(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】副原料醸造におけるインフュージョン・マッシング用の酵素
(51)【国際特許分類】
C12C 7/047 20060101AFI20241010BHJP
C12C 5/02 20060101ALI20241010BHJP
C12G 3/02 20190101ALI20241010BHJP
C12G 3/021 20190101ALI20241010BHJP
C12N 9/26 20060101ALI20241010BHJP
C12N 9/28 20060101ALI20241010BHJP
C12N 9/34 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C12C7/047 ZNA
C12C5/02
C12G3/02
C12G3/021
C12N9/26 A
C12N9/28
C12N9/34
(21)【出願番号】P 2021522068
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 US2019057150
(87)【国際公開番号】W WO2020086430
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-14
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513207806
【氏名又は名称】インターナショナル エヌアンドエイチ デンマーク エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】クレーマー、ジェイコブ、フライホルム
(72)【発明者】
【氏名】ブラット、トゥローヴ
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/050820(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/086640(WO,A2)
【文献】特開2006-288379(JP,A)
【文献】特開2004-024151(JP,A)
【文献】特開昭60-237983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C 1/000-13/10
C12G 3/00-3/08
C12P 19/00-19/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100%副原料
ビール醸造のマッシング方法であって、
a.)副原料を含む
非モルトグリストを提供する工程;及び
b.)αアミラーゼと、マルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼと、前記グリストを80℃以下の温度で接触させて、
前記グリストの液化および糖化を経て糖化液を生成する工程;
を含む方法。
【請求項2】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記αアミラーゼが、配列番号1による配列を有する酵素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マルトジェニックαアミラーゼが、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記マルトジェニックαアミラーゼが、配列番号2と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記マルトジェニックαアミラーゼが、配列番号2による配列を有する酵素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記グルコアミラーゼが、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記グルコアミラーゼが、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記グルコアミラーゼが配列番号3を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程b.)において、前記グリストをαアミラーゼ及びマルトジェニックαアミラーゼと接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有し、且つ前記マルトジェニックαアミラーゼが、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記マルトジェニックαアミラーゼが、配列番号2と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記αアミラーゼが、配列番号1による配列を有する酵素を含み、且つ前記マルトジェニックαアミラーゼが、配列番号2による配列を有する酵素を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程b.)において、前記グリストをαアミラーゼ及びグルコアミラーゼと接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有し、且つ前記グルコアミラーゼが、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記αアミラーゼが、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記グルコアミラーゼが、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記αアミラーゼが、配列番号1による配列を有する酵素を含み、且つ前記グルコアミラーゼが、配列番号3による配列を有する酵素を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記グリストが、トウモロコシ、コメ、モロコシ及びカッサバ又はその混合物からなる群から選択される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記グリストが、モロコシを少なくとも10%含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記グリストが、モロコシを少なくとも25%含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記グリストが、モロコシを少なくとも50%含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記グリストが、モロコシを少なくとも75%含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記グリストが、モロコシを100%含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記グリストが、トウモロコシを少なくとも10%含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記グリストが、トウモロコシを少なくとも25%含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記グリストが、トウモロコシを少なくとも50%含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記グリストが、トウモロコシを少なくとも75%含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記グリストが、トウモロコシを100%含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記グリストが、コメを少なくとも10%含む、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記グリストが、コメを少なくとも25%含む、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記グリストが、コメを少なくとも50%含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記グリストが、コメを少なくとも75%含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記グリストが、コメを100%含む、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記グリストが、カッサバを少なくとも10%含む、請求項19に記載の方法。
【請求項36】
前記グリストが、カッサバを少なくとも25%含む、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記グリストが、カッサバを少なくとも50%含む、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
前記グリストが、カッサバを少なくとも75%含む、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
前記グリストが、カッサバを100%含む、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
前記糖化液がビールへと転化される、請求項1から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
100%副原料ビール醸造におけるαアミラーゼと、マルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼと、の使用であって、前記醸造において
液化および糖化が80℃以下の温度で行われる、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副原料グリストをマッシュする方法に関する。さらに具体的には、本開示は、マルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼと併せてαアミラーゼを醸造に用いて、副原料によって構成される非モルト麦汁が提供される、方法及び組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
醸造は一般に、3つの工程:モルティング、マッシング及び発酵を含む。モルティング工程の主な目的は、デンプン及びタンパク質分解における醸造プロセス中の次の役割を有する酵素を発生させることである。従来からビールはオオムギモルト、ホップ及び水から醸造されていたが、優れた品質の穀物、発芽用の水及びキルニングのためのエネルギーが必要であるため、モルトは高価な原料である。原料のコストを下げるために、副原料とも呼ばれる非モルト化穀物、例えばトウモロコシ、コメ、カッサバ、コムギ、オオムギ、ライムギ、オートムギ、キノア及びモロコシなどが醸造プロセスに含まれ得る。容易に入手可能であり、オオムギモルトよりも低いコストで発酵性炭水化物を提供することから、副原料が主に使用される。
【0003】
醸造における副原料の使用によって、従来の醸造プロセスが複雑となる。通常、デンプンを液化するために、副原料は「シリアルクッカー」で別々に処理しなければならない。したがって、副原料を使用すると原料の全体的なコストは下がるが、シリアルクッカーにおける更なる投資、並びに発酵性糖類を遊離させるための、副原料の加熱及び処理に更なる費用が必要である。これらの更なるコストを低減するために、醸造者は、低い副原料比率(つまり、副原料:モルトの比)を使用する傾向があった。
【0004】
シリアルクッカーを使用する必要なく、ビール製造において副原料を使用することができる方法が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様に従って、以下の工程:a.)副原料を含むグリストを提供する工程;及びb.)αアミラーゼと、マルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼと、グリストとを接触させて麦汁を生成する工程;を有する、100%副原料醸造のためのマッシング方法が示される。
【0006】
任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1による配列を有する酵素である。
【0007】
任意に、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも70%の配列同一性を有する。任意に、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも80%の配列同一性を有する。任意に、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する。任意に、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも95%の配列同一性を有する。任意に、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2による配列を有する酵素である。
【0008】
任意に、グルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも70%の配列同一性を有する。任意に、グルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも80%の配列同一性を有する。任意に、グルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する。任意に、グルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を有する。任意に、グルコアミラーゼは、配列番号3による配列を有する酵素である。
【0009】
本発明の一態様において、グリストをαアミラーゼ及びマルトジェニックαアミラーゼと接触させる。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有し、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも70%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有し、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも80%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有し、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有し、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも95%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1による配列を有する酵素であり、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2による配列を有する酵素である。
【0010】
本発明の他の態様において、グリストをαアミラーゼ及びグルコアミラーゼと接触させる。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有し、且つグルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも70%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有し、且つグルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも80%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有し、且つグルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有し、且つグルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を有する。任意に、αアミラーゼは、配列番号1による配列を有する酵素であり、且つグルコアミラーゼは、配列番号3による配列を有する酵素である。
【0011】
任意に、グリストは、トウモロコシ、コメ、モロコシ及びカッサバ又はその混合物からなる群から選択される。任意に、グリストは少なくとも10%のモロコシである。任意に、グリストは少なくとも25%のモロコシである。任意に、グリストは少なくとも50%のモロコシである。任意に、グリストは少なくとも75%のモロコシである。任意に、グリストは100%モロコシである。
【0012】
本発明の他の態様において、グリストは少なくとも10%のトウモロコシである。任意に、グリストは少なくとも25%のトウモロコシである。任意に、グリストは少なくとも50%のトウモロコシである。任意に、グリストは少なくとも75%のトウモロコシである。任意に、グリストは100%トウモロコシである。
【0013】
他の態様において、グリストは少なくとも10%のコメである。任意に、グリストは少なくとも25%のコメである。任意に、グリストは少なくとも50%のコメである。任意に、グリストは少なくとも75%のコメである。任意に、グリストは100%コメである。
【0014】
他の態様において、グリストは少なくとも10%のカッサバである。任意に、グリストは少なくとも25%のカッサバである。任意に、グリストは少なくとも50%のカッサバである。任意に、グリストは少なくとも75%のカッサバである。任意に、グリストは100%カッサバである。
【0015】
任意に、麦汁がビールに転化される。
【0016】
本発明の一態様において、醸造におけるαアミラーゼと、マルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼと、の使用が提供される。
【0017】
本発明の他の態様において、αアミラーゼ及びマルトジェニックαアミラーゼを有する酵素組成物が提供される。
【0018】
本発明のさらに他の態様において、αアミラーゼ及びグルコアミラーゼを有する酵素組成物が提供される。
【0019】
生物学的配列の簡単な説明
配列番号1は、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、GsAA1由来のαアミラーゼ変異体の成熟アミノ酸配列を示す。
【0020】
配列番号2は、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、GsAA2由来のマルトジェニックαアミラーゼの成熟アミノ酸配列を示す。
【0021】
配列番号3は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のグルコアミラーゼの成熟アミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実行は、別途指示しない限り、分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学及び生化学の従来の技術を用いることができ、これらは当技術分野の技術範囲内である。かかる技術は、文献に、例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook et al.,1989);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984;Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1994);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullis et al.,eds.,1994);Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(Kriegler,1990)、及びThe Alcohol Textbook(Ingledew et al.,eds.,Fifth Edition,2009)及びEssentials of Carbohydrate Chemistry and Biochemistry(Lindhorste,2007)に説明されている。
【0023】
別途本明細書で定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。Singleton,et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,second ed.,John Wiley and Sons,New York(1994)及びHale & Markham,The Harper Collins Dictionary of Biology,Harper Perennial,NY(1991)は、本発明で使用する用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。本明細書で説明する方法及び材料と類似の又は等価のあらゆる方法及び材料を、本発明の実施又は試験で使用することができる。
【0024】
本明細書に記載する数値範囲は、この範囲を定義する数字を含む。
【0025】
定義
ポリペプチドに関する「野生型」、「親」又は「参照」という用語は、1つ以上のアミノ酸の位置での人為的な置換、挿入又は欠失を含まない天然型ポリペプチドを指す。同様に、ポリヌクレオチドに関する「野生型」、「親」又は「参照」という用語は、人為的なヌクレオシド変化を含まない天然型ポリヌクレオチドを指す。しかし、野生型、親又は参照ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、天然に存在するポリヌクレオチドに限定されず、野生型、親又は参照ポリペプチドをコードする任意のポリヌクレオチドを包含することに留意されたい。
【0026】
野生型ポリペプチドへの言及は、ポリペプチドの成熟形を含むと理解される。「成熟」ポリペプチド又はその変異体は、例えば、そのポリペプチドの発現中又は発現後のポリペプチドの未熟型から切断されて、シグナル配列が存在しないものである。
【0027】
ポリペプチドに関する用語「変異体」は、アミノ酸の1つ以上の天然型又は人為的置換、挿入若しくは欠失を含むという点で特定の野生型、親又は参照ポリペプチドと異なるポリペプチドを指す。同様に、ポリヌクレオチドに関する用語「変異体」は、ヌクレオチド配列において特定の野生型、親又は参照ポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドを指す。野生型、親又は参照ポリペプチド又はポリヌクレオチドの同一性は、文脈から明らかになるであろう。
【0028】
「組み換え」という用語は、対象細胞、核酸、タンパク質又はベクターに関して使用される場合には、対象がその天然状態から改変されていることを示す。したがって、例えば、組み換え細胞は、天然(非組み換え)型の細胞内では見出されない遺伝子を発現するか、又は異なるレベルで、若しくは天然に見出される条件と異なる条件下で天然遺伝子を発現する。組み換え核酸は、天然配列とは1つ以上のヌクレオチドが異なり、且つ/又は、異種配列、例えば発現ベクター内の異種プロモーターと動作可能に連結している。組み換えタンパク質は、天然配列とは1つ以上のアミノ酸が異なり得、且つ/又は異種配列と融合している。アミラーゼをコードする核酸を含むベクターは、組み換えベクターである。
【0029】
「回収(された)」、「単離(された)」及び「分離(された)」という用語は、化合物、タンパク質(ポリペプチド)、細胞、核酸、アミノ酸若しくは他の特定の物質又は構成要素であって、天然に見出されるようにそれが自然に同伴している少なくとも1つの他の物質又は構成要素から除去されるものを指す。それらの「単離された」ポリペプチドには、異種宿主細胞内で発現した分泌ポリペプチドを含有する細胞培養ブロスが含まれるが、それに限定されない。
【0030】
「アミノ酸配列」という用語は、用語「ポリペプチド」、「タンパク質」及び「ペプチド」と同義であり、互換的に使用される。そのようなアミノ酸配列が活性を示す場合、それらは「酵素」と呼ぶことができる。アミノ酸残基に対して従来の1文字コード又は3文字コードが使用され、アミノ酸配列は、標準のアミノからカルボキシ末端方向(すなわち、N→C)に表示される。
【0031】
「核酸」という用語は、ポリペプチドをコードできるDNA、RNA、ヘテロ二本鎖及び合成分子を含む。核酸は一本鎖であっても二本鎖であってもよいし、化学改変を有してもよい。用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用される。遺伝コードは縮重しているため、特定のアミノ酸をコードするために2個以上のコドンを使用し得、本発明の組成物及び方法は、特定のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を包含する。他に規定しない限り、核酸配列は、5’-から-3’の方向に表示される。
【0032】
細胞に関連して使用される「形質転換(された)」、「安定に形質転換(された)」及び「トランスジェニック」という用語は、細胞が、そのゲノム内に組み込まれた非天然の(例えば、異種の)核酸配列を、又は複数世代を通して維持されるエピソームとして保持している核酸配列を含有していることを意味する。
【0033】
細胞内へ核酸配列を挿入することに関連して、「導入(された)」という用語は、当技術分野において知られているように「遺伝子導入」、「形質転換」又は「形質導入」を意味する。
【0034】
「宿主株」又は「宿主細胞」は、その中に目的のポリペプチド(例えば、アミラーゼ)をコードするポリヌクレオチドを含む、発現ベクター、ファージ、ウイルス又は他のDNA構築物が導入されている生物である。宿主株の例としては、対象とするポリペプチドを発現することができる微生物細胞(例えば、細菌、糸状菌及び酵母)がある。「宿主細胞」という用語には、細胞から作成されたプロトプラストが含まれる。
【0035】
ポリヌクレオチド又はタンパク質に関連する「異種の」という用語は、宿主細胞中で自然には生じないポリヌクレオチド又はタンパク質を指す。
【0036】
ポリヌクレオチド又はタンパク質に関連する「内在性の」という用語は、宿主細胞中で自然に生じるポリヌクレオチド又はタンパク質を指す。
【0037】
「発現」という用語は、核酸配列に基づいてポリペプチドが生成されるプロセスを指す。このプロセスには、転写及び翻訳の両方が含まれる。
【0038】
「選択的マーカー」又は「選択可能なマーカー」は、遺伝子を運ぶ宿主細胞の選択を容易にするために宿主内で発現させることのできる遺伝子を指す。選択可能なマーカーの例としては、抗生物質(例えば、ハイグロマイシン、ブレオマイシン又はクロラムフェニコール)及び/又は宿主細胞に代謝上の利点、例えば栄養上の利点を付与する遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
「ベクター」は、核酸を1種以上の細胞型に導入するように設計されたポリヌクレオチド配列を指す。ベクターには、クローニングベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、ファージ粒子、カセットなどが含まれる。
【0040】
「発現ベクター」は、関心対象のポリペプチドをコードするDNA配列を含むDNA構築物を意味するが、そのコーディング配列は、好適な宿主内のDNAの発現を実施できる好適な制御配列に機能的に連結している。そのような制御配列には、転写を生じさせるプロモーター、転写を制御する任意選択的オペレーター配列、mRNA上の好適なリボソーム結合部位をコードする配列、エンハンサー並びに転写及び翻訳の終了を制御する配列が含まれ得る。
【0041】
「作動可能に連結した」という用語は、特定の構成成分が意図された方法で機能することを許容する関係(並列を含むがそれには限定されない)にあることを意味する。例えば、調節配列は、コーディング配列の発現が調節配列の制御下にあるようにコーディング配列に機能的に連結している。
【0042】
「シグナル配列」は、細胞外部へのタンパク質の分泌を容易にする、タンパク質のN末端部分に付着しているアミノ酸の配列である。細胞外タンパク質の成熟形は、分泌プロセス中に切断して除かれるシグナル配列を欠いている。
【0043】
「生物活性」は、例えば酵素活性などの特定の生物活性を有する配列を指す。
【0044】
「比活性」という用語は、特定条件下で単位時間当たりに、酵素又は酵素調製物によって生成物へと転化され得る基質のモル数を指す。比活性は、一般に、単位数(U)/mgタンパク質で表される。
【0045】
本明細書で使用する場合、「配列同一性パーセント」は、特定の配列を、CLUSTAL Wアルゴリズムをデフォルトパラメータで使用して整列させた場合、特定の参照配列内のものと同一のアミノ酸残基を少なくとも一定のパーセンテージで有することを意味する。Thompson et al.(1994)Nucleic Acids Res.22:4673-4680を参照されたい。CLUSTAL Wアルゴリズムのデフォルトパラメータは、次のとおりである:
ギャップ開始ペナルティ:10.0
ギャップ伸長ペナルティ:0.05
タンパク質ウエイトマトリックス:BLOSUMシリーズ
DNAウエイトマトリックス:IUB
ディレイ発散配列(%):40
ギャップ分離距離:8
DNAトランジションウエイト:0.50
親水性残基のリスト:GPSNDQEKR
ネガティブマトリックスの使用:オフ
トグル残基特異的ペナルティ:オン
トグル親水性ペナルティ:オン
トグル末端ギャップ分離ペナルティ オフ。
【0046】
欠失は、参照配列と比較して非同一の残基として計数される。いずれかの末端で発生している欠失が含まれる。例えば、成熟した617個の残基ポリペプチドのC末端の5つのアミノ酸欠失を有する変異体は、成熟ポリペプチドに対して99%の配列同一性率(612/617個の同一残基×100、最も近い整数に丸めた)を有するであろう。そのような変異体は、成熟ポリペプチドに対して「少なくとも99%の配列同一性」を有する変異体に包含されるであろう。
【0047】
「融合(した)」ポリペプチド配列は、2つの対象ポリペプチド配列間のペプチド結合によって接続されている、すなわち動作可能に連結されている。
【0048】
「糸状菌」という用語は、ユウミコチナ(Eumycotina)亜門のすべての糸状体、特にペジゾミコチナ(Pezizomycotina)種を指す。
【0049】
「約」という用語は、参照値の±5%を指す。
【0050】
更なる突然変異
一部の実施形態において、本発明のアミラーゼはさらに、更なる性能又は安定性の利点を提供する1つ又は複数の突然変異を含む。例示的な性能の利点としては、限定されないが、増加した熱安定性、増加した貯蔵安定性、増加した溶解性、変化したpHプロファイル、増加した比活性、改質された基質特異性、改質された基質結合性、改質されたpH依存性活性、改質されたpH依存性安定性、増加した酸化安定性、及び増加した発現が挙げられる。一部の場合には、性能の利点は、比較的低い温度で実現される。一部の場合には、性能の利点は、比較的高い温度で実現される。
【0051】
さらに、本アミラーゼは、任意の数の保存的アミノ酸置換を含み得る。例示的な保存的アミノ酸置換を表1に列挙する。
【0052】
保存的アミノ酸置換
【0053】
【0054】
読者は、上述の保存的突然変異の一部を遺伝子操作によって生成することができ、他の保存的突然変異が、遺伝的又は他の手段によって合成アミノ酸をポリペプチド内に導入することによって生成されることを理解するであろう。
【0055】
本発明のアミラーゼは、シグナル配列を含む「前駆体」、「未成熟」若しくは「完全長」、又はシグナル配列が欠如した「成熟」であり得る。ポリペプチドの成熟形態が、一般に、最も有用である。特に記載がない限り、本明細書で使用するアミノ酸残基の番号付けは、それぞれのアミラーゼポリペプチドの成熟形態を指す。本発明のアミラーゼポリペプチドはまた、得られたポリペプチドがアミラーゼ活性を保持する限り、N末端又はC末端を切断して除去してもよい。
【0056】
本発明のアミラーゼは、それが第1のアミラーゼポリペプチドの少なくとも一部分及び、第2のアミラーゼポリペプチドの少なくとも一部分を含むという点で、「キメラ」、「ハイブリッド」ポリペプチドであり得る。本発明のアミラーゼは、異種シグナル配列、トラッキング又は精製を可能にするエピトープなどをさらに含んでもよい。代表的な異種シグナル配列は、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)アミラーゼ(LAT)、B.スブチリス(B.subtilis)(AmyE又はAprE)及びストレプトマイセス属(Streptomyces)CelA由来である。
【0057】
アミラーゼの産生
本発明のアミラーゼは、例えば分泌又は細胞内発現により、宿主細胞内中で産生され得る。アミラーゼを含む培養細胞材料(例えば、全細胞ブロス)は、アミラーゼの細胞培地への分泌後に得ることができる。任意選択により、アミラーゼを、最終的なアミラーゼの所望の純度に応じて、宿主細胞から単離し得るか、又はさらに細胞ブロスから単離し得る。プロリン特異性アミラーゼをコードする遺伝子を、当技術分野で公知の方法に従って、クローニングして発現させ得る。好適な宿主細胞としては、細菌、真菌(酵母及び糸状菌を含む)及び植物細胞(藻類を含む)が挙げられる。特に有用な宿主細胞としては、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、コウジカビ(Aspergillus oryzae)又はトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)が挙げられる。他の宿主細胞として、細菌細胞、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)又はB.リケニフォルミス(B.licheniformis)、並びにストレプトマイセス属(Streptomyces)、及び大腸菌(E.Coli)が挙げられる。
【0058】
宿主細胞はさらに、宿主細胞と同じ種ではない相同若しくは異種アミラーゼ、又は1種若しくは複数種の他の酵素をコードする核酸を発現し得る。アミラーゼは変異体アミラーゼであり得る。さらに、宿主は、1つ以上のアクセサリー酵素、タンパク質、ペプチドを発現し得る。
【0059】
ベクター
アミラーゼをコードする核酸を含むDNA構築物は、宿主細胞において発現されるように作成され得る。遺伝子コードの既知の縮重のために、同一のアミノ酸配列をコードする変異体ポリヌクレオチドを、通常の技術を用いて設計し、作製し得る。特定の宿主細胞に対してコドン使用を最適化することは当技術分野でよく知られている。アミラーゼをコードする核酸は、ベクターに組み込むことができる。ベクターは、既知の形質転換技術、例えば、下記に開示される技術などを使用して宿主細胞に導入することができる。
【0060】
ベクターは、宿主細胞へ形質転換され宿主細胞内で複製され得るなら、いかなるベクターであってもよい。例えば、アミラーゼをコードする核酸を含むベクターは、ベクターの増殖及び増幅の手段として細菌宿主細胞内で形質転換及び複製することができる。さらに、コード核酸を機能性アミラーゼとして発現することができるように、ベクターを発現宿主中に形質転換することもできる。発現宿主としての役割を果たす宿主細胞は、例えば糸状菌を含み得る。
【0061】
アミラーゼをコードする核酸は、宿主細胞中で転写を可能にする好適なプロモーターと作動可能に連結することができる。プロモーターは、選択された宿主細胞中で転写活性を示すあらゆるDNA配列であり得、且つ宿主細胞に対して相同又は異種のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子由来であり得る。特に細菌宿主において、アミラーゼをコードするDNA配列の転写を指示する例示的なプロモーターは、大腸菌(E.coli)のラクオペロンのプロモーター、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)アガラーゼ遺伝子dagA若しくはcelAプロモーター、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)αアミラーゼ遺伝子(amyL)のプロモーター、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)マルトジェニックアミラーゼ遺伝子(amyM)のプロモーター、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)αアミラーゼ(amyQ)のプロモーター、枯草菌(Bacillus subtilis)xylA及びxylB遺伝子等のプロモーターである。真菌宿主における転写のために、有用なプロモーターの例は、コウジカビ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、リゾムコール・ミーハイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)天然αアミラーゼ、A.ニガー(A.niger)酸安定性αアミラーゼ、A.ニガー(A.niger)グルコアミラーゼ、リゾムコール・ミーハイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ、コウジカビ(A.oryzae)アルカリ性プロテアーゼ、コウジカビ(A.oryzae)トリオースホスフェートイソメラーゼ、又はアスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)アセトアミダーゼをコードする遺伝子に由来するプロモーターである。アミラーゼをコードする遺伝子が大腸菌(E.coli)などの細菌種において発現される場合、例えば、T7プロモーター及びファージラムダプロモーターなどのバクテリオファージプロモーターから適切なプロモーターを選択することができる。酵母種中での発現に適切なプロモーターの例として、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のGal1及びGal10プロモーター並びにピキア・パストリス(Pichia pastoris)AOX1又はAOX2プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。cbh1は、トリコデルマ・リーゼイ(T.reesei)由来の内因性、誘導プロモーターである。Liu et al.(2008)Improved heterologous gene expression in Trichoderma reesei by cellobiohydrolase I gene(cbh1)promoter optimization,Acta Biochim.Biophys.Sin(Shanghai)40(2):158-65を参照されたい。
【0062】
このコード配列は、シグナル配列と作動可能に連結され得る。シグナル配列をコードするDNAは、発現されるべきアミラーゼ遺伝子と天然に関連付けられる、又は様々な属若しくは種に由来するDNA配列であり得る。DNA構築物又はベクターを含むシグナル配列及びプロモーター配列は、真菌宿主細胞に導入され得、且つ同一起源に由来し得る。例えば、シグナル配列は、cbh1プロモーターに作動可能に連結されるcbh1シグナル配列である。
【0063】
発現ベクターはまた、好適な転写ターミネーターと、真核生物中では、変異体アミラーゼをコードするDNA配列に作動可能に連結されているポリアデニル化配列と、を含み得る。終結配列及びポリアデニル化配列は、適切には、プロモーターと同一の供給源に由来し得る。
【0064】
ベクターは、宿主細胞中でのベクターの複製を可能とするDNA配列をさらに含み得る。このような配列の例は、プラスミドpUC19、pACYC177、pUB110、pE194、pAMB1、及びpIJ702の複製開始点である。
【0065】
ベクターは、選択可能マーカーも含み得、例えば、産物が単離宿主細胞の欠陥を補う遺伝子も含み得、例えば、B.スブチリス(B.subtilis)若しくはB.リケニフォルミス(B.licheniformis)に由来するdal遺伝子、又は抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、カナマイシン耐性、クロラムフェニコール耐性、若しくはテトラサイクリン耐性)を付与する遺伝子も含み得る。さらに、ベクターは、アスペルギルス属(Aspergillus)選択マーカー(例えば、amdS、argB、niaD及びxxsC)、ハイグロマイシン耐性を生じさせるマーカーを含んでもよいし、又は当技術分野で既知の同時形質転換により選択が達成されてもよい。例えば、国際公開第91/17243号パンフレットを参照されたい。
【0066】
一部の観点からは、例えば、その後の富化若しくは精製のために、大量のアミラーゼを産生するため、宿主細胞として特定の細菌又は真菌を使用した場合に、細胞内発現は有利であり得る。培地中へのアミラーゼの細胞外分泌を用いて、単離されたアミラーゼを含む培養細胞材料を作製することもできる。
【0067】
発現ベクターは、通常、クローニングベクターの成分、例えば、選択宿主生物中でのベクターの自己複製を許容するエレメント、及び選択目的のための表現型により検出可能な1種以上のマーカーなどを含む。発現ベクターは、通常、制御ヌクレオチド配列、例えば、プロモーター、オペレーター、リボソーム結合部位、翻訳開始シグナル及び任意に、リプレッサー遺伝子又は1種若しくは複数種のアクチベーター遺伝子を含む。さらに、発現ベクターは、ペルオキシソームなどの宿主細胞オルガネラ、又は特定の細胞コンパートメントにアミラーゼを標的化することができるアミノ酸配列をコードする配列を含み得る。かかる標的化配列としては、現令されないが、配列SKLが挙げられる。制御配列の指向下での発現のため、アミラーゼの核酸配列は、発現に関して適切な方法で制御配列に作動可能に連結されている。
【0068】
それぞれ、アミラーゼ、プロモーター、ターミネーター及び他のエレメントをコードするDNA構築物をライゲートし、且つ複製に必要な情報を含有する適切なベクター内にそれらを挿入するため、用いられる手順は当業者にはよく知られている(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor,1989,and 3rd ed.,2001を参照されたい)。
【0069】
宿主細胞の形質転換及び培養
DNA構築物又は発現ベクターのいずれかを含む単離細胞は、アミラーゼの組み換え産生における宿主細胞として有利に使用される。この細胞は、この酵素をコードするDNA構築物で、便宜的にはこのDNA構築物を宿主の染色体に(1つ又は複数のコピー数で)組み込むことにより形質転換され得る。このDNA配列は細胞中で安定して維持され易いことから、この組込みは有利であると一般に考えられている。宿主の染色体へのDNA構築物の組込みを、従来方法に従って実施し得、例えば、相同組み換え又は非相同組み換えにより実施し得る。代替方法としては、細胞は、異なるタイプの宿主細胞と関連した上述の発現ベクターを用いて形質転換させることができる。
【0070】
適切な細菌宿主生物の例は、グラム陽性菌種、例えば枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、ブレビバチルス(Bacillus brevis)、ゲオバチルス(以前はバチルス(Bacillus))・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、バチルス・アルカリフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ラウタス(Bacillus lautus)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)及びバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)などのバチルス科(Bacillaceae);ストレプトマイセス・ムリナス(Streptomyces murinus)などのストレプトマイセス(Streptomyces)種;ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)などのラクトコッカス(Lactococcus)属;;ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)などのラクトバチルス属(Lactobacillus);ロイコノストック(Leuconostoc)属;ペジオコックス(Pediococcus)属;及び連鎖球菌(Streptococcus)属を含む乳酸細菌種である。その代わりとして、大腸菌(E.coli)を含む腸内細菌科(Enterobacteriaceae)又はシュードモナス(Pseudomonadaceae)に属する、グラム陰性菌種の株を宿主生物として選択することができる。
【0071】
好適な酵母宿主生物は、バイオテクノロジー関連の酵母種から選択され得、この酵母種として下記が挙げられるが、これらに限定されない:酵母種、例えば、ピキア種(Pichia sp.)、ハンゼヌラ種(Hansenula sp.)、若しくはクリベロマイセス属(Kluyveromyces)、ヤロウイニア属(Yarrowinia)、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)種、又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)の種、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、又はシゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)に属する種、例えば、S.ポンベ(S.pombe)種。宿主生物として、メチロトローフ酵母種であるピキア・パストリス(Pichia pastoris)の株を使用し得る。或いは、宿主生物はハンゼヌラ(Hansenula)種であり得る。糸状菌中の好適な宿主生物として、アスペルギルス属(Aspergillus)の種が挙げられ、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ツビゲンシス(Aspergillus tubigensis)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、又はアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)が挙げられる。或いは、宿主生物として、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)等のフサリウム(Fusarium)種の株、又はリゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)等のリゾムコール(Rhizomucor)種の株を使用し得る。他の好適な株として、サーモマイセス属(Thermomyces)及びムコール属(Mucor)の種が挙げられる。加えて、宿主として、トリコデルマ種(Trichoderma sp.)を使用し得る。アスペルギルス属(Aspergillus)宿主細胞を形質転換する適切な手順としては、例えば欧州特許第238023号明細書に記載の手順が挙げられる。真菌宿主細胞により発現されたアミラーゼはグリコシル化され得、即ちグリコシル部分を含むであろう。グリコシル化パターンは、野生型アミラーゼに存在するものと同一であり得るか、又は異なり得る。グリコシル化のタイプ及び/又は程度により、酵素的特性及び/又は生化学的特性の変化が付与され得る。
【0072】
形質転換された発現ベクターにより遺伝子欠損が治癒され得る発現宿主から遺伝子を欠失させることが有利である。既知の方法を使用して、1種又は複数種の不活性化遺伝子を有する真菌宿主細胞を得ることができる。遺伝子の不活性化は、遺伝子が機能性タンパク質の発現を防止するように、完全若しくは部分欠失によって、挿入不活性化によって又は本来の目的で遺伝子を非機能的にさせる任意の他の手段によって実施することができる。クローニングされている、トリコデルマ種(Trichoderma sp.)又は他の糸状菌宿主からの任意の遺伝子(例えば、cbh1遺伝子、cbh2遺伝子、egl1遺伝子、及びegl2遺伝子)を欠失させ得る。遺伝子欠失を、当技術分野で既知の方法により、不活性化する所望の遺伝子のある形態をプラスミドに挿入することにより達成させ得る。
【0073】
宿主細胞中へのDNA構築物又はベクターの導入として、形質転換;電気穿孔;核マイクロインジェクション;形質導入;遺伝子導入、例えば、リポフェクション媒介及びDEAE-デキストリン媒介遺伝子導入;リン酸カルシウムDNA沈殿物とのインキュベーション;DNA被覆マイクロプロジェクティル(microprojectile)による高速衝突;並びにプロトプラスト融合等の技術が挙げられる。一般的な形質転換技術は、当技術分野において公知である。例えば、上記のSambrook et al.(2001)を参照されたい。トリコデルマ属(Trichoderma)での異種タンパク質の発現は、例えば、米国特許第6,022,725号明細書で説明されている。アスペルギルス属(Aspergillus)株の形質転換については、Cao et al.(2000)Science 9:991-1001も参照されたい。遺伝子的に安定な形質転換体を、アミラーゼをコードする核酸が宿主細胞の染色体に安定的に組み込まれる、ベクターシステムにより構築し得る。次いで、既知の技術により、形質転換体を選択して精製する。
【0074】
発現
アミラーゼを製造する方法は、この酵素の産生を促す条件下で宿主細胞を培養すること、及びこの細胞及び/又は培養培地からこの酵素を回収することを含み得る。
【0075】
細胞を培養するために使用される培地は、当該宿主細胞の増殖及びアミラーゼの発現の取得に好適な従来の任意の培地であってよい。好適な培地及び培地成分は、商業的供給業者から入手可能であるか、公開されたレシピ(例えば米国菌株保存機関(American Type Culture Collection)のカタログに記載される)に従って調製され得る。
【0076】
宿主細胞から分泌される酵素はブロス調製全体に使用することができる。本発明の方法において、組み換え微生物の使用済み全発酵ブロスの調製は、当技術分野で公知の任意の培養法を使用して達成することができ、アミラーゼが発現される。したがって、発酵は、好適な培地中で、且つ酵素の発現又は単離が可能な条件下における、振盪フラスコ培養、実験室用又は産業用発酵槽内での、小規模又は大規模発酵(連続、バッチ、流加バッチ若しくは固体発酵を含む)を含むと理解することができる。「使用済み全発酵ブロス」という用語は、本明細書では培養培地、細胞外タンパク質(例えば、酵素)及び細胞バイオマスを含む発酵材料の未分画内容物であると定義されている。「使用済み全発酵ブロス」という用語は、さらに当分野において周知の方法を使用して溶解若しくは透過化されている細胞バイオマスも含むと理解されている。
【0077】
宿主細胞から分泌される酵素は便利なことに、硫酸アンモニウムなどの塩を用いて培地のタンパク質性成分を遠心、若しくは濾過、及び沈殿させ、続いてイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフ手順の使用によって、培地から細胞を分離することなど、既知の手順によって培地から回収され得る。
【0078】
ベクターにおけるアミラーゼをコードするポリヌクレオチドは、ベクターによってコード配列の発現を提供することができる制御配列に作動可能に連結することができ、つまりベクターは発現ベクターである。制御配列によって指示される転写のレベルを転写修飾因子に対してより応答性にするために、制御配列は、例えば更なる転写調節因子を添加することによって修飾され得る。制御配列は特に、プロモーターを含み得る。
【0079】
宿主細胞は、アミラーゼの発現を可能にするのに適した条件下で培養することができる。酵素の発現は、酵素が連続的に生成されるように構成的であってよく、又は発現を開始するためには刺激を必要とする誘導性であってよい。誘導性発現の場合には、タンパク質生成は、必要とされる場合は、例えば培養培地への誘導物質、例えばデキサメタゾン又はIPTG又はソホロースの添加によって開始することができる。ポリペプチドはまた、例えばTNT(商標)(プロメガ社(Promega))ウサギ網状赤血球系などのインビトロの無細胞系内で組み換え技術により産生することができる。
【0080】
アミラーゼを濃縮及び精製する方法
発酵、分離、及び濃縮技術は当技術分野でよく知られており、アミラーゼポリペプチド含有溶液を調製するために、従来の方法を用いることができる。
【0081】
発酵後に発酵ブロスが得られ、アミラーゼ溶液を得るために、微生物細胞及び残留発酵原料を含む様々な懸濁固体が従来型分離技術によって除去される。濾過、遠心分離、精密濾過、回転真空ドラム濾過、限外濾過、遠心分離後に行われる限外濾過、抽出又はクロマトグラフィーなどが一般に使用される。
【0082】
回収率を最適化するために、アミラーゼポリペプチド含有溶液を濃縮することが望ましい。未濃縮溶液の使用には、典型的には、濃縮又は精製酵素沈殿物を収集するためのインキュベーション時間の増加が必要である。
【0083】
酵素含有溶液は、所望の酵素レベルが得られるまで、従来型の濃縮技術を使用して濃縮される。酵素含有溶液の濃縮は、本明細書で考察した手法のいずれかによって達成し得る。濃縮及び精製の例示的な方法には、回転真空濾過及び/又は限外濾過が含まれるがそれらに限定されない。
【0084】
本発明の好ましい実施形態
本発明の態様に従って、αアミラーゼと、マルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼとを組み合わせることによって、かかるデンプンタイプに従来から使用される温度よりも低い処理温度で、高いゲル化温度を有する副原料デンプンを効率的に液化し、糖化して、本明細書に記載の、且つ特許請求の範囲に記載の発酵性麦汁を製造することができることを発見した。したがって、内因性モルト酵素なしで、且つ(好ましくは)いわゆるインフュージョン法において事前のゲル化なしに、デンプン供給源の中でもトウモロコシグリスト、トウモロコシデンプン、コメデンプン、モロコシデンプン又はカッサバなどの副原料を処理することができる。かかる副原料デンプンの液化及び糖化には、外因的に供給された酵素組成物によってマッシュを補足することが必要である。これらのデンプン副原料は通常、高い開始ゲル化温度など、高ゲル化温度を特徴とする。意外なことに、酵素の正しい組み合わせによって、前記デンプン材料を高度にデンプン可溶化/液化及び糖化することが可能となり、上昇温度でそのプロセス中に抽出されたデンプンは徐々に、発酵性糖類及びより小さなデキストリンへと加水分解される。好ましくは、最終的なマッシュは、ヨウ素試験に対してデンプンネガティブであり、得られた麦汁において高いエキス濃度値(extract value)とも相関する。酵母発酵によってエタノールへと前記糖類を適切に転化するために、DP4+デキストリンの画分は好ましくは、可溶性糖類の合計の30%未満、又はより好ましくは可溶性糖類の合計の25%未満であるべきである。マッシングは、70℃以上の温度;好ましくは少なくとも80℃でのマッシュアウトによって仕上げられる。
【0085】
配列番号1は、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、GsAA1由来のαアミラーゼ変異体の成熟アミノ酸配列を示す。
【0086】
配列番号2は、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、GsAA2由来のマルトジェニックαアミラーゼの成熟アミノ酸配列を示す。
【0087】
配列番号3は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のグルコアミラーゼの成熟アミノ酸配列を示す。
【0088】
【0089】
本発明の態様に従って、以下の工程:a.)副原料を含むグリストを提供する工程;及びb.)αアミラーゼと、マルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼとをグリストと接触させて、麦汁を製造する工程;を有する、100%副原料醸造のマッシング方法が示される。
【0090】
好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有する。より好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有する。またより好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有する。より好ましい態様において、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有する。最も好ましい態様において、αアミラーゼは、配列番号1による配列を有する酵素である。
【0091】
好ましくは、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも70%の配列同一性を有する。より好ましくは、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも80%の配列同一性を有する。またより好ましくは、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する。より好ましい態様において、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも95%の配列同一性を有する。最も好ましい態様において、マルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2による配列を有する酵素である。
【0092】
好ましくは、グルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも70%の配列同一性を有する。より好ましくは、グルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも80%の配列同一性を有する。またより好ましくは、グルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する。より好ましい態様において、グルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を有する。最も好ましい態様において、グルコアミラーゼは、配列番号3による配列を有する酵素である。
【0093】
本発明の好ましい態様において、αアミラーゼ及びマルトジェニックαアミラーゼとグリストを接触させる。好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有し、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも70%の配列同一性を有する。より好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有し、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも80%の配列同一性を有する。またより好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有し、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する。より好ましい態様において、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有し、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2と少なくとも95%の配列同一性を有する。最も好ましい態様において、αアミラーゼは、配列番号1による配列を有する酵素であり、且つマルトジェニックαアミラーゼは、配列番号2による配列を有する酵素である。
【0094】
本発明の他の好ましい実施形態において、αアミラーゼ及びグルコアミラーゼとグリストを接触させる。好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有し、且つグルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも70%の配列同一性を有する。より好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有し、且つグルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも80%の配列同一性を有する。またより好ましくは、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有し、且つグルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する。より好ましい態様において、αアミラーゼは、配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有し、且つグルコアミラーゼは、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を有する。最も好ましい態様において、αアミラーゼは、配列番号1による配列を有する酵素であり、且つグルコアミラーゼは、配列番号3による配列を有する酵素である。
【0095】
好ましくは、グリストは、トウモロコシ、コメ、モロコシ及びカッサバ、又はその混合物からなる群から選択される。より好ましくは、グリストは少なくとも10%のモロコシである。より好ましくは、グリストは少なくとも25%のモロコシである。またより好ましくは、グリストは少なくとも50%のモロコシである。より好ましい実施形態において、グリストは少なくとも75%のモロコシである。最も好ましい実施形態において、グリストは100%モロコシである。
【0096】
他の好ましい実施形態において、グリストは少なくとも10%のトウモロコシである。より好ましくは、グリストは少なくとも25%のトウモロコシである。またより好ましくは、グリストは少なくとも50%のトウモロコシである。より好ましい実施形態において、グリストは少なくとも75%のトウモロコシである。最も好ましい実施形態において、グリストは100%トウモロコシである。
【0097】
他の好ましい実施形態において、グリストは少なくとも10%のコメである。より好ましくは、グリストは少なくとも25%のコメである。またより好ましくは、グリストは少なくとも50%のコメである。より好ましい実施形態において、グリストは少なくとも75%のコメである。最も好ましい実施形態において、グリストは100%コメである。
【0098】
他の好ましい実施形態において、グリストは少なくとも10%のカッサバである。より好ましくは、グリストは少なくとも25%のカッサバである。またより好ましくは、グリストは少なくとも50%のカッサバである。より好ましい実施形態において、グリストは少なくとも75%のカッサバである。最も好ましい実施形態において、グリストは100%カッサバである。
【0099】
好ましくは、麦汁はビールに転化される。
【0100】
本発明の一態様において、醸造におけるαアミラーゼと、マルトジェニックαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼとの使用が提供される。
【0101】
本発明の他の態様において、αアミラーゼ及びマルトジェニックαアミラーゼを有する酵素組成物が提供される。
【0102】
本発明のさらに他の態様において、αアミラーゼ及びグルコアミラーゼを有する酵素組成物が提供される。
【0103】
以下の実施例は、請求の範囲に記載の開示を説明するために提示されたものであって、その開示を限定するものではない。
[実施例]
【実施例1】
【0104】
-酵素
GsAA1:配列番号1に示すアミノ酸配列を有する、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)由来のαアミラーゼ変異体
GsAA2:配列番号2に示すアミノ酸配列を有する、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)由来のマルトジェニックαアミラーゼ
TrGA:配列番号3に示すアミノ酸配列を有する、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のグルコアミラーゼ
【0105】
αアミラーゼの一例として、デュポン(DuPont)社からのAMYLEX(登録商標)5T(A 5T)を使用した。マルトジェニックαアミラーゼの一例として、デュポン社からのDIAZYME(登録商標)MA(D MA)を使用した。グルコ-アミラーゼの一例として、デュポン社からのDIAZYME(登録商標)TGA(D TGA)を使用した。
【実施例2】
【0106】
-タンパク質の決定法
Stain Free Imager Criterionによるタンパク質の決定
SDS-PAGEゲル及びGel Doc(商標)EZイメージングシステムを用いた濃度測定により、タンパク質を定量した。この分析で使用した試薬:濃縮(2×)Laemmli Sample Buffer(Bio-Rad、カタログ番号161-0737);26-ウェルXT4-12%Bis-Tris Gel(Bio-Rad、カタログ番号345-0125);タンパク質マーカー「Precision Plus Protein Standards」(Bio-Rad、カタログ番号161-0363);タンパク質標準BSA(Thermo Scientific、カタログ番号23208)及びSimplyBlue Safestain(Invitrogen、カタログ番号LC 6060。分析は以下のように行った:96ウェルPCRプレート中で、50μLの希釈酵素試料を、2.7mgのDTTを含有する50μLの試料バッファと混合した。プレートをBio-Rad製のMicroseal「B」Filmで密封し、PCR装置に入れ、70°Cまで10分間加熱した。その後、容器をランニングバッファで満たし、ゲルカセットをセットした。次いで、10μLの各試料及び標準(0.125~1.00mg/ml BSA)をゲル上に置き、5μLのマーカーを加えた。その後、200Vで45分間電気泳動を行った。電気泳動に続き、ゲルを水で3回、5分間濯ぎ、その後、Safestain中で終夜染色し、最後に水で脱染した。その後、ゲルをImagerに移した。各バンドの強度計算にImage Labソフトウェアを使用した。BSA(Thermo Scientific,カタログ番号23208)を使用して、較正曲線を作成した。標的タンパク質の量をバンド強度と較正曲線によって決定した。タンパク質定量化法を用いて、その後の実施例に使用される酵素試料を調製した。
【実施例3】
【0107】
-HPLCによる糖類分析
すべての標準物質:グルコース、マルトース、マルトトリオース及びマルトテトラオースを再蒸留水(ddH20)中で調製し、0.45μmシリンジフィルターを通して濾過した。各標準物質のセットを10~100,000ppmの濃度範囲で調製した。
【0108】
試料を10分間95℃に加熱することによって、活性酵素を含有するすべての麦汁試料を不活性化した。続いて、麦汁試料を96ウェルMTPプレート(コーニング(Corning)社,NY,USA)に調製し、ddH20中で最小限4倍に希釈し、分析前に0.20μm 96ウェルプレートフィルター(コーニングフィルタープレート,PVDF 親水性膜,NY,USA)を通して濾過した。すべての試料を二重反復で分析した。
【0109】
計器による計測
糖類:DP1、DP2、DP3、DP4及びDP5+の定量化をUPLCによって実施した。試料の分析を、DGP-3600SD Dual-Gradient分析用ポンプ、WPS-3000TSLサーモスタットオートサンプラ、TCC-3000SDサーモスタットカラムオーブン及びRI-101屈折率検出器(Shodex、JM Science)を備えたDionex Ultimate 3000 HPLCシステム(Thermo Fisher Scientific)で実行した。データの取得及び分析にChromeleonデータシステムソフトウェア(Version 6.80、DU10A Build 2826、171948)を使用した。
【0110】
クロマトグラフ条件
70℃で操作される、分析ガードカラム(Carbo-Ag+中性,AJ0-4491,Phenomenex,オランダ)を備えた、Ag+ 4%架橋された(Phenomenex,オランダ)RSOオリゴ糖カラムを使用して、試料を分析した。カラムを流量0.3ml/分にて再蒸留水(0.45μmの再生セルロース膜を通して濾過され、ヘリウムガスでパージされた)で溶離した。総実行時間が45分である分析の間中、0.3ml/分のアイソクラチックフロー(isocratic flow)を維持し、注入量を10μLに設定した。恒温自動サンプラー区画内で20℃にて試料を維持した。屈折率検出器(RI-101,Shodex,JM Science)を使用して溶離液をモニターし、所定の標準物質のピーク面積に対するピーク面積によって定量化を行った(DP1:グルコース;DP2:マルトース;DP3:マルトトリオース及び4以上のマルトテトラオースのピークを標準として使用した)。
【実施例4】
【0111】
-抽出及び発酵性糖類を可能にする酵素を使用した、トウモロコシ、コメ、モロコシ及びカッサバでの低温インフュージョン・マッシング
この実施例の目的は、発酵性糖類を遊離するための酵素のうちの1つのみと比較して、インフュージョンプロセス(単一容器)における副原料の処理中に存在する2種類の酵素(マルトジェニックαアミラーゼ又はグルコアミラーゼ及びαアミラーゼ)を有する利点(放出された発酵性糖及びエキストラクト)を実証することであった。
【0112】
トウモロコシグリスト(Nordgetreide GmBH Luebec,ドイツ)、コメグリスト(Cambodia.MEKONG Asian Market,Dagrofa Brabrand)、モロコシ(モロコシ、白色、未粉砕-Diageo,アイルランド)及びカッサバ粉(ウガンダ)及び固定水:グリスト比4:1を用いて、マッシング操作モデルシステムにおいて麦汁生成について酵素を試験した。Buhler Miag モルトミル0.5mm設定にてコメグリストを粉砕し、モロコシを設定1.6mmにて粉砕した。
【0113】
麦汁生成のためのマッシング操作
64℃の水道水12.0gで予めインキュベートされたウィートン(wheaton)カップ(キャップを有するガラス容器)内でトウモロコシグリスト(3.0g)、コメグリスト(粉砕3.0g)、モロコシ(3.0g)又はカッサバ粉(3.0g)を混合し、2.5M硫酸でpH5.4にpH調整した。実施例2に従って決定されたタンパク質mg(合計0.5mL)に基づいて酵素を添加し、酵素なしのコントロールとして水を添加した。GsAA1、GsAA2及びTrGAの添加に加えて、固定濃度の0.5mg/gグリストLaminex(登録商標)750(デュポン社)を使用し、濾過性(B-グルカナーゼ)(発酵性糖類の放出にこれは影響しない)を確実にした。電磁攪拌を備えたドライバス(Drybath)(Thermo Scientific Stem station)にウィートンカップを入れ、以下のマッシングプログラムを適用した:試料を64℃で60分間維持し;80℃で10分間加熱し;最後に80℃で55分間維持してマッシュアウトした。15ml試料をファルコンチューブに移し、Heraeus Multifuge X3Rにおいて4500rpmにて10℃で20分間遠心することによって使用済み穀物を麦汁から分離した。手持ち式Plato屈折計(PAL-PLATO、愛宕(Atago),東京)によって、抽出物を測定した。すべての試料をH2Oで10倍に希釈し、水浴中で20分間煮沸して酵素を不活性化した。HPLC糖分析のために、実施例3に記載のように上清を回収し、濾過した(0.2μm)。
【0114】
トウモロコシ、コメ、モロコシ及びカッサバを用いた結果をそれぞれ、表1~4に示す。副原料タイプが処理可能ではなかった(n.p.)又はマルトジェニックαアミラーゼ若しくはグルコアミラーゼを単独で使用した場合に有意に低いにもかかわらず、エンド型αアミラーゼの添加は、酵素が使用されない場合と比較して、麦汁のエキス濃度を増加することが確認された。麦汁に残った非発酵性糖類の量は、所定の順序でTrGA、GsAA2及びGsAA1を添加することによって、この実施例において低減された。したがって、非発酵性糖類(DP4+)における最大の減少が、GsAA2及びTrGAによって得られ、一部の副原料については、GsAA1と共に個々に、これらの相乗効果が見られた。結論として、高いエキス濃度(>15°P)及び高度の発酵性糖類(<30% DP4+)を有するインフュージョン麦汁が、原料タイプ(トウモロコシ、コメ、モロコシ及びカッサバ)とは無関係に、エンド型αアミラーゼ(GsAA1)とマルトジェニックαアミラーゼ(GsAA2)、又はエンド型αアミラーゼ(GsAA1)とグルコアミラーゼ(TrGA)の添加により生成された。
【0115】
原料(50%モロコシ及び50%トウモロコシ;50%モロコシ及び50%コメ;50%コメ及び50%トウモロコシ)のブレンドを使用した結果を表6に示す。高いエキス濃度(>15°P)及び高度の発酵性糖類(<30% DP4+)の達成に関して、インフュージョン・マッシングにおける個々の原料からの麦汁の生成と比較して、酵素の同様な効果が確認された。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【実施例5】
【0121】
-麦汁生成のためのαアミラーゼ、マルトジェニックαアミラーゼ及びグルコアミラーゼの適用
麦汁生成のための、濾過を用いた実験室規模のインフュージョン・マッシング操作
100%ひきわりトウモロコシ(Nordgetreide GmBH Luebec,ドイツ,Batch:01.11.2016.)でのマッシング操作において、水:グリスト比3.8:1を用いて、αアミラーゼ、マルトジェニックαアミラーゼ及びグルコアミラーゼを試験した。
【0122】
トウモロコシ副原料を以下の方法で処理した:ひきわりトウモロコシ(70.0g)及び水道水(263g)をマッシング浴(Lockner,LG-electronics)カップ内に入れ、pHを2.5M 硫酸でpH5.4に調整した。トウモロコシ副原料を以下のプログラムを用いてマッシングした;63℃に加熱し、酵素を適用し;マッシングのために63℃で76分間維持し、糖化し;2℃/分で温度を上昇させることによって、80℃まで8.5分間加熱し;80℃で35.5分間維持し、マッシュアウトした。
【0123】
マッシングの最後に、水道水でマッシュを350gにし、内容物を麦汁と使用済みトウモロコシに分離した。分離して30分後に麦汁の体積を測定し、DP1、DP2、DP3及びDP4+のパーセンテージとして測定された様々な可溶化糖タイプの抽出及び分布について分析した。
【0124】
1つのαアミラーゼ(AA)、1つのマルトジェニックαアミラーゼ(MA)及び1つのグルコアミラーゼ(GA)を試験した。αアミラーゼの一例として、デュポン社からのAMYLEX(登録商標)5T(A 5T)を使用した。マルトジェニックαアミラーゼの一例として、デュポン社からのDIAZYME(登録商標)MA(D MA)を使用した。グルコアミラーゼの一例として、デュポン社からのDIAZYME(登録商標)TGA(D TGA)を使用した。以下の用量及び組み合わせを試験した:表6に示すように、酵素なし;AMYLEX(登録商標)5T(2.5kg/t トウモロコシ);DIAZYME(登録商標)MA(1.5kg/t トウモロコシ);AMYLEX(登録商標)5T(2.5kg/t トウモロコシ)及びDIAZYME(登録商標)MA(1.5kg/t トウモロコシ);DIAZYME(登録商標)TGA(3.0kg/t トウモロコシ);AMYLEX(登録商標)5T(2.5kg/t トウモロコシ)及びDIAZYME(登録商標)TGA(3.0kg/t トウモロコシ)。
【0125】
【0126】
麦汁の分析:Dupont Standard Instruction Brewing,23.8580-B11に従って、マッシュ分離から30分後に、それぞれの試料の麦汁体積を測定した。要するに、250mlメスシリンダーグラスの上に置かれた、濾紙(VWR,Europeanカタログ番号516-0310,サイズ320mm,折り畳み定性的濾紙,307醸造等級(Brewery grade),中程度の濾過速度)を備えたプラスチック漏斗を通して試料を濾過し、時間を記録した。30分後、フィルターを通してメスシリンダー内へ入った液体の量(濾液)を測定した。Anton Paar(Lovis)を使用して、Dupont Standard Instruction Brewing,23.8580-B28(EBC 8.3 Extract of Wortに基づく)に従って、原麦汁濃度(OE)、マッシング後の麦汁試料中のエキス濃度を測定した。HPLCによる発酵性糖類(全体%+g/100mL)はDP1、DP2、DP3及びDP4+であり、Dupont Standard Instruction Brewing,23.8580-B20(EBC 8.7 Fermentable Carbohydrates in Wort by HPLC(IM)に基づく)に従って、マッシング後に決定した。
【0127】
以下の:単独で又は組み合わせて異なる酵素を適用することによる、麦汁体積、エキス濃度、及びマッシング中に放出されたDP1~DP3の合計%として表される発酵性糖類の程度を表7に示す。
【0128】
【0129】
達成された麦汁の量から(表7)分かるように、外来性酵素を全く適用しなかった場合にも、又はグルコアミラーゼのみを適用した場合にも、所定のマッシングプロトコルを用いて100%トウモロコシを処理することは不可能であった。許容可能な量の麦汁及びエキス濃度を達成するために、マッシング中にαアミラーゼが必要であった。しかしながら、αアミラーゼ(エンド型)のみ適用した場合には、DP1~DP3の合計によって表される発酵性糖類タイプの相対濃度は、いずれのビールスタイルに対しても許容可能な希釈には低すぎた。DP1~DP3(発酵性糖類)の高パーセンテージを達成するために、マルトジェニックαアミラーゼ又はグルコアミラーゼ酵素のいずれかとαアミラーゼを組み合わせる必要があった。
【実施例6】
【0130】
-実施例5からの麦汁の実験室規模の発酵性
希釈された試料に対する発酵操作
発酵に十分な量の麦汁を提供した実施例7に記載のように、生成された麦汁試料(>100mL)を2.5M硫酸でpH5.2に調整し、Hopfenveredlung,St.Johannから入手したビターホップのペレット:α含有率16,0%(EBC 7.7 0特異的HPLC分析,01.10.2013)を各フラスコに添加した(合計210g)。麦汁試料を煮沸浴で60分間煮沸し、麦汁を17℃に冷却し、濾過した。各麦汁100gを発酵用の500mL三角フラスコに計量し、17℃の麦汁に新たに生成された酵母(0.50g)0.5% W34/70(Weihenstephan)を添加した。酵母を添加した後に、麦汁試料を18℃及び150rpmにて発酵させた。発酵が完了した時に分析を実施した。
【0131】
ビールの分析:Dupont Standard Instruction Brewing,23.8580-B28(EBC 8.3 Extract of Wortに基づく)に従ってAnton Paar(DMA 5000)を使用してRDFを測定し、且つDupont Standard Instruction Brewing,23.8580-B28(EBC 8.3 Extract of Wortに基づく)によってアルコールを測定した。
【0132】
真正発酵度(RDF)は、下記式により算出することができる:
【数1】
式中、RE=真正エキス濃度=(0.1808×
oP
initial)+(0.8192×
oP
final)であり、
oP
initialは発酵前の標準化麦汁の比重であり、
oP
finalはプラート度で表した発酵麦汁の比重である。
【0133】
本発明の文脈において、真正発酵度(RDF)は比重とアルコール濃度とから決定した。
【0134】
Beer Alcolyzer Plus及びDMA 5000比重計(両方ともAnton Paar、Gratz、Austriaより入手)を使用し、発酵試料について比重及びアルコール濃度を決定した。これらの測定に基づき、下記式より真正発酵度(RDF)を算出した:
【数2】
式中、E(r)はプラート度(°P)で表した真正エキス濃度であり、OEは°Pを単位とする原麦汁濃度である。
【0135】
Anton Paar(DMA 5000)を使用して、Dupont Standard Instruction Brewing,23.8580-B28(EBC 8.3 Extract of Wortに基づく)に従って、マッシング後のビール試料中の原麦汁濃度(OE)を測定した。Anton Paar(DMA 5000)を使用して、Dupont Standard Instruction Brewing,23.8580-B28(EBC 8.3 Extract of Wortに基づく)に従って、アルコール体積濃度(%V/V)、達成されたアルコール度数(ABV)を測定した。
【0136】
マッシング中にαアミラーゼを単独で、又はマルトジェニックαアミラーゼ若しくはグルコアミラーゼと組み合わせて適用した麦汁発酵後の以下の真正発酵度(RDF)を表8に示す。
【0137】
【0138】
得られたRDF値は、適用された麦汁中の糖組成の分析と一致し、したがって、麦汁中のDP1~DP3(発酵性)糖の含有率が相対的に高くなることによって、発酵のRDF値%が高くなる。αアミラーゼとグルコアミラーゼ、又はαアミラーゼとマルトジェニックαアミラーゼの組み合わせは、αアミラーゼのみ適用した場合と比較して増加したRDF値を示した。したがって、αアミラーゼは、一部のビールスタイルに関して十分な希釈を達成するために、マルトジェニックαアミラーゼ又はグルコアミラーゼのいずれかと組み合わせることが必要であった。
【実施例7】
【0139】
-麦汁生成のための、αアミラーゼ、マルトジェニックαアミラーゼ及びグルコアミラーゼの組み合わせの適用
麦汁生成のためのマッシング操作
100%ひきわりトウモロコシ(Nordgetreide GmBH Luebec,ドイツ,Batch:01.11.2016)でのマッシング操作において、水:グリスト比3.8:1を用いて、αアミラーゼ、マルトジェニックαアミラーゼ及びグルコアミラーゼをすべて試験した。
【0140】
トウモロコシ副原料を以下の方法で処理した:ひきわりトウモロコシ(70.0g)及び水道水(263g)をマッシング浴(Lockner,LG-electronics)カップ内に入れ、pHを2.5M硫酸でpH5.4に調整した。トウモロコシ副原料を以下のプログラムを用いてマッシングした;63℃に加熱し、酵素を適用し;マッシュインのために63℃で60分間維持し、糖化し;1.5℃/分で温度を上昇させることによって、75℃まで8分間加熱し;75℃で20分間維持し、1.5℃/分で温度を上昇させて80℃まで3分間加熱し;80℃で20分間維持し、次いでマッシュアウトした。
【0141】
マッシングの最後に、水道水でマッシュを350gにし、内容物を麦汁と使用済みトウモロコシに分離した。30分間分離した後に麦汁の体積を測定し、DP1、DP2、DP3及びDP4+のパーセンテージとして測定された様々な可溶化糖タイプのエキス濃度及び分布について分析した。
【0142】
1つのαアミラーゼ(AA)、1つのマルトジェニックαアミラーゼ(MA)及び1つのグルコアミラーゼ(GA)を試験した。すべての実験において、Laminex(登録商標)750を0.5kg/トン(トウモロコシ)にて適用して、発酵性糖類の分布に対して著しく影響を及ぼすことなく、適切な濾過を確実にした。
【0143】
αアミラーゼの一例として、デュポン社からのAMYLEX(登録商標)5T(A 5T)を使用した。マルトジェニックαアミラーゼの一例として、デュポン社からのDIAZYME(登録商標)MA(D MA)を使用した。グルコアミラーゼの一例として、デュポン社からのDIAZYME(登録商標)TGA(D TGA)を使用した。使用された用量及び組み合わせを表9に示す。
【0144】
【0145】
麦汁の分析:Dupont Standard Instruction Brewing,23.8580-B11に従って、マッシュ分離から30分後に、それぞれの試料の麦汁体積を測定した。要するに、250mlメスシリンダーグラスの上に置かれた、濾紙(VWR,European カタログ番号516-0310,サイズ320mm,折り畳み定性的濾紙,307醸造等級(Brewery grade),中程度の濾過速度)を備えたプラスチック漏斗を通して試料を濾過し、時間を記録した。30分後、フィルターを通してメスシリンダー内へ入った液体の量(濾液)を測定した。Anton Paar(Lovis)を使用して、Dupont Standard Instruction Brewing,23.8580-B28(EBC 8.3 Extract of Wortに基づく)に従って、マッシング後の原麦汁濃度(OE)、麦汁試料中のエキス濃度を測定した。HPLCによる発酵性糖類(全体%+g/100mL)はDP1、DP2、DP3及びDP4+であり、Dupont Standard Instruction Brewing,23.8580-B20(EBC 8.7 Fermentable Carbohydrates in Wort by HPLC(IM)に基づく)に従って、マッシング後に決定した。
【0146】
以下の:異なる酵素を組み合わせて適用することによる、麦汁体積、エキス濃度及びマッシング中に放出されたDP1~DP3の合計%として表される発酵性糖の程度を表10に示す。
【0147】
【0148】
分離後に達成された麦汁の量(表10)から分かるように、すべての試料が、適用された酵素で処理することが可能であった。おそらく(エンド型)αアミラーゼの量が低かったために、実施例4及び5と比較して、エキス濃度は低かった。注目すべきことには、高いパーセンテージのDP1~DP3(発酵性糖)によって示されるように、エンド型αアミラーゼの他に、マルトジェニックαアミラーゼをグルコアミラーゼと組み合わせることが可能であった。酵素のこれらの組み合わせはすべて、良好な濾過性、高いエキス濃度、及び高度の発酵性糖を可能にする。
【0149】
前述の本発明は、理解を明確にする目的で、図面及び実施例によって、ある程度詳しく説明してきたが、添付の請求項の範囲内で特定の変更及び修正を行うことができる。さらに、本明細書において提供されるそれぞれの参考文献は、それぞれの参照があたかも参照により個々に組み込まれるがごとく同程度に、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。ウェブサイト又は受入番号などのいずれかの引用の内容が時間と共に変化し得る程度まで、本出願の出願日にて効力があるバージョンを意味する。文脈から特に明らかでない限り、任意の工程、要素、態様、実施形態の特徴を、他のいずれかと組み合わせて使用することができる。
【配列表】