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特許7569493ファン用給気ダクトおよびこれを備えた燃焼装置
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  • 特許-ファン用給気ダクトおよびこれを備えた燃焼装置 図1
  • 特許-ファン用給気ダクトおよびこれを備えた燃焼装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ファン用給気ダクトおよびこれを備えた燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23L 1/00 20060101AFI20241010BHJP
   F23L 5/00 20060101ALI20241010BHJP
   F16L 55/02 20060101ALI20241010BHJP
   F24H 9/00 20220101ALN20241010BHJP
【FI】
F23L1/00 F
F23L5/00
F16L55/02
F24H9/00 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020193693
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022082241
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】福西 啓吾
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-013262(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080152(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/036029(WO,A1)
【文献】特開2013-152066(JP,A)
【文献】特開2006-194529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 1/00
F24H 9/00
F23L 5/00
G10K 11/16
G10K 11/172
F16L 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナと、このバーナに空気を供給するためのファンと、このファンに空気を導くためのファン用給気ダクトと、を備えており、
互いに交差する3方向として所定のx方向、y方向、および特定方向があり、
前記ファン用給気ダクトは、一端側が空気流入口とされてx方向に延びる空気通路を内部に形成しており、かつこの空気通路を進行した空気を前記ファンに供給するための給気口が設けられたダクト本体部を、備えている、燃焼装置であって、
前記ダクト本体部の内部のうち、前記給気口の周辺領域は、前記空気通路との連通部を除き、周囲が壁部によって囲まれ、かつy方向の幅が前記空気通路よりも大きい気柱振動可能な空間部として構成されており、
前記給気口は、前記特定方向において前記ファンの吸気口に対向した配置でこの吸気口に連通しているとともに、前記特定方向視において、前記空間部のうち、前記空気通路のx方向の延長線上に位置しており、
前記空間部は、x方向の幅がy方向の幅の15~35%であることを特徴とする、燃焼装置
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼装置であって、
前記空間部は、前記ファンの駆動時において発生する騒音のうち、音圧が最も高い周波数域の音を打ち消す定常波を、気柱振動によって発生させるように構成されている、燃焼装置
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃焼装置であって、
前記空間部は、y方向において前記空気通路および前記給気口の片方側に張り出した第1の領域と、これとは反対側に張り出した第2の領域と、を有しており、これら第1および第2の領域のy方向の幅は、互いに相違している、燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音低減作用を有するファン用給気ダクト、およびこれを備えた燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼装置としては、バーナに燃焼用の空気を供給するファンを備え、かつこのファンの吸気口には、ファン用給気ダクトを用いて空気を導くようにしたものがある(たとえば、特許文献1を参照)。このような燃焼装置においては、ファンを駆動させた際に、ファン用給気ダクトから発生する騒音を低減することが要請される。
【0003】
そのような要請に応えるための手段としては、たとえば特許文献2に記載されている手段がある。同文献に記載の手段においては、ファン用給気ダクトに、共鳴型消音器を構成する空洞部を設けている。この空洞部は、ファンに向けて空気が進行する空気通路に対し、小孔を介して連通する部位である。これら空洞部および小孔によって定まる共鳴周波数を、ファン用給気ダクトの共鳴周波数と一致させることにより、ファン用給気ダクトから放出される騒音を低減可能である。
しかしながら、前記した従来技術は、優れた騒音低減効果が得られるとは必ずしも断言できるものではなく、未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-133200号公報
【文献】実開昭53-11633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、騒音低減効果を優れたものとすることが可能なファン用給気ダクト、およびこれを備えた燃焼装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明の第1の側面により提供されるファン用給気ダクトは、空気をファンに導くのに用いられ、一端側が空気流入口とされて所定のx方向に延びる空気通路を内部に形成しており、かつこの空気通路を進行した空気を前記ファンに供給するための給気口が設けられたダクト本体部を、備えている、ファン用給気ダクトであって、前記ダクト本体部の内部のうち、前記給気口の周辺領域は、前記空気通路との連通部を除き、周囲が壁部によって囲まれ、かつx方向とは交差するy方向の幅が前記空気通路よりも大きい気柱振動可能な空間部として構成されていることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、ファンの駆動時には、空気通路から前記空間部に騒音の振動を入射させ、かつこの空間部において気柱振動を生じさせることにより、前記騒音とは逆位相の定常波を発生させて、前記騒音を打ち消すことが可能となる。ここで、前記した定常波としては、前記空間部のy方向の幅に対応した波長の定常波に加え、空間部を囲む壁部のうち、y方向を向く壁部(音の反射壁として機能し得る壁部)から給気口までのy方向の幅に対応し
た波長の定常波をも発生させることが可能である。波長が異なる複数種類の定常波を発生させれば、騒音低減の周波数域を広くし、騒音低減効果を優れたものとすることが可能である。
さらに、本発明によれば、気柱振動を生じる空間部が、空気通路よりも幅広状であるため、いわゆる拡張型消音器と同様に、音圧が前記空間部において拡散し、音のエネルギを減衰させる効果も得られる。また、前記空間部は、騒音源であるファンの近くに配置させることができるため、騒音低減効果をより優れたものとすることが可能である。
【0009】
本発明において、好ましくは、前記空間部は、前記ファンの駆動時において発生する騒音のうち、音圧が最も高い周波数域の音を打ち消す定常波を、気柱振動によって発生させるように構成されている。
【0010】
このような構成によれば、騒音をより効果的に低減することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記空間部は、x方向の幅がy方向の幅の15~35%である。
【0012】
本件発明者は、前記空間部に所定の周波数の定常波を的確に発生させて騒音低減を図る上で、前記空間部の好ましい縦横比(x,y方向の幅の比率)が如何ほどであるかを試験により求めた(詳細データは省略)。この試験の結果、前記した数値の範囲がとくに好ましい旨が判明した。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記空間部は、y方向において前記空気通路および前記給気口の片方側に張り出した第1の領域と、これとは反対側に張り出した第2の領域と、を有しており、これら第1および第2の領域のy方向の幅は、互いに相違している。
【0014】
このような構成によれば、前記空間部において発生する定常波としては、空間部の全体に対応する定常波、前記第1の領域に対応する定常波、および前記第2の領域に対応する定常波を発生させることが可能である。したがって、これらの定常波による騒音打ち消し効果を一層優れたものとすることが可能である。また、前記空間部のサイズを大きくする必要はなく、ファン用給気ダクトの大型化を抑制することもできる。
【0015】
本発明において、好ましくは、このファン用給気ダクトの正面断面視において、前記給気口は、前記空気通路のx方向の延長線上に位置している。
【0016】
このような構成によれば、空気通路から給気口に到る空気流れを円滑なものとし、給気抵抗を小さくすることができる。
【0017】
本発明の第2の側面により提供される燃焼装置は、バーナと、このバーナに空気を供給するためのファンと、このファンに空気を導くためのファン用給気ダクトと、を備えている、燃焼装置であって、前記ファン用給気ダクトとして、本発明の第1の側面により提供されるファン用給気ダクトが用いられていることを特徴としている。
【0018】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供されるファン用給気ダクトについて述べたのと同様な効果が得られる。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は、本発明に係るファン用給気ダクトを備えた燃焼装置の一例を示す概略断面図であり、(b)は、(a)のIb-Ib断面図(ファン用給気ダクトの正面断面図)である。
図2図1に示す燃焼装置のファン用給気ダクトにおいて発生する騒音の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1に示す燃焼装置Cは、後述するファン用給気ダクトAの構成を除き、これ以外の基本的な構成は、特許文献1に記載の燃焼装置と同様である。すなわち、この燃焼装置Cは、給湯装置WHの構成要素として用いられている。給湯装置WHは、内部に加熱対象の湯水が流通する熱交換器2が、燃焼装置Cの缶体10内に配され、かつガスバーナなどのバーナ11によって加熱可能とされた構成である。
【0023】
燃焼装置Cは、前記した缶体10やバーナ11に加え、バーナ11の配置箇所に対して燃料ガスを噴出する燃料ガス供給ヘッド12、燃焼用の空気を缶体10内に供給するためのファン13、およびファン用給気ダクトAを備えている。ファン13は、たとえば不図示の回転羽根をケーシング内に収容し、モータMにて駆動回転自在とした構成である。符号13bは、ファン13の送風口を示している。
【0024】
ファン用給気ダクトAは、ダクト本体部3と、このダクト本体部3の上部に連設された補助部4とを備えている。補助部4には、ダクト用給気口40を形成する筒状部41が設けられている。本実施形態の燃焼装置Cにおいては、いわゆる二重管給排気方式が採用されており、補助部4の筒状部41は、缶体10の上部の排気筒部10aを囲むように設けられている。
【0025】
ダクト本体部3は、補助部4内に流入した空気をファン13の吸気口13aに導くための部材であり、比較的扁平な正面視矩形の中空状である。このダクト本体部3には、このダクト本体部3の外周囲を囲む上壁部30、左右両側壁部31,32、および下壁部33が設けられている他、補助部4からこのダクト本体部3内に空気を導入させるための開口部34、空気通路5、給気口6、および気柱振動用の空間部7が設けられている。
【0026】
空気通路5は、左右一対の壁部51によって挟まれて上下高さ方向(本発明のx方向の一例)に適当な長さL6で延びており、上端に空気流入口50が形成されている。開口部34からダクト本体部3内に流入した空気は、空気流入口50から空気通路5に進入し、下方に進む。給気口6は、空間部7内であって、空気通路5の下方の延長線上の位置に設けられている。給気口6とファン13の吸気口13aとは、管状部材8を介して接続されており、給気口6からファン13に空気が供給される。
【0027】
空間部7は、空気通路5の終端部(下部)に繋がって設けられており、この空間部7の周囲は、空気通路5との連通部52(連通用開口部)を除き、壁部33~35,31a,32aによって囲まれている。これらのうち、壁部31a,32aは、左右両側壁部31,32の一部である。空間部7の横方向(本発明のy方向の一例)の幅L1は、空気通路5の幅L0よりも大である。また、空気通路5および給気口6は、空間部7の横幅方向中央からはオフセットした位置にある。空間部7は、空気通路5および給気口6の片方側(図1(b)の右側)に張り出した第1の領域Raと、これとは反対側に張り出した第2の領域Rbとに区分可能であるが、前記したオフセットに起因し、第1および第2の領域Ra,Rbのそれぞれの幅L2,L3は互いに相違している。
【0028】
空気通路5から空間部7に音が入射した場合、空間部7においてはその横幅方向の端部としての壁部31a,32aによって反射され、気柱振動を生じる。このことにより、空間部7の幅L1~L3に対応する3種類の定常波S1~S3が発生する。これらの定常波S1~S3は、空間部7への入射音(騒音)とは、逆位相の関係となる。また、幅L1~L3と、3種類の定常波S1~S3の周波数f1~f3とは、次の式1~3の関係にある。cは、音速である。
【数1】
【0029】
本実施形態においては、前記した周波数f1~f3の3種類の定常波S1~S3のうち、2つの定常波S1,S2は、燃焼装置Cを運転させた際にファン用給気ダクトAから発生する騒音のうち、音圧が最も高い周波数域となるように設定されている。
具体例を示すと、燃焼装置Cを運転させた際に発生する騒音の音圧が最も高い周波数域が、400Hz前後である場合、幅L1,L2は、たとえばそれぞれ280mm,160mmとされる。この場合、定常波S1,S2の周波数は、それぞれ296Hz,518Hzである。幅L3は、120mmであり、定常波S3の周波数は、691Hzである。
【0030】
空間部7は、好ましくは、上下高さ方向の幅L4が、幅L1の15~35%の範囲とされている。
また、ダクト本体部3の正面方向における空間部7および空気通路5のそれぞれの幅L5(図1(a)の左右方向の幅)は、第2の領域Rbの前記した幅L3よりも小幅である。
【0031】
前記したファン用給気ダクトA、およびこれを備えた燃焼装置Cによれば、次のような作用が得られる。
【0032】
まず、ファン13を駆動させた場合には、既述したように、空間部7に音が入射して気柱振動を生じることにより、3種類の定常波S1~S3が発生する。これらの定常波S1~S3は、入射音とは位相が逆であるため、騒音を打ち消す作用が生じる。その結果、たとえば図2に示すような騒音低減効果が得られる。
同図において、仮想線は、本実施形態が適用されていない対比例のデータであり、400Hz近辺の音圧が高いものとなっている。これに対し、同図の実線は、本実施形態の場合のデータであり、定常波S1,S2による騒音打ち消し作用によって、400Hz近辺の音圧がかなり低下している。一方、定常波S3の存在により、700~800Hz付近の音圧がやや上昇しているものの、そのような周波数域での音圧の僅かな上昇は騒音低減を図る上でとくに問題はなく、無視することができる。
【0033】
前記したように、本実施形態によれば、周波数が相違する2種類の定常波S1,S2を利用して、400Hz付近の騒音を打ち消すように構成されているため、たとえば1種類の定常波のみを利用する場合と比較すると、騒音低減効果に優れたものとすることが可能である。また、本実施形態においては、空気通路5よりも空間部7の方が幅広であるため、空間部7において音圧が拡散し、音のエネルギを減衰させる効果を得ることもできる。空間部7は、騒音源であるファン13の吸気口13aの近くに配置させることができるた
め、騒音低減効果をより優れたものとすることも可能である。
【0034】
空間部7は、既述したように、上下高さ方向の幅L4が、幅L1の15~35%の範囲とされており、また空間部7および空気通路5のそれぞれの幅L5は、第2の領域Rbの幅L3よりも小幅とされているが、このような寸法範囲であれば、本発明が意図する作用が的確に得られることが、本発明者の試験により判明している。
【0035】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るファン用給気ダクトおよび燃焼装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0036】
上述の実施形態においては、空間部7の第1および第2の領域Ra,Rbの幅L2,L3を相違させているが、これに限定されず、L2=L3の関係としてもよい。
空気流れを円滑にする観点からすると、空気通路5の延長線上に給気口6を配置させることが好ましいが、これに限定されず、空気通路5の延長線上から外れた位置に給気口6を配置させることもできる。
【0037】
本発明でいうx,y方向は、それぞれ上下高さ方向および水平方向に限定されない。
ファン用給気ダクトのダクト本体部は、上述の実施形態においては、正面視における全体形状が略矩形状とされているが、やはりこれに限定されず、ダクト本体部の全体形状は、様々な形状に形成することが可能である。
本発明に係る燃焼装置は、給湯装置用のものに限定されず、暖房用、あるいは焼却炉用などの燃焼装置として構成することもできる。ファンの具体的な種類も限定されない。
【符号の説明】
【0038】
A ファン用給気ダクト
C 燃焼装置
13 ファン
3 ダクト本体部
31a,32a 壁部
33~35 壁部
5 空気通路
50 空気流入口
52 連通部
6 給気口
7 空間部
図1
図2