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特許7569492抗精神病薬誘発性体重増加のミリコリラントによる治療方法
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  • 特許-抗精神病薬誘発性体重増加のミリコリラントによる治療方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】抗精神病薬誘発性体重増加のミリコリラントによる治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/513 20060101AFI20241010BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61K31/513
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P1/16
A61P43/00 111
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022528536
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 US2020064520
(87)【国際公開番号】W WO2021119432
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】62/946,957
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503345477
【氏名又は名称】コーセプト セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、アダ
(72)【発明者】
【氏名】ベラノフ、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ハント、ヘーゼル
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1965840(CN,A)
【文献】特表2004-537563(JP,A)
【文献】Bioorg. Med. Chem. Lett.,2012年,vol.22, issue 24,p.7376-7380
【文献】Corcept Therapeutics,Corcept Therapeutics Announces Third Quarter 2019 Financial Results and Provides Corporate Update,2019年11月07日,https://ir.corcept.com/news-releases/news-release-details/corcept-therapeutics-announces-third-quarter-2019-financial
【文献】Obesity,2010年,vol.18, suppl.2,p.S208(741-P)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/513
A61P 3/04
A61P 3/06
A61P 1/16
A61P 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オランザピン誘発性体重増加を患い、且つ、オランザピン誘発性の、増加した血中トリグリセリドレベル、増加した肝臓酵素ALT、AST、若しくはその両方の血中レベル、及び、増加した血漿インスリンレベル、の1又は複数を患う対象を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は有効量のミリコリラント、すなわち以下の構造を有する(E)-6-(4-フェニルシクロヘキシル)-5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1H-ピリミジン-2,4-ジオンを含み、前記医薬組成物は前記対象にオランザピンを投与している間に、1回又は複数回の5週間~9週間の投与停止期間を含んでいてもよい1週間~10年の期間に渡って投与され、
前記治療が、オランザピンを先に投与されている前記対象の前記医薬組成物の前記投与の前におけるベースライン体重と比較して前記対象の体重を少なくとも10%減少させることにより、前記対象における前記オランザピン誘発性体重増加を逆転させることに有効であり
前記治療が、
オランザピンを先に投与されている前記対象の前記医薬組成物の前記投与の前におけるベースラインレベルと比較して血中トリグリセリドレベルを低下させること、
オランザピンを先に投与されている前記対象の前記医薬組成物の前記投与の前におけるベースラインレベルと比較してALT、AST、若しくはその両方の血中レベルを10%以上低下させること、
オランザピンを先に投与されている前記対象の前記医薬組成物の前記投与の前におけるベースライン血漿インスリンレベルと比較して、血漿インスリンレベルを10%以上低下させること、
又は
それらの組合せ
に有効である、医薬組成物。
【化1】
【請求項2】
前記治療が、前記対象におけるALTの血中レベルを20%以上低下させることを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記治療が、前記対象におけるASTの血中レベルを20%以上低下させることを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記治療が、前記対象における血漿インスリンレベルを20%以上低下させることを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記治療が、前記対象におけるオランザピン誘発性体重増加を逆転させることによって、オランザピンを先に投与されている前記対象の前記医薬組成物の前記投与の前におけるベースライン体重と比較して前記対象の体重を少なくとも15%減少させることを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物の投与が前記医薬組成物の経口投与である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
オランザピンと前記医薬組成物の併用投与を含む前記治療が、血漿インスリン、ASTの血中レベル及びALTの血中レベルのうちの1又は複数を20%以上低減するのに有効である、請求項6に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2019年12月11日に出願された米国仮特許出願番号第62/946957号に対する優先権とその仮特許出願の利益を請求し、参照によりその仮特許出願の内容全体をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
抗精神病薬の投与は多くの精神障害のための重要な治療法であり、抗精神病薬の投与によって著しい改善がこのような障害に苦しむ2000万人近くの患者に与えられる。オランザピン、リスペリドン、クロザピン、クエチアピン、アリピプラゾール、セルチンドールなどの抗精神病薬、及び他のそのような薬品は精神病の症状を改善すると同時に多くの場合に著しい体重増加を引き起こすことが残念な点である。抗精神病薬誘発性の体重増加は抗精神病薬を服用する患者にとって重大な問題である。長期間にわたって抗精神病薬を受容している患者の約40~80%がかなりの体重増加を経験しており、最終的には理想的体重を20%以上超過することになることが多くの報告により示されている(例えばUmbrichtら著、J Clin. Psychiatry誌、第55巻(増刊B号):157~160頁、1994年、Baptista著、Acta Psychiatr. Scand. 誌、第100巻:3~16頁、1999年を参照されたい)。このような体重増加は、心血管疾患、脳卒中、高血圧、II型糖尿病、及び特定の種類のがんなど、肥満に関連する多くの深刻な健康上の問題のリスクを増大させる。また、望まない体重増加は、患者が抗精神病薬の投与を遵守しない最も一般的な理由の1つである。薬の差替え、生活スタイルの修正、及びメトホルミンの使用などの管理戦略のこれまでの成果は、これらの患者の体重に対してまずまずの入り混じったものであった。しかしながら、これらの戦略の結果が芳しくないため、抗精神病薬を必要とする人々が直面する深刻な健康問題は未解決のままである。
【0003】
したがって、当技術分野には抗精神病薬の使用に付随する体重増加を防止又は抑制し、且つ、このような薬品が原因の体重増加を逆転させる方法及び薬品の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
申請者は、グルココルチコイド受容体(GR)モジュレーター(GRM)であるミリコリラントの投与により抗精神病薬誘発性体重増加を抑制し、抗精神病薬誘発性体重増加作用を改善し、且つ、抗精神病薬誘発性体重増加を逆転させることができることを本明細書において開示する。患者はミリコリラントを受容している間にも抗精神病薬を受容し続けてよく、それでもなおミリコリラント処理の利益を享受し得る。体重増加を引き起こす可能性があり、且つ、ミリコリラント処理により作用が改善、抑制、又は逆転される可能性がある抗精神病薬にはオランザピン、リスペリドン、クロザピン、クエチアピン、セルチンドール、アミスルプリド、アリピプラゾール、アセナピン、ブロナンセリン、ビフェプルノックス、カリプラジン、クロチアピン、イロペリドン、ルラシドン、モサプラミン、メルペロン、パリペリドン、ペロスピロン、ピマバンセリン、レモキシプリド、スルピリド、ジプラシドン、ゾテピン、ペルフェナジン、チオリダジン、クロルプロマジン、及び他のこのような体重増加誘導性抗精神病薬が挙げられる。
【0005】
本明細書において開示される方法及び治療の利益には体重増加の抑制、体重増加速度の低下、体重増加の逆転、並びに心血管疾患、脳卒中、高血圧、及びII型糖尿病の発症リスクの低下が挙げられる。したがって、本方法によって抗精神病薬誘発性体重増加を抑制又は逆転させることができ、且つ、体重増加に関連するリスク因子(例えば高血圧、高コレステロール、他の血液異常、睡眠障害、インスリン抵抗性等)を低減させることができる。
【0006】
本方法は、オランザピン、リスペリドン、クロザピン、クエチアピン、セルチンドール、アミスルプリド、アリピプラゾール、アセナピン、ブロナンセリン、ビフェプルノックス、カリプラジン、クロチアピン、イロペリドン、ルラシドン、モサプラミン、メルペロン、パリペリドン、ペロスピロン、ピマバンセリン、レモキシプリド、スルピリド、ジプラシドン、ゾテピン、ペルフェナジン、チオリダジン、クロルプロマジンなどの抗精神病薬及び他のこのような体重増加誘導性抗精神病薬を受けている患者、又は受けた患者、又は受けることが予期される患者に対してミリコリラント(CORT118335としても知られる)を投与することを含む。ミリコリラントは経口投与可能である。本方法は、本来であれば患者が増やしたであろう体重を減少させ得る。本方法は、本来であれば患者が経験したであろう体重増加速度を低下させ得る。本方法は、抗精神病薬を投与された患者において体重増加を防止し得る。本方法は、抗精神病薬の投与に起因して患者が経験した体重増加を逆転させ得る。
【0007】
ミリコリラントはシクロヘキシルピリミジン化合物であり、すなわち、ミリコリラントはピリミジンシクロヘキシル構造を含むGRM化合物であり、その構造は、ここで内容の全体が参照により援用される米国特許第8685973号明細書において説明及び開示されている通りである。ミリコリラントは(E)-6-(4-フェニルシクロヘキシル)-5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1H-ピリミジン-2,4-ジオンであり、以下の構造を有する。
【化1】

米国特許第8685973号明細書等において開示されているピリミジンシクロヘキシル構造を含む他のGRM化合物も、抗精神病薬誘発性体重増加を患う対象の治療及び抗精神病薬誘発性体重を患うリスクが疑われる対象の治療にとって適切及び有用であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ラットにおけるオランザピンの体重増加に対する効果を示す図である(体重は平均値として示されている)。
【0009】
図2A】健常対象におけるオランザピン誘導性トリグリセリド増加の抑制を示す図である。
【0010】
図2B】健常対象におけるオランザピン誘導性肝臓酵素増加の抑制(肝臓酵素であるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の増加抑制)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
抗精神病薬誘発性体重増加のリスクがある対象又は抗精神病薬誘発性体重増加を患っている対象を治療するための方法と組成物が開示される。本方法は、オランザピン、リスペリドン、クロザピンなどの抗精神病薬又は他の体重増加誘導性抗精神病薬を受けている患者、又は受けた患者、又は受けることが予期される患者に対してミリコリラント(CORT118335)などのシクロヘキシルピリミジングルココルチコイド受容体モジュレーター(GRM)を投与することを含む。このGRM(例えばミリコリラント)は経口投与可能である。このようなGRMを抗精神病薬と共に投与することにより、抗精神病薬の単独投与に起因する体重を減らすことができ、体重増加速度を低下させることができ、又は体重増加を防止することができる。本方法は、抗精神病薬を先に投与されている患者における体重増加を逆転させることができる。このようなGRMを抗精神病薬と共に投与することにより、インスリン抵抗性又は血中肝臓酵素(AST、ALT)レベル、血中トリグリセリドレベル、若しくは血中インスリンレベルを低下させることができ、又はその増加を抑制することができ、又はその増加を防止することができ、又はその増加を逆転させることができる。したがって、複数の実施形態において、本明細書において開示される前記方法は、抗精神病薬誘発性体重増加を患うリスクがある患者に対して有効量のミリコリラントを投与することによってその患者における抗精神病薬誘発性体重増加の前記リスクを低下させることを含む。抗精神病薬誘発性体重増加を患うリスクがある患者には体重増加誘導性抗精神病薬を未だ投与されていないが投与されることが予期される患者、体重増加誘導性抗精神病薬を現在投与されている患者、体重増加誘導性抗精神病薬を投与された患者、及び他のこのような患者が含まれる。
【0012】
複数の実施形態において、本明細書において開示される前記方法は、抗精神病薬誘発性体重増加を患う患者に対して有効量のミリコリラントを投与することによってその患者における抗精神病薬誘発性体重増加作用を改善することを含む。複数の実施形態において、本明細書において開示される前記方法は、抗精神病薬誘発性体重増加を患う患者に対して有効量のミリコリラントを投与することによって、ミリコリラントで処理されない場合に起こることが予期される体重増加と比較して、その患者における抗精神病薬誘発性体重増加を抑制することを含む。複数の実施形態において、本明細書において開示される前記方法は、抗精神病薬誘発性体重増加を患う患者に対して有効量のミリコリラントを投与することによってその患者における抗精神病薬誘発性体重増加に起因して以前に得られた体重を減少させること、すなわち抗精神病薬誘発性体重増加を逆転させる効果を含む。複数の実施形態では前記体重増加の一部分が逆転する。複数の実施形態ではその部分はその患者における前記抗精神病薬誘発性体重増加の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約7%、又は約10%であり、他の実施形態では抗精神病薬誘発性体重増加に起因して増加した前記体重の約4分の1が逆転し、その他の実施形態では抗精神病薬誘発性体重増加に起因して増加した前記体重の約2分の1が逆転し、さらにその他の実施形態では抗精神病薬誘発性体重増加に起因して増加した前記体重の2分の1より多くが逆転する。抗精神病薬誘発性体重増加を患う患者には体重増加誘導性抗精神病薬を投与された患者、体重増加誘導性抗精神病薬を現在投与されている患者、及び他のこのような患者が含まれる。
【0013】
複数の実施形態において、本明細書において開示される前記方法は、抗精神病薬誘発性体重増加を患う患者に対して有効量のミリコリラントを投与することによってその患者における抗精神病薬誘発性体重増加の量を減少させることを含む。複数の実施形態ではその患者における抗精神病薬誘発性体重増加の量を減少させることには、抗精神病薬の投与前又は投与の開始時のその患者の体重と比較して、その患者が増やすポンド数を減少させることが含まれる。複数の実施形態において、本明細書において開示される前記方法は、抗精神病薬誘発性体重増加を患う患者に対して有効量のミリコリラントを投与することによってその患者における抗精神病薬誘発性体重増加速度を低下させること(例えば、ミリコリラント投与前の抗精神病薬に起因する体重増加速度と比較して、その患者が増やす1日当たりのポンド数、1週間当たりのポンド数、又は1か月当たりのポンド数を減少させること)を含む。抗精神病薬誘発性体重増加を患う患者には体重増加誘導性抗精神病薬を投与された患者、体重増加誘導性抗精神病薬を現在投与されている患者、及び他のこのような患者が含まれる。
【0014】
複数の実施形態において、本明細書において開示される前記方法は、以前の抗精神病薬の投与のために体重を増加させた患者に対して有効量のミリコリラントを投与することによってその患者における前記抗精神病薬誘発性体重増加を逆転させることを含む。
【0015】
抗精神病薬誘発性体重増加を患っている対象を治療するための方法と組成物は開示される。抗精神病薬誘発性体重増加を患うリスクが(現在の又は計画されている抗精神病薬の投与等に起因して)疑われる対象を治療するための方法と組成物が開示される。本方法は、オランザピン、リスペリドン、クロザピン、クエチアピン、セルチンドール、アミスルプリド、アリピプラゾール、アセナピン、ブロナンセリン、ビフェプルノックス、カリプラジン、クロチアピン、イロペリドン、ルラシドン、モサプラミン、メルペロン、パリペリドン、ペロスピロン、ピマバンセリン、レモキシプリド、スルピリド、ジプラシドン、ゾテピン、ペルフェナジン、チオリダジン、クロルプロマジンなどの抗精神病薬及び他のこのような体重増加誘導性抗精神病薬を受けている患者、又は受けた患者、又は受けることが予期される患者に対してミリコリラント(CORT118335としても知られる)を投与することを含む。本方法は、本来であれば患者が増やしたであろう体重を減少させ得る。本方法は、本来であれば患者が経験したであろう体重増加速度を低下させ得る。本方法は、抗精神病薬を投与された患者において体重増加を防止し得る。本方法は、抗精神病薬の投与に起因して患者が経験した体重増加を逆転させ得る。
【0016】
ミリコリラントはシクロヘキシルピリミジン化合物であり、すなわち、ミリコリラントはピリミジンシクロヘキシル構造を含むGRM化合物であり、その構造は、ここで内容の全体が参照により援用される米国特許第8685973号明細書において説明及び開示されている通りである。ミリコリラントは(E)-6-(4-フェニルシクロヘキシル)-5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1H-ピリミジン-2,4-ジオンであり、以下の構造を有する。
【化2】

米国特許第8685973号明細書等において開示されているピリミジンシクロヘキシル構造を含む他のGRM化合物も、抗精神病薬誘発性体重増加を患う対象の治療及び抗精神病薬誘発性体重を患うリスクが疑われる対象の治療にとって適切及び有用であり得る。
【0017】
幾つかの事例ではミリコリラント(又はピリミジンシクロヘキシル構造を含む他のGRM化合物)は経口投与される。
【0018】
よって、申請者は、抗精神病薬誘発性体重増加を患っている対象を治療する方法であって、前記対象に抗精神病薬を投与している間に有効量のシクロヘキシルピリミジングルココルチコイド受容体モジュレーター(GRM)を前記対象に投与することを含む方法であり、前記治療が、抗精神病薬を先に投与されている対象の体重を、前記対象の前記GRMの前記投与の前におけるベースライン体重と比較して、減少させること、又は抗精神病薬と前記GRMの服用中の対象の経時的な体重増加を、前記GRMを服用せずに前記抗精神病薬を服用している対象の平均体重増加と比較して、抑制すること、又は抗精神病薬を先に投与されている前記対象の前記GRMの前記投与の前における血液中のトリグリセリドレベルと比較して、血中トリグリセリドレベルを低下させること、又は抗精神病薬を先に投与されている前記対象の前記GRMの前記投与の前における血液中のベースライン肝臓酵素レベルと比較して、肝臓酵素であるALT、AST、若しくはそれらの両方の血中レベルを低下させること、又は抗精神病薬を先に投与されている前記対象の前記GRMの前記投与の前におけるベースライン血漿インスリンレベルと比較して、血漿インスリンレベルを低下させること、又は抗精神病薬を先に投与されている前記対象の前記GRMの前記投与の前における(HOMA-IR又はHOMA2-IRによって測定される)ベースラインインスリン抵抗性と比較して、インスリン抵抗性を低下させること、又はそれらの組合せに有効である前記方法を開示する。
【0019】
抗精神病薬誘発性体重増加を患っている対象を治療する前記方法の実施形態では前記シクロヘキシルピリミジングルココルチコイド受容体モジュレーター(GRM)は(E)-6-(4-フェニルシクロヘキシル)-5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1H-ピリミジン-2,4-ジオン(ミリコリラントとも呼ばれる)であり、以下の構造を有する。
【化3】
【0020】
前記方法の実施形態では治療は、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加作用を改善することを含む。前記方法の実施形態では治療は、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加作用を抑制することを含む。前記方法の実施形態では治療は、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加の量を減少させることを含む。前記方法の実施形態では治療は、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加速度を低下させることを含む。前記方法の実施形態では治療は、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加を逆転させることによって前記患者の体重を減少させることを含む。
【0021】
申請者は、抗精神病薬誘発性体重増加を患うリスクがある対象を治療する方法であって、前記対象に抗精神病薬を投与している間に有効量のシクロヘキシルピリミジングルココルチコイド受容体モジュレーター(GRM)を前記対象に投与することを含む方法であり、前記対象が抗精神病薬を先に投与されておらず、前記治療が、前記抗精神病薬と前記GRMの服用中の対象の経時的な体重増加を、前記GRMを投与されずに前記抗精神病薬を投与される対象の平均体重増加と比較して、抑制すること、又は前記抗精神病薬を投与される対象の血液中のトリグリセリドレベルの平均的上昇と比較して、血中トリグリセリドレベルの上昇を抑制すること、又は前記抗精神病薬を投与される対象の血液中の肝臓酵素であるALT若しくはAST若しくはそれらの両方のレベルの平均的上昇と比較して、前記肝臓酵素の血中レベルの上昇を抑制すること、又は前記抗精神病薬を投与される対象の血漿インスリンレベルの平均的上昇と比較して、血漿インスリンレベルの上昇を抑制すること、又は前記抗精神病薬を投与される対象のインスリン抵抗性の平均的上昇と比較して、(HOMA-IR又はHOMA2-IRによって測定される)インスリン抵抗性の上昇を抑制すること、又はそれらの組合せに有効である前記方法を本明細書において開示する。
【0022】
抗精神病薬誘発性体重増加を患うリスクがある対象を治療する前記方法の実施形態では前記シクロヘキシルピリミジングルココルチコイド受容体は(E)-6-(4-フェニルシクロヘキシル)-5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1H-ピリミジン-2,4-ジオン(ミリコリラントとしても知られる)であり、以下の構造を有する。
【化4】
【0023】
抗精神病薬誘発性体重増加を患うリスクがある対象を治療する前記方法の実施形態では治療は、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加作用を改善することを含む。抗精神病薬誘発性体重増加を患うリスクがある対象を治療する前記方法の実施形態では治療は、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加作用を抑制することを含む。抗精神病薬誘発性体重増加を患うリスクがある対象を治療する前記方法の実施形態では治療は、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加の量を減少させることを含む。抗精神病薬誘発性体重増加を患うリスクがある対象を治療する前記方法の実施形態では治療は、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加速度を低下させることを含む。抗精神病薬誘発性体重増加を患うリスクがある対象を治療する前記方法の実施形態では治療は、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加を逆転させることによって、前記GRMの投与の前における前記患者の体重と比較して、前記患者の体重を減少させることを含む。
【0024】
本明細書において開示される前記方法のうちのいずれかの方法の実施形態では前記GRM投与は前記GRMの経口投与を含んでよく、前記GRMはミリコリラントであってよい。抗精神病薬誘発性体重増加を患っている対象を治療する前記方法の実施形態では治療は抗精神病薬及びGRM(例えばミリコリラント)の併用投与を含んでよく、前記治療は体重、体重増加、血中肝臓酵素レベル、血漿インスリン、及びインスリン抵抗性(HOM-IR又はHOMA2-IR)のうちの1又は複数を約10%、又は20%、又は25%、又は30%、又は35%、05 40%、又は45%、又はそれより高い割合で低減するのに有効であってよい。
【0025】
抗精神病薬誘発性体重増加を患うリスクがある対象を治療する前記方法のうちのいずれかの方法の実施形態では前記治療は抗精神病薬及びGRM(例えばミリコリラント)の併用投与を含み、前記治療は体重増加、血中肝臓酵素レベル、血漿インスリン、及びインスリン抵抗性(HOM-IR又はHOMA2-IR)のうちの1又は複数を約10%又は20%、又は25%、又は30%、又は35%、05 40%、又は45%、又はそれより高い割合で低減するのに有効であってよい。
【0026】
B.定義
本明細書において使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、本明細書において開示される治療法(ミリコリラント又は他のシクロヘキシルピリミジンGRM化合物の投与等)を受けている、又は受けることになっている、又は受けたヒトを指す。患者は疾患又は障害の医学的処置を必要とする又は受けている対象である。
【0027】
本明細書において使用される場合、「投与する」、「投与している」、「投与された」、又は「投与」という用語は化合物又は組成物(本明細書に記載されるもの等)を対象又は患者に提供することを指す。例えば、化合物又は組成物が患者に対して経口投与される場合がある。
【0028】
本明細書において使用される場合、「有効量」又は「治療量」という用語は、治療を受けている疾患の少なくとも1つの症状を治療する、除去する、又は軽減するために有効な医薬剤の量を指す。幾つかの事例では「治療有効量」又は「有効量」は、検出可能な治療効果又は抑制効果を示すために有用な機能性薬剤又は医薬組成物の量を指すことがある。その効果は当技術分野において知られているいずれかのアッセイ方法によって検出され得る。
【0029】
本明細書において使用される場合、「投与する」、「投与している」、「投与された」、又は「投与」という用語は化合物又は組成物(本明細書に記載されるもの等)を対象又は患者に提供することを指す。投与は経口投与によるものであってよい(すなわち、前記対象は、丸剤としての、カプセル剤としての、液剤としての、又は口を介した投与に適切な他の形態の前記化合物又は組成物を経口で受領する)。経口投与はバッカル投与であってよい(この場合、前記化合物又は組成物は口の中、例えば舌下に保持され、そこで吸収される)。投与は注射によるものであってよく、すなわち、注射針、マイクロニードル、加圧式注入器、又は皮膚を穿刺する他の手段若しくは前記化合物若しくは組成物に前記対象の皮膚を通過させる他の手段を介した前記化合物又は組成物の送達であってよい。注射は静脈内注射(すなわち、静脈内への注射)であってよく、又は動脈内注射(すなわち、動脈内への注射)であってよく、又は腹腔内注射(すなわち、腹腔内への注射)であってよく、又は筋肉内注射(すなわち、筋肉内への注射)であってよく、又は他の注射経路によるものであってよい。投与経路には直腸投与経路、経膣投与経路、経皮投与経路、肺投与経路(吸入等による)、皮下投与経路(前記化合物又は組成物を含む移植物から皮膚への吸収等による)、又は別の投与経路も含まれ得る。
【0030】
本明細書において使用される場合、「化合物」という用語は、特異的で識別可能な化学構造を有する分子部分を表すために使用される。分子部分(「化合物」)は遊離種の形で存在する場合があり、その場合ではその分子部分は他の分子と会合していない。化合物はより大型の凝集物の部分として存在する場合もあり、その場合ではその化合物は他の分子と会合しているが、それでもその化学的同一性を保持している。規定の化学構造を有する分子部分(「化合物」)が溶媒分子と会合している溶媒和化合物はこのような会合形態の一例である。水和物は、前記会合溶媒が水である溶媒和化合物である。「化合物」の記述は、その化合物が遊離型で存在するのか又は会合型で存在するのかに関係なく(列挙された構造の)前記分子部分それ自体を指す。
【0031】
本明細書において使用される場合、「組成物」という用語は、前記化合物ミリコリラント、その化合物の互変異性体、誘導体、類似体、立体異性体、多形体、重水素化種、薬学的に許容可能な塩、エステル、エーテル、代謝物、異性体混合物、薬学的に許容可能な溶媒和化合物、及び薬学的に許容可能な組成物などの特定の成分を特定の量で含む製品、並びにその特定の量のそれらの特定の成分の組合せ物から直接的又は間接的に生じるあらゆる製品を包含するものとされる。医薬組成物に関するこのような用語は、前記有効成分と担体を構成する前記不活性成分を含む製品、並びに前記成分のうちのいずれか2種類以上を直接的又は間接的に組み合わせて、複合化して、若しくは集団にして生じる、又は前記成分のうちの1又は複数の解離から生じる、又は前記成分のうちの1又は複数の他の種類の反応若しくは相互作用から生じるあらゆる製品を包含するものとされる。よって、本発明の前記医薬組成物は、ミリコリラント及び薬学的に許容可能な担体を混合することにより作製されるあらゆる組成物を包含することを意味する。
【0032】
「薬学的に許容可能な賦形剤」及び「薬学的に許容可能な担体」は、対象への活性薬剤の投与と対象による活性薬剤の吸収を補助し、その患者に対して著しい毒物学的有害効果を引き起こすことがない本発明の前記組成物の中に含めることが可能な物質を指す。本明細書において使用される場合、これらの用語は、医薬品の投与に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒体、被覆材、抗細菌剤、抗真菌剤、抗酸化剤、等張剤、及び吸収遅延剤等を含むものとされる。薬学的に許容可能な賦形剤の非限定的な例には水、NaCl、通常生理食塩水溶液、乳酸リンゲル液、通常のショ糖、通常のグルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、封入剤、可塑剤、滑沢剤、被覆材、甘味料、着香料、及び着色料等が挙げられる。当業者は他の医薬賦形剤も本発明では有用であることを理解する。このような媒体及び薬剤を医薬活性物質に使用することは当技術分野においてよく知られている。どの従来の媒体又は薬剤も前記活性化合物と適合しない場合を除いて前記組成物の中に使用することが考えられる。追加の活性化合物を前記組成物の中に組み入れてもよい。当業者は他の医薬賦形剤も本発明では有用であることを理解する。
【0033】
本明細書において使用される場合、「体重」という用語は対象の重量、例えばキログラム(kg)単位の重量を指す。ボディマス指数(BMI)は関連の用語であり、その指数は平方メートル当たりのキログラム単位(kg/m)で報告されることがあり、その平方メートルは体表面積を指す。抗精神病薬の投与後の体重増加はその薬品自体によって及び個人によって異なるが、10週間の期間で4.45キログラム(kg、クロザピン)、4.15kg(オランザピン)、2.92kg(セルチンドール)、及び2.10kg(リスペリドン)の平均体重増が報告されている(Allisonら著、Am J. Psychiatry誌、第156巻(第11号):1686~96頁(1999年))。Allisonらは2001年に(J Clin Psychiatry誌、第62巻(増刊第7号):22~31頁)患者がクロザピン又はオランザピンを10週間にわたって受容した後に約4~4.5kgの体重を増やしたこと、患者が約40週間のオランザピン投与後に約7~8kgの体重を増やし、オランザピンを受容した患者の体重増加が平均して年に約12kgになったこと、リスペリドンを受容している患者が8~12週間で2~3kg(例えば、10週間のリスペリドン治療で約2.5kg)の体重を増やしたこと、及びクエチアピンを受容している患者が「短期間」の治療後に約3kgの体重を増やし、「長期」の治療期間に約2kg~約5.6kgの間の体重を増やしたことを報告した。したがって、抗精神病薬治療を受けている患者は体重を増やし、この体重増加は治療中であれば長期間にわたり継続する可能性がある。例えば、抗精神病薬の服用を開始した人達は、抗精神病薬の開始後1か月、又は2か月、又は3か月、又は4か月、又は5か月、又は6か月の間にその人達のベースライン体重(抗精神病薬の開始前の体重)の約1%、又は約2%、又は約4%、又は約5%、又は約8%、又は約10%、又は約12%、又は約15%の体重を増やす可能性がある。抗精神病薬と共にGRMを服用している患者は、抗精神病薬を服用しているがGRMを服用していない患者よりも体重増加が少ないか、又は体重増加率が低い場合がある。例えば、抗精神病薬を服用している間に体重を増やした人達(抗精神病薬の服用後でGRMの投与前の体重がその人達のベースライン体重である)は、GRMも服用すると体重増加が遅くなる、若しくは抗精神病薬の服用を継続している間の体重増加を止める可能性があり、又は抗精神病薬の服用の継続中にGRM治療を開始してから1か月、若しくは2か月、若しくは3か月、若しくは4か月、若しくは5か月、若しくは6か月の間にGRM治療の開始時のその人達の体重と比較して、その人達の体重をベースライン体重から約1%、若しくは約2%、若しくは約3%、若しくは約4%、若しくは約5%、若しくは約6%、若しくは約7%、若しくは約8%、若しくは約9%、若しくは約10%、若しくは約12%、若しくは約15%減少させる可能性がある。
【0034】
本明細書において使用される場合、「肝臓酵素」という用語は対象の肝臓において活性を有する酵素のうちの1又は複数を指し、肝臓酵素にはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパルテームアミノトランスフェラーゼ(AST)が挙げられるがこれらに限定されない。ALTについての正常な血液検査結果はリットル当たり約7~55単位(U/L)であり得、ASTについては約8~48U/Lであり得る。肝臓酵素の抗精神病薬誘発性増加は顕著な増加であり得る。例えば、肝臓酵素であるALT及びASTは、抗精神病薬の開始後1か月、又は2か月、又は3か月、又は4か月、又は5か月、又は6か月の間にそれらの酵素のベースライン(抗精神病薬の開始前)から約50%、又は約75%、又は約100%、約150%、又は約200%、又は約250%、又は約300%、又は約350%、又は約400%、又は約500%、又は約600%、又は約700%、又は約750%、又は約800%、又はそれより多くの割合だけ増加する可能性がある。本明細書において開示されるように、抗精神病薬を受けている患者へのGRM投与は、抗精神病薬によって誘発される肝臓酵素の増加の程度を軽減する可能性があり、抗精神病薬の服用を継続している間のGRM投与を開始する前の抗精神病薬を以前に投与されたことがある患者に対して投与されると肝臓酵素レベルを低下させる可能性がある。
【0035】
本明細書において使用される場合、「血漿インスリン」という用語は対象の血液(血漿部分)中のインスリンのレベルを指す。血漿インスリンレベルについての正常な空腹時血液検査結果は約25mIU/L(mIUはミリインスリン濃度単位である)未満(リットル当たり約174ピコモル(pmol/L)未満)であり得る。グルコース投与後、正常な血漿インスリンレベルはグルコース投与後約30分の時点で約30~230mIU/L(208~1597pmol/L))の範囲であり得、グルコース投与から約1時間の時点で約20~275mIU/L(125~1900pmol/L))の範囲であり得る。例えば、血漿インスリンレベルは、抗精神病薬の開始後1か月、又は2か月、又は3か月、又は4か月、又は5か月、又は6か月の間にベースライン血漿インスリンレベル(抗精神病薬の開始前)から約15%、又は約20%、又は約25%、又は約40%、又は約50%、又は約75%、又は約100%、又は約125%、又は約150%、又は約175%、又は約200%、又はそれより多くの割合だけ上昇する可能性がある。本明細書において開示されるように、抗精神病薬を受けている患者へのGRM投与は、抗精神病薬によって誘発される血漿インスリンレベルの上昇の程度を軽減する可能性があり、抗精神病薬の服用を継続している間のGRM投与を開始する前の抗精神病薬を以前に投与されたことがある患者に対して投与されると血漿インスリンレベルを低下させる可能性がある。
【0036】
本明細書において使用される場合、「インスリン抵抗性」という用語は、通常の量より多くの量のインスリンがグルコース恒常性に必要とされる状態を指す。インスリン抵抗性は恒常性モデル評価-インスリン抵抗性等によって評価され得る。インスリン抵抗性は、「恒常性モデル評価-インスリン抵抗性」(HOMA-IR)(Matthewsら著、Diabetologia誌、第28巻:412~419頁(1985年)、及びGitchら著、Indian J Endocrinol Metab誌、第19巻(第1号):160~164頁(2015年)等を参照されたい)によって測定可能であり、Rudenskiら著、Metabolism誌、第40巻(第9号):908~917頁(1991年)等において考察されている「恒常性モデル評価2-インスリン抵抗性」(HOMA2-IR)によっても測定可能である。HOMA-IRレベルは健康の指標であり、Auskらはあらゆる原因による死亡率が、1.4を超えるHOMA-IRスコアを有する者において増加することを報告している(1.4を超えるHOMA-IRレベルを有する者ではあらゆる原因による死亡率が最も低い四分位群の者の死亡率よりも高かった(最も低い四分位群におけるHOMA-IRスコアは1.4以下であった)。Diabetes Care誌、第33巻(第6号):1179~1185頁(2010年))。Ebenbichlerら(J. Clin. Psychiatry誌、第64:1436-1439頁(2003年))は、8週間のオランザピン治療中の患者において恒常性モデル評価-インスリン抵抗性(HOMA-IR)が二倍に(1.3±0.5mmol/mU・L~2.6±1.4mmol/mU・Lに)なったが、オランザピンを受けていない対照被検者では基本的に変化しなかったことを報告している(1438頁の表1)。例えば、HOMA-IR又はHOMA2-IRは、抗精神病薬の開始後1か月、又は2か月、又は3か月、又は4か月、又は5か月、又は6か月の間にそれらの指標のベースラインレベル(抗精神病薬の開始前)から約25%、又は約50%、又は約75%、又は約100%、又は約125%、又は約150%、又は約200%、又は約250%、又はそれより多くの割合だけ上昇する可能性がある。このようなHOMA-IR値又はHOMA2-IR値の上昇を遅らせる、停止させる、又は反転させることによって患者の健康及び福祉が改善される。患者のHOMA-IR又はHOMA2-IRを1.4以下まで低下させることがその患者の死亡リスクを低下させると考えられている。本明細書において開示されるように、抗精神病薬を受けている患者へのGRM投与は、抗精神病薬によって誘発されるHOMA2-IRの上昇の程度を軽減する可能性があり、抗精神病薬の服用を継続している間のGRM投与を開始する前の抗精神病薬を以前に投与されたことがある患者に対して投与されるとHOMA2-IRレベルを低下させる可能性がある。
【0037】
本明細書において使用される場合、「トリグリセリド」という用語は、血液の重要な構成要素でもある体脂肪の重要な構成要素を指す。トリグリセリドは3分子の脂肪酸部分を含むトリエステルであり、それらの脂肪酸は個々のトリグリセリド分子の中で同じであっても異なっていてもよい。血中トリグリセリドは血液検査で測定可能であり、典型的にはコレステロール及び関連する血液脂質の測定も含む「脂質パネル」の一部分として測定される。成人の正常なトリグリセリドレベルは例えばデシリットル当たり150ミリグラム(mg/dL、リットル当たり1.7ミリモル(mmol/L)に相当)以下であり得、150mg/dLを超えるレベルは高境界値とみなされ、約200mg/dLを超えるレベルは高いとみなされる。オランザピン錠剤の処方情報に記載されているようにトリグリセリドレベルは12週間にわたってオランザピンで治療された成人では20.8mg/dLだけ上昇し、48週間の間に18.7mg/dLだけ上昇した。これらの成人の患者の40%近くが12週間の時点でトリグリセリドを50mg/dL以上増加させ、成人の患者の60%超が48週間の時点でトリグリセリドを50mg/dL以上増加させた。正常なトリグリセリドレベルは150mg/dL未満であるため、50mg/dLの増加は少なくとも33%の増加を意味する。例えば、トリグリセリドは、抗精神病薬の開始後1か月、又は2か月、又は3か月、又は4か月、又は5か月、又は6か月の間にベースライントリグリセリドレベル(抗精神病薬の開始前)から約15%、又は約25%、又は約40%、又は約50%、又は約75%、又は約100%、又は約125%、又は約150%、又はそれより多くの割合だけ上昇する可能性がある。
【0038】
本明細書において使用される場合、抗精神病薬、抗精神病薬、及び「抗精神病薬」などの用語はオランザピン、リスペリドン、クロザピン、クエチアピン、セルチンドール、アミスルプリド、アリピプラゾール、アセナピン、ブロナンセリン、ビフェプルノックス、カリプラジン、クロチアピン、イロペリドン、ルラシドン、モサプラミン、メルペロン、パリペリドン、ペロスピロン、ピマバンセリン、レモキシプリド、スルピリド、ジプラシドン、ゾテピン、ペルフェナジン、チオリダジン、クロルプロマジン、及び他のこのような体重増加誘導性抗精神病薬を指す。
【0039】
本明細書において使用される場合、「グルココルチコイド受容体」(「GR」)という用語は、デキサメタゾンなどのコルチゾール及び/又はコルチゾール類似体に対して特異的に結合する細胞内受容体ファミリーのうちの1つを指す(Turner及びMuller著、J. Mol. Endocrinol.誌、2005年10月1日、第35巻、283~292頁等を参照されたい)。グルココルチコイド受容体はコルチゾール受容体とも呼ばれる。この用語にはGRの異性体、組換えGR、及び変異型GRが含まれる。コルチゾール受容体はデキサメタゾンなどのコルチゾール及び/又はコルチゾール類似体に対して特異的に結合するグルココルチコイド受容体(GR)であり、具体的にはII型GRである(Turner及びMuller著、J. Mol. Endocrinol.誌、2005年10月1日、第35巻、283~292頁等を参照されたい)。
【0040】
鉱質コルチコイド受容体(MR)はI型グルココルチコイド受容体(GR I)としても知られ、ヒトのアルドステロンによって活性化される。
【0041】
「グルココルチコイド受容体モジュレーター」(GRM)という用語は、GRのアゴニストへの結合に関連するあらゆる生物学的応答を調節するあらゆる化合物を指す。例えば、アゴニストとして作用するGRM、例えばデキサメタゾンなどはHepG2細胞(ヒト肝細胞癌細胞株、ECACC、英国)においてチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の活性を上昇させる。アンタゴニストとして作用するGRM、例えばミフェプリストンはHepG2細胞においてチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の活性を低下させる。TAT活性は、A. Aliら著、J. Med. Chem.誌、2004年、第47巻、2441~2452頁によって文献中に概説されるように測定され得る。
【0042】
GRM化合物にはピリミジンシクロヘキシル骨格を含む化合物、例えばミリコリラントなどが挙げられる。ピリミジンシクロヘキセニル骨格を含む例示的なGRM化合物にはここで内容の全体が参照により援用される米国特許第8685973号明細書及び国際出願PCT/US2019/035229号明細書において開示される化合物が挙げられる。上記及び下記の本明細書において開示される全ての特許、特許出願公開、及び特許出願は参照により全体が本明細書に援用される。
【0043】
シクロヘキシルピリミジン構造を含む例示的なグルココルチコイド受容体モジュレーターには米国特許第8685973号明細書、米国特許第8906917号明細書、及び米国特許第9321736号明細書の中に記載されるモジュレーターが挙げられる。複数の実施形態では前記シクロヘキシルピリミジンGRMは(E)-6-(4-フェニルシクロヘキシル)-5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1H-ピリミジン-2,4-ジオン(「ミリコリラント」又は「CORT118335」又は「MIRI」としても知られる)であり、以下の構造を有する。
【化5】
【0044】
幾つかの事例では前記GRM(例えばミリコリラント)の有効量は1日にキログラム当たり1~20ミリグラム(mg/kg/日)の間の一日用量である。幾つかの実施形態では前記GRMの一日用量は1日当たり10、20ミリグラム、40ミリグラム、60ミリグラム、80ミリグラム、100ミリグラム、120ミリグラム、140ミリグラム、160ミリグラム、180ミリグラム、200ミリグラム、300ミリグラム、400ミリグラム、500ミリグラム、600ミリグラム、700ミリグラム、800ミリグラム、900ミリグラム、1000ミリグラム、1100ミリグラム、1200ミリグラム、1300ミリグラム、1400ミリグラム、1500ミリグラム、1750ミリグラム、又は2000ミリグラム(mg/日)である。幾つかの事例では前記GRMは少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、25週間、30週間、35週間、40週間、45週間、50週間、55週間、60週間、65週間、70週間、75週間、又は80週間にわたって投与される。
【0045】
E.グルココルチコイド受容体モジュレーター(GRM)
有効量のグルココルチコイド受容体モジュレーター(GRM)の投与は多数の疾患及び障害の治療において有用である。この様な治療において有用なGRMにはピリミジンシクロヘキシル構造を含む非ステロイド化合物が挙げられる。複数の実施形態ではこの構造は、ここで内容の全体が参照により援用される米国特許第8685973号明細書において説明及び開示されている通りである。複数の実施形態ではピリミジンシクロヘキシル化合物を含む前記化合物、並びにその塩及び異性体は、以下の構造を有し、
【化6】
式中、
破線は存在しないか又は結合であり、
XはO及びSからなる群より選択され、
は、所望により1~3個のR1a基で置換されていてよいシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群より選択され、
各R1aは独立してH、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキル-OR1b、ハロゲン、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアロキシ、-OR1b、-NR1b1c、-C(O)R1b、-C(O)OR1b、-OC(O)R1b、-C(O)NR1b1c、-NR1bC(O)R1c、-SO1b、-SONR1b1c、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群より選択され、
1b及びR1cはそれぞれ独立してH及びC1~6アルキルからなる群より選択され、
はH、C1~6アルキル、C1~6アルキル-OR1b、C1~6アルキル-NR1b1c、及びC1~6アルキレン-ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され、
はH及びC1~6アルキルからなる群より選択され、
Arは、所望により1~4個のR基によって置換されていてよいアリールであり、
各Rは独立してH、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、ハロゲン、C1~6ハロアルキル、及びC1~6ハロアルコキシからなる群より選択され、
は結合又はC1~6アルキレンであり、
下付き文字nは0~3の整数である。
【0046】
具体的な例では前記ピリミジンシクロヘキシル化合物はミリコリラント、すなわち以下の構造を有する(E)-6-(4-フェニルシクロヘキシル)-5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1H-ピリミジン-2,4-ジオンである。
【化7】
【0047】
医薬組成物及び投与
申請者らはミリコリラントを含有する医薬組成物を本明細書において開示する。ミリコリラントを含有する経口調製物には患者による摂取にとって適切な錠剤、錠剤、粉剤、糖衣剤、カプセル剤、液剤、ロゼンジ剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤等が含まれ得る。製剤技術及び投与技術の詳細は科学文献及び特許文献の中によく記載されており、最新刊のRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing社、イーストン、ペンシルバニア州(「Remington’s」)等を参照されたい。粉剤では前記担体は微細固体であり、その担体は微細化したミリコリラントなどの活性成分との混合物の状態にある。錠剤では 前記活性成分 は、必要な結合特性を有する前記担体と適切な割合で混合され、所望の形と大きさに圧縮される。前記粉剤及び錠剤は前記活性化合物を5%又は10%~70%の割合で含むことが好ましい。適切な担体には炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、及びココアバター等が挙げられる。「調製物」という用語は前記活性化合物と担体としてのカプセル封入材の製剤を含むとされ、その担体によって他の担体の有無にかかわらず前記活性成分がその担体によって封入され、そうして前記活性化合物と前記担体が合同しているカプセルが提供される。カシェ剤及びロゼンジ剤も同様に含まれる。錠剤、粉剤、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、及びロゼンジ剤は経口投与に適切な固体剤形として使用され得る。
【0048】
適切な固形賦形剤は、ラクトース、ショ糖、マンニトール、又はソルビトールをはじめとする糖、トウモロコシ、小麦、コメ、ジャガイモ、又は他の植物に由来するデンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース、及びアラビアガム及びトラガカントガムをはじめとするガム類、並びにゼラチン及びコラーゲンなどのタンパク質を含むがこれらに限定されない炭水化物充填剤又はタンパク質充填剤である。所望により崩壊剤又は安定化剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムなどのそれらの塩が添加されてもよい。
【0049】
糖衣錠コアには濃縮糖溶液などの適切な被覆材が付与されており、その被覆材はアラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を含む場合もある。製品の識別のために又は活性化合物の量(すなわち、投与量)を明らかにするために染料又は色素が錠剤被覆材又は糖衣錠被覆材に添加されてもよい。また、本発明の医薬調製物はゼラチン製のプッシュフィットカプセル並びにゼラチンとグリセロール又はソルビトールなどの被覆材からできている軟質封入カプセル等を使用して経口使用され得る。プッシュフィットカプセル剤はラクトース又はデンプンなどの充填剤又は結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び所望により安定化剤と混合されたGRモジュレーターを含むことができる。軟質カプセル剤では前記GRモジュレーター化合物は脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体の中に安定化剤と共に又は安定化剤を含まずに溶解又は懸濁され得る。
【0050】
前記医薬製剤は単位投与剤形であることが好ましい。このような形態では前記調製物は適切な量のミリコリラントなどの前記活性成分を含む単位用量に細分化される。前記単位投与剤形はパッケージ入り調製物であり得、そのパッケージはパック入りの錠剤、カプセル剤、及びバイアル瓶又はアンプル瓶の中の粉剤などの分割された量の調製物を含む。また、前記単位投与剤形はそれ自体がカプセル剤、錠剤、カシェ剤、若しくはロゼンジ剤であり得、又はパッケージ形態になっている適切な数のこれらのうちのいずれかであり得る。
【0051】
単位用量調製物中の活性成分の量は0.1mg~10000mg、より典型的には1.0mg~6000mg、最も典型的には50mg~500mgの間で変化し、又は調節され得る。適切な投与量には約1mg、約5mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、又は約2000mgも含まれ、それは前記活性成分の具体的な用途及び効力に左右される。前記組成物は所望により他の適合する治療薬を含むこともできる。
【0052】
幾つかの実施形態ではミリコリラントは1回の投与で投与される。他の実施形態では前記GRMは1回より多くの投与、例えば2回、3回、4回、5回、6回、7回、又はそれより多くの投与回数で投与される。幾つかの事例ではそれらの投与は等しい量の投与である。他の事例ではそれらの投与は異なる量の投与である。それらの投与は投与期間の経過に伴って増加又は減少してよい。前記の量は患者の特徴等に応じて変化する。
【0053】
前記対象は、例えば2~48時間の期間にわたって1回又は複数回の投与で少なくとも1用量のミリコリラントを投与され得る。幾つかの実施形態ではミリコリラントは単回投与として投与される。他の実施形態ではミリコリラントは2~48時間の期間、例えば2時間の期間、3時間の期間、4時間の期間、5時間の期間、6時間の期間、7時間の期間、8時間の期間、9時間の期間、10時間の期間、11時間の期間、12時間の期間、14時間の期間、16時間の期間、18時間の期間、20時間の期間、22時間の期間、24時間の期間、26時間の期間、28時間の期間、30時間の期間、32時間の期間、34時間の期間、36時間の期間、38時間の期間、40時間の期間、42時間の期間、44時間の期間、46時間の期間、又は48時間の期間にわたって1回より多くの投与、例えば2回、3回、4回、5回、又はそれより多くの投与回数で投与される。幾つかの実施形態では前記GRMは2~48時間、2~36時間、2~24時間、2~12時間、2~8時間、8~12時間、8~24時間、8~36時間、8~48時間、9~36時間、9~24時間、9~20時間、9~12時間、12~48時間、12~36時間、12~24時間、18~48時間、18~36時間、18~24時間、24~36時間、24~48時間、36~48時間、又は42~48時間にわたって投与される。
【0054】
製剤の単回投与又は複数回投与は、患者が必要及び忍容する投与量と頻度に応じて行われ得る。前記製剤は、前記疾患状態を効果的に治療するために充分な量のミリコリラントを提供する必要がある。したがって、1つの実施形態ではミリコリラントを経口投与するための前記医薬製剤は、1日に体重1キログラム当たり約1~約50mg(mg/kg/日)の間の一日用量の製剤であり、例えば約2mg/kg/日~約20mg/kg/日であってよい。
【0055】
ミリコリラント処理の期間は対象の症状の重症度及びその対象のミリコリラントに対する応答に応じて変化し得る。幾つかの実施形態ではミリコリラントは約1週間~104週間(2年間)の期間、より典型的には約2週間~約80週間の期間、最も典型的には約3週間~約20週間の期間にわたって投与され得る。一般的にミリコリラントの投与は臨床的に有意な軽減又は改善が認められるまで継続される必要がある。ミリコリラントを用いる治療は2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、10年間、又はさらに長い期間にわたって続き得る。
【0056】
幾つかの実施形態ではミリコリラントの投与は連続的ではなく、1回又は複数回の期間にわたって停止可能であり、その後に投与が再開する1回又は複数回の期間が続く。投与が停止する適切な期間には5~9週間、5~16週間、9~16週間、16~24週間、16~32週間、24~32週間、24~48週間、32~48週間、32~52週間、48~52週間、48~64週間、52~64週間、52~72週間、64~72週間、64~80週間、72~80週間、72~88週間、80~88週間、80~96週間、88~96週間、及び96~100週間が含まれる。投与が停止する適切な期間には5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、24週間、25週間、30週間、32週間、35週間、40週間、45週間、48週間、50週間、52週間、55週間、60週間、64週間、65週間、68週間、70週間、72週間、75週間、80週間、85週間、88週間、90週間、95週間、96週間、及び100週間も含まれる。
【0057】
ミリコリラントは、グルココルチコイド受容体の調節において有用であることが知られている他の活性薬剤、又は単独では有効ではないことがあるが前記活性薬剤の有効性に寄与し得る補助薬剤と併用され得る。
【0058】
ミリコリラントを含む医薬組成物が製剤された後にその医薬組成物を適切な容器の中に入れ、適応症の治療についてのラベルを添付することができる。ミリコリラントの投与のためにはこのようなラベル添付は投与量,投与頻度、及び投与方法に関する指示等を含む。
【0059】
前述の発明は、明確な理解のために図や実例によって幾らか詳細に説明されてきたが、添付されている特許請求の範囲の主旨又は範囲から逸脱することなく特定の変更及び改変を本発明に対して行い得ることは、当業者には、本発明の教示に照らして、容易に明らかになる。
【実施例
【0060】
以下の実施例は例示としてのみ提示され、限定として例示されるものではない。当業者は、基本的に類似の結果を生じさせるために変更又は改変可能である重要ではない様々な パラメータを容易に認識する。
【0061】
実施例1.ラットにおけるオランザピン誘発性体重増加に対するミリコリラントの作用
オランザピン誘発性体重増加に対するミリコリラントの作用を雌のラットにおいて評価した。
【0062】
抗精神病薬誘発性の体重増加は第2世代抗精神病薬を服用する患者にとって重大な問題である。薬の差替え、生活スタイルの修正、及びメトホルミンの使用などの管理戦略のこれまでの成果は、これらの患者の体重に対してまずまずの入り混じったものであった。
【0063】
ミリコリラントはプロゲステロン受容体に対する親和性を有しないGRモジュレーターであり、ラットにおいてオランザピン誘発性体重増加を防止することが報告されている(Huntら著、Bioorg Med Chem Lett.誌、第22巻(第24号):7376~80頁(2012年))。申請者らは、ミリコリラントがラットにおけるオランザピン誘発性体重増加を逆転させる能力を有することを本明細書において開示する。
【0064】
方法
オランザピン誘発性体重増加に対するミリコリラントの作用を評価するために60匹のスプラグ・ダウリー雌ラットを無作為に5処理群に分けた。48匹のスプラグ・ダウリー雌ラットが34日間にわたって通常食の食事中に2.4mg/kg/日の用量のオランザピン(OLZ)を受容した。35日目にこれらのネズミを無作為に4種類の介入に割り当て、57日目まで検査し続けた。これらの4介入群は、OLZ+毎日のベヒクルの強制経口投与群、OLZ+1日1回の2mg/kg/日のミリコリラントの投与群、OLZ+1日2回の1mg/kgのミリコリラントの投与群、及びOLZ+1日1回の10mg/kg/日のミリコリラントの投与群であった。5番目の群であるベヒクルのみの群(n=12)を57日間全体にわたる対照として含めた。本試験デザインの詳細は以下の表に示されている(表A及び表B)。
【表1】

【表2】
【0065】
5週間の期間(「体重誘導期」)にわたるオランザピン(OLZ)投与によって体重増加を誘導した。6週間目にミリコリラント(MIRI、3種類の投与計画)又はベヒクル2のどちらかの経口投与を開始した。この期間(「処理期」)の間では継続してオランザピンを投与した。本試験の8週間の期間の対照としてベヒクルのみの群を含めた。体重、食物消費量、死亡率、及び臨床観察に基づいて有効性を評価した。
【0066】
強制経口投与により1日目から56日目まで1日に2回(12±1時間を空けて)の頻度でベヒクル1[1.5%(体積/体積)1N塩酸、1%(重量/体積)クレモホールEL、97.5%注射用無菌水(米国薬局方)]及び前記誘導物品(オランザピン)を投与した。前記誘導群の用量レベルは2.5mL/kg/投与(5mL/kg/日)の投与分量において1.2mg/kg/投与であった。前記ベヒクル群は前記誘導群と同様にしてベヒクル1を受容した。個体ごとの投与量は直近の体重に基づいた。投与適用日にはベヒクル1及び前記誘導物品をベヒクル2及びミリコリラント(「検査物品」又はCOR118335とも呼ばれる)の前に投与した。これらの物品は投与と投与の間には冷蔵して保存された。強制経口投与により35日目から57日目までベヒクル2[注射用無菌水(米国薬局方)中の10%(体積/体積)ジメチルスルホキシド、0.1%(体積/体積)ツイーン80、及び0.5%(重量/体積)ヒドロキシプロピルメチルセルロース]又はミリコリラントを投与した。第1群~第3群の動物には0mg/kg/投与又は1mg/kg/投与の用量レベル及び5mL/kg/投与(10mL/kg/日)の投与分量でベヒクル2又はミリコリラントを1日に2回(12±1時間を空けて)の頻度で投与した。第4群及び第5群の動物には2mg/kg/投与又は10mg/kg/投与の用量レベル及び10mL/kg/投与(10mL/kg/日)の投与分量でミリコリラントを1日に1回(24±2時間を空けて)の頻度で投与した。個体ごとの投与量は直近の体重に基づいた。ベヒクル2及びミリコリラントは投与時に連続的に撹拌され、前記物品(ベヒクル調製物、オランザピン調製物、及びミリコリラント調製物)は投与と投与の間には冷蔵して保存された。57日目では1用量だけを午前中に投与した。
【0067】
体重を順化期間中は週に3回の頻度で、-1日目からは隔日で、57日目には処理前に測定及び記録した。食物消費量を-14日目から毎日測定及び記録した。-1日目では初回時の2時間以内に体重と食物消費量を測定した。15グラム(g)を超える体重の変化及び5gを超える食物消費量の変化はどの変化についても検証された。餌の容器を変えるときは正確性を期すために餌の容器を2回計量した。
【0068】
5週間にわたるオランザピンによる体重増加の誘導の後に1日に2回(BID:12±1時間を空けた1日に2回の頻度)の1mg/kg/投与での投与、1日に1回(QD:24±2時間を空けた1日に1回の頻度)の2mg/kg/投与での投与、及びQDの10mg/kg/投与での投与である3種類の投与計画によって雌ラットにおいてミリコリラントの有効性を評価した。順化期間中では通常の体重増加が観察され、-21日目の169グラム(g)~174gという範囲の群平均から動物が無作為に処理群に分けられる時点である-1日目の237gという群平均まで体重が増加した。ミリコリラント処理の開始前の1日目~34日目までのオランザピン誘導期では群平均体重が同様に34日目において第2群から第5群までそれぞれ298g、296g、292g、及び292gまで増加した。これらの値はベヒクルのみの群である第1群の270gよりも統計学的に有意に高かった。これらの値はオランザピンに起因するとされる8~10%の体重増加を意味する。したがって、本モデルにおいて予期されたように、全てのオランザピン処理群において誘導期[1日目~34日目(第1週~第5週)]にオランザピンの2.4mg/kg/日での1日に2回の頻度の経口投与によって体重と食物消費量が有意に増加し、これらの作用は、ベヒクルのみ対照と比較して、オランザピン対照群では試験期間の残りの期間[35日目~57日目(第6週~第9週)]を通して維持された。
【0069】
35日目~57日目までの処理期ではミリコリラント処理群である第3群~第5群の群平均体重はそれぞれ269g、272g、及び258gまで減少し、57日目の時点では最小二乗(LS)平均値が268g、272g、及び259gであり、これらの値はオランザピン対照群である第2群の最小二乗平均値(309g)よりも統計学的に有意に低い値であり、それぞれミリコリラントによる13%、12%、及び17%の減少を意味した。このミリコリラント介在性の体重減少作用は、第3群~第5群についてそれぞれ36日目、38日目、及び36日目から統計学的に有意になった。このミリコリラント処理によって処理の1週目以内にベヒクルのみの群である第1群で見られる体重に近い値まで体重が減少し、且つ、オランザピンが存在するにもかかわらずこの処理期間の残りの期間を通してこの効果が維持されたことが注目に値する。この同じ処理期間の間にオランザピン対照群である第2群の動物は、ベヒクルのみの群である第1群の動物の体重増加よりも統計学的に有意に多い体重増加を示し続け、57日目までに309gに達した。この体重は第1群の体重(280g)よりも29g又は10%重い。ミリコリラント作用には低用量(1mg/投与)BID群である第3群と中用量(2mg/投与)QD群である第4群との間では統計学的な差がなかった。一方、高用量(10mg/投与)QD群である第5群は、42日目、44日目、48日目、及び54日目において低用量BID群である第3群よりも統計学的に有意に著しい体重の減少を示し、且つ、40日目~57日目において中用量群である第4群よりも統計学的に有意に著しい体重の減少を示した。第1群と比較すると高用量QD群である第5群の群LS平均体重は42日目~57日目の間では統計学的に有意に低値であったが、低用量BID群である第3群も、統計学的有意性が46日目と50日目においてのみ達成されるずっと軽い程度ではあるがこのような効果を示したことに留意されたい。57日目に第3群と第5群は268g及び259gの体重を有し、これらの体重は第1群の体重(280g)よりも4%及び8%少なく、統計学的に有意であった。
【0070】
ミリコリラントの前記経口投与によって3種類全ての投与計画においてこのミリコリラント処理期間の1週目(第6週)以内にオランザピン誘発性体重増加と食物消費量の増加が完全に抑制され、且つ、処理期間の間ではこれらの効果が維持された。ミリコリラントは食物消費量の急激な減少も引き起こし、ミリコリラントで処理されたラットの食物消費量はその1週目ではベヒクルのみ対照群の基底レベルよりも少なかったが、3種類全ての投与計画について食物消費量は第9週までに前記基底レベルと同等のレベルにまで回復した。このミリコリラント介在性の体重減少は第7週及び第8週の間に横ばいになり、第8週~第9週の間にベヒクルのみ対照が示す前記基底体重を超えない程度まで部分的に回復した。本試験の最後には基底体重と比較して8%の体重減少が10mg/kg/投与の用量でのQD投与計画によって生じ、一方で1mg/kg/投与の用量でのBID投与計画及び2mg/kg/投与の用量でのQD投与計画ではそれぞれ4%の体重減少であるか、又は有意な体重減少が無かった。したがって、ベヒクル処理ラットと比較して基礎体重増加は低用量BID投与計画及び高用量QD投与計画によって抑制されたが中用量QD投与計画によっては抑制されず、ベヒクルのみ対照と比較して高用量QDが最も顕著であった。しかしながら、低用量BID群と高用量QD群の両方において体重の回復傾向を含む安定化が処理最終週(50日目~57日目)に認められた。
【0071】
オランザピン処理ラットにおける食物消費量はミリコリラントを用いる追加処理によって正常化した。体重誘導期(第1週~第5週)ではオランザピン処理群全体の食物消費量の平均増加率は13%であった。ミリコリラントの添加によって本試験の終了までに食物消費量がベヒクルのみのレベルまでに正常化された。処理の1週目ではミリコリラント処理動物の食物消費量はベヒクルのみ対照と比較すると13%~20%少なく(P<0.01)、オランザピンのみ動物と比較すると16%~23%少なかった(P<0.01)。食物消費量は、3種類全てのミリコリラント投与計画について本試験の終了までにベヒクルのみのレベルにまで回復した。
【0072】
このモデルについて予期される徴候、例えばミリコリラント処理に関連する体重及び食物消費量の減少に帰すことができる痩身や排便量の減少などの他には死亡例もミリコリラント処理関連有害臨床徴候も無かった。ミリコリラントの最終的血漿中濃度は1mg/kg/投与の用量のBID投与計画及び2mg/kg/投与の用量のQD投与計画についてそれぞれ61.43(±21.81)ng/mL及び69.47(±24.87)ng/mLであった。10mg/kg/投与の用量のQD投与計画については、ミリコリラント血漿濃度は244.25(±202.00)ng/mLであり、動物番号5503の887ng/mLという試料外れ値を除外した後では185.82(±59.52)ng/mLであった。この185.82ng/mLという値に基づくと最高の用量での曝露は最低の用量の曝露よりも約3倍又は約4倍高い。したがって、血漿ミリコリラントレベルはその一日用量レベルに対してほぼ比例関係にあり、このモデルにおいて観察されたミリコリラントの有効レベルと一致する。血漿ミリコリラント濃度が1mg/kg/投与の用量のBID投与計画と2mg/kg/投与の用量のQD投与計画との間で類似していたことから、1mg/kg/投与の用量での1日に2回の投与での曝露レベルに相当する曝露レベルを達成するには2mg/kgの用量での1日に1回の投与で充分であったことが示唆され、前記有効レベルにおける結果と一致する。
【0073】
結果
オランザピン処理群は、34日目までにベヒクルのみ対照群と比較して重い平均体重を有した(294.5gに対して270g、p<0.05)。OLZ+ベヒクル群は35日目~57日目に体重を増やし続けた。しかしながら、OLZ+ミリコリラントを受容するように無作為に分けられたラットでは全てのラットにおいて、OLZ+ベヒクル群と比較して統計学的に有意(p<0.05)な12~17%の体重の減少があった。ミリコリラント処理ラットにおける体重の減少はすぐに起こり、本試験が終了するまで持続した。全てのネズミがミリコリラント又はベヒクルを用いる介入期間において健康を保ち、活動的であった。
【0074】
まとめと個々の体重データが図1に示されており、その図ではラットのオランザピンの体重増加に対する効果が示されている(平均値が重量として示されている)。
【0075】
結論として、ミリコリラント(CORT118335)は雌ラットのオランザピン誘発性体重増加の抑制に有効であった。試験した3種類全ての投与計画について、ミリコリラントは体重及び食物消費量の両方のオランザピン誘発性増加の一日用量依存的な抑制に有効であり、その全身曝露レベルと良好な相関を示した。処理期間の終了時に1mg/kg/投与の用量のBID投与計画と2mg/kg/投与の用量のQD投与計画ではそれぞれ前記基底体重と比較した体重減少がほとんど又は全く示されなかったが、10mg/kg/投与の用量のQD投与計画では基底体重と比較した中程度の体重減少が生じた。
【0076】
これらの結果から、ミリコリラントは、オランザピンの削減又は中止を必要とすることなく、ラットにおけるオランザピンに関連する体重増加の逆転に有効であることが示される。
【0077】
実施例2.健康な男性ヒト対象においてミリコリラントはオランザピンによる抗精神病薬誘発性体重増加を抑制する
オランザピン(OLZ)及びリスペリドン(RSP)などの抗精神病薬は、クオリティ・オブ・ライフの低下、服薬コンプライアンスの低下、並びに新血管疾患の罹患率及び死亡率の上昇につながる著しい体重増加と関連を有することが一般的である。本実施例は健常対象における二重盲検プラセボ対照治験の結果を提示し、グルココルチコイド受容体モジュレーターであるミリコリラント(MIRI)が一般的に処方される抗精神病薬であるオランザピン(OLZ、Zyprexa(登録商標))によって引き起こされる体重増加を有意に抑制したことを説明する。
【0078】
ミリコリラント(MIRI)はプロゲステロン受容体に対する親和性を有しないグルココルチコイド受容体モジュレーターであり、ラットにおいてOLZ誘発性体重増加を防止し、逆転させることが示されている。本研究は、健康な男性対象におけるMIRI+OLZの共投与によるOLZ誘発性体重増加の抑制を実証することを目的としている。
【0079】
オランザピンなどの抗精神病薬は数百万人の患者の健康にとって不可欠であるが、それらの抗精神病薬が引き起こす体重増加や他の代謝系の副作用は生命に関わるものであり、多くの場合に患者を治療の中断に追い込む。我々の第1b相治験において試験された用量レベルは600mg/日であった。この用量ではオランザピンとミリコリラントを与えられた健常対象では体重増加がオランザピンとプラセボを受容した対象よりも少なかった(表2参照)。また、ミリコリラントを受容した対象ではオランザピン治療の開始時に一時的に上昇することが多い肝臓損傷のマーカーの増加があまり急激ではなく、ミリコリラントが肝臓における保護作用を有する可能性を示唆した(表2参照)。オランザピンのみの群内の5人の対象は肝臓酵素の増加のために本試験を完了することができず、一方でミリコリラント群の1人の患者がこの問題を経験した。
【0080】
方法
年齢が18~55歳であり、BMIが18~25kg/mの間であり、且つ、体重が安定(1日目の投与前の体重がスクリーニング時の体重の±2.0%以内であるとして規定)している健康な男性対象において2週間の単施設二重盲検無作為化プラセボ対照試験を実施した。66人の対象が無作為に1:1に分けられて14日間にわたってオランザピン(OLZ、10mg/日)と併用して投与されるミリコリラント(MIRI、600mg/日)又は相当するプラセボ(PBO)のどちらかを受容した。試験期間中は対象全員が自由に食物を摂ることができた。欠落している値に適用される補完を含む反復測定モデルを用いてOLZ+MIRIと比較したOLZ+PBOの投与後の絶対体重の平均的変化の差異を評価した。
【表3】
【0081】
結果
報告された有害事象は、オランザピンについて予期される有害事象と一致した。6人の参加者(OLZ+MIRI群の1人、OLZ+PBO群の5人)が肝臓酵素の増加のために本試験を中断し、2人(OLZ+MIRI群の1人、OLZ+PBO群の1人)が個人的な理由で中断した。表2(表1に由来するベースライン値を使用)に示されているように、8日目では体重が、オランザピン+プラセボによる4.9%の増加と比較して、オランザピン+ミリコリラントによってベースラインから約3.6%増加した。15日目には体重増加はオランザピン+ミリコリラント投与についてはわずか5.4%であったが、体重増加はオランザピン+プラセボについてはベースライン体重の6.9%であった。8日目ではインスリンが、オランザピン+プラセボによる121%の増加と比較して、オランザピン+ミリコリラントによってベースラインから約92%増加した。15日目にはインスリン増加はオランザピン+ミリコリラント投与についてはわずか97%であったが、インスリン増加はオランザピン+プラセボについては127%であった。インスリン抵抗性(HOM2-IRによって測定される)プラセボによってベースラインから(ベースラインよりも約2.5倍高いHOMA2-IRレベルまで)150%上昇したが、オランザピンとのミリコリラントの共投与によってインスリン抵抗性の上昇はわずか約90%(ベースラインに比べて2倍未満の上昇)まで抑制された。(HOMA2-IR値は、SAS向けのHOMA(HOMA2モデル)カルキュレーター(登録商標)アプリケーションプログラミングインターフェース(オックスフォード大学、2013年、ウェッブサイトwww.dtu.ox.ac.uk/homacalculatorで入手可能)を使用して空腹時のグルコースレベルとインスリンレベルから計算された)。8日目ではトリグリセリドが、オランザピン+プラセボによる115%の増加と比較して、オランザピン+ミリコリラントによってベースラインから約60%増加した。15日目にはトリグリセリド増加はオランザピン+ミリコリラント投与についてはわずか37%であったが、トリグリセリド増加はオランザピン+プラセボについては65%であった。7日目では肝臓酵素であるASTが、オランザピン+プラセボによる137%の増加と比較して、オランザピン+ミリコリラントによって71%増加した。12日目にはAST増加はオランザピン+ミリコリラント投与については192%であったが、AST増加はオランザピン+プラセボについては338%であった。7日目では肝臓酵素ALTが、オランザピン+プラセボによる225%の増加と比較して、オランザピン+ミリコリラントによって152%増加した。12日目にはALT増加はオランザピン+ミリコリラント投与については528%であったが、ALT増加はオランザピン+プラセボについては724%であった。
【表4】
【0082】
ミリコリラントはオランザピン誘発性体重増加を抑制する
オランザピン+プラセボを受容した参加者は14日間の試験期間にわたって顕著な体重増加を得た(15日目までに5.0kg)。ミリコリラントの共投与によって体重増加が効果的に抑制された(15日目までに3.9kg)。試験期間中にOLZ+PBO群と比較してOLZ+MIRI群では体重増加が少なく、これらの処理群の間で8日目には-0.9kg(P=0.044、95%CI[-1.77、-0.02])及び15日目には-1.07kg(P=0.017、95%CI[-1.94、-0.19])という統計学的に有意な差異を生じた。示されているデータは反復測定付きの混合効果モデル(MMRM)から導出される。
【0083】
平均体重の増加は8日目(p=0.04、それぞれ2.6kgに対して3.5kg)及び15日目(p=0.01、それぞれ3.9kgに対して5.0kg)にOLZ+MIRIよりもOLZ+PBOにおいて多かった。12日目には肝臓酵素であるALTはOLZ+PBO群では165.01IU/Lだけ増加し、OLZ+MIRI群では115.02IU/Lだけ増加した。ASTはOLZ+PBO群では77.07IU/Lだけ増加し、OLZ+MIRI群では44.83IU/Lだけ増加した。2人の対象が個人的な理由のために同意を取り下げた。6人の対象が肝臓酵素の増加のために中断した(5人はOLZ+PBO群から、1人はOLZ+MIRIからであった)。(ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ、AST:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)。試験期間中にOLZ+PBO群と比較してOLZ+MIRI群では体重増加が少なく、これらの処理群の間で8日目には-0.9kg(P=0.044、95%CI[-1.77、-0.02])及び15日目には-1.07kg(P=0.017、95%CI[-1.94、-0.19])という統計学的に有意な差異を生じた。示されているデータは反復測定付きの混合効果モデル(MMRM)から導出される。
【0084】
これらの結果は表2にまとめられており、且つ、図1(体重増加)並びに図2A及び図2B(肝臓酵素)に示されている。
【0085】
ミリコリラントは肝臓酵素のオランザピン誘発性増加を減少させる
ミリコリラントのオランザピンとの共投与によってOLZ+PBO群と比較して有意に少ないアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の増加が生じた。12日目にはMMRMに基づくOLZ+MIRI群とOLZ+PBO群との間のASTレベルの差は-32.24IU/L(P=0.009)であり、これはミリコリラントによってASTの増加が約40%少なくなったことに相当する。同様に、MMRMに基づくこれらの処理群間でのALTレベルの差は12日目に-49.99IU/L(P=0.03)であった。これはミリコリラントによってALTの増加が約30%少なくなったことを反映している。肝臓酵素の増加のために本試験を中断した6人の参加者の内の5人がOLZ+PBO群からの者であったことに留意されたい。ミリコリラントのオランザピンとの共投与によって少ないAST及びALTの増加が生じた。MMRMモデルに基づくと12日目においてASTレベル及びALTレベルの差が統計学的有意に達し、それぞれ-32.24IU/L(P=0.009、95%CI[-56.16、-8.33])及び-49.99IU/L(P=0.03、95%CI[-95.01、-4.97])であった。
【0086】
肝臓酵素の増加は唯一の本試験の中断原因であり、主にOLZ+PBO群において生じた。
【0087】
これらの結果は表2にまとめられており、且つ、図2B(肝臓酵素AST及びALTの増加)に示されている。
【0088】
ミリコリラントはメタボリックシンドロームに関連する臨床検査パラメータのオランザピン誘発性増加を軽減する
血漿インスリン
8日目におけるOLZ+MIRIとOLZ+PBOとの間での血漿インスリンの差は-3.49mIU/L(P=0.013)であった。OLZ+MIRI群ではインスリンレベルは本試験の残りの期間にわたって基本的に変化しないままであったのに対してOLZ+PBO群では上昇し続け、15日目には3.74mIU/L(P=0.007)という血漿インスリン増加の差がPBO+OLZとの間で生じた。
【0089】
インスリン抵抗性-HOMA2-IR
恒常性モデル評価2(HOMA2-IR)を使用するインスリン抵抗性の評価により、8日目と15日目においてそれぞれOLZ+MIRI群とOLZ+PBO群との間で-0.44(P=0.012)及び-0.47(P=0.007)の差が示された(表2参照)。
【0090】
トリグリセリド
ミリコリラントのオランザピンとの共投与によってトリグリセリドレベルのオランザピン誘発性増加も抑制され、8日目と15日目においてそれぞれ-0.53mmol/L(P<0.001)及び-0.28mmol/L(P=0.057)という差があった(図2A及び表2を参照されたい)。
【0091】
したがって、表2においてまとめられ、図において示されており、且つ、上で考察されているようにミリコリラントのオランザピンとの共投与によって本試験の8日目と15日目の両日においてプラセボと比較して少ないインスリン、HOMA2-IR、及びトリグリセリドの増加が生じた。
【0092】
以上より、体重、肝臓酵素、血漿インスリン、インスリン抵抗性、及びトリグリセリドに対するオランザピンの効果が、非常によく忍容される用量のミリコリラントによって有意に抑制された。長期間のオランザピン治療は重篤な代謝系の副作用を付随することが多く、これらの副作用は次に精神分裂病患者において2型糖尿病、心血管疾患、及び服薬不履行のリスクを高める。ミリコリラントは、ミリコリラントがオランザピンと共投与されるとメタボリックシンドロームに関連する幾つかの臨床検査パラメータのオランザピン誘発性増加の抑制が観察されたことから、抗精神病薬の著しい有害な代謝作用に対する取り組み、並びにオランザピンなどの抗精神病薬を服用している患者における2型糖尿病、心血管疾患、及び服薬不履行のリスクの低減に有用であり得ることが分かる。
【0093】
これらの結果は、ミリコリラントがオランザピンなどの抗精神病薬に関連する著しい有害な代謝作用の軽減及び抑制に有用であり得ることを示している。ミリコリラントは、短期間の処理にもかかわらず、オランザピンの体重及び肝臓酵素に対する効果を有意に抑制することができた。ヒト対象はより高用量のミリコリラントを得ることができ、充分に忍容すると考えられており、より長い処理期間も容易に実現され、したがって、より高い用量、より長い処理期間、及びこれらの組合せについてのこれらの結果から、ミリコリラント処理のさらに肯定的な利益が示唆される。
【0094】
本明細書において引用されている全ての特許、特許公開、刊行物、及び特許出願は、各々個々の刊行物又は特許出願が参照により援用されると具体的及び個別に示されているかのようにここで参照により全体が本明細書に援用される。
【0095】
前述の発明は、明確な理解のために図や実例によって幾らか詳細に説明されてきたが、添付されている特許請求の範囲の主旨又は範囲から逸脱することなく特定の変更及び改変を本発明に対して行い得ることは、当業者には、本発明の教示に照らして、容易に明らかになる。
<付記>
本開示は以下の態様を含む。
<項1>
抗精神病薬誘発性体重増加を患う対象を治療する方法であって、前記対象に抗精神病薬を投与している間に有効量のシクロヘキシルピリミジングルココルチコイド受容体モジュレーター(GRM)を前記対象に投与することを含む方法であり、前記治療が、
抗精神病薬を先に投与されたている対象の体重を、前記対象の前記GRMの前記投与の前におけるベースライン体重と比較して、減少させること、又は
抗精神病薬と前記GRMの服用中の対象の経時的な体重増加を、前記GRMを服用せずに前記抗精神病薬を服用している対象の平均体重増加と比較して、抑制すること、又は
抗精神病薬を先に投与されている前記対象の前記GRMの前記投与の前における血液中のトリグリセリドレベルと比較して、血中トリグリセリドレベルを低下させること、又は
抗精神病薬を先に投与されている前記対象の前記GRMの前記投与の前における血液中のベースライン肝臓酵素レベルと比較して、肝臓酵素であるALT、AST、若しくはそれらの両方の血中レベルを低下させること、又は
抗精神病薬を先に投与されている前記対象の前記GRMの前記投与の前におけるベースライン血漿インスリンレベルと比較して、血漿インスリンレベルを低下させること、又は
抗精神病薬を先に投与されている前記対象の前記GRMの前記投与の前における(HOMA-IR又はHOMA2-IRによって測定される)ベースラインインスリン抵抗性と比較して、インスリン抵抗性を低下させること、又は
それらの組合せ
に有効である、方法。
<項2>
前記シクロヘキシルピリミジングルココルチコイド受容体モジュレーター(GRM)がミリコリラント、すなわち(E)-6-(4-フェニルシクロヘキシル)-5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1H-ピリミジン-2,4-ジオンであり、以下の構造を有する、項1に記載の方法。
【化1】

<項3>
前記治療が、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加作用を改善することを含む、項1又は項2に記載の方法。
<項4>
前記治療が、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加作用を抑制することを含む、項1又は項2に記載の方法。
<項5>
前記治療が、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加の量を減少させることを含む、項1又は項2に記載の方法。
<項6>
前記治療が、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加速度を低下させることを含む、項1又は項2に記載の方法。
<項7>
前記治療が、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加を逆転させることによって前記患者の体重を減少させることを含む、項1又は項2に記載の方法。
<項8>
抗精神病薬誘発性体重増加を患うリスクがある対象を治療する方法であって、前記対象に抗精神病薬を投与している間に有効量のシクロヘキシルピリミジングルココルチコイド受容体モジュレーター(GRM)を前記対象に投与することを含む方法であり、前記対象が抗精神病薬を先に投与されておらず、前記治療が、
前記抗精神病薬と前記GRMの服用中の対象の経時的な体重増加を、前記GRMを投与されずに前記抗精神病薬を投与される対象の平均体重増加と比較して、抑制すること、又は
前記抗精神病薬を投与される対象の血液中のトリグリセリドレベルの平均的上昇と比較して、血中トリグリセリドレベルの上昇を抑制すること、又は
前記抗精神病薬を投与される対象の血液中の肝臓酵素であるALT若しくはAST若しくはそれらの両方のレベルの平均的上昇と比較して、前記肝臓酵素の血中レベルの上昇を抑制すること、又は
前記抗精神病薬を投与される対象の血漿インスリンレベルの平均的上昇と比較して、血漿インスリンレベルの上昇を抑制すること、又は
前記抗精神病薬を投与される対象のインスリン抵抗性の平均的上昇と比較して、(HOMA-IR又はHOMA2-IRによって測定される)インスリン抵抗性の上昇を抑制すること、又は
それらの組合せ
に有効である、方法。
<項9>
前記シクロヘキシルピリミジングルココルチコイド受容体モジュレーター(GRM)がミリコリラント、すなわち(E)-6-(4-フェニルシクロヘキシル)-5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1H-ピリミジン-2,4-ジオンであり、以下の構造を有する、項8に記載の方法。
【化2】

<項10>
前記治療が、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加作用を改善することを含む、項8又は項9に記載の方法。
<項11>
前記治療が、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加作用を抑制することを含む、項8又は項9に記載の方法。
<項12>
前記治療が、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加の量を減少させることを含む、項8又は項9に記載の方法。
<項13>
前記治療が、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加速度を低下させることを含む、項8又は項9に記載の方法。
<項14>
前記治療が、前記患者における抗精神病薬誘発性体重増加を逆転させることによって、前記GRMの投与の前における前記患者の体重と比較して、前記患者の体重を減少させることを含む、項8又は項9に記載の方法。
<項15>
前記GRM投与が前記GRMの経口投与を含む、項1から項7のいずれか一項に記載の方法。
<項16>
前記GRM投与が前記GRMの経口投与を含む、項8から項14のいずれか一項に記載の方法。
<項17>
抗精神病薬と前記GRMの併用投与を含む前記治療が、体重、体重増加、血中肝臓酵素レベル、血漿インスリン、及びインスリン抵抗性(HOMA-IR又はHOMA2-IR)のうちの1又は複数を約10%以上低減するのに有効である、項1から項7のいずれか一項又は項15に記載の方法。
<項18>
抗精神病薬と前記GRMの併用投与を含む前記治療が、体重増加、血中肝臓酵素レベル、血漿インスリン、及びインスリン抵抗性(HOMA-IR又はHOMA2-IR)のうちの1又は複数を約10%以上低減するのに有効である、項8から項14のいずれか一項又は項16に記載の方法。
<項19>
前記治療が、体重、体重増加、血中肝臓酵素レベル、血漿インスリン、及びインスリン抵抗性(HOMA-IR又はHOMA2-IR)のうちの1又は複数を約20%以上低減するのに有効である、項17に記載の方法。
<項20>
前記治療が、体重増加、血中肝臓酵素レベル、血漿インスリン、及びインスリン抵抗性(HOMA-IR又はHOMA2-IR)のうちの1又は複数を約20%以上低減するのに有効である、項18に記載の方法。
図1
図2A
図2B