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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241010BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/165 207
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 305
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021008157
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112351
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】三ヶ島 勝雄
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-159556(JP,A)
【文献】特開2016-182694(JP,A)
【文献】特開2005-053020(JP,A)
【文献】米国特許第4207578(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 2/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントシートを搬送する搬送ベルトと、
前記プリントシートにインクを吐出するプリントエンジンと、
前記プリントエンジンのインク吐出タイミングを調整する吐出タイミング制御部とを備え、
前記搬送ベルトは、フラッシング開口部を備え、
前記プリントエンジンは、所定タイミングで繰り返し、前記フラッシング開口部へのインクのフラッシングを行い、
前記吐出タイミング制御部は、前回の前記フラッシングから今回の前記フラッシングまでの期間におけるインク吐出タイミング到来回数と、前回の前記フラッシングの前記フラッシング開口部から今回の前記フラッシングの前記フラッシング開口部までの距離と、プリント解像度とに基づいて、前記プリントエンジンのインク吐出タイミングの調整量を導出すること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記吐出タイミング制御部は、前記インク吐出タイミング到来回数と前記距離および前記プリント解像度に基づく基準吐出回数との差分に基づいて、前記プリントエンジンのインク吐出タイミングの調整量を導出することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送ベルトに接触し前記搬送ベルトの移動とともに回転するローラーと、前記ローラーの回転を検出し前記ローラーの回転に応じたエンコーダー出力信号を生成するロータリーエンコーダーとをさらに備え、
前記吐出タイミング制御部は、(a)前記エンコーダー出力信号に基づく第1補正量、および前回の前記フラッシングから今回の前記フラッシングまでの期間におけるインク吐出タイミング到来回数と、前回の前記フラッシングの前記フラッシング開口部から今回の前記フラッシングの前記フラッシング開口部までの距離と、プリント解像度とに基づく第2補正量を導出し、(b)前記第1補正量および前記第2補正量を使用して、前記プリントエンジンのインク吐出タイミングの調整量を導出すること、
を特徴とする請求項1または請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記吐出タイミング制御部は、所定クロック信号のクロック周期の整数倍となるように前記インク吐出タイミングの調整量を導出する際の丸め誤差を記憶し、次の調整タイミングにおいて、記憶した前記丸め誤差を考慮して前記インク吐出タイミングの調整量を導出することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある画像形成装置は、記録紙搬送用のモーターやローラーの回転を検出するロータリーエンコーダーや搬送ベルトの移動量を測定するリニアエンコーダーで搬送移動量を測定し、記録紙の搬送移動量が基準値になるように搬送移動量を調整し、適切な位置でインクを吐出して画像を形成している(例えば特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-276906号公報
【文献】特開2005-319739号公報
【文献】特開2006-193247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の搬送移動量を正確に調整するためには、複数のエンコーダーを設けたり、高分解能のエンコーダーを設ける必要があり、装置のコストが高くなってしまう。また、モーターやローラーの回転を検出するロータリーエンコーダーを使用する場合、モーターやローラーから搬送ベルトまでの駆動系における各種要因(モーターやローラーの軸受やベルトの撓みなど)で搬送ベルトの速度が変動するため、高分解能のロータリーエンコーダーを使用しても正確に搬送速度が測定されない可能性がある。また、モーターやローラーから搬送ベルトまでの駆動系による搬送ベルトの速度変動に起因する搬送速度の測定値の誤差は、検知されずに累積されていくため、時間とともにインク吐出タイミングの誤差が大きくなっていき画質が低下していく可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、比較的低コストで良好な画質で画像を形成する画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像形成装置は、プリントシートを搬送する搬送ベルトと、前記プリントシートにインクを吐出するプリントエンジンと、前記プリントエンジンのインク吐出タイミングを調整する吐出タイミング制御部とを備える。前記搬送ベルトは、フラッシング開口部を備え、前記プリントエンジンは、所定タイミングで繰り返し、前記フラッシング開口部へのインクのフラッシングを行う。そして、前記吐出タイミング制御部は、前回の前記フラッシングから今回の前記フラッシングまでの期間におけるインク吐出タイミング到来回数と、前回の前記フラッシングの前記フラッシング開口部から今回の前記フラッシングの前記フラッシング開口部までの距離と、プリント解像度とに基づいて、前記プリントエンジンのインク吐出タイミングの調整量を導出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、比較的低コストで良好な画質で画像を形成する画像形成装置が得られる。
【0008】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成を説明する側面図である。
図2図2は、図1に示す画像形成装置の平面図である。
図3図3は、図1における搬送ベルト2の一例を示す図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置10の電気的な構成を示すブロック図である。
図5図5は、図4における吐出タイミング制御部81aの構成を示すブロック図である。
図6図6は、プリントシートの種別に応じたフラッシングタイミングを説明する図である。
図7図7は、図1における搬送ベルト2の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
実施の形態1.
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成を説明する側面図である。図2は、図1に示す画像形成装置の平面図である。
【0013】
この実施の形態に係る画像形成装置10は、プリンター、コピー機、ファクシミリ機、複合機などといった装置であり、この実施の形態ではラインヘッド型のインクジェット方式のカラープリント機構を備える。
【0014】
図1に示す画像形成装置10は、プリントエンジン10aと、シート搬送部10bとを備える。プリントエンジン10aは、プリントすべき画像をプリントシート(プリント用紙など)上に物理的にプリントする。プリントエンジン10aにはインクカートリッジが着脱可能であり、プリントエンジン10aは、インクカートリッジから供給されるインクを使用してプリントを行う。また、シート搬送部10bは、プリントシートをプリントエンジン10aに搬送する。
【0015】
この実施の形態では、プリントエンジン10aは、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックという4つのインク色に対応するラインヘッド型のインクジェット記録部1a~1dを備え、インクジェット記録部1a~1dで、プリントシートにインクを吐出する。
【0016】
図2に示すように、この実施の形態では、各インクジェット記録部1a,1b,1c,1dは、1または複数(ここでは3個)のヘッド部11を有する。それらのヘッド部11は、主走査方向に沿って配列されており、装置本体に対して着脱可能になっている。
【0017】
また、この実施の形態では、シート搬送部10bは、プリントエンジン10aに対向して配置されプリントシートを搬送する環状の搬送ベルト2と、搬送ベルト2を懸架される駆動ローラー3、従動ローラー4、およびテンションローラー4aと、搬送ベルト2ととともにプリントシートをニップする吸着ローラー5と、後段搬送ベルト6と、乾燥器7とを備える。
【0018】
駆動ローラー3、従動ローラー4およびテンションローラー4aは、搬送ベルト2を周回させる。そして、後述の給紙カセット20から搬送されてきたプリントシートを吸着ローラー5がニップし、ニップされたプリントシート101は、搬送ベルト2によってインクジェット記録部1a~1dのプリント位置へ順番に搬送されていき、インクジェット記録部1a~1dによりそれぞれの色の画像をプリントされる。その際、シートセンサー2aでプリントシートの通過が検出され、その検出タイミングに基づいて搬送路上でのプリントシートの現在位置が特定され、これにより、プリントシート上の適切な位置に画像がプリントされる。そして、プリント完了後のプリントシートが後段搬送ベルト6によって排出トレイ10cなどに排出される。その際、乾燥器7によって、インクを吐出されたプリントシートの乾燥が行われる。
【0019】
図3は、図1における搬送ベルト2の一例を示す図である。
【0020】
搬送ベルト2は、フラッシング開口部31-1~31-M(ここではM=6)を備えている。例えば図3に示すように、搬送ベルト2において1または複数のフラッシング開口部31-1~31-Mが形成されており、各フラッシング開口部31-i(i=1,・・・,M)は、主走査方向に沿って形成されている。さらに、フラッシング開口部31-1~31-M以外の領域には、シート吸引孔32が所定密度で略均一に配列されている。
【0021】
例えば図1に示すように、インクジェット記録部1a~1dのヘッド部11の下方にはインク受け部8a~8dが設けられている。各インクジェット記録部1a,1b,1c,1dのフラッシング(ラインフラッシング)は、いずれかのフラッシング開口部31-iがインクジェット記録部1a,1b,1c,1dのヘッド部11の直下に位置するときに実行され、フラッシング時にインクジェット記録部1a,1b,1c,1dのヘッド部11からライン状に吐出されるインクは、フラッシング開口部31-iを介して、対応するインク受け部8a,8b,8c,8dに受け止められ、廃インクタンクへ回収される。
【0022】
また、シート吸引部9は、シートの搬送路に沿って、インク受け部8a~8d以外の部分に配列されている。シート吸引部9には負圧が与えられ、これにより、プリントシートが搬送ベルト2に吸着する。なお、インク受け部8a~8dには、シート吸引部9より低い負圧が与えられている。
【0023】
さらに、シート搬送部10bは、給紙元としての給紙カセット20を備えている。給紙カセット20は、プリントシート101を収容しており、リフト板21でプリントシート101を上方に押し上げてピックアップローラー22に当接させる。給紙カセット20に載置されたプリントシート101は上側から1枚ずつピックアップローラー22によって給紙ローラー23へピックアップされる。給紙ローラー23は、給紙カセット20からピックアップローラー22によって給紙されたプリントシート101を1枚ずつ搬送路上へ搬送するローラーである。
【0024】
搬送ローラー27は、所定の搬送路上でプリントシート101を搬送するローラーである。レジストローラー28は、搬送されてくるプリントシート101がレジストセンサー28aによって検出されると、そのプリントシート101を一時停止させ、2次給紙タイミングでそのプリントシート101をプリントエンジン10aへ(具体的には、吸着ローラー5と搬送ベルト2とのニップ位置に)搬送する。2次給紙タイミングは、そのプリントシート101上の指定された位置に画像が形成されるように後述の制御部81によって指定される。
【0025】
図4は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置10の電気的な構成を示すブロック図である。図4に示すように、画像形成装置10は、図1および図2に示すような機械的構成を有するプリント装置71の他、さらに、操作パネル72、記憶装置73、画像読取装置74、および演算処理装置75を備える。
【0026】
操作パネル72は、画像形成装置10の筐体表面に配置され、液晶ディスプレイなどの表示装置72a、およびハードキー、タッチパネルなどの入力装置72bを備え、その表示装置72aでユーザーに対して各種メッセージを表示し、その入力装置72bでユーザー操作を受け付ける。
【0027】
記憶装置73は、画像形成装置10の制御に必要なデータ、プログラムなどを記憶する不揮発性の記憶装置(フラッシュメモリー、ハードディスクドライブなど)である。
【0028】
画像読取装置74は、プラテングラスおよび自動原稿給紙装置を備え、プラテングラス上に載置された原稿、または自動原稿給紙装置によって搬送されてくる原稿の画像を光学的に読み取り、その画像の画像データを生成する。
【0029】
演算処理装置75は、プログラムに従って動作するコンピューター、所定動作を実行するASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを備え、各種処理部として動作する。そのコンピューターは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備え、ROM、記憶装置73などに記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、(必要に応じてASICとともに)各種処理部として動作する。
【0030】
ここでは、演算処理装置75は、制御部81、および画像処理部82として動作する。
【0031】
制御部81は、プリント装置71(プリントエンジン10a、シート搬送部10bなど)を制御し、ユーザーにより要求されたプリントジョブを実行する。この実施の形態では、制御部81は、画像処理部82に所定の画像処理を実行させ、プリントエンジン10a(ヘッド部11)を制御してインクを吐出させてプリントシート上にプリント画像を形成する。画像処理部82は、RIP(Raster Image Processing)、色変換、ハーフトーニングなどの所定の画像処理を、プリントシートにプリントすべき画像の画像データに対して実行する。
【0032】
制御部81は、ユーザーにより指定された画像をプリント装置71にプリントさせる。具体的には、制御部81は、プリントエンジン10aに、ユーザーにより指定されたプリント画像データに基づくユーザー原稿画像をプリントさせる。
【0033】
制御部81は、ユーザー原稿画像のプリント時に、プリントエンジン10aにインクを吐出させるとともに、所定のフラッシングタイミングで、プリントエンジン10aにインクを吐出させる。これにより、所定のフラッシングタイミングで、プリントエンジン10aは、繰り返し、フラッシング開口部31-1~31-Mへのインクのフラッシングを行う。このフラッシングは、ヘッドノズル内の増粘したインクの破棄のために行われる。
【0034】
また、制御部81は、プリントエンジン10aのインク吐出タイミング(ここでは、画像形成時のインク吐出周期)を調整する吐出タイミング制御部81aを備える。
【0035】
m回目のフラッシングが実行されると、吐出タイミング制御部81aは、前回のフラッシングタイミングTf(m-1)でのフラッシングから今回のフラッシングタイミングTf(m)までの期間(時間L(m)=Tf(m)-Tf(m-1))におけるインク吐出タイミング到来回数P(m)と、前回のフラッシングタイミングTf(m-1)でのフラッシングのフラッシング開口部31-iから今回のフラッシングタイミングTf(m)でのフラッシングのフラッシング開口部31-jまでの距離S(m)と、プリント解像度Rとに基づいて、プリントエンジン10aのインク吐出タイミングの調整量を導出する。
【0036】
ここで、吐出タイミング制御部81aは、インク吐出タイミング到来回数P(m)と距離S(m)およびプリント解像度R(例えば600dpi)に基づく基準吐出回数Q(m)(Q(m)=S(m)×R)との差分(P(m)-Q(m))に基づいて、プリントエンジン10aのインク吐出タイミングの調整量を導出する。
【0037】
この実施の形態では、画像形成装置10は、図示せぬロータリーエンコーダーをさらに備える。そのロータリーエンコーダーは、搬送ベルト2に接触し搬送ベルト2の移動とともに回転するローラー(従動ローラー4など)の回転を検出しそのローラーの回転に応じたエンコーダー出力信号を生成する。エンコーダー出力信号は、そのローラーの回転速度に応じた周期の矩形波である。
【0038】
そして、吐出タイミング制御部81aは、(a)エンコーダー出力信号に基づく第1補正量C1、およびインク吐出タイミング到来回数P(m)とフラッシング間の距離S(m)とプリント解像度Rとに基づく第2補正量C2を導出し、(b)第1補正量C1および第2補正量C2を使用して、プリントエンジン10aのインク吐出タイミングの調整量を導出する。
【0039】
具体的には、吐出タイミング制御部81aは、次式に従って、インク吐出タイミングとしてインク吐出周期U(n)を導出する。
【0040】
U(n)=T0+C1+C2
【0041】
ここで、T0は、理想搬送速度におけるインク吐出周期(つまり、指定されている搬送速度でのインク吐出周期の理論値)である。
【0042】
また、第1補正量C1および第2補正量C2は、以下の式に従って導出される。
【0043】
C1=T(n)-k×T
【0044】
C2=(P(m)-Q(m))×T0/Q(m)
【0045】
ここで、T(n)は、n回目のエンコーダー出力信号のパルス周期の測定値であり、Tは、エンコーダー出力信号のパルス周期の理論値であり、kは、ローラーの公差を示す調整係数である。なお、T(n)は、偏芯補正後の値とされる。例えば、ロータリーエンコーダーの周方向の複数箇所で生成されるエンコーダー出力信号のパルス周期の平均値が、T(n)とされる。つまり、第1補正量C1は、ローラーの速度変動に応じた調整量である。
【0046】
図5は、図4における吐出タイミング制御部81aの構成を示すブロック図である。
【0047】
吐出タイミング制御部81aでは、吐出タイミングカウント部91が、インク吐出タイミングをカウントし、補正量演算部92が、(a)フラッシングタイミング信号に基づいてフラッシングタイミングを特定しフラッシングタイミング間の期間におけるインク吐出タイミング到来回数P(m)を吐出タイミングカウント部91のカウント値に基づいて特定し、(b)定数としてのインク吐出周期理論値T0、距離S(m)、およびプリント解像度R、並びに特定したインク吐出タイミング到来回数P(m)に基づいて上述の第2補正量C2を導出する。つまり、第2補正量C2は、インク吐出タイミング到来回数のズレに応じた調整量である。
【0048】
他方、パルス周期計測部93が、エンコーダー出力信号のパルス周期T(n)を計測し、吐出周期補正部94は、(a)定数としてのパルス周期理論値Tおよび係数k、並びに計測したパルス周期T(n)に基づいて、上述の第1補正量C1を導出し、(b)この第1補正量C1、および導出された第2補正量C2でインク吐出周期理論値T0を補正して、吐出周期U(n)を導出する。そして、制御信号生成部95は、導出された吐出周期U(n)に基づいて、吐出タイミングを指定する吐出タイミング制御信号を生成する。
【0049】
インクジェット記録部1a~1dは、この吐出タイミング制御信号に従って、インク吐出タイミングを特定し、プリントすべき画像を構成する画素についてインクを吐出する場合には、そのインク吐出タイミングで吐出する。
【0050】
なお、フラッシングタイミング信号は、インクジェット記録部1a~1dに対してフラッシングタイミングを指定する信号であって、制御部81が、ベルトセンサー29のセンサー信号により特定される搬送ベルト2の位置に基づいて、フラッシングタイミング信号を生成する。ベルトセンサー29は、例えば図1に示すように所定の位置に配置され、その位置を通過するフラッシング開口部31-iなどといった搬送ベルト2の開口部を光学的に検出することで、搬送ベルト2の周回位置を検出する。
【0051】
図6は、プリントシートの種別に応じたフラッシングタイミングを説明する図である。上述のフラッシングタイミングは、例えば図6に示すように、プリントシート種別に応じて、プリントシート間となる、ベルト周期における所定の1または複数の位相に設定される。
【0052】
例えば図6に示すように、A4RまたはレターRサイズのページ画像の場合(毎分150ページ画像の場合)、1ベルト周期で、5枚のプリントシートが搬送され、フラッシング開口部31-1,31-3,31-6でフラッシングが実行される。ここで、フラッシング開口部31-1,31-3の間の距離、フラッシング開口部31-3,31-6の間の距離、およびフラッシング開口部31-6,31-1の間の距離は、同一ではなく、互いに異なる。したがって、この場合、上述の距離S(m)は、フラッシングの回数mに従って変化する。
【0053】
例えば図6に示すように、A4またはレターサイズのページ画像の場合(毎分120ページ画像の場合)、1ベルト周期で、4枚のプリントシートが搬送され、フラッシング開口部31-1,31-4でフラッシングが実行される。ここで、フラッシング開口部31-1からフラッシング開口部31-4までの距離、およびフラッシング開口部31-4からフラッシング開口部31-1までの距離は、同一である。したがって、この場合、上述の距離S(m)は、フラッシングの回数mに従って変化せずに一定である。
【0054】
例えば図6に示すように、A3、B4、またはリーガルサイズのページ画像の場合(毎分90ページ画像の場合)、1ベルト周期で、3枚のプリントシートが搬送され、フラッシング開口部31-1,31-2,31-5でフラッシングが実行される。ここで、フラッシング開口部31-1,31-2の間の距離、フラッシング開口部31-2,31-5の間の距離、およびフラッシング開口部31-5,31-1の間の距離は、同一である。
【0055】
例えば図6に示すように、13×19.2インチサイズのページ画像の場合(毎分60ページ画像の場合)、1ベルト周期で、2枚のプリントシートが搬送され、フラッシング開口部31-1,31-4でフラッシングが実行される。
【0056】
図7は、図1における搬送ベルト2の別の例を示す図である。なお、例えば図7に示すように、搬送ベルト2におけるフラッシング開口部41-1~41-Nを、周回方向(副走査方向)において等間隔に配列し、シート吸引孔を兼ねるようにしてもよい。この場合、例えば図7に示すように、フラッシング開口部41-1~41-Nのうちのフラッシング開口部41aが等間隔に選択され、フラッシングに使用される。
【0057】
次に、上記画像形成装置10の動作について説明する。
【0058】
画像のプリント時に、制御部81は、プリントエンジン10aを制御して、その画像においてインクを吐出すべき画素について、インク吐出タイミングで、インクをインクジェット記録部1a,1b,1c,1dのノズルからプリントシート上に吐出させる。インク吐出タイミングは、上述の吐出周期ごとに到来し、インクを吐出すべき画素に対応するインク吐出タイミングで、その画素に対応するインクが吐出される。
【0059】
また、制御部81は、プリントシート種別などに基づいてフラッシングタイミングを特定し、プリントエンジン10aを制御して、そのフラッシングタイミングで、インクをインクジェット記録部1a,1b,1c,1dのノズルからフラッシング開口部31-i,41-iに向けて吐出させる。
【0060】
そして、吐出タイミング制御部81aは、プリント時にインク吐出タイミング到来回数P(m)をカウントしていき、上述のようにして、第1補正量C1および第2補正量C2を繰り返し導出し、第1補正量C1および/または第2補正量C2を導出するたびに吐出周期を繰り返し更新し、インク吐出タイミングを調整する。
【0061】
以上のように、上記実施の形態1によれば、搬送ベルト2は、フラッシング開口部31-i,41-iを備え、プリントエンジン10aは、所定タイミングで繰り返し、フラッシング開口部31-i,41-iへのインクのフラッシングを行う。そして、吐出タイミング制御部81aは、前回(m-1回)のフラッシングから今回(m回)のフラッシングまでの期間におけるインク吐出タイミング到来回数P(m)と、前回のフラッシングのフラッシング開口部31-i,41-iから今回のフラッシングのフラッシング開口部31-j,41-jまでの距離S(m)と、プリント解像度Rとに基づいて、プリントエンジンのインク吐出タイミングの調整量(上述の第2補正量C2)を導出する。
【0062】
これにより、搬送ベルト2に形成されているフラッシング開口部31-i,41-iを使用するフラッシングのタイミングに基づいて、インク吐出タイミングが調整されるため、上述のようにモーターやローラーから搬送ベルト2までの駆動系による搬送ベルトの速度変動が発生しても、その速度変動による誤差が第2補正量C2として検出されるため、インク吐出タイミングが適切に調整される。したがって、分解能の高いエンコーダーなどを使用せずに、比較的低コストで良好な画質で画像が形成される。
【0063】
実施の形態2.
【0064】
実施の形態2では、吐出タイミング制御部81aは、所定クロック信号のクロック周期の整数倍となるようにインク吐出タイミングの調整量を導出する際の丸め誤差W(m)をメモリーに記憶し、次の調整タイミング(次のフラッシングタイミング)において、記憶した丸め誤差W(m)を考慮してインク吐出タイミングの調整量(第2補正量C2)を導出する。
【0065】
具体的には、次式に従って、吐出タイミング制御部81aは、前回のフラッシングタイミングの丸め誤差W(m-1)を使用して第2補正量C2を導出するとともに、今回のフラッシングタイミングの丸め誤差W(m)を導出し記憶する。
【0066】
C2=CLK×INT((C20+W(m-1))/CLK)
【0067】
ここで、C20=(P(m)-Q(m))×T0/Q(m)である。
【0068】
W(m)=(C20+W(m-1))-C2
【0069】
ここで、W(m)は、今回のフラッシングでの丸め誤差であり、CLKは、インク吐出タイミングを指定する制御信号のクロック信号のクロック周期であり、INT(X)は、Xの整数部分を示し、Xが1未満であれば0となる。
【0070】
なお、{C20+W(m-1)}の値がクロック周期未満である場合、C2=0およびW(m)=C20+W(m-1)としてC2およびW(m)が計算され、それ以外の場合は、C2=C20+W(m-1)、かつW(m)=0またはW(m)=C2-CLK×INT((C20+W(m-1))/CLK)としてC2およびW(m)が計算されるようにしてもよい。なお、丸め誤差の初期値W(0)は0とされる。
【0071】
T0は、クロック周期より十分長く、クロック数に換算したときに端数が生じない。例えば、クロック周波数が100MHzである場合(つまり、クロック周期が10nsである場合)において、T0が55マイクロ秒であるとき、T0は、5500クロックで表現される。また、上述のように、C2をクロック周期CLKの倍数に設定することで、クロック信号に同期してインク吐出タイミングを指定する制御信号を生成するときの端数が、次回の調整タイミングで考慮されるため、第2補正量C2が小さくてもインク吐出タイミングの調整に反映される。
【0072】
なお、実施の形態2に係る画像形成装置のその他の構成および動作については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0073】
以上のように、上記実施の形態2によれば、第2補正量C2の値が小さくても、正確に、インク吐出タイミングが調整される。
【0074】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0075】
例えば、上記実施の形態1,2において、吐出周期Uの更新をフラッシングタイミング(つまり、ページ画像外)で行うようにしてもよい。その場合、吐出周期Uの変動がページ画像に影響せずに済む。
【0076】
また、上記実施の形態1,2において、吐出周期Uは、クロック数に換算して導出されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、例えば、インクジェット方式の画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
2 搬送ベルト
4 従動ローラー
10 画像形成装置
10a プリントエンジン
81a 吐出タイミング制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7