。
【0047】
このように燃焼室6を構成することにより、互いに旋回方向を違えた乾留ガスと燃焼空気とからなる2つの旋回流は、負圧となる中心部に更なる乾留ガスや燃焼空気を引き込みつつ、バーナー61の火炎噴射方向に沿って燃焼しながら混焼部63に移動する。
【0048】
混焼部63では、移動してきた旋回流が、燃焼室6の後側壁6cや左右側壁6d、6d’に突き当たって乱流状態となることで、混焼が促進され、乾留ガスを完全燃焼して高温の熱風を生起することを可能としている。
【0049】
この熱風は、いったん燃焼室6の上側壁6b後部の熱風送気部62内に一定量が吹き溜まり、一時的に滞留する。熱風送気部62の熱風は、2つの熱風流入管5a、5a’に流入する。熱風が熱風送気部62に滞留することで、燃焼室6の内圧や熱が略均一化されて、それぞれの熱風流入管5a、5a’に流入する熱風の分流量の割合が略一定となる。
【0050】
このように、燃焼室6は、比較的小型でシンプルな構造を有しつつも、乾留ガスの燃焼効率を飛躍的に向上させて高温の熱風を生起することを可能としている。例えば、本実施形態の一態様に係る燃焼室6は、内部容積が約0.71m3となるように設計されるが、上述の構成を備えることで、燃焼室6を大型化することなく、効果的な高温の熱風生起を可能としている。
【0051】
燃焼室6は、熱風流入管5a、5a’を介して、炭化室2、2’の外周に形成された熱流路4、4’と連通連設している。燃焼室6で生成した熱風は、熱風流入管5a 、5a’を介して、炭化室2、2’の外周に形成された熱流路4、4’に流入して循環する。熱風は、炭化室2、2’と熱交換をしながら循環して、熱風排出路10である排出管10a、10a’を通じて煙突10b、10b’から装置外へ排出される。
【0052】
<熱流路>
図6は、2つの熱流路4a、4b’における熱風の流通を説明するための展開図である。熱流路4は、
図4~
図6に示すように、外気と遮断された熱流路層3において、炭化室2外周の五側面にそれぞれジグザグ構造に形成されている。五側面のうち三側面のジグザグ構造の熱流路4が、一本に連続した第1流路4aを形成している。同様に、他の二側面のジグザグ構造の熱流路4が、一本に連続した第2流路4bを形成している。
【0053】
図4に示すように、第1流路4aの始端と第2流路4bの始端とが、炭化室2の一側面2aに開口した、燃焼室6からの熱風供給路5の終端開口部5bに連通して合流する。
図5に示すように、第1流路4aの終端と第2流路4bの終端とは、終端開口部5bが設けられた一側面2aとは別の一側面2cに設けられた熱風排出路10の始端開口部10cに連通して合流する。側面2cは、炭化室2において側面2aと反対側の側面である。第1流路4a及び第2流路4bは、それぞれが、板形状を有する複数の隔壁41で流路が区画されたジグザグ構造を有する。
【0054】
例えば、内部容積が略4m3の炭化室2の五側面それぞれに対応する略2m四方の領域をジグザグ状に区画して形成される第1流路4aの流路長と第2流路4bの流路長との合計は、略60mとなる。
【0055】
炭化室2の外周面に複数の隔壁41を立設して炭化室2の外方をジグザグ形状に区画する。この区画された流路が熱流路4となる。
図4~
図6に示すように、熱流路4を、外側板3aにより外気と遮断して熱流路層3が形成される。
【0056】
第1流路4aと第2流路4bとは、
図4に示すように、熱風流入管5aの終端開口部5bを略半分にする位置で、炭化室2の一側面2aに設けた分流壁40により区画される。終端開口部5bは、一側面2aの上下方向中央部よりも上方に設けられている。
【0057】
分流壁40は、燃焼室6から送られてくる熱風を、第1流路4aと第2流路4bとに分流する部位である。分流壁40は、熱風流入管5aが設けられた炭化室2の一側面2aにおける背面2d側近傍の位置に設けられている。分流壁40は、熱風流入管5aの終端開口を略半分に分割する位置に上下方向に設けられている。板形状を有する分流壁40が、炭化室2の一側面2aの上端から下端にかけて連設されている。
【0058】
炭化室2外周の五側面の各熱流路4a、4bは、各側面上に所定間隔を隔てて複数の隔壁41を立設して、熱流路層3内に、形成されている。
【0059】
第1流路4aは、
図4~
図6に示すように、炭化室2の一側面2aに形成された第1流路上流部4a-1と、炭化室2の上面2bに形成された第1流路中流部4a-2と、炭化室2の他側面2cに形成された第1流路下流部4a-3とによって構成されている。
【0060】
第2流路4bは、炭化室2の背面2dに形成された第2流路上流部4b-1と、炭化室2の下面2eに形成された第2流路下流部4b-2とによって構成されている。第2流路4bの全長は第1流路4aより短い。
【0061】
第1流路4aを長流路、第2流路4bを短流路とすることで、炭化室2の外側五側面に形成した熱流路4の長さを可及的長く形成している。こうして各熱流路4a、4bの内部を流通する熱風の流通時間を引き延ばしつつも、熱風を2つの熱流路4a、4bに分流させることで、炭化室2内部との熱交換効率を向上させている。
【0062】
第1流路4a及び第2流路4bは各流路の始端と終端のみで連通している。すなわち、それぞれの上流端と下流端以外の位置では連通していない。
【0063】
第1流路4aと第2流路4bの終端は、
図5に示すように、炭化室2の分流壁40を設けた一側面2aと反対側の他側面2cで外側板3aに設けられた熱風排出路10である排出管10aの始端開口部10cで連通して合流する。
【0064】
すなわち、熱流路4は、最上流端に分流壁40による分流部を形成して2つの流路に分かれることで熱風の上流側と下流側の熱エネルギー差を可及的なくして熱斑の発生を制御すると共に、2つの流路の最下流端には排出管10aの始端開口部10cによる合流部を形成して一方の流路の熱風排出速度に応じて他方の流路の熱風を引き込むエジェクション効果を生起して、分流部にて各流路の体積に応じた熱風流入量を一定とすることを可能としている。
【0065】
燃焼室6で発生した高温の熱風は、炭化室2外周の五側面にそれぞれジグザグ構造に形成された第1流路4aと第2流路4bとを流通し、炭化室2と熱交換する。具体的には、燃焼室6に連通する熱風供給路である第1流路4a及び第2流路4bを介して、燃焼室6から導入される熱風の輻射熱によって、炭化室2内に収容された炭化処理対象物が加熱される。この結果、炭化処理対象物は、気化物と非気化物とに熱分解される。
【0066】
第1流路4a及び第2流路4bは、
図4~
図6に示すように、互いに一定間隔を保持して並設された多数の隔壁41間に熱単体流路42を多数平行に形成して成る。隣接する各熱単体流路42はそれぞれ始端と43と終端44においてのみ連通することで、ジグザグ構造の流路を形成している。
【0067】
炭化室2の五側面に立設する隔壁41は、長手が、炭化室2の各側面の幅よりも短く、短手が、炭化室2と炭化炉ケース1の間の幅と略同じ長さに形成された平板である。隔壁41の短手寸法は、炭化室2の外周側面と、該外周側面を閉塞する外側板3aとの間の寸法と略同一に設定される。炭化室2の五側面それぞれにおいて、複数の隔壁41を、上下、左右、前後のいずれかの一方向に互いにずらして、所定間隔を隔てて平行に配設することで、隣接する熱単体流路42同士の始端43や終端44が連通する。具体的には、上流側の熱単体流路42の終端44が、隣接する下流側の熱単体流路42の始端と連通するように、隔壁41が配置されている。本実施形態の一態様に係る隔壁41は、隣接する隔壁41の間隔、すなわち熱単体流路42の幅が、約200mmとなるように配設される。
【0068】
図6に示すように、炭化室2の一側面2a及び他側面2cでは、各熱単体流路42が、長手方向が上下方向(
図4のU及び
図5のD方向)となるように形成されている。複数の隔壁41を上下方向に交互にずらして、複数の熱単体流路42を多数平行して設けることで、ジグザグ構造の第1流路上流部4a-1及び第1流路下流部4a-3が形成されている。
【0069】
炭化室2の上面2bでは、各熱単体流路42が、第1流路上流部4a-1及び第1流路下流部4a-3の熱単体流路42の長手方向と直交する前後方向(
図4のF及び
図5のB方向)を長手方向にして形成されている。複数の隔壁41を前後方向に交互にずらして熱単体流路42を多数平行して設けることで、ジグザグ構造の第1流路中流部4a-2が形成されている。
【0070】
炭化室2の背面2dでは、流通する気体が、上部から下部にかけて左右方向(
図4のL及び
図5のR方向)にジグザグ状に降下するように、熱単体流路42が多数平行に形成されている。これらの熱単体流路42が、第2流路上流部4b-1を形成している。
【0071】
炭化室2の下面2eでは、各熱単体流路42が、第2流路上流部4b-1の熱単体流路42の長手方向と直交する前後方向(
図4のF及び
図5のB方向)を長手方向にして形成されている。複数の隔壁41を前後方向に交互にずらして熱単体流路42を多数平行して設けることで、ジグザグ構造の第2流路下流部4b-2が形成されている。
【0072】
熱流路4は、炭化処理対象物の炭化処理後に炭化室2を冷却する冷却流路としても利用される。炭化室2の冷却は、バーナー61の燃焼を停止した後、送風機9a、9bとは別に設けられた冷却専用の送風機(空気ブロア)9cから供給される大容量の冷風を、熱風供給路5を介して熱流路4に流通させることによって行われる。
【0073】
図1に示すように、送風機9cは、炭化室2を強制冷却するための空気を供給する主力ブロアとして機能する。送風機9cは、冷却空気送管17を介して、熱風流入管5a、5a’の途中に形成された膨出形状部分で熱風流入管5a、5a’と連結されている。なお、冷却空気送管17には自動開閉バルブ17aが装着されており、炭化処理時には、制御装置15によって自動開閉バルブ17aが閉鎖状態に制御される。
【0074】
炭化処理後の冷風の流通により、熱流路4、4’備えた炭化室2、2’を強制空冷して、炭化室2の冷却時間を短縮することができる。
【0075】
このように、熱分解炭化処理装置100は、炭化処理の際には少ないエネルギー源で優れた炭化処理機能を実現しつつ、炭化処理後には冷却機能をも兼用できる流路構造を有する。これにより、熱分解炭化処理装置100のコンパクト化が可能となっている。熱分解炭化処理装置100は、1つの燃焼室6に対して2つの炭化室2、2’を備えることで、大容量の炭化処理対象物を一度に炭化処理することを可能としている。
【0076】
例えば、本実施形態の一態様に係る熱分解炭化処理装置100は、内部容積が約0.71m3の1つの燃焼室6と熱風供給路5を介して連通連接された、それぞれの内部容積(炭化室容積)が4m3の2つの炭化室2、2’を備える。
【0077】
熱風生成空間を小型化した燃焼室6であるにも拘わらず高温の熱風を生起すると共に、各炭化室2、2’が熱交換効率を飛躍的に向上させた構造とすることで、熱分解炭化処理装置100は、各炭化室2、2の内部に十分に熱を行き渡らせて炭化処理物を炭化することができる。
【0078】
<燃焼機構>
燃焼室6のバーナー61は、灯油ガスを燃料として燃焼し、熱流路4に熱風を供給することができる。燃焼室6のバーナー61は、炭化室2内の炭化処理対象物から熱分解時に発生する乾留ガスを燃料として燃焼し、熱流路4に熱風を供給することもできる。灯油ガス及び炭化処理対象物から熱分解時に発生する乾留ガスを燃料として発生させた熱風を熱流路4に供給することによって、炭化室2内部に収容された炭化対象物が間接加熱される。
【0079】
燃焼室6のバーナー61の基部は、
図1に示すように、灯油供給管14aを介して灯油タンク14と連通連接している。燃焼室6のバーナー61の基部は、燃焼空気送管13を介して燃焼用空気送風用の送風機(空気ブロア)9aと連通連設している。
【0080】
炭化室2、2’と燃焼室6とを連通する乾留ガス移送管7、7’の途中には、エジェクタ7b、7b’が配置されている。エジェクタ7b、7b’には、送風機(空気ブロア)9bからの燃焼用空気を駆動流として導入する燃焼空気送管16、16’が連結されている。エジェクタ7b、7b’には、炭化室2、2’内の水蒸気や乾留ガスを吸引流として導入する、上流側の乾留ガス移送管7、7’が連結される。エジェクタ7b、7b’には、燃焼用空気、乾留ガス等を混合した混合流を導出する、下流側の乾留ガス移送管7、7’が連結される。
図1及び
図7では、エジェクタ7b、7b’の下流側の乾留ガス移送管7、7’を、符号8、8’で示している。炭化室2内部の水蒸気及び乾留ガスがエジェクタ7b、7b’により吸引されて燃焼室6に導出される。
【0081】
燃焼空気送管13、灯油供給管14a、燃焼空気送管16、16’、乾留ガス移送管7、7’の中途部には、それぞれ自動開閉バルブ13a、14b、16a、16a’、7a、7a’が設けられている。これらの自動開閉バルブは、制御装置15によって制御される。
図1に示す符号15aはバーナー制御ユニット、Vは開閉バルブ、T1は燃焼室6の温度を検出する温度センサ、T2は熱流路4の温度を検出する温度センサ、T3は炭化室2の温度を検出する温度センサ、T4は炭化室2の内部圧力を検出する圧力センサである。
【0082】
燃焼室6で発生した高温の熱風は、
図4及び
図5に示すように、炭化室2外周の五側面に熱単体流路42を多数平行に形成して成る第1流路4a及び第2流路4bを、ジグザグ状に流通して炭化室2と熱交換する。
【0083】
<エジェクタ>
図7は、エジェクタ7b、7b’の一部を破断して示した一部断面模式図である。
図7に示すように、エジェクタ7b、7b’は、駆動部120と、駆動部120の外側から内部に挿入された吸引管130とを含む。
【0084】
駆動部120は、導入部121と、湾曲部122と、加速部123と、合流部124とを含む。導入部121は、下流に向けて内径断面積が漸次拡大している。導入部121は、送風機9bから送風される駆動流空気を導入する。湾曲部122は、導入部121の下流端に接続されている。湾曲部122は、湾曲した円管である。加速部123は、湾曲部122の下流端に接続されている。加速部123は、内径断面積が漸次縮小している。加速部123は、駆動流空気を加速する。合流部124は、加速部123の下流端に接続されている。合流部124は円管である。
【0085】
すなわち、上流から下流にかけて内径断面積が略一定の湾曲形状を有する湾曲部122の上流側に、上流から下流にかけて内径断面積が漸次拡大する導入部121が接続され、湾曲部122の下流側に、上流から下流にかけて内径断面積が漸次縮小する加速部123が接続されている。
【0086】
吸引管130は、その中心軸が、合流部124の中心軸と一致するように、駆動部120に固定して設けられている。吸引管130は、駆動部120の湾曲部122に固定されている。吸引管130は、加速部123の下流端の径に比して小さい径の円管である。吸引管130は、湾曲部122の径が大きい側、すなわち湾曲形状の外側部となる位置で、湾曲部122の外壁外側から内部に貫通している。湾曲部122の内部に挿入された吸引管130の先端開口は、加速部123の下流端よりも上流側の位置となっている。
【0087】
吸引管130は、エジェクタ7b、7b’より炭化室2、2’側にある乾留ガス移送管7、7’の配管である。吸引管130は、内径断面積が同一の円管である。吸引管130は、乾留ガス移送管7、7’のエジェクタ7b、7b’より上流側において、下流端となる位置にある。符号8、8’で示す合流部124は、乾留ガス移送管7、7のエジェクタ7b、7b’より下流側において、上流端となる位置にある。
【0088】
導入部121に、燃焼空気送管16、16’が接続されている。
図7に示すように、送風機9bから送られた空気F1が、燃焼空気送管16、16’を介して導入部121に流入する。流入した空気F1は、駆動流空気として機能する。駆動流空気は、湾曲部122から加速部123へと流れる。加速部123において、加速部123の内壁と吸引管130の先端部の外壁との間で駆動流空気が加速される。加速された駆動流空気の流れによって発生する減圧により、吸引管130の内部流体である乾留ガスF2が下流側に吸引される。駆動流空気と吸引された乾留ガスとが、合流部124で合流、混合されて、エジェクタ7b、7b’から下流側に吐出される。吐出された駆動流空気と乾留ガスを含む混合気体F3は、乾留ガス移送管7、7’を介して燃焼室6側へ流入する。
【0089】
エジェクタ7b、7b’は、チャンバ形状を有する。
図7に示すように、合流部124の内径d3は、吸引管130の内径d2よりも大きい(d3>d2)。導入部121の下流端の内径d4、すなわち湾曲部122の内径d4は、導入部121の上流端の内径d1より大きい(d4>d1)。加速部123の上流端の内径d4、すなわち湾曲部122の内径d4は、加速部123の下流端の内径d3、すなわち合流部124の内径d3より大きい(d4>d3)。合流部124の内径d3は、導入部121の上流端の内径d1よりも大きい(d3>d1)。
【0090】
導入部121、湾曲部122及び加速部123は、胃袋形状或いは卵型形状に類似するバッファ空間を形成している。これにより、駆動流空気が、合流部124の中心軸に対して直交する方向から或いは斜め方向から流入する場合であっても、加速部123に形成される、加速部123の内壁と吸引管130の外壁との間の加速領域PPで、加速される駆動流の流速を均一化することができる。
【0091】
エジェクタ7b、7b’では、駆動流の内側に吸引流が生成される。流速が均一化された駆動流は、吸引流の外周を包み込むようにして乾留ガスを吸引する。このため、送風能力が同じ送風機を利用する場合でも、従来に比べて大きな吸引力を得ることができる。さらに、渦流等の吸引流の乱れが発生しにくいため、圧力損失を小さくすることができると共に、安定した吸引流を得ることができる。
【0092】
なお、図示した湾曲部122は内径が同一の配管であるが、上流と下流の間の中間部で湾曲部122の内径を大きくしてもよい。例えば、上流端から中央部にかけて内径が大きくなる湾曲形状の配管にして、中央部から下流端にかけて内径が小さくなる湾曲形状の配管にしてもよい。図示した導入部121の内壁は、内径が直線状に増大或いは減少する形状となっているが、導入部121の内壁を、内径が曲線状に増大或いは減少する形状にしてもよい。このような断面曲線形状の内壁にすることで、駆動流の乱れがなくなり、加速部領域における流速を均一にすることができる。この場合、湾曲部122の内壁と加速部123の内壁との間を、滑らかな面で接続すればよい。同様に、図示した加速部123の内壁は、流れ方向において内径が直線状に変化する形状となっているが、加速部123の内壁を、内側に凸となるように、内径が曲線状に変化する形状にしてもよい。この場合、加速領域PPにおける加速がさらに促進される。
【0093】
エジェクタ7b、7b’は、簡易な構成で、送風機9bの送風能力に対する吸引力を従来に比べて大きくすることができる。エジェクタ7b、7b’によって均一な駆動流が形成されるため、安定した吸引流の流量制御を行うことができる。
【0094】
炭化処理対象物の熱分解後、冷却工程に移行して熱流路4を冷却流路として兼用する場合、乾留ガス移送管7、7’の管内で、乾留ガス中に含まれるタール分等の気化物が冷えて隅々に溜まる可能性がある。熱分解炭化処理装置100に、エジェクタ7b、7b’を適用することで、均一な駆動流が形成されて乾留ガスの吸引流が配管内をスムーズに流れるため、タール分等が溜まることを防止することができる。なお、エジェクタ7b、7b’は、逆流防止機能も有する。
【0095】
例えば、本実施形態の一態様に係る熱分解炭化処理装置100は、燃焼室容積を0.71m3とする極小燃焼室構造であるのに対し、炭化室容積は4m3×2=8m3と大きくすることができる。大量の乾留ガスが一挙に小さな燃焼室6に供給されると、完全燃焼せず、乾留ガス中に含まれる臭気成分や有害物質を分解することができない。これを避けるためには、乾留ガスの流量及び流速を高精度に制御する必要がある。エジェクタ7b、7b’の駆動流側及び乾留ガス側には、それぞれ自動開閉バルブ16a、16a’、7a、7a’が設けられ、開度調整が行われる。乾留ガスの発生量が炭化室2、2’の加熱と共に大きく変化する場合があり、乾留ガスの流量及び流速を迅速に制御する必要があるが、エジェクタ7b、7b’では、乾留ガスの吸引流が、湾曲しない直線状の円筒の配管内をスムーズに流れるため、乾留ガスの流量及び流速の迅速な制御が可能になる。乾留ガスの流量及び流速の制御は、制御装置15によって行われる。制御装置15は、炭化室2に設けた圧力センサT4によって、炭化室2における乾留ガスの発生量を検出し、検出結果に基づいて、各自動開閉バルブを制御する。
【0096】
乾留ガス移送管7の自動開閉バルブ7a、7a’は、乾留ガス移送管7、7’において燃焼空気送管16が連結されるエジェクタ7b、7b’の位置よりも上流側に設けられている。これにより、エジェクタ7b、7b’を介して燃焼室6へ供給される乾留ガスが過剰となることを防止している。
【0097】
<燃焼制御>
燃焼室6のバーナー61の燃焼制御は、熱分解炭化処理装置100の炭化装置本体11の外部に独立して設けた制御装置15によって行われる。制御装置15が備える液晶タッチパネル式のディスプレイに情報を表示しながら、燃焼制御が行われる。例えば、燃焼室6に配設した温度センサT1(望ましくはUVセンサ)からの情報が、制御装置15に内蔵されたバーナー制御ユニット15aを介して、ディスプレイに表示される。ディスプレイには、各センサT1~T4で得られた温度や圧力も表示される。
【0098】
燃焼室6への灯油ガスや乾留ガスの供給は、制御装置15によって、具体的には制御装置15に内蔵されたバーナー制御ユニット15aや図示しない炭化室制御ユニットによって、自動調整される。炭化室2の温度上昇に伴って発生する炭化室2内部の乾留ガスの量に応じて、燃焼室6への灯油ガスや乾留ガスの供給量が自動調整される。制御装置15は、開閉バルブVから開閉状況を示す情報を取得し、燃焼室6の温度を検出する温度センサT1、熱流路4の温度を検出する温度センサT2及び炭化室2の温度を検出する温度センサT3から各温度を示す情報を取得し、炭化室2内部の圧力を検出する圧力センサT4から圧力を示す情報を取得する。制御装置15は、取得した各情報に基づいて、空気やガスの流量を調整するために、各自動開閉バルブの開閉量を制御する。
【0099】
制御装置15は、バーナー61の燃焼出力及び炭化室2の温度が、それぞれについて予め設定された値又は範囲となるように、燃焼室6への灯油ガスや乾留ガスの供給量を調整する。例えば、制御装置15は、バーナー61の燃焼出力を40000kcl/h~500000kcl/h、炭化室2の温度を1000度以下として、燃焼室6への灯油ガスや乾留ガスの供給量を自動制御することができる。制御装置15による自動制御によって、炭化室2内部に収容された炭化処理対象物を、無酸素又は低酸素状態で炭化すると共に、高熱炭化から、半炭化又は低温炭化まで、炭化方法を自在に制御できるようになっている。なお、本実施形態に数値で記載する温度の単位は摂氏温度である。
【0100】
熱分解炭化処理装置100の燃焼室6の燃焼機構は、制御装置15を利用して、各種センサT1~T4から得られる燃焼室6及び炭化室2、2’の情報に基づいて、制御される。これにより、炭化処理作業中の不意の事故の回避、低燃費化、作業負担の軽減を実現すると共に、効率的で安定した炭化処理作業を実現可能としている。制御の具体例については後述する。
【0101】
<収容機構>
熱分解炭化処理装置100は、炭化室2の内部に炭化処理対象物を直接挿入して炭化できるように構成されている。これに加えて、熱分解炭化処理装置100は、
図2、
図8及び
図9に示すように、炭化処理対象物の収容機構90として利用する炭化トレイ20に炭化処理対象物を収容し、炭化トレイ20を炭化室2内部に収容して炭化処理対象物の炭化を行うことも可能となっている。
【0102】
図2、
図8及び
図9に示すように、炭化トレイ20は、複数を上下方向に積み重ねて炭化室2の内部に収容することができる。炭化トレイ20は、上方が開放された略箱型形状を有する。炭化トレイ20は、上面及び下面が炭化室2の内部空間よりやや小さい方形状で、複数段に積み重ねて炭化室2の内部空間に収容可能なサイズに構成されている。例えば、3つの炭化トレイ20を上下方向に積み重ねて炭化トレイ20に収容できるようになっている。ただし、積層可能な炭化トレイ20の数は2つであってもよいし4つ以上であってもよい。
【0103】
炭化トレイ20は例えば金属材料で構成されている。
図10に示すように、炭化トレイ20は、4本の脚部フレーム20dに、箱型形状を形成するための複数の箱部フレーム20cを組み付けて形成されている。炭化トレイ20の側方4側面には、周壁部を形成する複数の網状部材20aが、脚部フレーム20d及び箱部フレーム20cに固定されている。例えば、金網やパンチングメタルが網状部材20aとして利用される。炭化トレイ20の底面20eは、薄板形状の平板で構成されている。ただし、底面20eが、側面同様に箱部フレーム20cと網状部材20aで構成されていてもよい。例えば、網状部材20aを含む底面に、上方から薄板平板を重ねて使用できるようにして、炭化処理対象物の種類に応じて、薄板平板を使用するか使用しないかを決めるようにすればよい。
【0104】
4本の脚部フレーム20dそれぞれの下端には、炭化トレイ20を上下方向に積み重ねるために利用するガイド部20bが設けられている。ガイド部20bは、炭化トレイ20の底面よりも下方となる位置で、脚部フレーム20dに固定されている。
【0105】
ガイド部20bは、略錐台形状の外形を有する。
図10には、四角錐台形状のガイド部20bを示しているが、ガイド部20bが五角錐台形状や六角錐台形状であってもよいし、円錐台形状であってもよい。
図10の断面模式図に示すように、ガイド部20bは、上面及び側面が金属板によって形成される一方で底面は開放されている。
【0106】
ガイド部20bは、開放された下面側から、別の炭化トレイ20の脚部フレーム20dの上端を内部に挿入して、脚部フレーム20dの上面略全体が、ガイド部20bの内側上面に接触可能な形状に構成されている。例えば、
図10に示す例では、水平方向に切断して現れる横断面が略正方形となる四角錐台形状のガイド部20bは、内側上面の幅d12が、同じく横断面が略正方形の略四角柱形状を有する脚部フレーム20dの幅d11と同じか僅かに大きく、下面の幅d13は上面の幅d12よりさらに大きくなっている(d11≦d12<d13)。
【0107】
脚部フレーム20dは、その上側部分が、箱部フレーム20cと網状部材20aから成る箱部から上方に突出している。脚部フレーム20dの下端に設けられたガイド部20bは、箱部から下方に突出するように設けられている。すなわち、炭化トレイ20は、箱部フレーム20cと網状部材20aから成り炭化処理対象物を収容する箱部の上面からさらに上方に延びる脚部フレーム20dを有し、箱部の下面よりさらに下方にガイド部20bを有する。これにより、ガイド部20bの底面側から内部に、別の炭化トレイ20の脚部フレーム20dの上端部分を挿入して、炭化トレイ20を上下方向に積層できるようになっている。
【0108】
炭化トレイ20を上下方向に積層する際、下側の炭化トレイ20の脚部フレーム20d上端を、それぞれに対応する上側の炭化トレイ20のガイド部20b内に装入すると、錐台形状を有するガイド部20bによって、上側の炭化トレイ20の位置がガイドされる。これにより、上側の炭化トレイ20と下側の炭化トレイ20の位置が水平方向にずれている場合でも、積層後には、上下の炭化トレイ20の脚部フレーム20dが略同一直線上となる位置関係で炭化トレイ20が積層される。
【0109】
図2及び
図9に示すように、一部が箱部上面より上方に突出した脚部フレーム20dと、箱部下面より下方に設けられたガイド部20bとによって、複数の炭化トレイ20を積層した際、上下段の炭化トレイ20の間に空間Sが形成される。この空間Sは、フォークリフトのリフト爪を抜き差し可能な大きさとなっている。また、積層後の最上段の炭化トレイ20の脚部フレーム20d上端と、炭化室2の内側上面との間には、ガイド部20bの高さを超える寸法の隙間ができる。これにより、フォークリフトを利用して、複数の炭化トレイ20を炭化室2内に積み重ねて収容したり、炭化室2から炭化トレイ20を取り出したりすることができる。
【0110】
炭化トレイ20を利用することで、炭化室2内において、炭化トレイ20に任意に不整列に積層収容した不定形状の炭化処理対象物に、可及的均一迅速にかつ万遍なく輻射熱が照射される。また、炭化処理対象物の間隙を熱風ガス(乾留ガス)が効率よく流通して、不定形状の炭化処理対象物の全体面に、可及的に熱風を接触させ炭化処理を効率よく行うことができる。
【0111】
<車両搭載>
熱分解炭化処理装置100は、炭化処理車両30に搭載することができる。
図11は、炭化室2を炭化炉ケース1へ収容するための載置構造を示す斜視図である。
図12は、載置構造の側面図である。
図13(a)は、熱分解炭化処理装置100を搭載する前のトレーラ31及びトラクタ32を示す斜視図である。
図13(b)は、熱分解炭化処理装置100を搭載した炭化処理車両30を示す斜視図である。
図14は、熱分解炭化処理装置100を搭載した炭化処理車両30の側面図である。
【0112】
熱分解炭化処理装置100の炭化装置本体11は、
図13(b)に示すように、炭化室2、2’の正面及び背面を車両左右方向に向けて、トレーラ31上に積載される。トラクタ32によってトレーラ31を牽引して、熱分解炭化処理装置100を移動することができる。
【0113】
2つの炭化装置本体11と、炭化装置本体11の間に配設された燃焼室6とが、トレーラ31のシャーシ33上に配設搭載される。トラクタ32とトレーラ31から成る炭化処理車両30は、トラクタ32によってトレーラ31を牽引して移動する。
【0114】
炭化装置本体11は、炭化炉ケース1及び炭化室2を含む。
図11及び
図12に示すように、炭化室2底面の所定箇所、例えば下方に敷設するレール34、34’に対応する4か所の位置に、支持突起21、21’が突設されている。炭化室2は、炭化炉ケース1底部に敷設されたレール34、34’上に載置可能に構成されている。
【0115】
炭化室2の支持突起21、21’は、レール34、34’に穿設された突起支持孔34a、34a’に一定のクリアランスを保持して遊嵌できるように構成されている。炭化室2は、熱膨張による構成部材の伸縮から生じる変形変位を、支持突起21、21’と突起支持孔34a、34a’のクリアランスで吸収できるように構成されている。
【0116】
より具体的には、炭化炉ケース1の底部に、所定間隔を隔てて平行に一対のH鋼35、35’が敷設されており、レール34、34’の両側面とH鋼35、35’の上側面との間に支持片35aが当接溶着されている。
【0117】
レール34、34’は、
図11に示すように、炭化炉ケース1の底部に所定間隔を隔てて平行に敷設された一対のH鋼35、35’の上面に配設されている。
【0118】
炭化室2、2’の底面下側に形成された熱流路層3、3’の、略四角形の底板の略左右端近傍に、所定間隔を隔てて方形状の4つの支持突起21、21’が突設されている。
【0119】
一対のレール34、34’の上面には、炭化室2、2’底面に設けた支持突起21、21’と嵌合する位置に合わせて、支持突起21、21’よりも一回り大きい方形状溝である突起支持孔34a、34a’が穿設されている。突起支持孔34a、34a’は、それぞれのレール34、34’に2つずつ穿設されている。
【0120】
レール34、34’の各突起支持孔34a、34a’に対して、炭化室2、2’底面の各支持突起21、21’を遊嵌して、炭化室2、2’をレール34、34’上に載置した際に、支持突起21と突起支持孔34aとの間に所定のクリアランスが形成される。突起支持孔34aと支持突起21との間の空間には断熱性の不織布、例えばセラミックウール等を敷き詰めてもよい。
【0121】
例えば、支持突起21、21’は、水平断面積約9cm2、奥行長さ約3cmに形成され、突起支持孔34a、34a’は、水平断面積約25cm2、奥行長さ約5cmに形成されて、支持突起21を突起支持孔34aに遊嵌した際に、幅方向及び奥行方向に、所定のクリアランスを形成可能としている。
【0122】
このように炭化装置本体11を構成することにより、炭化室2、2’の熱膨張によって生ずる構成部材の伸縮を、突起支持孔34a、34a’と支持突起21、21’との間のクリアランスで吸収することを可能としている。
【0123】
炭化処理中に高温の熱風により炭化室2、2’の構成部材に熱膨張変形を生じて炭化室2、2’の構成枠が変形変位しても、上記構成によって炭化室2、2’の変位を吸収して炭化室2、2’の摺動を促し、熱分解炭化処理装置100の全体のひずみや構成部材の亀裂や熱損壊を防止することができる。この結果、燃焼室6からの熱風を遺漏することなく有効に利用して熱エネルギーを最大限に活用した炭化処理対象物の熱分解炭化処理装置100とすることができる。
【0124】
図13(b)及び
図14に示すように、炭化処理車両30は、炭化装置本体11をトレーラ31に積載する際に、車載用のトレーラ31のシャーシ33に対する2つの炭化装置本体11の各部材及び構造セクションの重量負荷を可及的に軽減する重量配分となるように構成されている。
【0125】
図14に示すように、トレーラ31のシャーシ33の後半部33bは、前半部33aよりやや下方位置に形成されている。シャーシ33の後半部33bには、2つの炭化装置本体11、11’が車両前後方向に配設され、その間に燃焼室6が介設される。シャーシ33の前半部33aには、熱分解炭化処理装置100の操作及び作動に関連する付属関連部材91が配設される。
【0126】
例えば、制御装置15を含む操作制御装置19、発電装置18、灯油タンク14、灯油ポンプ14cが、付属関連部材91として、シャーシ33の前半部33aに配設される。
【0127】
灯油タンク14は、バーナー61の火炎燃料となる灯油を貯溜している。灯油タンク14は、シャーシ33の前半部33aにおいて、トラクタ32側の右上面に配設される。
【0128】
シャーシ33の前半部33a上面の灯油タンク14の後方位置に、灯油タンク14に隣接して灯油ポンプ14cが配設され、さらにその後方位置に制御装置15を備えた操作制御装置19が配設される。
【0129】
灯油ポンプ14cは、制御装置15によって制御される。灯油ポンプ14cは、灯油タンク14から灯油供給管14aを介してバーナー61へ灯油を供給する。
【0130】
発電装置18は、灯油ポンプ14c、制御装置15、送風機9等に対して、動力源となる電気を生成供給する。発電装置18は、シャーシ33の前半部33aにおいて、トラクタ32側の左上面に配設される。
【0131】
シャーシ33の後半部33bの上面には、
図13(a)に示すように、車両前後方向に沿って、所定間隔を隔てて平行に2つの溝部が設けられている。溝部の深さより肉厚の厚い平板合板である一対のライナー36、36’が、前後方向に摺動可能に、溝部に嵌合して敷設されている。ライナー36、36’の車両前後方向の両端側近傍には、前後摺動幅を一定に規制するL字アングルが配設されている。
【0132】
レール34、34’を介して炭化炉ケース1に収容した炭化室2、すなわち炭化装置本体11と、その間に配設される燃焼室6とが、この一対のライナー36、36’を介して、トレーラ31のシャーシ33に搭載固定される。炭化装置本体11及び燃焼室6は、車両前後方向において、後輪31aに負荷される後軸重が最大荷重となる位置に、並べて搭載固定される。
【0133】
上述した構成とすることで、炭化装置本体11及び燃焼室6と、シャーシ33との間に所定の断熱空間を形成することができる。車両前後方向に揺れる振動をライナー36、36’が摺動吸収することによって、炭化装置本体11及び燃焼室6への振動負荷を軽減することができる。また、炭化装置本体11の各部材及び構造セクションの重量負荷を可及的に軽減することができる。
【0134】
シャーシ33の後半部33bにおいて、前半部33aより下位置で2つの炭化装置本体11の大重量負荷をかけることで、トラクタ32とトレーラ31との連結部分における重量負荷の軽減を図ることができる。この結果、トラクタ32とトレーラ31の間の牽引動力の伝達を可及的に円滑に行うことが可能となり、熱分解炭化処理装置100の路上走行移動に伴う牽引を支障なく行うことができる。
【0135】
トレーラ31とトラクタ32とを連結して炭化処理車両30全体を長大化させて路上走行を行う場合に、路上カーブのハンドリングに際し、シャーシ33の後半部33bでは前半部33aより下位置において2つの炭化装置本体11の重量負荷をかけているので、シャーシ33の最後尾が振れることを可及的に防止することが可能となり、より安全に走行することができる。
【0136】
シャーシ33の前半部33aに操作及び作動関係の付属関連部材91を配設することにより、装置の点検やメンテナンス作業が行い易い。前半部33aが後半部33bより高い位置にあるため、付属関連部材91が、路上走行時の路面の凹凸に伴う振動衝撃を直接に受けることがなく、計器類の誤作動や故障を可及的に防止することができる。
【0137】
<ベローズ>
炭化装置本体11、11’を炭化処理車両30に車載する場合、炭化装置本体11、11’それぞれに接続される熱風供給路5の配管に、それぞれベローズ110、110’が設けられる(
図1参照)。ベローズ110、110’は、蛇腹状の管形状を有する。ベローズ110、110’の形状が変形することにより、炭化装置本体11、11’の熱膨張、熱収縮によって発生する配管への応力を吸収することができる。ベローズ110、110’は、配管の軸方向の変形だけでなく、軸方向に垂直な方向へのずれも吸収することができる。熱分解炭化処理装置100では、温度上昇と冷却とが繰り返し行われるため、ベローズ110、110’の配置は特に有用である。例えば、複数のねじ穴を有するリング状のフランジをベローズ本体の両端に設けて、両端のフランジを、対応する配管と接続すればよい。
【0138】
配管の途中にベローズ110、110’を配置することによって、装置運転中の形状変形のみならず、装置の組立や車載時における位置ずれも吸収することができる。
【0139】
ベローズ110、110’を配置する位置は、熱風供給路5の配管に限定されず、必要に応じて各種の配管にベローズを設けてもよい。例えば、エジェクタ7b、7b’の入出力配管にベローズを設けてもよい。
【0140】
<炭化処理>
次に、熱分解炭化処理装置100を搭載した炭化処理車両30を使用して行われる炭化処理について説明する。
【0141】
熱分解炭化処理装置100を搭載した炭化処理車両30は、例えば複数の空の炭化トレイ20を積んで、炭化処理対象物の発生地を巡回する。炭化処理対象物には、植物性の未利用系バイオマス原料及び廃棄物系バイオマス原料が含まれる。木質系バイオマス原料、例えば木材の材部分を除く未利用の木質資源(バーク、枝状、草木類、竹、剪定枝、林地残材、植林の針葉樹、広葉樹、灌木、早生記樹としてのユーカリ、ポプラ、コヨウザン、チャンチンモドキ、センダン等、樹皮、建築廃材、稲わら、バガス、家畜用の敷き藁、野菜くず等)を、炭化トレイ20に収容する。木質系バイオマス原料は、廃棄物由来の砂や釘等の金属、植物本体の含有するシリカ等の含有量が少なく、リグニン含有量の高いものが望ましい。
【0142】
木質系バイオマス原料の収集後、2つの炭化室2、2’のうち少なくともいずれか一方に、木質系バイオマス原料を収容した1又は複数の炭化トレイ20を装入して扉部12、12’を閉じて炭化室2、2’を密閉する。炭化処理車両30に搭載した制御装置15によって燃焼室6のバーナー61を作動させる。制御装置15が備える液晶タッチパネル式のディスプレイに複数のスイッチが表示される。操作表示部として機能する制御装置15のディスプレイを操作して炭化処理を開始すると、バーナー61が自動で点火される。炭化処理開始直後、バーナー61は、灯油ガス燃料を利用して燃焼する。
【0143】
具体的には、制御装置15が、燃焼空気送管13の自動開閉バルブ13a及び灯油供給管14aの自動開閉バルブ14bを開放することで、送風機9aからの移送空気及び灯油タンク14からの灯油ガスがバーナー61に供給されて、燃焼室6内にバーナー61の火炎噴射が発生する。
【0144】
バーナー61の燃焼によって燃焼室6内に発生した熱風が熱流路4、4’を流れて、炭化室2、2’が外側から加熱されると、炭化室2、2’内部で乾留ガスが発生する。
【0145】
制御装置15は、送風機9bの燃焼空気送管16、16’の自動開閉バルブ16a、16a’を解放して、送風機9bからの移送空気を、エジェクタ7b、7b’を介して、乾留ガス移送管7、7’へ導入する。これにより、エジェクタ7b、7b’が機能して、炭化室2、2’内部で発生した乾留ガスが、乾留ガス移送管7、7’内に吸引されて、乾留ガスと燃焼用空気の混合気体が燃焼室6に供給される。
【0146】
扉部12、12’で密閉されて外気と遮断された炭化室2の内部は、炭化処理対象物の熱分解の進行に伴って、炭化室2、2’内部に残存していた酸素が消費されて、無酸素状態となる。
【0147】
制御装置15は、乾留ガスの燃焼室6への供給量に応じて、燃焼空気送管13の自動開閉バルブ13a及び灯油供給管14aの自動開閉バルブ14bを制御することによって、バーナー61への灯油ガスの供給量を調整する。例えば、乾留ガスが増加すると、自動開閉バルブ13a、14bを閉鎖方向に制御して、灯油ガスの供給量を減少させる。乾留ガスの発生量の検出は、制御装置15が、圧力センサT4を利用して、炭化室2、2’内の圧力を測定することによって行われる。
【0148】
炭化室2内部における乾留ガスの発生量が多くなると、制御装置15は、乾留ガス移送管7の自動開閉バルブ7aを閉鎖方向に絞ることにより、燃焼室6内への乾留ガスの過剰供給による不意の事故を防止する。一方、乾留ガスが不足した場合、制御装置15は、燃焼室6の温度低下を防止するため、灯油ガス燃料を供給してバーナー61を追加的に燃焼させて熱量を安定させる制御を実行する。制御装置15は、センサT1~T4を利用して検出した温度及び圧力を制御に利用する。
【0149】
制御装置15は、各センサT1~T4によって検出した燃焼室6及び炭化室2内部の温度情報や、炭化室2内部の圧力情報に基づいて、燃焼室6の燃焼カロリー及び各炭化室2、2’の温度が所定の値又は範囲となるように、乾留ガス及び灯油ガスの供給量を自動調節する。例えば、燃焼室6の燃焼カロリーを40000kcl/h~460000kcl/hの範囲内、各炭化室2、2’の温度を0度以上1000度以下の範囲内となるように、乾留ガス及び灯油ガスの供給量が自動調節される。
【0150】
炭化処理では、熱流路4、4’内の熱風と炭化室2、2’との間で、熱交換が行われる。燃焼室6で発生した熱風は、分流壁40によって第1流路4aと第2流路4bとに分流して熱流路4、4’内に流入する。第1流路4aに流入した熱風は、ジグザグ状の流路に沿って、炭化室2の一側面2a、上面2b、他側面2cを順次流通する。一方、第2流路4bに流入した熱風は、ジグザグ状の流路に沿って、炭化室2の背面2d、下面2eを順次流通する。第1流路4aを流れる熱風と第2流路4bを流れる熱風は、炭化室2の側面2cに設けられた排出管10aの始端開口部10cで合流して外部へ排出される。
【0151】
炭化室2、2’の各側面2a~2eに形成した第1流路4a及び第2流路4bによって、各側面2a~2eをジグザグ状に順になぞるようにして熱風が流通する。これにより、各側面2a~2eを均一な温度分布となるように加熱して熱斑の発生を制御することができる。
【0152】
より具体的には、
図6に示すように、送風機9a及び送風機9bによる付勢圧を受けて、第1流路4aを流通する熱風は、第1流路上流部4a-1を背面2d側から正面側に向けて上下ジグザグ状に流通して第1流路中流部4a-2に至る。続いて、第1流路中流部4a-2の熱風は、熱単体流路42を前後ジグザグ状に流通して、第1流路下流部4a-3に至る。
【0153】
第1流路中流部4a-2内の熱風の流通方向は、第1流路上流部4a-1内の流通方向と直交する方向である。具体的には、炭化室2の上面2bにおいて、第1流路上流部4a-1から右方向(
図5R方向)に流入した熱風は、流入方向と直交する後方向(
図5B方向)向きを変えて、第1流路中流部4a-2を流れ始める。このため、流路を形成する隔壁41と外側板3aとの間に僅かな隙間がある場合でも、第1流路中流部4a-2を流れる熱風が、第1流路上流部4a-1へ逆流し難くなっている。また、流路をジグザグ状にすることで、熱風が炭化室2の上面2bに沿って流れる時間を長くすることができる。
【0154】
第1流路中流部4a-2から第1流路下流部4a-3に至った熱風は、第1流路上流部4a-1とは逆に、正面側から背面2d側へ向けて、第1流路下流部4a-3をジグザグ状に上下流通して排出管10aに至る。
【0155】
送風機9a及び送風機9bによる付勢圧を受けて第2流路上流部4b-1を流通する熱風は、上面2b側から下面2e側に向けて、左右ジグザグ状に降下流通して第2流路下流部4b-2に至る。続いて、第2流路下流部4b-2の熱風は、熱単体流路42を前後ジグザグ状に流通して、第1流路下流部4a-3に至る。
【0156】
第2流路下流部4b-2内の熱風の流通方向は、第2流路上流部4b-1内の流通方向と直交する方向である。このため、上述した上面2bの場合と同様に、熱風が炭化室2の下面2eに沿って流れる時間を長くすると共に、熱風が第2流路上流部4b-1へ逆流することが防止される。
【0157】
各熱流路4を形成する各隔壁41が、熱風との接触面積を拡大して、炭化室2、2’の各側面に熱伝導しているだけでなく、各熱単体流路42の始端43や終端44の隔壁41端部がフィンとして機能することで熱流路4内の熱風の旋回流を生起し、熱風と炭化室2との熱交換率を飛躍的に上昇させて、炭化室2内部に向けた輻射熱エネルギーを向上している。
【0158】
熱風が各熱流路4a、4b’を順次流通することにより、扉部12で密閉された炭化室2、2’の六側面に僅かな温度差が生ずる。
図15(a)は、炭化室2内部における熱ガス対流の側面図を示し、
図15(b)は、その正面図を示している。なお、熱ガスとは、高温の乾留ガスである。
【0159】
炭化室2、2’の六側面における温度関係は、例えば、(背面2d)≦(熱風供給路5が配設される一側面2a)>(下面2e)>(上面2b)>(熱風排出路10が配設される他側面2c)>(扉部12で炭化処理対象物出入口2fを閉鎖して形成される正面2g)の順となる。
【0160】
炭化室2の各側面の温度差によって、炭化室2内部に充満する乾留ガスの熱ガス対流現象が起こる。具体的には、比較的他よりも高温の下面2eで加熱された乾留ガスが、
図15(a)に示すように、炭化室2内部の側面視において、背面2d、上面2b、正面2g、下面2eの順に還流するように熱ガス対流が生ずる。また、
図15(b)に示すように、炭化室2内部の正面視において、乾留ガスが、一側面2a側、上面2b、他側面2c、下面2eへと還流するように熱ガス対流が生ずる。
【0161】
この対流現象によって、炭化トレイ20に任意に不整列に積層収容された不定形状の炭化処理対象物に、可及的均一かつ万遍なく輻射熱が照射される。また、炭化処理対象物の間隙を、熱ガス(乾留ガス)が効率よく流通して、炭化処理対象物の全面に可及的に熱風を接触させる。
【0162】
このように、炭化室2内部で乾留ガスの対流現象が起こることにより、炭化室2内部空間の温度分布が略均一になる。炭化トレイ20に収容された炭化処理対象物である木質系バイオマス原料は、炭化室2からの輻射熱と、炭化室2内の乾留ガスの対流熱とによって加熱され、熱分解が促進されて短時間で固定炭素率の高い炭化物となる。
【0163】
送風機9bの非稼働時には、炭化室2内において乾留ガスの自然対流が発生しやすい状態となり、送風機9bの稼働時には、乾留ガス吸引により熱ガスの強制対流が発生しやすい状態となる。
【0164】
炭化処理対象物の炭化処理終了後には、送風機9cを含む強制冷却機構を稼働させることによって炭化室2を急冷することで、炭化室2内部の炭化物を短時間で取り出すことを可能としている。
【0165】
<半炭化処理・低温炭化処理>
熱分解炭化処理装置100は、燃焼室6で生成した熱風と炭化室2、2’の内部空間との間の熱交換効率を飛躍的に上昇させる構造を有することで、熱風の有する熱エネルギーを最大限利用して、比較的低い熱エネルギーであっても短時間で安定して、かつ、高い固定炭素率の炭化物が得られる炭化処理を実現している。
【0166】
通常の木炭や竹炭を製造する場合は500度以上の熱で炭化処理が行われるが、熱分解炭化処理装置100では、制御装置15による自動制御によって、これよりも低い温度で炭化する半炭化処理又は低温炭化処理を行うことができる。低温で炭化処理を行うことで、低酸素又は無酸素で焼成が行われる。
【0167】
例えば、熱分解炭化処理装置100は、制御装置15による自動制御によって、炭化室2内の温度を300度~500度にして炭化処理を行うことができる。炭化室温度を、この温度帯に維持して炭化処理を行うと、エネルギー利用効率やコスト面で好ましい結果が得られやすい。例えば、木質系バイオマス原料を乾燥させながら、高温で炭化処理を行う場合に比べて10%~40%の単位発熱量の改善が実現され、熱損失も30%以下に押さえることができる。
【0168】
なお、500度以下、300~500度とした上記炭化室温度は一例であって、熱分解炭化処理装置100は、制御装置15による自動制御によって、炭化室温度を変更することができる。炭化室温度は、炭化室2の内部容積、バイオマス原料の種類、バイオマス原料から生成する炭化物であるバイオマス燃料の仕様、炭化処理の種類等に応じて適宜変更すればよい。
【0169】
例えば、バイオマス原料の種類や量によっては、250度~450度の炭化室温度に維持して炭化処理を行う方が、コスト面で好ましい結果が得られる場合もある。予め設定を準備することで、制御装置15は、設定に基づいて、炭化室2内部の温度が250~450度の温度範囲となるように炭化処理を制御することができる。
【0170】
熱分解炭化処理装置100によって、植物性のバイオマス原料である未利用の廃棄トウモロコシ芯を低温炭化処理して生成した炭化物の分析試験結果報告書の一例を示す。
分析項目(分析方法 JIS Z 73021-22009)
・高位発熱量 28670kJ/kg
・低位発熱量 27890kJ/kg
・炭素(無水ベース)84.5 %
・水分 5.2 %
・水素 2.99%
・揮発分 18.7 %
・灰分 3.8 %
【0171】
カロリー換算で通常の廃棄トウモロコシ芯の発熱量と比較すると、例えば通常の廃棄トウモロコシ芯の炭化物が14190kJ/kg程度であるのに対して、熱分解炭化処理装置100で生成した上記炭化物は約27890kJ/kgの値を示し、炭化率が高く、石炭やコークスと同等の発熱量を示す炭化物を生成できることを示している。
【0172】
小型化された熱分解炭化処理装置100は、炭化処理車両30に搭載して、未利用系や廃棄物系の植物性の木質系バイオマス原料を収集可能な場所に移動して、その場で炭化処理を行うことができる。また、熱分解炭化処理装置100は、半炭化処理又は低温炭化処理を実行する際に優れた熱交換効率を実現するように構成されている。熱分解炭化処理装置100を利用すれば、炭化処理対象物を収集して即時に炭化処理作業を行えるだけでなく、炭化処理に係る省エネルギー化及び省スペース化を実現すると共に、炭化処理対象物の減容化及び再エネルギー化を容易かつ低コストで実現することができる。
【0173】
熱分解炭化処理装置100を炭化処理車両30に搭載して利用することで、廃棄物の排出地を巡回しながら炭化処理を行うこともできる。例えば、木質系バイオマス原料を炭化トレイ20に収容した後、木質系バイオマス原料が排出される別の場所への移動を開始して、車両走行中に炭化処理を行うことができる。木質系バイオマス原料の回収作業の場所的な問題や、炭化処理作業の時間的な問題による影響を軽減して、バイオマス原料の炭化処理作業を行うことができる。
【0174】
なお、熱分解炭化処理装置100の利用方法は、炭化処理車両30に搭載して利用する方法に限定されず、所定の場所に設置固定して利用してもよい。例えば、剪定草木等の木質系バイオマス原料は比較的容易に搬送できるため、熱分解炭化処理装置100を所定場所への据置型として、バイオマス原料を熱分解炭化処理装置100の設置場所へ運んで処理するようにしてもよい。
【0175】
熱分解炭化処理装置100は、複数の炭化トレイ20を積み重ねて収容できるように構成されている。このため、例えば、木質系のバイオマス原料を炭化トレイ20に詰めて複数の場所から運び込まれた炭化トレイ20を炭化室2、2’に積層収容して、まとめて炭化処理を行うこともできる。
【0176】
例えば、幅及び奥行が120cm、高さが20cm程度の箱部に炭化処理対象物を収容し、2つの炭化室2、2’それぞれに、炭化トレイ20を3つ上下方向に積層して収容することができる。大型の炭化トレイ20を利用することで、炭化処理対象物を粉砕したり切断したりせずにそのまま炭化トレイ20に収容できる。このため、例えば、バークやイネ科植物のように粉砕が困難なもの、ピンチップのような不定形のもの、未粉砕の大きなものも、炭化トレイ20に収容して容易に炭化することができる。
【0177】
熱分解炭化処理装置100は、バイオマス原料の発生現場における木質系バイオマス原料の効果的な回収と、半炭化処理又は低温炭化処理とを実現して再資源化を図ると共に、木質系バイオマス原料により惹起される環境汚染の問題や、装置設置や炭化処理に要するエネルギー、木質系バイオマス原料の事前処理等のコストの問題を解消することができる。
【0178】
<燃料製造>
図16は、熱分解炭化処理装置100で得られた複数種類の炭化物からバイオマス燃料を製造する方法を説明するための模式図である。まず、熱分解炭化処理装置100を利用して、上述したように半炭化処理又は低温炭化処理を実行して、バイオマス原料から、複数種類の炭化物301、302を生成する(ステップS11)。例えば、熱分解炭化処理装置100の2つの炭化室2、2’それぞれに異なる種類のバイオマス原料を収容して、2種類の炭化物X及び炭化物Yを生成する。
【0179】
異なる種類のバイオマス原料が収容された2つの炭化トレイ20を、1つの炭化室2に収容して、同じ条件で炭化して、一方の炭化トレイ20と他方の炭化トレイ20とで異なる種類の炭化物を得るようにしてもよい。2つの炭化室2、2’それぞれに、同じバイオマス原料を収容して、炭化室2と炭化室2’とで炭化室温度や炭化時間等の条件を変更することで、異なる種類の炭化物を得るようにしてもよい。
図3に示すように燃焼室6と2つの炭化室2、2’は独立した熱風流入管5a、5a’で接続されているため、例えば熱風流入管5a、5a’の途中に自動開閉バルブを設けて熱風の流量を調節すれば、2つの炭化室2、2’で異なる炭化処理条件を実現することができる。熱分解炭化処理装置100で生成する炭化物の種類の数は特に限定されず、3種類以上の炭化物を生成し、これらを混連してバイオマス燃料を製造する態様であってもよいが、以下、2種類の炭化物301、302を例に説明を続ける。
【0180】
図16に示すように、熱分解炭化処理装置100で得られた複数種類の炭化物301、302を、バイオマス燃料製造装置200に投入して粉砕混練する(ステップS12)。複数種類の炭化物301、302は、それぞれの燃焼性能や含水率等に基づいて予め設定した所定の重量割合で混練すればよい。バイオマス燃料製造装置200は、粉砕混練した複数種類の炭化物301、302を所定形状に成型する(ステップS13)。こうして、所定形状を有するバイオマス燃料303が得られる。
【0181】
例えば、未利用系の植物性バイオマス原料を半炭化処理又は低温炭化処理して得られた炭化物301と、廃棄物系の植物性バイオマス原料を半炭化又は低温炭化処理して得られた炭化物302とが粉砕混錬されて、ペレット形状を有するバイオマス燃料303に圧縮成型される。
【0182】
同じ条件で炭化処理を行っても、バイオマス原料の種類によって、得られる炭化物の特性が異なる場合があるが、複数種類の炭化物を混練してバイオマス燃料を製造することで、所望の燃焼性能を有するバイオマス燃料とすることができる。例えば、燃焼カロリーが低く燃料としての利用に好ましくない炭化物となる場合でも、これを燃焼カロリーの高い炭化物と混練してバイオマス燃料を製造することで、所定の燃焼カロリーを有するバイオマス燃料を得ることができる。また、例えば、含水率や吸湿性の問題で燃料としての利用に好ましくない炭化物がある場合でも、これらの問題を解決可能な炭化物と混練してバイオマス燃料を製造することで、燃料として利用可能なバイオマス燃料とすることができる。燃焼性能、吸湿性、コスト、燃焼時間、臭い等が異なる複数種類の炭化物を、所定の重量割合で混練すれば、そのままでは燃料としての使用に支障があるような炭化物もバイオマス燃料にして再利用することができる。
【0183】
バイオマス燃料は、所定形状に成型される。バイオマス燃料の形状を、運搬のしやすさ、着火のしやすさ等を考慮して予め設定した所定形状とすることで、燃料としての取扱性を向上させることができる。
【0184】
熱分解炭化処理装置100が、炭化処理の対象とする未利用系のバイオマス原料の種類、及び廃棄系のバイオマス原料の種類は、特に限定されない。例えば、未利用系のバイオマス原料には、林業で発生する間伐材や剪定枝、農業で発生する稲わら、麦わら、籾がら、トウモロコシの芯や茎等が含まれる。廃棄物系のバイオマス原料には、製造業で廃棄物として排出された端材や木くず、食品業で廃棄物として排出された植物性の食品残渣等が含まれる。本や新聞紙等の紙類をバイオマス原料として利用してもよい。
【0185】
例えば、未利用系の木質系バイオマス原料を半炭化処理又は低温炭化処理して得られた炭化物301と、廃棄物系の植物性バイオマス原料を半炭化処理又は低温炭化処理して得られた炭化物302とを、1対1の重量割合で粉砕混錬してバイオマス燃料303を生成する。すなわち、同一重量の複数種類の炭化物を混練成型して、バイオマス燃料が生成される。
【0186】
バイオマス燃料製造装置200が粉砕、混練及び成型の全ての処理を行う態様に限定されず、一部の処理がバイオマス燃料製造装置200を用いずに行われる態様であってもよい。
【0187】
例えば、炭化物301、302の粉砕を事前に行って、バイオマス燃料製造装置200が炭化物301、302の混練及び圧縮成型のみを行う態様であってもよい。木質系バイオマス原料を半炭化処理又は低温炭化処理して得られる炭化物は大小の塊となるので、これを圧着ローラ等を利用する粉砕機で機械的に粉砕して小片とすればよい。
【0188】
バイオマス原料を炭化トレイ20に収容して、熱分解炭化処理装置100を用いて半炭化処理又は低温炭化処理して得られる炭化物は、例えば含水率が5%~8%程度の一定の小塊となるため、粉砕や混練を容易に行うことができる。
【0189】
例えば、スクリュウを回転させて混練と圧縮成型とを行うスクリュウ攪拌機を、バイオマス燃料製造装置200として利用する。例えば、フラットダイ式、リングダイ式等のペレタイザを、バイオマス燃料製造装置200として利用して、粉砕機で粉砕処理を終えた複数種類の炭化物からバイオマス燃料を製造してもよい。バイオマス燃料製造装置200の具体例については後述する。
【0190】
本実施形態の一態様に係るバイオマス燃料の製造方法では、半炭化処理又は低温炭化処理によって、未利用系の植物性の木質系バイオマス原料から生成した炭化物301と、廃棄物系の植物性バイオマス原料から生成した炭化物302とを5対5の重量割合で混錬する。ただし、重量割合は、木質系バイオマス原料の種類や炭化状態に応じて調整される。例えば、重量割合が5対5に設定された炭化物301と炭化物302を、6対4から4対6の間で重量割合を調整して混練してもよい。
【0191】
このように、未利用系や廃棄物系の植物性バイオマスの原料を、半炭化処理又は低温炭化処理によって炭化物にしてから粉砕混錬することで、バイオマス原料の欠点である収集時の嵩高さや高含水率の問題を解消することができる。例えば、ピンチップ状の端材や、イネ科の草木等についても、半炭化処理又は低温炭化処理によって炭化物にすることで粉砕しやすくなり、その後の取扱が容易になる。
【0192】
熱分解炭化処理装置100で得られた炭化物のみからバイオマス燃料を製造する態様に限定されず、熱分解炭化処理装置100で得られた炭化物に、他の原料を混練して、バイオマス燃料を製造してもよい。
【0193】
例えば、熱分解炭化処理装置100で半炭化処理又は低温炭化処理を行って得られた炭化物に、リサイクルが困難な古紙を原料として別装置で生成された高カロリーの固形燃料を混練して、バイオマス燃料を製造してもよい。古紙から生成する固形燃料には、インク、コーティング剤、接着剤等の影響で臭いがする、湿気や水分を吸収して燃焼性能が低下しやすい等の問題が生ずる場合がある。このような固形燃料を粉砕して、熱分解炭化処理装置100で木質系バイオマス原料から生成した炭化物と混練し、圧縮成型してバイオマス燃料とすれば、臭いや吸湿性の問題が軽減される。
【0194】
なお、バイオマス燃料を小型円柱形状のペレット状に成型する例を説明したが、バイオマス燃料の形状は特に限定されない。例えば、バイオマス燃料を、平板状の小型円盤形状にしてもよいし、粒形状、球状、炭団形状等にしてもよい。バイオマス燃料の形状は、燃料としての使用状況に応じて、適宜設定すればよい。
【0195】
バイオマス燃料は、製紙会社、バイオマス発電所、農業用ビニールハウス等の小規模施設で、ボイラーの燃料として使用されることが多い。木質系バイオマス原料から半炭化処理又は低温炭化処理で得られる炭化物は、上述のトウモロコシの例で示したように、他の炭化物に比べて高い発熱量を得ることができる。このような炭化物からバイオマス燃料を製造することで、熱効率が向上し、ボイラーの利用に係るコストを抑えることができる。
【0196】
世界的に燃料資源の枯渇化が叫ばれている昨今において、従来は廃棄するために多大の経費をかけていた未利用系・廃棄物系の植物性の木質系バイオマス原料を、半炭化処理又は低温炭化処理して、混錬成型技術によってバイオマス燃料として再利用することができれば、環境保全及び資源の有効活用が進み、世界的な再生可能なエネルギーの循環モデルとして、環境改善に寄与することができる。
【0197】
<燃料製造装置>
バイオマス燃料製造装置200の2つの具体例を説明する。
図17は、スクリュウ型の攪拌機400から成るバイオマス燃料製造装置200の例を説明するための図である。
図18及び
図19は、ペレット製造機210及びふるい機220から成るバイオマス燃料製造装置200の例を説明するための図である。
【0198】
図17(a)は、バイオマス燃料製造装置200を構成する攪拌機400の平面図を示し、
図17(b)はその側断面図を示している。
【0199】
攪拌機400は、複数種類の炭化物の粉砕、混練、圧縮、成型を行うことができる。攪拌機400は、複数種類の炭化物を粉砕する粉砕部と、粉砕した炭化物を混練する混練部と、混練した混合原料を加圧圧縮する圧縮部と、圧縮部で加圧圧縮した混練一体原料を所定形状に成型する成型部とを備える。
【0200】
図17(b)に示すように、攪拌機400の基枠最上部に、炭化物を投入する粉砕部として機能するホッパ部410が設けられている。ホッパ部410内には投入原料を粉砕混練するための撹拌羽根411が回転自在に収容されている。ホッパ部410の下方出口には、混練部として機能するスクリューコンベア421が設けられたコンベア通路420が設けられ、その下流側に圧縮部430が設けられている。圧縮部430には、加圧シリンダ431の作動により、粉砕混練された混合原料を連続圧縮するピストン(図示せず)が内蔵されている。ピストンの進出方向には、成型部440として機能する押出アダプタ441が設けられている。押出アダプタ441を取り替えて出口径のサイズを変更することにより、形状が異なる数パターンに成型できるようになっている。なお、攪拌機400の基枠の最下部には、各部を駆動制御する制御部450が設けられている。
【0201】
複数種類の炭化物を、予め設定された重量割合となるようにホッパ部410に投入すると、ホッパ部410の撹拌羽根411が回転して、各炭化物が粉砕される。撹拌羽根411は、ホッパ部410内に軸架した回転軸112に砕断刃として一定間隔で複数取付けられている。粉砕された原料はホッパ部410内で混練される。
【0202】
続いて、粉砕混練された混合原料が、スクリューコンベア421によりさらに混練されながらコンベア通路420を通過して下方の圧縮部430へ搬送され、加圧シリンダ431によって連続圧縮されて混練一体原料となる。圧縮圧力は、加圧シリンダ431の油圧調整によって変更される。油圧調整は、制御部450が駆動モータの回転と圧力バルブとを制御することによって行われる。調整可能な最大圧力は約100トンとなっている。
【0203】
混合原料が、コンベア通路420を通過しながら混練される工程では、スクリューコンベア421表面との摩擦熱が発生し、加圧シリンダ431による連続圧縮工程では混合原料自体から圧縮熱が発生するが、必要に応じて、これらの工程で水を散布可能な冷却装置を設け、混合原料に加水して温度を下げればよい。この場合、製造直後のバイオマス燃料は水分を含むことになるが、バイオマス燃料は炭化物から製造されるため、製造後に水分が蒸発して、燃料として利用可能な状態となる。
【0204】
図18に示すバイオマス燃料製造装置200は、熱分解炭化処理装置100で生成した炭化物を予め粉砕機で粉砕し、粉砕済みの複数種類の炭化物を混練成型してペレット形状のバイオマス燃料を製造する装置の例である。バイオマス燃料製造装置200は、フラットダイ型のペレット製造機210と、振動型のふるい機220とを含む。なお、
図18及び
図19には、各図に示す構成部の関係が分かるように、直交するX、Y、Zの3軸を示している。
【0205】
図18に示すように、ペレット製造機210は、ペレタイザ211と、ペレタイザ211を駆動するための駆動部213と、駆動部213による駆動力をペレタイザ211に伝達する伝達部214とを含む。ペレタイザ211、駆動部213及び伝達部214は、基台部212上に固定されている。モータを含む駆動部213による駆動力が、ベルトを含む伝達部214によってペレタイザ211に伝達されて、ペレタイザ211が動作する。
【0206】
ペレタイザ211は、粉砕済みの炭化物を投入するためのホッパ部211aを有する。ペレタイザ211の内部には、多数の孔が形成されたフラットダイと、投入原料を混練してフラットダイの孔に押し込んで圧縮成型する圧縮ローラとが設けられている。
【0207】
図19(a)に示すように、ホッパ部211aから複数種類の粉砕済の炭化物301、302を投入すると、ペレタイザ211の内部で、圧縮ローラが炭化物301、302を混練し、得られた混合原料を上方からフラットダイの孔に押し込むことによって、フラットダイを通過した混合原料がペレット形状に成型される。成型されたバイオマス燃料303は、ペレタイザ211から外部に排出される。バイオマス燃料303は、ペレタイザ211の側面開口部から斜め下方に延設された排出部211bの上面に沿って移動して、ふるい機220内部に落下する。このとき、ペレタイザ211から、ペレット形状のバイオマス燃料303に加えて、ペレット形状に成型されなかった、或いは成型後に崩れた混合原料304が排出される場合がある。
【0208】
ふるい機220は、
図18(a)に示すように、底面の一部領域にふるい網221aが設けられた本体部221を有する。ふるい機220は、本体部221をX軸方向に振動させて、ペレット形状のバイオマス燃料303と混合原料304とをふるいに掛けて分類する。本体部221は、上面が開放され、底面一部にふるい網221aが固定された箱型形状を有する。
【0209】
ふるい網221aは、ペレット形状のバイオマス燃料303は通過しない一方でバイオマス燃料303より小さい混合原料304は通過する網形状を有する。このため、
図19(b)の模式図に示すように、ペレット形状のバイオマス燃料303は本体部221内に残る一方で、混合原料304は、ふるい網221aを通過して、本体部221の底面から下方へ落下する。
【0210】
本体部221の下方には、ふるい網221aに対応して、箱型形状の回収部222が設けられている。このため、ふるい網221aを通過した混合原料304は、回収部222内に落下する。
【0211】
ふるい機220は、フレーム226と、一端側がフレーム226に支持されて他端側で本体部221及び回収部222を支持する複数の支持部材224と、フレーム226に固定された駆動部225と、駆動部225による駆動を本体部221及び回収部222に伝達するアーム部251とを含む。
【0212】
駆動部225による駆動が、アーム部251と、回収部222の下面外側に設けられた伝達部252とを介して、本体部221及び回収部222に伝達されて、本体部221及び回収部222が振動する。
【0213】
例えば、駆動部225に含まれるモータの回転運動が、アーム部251及び伝達部252を介して伝達される際に、本体部221及び回収部222の往復運動に変換されることによって、本体部221及び回収部222がX軸方向に振動する。
【0214】
図19(b)に矢印501で示すように、ふるい網221aの上面に残ったバイオマス燃料303は、振動に伴って、本体部221内をX軸正方向へ移動する。バイオマス燃料303は、ふるい網221aが設けられた領域の外側へ移動して、本体部221のX軸正方向側の隅部に貯まる。
【0215】
例えば、アーム部251及び伝達部252による、本体部221及び回収部222への振動の伝達を、本体部221及び回収部222にX軸負方向に衝撃を与えるようにして行うことで、本体部221及び回収部222内の物体がX軸正方向へ移動する。例えば、本体部221及び回収部222を、X軸負方向側より正方向側が低くなるよう支持部材224で支持して、本体部221及び回収部222を振動させることで、本体部221及び回収部222内の物体がX軸正方向へ移動する。
【0216】
ふるい網221aを通過して回収部222に落下した混合原料304も、本体部221のバイオマス燃料303と同様に矢印501で示すX軸正方向へ移動する。回収部222のX軸正方向端部近傍の底面に開口部が形成され、この開口部に、回収容器223が着脱可能に装着されている。回収部222内をX軸正方向に移動した混合原料304は、回収部222底面の開口から回収容器223内へ落下して、回収容器223内に貯まる。
【0217】
回収容器223内の混合原料304は、ペレタイザ211のホッパ部211aから複数種類の炭化物301、302を所定の重量割合で投入して混練されたものである。このため、回収部222から回収容器223を取り外して、回収容器223内に貯まった混合原料304をそのままホッパ部211aからペレタイザ211内へ投入してバイオマス燃料303の製造に再利用することができる。
【0218】
図17に示す攪拌機400と同様に、ペレタイザ211内部で炭化物301、302を混練成型する工程で、摩擦熱や圧縮熱が発生する場合があるが、ペレタイザ211内部に冷却装置を設けて水を散布し、炭化物301、302に水をかけて温度を下げればよい。製造直後は水分を含むバイオマス燃料303は、その原料である炭化物301、302の性質によって水分が蒸発して、燃料として利用可能な状態となる。ペレタイザ211に代えて又は加えて、ふるい機220の本体部221及び/又は回収部222に水を散布する冷却装置を設けて、製造したバイオマス燃料303を冷却してもよい。
【0219】
図13及び
図14では、炭化処理車両30に、熱分解炭化処理装置100とその関連設備を搭載する例を説明したが、同様に、破砕機やバイオマス燃料製造装置200を炭化処理車両30に搭載して利用してもよい。バイオマス燃料製造装置200の制御部450や、駆動部213、225を、制御装置15に接続して、制御装置15によって炭化物の粉砕、混練、成型の処理を制御するようにしてもよい。熱分解炭化処理装置100及びバイオマス燃料製造装置200を含むバイオマス燃料の製造システムを、炭化処理車両30に搭載すれば、上述したように炭化処理車両30によって場所を移動しながら、各地でバイオマス燃料を製造することができる。
【0220】
<熱分解炭化処理>
図20は、制御装置15による熱分解炭化処理制御時の炭化室温度の時間変化(曲線L3)の例を示す図である。
図20は、熱分解炭化処理制御の処理条件が、炭化室温度500度、燃焼室温度1000度の例を示している。300~500度、250度~450度等の温度範囲で半炭化処理や低温炭化処理を行う場合は、各温度範囲に基づいて処理条件を設定して、熱分解炭化処理制御を実行すればよい。
【0221】
図20に示す熱分解炭化処理制御には、昇温工程PR1(時点t0~t1)、炭化工程PR2(時点t1~t2)、追焼工程PR3(時点t2~t3)、冷却工程PR4(時点t3~t4)が含まれる。追焼工程は、オプションである。
図20には、燃焼室温度(曲線L1)及び熱流路4内の流路ガス温度の変化(曲線L2)も示している。
【0222】
昇温工程では、制御装置15は、燃焼室6のバーナー61を点火した後、燃料(灯油ガス)を燃焼させて、炭化室2、2’内の炭化室温度を設定炭化室温度である500度まで昇温させる。
【0223】
その後、炭化工程に移行し、制御装置15は、設定炭化室温度で一定時間(設定炭化ホールド時間)、炭化室2、2’内の炭化処理対象物を間接加熱して炭化処理を促進する。このとき、例えば、燃焼室温度は1000度に維持される。
【0224】
追焼工程を行う場合は、制御装置15は、さらに炭化室温度を上げる。例えば、制御装置15は、炭化室温度が追焼温度(800度)に達するまで昇温し、この時点で燃焼室6の燃焼を止めて消火する。
【0225】
その後、制御装置15は、炭化室2、2’を密閉した状態で熱風供給路5に外気を供給して、冷却工程に移行する。冷却工程は、炭化室温度が冷却終了温度(例えば外気温や100度)に降下した時点で終了する。
【0226】
炭化室2、2’の気化物について、昇温開始後、乾留ガス以外に、水蒸気が炭化室内に発生する。熱分解炭化処理装置100では、この水蒸気の特性を利用した炭化室2、2’の昇温が行われる。具体的には、
図21に示すように、過熱水蒸気は、沸点(大気圧の場合、100度)を超える温度に加熱された蒸気であり、高温の乾いた蒸気である。この過熱水蒸気は、燃焼室6での燃料の燃焼によって生成された熱風と比較して、同じ温度、同じ質量でも非常に大きな熱量(例えば2500kJ/kg以上)を有する。熱分解炭化処理装置100は、炭化室2、2’に発生した水から過熱水蒸気を生成して、炭化室2、2’の加熱を行うようにしているので、効率的な炭化室2、2’の昇温を行うことができる。なお、水蒸気は大気に放出しても問題はない。
【0227】
<燃焼制御モード>
図22は、制御装置15が行う燃焼制御モードの概要を説明するための図である。制御装置15が実行可能な燃焼制御モードには、燃焼室温度制御モードm1と、乾留ガス制御モードm2とがある。燃焼室温度制御モードm1は、燃焼室6に供給される燃料の供給量を制御して炭化室2、2’の温度を制御するモードである。乾留ガス制御モードm2は、燃焼室6に供給される燃料の供給量を最小量に固定して燃焼室6をパイロット炎(種火)とし、エジェクタ7b、7b’から燃焼室6への空気及び乾留ガスの供給量を調整して炭化室2、2’の温度を制御するモードである。制御装置15は、炭化室2、2’に乾留ガスが発生している場合、乾留ガス制御モードm2により炭化室2、2’の温度制御を行い、乾留ガスが発生していない場合、燃焼室温度制御モードm1により炭化室2、2’の温度制御を行う。乾留ガスの発生量は、圧力センサT4を利用して検出することができる。
【0228】
<圧力センサ>
図23は、制御装置15による圧力センサT4の利用例を説明するための図である。
図23(a)は、圧力センサT4の制御に関する機能構成の例を示すブロック図である。
図23(b)は、圧力センサT4を含む、圧力測定に関する具体的な構成例を説明するための模式図である。
【0229】
図23(a)に示すように、制御装置15は、信号変換部15b、直流安定化電源部15c、及び電源部15dを含む。電源部15dは、外部電源から得た電源を各部に供給する。例えば、信号変換部15b及び直流安定化電源部15cに交流220Vの電源が供給される。
【0230】
直流安定化電源部15cは、電源部15dから受けた交流電源を、圧力センサT4を駆動するための直流電源に変換する。例えば、スイッチング電源を直流安定化電源部15cとして利用して、交流220Vが直流24Vのセンサ用の駆動電源に変換される。
【0231】
圧力センサT4は、圧力を検出して圧力信号を出力する。信号変換部15bは、圧力センサT4から出力された圧力信号を、制御装置15が利用可能な圧力値に変換する。例えば、圧力センサT4が、圧力値に応じて、アナログ信号である電流値を出力すると、この電流値が所定ビットの解像度を有するデジタル信号に変換されて、圧力値として利用される。制御装置15は、デジタル信号で出力された圧力値を利用して、各種判定処理や各部の制御を実行することができる。
【0232】
信号変換部15bが、圧力値を表示する、制御装置15の表示部を兼ねる態様であってもよい。例えば、圧力センサT4に対応するデジタルパネルメータを信号変換部15bとして利用して、圧力値を目視確認可能に数値で表示させると共に、圧力信号からデジタル信号への変換処理を実行させればよい。
【0233】
図23(b)に示すように、例えば圧力センサT4を含む高温用の圧力伝送器500を利用して、炭化室2、2’内部の圧力を測定する。なお、2つの炭化室2、2’で、圧力測定に係る構成は同じであるため、
図23では一方の炭化室2に係る構成を示している。
【0234】
圧力伝送器500は、直流安定化電源部15cから供給される駆動電源を受けて動作して、圧力信号を出力する。圧力信号は、圧力センサT4が検出した圧力に応じて変化する電気信号である。例えば、0~20kPaの圧力に応じて、圧力伝送器500から4~20mAの電流が出力され、上述したように、制御装置15による判定や制御の処理に利用される。
【0235】
図23(b)に示すように、圧力伝送器500は、圧力導入管510と接続部520とを介して、炭化室2から離間した位置に固定されている。圧力導入管510は、管形状を有する管部510aと、管部510aの外周に軸方向に配設形成された円盤形状を有する多数の放熱フィン510bとを含む。
【0236】
図23(b)に、炭化室2側の管部510aの一部を断面で示したように、管部510aの一端側は、開口部Pが設けられた炭化室2の側壁に固定されている。管部510aの他端側には、圧力センサT4の受感面が管部501aの内部に露出するように、接続部520を介して圧力伝送器500が取り付けられている。圧力伝送器500は、圧力センサT4によって、炭化室2の内部と連通する管部510a内部の圧力を測定することができる。
【0237】
管部510aの外周に多数の放熱フィン510bを設けた金属製の圧力導入管510を、放熱部として利用して、炭化室2から伝わる熱や、管部510a内部のガスの熱を放出している。さらに、セラミック製の接続部520を断熱部として利用して、接続部520を介して、炭化室2から離れた側の管部510aの端部に、圧力センサT4を含む圧力伝送器500を接続することで、管部510aに残る熱を圧力伝送器500に伝わりにくくしている。
【0238】
従来、熱分解炭化処理装置100の炭化室2のように高温になる場所で圧力センサを利用するには、水冷式の圧力センサを利用する必要があった。水冷を実現するには装置構成が複雑になる上に、冷却用の水を確保する必要もあるため、車載して様々な場所へ移動して使用される熱分解炭化処理装置100での利用には適さなかった。このため、従来装置では、水冷設備が不要な温度センサを炭化室2に設け、炭化室2内部の圧力値と温度の関係を予め調べることで、温度センサで測定した温度から炭化室2内部の圧力値を推定していた。
【0239】
本実施形態に係る熱分解炭化処理装置100では、放熱と断熱の2段階の冷却を行うことによって、水冷式に比べて安価かつ簡易な空冷式の構成で、圧力センサT4を利用することが可能となった。
【0240】
具体的には、
図23(b)に示すように、圧力伝送器500、すなわち圧力センサT4を、放熱部として機能する圧力導入管510と、断熱部として機能する接続部520とを介して炭化室2と接続することで、空冷式の構成で、圧力センサT4を利用することができる。圧力センサT4の位置は炭化室2から離間した位置となるが、圧力センサT4が、炭化室2内部と連通する管部510a内部の圧力を測定することにより、炭化室2内部で発生する乾留ガスによる圧力の変化を圧力センサT4で直接検出することができる。
【0241】
これにより、制御装置15は、従来に比べて高速かつ高精度に乾留ガスの発生を検出して、各種の判定や制御を実行することができる。例えば、炭化室2、2’における乾留ガスの発生を圧力センサT4で測定した圧力値に基づいて検出し、この圧力値をエジェクタ7b、7b’の制御に利用することで、炭化室2、2’から燃焼室6へ供給する乾留ガスの供給量を、従来に比べて高速かつ高精度に制御することができる。これに伴って、炭化室2、2’の温度制御、燃焼室6の燃焼制御等の各種制御についても、従来より高速かつ高精度なものとすることができる。
【0242】
なお、
図23(b)には、稼働状態等を表示する表示部を含む圧力伝送器500で表示部の文字や数字が成立するように、略L字型の圧力導入管510を利用する例を示したが、圧力導入管510の形状は特に限定されない。例えば、圧力伝送器500を、直線形状の圧力導入管510に接続する態様であってもよい。圧力伝送器500が、表示部を含まない態様であってもよい。
【0243】
圧力伝送器500を利用する態様に限定されず、圧力伝送器500に代えて圧力センサT4を圧力導入管510に接続してもよい。この場合、
図23(a)に示す信号変換部15bが、圧力伝送器500による信号処理の機能を兼ねるようにして、圧力センサT4が出力する圧力信号から、信号変換部15bを介して、制御装置15が利用可能な圧力値を取得すればよい。
【0244】
図23(b)では、セラミック製の接続部520を利用して、圧力導入管510と圧力伝送器500とを接続する例を示したが、接続部520がセラミック以外の断熱素材から成る態様であってもよい。圧力導入管510によって十分な冷却効果を得られる場合は、接続部520を通常の金属製として、断熱部を設けず放熱部のみとする態様であってもよい。
【0245】
圧力導入管510を構成する管部510aの内径、外径、肉厚、管路長や、放熱フィン510bの形状、厚み、数、間隔等も特に限定されない。管部510aの形状は、圧力伝送器500や圧力センサT4の仕様に応じて適宜設定すればよい。放熱フィン510bの形状等も、炭化室2、2’の温度、圧力伝送器500や圧力センサT4の仕様等に応じて適宜設定すればよい。例えば、管部510aの軸方向において放熱フィン510bのない領域が含まれていてもよいし、放熱フィン510bが不等間隔で設けられていてもよい。放熱フィン510bが、円盤形状以外の形状であってもよい。例えば、管部510aの周方向において放熱フィン510bのない領域が含まれていてもよいし、放熱フィン510bが平板形状でなく厚みの異なる領域を含んでいてもよい。
【0246】
<熱分解炭化処理>
図24~
図26は、制御装置15による熱分解炭化処理の流れの例を示すフローチャートである。該フローチャートにおける設定炭化室温度は、400度に設定されているが、炭化室温度を含む各種パラメータは、炭化処理対象物の種類や、炭化処理の処理内容に応じて適宜設定すればよい。
【0247】
図24に示すように、まず、制御装置15は、燃料及び空気をバーナー61に供給して燃焼室6の点火を行う(ステップS101)。その後、制御装置15は、各種温度の温度トレンドの描画を開始する(ステップS102)。最初は、炭化室2内で、水蒸気も乾留ガスも発生していないため、燃焼室温度制御モードm1に設定されて、燃焼制御が開始される(ステップS103)。
【0248】
その後、制御装置15は、炭化室2に設けた圧力センサT4が示す圧力が、予め設定された閾値に達したか否かを判定する(ステップS104)。この判定は、炭化室2内で、水蒸気及び乾留ガスが発生し始めたか否かの判定である。炭化室2の圧力が、所定の閾値に達していない場合(ステップS104:No)には、本判定処理が繰り返される。
【0249】
従来、炭化室2の温度に基づいて、炭化室2内で水蒸気及び乾留ガスが発生し始めたか否かを判定していたが、炭化室2内部に圧力センサT4を設けて圧力変化に基づく判定を行うことで、従来に比べて高精度な判定を行えるようになっている。
【0250】
圧力センサT4を設ける位置は、炭化室2に限定されず、炭化室2近傍の位置で乾留ガス移送管7に設けて、乾留ガス移送管7内部の圧力変化に基づいて判定を行う態様であってもよい。圧力値を閾値に設定して、圧力が閾値以上になったことを検出する態様に限定されず、圧力の変化量を閾値に設定し、閾値を超える圧力変化を検出するようにしてもよい。なお、従来通り、例えば炭化室温度が50度以上になったか否かを検出するというように、温度センサT3によって検出した炭化室2の温度に基づいて判定を行う態様であってもよい。
【0251】
炭化室2の圧力が閾値以上である場合(ステップS104:Yes)、制御装置15は、自動開閉バルブ16a、16a’(エジェクタ空気電動弁)を全閉から20%開にすると共に、自動開閉バルブ7a、7a’(乾留ガス電動弁)を全閉から50%開にする(ステップS105)。これにより、燃焼室6では、燃料を用いた燃焼に加えて、水蒸気や乾留ガスの燃焼が徐々に開始する。
【0252】
その後、制御装置15は、自動開閉バルブ14b(燃料弁)の開度が最小(min)であり、かつ、炭化室温度が設定炭化室温度(400度)を超えたか否かを判定する(ステップS106)。自動開閉バルブ14b(燃料弁)の開度が最小(min)であり、かつ、炭化室温度が設定炭化室温度(400度)を超えていない場合(ステップS106:No)には、本判定処理が繰り返される。一方、自動開閉バルブ14b(燃料弁)の開度が最小(min)であり、かつ、炭化室温度が設定炭化室温度(400度)を超えた場合(ステップS106:Yes)には、制御装置15は、燃焼制御モードを乾留ガス制御モードm2に移行する(ステップS107)。
【0253】
制御装置15は、燃料弁の開度を最小に維持して種火状態にし、エジェクタ空気電動弁の開度を50%~100%にし、さらに、乾留ガス電動弁の開度を50%~100%の開度にする(ステップS108)。これにより、燃焼室6で完全燃焼が可能な乾留ガスが、燃焼室6に取り込まれる。
【0254】
乾留ガス電動弁が開度100%(全開)になった後、制御装置15は、炭化室2に設けた圧力センサT4が示す圧力が、全開後の圧力から所定量低下したか否かを判定する(ステップS109)。炭化室2の圧力が所定量低下する現象は、乾留ガスの発生が終息に入ったことを示している。乾留ガス電動弁が開度100%(全開)になった後、炭化室2の圧力が所定量低下していない場合(ステップS109:No)、ステップS108の設定状態で加熱燃焼が維持される。
【0255】
ステップS104と同様に、圧力センサT4を設ける位置は、炭化室2に限定されず、炭化室2近傍の位置で乾留ガス移送管7に設けて、乾留ガス移送管7内部の圧力変化に基づいて判定を行う態様であってもよい。なお、従来通り、例えば全開後の温度から5度低下したか否かを検出するというように、温度センサT3によって検出した炭化室2の温度変化に基づいて判定を行う態様であってもよい。
【0256】
乾留ガス電動弁が開度100%(全開)になった後、炭化室2の圧力が所定量低下した場合(ステップS109:Yes)、制御装置15は、燃焼制御モードを、乾留ガス制御モードm2から燃焼室温度制御モードm1に移行し、燃料の供給量を可変にして燃料の燃焼による制御を行う(ステップS110)。この際、制御装置15は、エジェクタ空気電動弁の開度を50%にし、乾留ガス電動弁の開度を100%にする(ステップS111)。これにより、主として燃料の燃焼による火炎によって、炭化室温度が上昇する。
【0257】
その後、制御装置15は、炭化室温度が設定炭化室温度になったか否かを判定する(ステップS112)。制御装置15は、炭化室温度が設定炭化室温度になっていない場合(ステップS112:No)には、本判定処理を繰り返し、燃焼室温度制御モードm1による制御を継続する。一方、炭化室温度が設定炭化室温度になった場合(ステップS112:Yes)には、制御装置15は、次の炭化工程を開始する(ステップS201)。なお、ステップS101~S112までの処理が昇温工程である。
【0258】
炭化工程が開始されると、制御装置15は、設定炭化ホールド時間を経過したか否かを判定する(ステップS202)。設定炭化ホールド時間は、設定炭化室温度となっている状態の経過時間である。なお、炭化工程では、炭化室温度を設定炭化室温度とする燃焼制御が行われる。設定炭化ホールド時間を経過していない場合(ステップS202:No)、炭化室温度を設定炭化室温度とする燃焼制御が続行される。一方、設定炭化ホールド時間を経過した場合(ステップS202:Yes)、制御装置15は、炭化工程を終了する。
【0259】
制御装置15は、追焼工程の実施指示を受けているか否かを判定する(ステップS301)。追焼工程の実施指示を受けている場合(ステップS301:Yes)、制御装置15は、追焼工程を開始する(ステップS302)。制御装置15は、炭化室温度が設定追焼温度になるまで炭化室2を昇温させる(ステップS303)。制御装置15は、炭化室温度が設定追焼温度になったか否かを判定する(ステップS304)。炭化室温度が設定追焼温度になった場合(ステップS304:Yes)、制御装置15は、追焼工程を終了してステップS401の冷却工程に移行する。一方、追焼工程の実施指示を受けていない場合(ステップS301:No)、制御装置15は、追焼工程を行うことなく該工程を終了してステップS401の冷却工程に移行する。
【0260】
冷却工程では、制御装置15は、まず、燃料弁を閉にする(ステップS401)。さらに、制御装置15は、乾留ガス電動弁を全閉にする(ステップS402)。制御装置15は、自動開閉バルブ14b(冷却用空気電動弁)、自動開閉バルブ13b(燃焼用空気電動弁)、エジェクタ空気電動弁をそれぞれ全開にし(ステップS403)、熱流路4に外気を送り込んで炭化室2を冷却する。
【0261】
その後、制御装置15は、炭化室温度が冷却終了温度になったか否かを判定する(ステップS404)。炭化室温度が冷却終了温度になっていない場合(ステップS404:No)、本処理を繰り返しながら、炭化室2の冷却が続行される。一方、炭化室温度が冷却終了温度になった場合(ステップS404:Yes)、制御装置15は、冷却用空気電動弁、燃焼用空気電動弁、エジェクタ空気電動弁をそれぞれ全閉にし(ステップS405)、温度トレンドの描画を終了すると共に温度トレンドを記憶し(ステップS406)、本処理を終了する。
【0262】
このような流れで熱分解炭化処理を行うことにより、燃焼室6に比べて容積が大きい炭化室2、2’から大量の乾留ガスが一挙に小さな燃焼室6に供給されず、乾留ガス中に含まれる臭気成分や有害物質を分解する完全燃焼が実現できると共に、水蒸気及び乾留ガスの熱エネルギーを有効利用することができる。
【0263】
なお、本実施形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成であることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0264】
図面を参照しながら本開示に係るバイオマス燃料の製造方法の実施形態について説明したが、説明した各装置の構成及び動作が、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者が有する知識に基づいて、種々の改良、変更、修正を加えて実施される態様であってもよい。
【符号の説明】
【0265】
1 炭化炉ケース
2、2' 炭化室
3、3' 熱流路層
4、4' 熱流路
5 熱風供給路
6 燃焼室
7、7' 乾留ガス移送管
7b、7b' エジェクタ
9(9a~9c) 送風機(空気ブロア)
10 熱風排出路
11、11' 炭化装置本体
12、12' 扉部
13 燃焼空気送管
14 灯油タンク
14a 灯油供給管
14c 灯油ポンプ
15 制御装置
15a バーナー制御ユニット
15b 温度センサ
16、16' 燃焼空気送管
17 冷却空気送管
18 発電装置
19 操作制御装置
20 炭化トレイ
30 炭化処理車両
61 バーナー
90 収容機構
91 付属関連部材
100 熱分解炭化処理装置
200 バイオマス燃料製造装置
【要約】
環境保全及び資源の有効活用を可能とするバイオマス燃料の製造方法であって、木質系のバイオマス原料を収容した炭化室の外周側面と炭化室を収容した炭化炉ケースの内側面との間にジグザグ構造に設けた熱流路に、燃焼室で生起した熱ガスを流して、木質系のバイオマス原料を低温加熱して炭化又は半炭化する炭化処理を実行する工程と、炭化処理によって得られた複数種類の炭化物を粉砕部で粉砕して、混練部で混練する工程と、粉砕混練された複数種類の炭化物を成型部で所定形状のバイオマス燃料に成型する工程とを含む。